2024年4月22日月曜日

ウクライナ向け援助法案が米下院を通過。台湾向け、イスラエル向けと一括にし、ウクライナ支援に反対する動きを制したが....

 行き詰まっていた米議会での援助法案が4月20日土曜日に下院を通過しました。後は上院での議決を受け大統領が署名するだけです。これでウクライナの苦しい状況が改善されるのでしょうか。法案にある援助額が全部対象国にそのまま行かないことに注意が必要です。Breaking Defense とDefense Oneの記事からまとめています


米下院がウクライナ、イスラエル、台湾向け援助を含む950億ドルの国防予算補正案を可決


ウクライナ法案は311対112、イスラエル法案は366対58、インド太平洋法案は385対34で可決された



院は本日、超党派の賛成多数で950億ドルの国防補填予算3法案を承認した。ウクライナ、イスラエル、台湾を支援し、米国の備蓄を補充するための追加予算を数カ月にわたって求めてきた国防総省にとっては大勝利である。

 マイク・ジョンソン下院議長は、ウクライナへの追加資金に反対する極右共和党議員を迂回させるため、上院の950億ドルの追加資金を実質的にウクライナ、イスラエル、インド太平洋の3つに分割した。

 ウクライナ法案は311対112、イスラエル法案は366対58、インド太平洋法案は385対34で可決された。

 予想通り、ウクライナ法案は民主党210票、共和党は賛成101票対反対112票で可決された。採決終了後、民主党議員は議場でウクライナのミニ国旗を振り、ウクライナへの歓声と詠唱を行ったが、臨時議長から国旗を振るのは礼儀に反すると告げられた。

 ジョンソン下院議長は、承認された追加法案は上院に送られる前に1つの法案にまとめられることを示唆した。

 ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「民主主義と自由は常に世界的な意義を持ち、アメリカがそれを守る手助けをする限り、決して失敗することはないだろう」とツイートした。今日、下院で可決された米国の重要な援助法案は、戦争を拡大させず、何千何万もの命を救い、両国がより強くなる助けとなるだろう" と述べた。

 ジョー・バイデン大統領は下院補正案を支持し、民主党が支配する上院でのスムーズな可決の可能性を高めている。チャック・シューマー上院院内総務は本日未明、上院本会議場でのスピーチで、下院が法案を可決した場合、補足法案を採決することで「暫定合意」したと述べた。

 ウクライナ、イスラエル、インド太平洋の各補足法案は、総額953億ドル相当で、以下のような内容となっている: 

  • ウクライナ安全保障補助金には608億ドル: 米国備蓄の補充に134億ドル、防衛技術調達に139億ドル、ウクライナ向け防衛物資の追加購入に137億ドル、欧州での米軍活動に73億ドル、ウクライナ支援の監視に260億ドル。

  • イスラエル安全保障補助金に264億ドル:アイアンドームとダビデのスリングに40億ドル、アイアンビームに12億ドル、イスラエルへの対外軍事融資に35億ドル、米国の在庫補充に44億ドル、人道支援に90億ドル。

  • インド太平洋安全保障補助金に81億ドル: 潜水艦産業基盤に33億ドル、台湾支援に20億ドル、台湾に供与された在庫の補充に19億ドル。潜水艦産業基盤のための資金は、コロンビア級潜水艦の先行調達に19億ドル、ヴァージニア級潜水艦の先行調達に2億ドルを追加。

 このうち、ウクライナ支援法案には、155mm榴弾砲のような、米国がすでに送った兵器の補充に232億ドル、先進兵器の調達に138億ドル、その他、支援をよりよく監視するための資金が含まれている。一部の共和党議員が推進していた措置として、法案はホワイトハウスがウクライナに1000発ものATACMSミサイルを供与することも要求している。この長距離兵器は、バイデン政権が挑発的すぎるとして数カ月間保留していたもので、昨年秋に初めて供与された。

 下院と上院のパッケージでの最大の違いは、下院案にはジョンソン議長が主導した第4次補正法案が追加されたことで、中国がオーナーから退かない限り、アメリカ国内でのTikTokを禁止する。また、差し押さえられたロシア資産50億ドルをウクライナに譲渡し、ロシアとイランへの制裁を強化するものである。

 この法案は360対58で承認された。

 ウクライナ支援を推進するジョンソン議長の姿勢は、ジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員をはじめとする極右共和党議員の怒りを買い、同議員は、ジョンソン下院議員を議長から追放するかどうかの投票を強行する動議を提出すると脅している。

 共和党の過半数割れは、保守派のフリーダム・コーカスの反対と相まって、超党派の珍しい瞬間を下院で作り出した。

 「我々は政治よりも国民を優先すると言ったが、それは本心だ」と、ハキーム・ジェフリーズ下院少数党院内総務は、法案を議場で取り上げることを可能にした手続き上の投票の後、金曜日に語った。それでも、民主党指導者たちは、退去動議が出された場合、ジョンソン議長を守るとは言っていない。

 ニューヨーク選出の民主党議員ジェフリーズは今週初め、この決定を「チャーチルかチェンバレンの瞬間」と呼んだ。

 他の議員も同様に、今日未明、議場でのスピーチで投票の重要性を強調した。

 下院歳出国防小委員会委員長のケン・カルバート議員(共和党、カリフォルニア州選出)は、「世界は、アメリカがリードすることを待ち望み、注視している」と述べた。「補正予算は、わが国の軍隊を強化し、同盟国やパートナーを安心させ、テロに立ち向かうために必要な資源を提供する」。

