2022年9月28日水曜日

B-21レイダーの公開前に同機の性能、意義、効果をまとめてみた

 

 

待望の極秘B-21レイダー爆撃機(潜在的に最高性能のステルス機)は

今年後半に実機が公開される 


 

ースロップグラマンが主導するB-21の取り組みは、長距離打撃爆撃機(LRS-B)という控えめなタイトルで2015年に始まり、それ以来、秘密主義のベールに筒あmれて機能している。最近では、高解像度カメラがここまで普及しているもかかわらず、B-21の画像は7年間の開発期間中、6機のテストモデル機が完成間近であるにもかかわらず、1枚もインターネット上に流出していない。 

 この新型ステルス爆撃機は、伝説的な前身であるノースロップ・グラマンのB-2スピリットの成功の上に成り立っているが、少なくとも「2世代」先のステルス技術を活用していると言われる。それ自体、重要な主張である。B-2は四半世紀前から運用されているにもかかわらず、いまだに世界で最高のステルス機と言われている。 

 

 

34年ぶりの新型ステルス爆撃機

 

1988年11月22日、ノースロップのパームデール組立工場の巨大格納庫の扉が、歓声に包まれ開いた。陽光に包まれ、黒くなめらかな機体がゆっくりと姿を現した。1920年代にソビエトのチャイラノフスキーBIChシリーズ、1940年代にノースロップ社のYB-49など、歴史上開発された全翼機に似た翼幅172フィートの機体は、本来不安定な設計を全く別の目的に活用した。 

 当時空軍長官のエドワード・C・オルドリッジ・ジュニアは、「単にアメリカの最新戦略爆撃機を発表しているのではありません。戦略的抑止の新時代を切り開いているのだ」と挨拶した。 

 初期の全翼機は、空力効率の実験用だった。全翼機の設計では、垂直尾翼で抗力を増加させる代わりに安定性をもたらす装備を排除している。そのため、全翼機は、燃料効率を高める手段と考えられていた。確かに全翼機は空力的に効率的だが、胴体がないため、翼自体の垂直方向の厚みや、乗客や機材を収容するための機体高が必要となり、空力効果が限定されてしまう。

 

 

試験飛行中のノースロップ社製YB-49 (Wikimedia Commons) 


 しかし、新型爆撃機B-2の洗練されたデザインは、無給油航続距離7,000マイル近くを誇るにもかかわらず、燃費重視で設計されたものではない。ステルス技術を駆使し、世界最先端の高性能防空システムの突破を目的に作られたのである。 

 アメリカ政府は1980年に初めてステルス技術の存在を認めたが、それまではステルス機は誰も見たことがなかった。1983年に就役したF-117ナイトホークが一般公開されるのは、2年後だった。 

 記者や野次馬は、機首を向けたまま爆撃機の後ろ姿を見ることは許されなかった。公開の翌日、エドワード・C・オルドリッジ・ジュニア空軍長官は、「報道陣以上にソビエト軍を近づけさせない」と言ったとワシントン・ポストが伝えていた。新型爆撃機の機体だけでなく、採用された技術があまりにも重要だったのだ。 

 当時は、ソ連がB-2技術を真似て、自国のステルス爆撃機を開発する懸念があった。 

 B-2 Spirit unveiling

B-2スピリット公開時のパブリックビュー (Wikimedia Commons) 

 34年がたち、アメリカはステルス爆撃機技術の独占を何とか保っているが、リードは消えつつある。中国とロシアがステルス爆撃機運用を開始しただけでなく、さらに高度な防空システムで、スピリットのステルス性が相殺されている。 

 アメリカは新しいステルス爆撃機を必要としている。来る12月の第1週目には、B-2と同じパームデール組立工場から、新型機が送り出される。 

ノースロップ・グラマンB-21レイダーもまた、歴史に見られる全翼機のデザインに似ている。しかし、スピリット同様に、レイダーの単純に見える外形には、戦場での能力における技術の大きな飛躍が隠されている。レイダーは、60,000ポンド積載量を誇るB-2スピリットより小型になる予想だ、サイズの不足を性能で補うことができるだろう。 


B-21はF-35やF-22より高ステルス機になる 

B-21は、B-2が飛行を開始して以来、ステルス設計における30年以上にわたる価値ある進歩の恩恵を受け、新しい爆撃機を検出し、ターゲットにす敵の努力を無効にできる合理的かつ効果的な形状となる。 

 ステルスの基本は、ソ連の物理学者であり数学者であるピョートル・ウフィムツェフの研究から生まれた。1971年9月に空軍の外国技術部が翻訳した「回折の物理理論におけるエッジ波の方法」という40ページに及ぶ学術論文は、本国ではほとんど評価されなかった。しかし、翻訳がスカンクワークスの数学者でありレーダー専門家でもあるデニス・オーバーホルサーDenys Overholserの手に渡った。ウフィムツェフは「ステルスの父」と呼ばれるが、その研究を応用し、3次元航空機のレーダー断面積を計算する数式を考案したのはオーバーホルサーであり、将来の利用への道を開いた。 

 しかし、計算は難しく、レーダー偏向設計の複雑さは、コンピュータが登場してもなお、手に余った。ホープレスダイアモンドとそこから生まれたF-117ナイトホークのギザギザの角度は、このステルス計算と空力的要求の間の難しい妥協の結果だ。ロッキードとF-117の契約を争い敗れたノースロップも、ステルスの野望をあきらめず、そこで得た教訓を新しいプラットフォームに展開し、ロッキードのナイトホークを上回る性能の飛躍的な向上を実現した。 

