2022年10月13日木曜日

バイデン政権の国家安全保障戦略に流れる考えを読む。

 


 

以下は、2022年10月12日に発表されたバイデン政権の「国家安全保障戦略」の非機密版

報告書から

私たちは今、アメリカと世界にとって決定的な10年の始まりの時期にいる。大国間の地政学的競争の条件が設定される。気候変動を含む共通脅威に対処する機会は、大幅に狭まる。今取るべき行動によって、この時代が紛争と不和の時代と呼ばれるのか、あるいは安定し繁栄の未来の始まりとなるのかが決まる。

私たちは戦略的課題2つに直面している。第一は、ポスト冷戦時代が決定的に終わり、次の時代を形作るために、主要国間で競争が始まっている。自由で開かれた、安全で豊かな世界というビジョンを共有する勢力と共通目的に向けて働く限り、米国ほどこの競争で成功に適した国はない。つまり、自決、領土保全、政治的独立という基本原則が尊重され、国際機関が強化され、各国が自国の外交政策の選択を自由に決め、情報の自由な流通が認められ、普遍的人権が擁護され、世界経済が公平な競争の場で運営されて、すべての人々に機会が提供されなければならない。

第二に、このような競争の一方で、世界中の人々が、気候変動、食糧不安、伝染病、テロ、エネルギー不足、インフレなど、国境を越えた共通課題に対処するために苦闘している。こうした共通課題は、地政学的に小さな問題ではない。こうした課題は国家や国際社会の安全保障の中核として扱わうべきだ。こうした課題は、性質上、解決には各国政府の協力が必要だ。しかし、私たちは、地政学的競争、ナショナリズム、ポピュリズムの高まりで協力が一層困難になり、新しい思考と、行動が求められる、競争激しい国際環境でこうした課題に取り組まなければならないと明確に意識すべきである。

今回の国家安全保障戦略は、自由で開かれた、安全で豊かな世界という、より良い未来を実現するための私たちの計画だ。私たちの戦略は、米国民の安全を守り、経済的繁栄と機会を拡大し、米国人の生活の中心にある民主的価値を実現し、守るという国益に根ざしている。私たちは、このいずれも単独で行うことはできないし、行う必要もない。世界のほとんどの国は、わが国と互換性ある方法で自国利益を定義している。私たちは、相互協力する国々で構成する強力かつ広範な連合体を構築する一方、暗いビジョンを提供する勢力と競い、私たちの利益を脅かそうとする勢力の努力を阻む。

米国には永続的な役割がある

世界における米国の強力で目的意識のある役割の必要性は、かつてないほど高まっている。世界はますます分裂し、不安定になっている。COVID-19大流行が始まって以来、世界でインフレが進み、多くの国民の生活は困難になっている。国連憲章や、すべての国家が隣国から侵略されたり、武力によって国境を画定されたりしない保護を含む、国家間の関係に適用される基本的な法律や原則が攻撃を受けている。大国間紛争のリスクは高まっている。民主主義国家と独裁国家は、どちらの統治体制が国民と世界に貢献できるか競い合っている。安全保障と経済を変革する基盤技術の開発と普及をめぐる競争は激化している。共通利益でのグローバル協力は、必要性が本質的な重要性を帯びているにもかかわらず、軋みを生じている。こうした変化の規模は年を追うごとに大きくなっており、無策の場合のリスクも大きくなっている。

国際環境は厳しくなってきているが、米国が世界をリードする大国であることに変わりはない。経済、人口、技術革新、軍事力は成長を続け、他の大国を凌駕している。米国固有の国力である米国民の創意工夫、創造性、回復力、決断力、価値観、多様性、民主主義制度、技術的リーダーシップ、経済活力、外交団、開発専門家、情報コミュニティ、軍事力は、依然として比類がない。私たちは、自らの力に大きなプラスとなる同盟国やパートナーとの組み合わせで、自らの力を使い、適用する経験を有している。私たちは、成功だけでなく失敗からも教訓を学んできた。国際秩序を形成するため独裁的な大国と競争すべきとの考え方は、国内で超党派の幅広い支持を得ており、海外でもその傾向が強まっている。

米国は大規模かつ多様な民主主義国家であり、世界のあらゆる地域、あらゆる生活様式、あらゆる信条の人々を包含している。このことは、米国政治が常に円滑とは限らないことを意味する。むしろ、その逆であることが多い。私たちは今、情熱的な政治的強さと、国の構造を引き裂きかねない発酵の瞬間に生きている。しかし、私たちはその事実から逃げたり、広い世界から遠ざかる口実にはしない。私たちは、自分たちの分裂を率直に、謙虚に受け止め、透明で民主的な政治を実践していく。私たちは、かかる努力のすべてに対して、自らの民主主義がそれだけの価値があるかを知っている。人々に真に尊厳と自由のある生活を送るらせる唯一の方法である。しかし、だからといって、私たちは自らの価値を守り、世界における国家安全保障上の利益を追求し続けるのを止めることはない。私たちの住む世界の性格が、国内で安全、繁栄、および自由を享受する能力に影響を及ぼすように、国内の民主主義の質は、海外での私たちの指導力の強さと信頼性に影響を及ぼす。