 下院歳出委員会の民主党トップであるロサ・デラウロ議員は、ウクライナに提供された数十億ドルには、「プーチンの暴政と戦うためにどうしても必要な援助と軍需品」が含まれていると述べ、議会が法案を通過させなければ、"独裁者への宥和 "につながると付け加えた。

 対照的に、マイク・ワルツ議員(共和党、フロリダ州選出)は、ウクライナでの勝利がどのようなものかを示すバイデン大統領の戦略がなければ、米国にはウクライナをこれ以上支援する余裕はないと述べ、法案に反対の声を上げた。

 それ以前の補正予算関連のドラマには、政敵に牙を剥くことを目的とした議員たちによる不真面目な修正案が多数含まれていた。例えば、アメリカとメキシコの国境に宇宙レーザーを配備するよう求めるグリーン議員提案の法案や、グリーンをプーチンの特使に指定するような法案などである。

 一方イスラエルは、米国や他の国々の支援により、ハマス「解体」し、イランからのロケット弾や無人機による攻撃をはね返したと述べた。

 同大統領の党内では、イスラエルへの軍事援助増額の中止を求める声が多かった。

 「ウクライナとは異なり、イスラエルはこの法案に含まれるようなレベルの米国からの財政援助を必要としていない。イスラエルは裕福な国であり、借金をする能力もある。最近可決された予算案では、イスラエルに38億ドルの資金が提供された。「私は人道支援を支持し、過去にはアイアンドームを含む防衛能力に資金を提供することに賛成してきたが、この資金のあまりの多さは、最近の歴史が言うように、より多くの民間人の死につながる兵器に支払われる可能性が高い。

 下院議長のマイク・ジョンソン下院議員(共和党)は、援助法案の採決を何カ月も拒否してきたが、すでに一部の共和党議員からの反発に直面しており、最近の不明瞭な規則改正を利用して、前任者のケビン・マッカーシー元カリフォルニア州下院議員と同様、彼を議長の座から追い出そうと約束している。

 ロイド・オースティン米国防長官は声明で、「約500億ドルを国防産業基盤に直接投入することで、この法案は米国の長期的な安全保障を強化すると同時に、30以上の州で良質な雇用を創出するだろう」と述べた。

イスラエル支援案には、先週末のイランの無人機とミサイルによる攻撃を防ぐのに役立った、アイアンドームとデイビッズ・スリング迎撃ミサイルの補充に40億ドルが含まれている。法案には、飢饉に近い状態にあるガザや、その他の「脆弱な人々」への人道支援として95億ドルが含まれている。また、国連救済事業機関への資金提供も禁止されている。その他の大砲や軍需品に10億ドル、ガザへの援助物資投下を含む現在の米軍の軍事作戦に24億ドルが含まれている。

 水曜日の公聴会で、国防総省の指導者たちは、ロシアとの戦争が続く中、弾薬や装備の不足に直面しているウクライナへの追加資金を承認する緊急性を強調していた。

 国防総省のマイク・マッコード会計監査官は、国防総省は今年、ヨーロッパと中東での活動ですでに20億ドルの資金不足に陥っていると警告した。マッコード会計監査官は、議会が補正予算案を通過させない場合、国防総省は、部隊を派遣し続けることができるようにするために、「イネイブラー」資金(おそらく施設や武器勘定)を削減せざるを得なくなるだろうと述べていた。

 一方でインド太平洋安全保障追加歳出法には、台湾とその他の地域パートナーに対する対外軍事資金調達プログラムに20億ドル、台湾の軍事力強化に19億ドル、米潜水艦のための乾ドック建設とその他の地域インフラ強化に33億ドルなどが含まれている。

 下院議長のマイク・ジョンソン議員(共和党)は、援助法案の採決を何カ月も拒否してきたが、一部の共和党議員には、最近の不明瞭な規則改正を利用して、前任者のケビン・マッカーシー元カリフォルニア州下院議員と同様、彼を議長の座から追い出そうとする動きがある。

 しかし、ジョンソン議長は今週、ついに自分の立場を貫き、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の広範な帝国的野心についての情報機関の評価を信じると発言した。「ウラジーミル・プーチンは、許されるならヨーロッパを行進し続けるだろう。次はバルカン半島に行くかもしれない。ポーランドやNATOの同盟国と対決するかもしれない。ジョン・クインシー・アダムズの言葉を引用し、こう付け加えた:「義務はわれわれにある。結果は神のものだ」■


House approves $95 billion defense supplemental with aid for Ukraine, Israel, Taiwan

The Ukraine bill passed in a 311-112 vote, the Israel bill passed in a 366-58 vote, and the Indo-Pacific bill passed in a 385-34 vote.

By   VALERIE INSINNA

on April 20, 2024 at 2:11 PM


House passes long-awaited aid for Ukraine, Israel, Indo-Pacific - Defense One

Two months after the Senate acted, the lower house responds to an increasingly desperate Kyiv.

