2022年6月19日日曜日

ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月18日現在)

 

The situation in the Donbas. (ISW) 

 
 

シアのウクライナ侵攻が始まり115日目となった。土曜日、ドンバスでの戦闘は衰えることなく、ロシア軍は3方向の進攻軸で激しく攻め込んでいる。 

しかし、ウクライナ側は、ロシアの計画を頓挫させるために、反撃も辞さない構えだ。 

 

 ドンバス地方の戦闘 

数週間にわたる激戦にもかかわらず、ロシア軍はセベロドネツクを完全に占領することができていない。ロシア軍が同市を包囲できなかったため、ウクライナの抵抗勢力が残り、西側から供給を受けながら戦い続けている。橋梁が破壊されたためにセベロドネツクへの補給は難しくなっているが、通信回線はまだ残っている。 

 一方、ロシア軍はウクライナ軍を後方から包囲するため、セベロドネツクの北西部と南西部に圧力をかけている。 

 「ロシア軍はリシチャンスクへのウクライナの連絡線を北のスロビャンスク方面と南のバフムト付近の両方から切断する努力を続けている。ウクライナ軍は、ロシア軍をスロビャンスクへの攻撃作戦から引き離し、ロシアの補給線を寸断する目的で、イジュム北西で反攻を続けているようで、わずかなながら効果を上げている」と戦争研究所は最新情報で評価している。 

 南部ではウクライナの反攻が続いており、ウクライナ軍は長距離砲撃や空爆でロシアの兵站や拠点を標的にしている。 

 

ロシア軍の損害 

ウクライナ軍は毎日、ロシア人犠牲者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。 

しかし、西側の情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナの主張する犠牲者の数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、約800台のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。 

 他のウクライナ側の主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。 

 さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。 

実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。 

 土曜日の時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア損害を主張している。 

  • 戦死33,350(負傷者、捕虜は約3倍) 
  • 装甲兵員輸送車3,573 
  • 車両と燃料タンク2,513 
  • 戦車1,465 
  • 大砲739 
  • 戦術無人航空機595機 
  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 216 
  • 多連装ロケットシステム(MLRS) 233 
  • 攻撃・輸送用ヘリコプター180 
  • 撃墜した巡航ミサイル129 
  • 対空砲台98 
  • 架橋装置などの特殊装備55 
  • ボートおよびカッター 14 
  • 移動式イスカンダル弾道ミサイル4 

 

destroyed Russian tanks Mariupol 

マリウポリの戦いで破壊されたロシア戦車。(ウクライナ内務省) 

 

過去数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は大幅に減速している。これは2つのことを示唆している。1つ目は、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっていること、2つ目は、ウクライナ軍が戦闘力や弾薬を使い果たしつつあることで、これは3カ月以上にわたるロシア軍との戦争で予想されたことである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようだ。 

 先月はスロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャー周辺で激しい戦闘が続いたため、ロシア軍の死傷者が最も多かった。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東にあるバフムト方面、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺に多く移行していった。 

その後、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるザポリジャー地区とその周辺でのウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は、再び西に移動した。 

 土曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻しセベロドネツクを後方から遮断しようとしているバフムト付近で最も大きな犠牲を出した。 

ロシア軍の東部での再攻撃の目的は、ドネツクとルハンスクの親ロシア派の離脱地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアの間に陸上回廊を作り維持することであると表明している。■ 

 

Stavros Atlamazoglou | June 18, 2022 

Stavros Atlamazoglou 

Greek Army veteran (National service with 575th Marines Battalion and Army HQ). Johns Hopkins University. You will usually find him on the top of a mountain admiring the view and wondering how he got there. 

