2020年12月27日日曜日

砂漠の嵐作戦から30年。現在の米空軍は勝利できるのだろうか。戦時の教訓から空軍はどこまで変化したのか。

 

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米国はイラクを粉砕し、以後は同様の敵勢力も敗北させている。だが、ペンタゴンは実戦経験から本当に何かを学んでいるだろうか。

 

2021年1月に砂漠の嵐作戦の30周年を迎える。6週間の作戦はイラクによる前年のクウェート侵攻の前の状況に復元した。30年が経過し、米空軍は当時の規模から半減されている。イラクを圧倒した当時は画期的だったステルス、精密誘導弾、衛星情報も今では当たり前になっており、敵対勢力もコピーしている。精密戦域弾道ミサイルは精度を上げており、敵対勢力で通常装備になっている。当時のような戦力増強期間や攻撃を受けない聖域の扱いは今では不可能だ。

 

米国が再度戦闘に突入する事態、さらに大規模戦担った場合、前回同様の急速かつ決定的な勝利を確保できるだろうか。

 

今も米国は航空戦闘の大部分で優位性を確保しており、人員は優れた訓練を受けており、同盟国協調国は多いと航空戦闘軍団を率いるマーク・D・ケリー大将は見る。Air Force Magazine 11月号の取材で大将は米国が参戦を余儀なくされれば、「再度優位に戦う」と述べたが、敵の防空体制も一新しており、戦域弾道ミサイルや各種戦闘の技能を考えると戦闘は一層過酷になると覚悟している。砂漠の嵐作戦のような一方的な勝利は起こりそうもない。

 

米国民は今後の戦闘では一層多くの死傷者を覚悟せねばならないとケリーは述べ、「第二次大戦時の観点に戻り、砂漠の嵐作戦時の水準は参考にならず」勝利の代償は高く付くとする。「無血のまま戦えるはずがない」とし、近代戦は「極端に迅速展開し、...極端なまで混沌とし、極端なまで残酷だ」

 

規模の問題

1990年から91年当時の空軍は冷戦時に整備され対ソ連戦を想定していた。戦闘機の平均機齡は12年足らずで、準備体制は高く、航空搭乗員は訓練をよく受けていた。当時の空軍に戦闘飛行隊が計134個あったが現在は55隊にすぎない。平均機齡は27年になり、50年も珍しくない。

 

戦略方針も変わった。9/11事件の2001年は本土防空体制の必要性を空軍に痛感させたが、抑止効果を上げるべく十分な兵力を世界各地に展開する必要もある。

 

「当時は圧倒的な数の機体があった」とデイヴィッド・A・デプチュラ中将(退役)が語る。現在はAFAミッチェル研究所長のデプチュラはイラク空爆作戦で標的選定に当たり、その後空軍初の情報収集監視偵察担当副参謀長になった。

 

連合軍部隊は砂漠の嵐作戦に2,430機を投入し、うち1,300機が米軍所属で海軍、海兵隊も紅海や地中海の空母から運用した。イラクは700機の固定翼機を動員した。空の抵抗は急速に下火になった。

 

デプチュラは機材多数を動員した当時を想起し、「72機体制での攻撃作戦をよく立案していた」という。航空団司令から多すぎると不平が出て、攻撃規模を縮小していた。「砂漠の嵐では実際に動員した機材の半数で実施可能だった」という。

 今日は数の意味が異なっている。

 

「よく性能が向上したので機数は重要でなくなったと言われる」とデプチュラは続けた。「そうならない場合がある。F-22は世界最高水準だが、動員可能な機体は30機か40機だろう」とし、残りは移動中ないし帰還中、あるいは訓練や修理中の機体だ。

 

 デプチュラはこの規模ではとても十分とはいえないとし、「取り扱いに苦労するだろう...一方面でもそうなので、同時対応は困難」という。

 

敵の軍事力が強力だと状況は急速に変わる。ヴィエトナム戦で米軍は「F-105部隊の半数を失った」とデプチュラは振り返り、「11日間でB-52の15機を喪失した」ことから互角の戦力を持つ相手との交戦では「損耗率はここ30年の水準を相当上回るものになる」と見ている。