私たちのライバルが直面する課題は深刻である。彼らの国内外における問題は、高度に個人化された独裁国家に固有の病理に関連し、私たちの問題よりも容易に改善されることはない。逆に、米国には、国内外の課題を、国内の改革と若返りを促進する機会に変えてきた伝統がある。これが、米国の衰退という予言が過去に何度も否定された理由の一つであり、米国に賭けることが決して良い賭けではなかった理由である。私たちは、共通課題に取り組む世界へ肯定的なビジョンを抱き、民主主義のダイナミズムとライバルに打ち勝つ決意と結びつけることで、いつも成功を収めてきた。■

原資料のダウンロードは hereから。

2022 U.S. National Security Strategy

October 12, 2022 12:02 PM


手負いの獣ロシアがサイバー攻撃を展開する可能性に警戒する米国官民セクター。セキュリティ意識がまだ低い日本は大丈夫か。

 FILE - A cybersecurity worker develops computer code in an office in Moscow, Russia, Oct. 25, 2017. The U.S. and allies are bracing for the possibility that a Russian invasion of Ukraine would have a ripple effect in cyberspace.

 

 

国のサイバー担当高官は、政府や民間企業が警戒を緩め、ウクライナの戦場でのロシアの苦闘がサイバースペースでのクレムリン活動でも同じと考えるのは早計と警告している。

 

 

 むしろ、ロシアのハッカー集団Killnetが最近行った米国の主要空港サイトを標的としたサービス拒否攻撃は、「他のタイプの攻撃の先陣を切る」可能性があるという。

 サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ局(CISA)の局長ジェン・イースタリJen Easterlyーは、「盾を下ろしてよいわけではない。米国の重要インフラに対する潜在的な攻撃を非常に懸念しており、警戒し続けるべき」「ロシアは非常に予測不可能。彼らは追い詰められている」と火曜日ワシントンで聴衆に語った。

 

 

空港ウェブサイトが一部オフラインに、原因は調査中

 米国と西側同盟国は、2月下旬にロシア軍がウクライナに侵攻する以前から、ロシアやロシアとつながりのある勢力による主要産業や重要インフラへの大規模かつ破壊的なサイバー攻撃に備えてきた。

 司法副長官リサ・モナコ U.S. Deputy Attorney General Lisa Monacoは侵攻前の数週間、「規模をとわず各企業で、今すぐ準備をしないのは愚かだ」と述べていた。「仮定の話ではない。絶対に心配している」と述べた。

 モスクワは、ロシア侵攻の前夜にウクライナを標的に発生したサイバー攻撃への関与を一貫して否定してきた。また、CISAのイースタリーが「迷惑だ」と評した最近のサービス拒否攻撃は別として、ウクライナ国外のターゲットに対してロシアやロシアに関連したサイバー攻撃が試みられたり成功したという証拠は少ない。

 

米国と同盟国は、ロシアのサイバー攻撃が世界に波及する可能性を警告

 代わりに、ロシアはサイバー攻撃をウクライナに集中させているようだ。

 米国に拠点を置くサイバーセキュリティ企業チェック・ポイント・ソフトウェアが先月発表したレポートによると、2月以降、ウクライナの政府および軍のウェブサイトへのサイバー攻撃は、「2倍以上、112%という驚異的増加」だった。

 他の研究者は、ロシアがサイバー空間で偽情報を流し続けていることを指摘している。中には、ウクライナ支援を堅持してきた国々の決意を弱める意図も含まれている。

 しかし、ウクライナ当局は、ロシアのサイバー攻撃の新たな波が到来しており、標的はウクライナのエナジーと金融セクターの可能性が高いと繰り返し警告を出している。

 ウクライナ国家特殊通信・情報保護局スポークスマンのボロジミル・コンドラショフVolodymyr Kondrashovは、先月末の声明で、「新たな攻撃のリスクは依然として非常に高い」と述べた。

 

 

ウクライナの新たな警告、迫り来るロシアのサイバー攻撃

 米国当局者は火曜日、ウクライナのサイバーセキュリティへの取り組みがロシアのバランスを崩しているとして、ウクライナを賞賛した。

 「ウクライナの人々は、ネットワークを強化し、何が起こっているかを理解し、ロシアの一歩先を行くことができたという点で、称賛に値する」と、米サイバー司令部のポール・ナカソネ大将Cyber Command’s General Paul Nakasoneは述べた。「我々も多くを学んでいる」。

 ナカソネ大将とCISAのイースタリー長官は、ロシアとつながりが疑われるサイバーアクターによる重要システムのスキャニング増加を検知していると述べている。

 「国家が支援した行為であれ、犯罪に加担したランサムウェアグループであれ、はたやウクライナでの連鎖攻撃であれ、重要インフラに対する脅威や侵入に対する備えを確実にする必要があります...米国にも波及しかねません」とイースタリー長官は述べている。

 また、ロシアが来月の米国中間選挙を妨害する目的でサイバー攻撃を仕掛ける懸念も残ったままだ。

 米連邦捜査局(FBI)はロシアと連携した影響力工作の兆候を確認しているが、米国の投票システムそのものは安全だとしている。

 ナカソネ大将は、「目立った攻撃の兆候は見られない」と述べた。「しかし、警戒すべき問題だ」 と述べた。■

 