BY PATRICK TUCKER

SCIENCE & TECHNOLOGY EDITOR, DEFENSE ONE

APRIL 20, 2024 06:03 PM ET



2024年4月21日日曜日

ロシアのTu-22M3バックファイアをS-200ミサイルで撃墜した: ウクライナのスパイ局長が明かす

 The War Zone記事からのご紹介です。Tu-22バックファイヤーをS-200ミサイルで撃墜したとのウクライナ情報部の主張で、これまでミサイルを多数打ち込まれてきたウクライナからすると溜飲が下がる思いなのでしょうね。

<em>via X</em><em>via X</em>

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A Tu-22M3 with a Kh-22 supersonic cruise missile under the port wing.&nbsp;<em>Dmitriy Pichugin via Wikimedia Commons</em>

A Tu-22M3 with a Kh-22 supersonic cruise missile under the port wing. Dmitriy Pichugin via Wikimedia Commons



ウクライナ国境から約200マイル地点で可変翼爆撃機を墜落させたとキーウが主張している


クライナは、ロシアのTu-22M3バックファイアC爆撃機を迎撃し、同機はロシア南部のスタブロポリで撃墜したと本日発表した。TWZの独占取材に応じたウクライナ国防省情報総局(GUR)の責任者であるキリロ・ブダノフKyrylo Budanov中将は、ロシア爆撃機はソ連時代のS-200(SA-5 Gammon)長距離地対空ミサイルによって撃墜したと述べた。

 もしそうだとすれば、ウクライナがTu-22M3(あるいは他のロシアの長距離爆撃機)を撃墜させた事例は前例のない出来事となる。

 ソーシャルメディアに掲載されたビデオでは、航空機が地面に向かって急旋回し、後部胴体が炎上している様子が映っている。その後の写真とビデオでは、爆撃機の残骸が地上にあり、まだ燃えている。

 映像が流れた直後、ウクライナは爆撃機撃墜の撃墜を主張した。

 GURはウェブサイトで、爆撃機は「ウクライナ空軍との協力による特別作戦で撃墜された」と述べた。

 GURによれば、問題のTu-22M3はウクライナへのミサイル攻撃から帰還中に、「以前ロシアのA-50長距離レーダー探知管制機を撃墜したのと同じ手段で、ウクライナから約300キロ(186マイル)の距離で撃墜した」という。

 「同機はスタブロポリまで飛べたが、そこで墜落した」。

 ブダノフ中将は本誌に対し、問題のTu-22M3はS-200砲台から308キロ(約191マイル)離れた地点で交戦したと、より詳細な情報を提供した。

 GURのビデオには、防空システム司令部の内部が映っており、Tu-22M3を墜落させるために使われた兵器、あるいは少なくとも作戦を調整するために使われたことを暗示している。

 GURスポークスマン、アンドレイ・ユーソフが最初のTu-22M3が攻撃され、2機目のTu-22M3が方向転換を余儀なくされたと述べているとラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティーが報じた。「別のミサイルがウクライナに向け発射されなかったことを意味する」(ユーソフ)。

 ロシア国防省は、Tu-22M3が「スタブロポリ領内で、戦闘任務を終え基地に帰還中に墜落した」ことを確認した。同省は、国営通信社タスが引用した声明の中で、4人の乗組員全員が脱出したと述べた。同関係者によれば、乗員のうち3人は地上で生存が確認され、4人目の捜索は継続中という。機体は人口の少ない地域に墜落し、地上での死傷者はなかったと同省は付け加えた。

 しかし、ウラジーミル・ウラジミロフ・スタブロポリ州知事によれば、2人の乗組員が脱出し(おそらく成功)、3人目が死亡、もう1人が行方不明であるという。知事は、墜落現場は同領土の北西に位置するクラスノグバルデイスキー地区であると特定した。

 ロシア国防省は事故原因を「技術的な不具合」とし、これは初期情報に基づくもので、バックファイアは墜落時に弾薬を搭載していなかったと述べた。

 未確認情報によると、Tu-22M3は昨夜ドニプロペトロフスク地方を目標とした攻撃に使用された可能性がある。

 Tu-22M3はウクライナで主にKh-22/Kh-32シリーズ(AS-4キッチン)超音速スタンドオフ巡航ミサイルを発射し、多用されている。

 事件の場所からすると、航空機は北オセチアのモズドク空軍基地に向かっていたと思われる。この基地は、最も近いウクライナ国境から約400マイル離れた場所にある。

 GURがA-50メインステイ空中早期警戒管制機に言及したことについて、ウクライナ当局が同型機2機を空中で破壊したと主張していたため、興味深い。

 ウクライナは、今年1月14日にアゾフ海上空でA-50を撃墜したと発表し、2月23日にはロシアのクラスノダール地方上空でもう1機を撃墜したと主張している。その後、2機目の残骸が地上で燃えている画像が公開された。ロシアのメディアはその後、死亡した乗組員のリストを公表したが、これらの主張のうち最初のものについては目視による確認は取れていない。

 ウクライナ当局は、2機のA-50が撃墜されたと主張しながらも、どのような武器が使われたかをこれまで明らかにしていなかった。

 このため、注目された撃墜の原因を確認しようとするアナリストたちから多くの憶測を呼ぶことになった。特に2機目のA-50の撃墜は、一部の非公式情報源によってS-200地対空ミサイル・システムによるものとされていたが、今回のブダノフのコメントがそれを裏付けたようだ。

