アメリカの空軍力の勝利の方程式は敵より多くの機体を、優れた整備を経て配備することだ。だが現実には米軍はあまりにも多くのミッションへ対応を迫られ、戦闘に疲れてはないものの、整備が重荷になっている。
トラック台数が少ないのに配達先ばかり多い運送会社のようだ。米空軍力は酷使されているが整備が追いついていない。
RANDコーポレーションと米会計検査院(GAO)から二通りの報告書が昨年出た。ともに米空軍力の現状に悲観的だ。まずRANDは米空軍に将来想定される四種類のシナリオで戦闘力を発揮できるか検討した。①ロシアまたは中国との対決 ②大規模地域紛争として朝鮮戦争やヴェトナム戦争同様のシナリオ ③新しい冷戦として小規模な対決を砂漠の嵐作戦を想定、④対テロ作戦だ。類似例の事例からRANDは空軍が対応を迫られるミッションに8種類を上げた。制空、攻撃、空輸、空中給油、C3ISRがここに入る。
ほぼそのすべてで空軍は100パーセントの要求に答えられないとRANDは評価。地域紛争が長期化の場合、攻撃では60パーセントしかこなせない、空中給油も92パーセントの需要しか満足させられないという。
可能性が最も低いと思われる戦闘シナリオが空軍を最も疲弊させるのは皮肉としか言いようがない。RANDは「最大の驚きは平和維持活動が空軍に最大の負担となること」と述べている。平和維持活動の一環としての飛行禁止区域設定のシナリオではC3ISRの要求で29パーセントしか満たせず、給油機の需要では32パーセント、特殊作戦関連では40パーセント、爆撃機ミッションの46パーセントしか実施できない。
RANDはこの試算を「バルカン半島、中東での飛行禁止措置の長期化で戦闘機、給油機、C3ISR/BM(戦闘統制)の各機材でローテーション配備が必要となった」事例から導いた。言い換えれば、飛行禁止措置の執行のような普通の任務でも長期化すれば、重荷になるということだ。
一方で会計検査院報告書で2011年から2016年にかけ空軍、海軍ともに機体の稼働率目標が未達と明らかになった。空軍海軍の13機種について、GAOは重整備の遅れ、必要部品が生産終了となっている、整備要員の欠員、耐用期間を超えても飛行させている事例を指摘している。
「機体稼動率が目標を下回ると、訓練や実戦ミッションが期待通り実現できない場面が生じかねない」とGAO報告書は指摘し、「たとえばF-22飛行隊関係者から稼働可能機材が足りず制空任務が達成できないとの不満を聴取した。F-22パイロットは充実した訓練があってこそ制空任務が実現できる。さらに司令部レベルでは機体稼働率が目標水準以下のため、緊急事態の場合に十分な機数を動員できない事態もありうるとの見方がある」
海軍では第一線部隊に機材を優先手配し戦力を維持しているが、後方部隊に訓練機材も不足する事態が発生している。
また旧式化して維持が高費用となっているやっかいな機材はどうするのか。何か手を打つ必要がある。■
この記事は以下を再構成したものです。
The Air Force Doesn’t Have Enough Jets to Take On Russia and China
November 7, 2020 Topic: Security Blog Brand: The Reboot Tags: RussiaChinaMilitaryTechnologyF-15
Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook. This first appeared last year.
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