US Not Ruling Out Russian Cyber Offensive

October 11, 2022 11:43 PM

米州に連邦離脱を進め、ロシア加盟を公然と勧奨するロシア有力議員。アラスカ購入(1867年)の賠償を米国に求める別議員。頭の構造はどうなっているのか。

 

この記事はKYE(Know Your Enemy)サイトhttps://draft.blogger.com/blog/posts/4438569708195348633

と共通記事です。KYEでは敵性国家の行動の源泉は思考にありとし、発言や主張から特徴ある部分をご紹介しています。

 

論調査でアメリカ州の連邦離脱が支持する意見がある中、ロシアの上級議員がアメリカ各州に離脱を促し、代わりにロシア連邦に加盟するよう呼びかけたようだ。

 ニューズウィーク誌が月曜日に報じたところによると、ロシア議会(the Duma)の上級議員アレクサンドル・トマルケフAlexander Tomalchevは、ロシアのニュースサイトPodmoskovye Segodnyaに対し、米国から分離独立を望む各州は、ロシアへの加盟申請を歓迎する、と語ったという。

 同議員は、アメリカ人が自分の住む州のアメリカ連邦からの分離を望んでいることを示す世論調査を引用し、そのようなアメリカの州がロシア加盟を望むなら、この問題について選挙を実施するよう呼びかけた。

 トマルチェフ議員は、米国のオンライン投票や今月ロシアに併合されたウクライナ地域の住民投票を参照して、「ソーシャルネットワーク上ではなく、公式かつ合法的に投票が行われることが重要」と語ったという。

 トマルシェフ議員は、このような選挙が行われた場合、モスクワはロシア連邦への加盟を希望する米国の州の意向を検討するとし、米国は「衰退」し始めていると述べた。

 また、ウクライナの同盟国である欧州連合(EU)は「崩壊しつつある」とも付け加えた。

 米国と欧州連合、そしてカナダや英国などのNATO加盟国は、軍事装備に加えて数十億ドル相当の軍事援助をウクライナに提供してきた。

 また、モスクワには厳しい経済的・政治的制裁が課せられている。

 ドネツク、ルハンスク、ケルソン、ザポリージを占領したロシアの主張は、国際社会から広く非難され、米国を含む国外からはショボイと評されている。

 「米国は、明確にしたい。ウクライナの主権領域に対するロシア主張を決して、決して、認めない」と、バイデン米国大統領は今月行われた4地域の住民投票後に述べ、同時に新たな制裁措置を発表した。

 トマルチェフ議員がどのオンライン投票に言及したかは不明だが、ニューハンプシャー州議会は今年初め、米国内に留まることに投票し、300人以上の議員が連合からの離脱を拒否したと、ABCニュースが当時報じていた。賛成票はわずか13名であった。

 トマルチェフ議員の発言は、同じくロシアの議員である下院議員オレグ・マトヴェイチェフOleg Matveychevが、モスクワは米国からアラスカへの賠償を「考えるべきだ」と発言した後に飛び出したものだ。

 アラスカはかつてロシアの一部であったが、1867年にアラスカ購入として知られる協定で、米国に加わった。■


Russia invites US states to secede and join country

Gino Spocchia

Wed, October 12, 2022 at 12:25 AM·2 min read

https://news.yahoo.com/russia-invites-us-states-secede-152546096.html

2022年10月12日水曜日

北朝鮮の淡水湖からのSLBM発射実証を笑っていられない事情

 

KCNA

近代的な潜水艦を持たない北朝鮮だが、湖に弾道ミサイルを配備すれば、生存力の高い核抑止力が手に入る

 

朝鮮の国営メディアは、9月25日から10月9日にかけ発射された弾道ミサイルの写真を公開した。中には、先週、日本上空を飛翔した極めて挑発的な発射も含まれていた。北朝鮮はこれまで知られていなかった能力も公開した。潜水艦発射を想定し弾道ミサイルを湖に沈めた発射台からの発射能力だ。北朝鮮は巨大な移動式弾道ミサイル発射台も保有し、列車から弾道ミサイルを発射する能力を実証しており、すべて生存性を高めるものであるが、湖からの発射コンセプトでは別のレベルの防御能力を提供できる。初歩的な第二撃核抑止力を実現する際に、意味をもってくる。

 

KCNA

写真に添付された朝鮮中央通信(KCNA)の公式ニュースによると、湖(厳密には貯水池)からのミサイル発射は9月25日実施されたとある。正確なミサイルの種類はニュースで特定されていないが、写真では北朝鮮が2021年10月に初めて公式発表した短距離型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)であるのを明らかに示している。

KCNAは、「9月25日未明、韓国北西部の貯水池にある水中発射場で、戦術核弾頭を搭載した弾道ミサイルの発射訓練が行われた」と発表した。「訓練は、戦術核弾頭の取り出し、運搬、使用時の迅速かつ安全な操作秩序を確認し、水中発射場での弾道ミサイル発射能力を実践する万能操作システムの信頼性とシステムの習得、迅速な対応態勢の点検を目的としたもの」とある。

「発射された戦術弾道ミサイルは設定された軌道に沿って韓国東海(ママ)の固定目標上空まで飛行し、固定高さでの弾頭起爆の信頼性を確認した」。と説明にある。「貯水池に建設予定の水中発射場の方向性も、実地訓練で確認された」。

