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「大型艦」で地上イージスアショアを代替するのは安易な発想。あくまでもイージスアショアを設置すべきだ。

 


 

本国内報道で日本政府が「スーパー護衛艦」を二隻建造し、中止されたイージスアショア二か所の代替手段にする可能性を検討中という。地上施設は技術問題、費用さらに反対の声を受け中止となった。

 

新建造する艦艇は北朝鮮弾道ミサイルへの対応を主任務としロッキード・マーティンのAN/SPY-7長距離式識別レーダーを搭載する。もともとイージスアショア用に開発されたレーダーだ。

 

報道では11月半ばに防衛省に中間報告が寄せられ、政府は今年中に案を進めるか決定するとある。Nikkei Asia では実現は了承済みとある。


ミサイル防衛に関し日本は専用船あるいは沖合施設を使えないか検討してきた。「スーパー護衛艦」よりは安価だが、ともに空、水中からの攻撃に脆弱すぎる。これに対し新型艦は柔軟性が抜群ながらミサイル防衛以外の任務にも投入できる。

 

ただし日本側が完全な新型艦または既存設計の改良艦を想定しているのか不明だ。海上自衛隊がまや級イージス艦の追加建造に向かう可能性はある。まやに続く二号艦が2021年に編入される。まや級では新型イージス戦闘システムが導入され、先行するあたご級を改良した。このあたご級もこんごう級の発展型であり、これも元をたどれば米海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦にたどり着く。

 

U.S. NAVY/SEAMAN SANTIAGO NAVARRO

海上自衛隊のはたかぜ級駆逐艦しまかぜ(DDG 172)(手前)、あたご級駆逐艦あしがら(DDG 178)、カナダ海軍フリゲート艦HMSCウィニペグ(FFH 338)の上空を通過する航空機編隊。キーンソード21演習の行われたフィリピン海にて。2020年10月。

 

 

共同通信は政府想定は基準排水量9千トン艦と伝える。まや級は8,200トンだが、これを拡大した改良型が生まれないとはいえない。まや級は4隻建造となり、後期建造の二隻がAN/SPY-7レーダー搭載の拡大型になる可能性が残る。

 

共同通信記事では新型艦を大型化する理由に居住空間の拡大があり、「北朝鮮弾道ミサイル警報の中で厳しい勤務環境」があるとする。米海軍もフライトIIIのアーレイ・バーク級で同様の方向をめざし排水量9,700トンとし、艦体を拡大する。

 

記事では新建造艦にAN/SPY-7レーダーを搭載し、イージスアショアと同じ性能にするとある。日本は同レーダーの導入を先に決定していた。ただし運用要員の居住空間など追加条件のため既存まや級の上部構造さらに艦体自体が変更となる可能性がある。

 

Nikkei Asiaでは追加二隻の建造費は令和3年度予算に計上するとあるが、AN/SPY-7の艦艇搭載で改良が発生する。ただしロッキード・マーティンは同型式レーダーをカナダ海軍の26型フリゲート(BAEシステムズ建造)、スペインのF110級フリゲートにも供給しており、ともに日本が想定する艦艇より小型であることに注意すべきだろう。

 



新型艦がどのような姿になるにせよ、SM-3MkIIA迎撃ミサイルを搭載する。同ミサイルは迎撃性能が拡大し、現在配備中のSM-3以上に多くの種類のミサイルに対応できる。

RAYTHEON


RAYTHEON

 

 

ただし疑問が残る。とくに人員面だ。イージスアショア導入の理由として海上自衛隊の人員不足で既存艦艇の運用にさえ支障をきたしていることがあった。大型艦2隻を配備すれば海自の人員面がさらに苦しくならないか。

 

実際に多任務「護衛艦」30DXあるいはFFMと呼称する新型艦は人員不足のため排水量3,900トンとフリゲート艦より若干大きい程度となる。イージス艦より安価で乗員はほぼ三分の一で多任務をこなすものの弾道ミサイル防衛は想定していない。

 

そこで新型イージス駆逐艦建造が承認されれば、北朝鮮の脅威のみならず東シナ海他で展開する相手側の兵力投射にも十分対応できるはずだ。日本の次年度防衛予算要求が記録的規模の550億ドル近くとなるのは北朝鮮並びに中国の脅威に直面する日本で自衛隊の役割が重要になっているあかしでもある。

 

新型艦の艦容がどうなるにせよ、海自艦隊が増勢に向かっている野は明らかだ。予算の伸びを受け防衛省は駆逐艦隻数を54に増やそうとしている。現状は50隻を下回る。ただし、費用が大きな難関で、内22隻を安価なFFMで構成する構想とし、まや級のようなフル装備艦ばかりにはできない事情がある。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Japan Considers Building Two Super-Sized Destroyers As An Alternative To Aegis Ashore

THE DRIVE

BYTHOMAS NEWDICKNOVEMBER 2, 2020


コメント

  1. >大型艦2隻を配備すれば海自の人員面がさらに苦しくならないか。
    凡その発射・着弾地点が事前に分かっている弾道弾を迎撃するために、洋上に船を浮かべるというのは素人から見ても非効率・不経済なわけですが。

    >そこで新型イージス駆逐艦建造が承認されれば、北朝鮮の脅威のみならず東シナ海他で展開する相手側の兵力投射にも十分対応できるはずだ。
    指揮官として、数百億を投資するならフレキシビリティを優先したいのかもしれませんね。大体、海自の人員不足は南西方面を考えた時の方が深刻でしょうし。

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