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レイルガンの夢と現実。

 

「指向性エナジー兵器」構想は早くも19世紀の通俗小説にあらわれたが、SFの世界をそのまま現実にする兵器技術をフランス人発明家が第一次大戦中に提唱していた。

 

レイルガン構想は化学反応では到底無理な距離まで発射体を大型電気回路で飛ばそうというもので、提唱したのはアンドレ・フォション-ヴィレプレーだった。このフランス人は簡単な構造の電気砲を作り、フランス軍の注目を集めた。当時ドイツが運用中の「パリ砲」に対抗可能な長距離砲が欲しかったからだ。

 

1918年にフランス軍需省発明局の命令でフォション-ヴィレプレーは簡単な電気砲の作成に取り掛かった。今日でも画期的な同装置はフランス軍には未来と写ったはずだ。

 

だがフォション-ヴィレプレーのレイルガン開発が進展を示す前に終戦となってしまった。

 

第二次大戦中にナチドイツのヨハヒム・ヘンスラーもレイルガン構想を提唱し、秒速2千キロで発射弾を飛ばすと豪語していた。終戦後に研究内容を発掘した米調査団は構想の弱点として発射には当時のシカゴの半分の照明用にあたる電力が必要だと理解した。

 

レイルガンは数々のコンピュータゲームに登場しているが、大型の「レーザー砲」との誤解がついてまわっている。ゲームではレイルガンは大型ライフルや機関銃の扱いを受けたり、ロボットの腕に装着されたりしている。ゲームデザイナーにはこれだけの威力を誇る兵器にどれだえ電力が必要となるのかわかっていないようだ。

 

レイルガンとは基本的に大型電気回路であり、電源、レイル二本、移動式回転部品の三要素で構成される。こういうと単純な構造に聞こえるが、問題は必要な電力があるかだ。中大型レイルガンでは百万単位のアンペアが必要となる。

 

レイルは伝導性の高い銅などで形成するとしても30フィート超の長さが必要だ。そうなるとライフルや機関銃の大きさのレイルガンなど実現困難だとわかる。

 

レイル二本の間をつぐぎ回転部品や伝導性の高い金属部品が必要だ。電流は電源の正極からプラス荷電のレイルを伝わり、回転部品を通過してマイナスのレイルを伝わり、電源に帰ってくる。

 

簡単に言えば、これで電磁力が生まれ発射体を高速度で打ち出す。

 

レイルガンの長所

 

化学爆発を利用する従来型兵器に対しレイルガンには大きな利点がある。まず発射速度が圧倒的に高くなる。海面上でマッハ10に達し、M16ライフルの弾丸より三倍速い。射程距離は供用中の爆発力利用砲の10倍に達する。高速度、質量運動エナジーの大きさのため発射体に爆発物を入れなくても十分な破壊効果を発生できる。

 

運動エナジーは大きく、非爆発性の発射体でもトマホークミサイルと同様の効果を発揮でき、軍艦を破壊できる。高速度ながら精度は三倍になり風の影響も受けない。

 

レイルガンの短所

 

これだけの威力を発揮するレイルガンが普及しないのは問題があるためだ。実際に多数の問題がある。まず、前に述べた電力消費の問題だ。今日でもこの兵器を稼働させる電力量の利用が困難だ。このため、今のところ応用範囲は電力量が確保できる軍艦等に限られている。

 

つぎに抵抗発熱の問題がある。レイル表面が熱で損傷を受けかねない。機関銃でも発熱が当初から問題視され、初期には水冷式構造も考案されたが、のちに銃身の交換が有効と目されるようになった。冷却方法がいろいろ模索されているが、連続発射すれば本体が損傷を受けるような兵器では軍も採用できない。

 

最後に残る問題は大電流で深刻な疲労破裂が生じることで試作型も数回の発射で使えなくなる。

 

ただしこうした問題によりレイルガン研究が中止になっているわけではない。事実はその逆で、米海軍が導入を検討する中、中国は実用型レイルガンの運用に近づいている。この場合、毎分の発射回数を10回程度に抑えてもかまわないとする。

艦載砲としてレイルガンの発射回数は従来型砲より少なくなるが、精度は上がり、破壊効果ははるかに大きくなる。このためかつては夢の世界の話だった構想の研究に期待が寄せられているのだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Naval Railguns: A Far-Off Dream or a Super Gun?

November 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: RailgunInnovationMilitaryDirected Energy Weapons

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com. This article first appeared earlier this year.


 

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