 過去にペイトリオット防空システムは、ロシア領空内を飛行する固定翼戦術機やヘリコプターを撃墜するために使用され、約100マイルの射程距離の航空機を標的とすることに成功したと報告されている。

 このことは、S-200が今回使用されたというブダノフの主張を裏付けるものだろう。このことは、システムの古さだけでなく、本格的な侵攻が始まってからの状況についての疑問も考慮すれば、驚くべきことである。2010年時点では、ウクライナには4基のS-200砲台があり、国土の大部分を防空していたが、12基が非稼働状態だったと報告されている。さらなる報告によると、S-200は2013年に退役したが、2022年2月以降、陸上攻撃用として再び使用されるようになったようだ。

 ウクライナは、これらのミサイルを発射可能な複数の場所だけでなく、かなり実質的な予備を保有している可能性が高い。本誌が過去に推測したように、ウクライナはこれらのミサイルを別の場所からも発射できるような、ある種の移動式または展開可能な発射装置を開発している可能性もある。

 S-200が通常使用する5V28シリーズ・ミサイルは、1段式の液体燃料モーターと、4つの固体燃料ブースターのクラスターを搭載し、全長約35フィート、直径約34インチ、後期型の最大射程は約186マイルである。

 その一方で、今日の交戦で目標捕捉とミサイル誘導がどのように達成されたのかについては疑問が残ったままで、S-200がより近代的なレーダーと連動するように改造された可能性が指摘されている。

 ウクライナの国防関係者は本誌に対し、ウクライナがS-200用の最新の誘導システムを製造するため「パートナーからの支援」を受けていることを認めた。「ミサイル自体は優れた操縦システムを持っているので、適切な誘導が提供されれば、かなり近代的な武器になる」とこの関係者は付け加えた。

 Tu-22M3に関しては、ロシアの長距離爆撃機3機の中で最も数が多く、全機がウクライナ戦争で使用されている。

 Tu-95MSベア-HとTu-160ブラックジャックがもっぱら亜音速の航空発射巡航ミサイル(ALCM)を搭載しているのに対し、Tu-22M3は前述のKh-22/32と同様に無誘導自由落下爆弾も搭載できる。超音速ミサイルはウクライナの防空にとって特にやっかいな標的だったようだが、ウクライナ空軍によれば、昨夜2発のKh-22ミサイルの撃墜に成功したという。しかし同時に、Kh-22/32はALCMに比べて射程が短いため、Tu-22M3は目標に近づいて武器を発射しなければならず、ウクライナの防空網に交戦できる可能性が高まる。

 ロシアの空戦におけるバックファイアーの重要性は、昨年8月にロシア北西部のノヴゴロド地方にあるソルツィ空軍基地を標的としたドローン攻撃で実証された。画像には、攻撃後に基地で激しく燃えるTu-22M3が写っており、ロシア国防省は爆撃機の1機が"損傷"したと認めている。

 ウクライナのドローン攻撃は、他の爆撃機基地に対しても行われており、長距離ドローンだけでなく、短距離のホビータイプのクアッドコプターも使用されている。

 Tu-22M3は、本格侵攻が始まった時点で約60機がロシアに配備されており、モスクワの長距離爆撃機の中で最も数が多い。

 おそらくもっと重要なことは、今日の事件に関するウクライナの主張が事実であれば、ロシア爆撃機が空中でも地上でも脆弱であることを指摘することになる。ロシア航空宇宙軍の戦術の見直しと、防空システムに責任があった場合の検討を余儀なくされるかもしれない。■


Russian Tu-22M3 Backfire Shot Down With S-200 Missile: Ukraine’s Spy Chief

Kyiv claims that the swing-wing bomber was brought down nearly 200 miles from the Ukrainian border by a modified S-200 air defense system.

BYHOWARD ALTMAN, THOMAS NEWDICK|PUBLISHED APR 19, 2024 11:31 AM EDT


米南部の民間空港へ珍客: 米空軍がシェノー国際空港にB-52爆撃機2機を着陸させた理由

 日本で民間空港に軍用機が飛来すれば、「進歩的」なメディアが軍国主義だと大騒ぎするでしょうが(民間空港も軍が利用できる法的根拠があります)、米国でもそうあることではなく、今回ルイジアナ州の民間空港にB-52が飛来してちょっとした話題になったようです。有事に大切な機材を分散配備する構想はそれだけ主要基地が第一撃攻撃で使用できなくなる想定の証でしょう。Simple Flying記事からのご紹介です。(Terminal 1-2共通記事)


A B-52H Stratofortress assigned to the 96th Bomb Squadron, Barksdale Air Force Base, La. taxis at Chennault International Airport, La., as part of exercise Bayou Vigilance April 12, 2024. U.S. Air Force photo by Senior Airman Nicole Ledbetter