 

砂漠の嵐作戦での「大きな驚き」は機体喪失数の低さで、米軍機は27機のみだった。「いつもこうなるとはいえない」(デプチュラ)

 

ここ三十年で空軍の規模が徐々に縮小し今や危険水準に入ったとデプチュラは指摘。「戦闘機は50%を切った」「爆撃機はもっと悪い。現在は当時の43%しかない」

 

機体数減少のかわりに性能を引き上げる必要がある。とくに精密攻撃力だ。「供用中兵器の大部分は精密誘導方式」とデプチュラは述べ、砂漠の嵐作戦当時は9%しかなく、レーザー誘導爆弾は4.3%にすぎなかったが、戦略目標の撃破の75%はLGBによるものだった。

 

当時中佐だったデイビッド・デプチュラ(右)が(左より)チャック・ホーナー大将、バスター・グロッソン中将、ノーマン・シュワーツコフ大将に状況説明している。マイケル・ロー大将はシュワーツコフを「中身は空軍兵」と呼び、作戦を圧倒的空軍力でスタートする構想を支持してくれたとする。David Deptula/courtesy

 

精密兵器

砂漠の嵐作戦でレーザー誘導爆弾がCNN視聴者に強い印象を与えた。白黒画面だが爆弾が屋根を貫通する光景が家庭で見られた。だがこうした兵器も雲、煙、その他妨害があると機能せず、パイロットは爆弾を抱えたまま帰投を迫られた。これに対し、今日の精密誘導兵器は衛星航法方式を利用し昼夜問わず全天候で運用可能だ。

 

1991年に得た教訓は精密攻撃が効果を倍増することだった。USAFは共用直接攻撃弾のようなGPS誘導方式兵器を開発し、レーザーシーカーも採用した。「その後開発の兵器は精密誘導ばかりで、もはや昔ながらの重力投下爆弾はない」とジョン・マイケル・ロー大将(砂漠の嵐作戦時に副参謀総長)は述べている。ローはその後戦術航空軍団長となり、航空戦闘軍団の初代司令官になった。

 

ステルス

砂漠の嵐ではステルス機が初めて戦闘投入された。空軍のF-117は敵防空体制を突破し、最重要目標を攻撃できることを実証した。

 

「正しい方向に向かっているのはわかっていた」とローは述べている。空軍はその後F-22開発に向かい、当時最新鋭のB-2爆撃機もあった。現在の空軍戦力でステルスは必要不可欠な存在だが他にも隠し玉がある。

 

「探知特徴が小さい方が大きいより良いのは絶対だ」とケリー大将は見る。「たった一つの帯域を運用するより多数のスペクトラルで耐じん性を高めたほうがいいに決まっている」 空軍のステルスは「極めて高性能」で「作戦遂行時に非常に重要な要素だ」とする。

 

低視認性は透明とは違うとケリーは説明する。技術の進歩で機体が探知追尾しにくくなれば戦術が重要になる。「低視認性機材を『視認不能』と錯覚すれば大きな間違いにつながる」

 

ISR

砂漠の盾、砂漠の嵐の当時の空軍はISR機材や宇宙機材で他の追随を許さない豊富さを誇っていた。E-3早期警戒管制機、スパイ衛星、戦術偵察機、E-8ジョイントSTARSなど開発中機材も急遽投入された。それでも「現場上空の画像情報不足」に苦しんだとデプチュラは回想していいる。「二年前半年前の画像を使って標的選定をしていた」

 

「グーグルアースに給料一年分を払ってもいいと思った」デプチュラは機能は完全に正確とはいかないが「当時トップシークレット機微情報扱いだった対象を見れたはずだ」という。

 

必要とする側向けの情報収集も大変だった。「攻撃の立案部門と情報収集手段の運用側がつながっていなかった」とデプチュラは回想している。情報収集の手順ではとくに攻撃被害評価が「まったく反応が悪かった」という。

 