KCNA記事で注目すべきは2つあり、1つは、このミサイルは少なくとも「戦術的」核弾頭を搭載する設計と公式に述べていることである。ミサイルの寸法から、核弾頭は比較的小型でなければならず、北朝鮮がこの一般的なサイズの核弾頭を製造する能力があることを示す証拠が追加された。

さらに、KCNAがこの発射を説明するために使った言葉は、この湖底発射システムが、試験品ではなく、少なくとも運用可能な兵器システムとして設計されていることを示している。他の打ち上げについても、公式報道では、兵器そのものの開発テストというよりも、運用能力あるいは運用をめざす能力を示す演習であったかのように語られている。

これらのことは、金正恩委員長をはじめとする北朝鮮当局者が、核兵器を放棄するつもりはなく、他の核保有国と同様に扱われることを望んでいると繰り返し明言していることと符合する。北朝鮮と米国、韓国との核・ミサイル関連問題などの協議は、ここしばらく滞っている。今回の発射を見る限り、すぐに再開される可能性は低そうだ。

 

2022年9月25日、ミサイル発射が行われた貯水池で、北朝鮮の金正恩委員長が軍幹部や関係者に「現場指導」をしている様子を撮影した KCNA

伝統的な抑止政策の文脈では、湖底核弾道ミサイル発射能力には間違いなく一定の意味がある。北朝鮮は水中弾道ミサイル発射システムを試験製造する能力を実証し、その設計から運用可能な発射システムを構築することは難しくないだろう。発射装置が湖底に物理的に係留されているのか、それとも漂流を防ぐため他の種類のアンカーを使用しているのかは不明である。

水中発射装置は、湖や貯水池の正確な深さ、水の組成によっては、発見が非常に困難になる可能性がある。北朝鮮では水中発射装置の設置に適した大きな湖は限られているが、どの湖にミサイルがあり、そのミサイルがどこに設置されているかを特定するためには、相手国は相当の資源を投入しなければならない。状況によっては、遠隔操作での確実な実行は不可能かもしれない。

 

KCNA

発射システムがある程度移動可能なら、北朝鮮軍は不定期に発射システムを移動させるかもしれない。空っぽの発射装置やその他のデコイがあれば、目標特定のプロセスはさらに複雑になる。そもそも水中発射装置の位置を特定することが困難であることと相まって、敵軍は発射装置を無力化するためにどこを攻撃すればよいのか、「シェルゲーム」のジレンマに陥る可能性がある。

そのため、情報、監視、偵察の能力が高くても、敵はミサイルを完全に破壊するため、潜在的な標的の場所をすべて攻撃せざるを得ないと感じるだろう。発射台の深さによっては、特殊な弾薬が必要になるかもしれない。もう一つの選択肢は核攻撃で、通常型の紛争が直ちに核戦争に変わる。

湖底からミサイル発射できるということは、少なくとも北朝鮮にとっては、利用可能な資源を使って第二次攻撃の抑止力を開発するという、非常に現実的な努力のように思われる。これはまた、潜水艦を必要としないSLBM活用の方法となる。

北朝鮮は、潜水艦から発射可能な固体燃料弾道ミサイルの設計には大きな成功を収めているが、実際に適切な艦艇を入手することには多くの困難に直面している。北朝鮮海軍の既存の弾道ミサイル発射可能な潜水艦は、極めて小規模で、かつ、すべて旧式のディーゼル電気式で構成されており、比較的騒音が大きく、発射前の探知に非常に脆弱であろう。

弾道ミサイルを発射できる北朝鮮のクジラ級潜水艦。挿入した図は、同国が湖中の水中発射装置から発射した同型SLBMの沖合実験。 KCNA

北朝鮮が以前に実証した鉄道輸送式の弾道ミサイル能力も、少なくとも部分的には、巨大サイズの移動式発射装置と同様に、より生存性の高い発射オプションを意図しているようだ。湖底ミサイル発射場の可能性は、生存率を大きく前進させ、米軍と韓国にとって通常戦争計画を、まったく複雑なものにする可能性がある。

このような理由でこのようなことを考えたのは、北朝鮮が初めてではない。1970年代から1980年代にかけて、米軍は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)MXの脆弱性を減らす選択肢の中から、沖合の海底発射台や不透明な水を張った人工プールに沈めた発射システムを積極的に検討していた。その後、LGM-118Aピースキーパーと呼ばれるようになったMXミサイルは、最終的に従来型のサイロに搭載され、2005年退役した。LGM-118Aよりも前に運用され、現在、米国で唯一運用されているICBMのLGM-30GミニットマンIII ICBMもサイロに搭載されている。

米軍が検討したMX/LGM-118Aの発射基地「オーカ」コンセプトは今回の北朝鮮の実験に似たものがある。 DOD

MX/LGM-118A ミサイル用にプール建設も検討されていた. DOD

もっと最近では、米空軍が将来のLGM-35AセンチネルICBMの基地を策定する際に、湖底からICBMを発射するアイデアなどを検討していた。しかし、同軍は、現在のミニットマンIIIに代わるものとして、このミサイルもサイロに入れると決定している。もちろん、米国は核弾道ミサイル「ブーマー」潜水艦部隊という非常に強固な第2次攻撃抑止力を持っており、地上のICBMには生存性を期待していない。その代わり、敵の奇襲先制攻撃能力を複雑化し、敵の弾頭を吸い上げることを目的としている。それゆえ、「核のスポンジ」と呼ばれる。