 その後、計算機性能は飛躍的に向上し、より小型のステルス機の設計が可能になった。今日、ステルス性と空気力学の間の妥協は、はるかに少なくなっており、B-21は、着実に改善された設計概念の最新の成果だ 

 進歩の結果はF-35やF-22のような現行のステルス戦闘機に見えるが、ノースロップB-2がこれらの第5世代戦闘機のいずれよりも高ステルスであるというと、多くの人が驚くだろう。 

 

第4世代(非ステルス)戦闘機と第5世代(ステルス)戦闘機のレーダー探知時の単純比較 


全翼機のステルス効果とは 


B-2スピリットの初飛行は1989年で、F-22が就役する16年前、F-35が海兵隊で初期運用能力を獲得する26年前だった。ステルス戦闘機は、戦闘機領域における全体的な低観測性では、実質的に比類なき存在だが、B-2は最先端ジェット機のいずれより検出および追跡が困難な性能を維持している。B-21レイダーで優位性をさらに拡大することになる。 

 戦術戦闘機には曲技飛行が要求されるため、F-35のような戦闘機には操縦性と制御のため垂直尾翼が必要である。  

 戦闘機設計は、高周波レーダーシステムに対する探知性を制限するため最適化できるが、それでも、低周波の早期警戒アレイに対しては、リターンが発生する傾向がある。実際、レーダーリフレクターや外部燃料タンク、弾薬なしで飛行していても、航空管制レーダーがステルス戦闘機を発見することは珍しくない。 

 

 

by Rebecca Grant, Mitchell Institute, 2010


 

 一方、B-2スピリットやB-21レイダーのようなステルス爆撃機は、戦闘機に求められるような高Gスタントを行う必要がないため、尾部などステルス戦闘機によく見られる部分を省略できる。そのため、高周波の火器管制レーダーで狙われにくいだけでなく、低周波レーダーでも発見するのが難しい。 

 

 

ステルス性能の秘密をB-21がフル活用する 

 

 

 

(Northrop Grumman) 

 

 

B-21レイダーがB-2よりステルス性を高める理由は、デザインだけではない。現代の航空機は、デザインだけでは真のステルス性は得られません。レーダー吸収材(RAM)の層で覆われ、レーダーリターンを大幅に低減させることも必要だ。機体に小さな傷やひび割れがあると、ステルス機の外観が損なわれてしまうため、素材は機体の仕上げを滑らかにするのに役立つ。さらに重要なことは、RAMは航空機に当たるレーダー波を熱へ変換し、放散させることだ。 

「RAMは、航空機が電磁波エネルギーを吸収して反射信号の強度を最小にする原理で機能する」と、エイドリアン・モリツAdrian Mouritzは学術書 "Introduction to Aerospace Materials "に記している。 

現在のステルス戦闘機のRAMは、受信電磁波エネルギー(レーダー波)の70~80%を吸収する驚異的な性能を誇るが、非常に高価でメンテナンスに時間がかかり、高熱や水、塩などにさらされると破損しやすい欠点もある。RAM技術の開発は、防衛技術の世界では最も秘密にされているが、ノースロップ・グラマンが過去30年にわたり、この領域で前進を続けているのを示唆する証拠がある。 


 RAM coating applied to a B-2 Sprit

RAMコーティングを施されたB-2スピリット (Northrop Grumman) 


2004年、ノースロップ・グラマンは、のB-2に代替高周波材料(AHFM)と呼ばれる新しいRAMコーティングを施すと発表した。新型RAMは、毎回のメンテナンスで約3,000フィートにわたるRAMテープを機体に貼る必要がなく、同じレーダー吸収性能を持ちながらメンテナンスを低減させることができる。しかし、そこで終わりではなかった。 

2017年、ノースロップ・グラマンは、B-21レイダーの製造場所と同じカリフォルニア州パームデールに、新たな「コーティング施設」を建設するため3580万ドルを受注した。ただし、この契約と当時のノースロップのリリースでは、爆撃機の名前に触れていない。2021年になると、ノースロップ・グラマンはコーティング工程の進歩について、もはや恥ずかしがることはなくなった。B-21のコーティングのエネルギー吸収能力改善の可能性については言及しなかったが、ノースロップの爆撃機部門担当副社長スティーブ・サリバンSteve Sullivanは、新型爆撃機に活用される材料がB-2を大きく改善することは明らかだと述べていた。 

「B-2や他のステルス機で学んだ教訓を応用し、デジタルエンジニアリング技術を用い、生存率と空力性能の両方の観点からB-2を大幅に改善した設計を実現しただけでなく、B-2システムのステルス性能と同様に保守性において革命的なコーティングシステムも実現しました」と、Breaking Defenseに語っていた。 

以前の紹介したように、最近登場したセラミックベースのRAMコーティング(電磁エネルギーを90%以上吸収すると言われる)は、ステルスにおいて大きな進展となる可能性があります。この素材は砂より硬く、華氏1,800度以上の温度に耐え、既存のポリマー製RAMよりメンテナンスが大幅に削減されそうだ。 

2020年、ノースカロライナ州立大学のチームは、空軍科学研究局からセラミックRAMコンセプトの開発継続契約を獲得した。この10年後に就航するB-21にこの素材が搭載される可能性は低いようだ。しかし、2012年時点で、一般雑誌Popular Scienceが、ノースロップグラマンの次期爆撃機を、従来の鉄をセノスフィアと呼ばれる中空のセラミック球体に置き換えた新RAMを開発するCeno Technologiesの取り組みと結びつけていた。 