同様に「当時は『時間に追われる』標的設定は砂漠の嵐にはなかった」とデプチュラは述べており、F-111に精密誘導弾を搭載し待機させたが、「情報が入ってから標的上空に送るまで8時間かかっていた。とても時間の切迫感があったとは言えない」

  

これに対し現在では航空機は各種装備を搭載したまま空中待機し、ISRで標的が見つかればあるいは地上部隊が支援を求めてくればすぐ対応する。

 

観測無人機は今や標準装備だが、湾岸戦争にはプレデター、リーパーの姿はなかった。投入された無人機は海軍のパイオニア標的測定用だけだった。

 

「24時間毎日連続の上空監視が普通になった」とデプチュラは述べ、常時監視のISRが空軍が学んだ教訓で、ここから各種無人装備の発展につながった。今日ではISRのライブ映像が多用されている。

 

戦略

砂漠の嵐で空軍は標的選定でも変化した。イラク軍事施設全部を叩くのではなく効果をもとにした作戦 effects-based operations (EBO) のアプローチで関連施設を一度に攻撃した。この「平行」攻撃で混乱と混沌が生まれ、イラクは結局立ち直れなかった。

 

「従来の標的設定方法と大きく変わった」とデプチュラはいい、効果を決定の根拠とする決定でなければ「無作為に攻撃し無関係対象も攻撃していたはずで、ヴィエトナム戦当時と大差なく、セルビアの航空戦の第一段階がまさしくこの通りだった」という。

 

だが教訓は生かされず、「20年にわたりアフガニスタン、イラクでEBOアプローチは採用されないまま」だった。

 

ローは砂漠の嵐司令官陸軍大将H・ノーマン・シュワーツコフを「中身は空軍兵」と称賛して、シュワーツコフは「圧倒的航空戦力」を強く支持したという。

 

イラク国内への容赦ない航空攻撃は空軍基地、防空施設、指揮命令処から始まり、その後地上部隊を狙い、イラクを圧倒したとローは語る。サダム・フセインは自国空軍を一度も活用できず、最優秀機材はイランに逃げたり、硬化シェルターに隠されたものの、バンカーバスター爆弾の標的になった、とローは語る。

「こちらが兵力で圧倒した。こちらは相手が思いもしない時間に攻撃し、航空戦力を投入した。ステルス、スタンドオフ兵器も投入した」 連合軍は攻撃を「連日実施し、連続して実施した...一日1,000ソーティーも行い、サダム・フセインは手も足も出ない状況だった」

 

デプチュラも同意見だ。「砂漠の嵐作戦は当時の機材の半分で実施できた...が当時はその認識はなかった。圧倒的戦力を投入したくなるのは普通だ」

 

防空体制 

ロシアと中国は30年かけ砂漠の嵐を研究したとローは指摘し、今日の両国の軍事面に直接の影響を与えているという。

 

イラクはKARI防空装備があるので安心していた。フランスが売却した装備で、イラク防空ミサイル対空砲陣地150箇所をつなぎ、固定翼機700機も同様に運用していた。イラクには地対空ミサイルや肩のせ発射式対空兵器が数千発あった。

 

連合国側は重大な損失を覚悟していた。「開戦後二日間で100機から120機喪失すると見ていた」とローは回想する。防空体制の撃破後も「毎日5機10機喪失が数週間続くと想定していた」という。

 

実際は75機喪失で、うち米軍機は27機だった。

 

新鋭防空装備にはロシアのS-300からS-500など砂漠の嵐当時より遠距離で敵機を探知できるものがある。湾岸戦争時のSA-2は20から30マイル先の敵機に対応したが、S-400だと400マイル先まで迎撃できる。「これは大きな変化だ」とデプチュラは述べ、現時点の対空ミサイルは高速に加え、誘導装備を搭載し欺瞞されなくなっていると指摘している。

 

デプチュラはステルスは今も重要だとする。「低視認性はほぼ同じ実力を有する敵に対峙する際の基本中の基本だ。低視認性がなければ生存は難しい」

 