 

  

2022年6月18日土曜日

Know Your Enemy:「 台湾海峡は国際水域ではない、全域に中国主権が及ぶ」と中国が主張を始めた

 ご注意 以下はCCPの見解を代弁する環球時報英語版からのご紹介です。文中で赤字部分は環球時報の表現です。文中の見解、意見は当ブログの主張ではありません。

   

 

連海洋法条約(UNCLOS)に「国際水域」は存在しない、と中国外交部の王文斌Wang Wenbin報道官は1日の記者会見で明言した。アメリカは、普遍的に適用されるべき国際法のルールを、自分たちで作った一方的なルールに置き換えている。国際ルールと秩序の破壊者がどちらかは自明であると、国際法の専門家は述べている。

 

 

ブルームバーグが月曜日に報じたところによれば、数カ月にわたり、中国軍当局者がアメリカ側との会談席上で、台湾海峡は国際水域ではないと繰り返し主張しており、バイデン政権内に懸念を呼んでいる。

 

米国と同盟国が台湾海峡の大部分は「国際水域」であると主張しているのに対し、外交部の王報道官は、中国が台湾海峡の主権、主権的権利、管轄権を享受していると報道官は述べた。

 

中国は、他国が台湾海峡を口実に台湾関連の問題を操作し、中国の主権と安全を脅かすことに断固反対する、と報道官は付け加えた。

 

台湾は中国の領土の一部であり、台湾海峡の幅は狭いところで約70海里、広いところで220海里であると同報道官は述べた。国連海洋法条約と中国の法律によると、台湾海峡の海域は、両岸から海峡中央に向かい、内水面、領海、連続水域、排他的経済水域などの区域に分けられる。中国は台湾海峡に対して主権、主権的権利および管轄権を有する。同時に、関連水域における他国の合法的な権利を尊重するという。

 

米国務省のネッド・プライス Ned Price報道官は24日、ロイター通信へ電子メールで次のように述べた。「台湾海峡は国際水路であり、航行と上空飛行の自由を含む公海の自由が国際法の下で保証されている地域であることを意味する 」。

 

同報道官は中国による「台湾に関する攻撃的なレトリックと強圧的な活動」に対する米国の懸念を改めて示し、米国は「国際法が許す限り、飛行、航行、作戦を継続し、台湾海峡の通過も含む」と述べた。

 

しかし、元海軍大佐で、グローバル・ガバナンス研究所の創設者であり、国際軍事作戦法センター所長の田世珍Tian Shichenは、水曜日に環球時報に、世界各地の専門家は、米国がこの問題にでお茶を濁そうとしていると見ていると語った。米国が言ってきた「ルールに基づく国際秩序」の本質を露呈している、と田は述べた。

 

さらに、国際法に「国際水域」という言葉は存在しないと田は説明した。UNCLOSの非締約国である米国が、同法の義務を回避し、海洋覇権を維持するため考案した「万能薬」なのだ。

 

国際水域とは「米海軍司令官マニュアルで使われている軍事用語だ」と田は指摘する。

 

また、UNCLOSについて異なる解釈がある場合、米国は国連憲章第2条第3項の 「国際紛争を解決するための平和的手段によって」に言及したことはない。米国は世界で唯一、「航行の自由」計画をでっち上げており、「過度の海洋権益主張」をしていると考える国に対し軍事的威嚇を行い、国連憲章の基本規範を根本的に損なっていると田は指摘した。

 

「1982年国連海洋法条約に未加盟の国として、米国は自国の一方的なルールを普遍的に適用されるべき国際法のルールに置き換えている」(田)。

 

田は、米国は台湾海峡を「国際水域」とすることで、中国大陸が台湾を圧迫しているという幻想を形成しようとしているが、「中国は台湾海峡に主権と管轄権を持ち、同水域における他国の合法的権利と利益を尊重している」と事実は無視していると指摘した。

 

また、台湾海峡は「国際水域」ではないが、UNCLOS第36条により、事実上、国際航路として利用されている。米国を含む各国の軍艦は、排他的経済水域内で航行の自由を享受できるが、適用される沿岸国の規制と注意義務に従うと、田は強調した。

 

中国社会科学院アメリカ研究所副所長兼上級研究員の袁正Yuan Zhengは環球時報に、「中国は同海域での外国船舶の航行に反対したことはなく、台湾海峡は重要な国際水路であることを強調している」と述べた。

 

航行の自由が保障されている台湾海峡を、航行の自由に問題がある地域と呼ぶことで、米国は中国をルール破りの国として描き出す意図があると田は指摘した。

 