 この球体をさまざまな材料で覆えば、軽量で耐久性のあるRAMができ、さらに特定の周波数でのレーダー波を吸収するようカスタマイズできる。B-21が実際にこのような高度RAMを使用するかは不明だが、ノースロップグラマンがこの件について口を閉ざしていることは予想される。RAM科学は、電子戦同様に、新しい進展を企業が口にしない傾向がある領域である

 

B-21 concept rendering

(Northrop Grumman) 


B-21は太平洋の抑止力で極めて重要な存在となる 

太平洋における中国の海軍プレゼンスは、隻数ですでにアメリカの海軍を上回っているが、中国がアメリカの戦力投射能力に対して与えている最大の脅威は、隻数ではなく、対艦兵器システムの備蓄を増やしていることだの対艦弾道ミサイルは、DF-21Dのように1000マイルを超える射程を誇り、DF-ZF含む最新の極超音速対艦兵器は、現在の技術ではほぼ防御不可能と考えられている。 

 これらの兵器で、中国沿岸から1000マイル以上に及ぶ領域拒否の泡を作り、米空母がF-35CやF/A-18スーパーホーネットの戦闘出撃のため安全に接近して航行することを阻んでいる。アメリカの11隻のスーパーキャリアーのうち、たった1隻を比較的少数のミサイルで失うことは、第二次世界大戦でHMSプリンス・オブ・ウェールズやレパルスが日本の爆撃機に沈められたのと同様に、アメリカ海軍の軍事ドクトリンの基礎に壊滅的な打撃を与えかねない。実際、中国が採用している比較的低コストで高性能な対艦兵器の出現により、スーパーキャリアーの時代は終わったと主張する人も出てきた。 

 しかし、B-21レイダーは、低い観測能力、ペイロード能力、長距離ミッションセットのおかげで、この領域拒否の優位性を相殺できる。また、AGM-158B JASSM-ERのような長距離、低観測性兵器を運用できるため、探知されないまま文字通り数百マイル離れた場所から中国の既知の対艦兵器システムを攻撃することが可能である。 

B-21レイダーと巡航ミサイル搭載潜水艦による早期攻撃で、米国は空母打撃群が接近し運用する道を効果的に切り開くことができる。 


B-21レイダーは新世代の航空戦力の先駆けだ 


20世紀後半、アメリカはF-15やF-16のような高性能戦闘機からB-2スピリットのような超ステルス爆撃機まで、航空パワー技術のグローバルリーダーとして台頭した。そして今、B-21が就役に向かっており、遠からずアメリカの格納庫を埋め尽くす多数の先進的機材のさきがけとなる。 

 B-21レイダーは2020年代半ばに就役し、次いで空軍の次世代航空優勢戦闘機が2030年代半ばに、海軍のF/A-XX戦闘機が直後に就役する予定だ。 

B-21レイダーはB-2スピリットを置き換えるだけでなく、超音速重装備のB-1Bランサーにも交代する。空軍は新型爆撃機を100機以上調達する予定で、これまでに納入されたB-2の5倍にあたる。B-21レイダーは常にオンタイムかつオンバジェットと報告されている。 

 B-21レイダーのお披露目は、1988年の前任機のお披露目と同様にエキサイティングなことだ。B-2同様に、この新しい爆撃機は、アメリカの航空戦を一変し、潜在的な敵対者の戦闘計算を複雑にし、抑止力と戦闘能力の双方において、ステルスの水準を高める可能性がある。 

 34年前に発表されたB-2時と異なり、筆者はもう大人である。 

 だから、ノースロップグラマン...招待状を送ってもらえませんか?■ 


Everything you need to know about the B-21 Raider being unveiled in December - Sandboxx 

Alex Hollings | September 27, 2022 

Alex Hollings 

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University. 

 

 

北朝鮮の挑発的なミサイル発射実験は政治的脅迫戦略の一環だ

 

North Korea Missile

North Korean Missile Launch. Image Credit: Creative Commons.

 


北朝鮮がまたやってくれた、当然だろう。韓米同盟と国際社会がハリス副大統領の訪朝に備えて7回目の核実験や潜水艦発射弾道ミサイルの実験の可能性を待っている間に、金委員長はまたもや弾道ミサイルの疑いのある実験を決行して9月25日に東海上に発射したのだ。

 

 

北朝鮮の戦略の中心はこれである。南と同盟を転覆させる政治戦と、緊張の高まりと脅威、挑発を利用して南と米国、国際社会から譲歩を引き出す恐喝外交を組み合わせて実行しているのである。その一方で、政権の唯一の戦略目標であるゲリラ王朝と収容所国家の支配下における半島の支配を実現し、政権の存続を確保するために、高度な戦闘能力を開発し続けるのである。政治戦、恐喝外交、高度な戦闘能力というこれら3つのラインは、相互に支え合い、補強し合っている。

各国の指導者やメディアが通常一番気にするのは、政治的・経済的譲歩を得るための政権の恐喝外交を支援するため、挑発行為を継続的に採用することである。したがって、同盟はそれらに対処するための包括的な計画を持たなければならない。

同盟は、挑発を脅威ではなく機会としてとらえるべきである。挑発は、金正恩の政治戦争と軍事戦略が失敗することを実証する機会を同盟に与えるものである。これは何よりもまず、いかなる譲歩もしないことによって行われる。