ステルスには戦力増強効果もある。「ステルス1機で非ステルス機材10機20機と同じ仕事ができればステルス機には10倍の価値があることになり、お買い得商品になる」

 

米陸軍部隊がサウジアラビアの航空基地にC-5Aギャラクシーで到着した。米軍は航空作戦開始前の5ヶ月を活用し域内に基地数カ所を整備した。Department of Defense via National Archives

 

電子電磁戦

砂漠の嵐作戦が終わり空軍はF-4Gワイルドウィーゼル SEAD/DEAD敵防空体制制圧破壊用機材とEF-111スパークヴァーク電子戦電子妨害機を退役させた。ブロック50/52仕様のF-16がワイルドウィーゼル任務を引き継ぎ、電子戦援護は海軍のEA-6Bブラウラー、その後EA-18Gグラウラーが頼みだ。

 

ローはこの方針を「誤り」と断じ、海軍では「空軍の電子戦要求内容すべて」に対応できないとする。USAF関係者はEMS(電子電磁スペクトラム)航空団による「電子戦、電子攻撃、情報戦、サイバー、ISR」任務の実施を計画中と発表しており、ローはこれは朗報とする。

 

ケリーは中国とロシアがステルス、精密誘導方式の実用化に入ってきたことに注意喚起している。電子電磁スペクトラムの優位性が揺らぐと警戒している。

 

「両国の電子電磁スペクトラム全域での妨害能力には相当のものがある」とし、「超低周波数から3Hzまで」の各帯域つまり通常の無線周波数、レーダー帯域、X、Ku、Kaバンドでの運用能力があり、「赤外線、さらに紫外線まで」とケリーは述べる。これに5Gや量子コンピュータ技術、宇宙、サイバーを加えれば敵勢力はEMSを有効活用し「キルチェーンを拡張し味方のキルチェーンを寸断できる」という。

 

空軍は電子電磁スペクトラム内で「生存するだけではく有効活用する」狙いがあるとケリーは説明。ステルス以外の戦力戦術でも「手の内を固め」「敵信号を吸収し逆に再プログラムする」必要があるという。

 

アジャイル戦闘補給体制

砂漠の嵐では空軍に数ヶ月の余裕があり、戦術を訓練したり、手順書を確認し、作戦を有効に進められた。イラクは準備を戦術弾道ミサイルで妨害できたが、散発的に発射しただけで、しかもほとんどがコースを外れ、被害が発生しなかった。あるいは陸軍がペイトリオットミサイルで迎撃した。砂漠嵐作戦を通じ空軍が受けたミサイル攻撃は2回だけだったが、27名戦死90名負傷の被害が発生した。

 

だがミサイル技術の進展で精度もあがっていることもあり、将来の広域航空基地が「格好の標的になる」とケリーは見ている。

陸軍の防空装備が不十分で航空基地が標的にされる事態から「アジャイル戦闘補給体制の開発に進んでいる」とケリーは述べており、戦闘機なら「4機程度」の小規模戦力を遠隔地に展開し、再武装、燃料補給し迅速に再発進させる。地上要員は最小限ながら機動的に対応できる派遣ミッションチームとして訓練を受ける。各種ミッション支援を迅速に行えるように「複数の技能セット」を有するチームになる。

 

このコンセプトでは「全ては準備できないが、同盟国協力国を世界規模で維持できる。受け入れ国は飛行場や防空装備を提供しれくれれば大きな効果が生まれる」とケリーは説明しており、こうした協力関係が中国やロシアと大きな差を生むとし、両国にはこうした関係がなくすべて自前で遠征部隊支援をする必要があるという。

 

ロー、デプチュラともに空軍には実戦司令官に決定権を移譲すべきと力説しており、変化する状況に対応しつつ、通信途絶となっても戦うため必要とする。「中央統制・分権型の実施方式を中央指揮分散統制分権型実施に帰るべきだ。兵装投下前に航空作戦司令所にお伺いを立てるようなことはすべきではない」(デプチュラ)

 