軍関係者以外でB-52爆撃機の離着陸を見ることは通常ない。ルイジアナ州の空港で民間人が貴重な体験をした



B-52Hストラトフォートレスが訓練で民間空港に着陸し、グローバルな作戦における即応性と適応性を示した。

  軍と空港のパートナーシップは、防衛と民間の価値観の共有と関係の重要性を示している

 戦略爆撃機ボーイングB-52ストラトフォートレス、別名「BUFF」(礼儀正しい言い方ではBig Ugly Fat Fellow、そうでない呼び名はBig Ugly Fat F*cker)の離着陸を、軍関係者以外が直接見ることは、軍の航空ショーに招待されない限りない。

 しかし、2024年4月12日、バークスデール空軍基地(BAFB)のバイユー・ヴィジランス演習により、同基地から161マイル(259.1km)と目と鼻の先の民間空港、ルイジアナ州レイクチャールズのシェノー国際空港の乗客と従業員は稀な例外となり、BAFBから2機のB-52を迎えた。

 バークスデール空軍基地(BAFB)の第2爆撃航空団(BW)広報室がプレスリリースで該当機は第2爆撃航空団第20爆撃飛行隊(BS)の所属と明らかにした。

 同空港が、象徴的なサメの口にペイントされたP-40を擁した、伝説的なアメリカン・ボランティア・グループ(AVG)、別名 "フライング・タイガース"を指揮した故クレア・シェノー大将の名を冠したという事実は、おそらく詩的な意味で適切なのだろう。


その理由と意義

バイユー・ヴィジランス演習の精神と意図は、戦闘作戦をシミュレートし、戦略的攻撃に対応する能力を実証することによって、BUFFクルーの即応性と殺傷力を高めることである。この準備態勢の重要な部分は、民間飛行場で発着することによって、厳しい環境でも活動できるようにすることである。『Air & Space Forces Magazine』誌も、前述の第2BWのプレスリリースも、第20BS司令官のジャレッド・パターソン中佐の言葉を引用している:

 「核戦争になれば、すべての制約は外れる。民間飛行場に着陸する能力を示すことで、作戦遂行能力を示すことになる。その能力とは、世界中のどこにでもB-52を着陸させることができるというものだ。そう、今回我々は身近なところでそれを行っているが、世界中どこでもそれが可能であることを証明した」。

 一方、シェノー国際空港のケヴィン・メルトン常務理事は、軍、地元当局、民間飛行場関係者間の喜びを伝えた:

「第2爆撃団とシェノー国際空港のパートナーシップは、空軍に訓練と作戦のための代替地を提供すると同時に、国防総省と民間との関係の存続可能性と重要性を示すという点で重要である。これは、私たちが同じ価値観に基づくチームであることを示すものであり、結局のところ、我が国は他の追随を許さない強力な戦闘力により守られているのです」。


ストラトフォートレスについての簡単な事実

 BUFFは、軍用機マニアの読者には紹介するまでもない機体だが、同機に詳しくない読者のため、ボーイング提供によるいくつかの仕様を紹介しよう。:

- 全長:159フィート4インチ(48.5メートル)

- 翼幅: 185フィート(56.4メートル)

- 全高: 40フィート8インチ(12.4 m)

- 空虚重量 約185,000ポンド(83,250 kg)

- 最大離陸重量:488,000ポンド(219,600kg)

- 燃料容量: 312,197ポンド(141,610kg)

- ペイロード 70,000ポンド(31,500kg)

H型は1960年7月に初飛行し、特に尾部銃が省略されている点で、先行機種と一線を画している。

 同型機はロールス・ロイス製エンジンへ換装後、2050年まで使用される予定だ。■



Bayou Vigilance: Why The USAF Landed 2 B-52 Bombers At Chennault International Airport

BY

CHRISTIAN D. ORR

PUBLISHED 22 HOURS AGO


https://simpleflying.com/bayou-vigilance-why-the-usaf-landed-2-b-52-bombers-at-chennault-international-airport/


2024年4月20日土曜日

F-15戦闘機の時代は終わった、と言っていいのだろうか。

F-15といいA-10などあまりにも「神話」が偉大で、早く機種を整理し予算のやりくりを念頭にした空軍に米議会がブレーキをかけています。しかし、どちらが正しいのか、戦闘が発生してからあの機種があれば、と後悔しても遅いのです。一機種ですべてをこなす発想が本当に正しいのか真剣に考えるべきではないでしょうか。また、このNationa Interestの記事が言うようなF-22の生産再開はありえず、F-15はまだ当面は表舞台で活躍できるポテンシャルがあると思うのですが、皆さんはどう思いますか。






1972年に初飛行し、現在はボーイングが生産するF-15イーグルは、就役から40年以上が経過した現在も、世界的な航空優勢における極めて重要な資産となっている。当初、ソ連の先進的な防空に対抗するために設計されたF-15は大幅なアップグレードを経て、現在に至っている。


-最大速度マッハ2.5で、空中給油機能によって強化されたF-15は、6万フィート(約1.6万メートル)の作戦用上昇限界を持ち、低地球軌道上の目標に対処する能力を含む、各種兵装を搭載できる。

-現在もF-35やF-22のような第5世代戦闘機の登場にもかかわらず、予算や製造上の課題から、新型のF-15EXイーグルIIに代表されるように、F-15に依存し続けている。