韓米は、これが北朝鮮の戦略の基本的な部分であり、特定の目的のために挑発を行うことをマスコミ、識者、国民に理解させるべきである。政策の失敗を意味するのではなく、金正恩が政治戦戦略を継続的に実行するための意図的な政策決定を意味するのである。以下は、以前、対応策の枠組みを再掲したものである。

まず、過剰に反応しないこと。しかし、演習の中止を勧める人たちの批判に屈してはならない。金正恩の戦略を常に指摘せよ。孫子の言うように 「戦争で最も重要なことは敵の戦略を攻撃することであり、次に重要なことは敵の同盟関係を破壊することである。国際社会、報道機関、韓国とアメリカの国民、エリート、そして北に住む韓国人に、金正恩のやっていることを知らせることだ。

 

第2に、北朝鮮の緊張、脅威、挑発の高まりに直面しても決して引き下がらないこと。

第3に、同盟の対応を調整することである。良い警官と悪い警官のアプローチが適切な場合もあるかもしれない。ソウルとワシントンDCで不可避的に生じるであろう国内の政治的批判を和らげるよう努めること。

 

第4に、北朝鮮の弱点を突くことである。金正恩とその体制に対して、エリートや軍部から内圧をかける。党、エリート、軍部の間にくさびを打ち込むよう常に努力する(これらはすべて絡み合い、表裏一体であるため困難である)。

第五に、強さと決意を示すことである。軍事力を示すことを恐れてはならない。北のプロパガンダを決して誤解してはならない。演習を減らすという要求に屈したり、北朝鮮の要求に基づいて、合同軍の即応性を少しでも低下させるような措置をとったりしてはならないのだ。北が演習の中止を望むのは、演習が脅威だからではない。同盟を弱め、米軍を半島から追い出したいのであり、効果的な訓練ができなければ当然の結果であろう。

第 6 に、挑発の性質に応じて、外交、軍事、経済、情報・影響活動、サイバー、またはその 組み合わせなど、最も適切な手段を用いて決定的な対応を開始する準備をすることである。

優れた政治戦の重要な要素の1つは、敵の戦略を攻撃することである。そのためには、敵の戦略を認識し、理解し、暴露し、情報によって攻撃することが必要である。

北朝鮮の戦略を認識し理解しなければ、政策立案者、報道機関、そして国民に適切に説明することはできない。ここでもまた、政権の性質、目的、戦略に関して、同盟は一致しているように見える。このことは、挑発行為を説明し、暴露できるように、挑発行為を理解しなければならないレンズを提供するものである。戦略を明らかにすることは、同盟の行動に対する国民の支持を高め、譲歩を求める識者の声に対抗するために極めて重要である。これは、同盟の行動の「理由」を提供するものである。

政権の戦略を攻撃するには、情報・影響力活動キャンペーンが必要である。同盟は、適切な影響力のある活動を開発し、採用することに重点を置く戦略作業グループを採用すべきである。それは単に反応的なものであってはならず、政権の戦略の失敗を強調し続けるために、挑発の合間に継続的に行われる必要がある。

 

North Korea Hypersonic Missile

Image: KCNA/North Korean State Media.


情報・活動キャンペーンの重要な要素の1つは、北朝鮮の核兵器開発プログラムへの対応でなければならない。同盟が公に北の核兵器を論じることは、金正恩の正統性を強化することになる。金正恩の宣伝煽動部は、同盟と世界が北の核兵器という「信頼の盾と宝の剣」を恐れているというメッセージを形成することができる。北の人々の犠牲と苦しみを正当化するために、核兵器開発を支援する努力が外部からの攻撃から自分たちを守ることに成功していると伝えることができるのである。


核兵器が金正恩とその体制を正統化する一方で、人権は正統性を損ねる。同盟が核問題のたびに「人権アップフロントアプローチ」を採用すれば、同盟は人権を提起することができる。基本的なメッセージは、金正恩が権力を維持するためには人権を否定しなければならず、韓国国民が苦しんでいるのは、金正恩が韓国国民の福祉よりも核兵器とミサイル開発、政権エリートと軍への支援に国の資源を優先させるという意図的な決定を行ったためであるということである。同盟は、このテーマとメッセージを継続的に強調しなければならない。


情報と影響力のある活動を通じて優れた政治戦争戦略で挑発に対応することは、金正恩の戦略が自分たちの利益にならないことを示すことで、政権エリート、軍部指導部、韓国国民に累積的効果を与えることになる。これは、時間が経てば金正恩が耐えられないかもしれない圧力をかけることになる。何よりも、金正恩に譲歩してはならない。一旦譲歩すれば、彼は自分の戦略を成功だと判断し、その実行をさらに強化する。

その上で、もう一つ重要なことがある。 

 

優れた政治戦の戦略には、他に2つの重要な側面がある。第1に、韓国は北朝鮮の破壊工作に脆弱な政治機構を強化しなければならない。統一戦線部と第225局の行動は、政治的反対勢力を作り出すことによって韓国政府の正統性を損なうことに重点

を置いている。


もう1つは、単純に同盟の強度を維持することである。政権は、朝鮮半島から米軍を撤収させることを最終目的として同盟を分裂させようとしているため、韓米の政治・軍事指導者が同盟の強さを継続的に強化することが不可欠である。インドパシフィックの全域および世界的な混乱にもかかわらず、ユン新政権とバイデン政権は一貫してハイレベルの外交・軍事的関与を行ってきた。これは持続されなければならない。

 

North Korea Army

Image: Creative Commons.