リスク要因

砂漠の嵐の成功を再現できるかという命題の中心は国民がリスクをどこまで受け入れる覚悟があるかだ。空軍自身が編集した「我が国に必要な空軍力」との表題の白書では国家戦略方針の実現で「中程度リスク」を想定するとしているが、この発想は1991年には存在しなかった。「中程度のリスクとは砂漠の嵐のような作戦にはならないことを示すものだ。99-1での勝利ではなく、55-45で勝つことだ」(デプチュラ)

 

リスクは投入資源により変動する。

現在の空軍参謀総長チャールズ・Q・ブラウンJr大将の「変革の加速化、しからずんば敗北」との号令はDoD全体に通じるメッセージであり、米国民にも同様だ、とケリーは言う。

 

将来の軍の姿で「選択肢が4つ」あるとケリーは指摘する。「増大する同格国の脅威に全方面で対応可能な軍事力を整備構築する」こと。「『投資のための処分』で威力を維持すべく」旧式装備を廃止し新型装備導入資金にすること。米軍に「グローバルコモンズ防衛」の義務は不要になったと決めること。あるいはケリーは「何もしないと軍事力による敗北を受け入れるリスクを高めることになる。つまり、ブラウン大将の言う『変革の加速化しからずんば敗北』の『敗北』につながる」と語っている。

 

更にケリーは空軍は国防総省とともに同じ方向に向かうべきとし、「変革が気に入らないのであれば、敗北に真っ直ぐ進むことになる」と述べた。

 

この記事は以下を再構成したものです。

          


2020年12月26日土曜日

F-3は大型双発の「ゴジラ」になると見るオーストラリアの論評。英主導テンペストとの合流はあり得るのでしょうか。

 オーストラリアは違った見方をしていると感じました。テンペストは確かに気になる存在ですが未知数が多い機体です。F-3は各国のトレンドと異なる路線のようで輸出は期待薄でしょう。それともモジュラー化でダウンサイズ版があれば話は別ですが、まさかその想定はないでしょう。当方は戦闘機の大型化をかねてから提唱しておりましたので、この方針には我が意を得たりの気持ちが強いです。


 

 

型戦闘機開発で120億ドル(150億オーストラリアドル)は大金とみなされないが、製造規模わずか90機となると話は違ってくる。

 

日本にとって新型機開発に予算を投じ2030年代に備える以外に選択肢はなく、日本政府はF-X開発に乗り出した。

 

12月18日の防衛省発表ではロッキード・マーティン三菱重工業による開発業務を支援するとあるが、米英の別企業も推進系やエイビオニクスで協力する。F-Xが英国で進むテンペスト戦闘機事業とつながるのは確実なようだ。両事業の開発大日程はほぼ並行している。

 

これまでロッキード・マーティンとならびボーイングBAEシステムズの名が取り沙汰されてきた。

 

ただし、日本はロッキード・マーティンを選定し、同社はノースロップ・グラマンと三菱重工のF-X統合作業を手助けする。海外国の戦闘機開発ではロッキード・マーティンの関与した案件が一番多い。三菱重工とF-2開発で、韓国航空宇宙工業のKF-Xにも関与している。

 

開発費用の規模は公表されていないが、共同通信や東京新聞ではリーク情報として少なくとも1.2兆円(120億ドル)としており、韓国KF-Xの規模を上回るもののF-35開発費用が最終的に720億ドル(2012年度ドル価格)になる試算に比べれば相当低い。

 

問題はF-Xの生産規模がわずか90機の想定になっていることで、開発費用が各機に重くのしかかる。また大型機となり生産ラインでの学習効果が効果を上げるまで時間がかかりそうなので機体単価の上昇はさけられないだろう。また生産施設を長期間稼働させるためもあり生産ペースは遅いままにされる。

 

防衛省はF-2の後継機開発準備に10年超を使い、直輸入、海外事業への参画も含め検討し2018年に日本主導の開発方針を決めた。

 