昨年、中国軍がICBM用の大型サイロ場を多数建設中であることも明らかになった。サイロ自体は比較的伝統的な設計のようだが格サイロが予想以上に接近して配置されている。このため、敵に問題を引き起こすために、一部を空にしておく意図ではないかとの疑問も生じている。

もちろん、湖上ミサイル発射構想には潜在的な落とし穴と限界がある。例えば、水中ランチャーに格納されたミサイルの一般的な保守点検を、場所を知られずに行うことが難しいことだ。しかし、ミサイルが移動可能なら、ミサイル発射場全体の座標を知られることもなく、全く問題にはならない。ただし、この作業を水中で行うのは複雑でもある。環境問題や安全保障上の問題もある。

北朝鮮のレール式弾道ミサイルのように、湖に設置する発射システムをどれだけ広範囲に展開するか、また詳細が公表されるかは未知数だ。確かに、このような計画には大きな課題もある。はっきりしているのは、平壌政権が核抑止力の既成概念に沿った核戦力の多様化に強い関心を持ち続けていることである。そしておそらく最も重要なことは、彼らがこのコンセプトを追求しているという事実で、北朝鮮の潜水艦技術が第二次攻撃の野心を満たさしていないことを、同時に教えてくれるという点だ。■


Don’t Laugh At North Korea’s New Lake-Launched Ballistic Missiles

BYJOSEPH TREVITHICK, TYLER ROGOWAY

|PUBLISHED OCT 11, 2022 8:06 PM

THE WAR ZONE


次世代エイブラムズ戦車 エイブラムズXのコンセプトモデル公開へ

  AbramsX Next Generation Main Battle Tank Breaks Cover

General Dynamics video Screencap



 

将来の主力戦車となるエイブラムスXのコンセプトが初公開された

 

 ェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズGeneral Dynamics Land Systemsは、エイブラムズX次期主力戦車コンセプトの実物を正式に公開した。今週初め、本誌はこの機能満載のM1エイブラムスの進化に関する最新情報を書き上げたが、今週ワシントンDCで開催される米陸軍協会のイベントに先立って、実際のハードウェアを見られた。

General Dynamics Land Systems 社が新たに公開した エイブラムズX のビデオをご覧ください。

 エイブラムスXは、複数の電子光学照準器や30mmチェーンガンを装備したリモート・ウェポン・ステーションなど、砲塔を大きく改良されており、未来の戦車に見えることは言うまでもない。スナイパーグレーのような都市型迷彩に、鋸歯状のスカートに沿ったカウンターシェーディングを施し、XM360由来の120mm砲とポート付きマズルブレーキも非常に未来的な印象を与えている。

 しかし、この重装甲戦車で最もエキサイティングな特徴は、戦車の奥深くに埋められたハイブリッドパワートレインだ。ジェネラル・ダイナミクスによれば、なんと50パーセントの燃料節約になるという。エイブラムスの燃料を大量に消費するタービン・エンジンは、長い間、物流と性能のトレードオフの関係だった。このハイブリッド・システムにより、エイブラムズXはアイドル状態でも静かに作動し、場合によっては低速走行も短時間可能となり、戦術的に大きな利点となる。

 自動装填式弾薬システムの無人砲塔は、乗員を4人から3人に減らした。これで生存率を高め、砲塔にスペースを空けてより多くの機能を導入でき、大きな魅力となる。また、乗員削減は、世界各国の軍隊が望む上位事項だ。エイブラムスXは、巨大化するM1型戦車のトレンドに逆らい、先代より軽量化されています。

 この戦車のデジタルバックボーンは、KATALYST Next Generation Electronic Architecture(NGEA)と呼ばれる。戦車の全システムを接続し、ハードウェアのアップグレードやソフトウェア変更を容易にすることで、従来型戦車より優雅に年を重ね、戦術的な現実や技術の変化に素早く対応できる。

 

移動中のエイブラムズX (General Dynamics video screencap)

 

砲塔には、対人榴弾、アクティブ保護システム、分散型開口カメラシステム(DAS)など、その他装備用のスロットがある。車体前面には、運転手用の高度なセンサー群があり、DASアーキテクチャにフィードし360度のビデオフィードを提供できるようだ。拡張現実により、乗員は車体を「透視」した状況認識を大きく飛躍させ、周囲にある関心対象をデジタルで強調表示できる。

 エイブラムズX構想では無人地上車両との連携機能も含まれる。

 とはいえ、実車を目にできるのは感動だ。

 まだコンセプト車だが、ウクライナの事件後、アメリカ陸軍と米同盟国は間違いなくこの戦車の運命を再評価している。そう、無人砲塔を備えたエイブラムズXは、間違いなく可能性を秘めている。

 私たちは今週、米陸軍協会イベントに出席し、ジェネラル・ダイナミクスのエイブラムズXについてもっと多くのことがわかる。また報告する。■

 