韓米同盟は北朝鮮のあらゆる挑発がもたらす機会を利用して、金正恩の政治戦、恐喝外交、戦争戦略が失敗することを示すべきである。 強さと決意を示し、北朝鮮の要求に決して屈しないことが挑発対応の基本方針であるが、同盟は政治戦および情報・影響力対応の一環として、人権に関する先行的なアプロー

チも含めるべきである。


金正恩は、いかなる行動も政権の正統性を損なうと認識しなければならない。■

 


North Korea's Missile Tests Are Part of a Political Warfare and Blackmail Strategy - 19FortyFive

 

ByDavid Maxwell

 

David Maxwell, a 1945 Contributing Editor, is a retired US Army Special Forces Colonel who has spent more than 30 years in Asia and specializes in North Korea and East Asia Security Affairs and irregular, unconventional, and political warfare. He is the Editor-in-Chief of Small Wars Journal. He is a Senior Fellow at the Foundation for Defense of Democracies, a Senior Fellow at the Global Peace Foundation (where he focuses on a free and unified Korea), and a Senior Advisor to the Center for Asia Pacific Strategy.

In this article:featured, Kamala Harris, Missile Test, Missiles, North Korea, South Korea

WRITTEN BYDavid Maxwell

David Maxwell is a senior fellow at FDD. He is a 30-year veteran of the United States Army, retiring in 2011 as a Special Forces Colonel with his final assignment serving on the military faculty teaching national security strategy at the National War College.



2022年9月27日火曜日

台湾武力侵攻を考えていた習近平はプーチンの失態に不満のはず。中国本土が台湾武力侵攻を行う機会は増える可能性が低い。

iStock

 

 

 

インドの成長、気候変動による生態系への影響、人口動態の悪化、さらには中国の政治的自由化で台湾が手の届かない存在になる前に、習近平は行動を起こせるのは一世代以内しか時間がない

 

 

 台湾をめぐる米国の戦略的曖昧さという政策は、共産中国をソ連から引き離すという当初の目的を失ってしまい不条理なものになっている。米国政府の支持者が主張するような、想像上の政治的均衡に訴え平和を維持しようという微妙な宣言でもない。台湾は、自由民主主義国家であり、世界の経済システムの重要な構成要素であり、共産中国の太平洋方面へのアクセスに対する地政学的な栓という、望ましい特性をすべて持っており、同盟国として保護に値する。

 事実上、すべての主要な戦争は、取り返しのつかない形で機会の窓が閉ざされるのを懸念した指導者によって始められた。バージニア大学のデール・コープランド教授は、A.J.P.テイラーの外交史に基づき、この恐怖が、第一次および第二次世界大戦において、ドイツがロシアに対する相対的衰退を阻止する動きを誘発したと、2000年の著書『The Origins of Major Power War』で述べている。1956年のイスラエルのエジプト攻撃は、カイロがチェコスロバキアから輸入した兵器を完全に同化させる前に対応するという予防的な計算で行われたものである。1965年のパキスタンのインド攻撃は、デリーの軍備増強(1962年の戦争で中国に敗れたインドへの対応)がイスラマバードを追い詰める前にカシミール紛争を解決する絶好の機会として行われた。1980 年のイラクのイラン侵攻は、イラクの 1979 年のイスラム革命によるイランの弱体化を利用し、テヘランが 1975 年のアルジェ協定の厳しい条件をバグダッドに押し付けたことを是正するものであった。

 同様に、中国共産党の習近平総書記は、幾重にも閉ざされたチャンスの窓を前にしている。長期的に見ると、中国の成長率はアジアの主要な競争相手であるインドのほぼ半分で、北京は経済成長率の経年的な低下に直面している。また、生産年齢人口が3,500万人減少し、食糧安全保障を脅かす生態系の危機にも直面している。短期的には、台湾の再軍備、米国による空軍、海軍、海兵隊への多額の投資、太平洋沿岸部における反中国同盟の漸進的な合従連衡に直面する。また、習近平は3期目政権を固めた後でなければ、台湾に対して行動を起こすことはないだろう(他の中国共産党の派閥が許せば、数ヶ月はかかるかもしれない)。また、習近平はロシア同盟国をカラー革命で失う前に行動する強い動機に直面しており、2022年2月のプーチン大統領によるウクライナ侵攻によって加速された可能性がある。ロシアを失うと、中国が米国の海上封鎖から生き残るために必要な、ペルシャ湾以外の化石燃料と食糧の供給に悪影響が出る。このようなシナリオでは、北京はカザフスタンやベラルーシとのパートナーシップも失い、モスクワはインド陣営に正面から乗り込み、シリアやキューバなどソ連時代の多くの同盟国とも距離を置く可能性が出てくる。

 しかし、中国による台湾封鎖や侵攻は、中国が急速に取り組む3つの能力により左右される。第1に、中国は米国と同盟国の潜水艦を排除するため大陸棚を十分に支配する必要があり、このため対潜水艦戦能力の大幅な見直しが必要だ。第二に、中国は台湾上空とその周辺を無制限に制空支配できる程度まで空軍力を増強する必要がある。