この決定にはそれなりの理由があるとはいえ、最終的には機体単価の規模で評価されよう。日本としてはF-X開発の主導権は譲れず、米製戦闘機が輸出できない以上、日本は他国の都合ではなく自国ニーズを最上段におく仕様にせざるをえない。

 

F-35購入を増やすだけでは解決しない。日本がF-X実戦化に想定する2035年でF-35は供用開始から20年、フル開発から34年が経過しており、もはや新鋭機ではなくなる。

 

完成機材輸入では製造元が装備設定を仕切るのが困る。日本のように自国で兵装やセンサーを開発できる国は各種装備の統合で選択権を握っていたいと考えるものだ。

 

これまで日本は米機材を選択してきた。1960年代末にF-4ファントム、その後にF-15イーグルを導入したが、F-22は米側に拒否され、その後継機も輸出は想定されない可能性がある。

 

防衛省の内部検討の結論は一見実現が困難に見えた。大型双発機で相当の航続距離があり、長時間滞空できる機体が浮上した。

 

そのため防衛省の打ち出したF-XはF-22を上回る威容となる。まさく巨漢といったところで「ゴジラ」のニックネームを提案したい。

 

機体サイズの選択が重要なのは、大型機は開発費用も大きくなるからだ。日本としては提携国では同様の機体は製造してくれないと考えた。F-Xが統合可能な開発事業として英国のテンペストとフランス-ドイツ-スペイン共同開発の将来型戦闘航空システムがあり、後者はあきらかに真剣な検討対象ではない。ともに大型機で初期構想段階のままだが、サイズの縮小が容易に想像でき、日本としては今が動くべき時だ。

 

ただし、テンペストとシステム共通化すれば費用を節約できる。英国では多国間共同開発機材の不満足な成果の経験から、で長期交渉して共通仕様の決定したあげく不満足な機材とするより、モデルを提示し、これで十分とする他国だけに参加を持ちかけており、機体をそのまま必要としない国にもドアを開いている。これならゴジラにいい話ではないか。

 

例として日本は大型機体を製造し、エンジンはIHI製の他ロールスロイスを採用すれば、テンペストと共通化できる。実際にロールスロイスが同じ内容の提案をしており、日本が有する素材技術を活用できるとしている。

 

英日両国は高性能レーダー開発を共同で進めている。またMBDAのミーティアミサイルにアクティブ電子スキャンアレイを搭載する開発も共同で進めている。

 

構想設計の最終決定にはパートナーからインプットを待つ状態とはいえ、日本の国会は令和3年度予算に731億円の計上を認め、開発が本格始動しそうだ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Japan going ahead with 'Godzilla' fighter jet | The Strategist


24 Dec 2020|Bradley Perrett


2020年12月25日金曜日

エイブラムズ主力戦車はSEP v3に進化。主役の座を降りるのはまだまだ先のようです。米陸軍は大国間戦闘に備え、戦車等装甲車両の性能アップに。

 

 

 

装甲かつ性能を実証済みのエイブラムズ戦車は今後も主役の座にとどまる。陸軍の新規発注がこれを裏付けている

 

米陸軍はエイブラムズ主力戦車多数の改良を進め、最新のM1A2 SEPv3仕様は大国間戦闘に対応する性能になる。

 

ジェネラル・ダイナミクスは46億ドルで前方監視用の高解像度赤外線センサーカメラ、アクティブ防御、兵装の改良と車内発電容量を引き上げた新型車両多数を陸軍に納入する。

 

ジェネラル・ダイナミクスは「M1A2 SEPv3仕様は技術進歩を採用し、通信、火器管制、攻撃力、信頼性、整備性、燃料消費効率を改良しさらに装甲を強化しています」と声明文を発表している。

 

新型M1A2 SEP v3の砲手は高解像度ディスプレイを利用可能となり、操縦手のコントロールパネル、砲塔の制御も変わる。M1A2 SEP v3では弾薬データリンクと電子戦装備を一体化し、これを遠隔制御爆発物対抗電戦装備Counter Remote Controlled Improvised Explosive Device—Electronic WarfareつまりCREWと呼ぶ。オルタネータの容量アップと車内イーサネットによるネットワーク機能で搭載センサーを統合する。