AbramsX Next Generation Main Battle Tank Breaks Cover | The Drive

BYTYLER ROGOWAY| PUBLISHED OCT 9, 2022 2:50 AM

THE WAR ZONE


プーチンはクーデター制圧に核兵器投入を決意するか。歴史に見る強権政権の末期と軍事クーデターの関係。

 Russia Nuclear War

Topol-M Missile - By Vitaly V. Kuzmin

戦を平和的に終わらせようとアメリカが追求した「封じ込め戦略」を明確に定義したジョージ・F・ケナンは、より自由な体制がどのように出現するのか、最後のステップで決して明確にしなかった。冷戦は、迅速なクーデターとそれに続くソビエト連邦の解体として、予期せぬ形で終結した。西側のウクライナ戦略の核心で暗黙の目的の一つに、戦場でのロシアの敗北と屈辱が、核兵器を含む広範囲な軍事力を保有しているにもかかわらず、ウラジーミル・プーチンと強固なシロビキ権力基盤を平和的に倒させることにつながるというものがある。

ウクライナ戦争への30万から100万人のロシア国民の動員・派遣が、この結果を加速させそうだ。核兵器で武装した政権が、内戦の序盤で軍部の反乱に直面したらどうなるのか、という問題がある。ソ連崩壊はありえないほど幸運な結果だったが、ほとんどのオブザーバーは、その他の展開の可能性を検討しようとしていない。このことは、核武装した北朝鮮や中国で避けられない政権交代がどのように起こるかとの疑問も投げかけるものであり、避けられない問題でもある。

1953年のスターリンの死にはクレムリンの衛兵が、1964年のブレジネフによるフルシチョフの失脚と1991年のゴルバチョフ失脚にはKGBが決定的な役割を果たした。しかし、プーチンがFSB(連邦保安局)シロビキと共依存関係にあることから、プーチン側近からクーデターが起こる可能性は低く、軍の旅団や師団長から発生する可能性が高いと思ってよい。1991年のエリツィンに対するKGBのコマンド部隊による作戦を軍が支援しなかったことや、1993年のアレクサンドル・ルツコイによる10月クーデターに対する軍の行動は、軍が情報機関と利害が一致しない場合に決定的なパワーブローカーになることを示している。プーチンは、1905-07年のロシアの反乱を鎮圧するために軍の駐屯地が重要であったこと、1917年に皇帝ニコライ2世を倒したのがロシア軍の反乱であったことを知っているはずである。プーチンは装備も統率も不十分な兵士を大量にウクライナに派遣しているが、政策が民族主義的期待に応えられない場合、反発を招く危険性がある。

ウォルツと核兵器、ウクライナへ

政治学者ケネス・ウォルツKenneth Waltzは、1981年に発表した代表的な著書『More May be Better』で、核兵器の世界的な拡散は、核兵器のもつ明白な抑止効果により平和を増進させると主張した。これは本人の最初の誤りだ。ロシア指導者は明らかに、ウクライナへの通常攻撃で、外部介入を盾に核兵器を使おうとしている。台湾の民主的同盟国に対する攻撃的盾としての核兵器に対するこの戦略的信念は、8隻目の晋級弾道ミサイル潜水艦、ミサイルサイロ300基など、中国の急速な核増強の推進要因にもなっている。

また、ウォルツは、核兵器開発には制度的な成熟度が必要であり、同時にこうした政権に核兵器の抑止効果を認識させ、それにより自制心を植え付けられると主張した。米国のような高度な政治経済を動かす複雑な憲法の歴史と、核兵器製造に必要な比較的単純な組織との間に共分散があると仮定したのはウォルツの第2の誤りだ。アパルトヘイト下の南アフリカのアドベナにおける核兵器組立て事業では、6個半の核弾頭を生産し、900平方メートルの兼用工場があった。北朝鮮は、大気圏外弾道ミサイルに搭載する小型の昇圧型核分裂弾頭を製造したが、管理面では商業刑務所のような精巧さを備えている。ソ連の有人シャトル計画「ビュラン」の失敗、月面着陸の失敗、超音速民間旅客機の失敗は、国民の間で違法性を認識していることを確認できない政権の致命的な事態と一致している。私たちは、ユーゴスラビア、ロシア、パキスタン、イラン、中国、インドネシア、トルコのような多民族帝国の残骸国家では、安定した政府機関がなくても核技術の高度利用が可能であることを知っている。

安全な第2次攻撃核兵器に対する確実な防衛手段は存在しないとのバーナード・ブロディーBernard Brodieの議論に基づき、ウォルツは核兵器は現状維持に大きく有利だと主張している。ウォルツの第3の誤りは、攻撃的行動をとる強い誘因がある内戦では、核の影響は考慮されないことである。内戦では、領土支配は徴兵や徴税のための資源と等しく、包囲された飛び地の存在は攻撃の動機となる。また、核兵器配備は、敵対国に対する第二撃力を最大限に発揮するためであるが、流動的な内戦では、固定された基地の核兵器は「使うか失うか」のジレンマに陥り、早期使用の圧力につながる。また、国家間紛争や戦争法に比べ、内戦では道徳的抑制が効きにくい。内戦は一般的に制度的・道徳的崩壊と重なるからである。政治理論家エドモンド・バークEdmund Burkeが説明したように、革命の暴力はしばしば、非戦闘員への暴力さえ永続させる自己消費的な制度破壊を生み出す。国家間の戦争よりも国家内の紛争でより多くの人命が失われるのはこのためだ。1966年から1976年にかけての文化大革命は、制度崩壊で引き起こされたというより内部エリートが仕組んだ若者の蜂起であったため、北京は核兵器を厳重に管理し続けた。