-しかし、旧式設計の同機の生産への根本的疑問があり、F-22の生産最再開やF-35の性能向上に重点を移すべきとの主張もある。


F-15イーグル: 現代の軍用機の優先順位に関する議論

40年にわたり、世界最高峰の第4世代超音速航空優越戦闘機はF-15イーグルである。1972年に初飛行したF-15は、何度も改修を繰り返し、世界中で活躍してきた。F-15は、ソ連の高度な防空技術を克服するために設計された。同機は、以前の第3世代戦闘機(F-4ファントムなど)よりもはるかに優れた操縦性、速度、航続距離、エイビオニクス、兵器システムを持っていた。

 過去40年間で、アメリカ空軍による37回の撃墜数のうち34をF-15が占めている。今日、はるかに進歩した第5世代の戦闘機が非友好的な空を飛んでいるにもかかわらず同機は、その電子的対抗手段、スピード、機動性のおかげで、撃墜するのが非常に難しい。。


F-15の仕様 

元々マクドネル・ダグラスが製造していた伝説的な戦闘機は、今日ではボーイングによって製造されている。機種によって、推力23,450ポンドのプラット・アンド・ホイットニーF-100-PW-220ターボファンエンジン2基、または推力29,000ポンドのアフターバーナー付きプラット・アンド・ホイットニーF-100-PW-229ターボファンエンジン2基が搭載されている。

 F-15の速度はマッハ2.5に達し、航続距離は2,878マイルである。もちろん、この航続距離は空中給油タンカーの支援で大幅に伸ばすことができる。F-15は外部タンク3つを装備することができ、航続距離を3,450マイルまで伸ばすことができる。上昇限界は60,000フィートである。

 武装の面では、F-15は実に強力だ。内部にはM61A1 20ミリ6連装砲が搭載されている。AIM-9サイドワインダー・ミサイルが4発、さらにAIM-120AMRAAMを4発搭載できる。F-15は、地球低軌道上の目標を破壊する対衛星兵器を発射することもできる。


F-15の目的

同機は退役し、第5世代戦闘機に取って代わられるはずだった。だが予算上の問題や、F-22Aラプターの場合は製造上の問題から、空軍はF-15に予定より長く頼らざるを得なかった。F-15を高価で複雑な第5世代戦闘機に置き換えることで事態は悪化し、米議会は空軍が当初計画していたようにF-15の退役を認めない。

 さらに、F-15のまったく新しいバリエーション、F-15EXイーグルIIが発注され、製造されている。この機体は「第4世代プラス」と考えられている。F-35ライトニングIIやF-22Aラプターに比べると性能は劣るものの、アメリカ政府は新型機によるシステムを構築することを選択した。F-15EXイーグルIIは基本的に高速ミサイルトラックである。これらの鳥が本当に第5世代の戦闘機と踊れるかどうかについては、航空業界の間で激しい議論が交わされている。奇妙なことに、議会がF-15の新型導入を推進した理由は、コストを抑えつつ、空軍に重要な戦略的空白が生じるのを防ぐためだった。

 しかし、F-15EXイーグルIIは非常に高価である。かつ、F-35やF-22ほど先進的ではない。


F-15は賞味期限を過ぎている

 アメリカはこれ以上、同機に時間や資金を浪費すべきではない。それよりも軍は、F-35が安全かつ確実に飛行できるようにする一方で、F-22の生産ラインを回復させることに尽力すべきだろう。F-15は素晴らしい活躍をした。しかし、時はこの鳥を見送ろうとしている。特定の状況では役に立つかもしれないが、アメリカは今すぐF-15から移行しなければならない。■



About the Author 

Brandon J. Weichert, a National Interest national security analyst, is a former Congressional staffer and geopolitical analyst who is a contributor at The Washington Times, the Asia Times, and The-Pipeline. He is the author of Winning Space: How America Remains a Superpower, Biohacked: China’s Race to Control Life, and The Shadow War: Iran’s Quest for Supremacy. His next book, A Disaster of Our Own Making: How the West Lost Ukraine, is due October 22 from Encounter Books. Weichert can be followed via Twitter @WeTheBrandon.

All images are from Shutterstock. 


The Age of the F-15 Fighter Is Now Over | The National Interest


April 19, 2024  Topic: Security  Region: Americas  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-15F-15EXF-15EX Eagle IIMilitaryDefenseU.S. Air ForceF-15E

by Brandon J. Weichert



敗北に向かうウクライナ。西側諸国が武器を送らなかったことで、プーチンの勝利に貢献してしまった

ここに来てウクライナ敗北の証が見えてきました。潮目がかわったのです。やはり西側の軍事装備支援の中断が大きな原因です。それに加え国民の厭戦気分も強まってきました。このままではプーチンの思うツボです。ウクライナという国家が地図から消えてしまってもおかしくないとの見立てですが、このままでいいのでしょうか。POLITICO記事からご紹介しましょう。


Increasingly it looks as if Putin’s bet that he can grind down Ukrainian resistance and Western support might pay off.  | Spencer Platt/Getty Images




ロシア侵攻から3年目の今年、潮目が変わらなければ、ウクライナという国家は過去のものとなってしまうだろう


クライナの兵士に、西側諸国が "必要な限り"キーウの味方をしてくれると信じているか聞いてみればいい。ある軍人が前線で訴えたように、砲兵部隊が最後に砲弾を撃って4週間も経っていれば、その誓約は空虚に響く。