 

新型エイブラムズの配備は2020年代中頃となり、センサー性能、カラーカメラ、レーザー測距技術、弾薬データリンクの他、天候センサーで天候にあわせた火器管制が可能となる。

 

陸軍が引き続きエイブラムズ多数を整備するのは大国同士の戦闘では重装甲車両が必要となるとの認識が多数のためだ。エイブラムズには心理的抑止力としての効果も期待される。その姿だけで敵勢力が攻撃意欲をそがれるためだ。

 

軽量装甲複合材料で一定の防御効果が期待でき、しかもこの分野で進展が急速に見られるが、重装甲に取って代わるには力不足だ。新型複合材料が主流となれば、多層構造で搭載するか、エイブラムズの場合は表層に追加すれば効果をあげそうだ。米陸軍の新型機動防御火力構想による軽戦車で新素材が採用されている。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

The U.S. Army Won't Let the Mighty M1 Abrams Tank Die


December 24, 2020  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarTanks

by Kris Osborn

 

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

Image: Reuters


2020年12月24日木曜日

クリスマスイブ記事 今年もNORAD北米防空司令部がサンタさんを追跡。でもこの伝統はいつ、どう始まったのでしょうか。

 


During last year's Christmas Eve, Canadian Brig. Gen. Guy Hamel of NORAD joins other volunteers taking phone calls from children around the world. (AP Photo/Brennan Linsley)

昨年のクリスマスイブの風景。カナダ軍のガイ・ハメル准将もボランティアとして世界各地の子どもたちからの電話対応にあたった。(AP Photo/Brennan Linsley)



米が恒例の北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)によるサンタさん追跡が気になる時期が来た。NORADは実際にサンタの飛行経路をオンラインで公開しており、アプリでも昔ながらの電話でもその時点でサンタがどこを移動中か教えてくれる。


だがこれはNORADの超天才がはじめたわけではない。新聞記事の誤植が原因だった。

ボランティアの空軍曹長ロデリック・シュワルドがコロラド州ピーターソン基地内のNORADサンタ追跡オペレーションセンターで各地からの電話問い合わせに対応している。Dec. 24, 2013. (Photo: Master Sgt. Charles Marsh)

 

だがNORADはなぜサンタを追跡するのか。


1955年12月24日、当時の米大陸防空例支部作戦センターのあるコロラドは通常通勤務体制だったが、当直のハリー・シャウプ大佐におかしな電話が入ってきた。


「電話をかけてきたのはコロラドスプリングの幼児で地元デパートの広告に番号があったのです。幼児はサンタクロースの居場所を聞いてきたんです」(NORAD広報官プレストン・シュラクター)

新聞広告ではこの番号でサンタさんにお話できるよとあったが、番号が間違っており、防空司令部にかかってしまうのだった。


シャウプは最初の通話に対応した。意地悪な対応もできたのだが、実際は違っていた。


「大佐はご両親にかわってもらい幼児には大陸防空司令部はサンタの安全を守っていると伝えたのです」(NORAD広報官プレストン・シュラクター)


その晩シャウプは部下と一緒にサンタの居場所を幼児一人ひとりに答えた。こうして伝統がはじまったのであり、1958年NORADに改組されても維持された。その後のテクノロジーの進歩でさらに人気を博すようになっている。今日の幼児は電子メール、スカイプ、ツイッター、フェイスブックやアプリ更にオンスターでサンタの行方を把握している。


サンタ追跡は大掛かりな事業で毎年11月にNORADSanta.orgが各家庭からの問い合わせに対応を開始してスタートする。政府、非政府あわせ70もの団体が寄付しサイト、アプリ、電話回線を準備する。制服組、国防総省文民、家族ボランティアが1,500人もクリスマスイブに子どもたちのサンタはどことの問いに答える。


シュラクターによれば200もの国と地域からウェブサイトへの訪問があり、ページビューは18百万、フェイスブックの特設ページには175万人のフォロワーがあるという。NORADサンタ追跡プログラムには126千もの通話が入り、電子メール2,030通に対応し、オンスターでも7,477もリクエストがあったという。