台湾の「外事」当局のスポークスマンJoanne Ouは、中国大陸の立場を 「誤り」と呼んだ。水曜には、台湾の「行政機関」のトップである蘇曾長Su Tseng-changが、海峡は「決して中国の内海ではない」と述べた。

 

国務院台湾事務弁公室の馬暁光Ma Xiaoguang報道官は同日、民進党当局が「外部勢力と協力して問題を誇大化している」との見方に反論した。

 

馬報道官は、「これは台湾海峡両岸の同胞の利益を損ない、中華民族の利益を裏切る卑劣な行為だ」と指摘した。■


'International waters' merely a unilateral colloquial term used by US Navy: experts - Global Times

By Guo Yuandan and Xu Yelu

Published: Jun 15, 2022 11:00 PM


IPEFには安全保障の意義もある。中国へ対抗する域内経済メカニズムの機能を正しく理解しよう。

 

NHK


IPEFは安全保障の意味を有する経済構造だ。


国へ対抗し、地域の経済的関与を促進するため米国が主導する取り組み「インド太平洋経済枠組み」が正式に始動した。インド、ベトナム、インドネシア、タイ、ブルネイ、フィリピンが、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、マレーシアが枠組み交渉に参加し、貿易を中国から米国に振り向けさせる。新協定が成功するためには、経済的要素や機会が新しく生まれる中で、既存の安全保障同盟枠組みを活用する必要がある。


経済同盟

インド太平洋を支配しようとする勢力にとり、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の参加は不可欠だ。だが米国は遅れを取り戻す必要がある。過去数十年間、米国は中東と北大西洋へ優先順位を置いてきた。アジア太平洋諸国は、米国からの経済支援は期待できないことを理解していた。中国にとってASEANは経済面で重要な同盟国だが、実はその真価は輸出志向の中国に海上アクセスを提供することにある。中国がASEANに注目するのは、偶然ではない。


ASEAN and the IPEF


 ASEAN諸国の経済発展には、強力な経済大国と同盟を結ぶしかない。中国の経済問題は、投資プロジェクトの停滞、貿易の不安定化、環境・社会問題による「一帯一路」構想の頓挫などがあり、信頼性が疑われている。COVID-19の大流行やウクライナ戦争などを考えれば、ASEANは安定したパートナーを必要とする。米国経済は比較的安定しており、米国は中国封じ込めのため、アジアに軸足を移そうとしている。

 インド太平洋経済枠組み(IPEF)は、ASEAN諸国を米国のルールや基準に合わせる方法だが、加盟国間の経済活動を活性化させるのが重要だ。IPEF参加国は、デジタル貿易と貿易円滑化、クリーンエナジーと脱炭素化、サプライチェーン強靭化、汚職防止と税金を対象の交渉を継続することだけ約束している。各分野で何を交渉するかは署名国が決定し、各分野でオプトインやオプトアウトが可能だ。(ASEAN加盟国は、中国を怒らせたり関係を危うくしたくないので、柔軟性が初期段階で重要となる。)


China-ASEAN Trade & Investment


礎石

しかし、IPEFに安全保障の要素があることは否定できない。加盟国の参加を確保しようとするワシントンの戦略は、安全保障上の利益の共有を軸に、既存同盟国の強化、インドとの関係改善、南シナ海の権利主張国との関係改善という3本の取組みで構成している。

 既存の安全保障上の同盟国がIPEFの自然な基盤となる。日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドなどだ。各国はいずれも、貿易の多様化や政治・軍事行動の活性化により、インド太平洋がより強く、より弾力的になるのを望んでいる。

 日本と韓国の地理的位置が特に重要だ。日本と韓国は黄海と東シナ海に面し、太平洋に直接アクセスする中国を制限するのに役立つ。日本と韓国は、歴史的な不満や中国への対抗で相違があるが、ともに地域における米国の軍事プレゼンスを支持し、経済が非常に発達しており、中国が地域覇権を握るのを阻止することに関心を持つ。IPEF枠組みを通じ、日本と韓国に有利な貿易ルートを開拓し、中国に依存してきた地域諸国を日本と韓国の経済軌道にしっかりと固定できる。