 ウクライナ軍の弾薬が不足しているだけではない。欧米諸国からの援助が遅れているため、ウクライナには砲弾以上に供給が困難なもの、つまり勝利に必要な闘志が危険なほど不足している。

 容赦ない砲撃、最新兵器の不足、そして戦場での損失によって、部隊の士気は低下している。戦線から何百マイルも離れた都市では、戦争初期に軍隊に入ろうと列をなしていた若者の群れは姿を消した。今では、新兵になる資格を持つ者たちは徴兵を逃れ、代わりにナイトクラブで午後のひとときを過ごしている。その多くが国を離れている。

 先月ウクライナを取材してわかったことだが、政治指導者、軍人、一般市民への何十回ものインタビューから浮かび上がってきたのは、この国が破滅に向かって滑り落ちているという姿だった。

 ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領が、ウクライナは後退しない方法を見つけようとしていると断言しているときでさえ、軍の将校たちは内心、この夏、さらなる損失が避けられないことを受け入れている。問題は、それがどの程度になるかだ。

 参謀長アンドリー・イェルマクは、本誌取材に対し、「我々は、国民の士気が低下していることを承知していますし、地方知事や国民自身からもそう聞いています」と語った。イェルマクと彼の上司は、市民と兵士を戦いに結集させるため、「最も危険な場所」に行くと彼は言った。「私たちは人々に言う。"あなたの名前は歴史に残るだろう "と」。

 ロシアの侵攻から3年目となる今年、流れがすぐにでも変わらなければ、現在のウクライナという国家は過去の存在となってしまうだろう。

 これほど時代を決定づける重要な戦争であるにもかかわらず、キーウにロシアの侵略者を撃退させるための西側諸国の指導者たちの行動は、美辞麗句をはるかに下回るものだ。その失望は、塹壕を掘る兵士から国を運営する閣僚まで、あらゆる階級のウクライナ人を疲れさせ、苛立たせている。

 本誌がドミトロ・クレバ外相に、片手を縛られたままウクライナを戦わせるのを西側諸国が放置していると感じるかどうか尋ねたところ、彼の判断は明快だった。「そう思う」と外相は同日午前中にロシアによるミサイル攻撃があった直後の執務室で答えた。

 ゼレンスキーは、アメリカ議会が支援に乗り出さなければ、ウクライナは「敗戦するだろう」と述べた。

 ウクライナの抵抗と西側の支持を削ぎ落とすというプーチンの賭けが実を結ぶ可能性がますます高まっている。

 欧米の先進的な武器と資金供給が大きく変化しなければ、ウクライナはプーチン軍が現在保持している領土の解放はできないだろう。そうなれば、プーチンは今後数カ月から数年のうちに、傷ついたウクライナを自由に齧りつくことができる。ロシアがウクライナを完膚なきまでに叩きのめせなかったとしても、部分的な勝利によってキーウのEUやNATO加盟への希望は宙に絵に描いた餅となる。

 このような結果が世界に及ぼす影響は深刻だ。プーチンは勝利を国内で主張するだろうし、西側の弱点を露呈させることで奮起し、帝国主義的野心を海外でさらに強めるかもしれない。リトアニア、ラトビア、エストニアは、プーチンの次の標的リストに載ることを特に恐れている。中国はすでにモスクワにとってますます信頼できるパートナーとなっており、その姿勢を変える理由はほとんどないだろう。


プーチンの大目標はウクライナ第2の都市ハリコフだ

 今、ウクライナが最も緊急に必要としているのは、何百万発もの砲弾だ。さらにウクライナは、前線部隊を守り、数週間にわたって猛烈なミサイル攻撃と砲撃を受けているキーウに次ぐウクライナ最大の都市ハリコフを防衛するために、少なくとも20基のパトリオット防空システムが必要だとしている。

 ロシアが近々、ウクライナ第2の都市を地上攻撃の標的にするのではないかという懸念が高まっている。

 「ハリコフがウクライナの最初の首都だったというのは象徴的だ。大きな標的だ」とゼレンスキーは先週、本誌の親会社アクセル・スプリンガー傘下のメディア各社とのインタビューで語った。

 ウクライナ軍は、今後数カ月でさらに被害が拡大すると覚悟している。ウクライナ軍総司令官のオレクサンドル・シルスキーは、ウクライナ東部戦線の状況は「ここ数日で著しく悪化した」と警告している。ゼレンスキー自身が別の場所で述べたように、「我々は後退しない方法を模索している」。

 前線の脆弱性に対する懸念は、ウクライナ電力網を麻痺させることを意図したロシアの前例のない攻撃の連打で、さらに強まっている。

 本誌との最近の会合で、ウクライナの政治指導層は、国民の精神が落ち込んでいることを認めた。

 ウクライナの首席外交官クレバは、「パトリオットをよこせ」とキレた。外務省でインタビューに応じた彼は、遅れに苛立ちを隠せず、ロシアの石油施設を攻撃しないといった西側兵器に付随した縛りにも苛立ちを隠せなかった。

 クレバはもちろん、過去2年間にわたる西側同盟国からの支援には無条件で感謝している。しかし彼は、ウクライナは悪循環に陥っていると警告した:ウクライナが必要とする武器が提供されなかったり、遅れると、西側同盟諸国はキーウが後退していると不満を漏らし、今後さらに援助を送る可能性が低くなる。(本誌がクレバと会談した後、ドイツがパトリオットの供与に同意したが、十分かどうかは疑問だ)。