 第三に、中国は核兵器の増強に注力している。大国同士の対決において、プーチンのウクライナ侵攻は、大量の核兵器が自動的に相手国の核兵器を無力化するわけではないことを証明した。ロシアがウクライナ、特に西ウクライナ侵攻で大きな成功を収めていれば、米国の「核の傘」の下でNATOの陸上介入が行われる可能性が高かった。敵対国の安全な第2次攻撃用核兵器が相殺し合うとする「安定-不安定」のパラドックス理論は、大きな領土的利害関係が危険にさらされている場合には有効でないようだ。これは中国にとって問題である。中国はもともと、はるかに小規模な「最小限の抑止力」の核の傘の下で台湾介入を考えていた。中国は米国の核戦略家バーナード・ブロディーの論理に従っていた。ブロディーは、たとえ小型核兵器による壊滅的な脅威でも、主要な核保有国の意思決定者の心に休止を強いるのに十分であると主張していた。

 現在では、エスカレーション優位、すなわち核エスカレーションが起こった場合、一方が他方よりはるかに大きな損害を与えることができるという宣伝文句が、戦略的侵略の前提条件になっているようである。中国の場合、1944年にイタリアのアンツィオ海岸にいた英米軍のように、侵攻が失敗して台湾の海岸で軍が動けなくなった場合、脱出をうまく交渉するためエスカレーション優位が不可欠な条件になる。1950~53年の朝鮮戦争や1954~58年の台湾海峡危機では、中国は名目上ソ連の「核の傘」の恩恵を受けていたが、現在の台湾攻撃では北京は完全に孤立する。北京は、中国の現在の核抑止力が米国の先制攻撃に対して脆弱であると認識している。大陸間弾道ミサイル116基のうち、10基のDF-41しか米国本土に到達できず、20基あるDF-5は液体燃料でサイロによる保護がなく、62基のDF-31は固体燃料で警告時に発射可能だが米国西海岸までしか到達できない。しかし、ドローンによる監視の時代に、移動式の陸上ミサイルは脆弱であることを示す証拠がかなりある。このため、中国は300発のミサイルを搭載できるサイロ型抑止力の開発も進めており、2024年までに準備を整える予定である。

 中国は8隻目の晋級弾道ミサイル潜水艦(SSBN)を完成させつつあり、各12発のJL-2ミサイルを搭載し、1メガトン級の弾頭1個または最大8個の小型弾頭を搭載し、理論上最大768個の弾頭を搭載する。しかし、中国のSSBN艦隊は、海南島三亜の作戦基地から、南シナ海のかなり外側に出ないと、アメリカ大陸をカバーできない。南シナ海の北半分はSSBN運用には危険なほど浅く、南半分は米海軍潜水艦の哨戒があるため危険だ。水という重い媒体が爆薬の衝撃波を増幅させるため、潜水艦は数キロメートル離れた核爆雷で無力化され、南シナ海はSSBNにとってあまりにも小さな砦となる。また、晋級SSBNは音響的にも問題があり、水上艦隊の保護なしに太平洋に進出できない。ロシアが中国のSSBN艦隊を、オホーツク海という砦に受け入れる可能性もあるが、これは台湾を巡る紛争が起きた時点のモスクワの体制次第である。中国はこうした性能限界に対応するべく、096型SSBNを開発中だ。

 中国も、相手の核兵器に対する米国の通常兵器による抑止戦略に反応を示していない。ソ連が通常兵器で西ヨーロッパに侵攻した場合、米国と同盟国の海軍はバレンツ海やオホーツク海でソ連の弾道ミサイル潜水艦隊を捜索・破壊する計画だった。西ドイツ、ダーダネルス海峡、ペルシャ湾、北海道の機甲部隊による制覇を、戦術核戦争開始で進撃が鈍る前に完了したいソ連には、核兵器で応戦しない強い動機があった。北京は、台湾をめぐる紛争で自国のSSBN艦隊と地上核兵器が早期に標的となり破壊されるとわかっているため、「使うか失うか」のジレンマに直面し、米国の核兵器庫に同様の脅威を与えることができなければ解決にならない。そのためには、世界各地に友好国の基地網を持ち、攻撃型原子力潜水艦の大艦隊を支援するなど、世界に通用する海軍の整備が必要となる。現在、中国は潜水艦58隻を保有しているが、原子力潜水艦はわずか6隻である。ソ連は300隻の潜水艦を保有していたが、世界の海を駆け巡る米軍のSSBNを狩る能力はなかった。

 習近平は、多くの対抗的な機会の間に挟まれている。台湾を奪取する際に予想される米国の商業封鎖、場合によっては海上封鎖に耐えうるだけの最低限の政治的基盤が必要なのである。プーチン政権がロシアの若い世代に倒される前に、早急に行動を起こす必要がある。また、中国の核抑止力を保護しつつ、消耗に耐えうる強固な空軍と海軍戦力が必要である。そして、インドの成長、気候変動による生態系への影響、人口動態の弱体化、さらには中国の政治的自由化で台湾が手の届かないものになる前に、一世代以内に行動を起こさなければならないのである。■

 

China’s Closing Window of Opportunity on Taiwan

https://nationalinterest.org/feature/china%E2%80%99s-closing-window-opportunity-taiwan-204972?page=0%2C1

September 25, 2022  Topic: Taiwan  Region: Asia  Tags: TaiwanChinaNuclear WeaponsDeterrenceSSBNCCPXi JinpingRussia

 

by Julian Spencer-Churchill

Dr. Julian Spencer-Churchill is associate professor of international relations at Concordia University, and author of Militarization and War (2007) and of Strategic Nuclear Sharing (2014). He has published extensively on security issues and arms control, and completed research contracts at the Office of Treaty Verification at the Office of the Secretary of the Navy, and the then Ballistic Missile Defense Office (BMDO).