 

プーチンとクーデターの歴史

1795年10月の反乱で、ボナパルトは当時最強の武器であった大砲をパリ市民に発射した。1939年から1940年のスペイン内戦、1991年から2001年のユーゴスラビア戦争で核兵器が使用されたかどうか、反実仮想の歴史を推測できる。衰弱したパキスタン国家のパンジャブ中核部が、その外縁州であるバロチスタン、カイバル・パクタンクワ、シンドでの分離独立を鎮圧するため核兵器使用に踏み切ることはあるだろうか。1971年、東パキスタンでは、パキスタン軍と地元民兵が600万から800万人の難民を脱出させた。パキスタン崩壊を回避するために、核兵器を使用していただろうか。イランが核兵器を求めていること、ペルシャ人が人口の半分以下のみの帝国の残滓であることを考えると、テヘランは分裂を回避するため核兵器に頼るだろうか? 

アパルトヘイトの南アフリカが普通選挙開始直前に核弾頭を解体したことから、外部勢力の影響力の重要性がわかる。2013年から2017年にかけてのシリアの化学兵器使用は、ロシアの庇護で可能になった。しかし、1911年の中国革命における袁世凱将軍の反乱、1917-1922年のロシア内戦、1945-1949年の中国内戦では、紛争の劇的な規模のため外部介入が制限されたことについて、もう一度同じ問いを投げかけてよい。核内戦は、たとえ近隣諸国が核武装していたとしても、敵や標的が不明確であるため抑止が難しく、近隣諸国を恐怖に陥れる可能性がある。また、核内戦は、核保有の近隣諸国による先制攻撃を誘発する可能性もある。

プーチンの状況に最も近いケースは、1944年7月20日にドイツ国防軍がアドルフ・ヒトラーに対して起こしたクーデターで、最終的に失敗し、暗殺未遂となった。もし、ヒトラーがクーデターを生き延びたが、ドイツ国防軍への支持が高まっていたとしたら、反乱軍に核兵器使用に踏み切っただろうか?北朝鮮の金正恩は、南浦の第3軍団が自然発生的に反乱を起こした場合、核兵器を使用するだろうか?金正恩には、中国に逃げるという選択肢が常にあるはずだが。

中国が反乱軍地域の出現を含む大規模反乱に屈した場合、中国共産党の上層部は核兵器使用に踏み切るだろうか。もし、地域的に広がった中国人の不満が、北京の共産党の結束を弱めるほどではなくとも、南方戦線司令部のある湖南省で反乱が起こり、それが1911年の袁世凱反乱のように明らかに広がる兆しがあればどうだろうか。湖南省は、1851年から1864年にかけて上海近郊にまで広がり、2千万人の命を奪った太平天国の反乱の中心地だ。広東省を拠点とする司令部が、中国が弾道ミサイル潜水艦を保管している海南島の玉林海軍基地を奪取する準備しているとしたらどうだろうか。ジョセフ・ミランダのように、この線で中国の核内戦を推測する作家もいる。

プーチンはどう動くか?

プーチンに対する軍の反乱の初期症状は、ウクライナの疲弊した旅団や師団将校から噴出する可能性が最も高く、実際にこうした将校は前線からクラスノダール、ロストフ・オン・ザ・ドン、ベルゴロド、クルスク、ブリャンスクの都市近くの基地に交代させられている。蜂起の動機は、より自由な政権を求める司令官か、ウクライナの現状を打破する以上のことはしない司令官かもしれない。クーデターはさらに悪いものを生み出すかもしれない。超国家主義者が軍事大統領、あるいは栄光のためにプーチンを追い出し、南ベトナムを苦しめた軍事クーデターの連鎖を生むかもしれないのである。プーチンが核兵器を使用する最後の機会は、師団やロシア軍(軍団換算で3万人)全体が反乱を起こし、反乱がモスクワ周辺の駐屯地や大本営に広がる前である。核兵器は12の施設と35箇所の基地に保管されているが、イスカンダルなどの戦術・戦術ミサイルシステムや航空機に搭載できる非戦略兵器は約2000個程度で、空軍基地に配備された戦略核爆弾弾頭200個はここに含まれない。重要なのは、上記のような動機で動く反乱軍ではなく、ロシアの中央・南部軍管区の6つのイスカンダルミサイル旅団のパイロットや軍のオペレーターがプーチン側に付くかどうかである。  

このような状況下で、米国やNATOのような部外者ができることは、核抑圧がロシア国境を越え広がる恐れがある場合、同盟には報復する用意があることを常に明示的に繰り返視発言する以外、ほとんど何もない。2011年のNATOによるリビア介入時と異なり、モスクワ、北京、平壌には報復手段がある。国内で核戦争を始めようとする政権には亡命先の聖域が残っていないため、報復に出る可能性が高い。しかし、核軍縮や被害軽減のための先制攻撃は、実行可能かもしれない。絶対絶命に感じる政権は、核戦力の指揮統制に大きな亀裂を抱えている可能性が高く、爆弾が落ち始めればプーチンがどうするかは誰にも分からない。■

Would Putin Use Russia's Nuclear Weapons To Stop a Coup? - 19FortyFive

ByJulian Spencer-Churchill

Dr. Julian Spencer-Churchill is an associate professor of international relations at Concordia University, and the author of Militarization and War (2007) and of Strategic Nuclear Sharing (2014). He has published extensively on Pakistan security issues and arms control and completed research contracts at the Office of Treaty Verification at the Office of the Secretary of the Navy, and the then Ballistic Missile Defense Office (BMDO). He has also conducted fieldwork in Bangladesh, India, Indonesia, and Egypt, and is a consultant. He is a former Operations Officer, 3 Field Engineer Regiment, from the latter end of the Cold War to shortly after 9/11.