 軍上層部の雰囲気は、クレバ以上に暗い。

 上級将校は、名前を伏せる条件のもと、本誌取材に応じた。彼らは、この夏、ロシアが数を高め、甚大な死傷者を覚悟の上で攻勢に転じると、前線が崩壊する可能性があるという厳しい見通しを示した。さらに悪いことに、彼らは、ウクライナ自身の決意が弱まり、絶望的な物資不足で部隊の士気が低下することを恐れている。

 ウクライナの指揮官たちは、戦闘兵士がもっと多く必要だと叫んでいる。前トップ司令官のヴァレリー・ザルジニーの見積もりでは、50万人の追加兵力が必要だという。

 しかし、ゼレンスキーとウクライナ議会は、大規模な新規招集を命じることに躊躇している。本誌インタビューで、ウクライナ大統領府の有力者イェルマクは、大規模動員を開始しない重要ながら部外者には意外な理由を示した。ゼレンスキーはまだ"国民の大統領"だと彼は言う。「彼にとって、それは非常に重要なことであり、命令されたから何かをするのではなく、国民が自ら何かをすることが非常に重要なのだ」。

 そこに問題がある。西側諸国は必要なことを打ち出せず、その結果、ウクライナの意志を弱めている。


ウクライナは存亡の危機に直面しており、プーチンはウクライナを文字通り地図から消し去ろうとしている

 ウクライナは近隣のヨーロッパ諸国と変わらない。最近の世論調査では、たとえ自国が攻撃を受けていても徴兵を拒否する人が多い。しかし、ウクライナは戦争中の国である。このような存亡をかけた戦いは、国民を総動員しなければ勝つことはできない。

 にもかかわらず、紛争が続く中、最前線から離れたキーウやウクライナの中央部や西部に住むウクライナ人は、ある意味、普通の生活に戻れるのであれば、東部で戦争が激化しても我慢する準備ができているように見える。

 それゆえ、徴兵逃れが行われている。徴兵される可能性のある若者たちは、午後遅くまでヒップスター・バーやテクノ・クラブに入り浸り、自分の時間を使っている。

 ボクシングの元ヘビー級チャンピオンで、現在はキーウ市長を務めるヴィタリ・クリチコは、人々が普通の生活に戻りたいという気持ちは理解できると述べ、それが健全なことだと主張した。彼は本誌に対し、日常的な活動を再開したい願望は、国民を疲弊させようとするプーチンの試みに対する反抗の表現だと語った。

 そうかもしれない。しかし、容赦のない敵に直面し、装備が整わない防衛軍が相手に劣勢になっているのだから、このような手放しの態度はリスクが高く見える。

 追放されたウクライナのザルジニー総司令官が身をもって知ったように、物事がうまくいかないかもしれないという理性的な警告は、コメンテーターやアナリストを窮地に陥れる可能性がある。しかし、批判的思考を停止しても、この戦争に勝つことはできない。

 西側諸国は、制裁がロシアを屈服させると信じ、制裁に過度の信頼を置いてしまった。また、死傷者数の多さでロシア人がプーチンに反旗を翻すとか、クレムリンのクーデターでプーチンが追放されるかもしれないという希望的観測もある。だが、ロシア経済は回復力を保ち、プーチンは権力への支配力を強めている。

 2022年の侵攻を開始する前に、ロシアの指導者は、短時間の戦争ですぐに勝利が得られると、不手際な情報機関のチーフに惑わされていた可能性があるのは事実だ。

 しかし、プーチンには待つ余裕がある。先月、彼はさらに6年の大統領任期を自らに与えた。膠着状態に落ち着くこともできる:ウクライナをNATOからもEUからも締め出し、勝利と敗北の狭間に閉じ込めておくのは勝利に等しい。


膠着状態に陥れば、ウクライナの回復力はどうなるのか

 徴兵センターに志願兵が殺到した初期の愛国的熱狂は蒸発した。推定65万人の戦える年齢の男たちが国外に逃亡し、そのほとんどが国境を越えて密入国している。

 2年前ならウクライナから脱出する列車は女性や子供、高齢者ばかりを乗せていた。今週、この特派員を乗せた列車の乗客の3分の1ほどは、戦闘年齢の男性だった。どういうわけか、彼らは出国許可を手に入れたのだ。

 バンコバ通りにあるゼレンスキーの大統領府で、政府関係者はまだ前向きだと主張している。しかし、西側援助、特にジョー・バイデン大統領が長い間延期している600億ドルの支援策に対しては、もう長くは待てないという。

 ウクライナが勝利に必要な西側援助を得られなかったら、プーチンはどうするだろうか?「すべてを完全に破壊するでしょう。すべてをね」とゼレンスキーはアクセル・スプリンガーのメディアに語った。ウクライナ各地の都市は瓦礫と化し、数十万人が死ぬだろう、と彼は言う。■


Jamie Dettmer is opinion editor at POLITICO Europe



Ukraine is heading for defeat


The West's failure to send weapons to Kyiv is helping Putin win his war.

By JAMIE DETTMER
in Kyiv

APRIL 17, 2024 4:00 AM CET