Image: Reuters.


 

ウクライナ戦でロシアが核兵器を投入する懸念の理由。ヒント 東部「住民投票」。

 The Looming Worry Of Russia Using Nuclear Weapons In Ukraine


Russian MoD

敗退を続け、兵力を消耗したロシアが核兵器をウクライナで使用する懸念が高まっている

シアがウクライナに核兵器を使用する可能性は、何かと面倒な話題だ。8カ月目に入った全面的な侵攻に至るまで、核兵器の話題には事欠かなかった。これを空想的な恐怖政治と断じる者もいれば、何でも可能だとする者もいた。今、プーチン自身による新たな核の脅威の中で、ロシアが選択した大戦争で敗れ、さらなる後退を食い止めたいものの兵力不足に陥っていることを考えると、残念ながら、77年後に核の精霊が瓶から出てくる可能性が現実になる時が来ていると言わざるをえない。

核兵器とウクライナ紛争に関し、最初の疑問は、なぜロシアは占領している国、しかも自国の国境に近い国を核攻撃するのか、ということである。ここで問題なのは、核攻撃というと、価値のある複数の目標に大規模な侵攻攻撃を行うイメージを持つ人が多いが、必ずしもそうではないということだ。特にロシアの戦闘ドクトリンと潜在的戦略に関しては、怒りに任せて核兵器を爆発させるだけで、その収量や目標に関係なく、敵に大きな打撃を与えるのではなく、利益を強固にする戦術として使用できるとある。このコンセプトは、しばしば「エスカレートからデスカレートへ」と呼ばれる。これまでも話題になってきたが、ウクライナの現状に即して見ていこう。

エスカレートからデスカレートへとは、基本的に紛争を凍結させる構想だ。ウクライナ以外の過去の事例で、どう機能してきたかを理論的に説明するとこうなる。

ロシアがバルト地方に侵攻した場合、急変する状況に対して、NATOが圧倒的に優れた通常軍事力で対応するのに時間がかかるため、ロシアは最初の数日間は急速に戦果を上げることができます。この時点まで、ロシアの電撃戦は通常戦法にとどまる。初回攻撃で大きな領土を獲得し、NATOの対応がまとまったところで、ロシアは戦術核を発射する。この核兵器は低収量で、放射性降下物の発生が極めて少ない。例えば、ほとんど使用されていない空軍基地や、戦線を越えた無人地域で地上爆発させる。人命、物資、重要インフラの損失はほとんどないだろう。このような前例のない核兵器使用の示威行動を行うだけで、紛争が直ちにエスカレートする危険性が非常に高くなり、敵が交渉のテーブルに着かざるを得なくなるを期待するのだろう。

これにより一時的にせよ紛争は凍結できる。ロシアは防衛力を強化し、獲得した領土を確固にしながら、正当性を主張して交渉するか、さらなるエスカレートのリスクを冒すかで時間を手に入れる。ウクライナでのロシアの兵站活動を振り返れば、初期段階での紛争の凍結がいかに重要であるかが明らかだ。

つまり、基本的には、ロシアは、NATOが事態をエスカレートさせないことに賭ける。その代償は、ロシアが一時的に(少なくともメッセージに関しては)得たものを保持し、事態をデスカレートするため緊急協議を行うよりもはるかに大きくなるからだ。もちろん、ロシアは盗んだものを返すつもりはないだろうし、少なくともモスクワの立場からすれば、NATOの通常戦力の矢面に立つことなく大きな利益を得られる。ロシアの通常戦力は破滅を免れたことになる。要するに、ロシアは「別の日に戦うために生きる」ことになり、しかもそれを自分たちの好きな時に、新しい領土から行える利点が生まれる。理論的には、この状況は、誰もが恐ろしい損害を被る終末的な核兵器の応酬を回避しつつ、実際に起こりうる。

これは非常に危険かつ狡猾な戦略で、ロシアが核戦争より通常戦を希望していることを物語っている。

ロシアは訓練やウォーゲームで、いわゆる「戦場用」核兵器での同様の戦術の訓練を行っている。ロシア軍がウクライナに流れ込み、広範囲の領土に素早く進攻した8カ月前には、非常に幻想的に見えたが、その後の事態は、歴史的規模の悲惨な軍事的失敗になりかねないことが判明している。

ロシアが「特別軍事作戦」の目標を大幅に切り下げ、ウクライナの南部と東部に集中した後も、モスクワは失速し、軍は打ちのめされ、消耗し、屈辱を受け、ウクライナは攻勢に出て、日を追うごとに武装を固めている。キーウにNATOの通常兵器装備が多く流入し、優れた訓練を受けている。ロシアが完全敗退しないようにするためだけでも、核兵器を持ち込む動機が高くなった。

 

核搭載短距離弾道ミサイル「イスカンダルM」を輸送・格納・発射車両に搭載している。Russian MOD

また、クレムリンはこのような行為を「正当化」するため薄っぺらい戦略的工作を行っているようだ。ドネツク、ルガンスク、ケルソン、ザポリツィアといった占領・掌握地域で展開中のロシアの偽りの住民投票は、これらの地域を「ロシア領」とするものだが、結果を認めるのはロシア政府だけである。しかし、これはロシア当局に、各地域を自国の領土とし「防衛」するための口実を与えることになる。