シュラクターはたまたま誤植だったとはいえ、いまや重要な伝統の一部となっており、各家庭の楽しい場面づくりに役立てて嬉しいと語る。


コールセンターは12月24日東部標準時の午前6時にオープンする。小児は 1-877-Hi-NORAD(446-6723) へ電話、あるいはnoradtrackssanta@outlook.comに電子メールを送ればその時点でサンタがどこにいるか教えてもらえる。ただし、関係者はサンタは子どもたちが寝ている時間にならないとあらわれないので当日は早くベッドに入らいないとお家にやってこないよと注意喚起している。


サンタクロースの居場所追跡を楽しんでください。トナカイには人参を、さんさんにはミルクとクッキーを忘れないで。■


この記事は以下を再構成したものです。


Does NORAD Really Track Santa?

Department Of Defense | By Katie Lange


F-22にリンク-16がやっと搭載される理由とは。しかし、これでラプターはやっと本来の機能を果たせそうだ。

 

 

 

空軍での供用開始から13年のロッキード・マーティンF-22ラプターに艦艇、地上部隊、その他機材との通信能力が与えられる。

 

空軍はロッキードとF-22約180機にリンク-16データリンクを搭載し、米軍・同盟国軍と位置情報や標的データの交換が可能になる。

 

リンク-16は米軍・同盟国軍の艦艇、防空システムで共通装備だが、F-22は非対象だった。リンク-16で位置情報をわざわざ教えるのはF-22のステルス性能を損なうと考えてきたためだ。

 

 

今でもラプターのパイロットはF-22専用の保安措置を高度に施したデータリンクで通信可能だ。だがF-16パイロットとは無線交信する必要がある。口頭で。

 

これではF-22運用に悪影響が出る。ラプターのステルス性能と強力なセンサーで僚機を戦闘に向かわせるには無音声交信が前提だ。空軍はF-22のステルス性を犠牲にしてまでも連携作戦効果を最大にする方針だ。

 

「リンク-16の発信機能でステルスF-22は航空作戦のクォーターバックとなり、『神の目』で状況を共有する」とAir Force Magazineのショーン・ウォーターマンはロッキードのF-22事業統括副社長オーランド・サンチェスの発言を引用している。

 

空軍はラプターのデータリンク問題を放置してきたわけではないが、契約手続きが障害となっていた。だが2017年にアップデートの突破口が見つかったとAir Force Magazineは伝えていた。

 

「F-22近代化改修の進捗が遅れ、制空能力に疑問が生まれかけたため、空軍もアップデートを一気にすすめる時期が来たと決意した。

「通常の方法では要求性能の細部を文書化し、詳細がすべて完成するまで納入できないが、USAFは新性能をローリング方式で進める『アジャイル』を採用した」(ウォーターマン)

 

空軍はF-22近代化改修を見直し、「アジャイル性能実現パイプライン」に変え、一部のアップデートではなく大項目を中心に近代化を一度に実施することとし、10年近くかかっていた実施がわずか数年で完了できるようになった。

 

Link-16のF-22への搭載が最優先事項となったとウォーターマンはいう。「2018年、F-22事業室は2016年国防予算認可法の804項に準拠し、ラプターアジャイル性能改修実現(RACR)契約の交付が可能になった。2019年度にRACRに近代化改修と機体維持の27億ドルから1.4億ドルを割り当てた」

 

2019年度予算でついにロッキードはリンク-16のラプター搭載を2020年から開始できるようになった。

 

すべて順調にロッキードがリンク-16をF-22に搭載できれば、2020年はラプターが世界最強戦闘機の触れ込みを初めて実現する年となり、僚機への支援機能も従来の水準を書き換えるだろう。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

We Haven’t Yet Seen the F-22 at Peak Performance

December 23, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-22MilitaryTechnologyWorldF-22 Raptor

by David Axe 

 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article first appeared last year.

Image: Flickr.