 オーストラリアとニュージーランドは、米国の安全保障機構にさらに密接に統合されている。英国、カナダとともに情報同盟「ファイブ・アイズ」のメンバー国であり、歴史的なルーツ、共通の文化、安全保障上の利益を共有している。米国と豪州は、太平洋の海洋問題で緊密に協力している。豪州は米国の海軍資産に戦略的拠点を提供し、米国は海上貿易に大きく依存する豪州の商業利益を守るため軍事支援を提供している。キャンベラは、北京に代わる存在としてIPEFに特に熱心だ。注目すべきは、ニュージーランドがIPEFにやや懐疑的なことだ。中国との貿易関係があるためだ。ニュージーランドは、潜在的な影響をもっと容易に判断できるよう、今後のIPEF交渉で選択肢の明確かつ詳細な定式化を望んでいる。協定は、ASEAN諸国との貿易リンクと新しいサプライチェーンを提供することで、中国に代わる実現可能な選択肢を提供する可能性を秘める。しかし、ニュージーランドには、韓国と同様に、対中関係を慎重に管理する必要がある。

 第二に、インドとの関係強化も重要だ。インドは地理的位置のため、中国を陸路で西に封じ込める米国戦略にとって極めて重要だ。インドは、米国、日本、オーストラリアとともに四極安全保障対話に参加しているが、グループ内で最も慎重な存在だった。米国は、IPEFが安全保障協力の促進につながる経済的インセンティブになるよう期待している。一方、インドはIPEFを、他の地域を走る輸送や供給ラインをIPEFに移動させることによって、自国影響力を東・南東に拡大する機会と考えている。さらに、IPEFの取り組みは、ネットゼロ経済への移行、電気自動車製造の世界的ハブとすること、クリーンな再生可能エナジーへの移行など、インドの国家経済開発イニシアティブの多くと合致している。

 また、インドがIPEFに参加することで、タイ、ベトナム、インドネシア、シンガポールなど、インド貿易の重要性が増している国々の参加を促進することも重要だ。こうした各国はインフレが進んでおり、食料と燃料の安定的な輸入が必要だが、インドが提供できる。インドがIPEFを通じ提供できれば、4カ国は対中依存度を大きく下げられる。

 残るIPEF参加国であるフィリピン、ブルネイ、マレーシアは、中国の約束の失敗に幻滅している国であり、したがって米国には絶好のタイミングとなる。各国は安定した外国直接投資の流入でインフラの近代化を必要としている。一帯一路プロジェクトはフィリピンとマレーシアで停滞しており、ブルネイは約束額の投資を受けていない。米国、日本、韓国は自由で開かれたインド太平洋の枠組みを通じ、これらの国々における中国の一帯一路の取組みに対抗し、場当たり的な取り組みを進めている。この枠組みは、地域内国家の福利を向上させる意図では有望なものの、十分に構造化されていないままの仕組みとなっている。IPEFは、こうした各国の経済活動を改善し、インフラのニーズを満たすため先進国経済との結びつきの強化、アクセスを支援する。

 しかし、IPEF加盟のその他国と同様、経済関係の改善には安全保障の側面もある。この三カ国は、長引く南シナ海紛争で海洋領有権を主張している。もちろん、中国との関係で緊張を強いられる。だが、3カ国が単独で中国に対抗し、揺さぶりをかけることはほとんどない。米国や日本、韓国など安全保障上の強力な同盟国の支援があれば、中国から離れ、米国に接近するよう誘導できるだろう。

 IPEFに含まれていないASEANのメンバーもいる。カンボジア、ミャンマー、ラオスだ。各国はASEAN内で発展が遅れており、特に海外直接投資で中国に最大に依存しているため、参加要請を受けなかった。中国と関係が近すぎ、国内事情もワシントンにとって障害になりすぎるためだ。

 その他国も有望な候補であることは間違いないが、疑問がないわけでもない。その参加は、協定のルールと構造、裕福で熱心で地理的に便利なパートナーである中国を回避するのに本当に役立つのかにかかる。米国にとっては、これ以上ない好機といえよう。■


A New Trade Pact in the Indo-Pacific - Geopolitical Futures

By Victoria Herczegh -June 13, 2022