キーウが繰り返し主張する目標は、クリミアとあわせこれらの領土の奪回であり、特にクリミアはロシア最大の獲得品である。ウクライナ軍が攻勢に転じ、最新兵器が流入している今、目標達成はより現実的なものとなっている。各地域、特に長年維持してきたルガンスクとドネツク、そして何よりクリミアを失えば、モスクワにとって大打撃となる。2014年のクリミア侵攻以来のプーチンの設計が完全に否定されてしまう。クリミアを維持できても、2月24日侵攻で得たロシア国境と同半島を結ぶロシア自慢の「陸の橋」が失われる。

住民投票が「通過」すれば、プーチンは、通常戦力が崩壊した場合、何としてもロシアの国土を守るしかなかったと宣言できる。

冬もやってくる。そのような状況下での異国での戦いは、これまでロシア軍が経験したことのない悪いものになるだろう。兵站はより困難になる。さらに、士気の低下、憤慨して訓練を受けていない何千人もの徴兵、消耗したり破壊され適切な代替品が不足している装備品が加われば、さらなる災難に直面する可能性がある。

したがって、ウクライナ軍が実質的な成果を上げ続ければ、紛争を凍結するため核兵器投入が可能性の範囲内に入ってくるのは想像に難くない。特にロシアは占領地として残っている地点を維持するだけで必死になる可能性がある。

 

2022年9月21日、ドネツク地方でロシア前線に向かう途中、装甲兵員輸送車(APC)に座るウクライナ兵。 Photo by ANATOLII STEPANOV/AFP via Getty Images

このことは、ロシアがウクライナの主要な軍事目標、さらに民間目標に対して、多数の核兵器を使用することも排除しない。降伏を迫るためロシアが複数の破壊的な攻撃を仕掛けることは、ロシア軍が通常砲で人口密集地を攻撃するのを見た後では、不可能なことに思えない。しかし、それは紛争を凍結させる目的の攻撃よりずっと危険だ。ロシアのタカ派が提案しているウクライナ国外への攻撃は、まったく別の次元のリスクになる。

しかし、われわれは未知の領域に入っており、プーチンが劣悪な一連の決断をいつまで繰り返せるかは未知数であり、紛争の最近の進展も心強いものではない。

とはいえ、もし明日の朝起きると、ウクライナの農家の畑で核兵器が爆発したと聞いたらどうなるか?

ロシアはデスカレーション協議のため戦闘の早期凍結を望むだろうが、NATOはロシアの核兵器使用に慣例的に対応する可能性がある。基本的には、報復核攻撃でのエスカレートではなく、クレムリンのハッタリに対抗することになる。これも非常にリスクの高い選択肢だ。

このような運動論的反応は、ウクライナ国内のロシア標的だけを狙える。少なくとも、NATO軍を危険にさらすことなく、スタンドオフ兵器で重要ターゲットを攻撃することは可能である。しかし、さらに踏み込んで、ウクライナ上空に飛行禁止区域を設定し、そこに展開するロシアの軍事目標を有人・無人の航空戦力で攻撃することも考えられる。そうなれば、NATOが何としても避けようとしてきた紛争が一気に拡大し、同盟軍がウクライナ上空で積極的に戦うことになる。この種の活発な紛争では見られなかったレベルの戦場情報を駆使したNATO空軍力の前、ロシア軍は長くもたないだろう。基本的に、このような動きで、ウクライナにおけるロシア通常兵力を短時間で消し去ることができる。また、ロシアの重要な戦闘インフラや能力への攻撃などでサイバー兵器など、非機動兵器が活躍する可能性もある。

繰り返しになるが、通常兵器での対応でもエスカレーションの危険性が極めて高く、核兵器応酬を含む多面的な紛争に発展する可能性がある。また、通常戦力が壊滅的な打撃を受ければ、ロシアには核戦争へ進む動機が残るだけだとも言われる。この考え方には、「熊」を窮地に追い込む不吉な話と通じるものがある。しかし、軍事対応せず、直接交渉に移行すれば、ロシアの思惑通りになりかねないという見方もできる。

もちろん、同程度の「戦術」核兵器の使用など、核対応の選択肢もあるが、それは真のロシアの国境内で行わなければならず、エスカレーションのはしごを上るのが加速される。

 

旧型核爆弾B61が 保管庫 上部に装填されている。B61は、ヨーロッパの基地多数で、こうした保管庫に保管されている。DODIG USAF via DODIG/FOIA

こうした状況がいかに複雑で、その後のすべての決断がエスカレーションの意味でどれだけ危険であるか、おわかりいただけるだろう。核兵器の大規模な応酬は、全人類が知っているように地球上の生命を終わらせることになるので、これ以上の賭けは存在しない。

核兵器使用が不可避だと言っているのではない。ロシアにはその他大量破壊兵器のオプションもある。しかし、こうした破壊力の強い兵器の使用は、ロシアとプーチン政権にとって、軍事的のみならず経済的、外交的にも大きな逆効果になる可能性が高い。ロシアがウクライナに侵攻した瞬間に負けたことになる。

願わくば(控えめに言っても)、脅威は脅威のままとし、核の精霊は永遠に瓶の中に留まっていてほしいが、その瓶の封印が緩んできたようだ。■

The Looming Worry Of Russia Using Nuclear Weapons In Ukraine

BYTYLER ROGOWAY| PUBLISHED SEP 26, 2022 3:09 PM

THE WAR ZONE