ケルチ海峡攻撃事件との関係は? クリミアで見つかった無人自爆水上艇がウクライナ運用と疑われている

 


H I Sutton Image used with permission

 

9月末、セヴァストポリのロシア海軍基地付近のクリミア海岸に、出所不明の小型無人水上バイクが黒海から流れ着いた。

 

 

ロシアのソーシャルメディアに投稿された写真には、爆発物を積んだ商用水上艇の部品で作られた小型の新型水上ドローンらしきものが写っており、ここ3週間にわたり艦艇を活動させてこなかったロシア海軍の傾向を説明できるかもしれない。

 この無人水上機には国籍マークは付いていないが、USVの特徴や水上機を破壊したロシアの反応から、こウクライナ発のものであることが示唆されている。

 ソーシャルメディアに公開された写真から、USVの主要な構成要素が明らかになり、機能をより良く知るヒントとなった。

 

ロシアのSNSで出回ったウクライナ製USVといわれる画像。. Image via Naval News


同艇の写真を分析したところ、レクリエーション用のウォータージェット推進だと判明した。このウォータージェットは、Sea-Dooデザインに酷似しており、ハウジングに貼られた「No Step」のステッカーまで確認されている。

 ハウジングに貼られた "No Step "のステッカーとスラストリバーサーのラインの画像から比較的新しいモデルであることを示し、おそらくGTXまたはFish Proモデルであることがわかる。

 Sea-Dooはカナダのパーソナルウォータークラフトメーカーで主に民間市場をターゲットに、世界各地で製品を販売している。つまり、比較的容易に入手できる。

 外観上の手がかりから、パワープラントについて強いヒントを得られなかった。しかし、シードゥーの一部のモデルは、ロータックスの高性能3気筒ガソリンエンジンを搭載し、水上バイクを時速70マイルまで駆動できる。レクリエーション用の水上バイクには、ディーゼルや電動のものもあるが、シードゥーのウォータージェットと相性が良いガソリンが最も多いようだ。

 このUSVのもうひとつの大きな特徴は、ドローンの起爆方法だろう。船首には、衝撃信管と思われる2つの突起があるす。これは、現在でも広く使われているソ連時代のFAB-500ファミリーの航空爆弾の信管と外観が似ている。

 導火線は起爆装置と弾頭にケーブルで接続されていると思われる。弾頭の大きさや位置は不明だが、おそらく艇の前半分に搭載されているのだろう。

 水上バイクは一般的にグラスファイバーやそれに似た素材で作られているが、今回の自爆USVは、ソーシャルメディアの写真から外観を見ると、アルミニウム製に見える。

 国防総省の報道官は、米国が今年初めにウクライナに提供した正体不明の沿岸防衛用USVがこのUSVであるかどうかを確認しなかった。

 

自爆USVは以前からある

イエメンのフーシやアルカイダを筆頭に、他のグループも近年、USVを爆発艇として使用している。イラン革命防衛隊海軍は、USVの設計と使用においてフーシを支援した可能性があると、USNI Newsは以前に報じていた。

 2017年には、サウジアラビア海軍のフリゲート「アル・マディーナ(702)」の水兵2人が、フーシの仕業とされるドローンボートの攻撃で死亡したと米第5艦隊が当時確認している。

 しかし、これまでの爆発ドローンボートは、有人ボートの応用であり、長い航行のためパイロットポジションを保持している。今回はサイズとパイロットステーションの欠如により、ウクライナの疑いのある艇は、完全に無人であることが際立っている。また、サイズが小さいため目立たず、発見されにくく、対策も立てにくい。

 

H I Sutton Image used with permission

 

 新たな自爆型USVの登場で、セヴァストポリ付近とクリミア周辺でのロシア海軍作戦の欠如が説明できる。船舶監視員によれば、9月下旬に謎のUSVが発見されて以来、ロシア軍は防衛されたセヴァストポリ港に退却し、港の入り口付近に配置する艦艇を減らし、港の口をブームで仕切りアクセスを制御するようになったとのことである。

 ロシア海軍がセヴァストポリから黒海で活発なパトロールを始めたのは、10月8日のケルチ海峡橋攻撃の後である。■

 

Suspected Ukrainian Explosive Sea Drone Made From Recreational Watercraft Parts - USNI News

By: H I Sutton

October 11, 2022 3:44 PM • Updated: October 11, 2022 4:38 PM

 

H I Sutton

About H I Sutton

H I Sutton is a writer, illustrator and analyst who specializes in submarines and sub-surface systems. His work can be found at his website Covert Shores.