2025年10月17日金曜日

M1E3次世代エイブラムズ戦車の「試作前モデル」が年末納入へ(TWZ)―ウクライナ戦から今後の陸戦での戦車の有効性に疑問もあるものの、米陸軍はエイブラムズの改良を今後も進める姿勢です

 

M1E3次世代エイブラムズ戦車の「試作前モデル」が年末納入へ(TWZ)―ウクライナ戦で戦車への過剰な期待が否定され、今後の陸戦での戦車の有効性に疑問もありますが、米陸軍はエイブラムズの改良をこれからも進める姿勢です

米陸軍は軽量ハイブリッド電動エイブラムズ戦車のコンセプトを実証するため、小隊規模の試作車両台数を急ぎ必要としている

The U.S. Army is pushing to get a very early prototype of the next-generation iteration of the Abrams tank, or M1E3, before the end of the year.

ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ

陸軍は、次世代型エイブラムス戦車(M1E3)の初期段階のプロトタイプを年内に取得する。M1E3は従来のエイブラムス戦車と大きく異なり、新たな防御能力やその他の先進技術を備えるほか、軽量化と燃費向上を実現すると見込まれている。

陸軍参謀総長補佐官(科学技術担当)兼最高技術責任者であるアレックス・ミラー博士は、本日開催された米国陸軍協会(AUSA)年次総会会場にて、Defense Newsのジェン・ジャドソンとの生放送インタビューでM1E3開発の現状を語った。本誌のハワード・アルトマンも出席者の中に含まれており、その後ミラー博士に追加取材した。

米陸軍が運用中の最新型エイブラムス戦車、M1A2システム強化パッケージバージョン3(SEPv3)の車列。米陸軍

2023年、陸軍は既存のM1A2エイブラムス戦車への段階的な改良計画を破棄し、M1E3への移行を発表した。エイブラムズの現行主契約者であるジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)はM1E3の初期設計契約を昨年獲得した。ミシガン州デトロイト兵器廠に所在する陸軍地上戦闘システムプログラム執行部(PEO-GCS)が本計画を主導している。

「端的に言えば、18ヶ月前に陸軍参謀総長(ランディ・ジョージ将軍)と私がデトロイトを訪れた際、当時のPEOチームは『M1E3の完成は2032年まで待たねばならない』と述べてきた」とミラーはディフェンス・ニュースのジャドソン記者に語った。「我々は『それは受け入れられない』と返答した」

4月以降、陸軍がM1E3の開発加速を図っているとの報道がある

「我々はPEO-GCSとジェネラル・ダイナミクスに課題を与えた」とミラーは続けた。「年末までに1両の戦車を、来年末までに1小隊分の戦車を必要としている。政府が課す多くの手続き上の制約は理解している。重要設計審査や最終設計審査みたいなのは政府のプロセス」だが「兵士の命や手足、視力や聴力に危険が及ばないなら、そういうプロセスは速められるはずだ」と彼は付け加えた。「絶対にやらねばならないことはあるが、問題を3年や4年もただ見つめ続けるだけのプロセスは馬鹿げている。もはや許されない」。

長年エイブラムス計画を管理し、現在はPEO-GCSの代行副部長ライアン・ハウエル大佐が、12月中に「試作前の」M1E3が納入されると陸軍指導部に保証したと陸軍の最高技術責任者は述べた。

「彼は何度も私に言った。塗装がまだ乾いていない状態だ。非常に新しい状態だと」とミラーは語った。

「我々がこれを迅速に進めた方法は、商業化に焦点を当てたことだ」と彼は付け加えた。「つまり、専用設計の動力装置や専用設計の変速機、専用設計の統合セルの代わりに、技術を持つ他社があると言ったのだ」。

ミラーは、初期プロトタイプの動力装置をキャタピラーが提供し、変速機はSAPAから供給されると明かした。将来のM1E3の中核となるのは、現行エイブラムス戦車に搭載されている燃料を大量消費するガスタービン動力装置に代わる、経済的な選択肢となるハイブリッド推進システムだ。

「ハイブリッド方式だ。完全電動ではない」とミラーはジャドソンとのインタビュー後に語った。「完全電動は望んでいない。充電する場所がない。電力を生成するには液体燃料が必要だ。しかし我々が確認しているのは――これはまだ検証していないのであくまで理論上の話だが――各社の供給方法では燃料効率が約40%向上するだろう」

陸軍は以前、総重量目標を60トンに設定していると発表している。最新型M1A2システム強化パッケージバージョン3(SEPv3)は、完全な戦闘装備時で78トンに達する。重量増加は、1970年代に初代が配備されて以来、エイブラムス戦車シリーズで主要な課題となっていた。

また陸軍は統合型アクティブ防護システム(APS)がM1E3の主要機能となると強調している。同軍は既に、イスラエル設計の実戦で実績のあるトロフィーAPS既存のエイブラムス戦車の一部に統合済みだ。トロフィーは、いわゆるハードキル型APSであり、反動式発射体の一斉射撃を用いて、飛来する対戦車誘導ミサイル(ATGM)や、その他の種類の歩兵用対戦車兵器(肩撃ち式ロケットやロケット推進手榴弾など)を撃破、あるいは少なくとも妨害する。現在、ドローン対策機能も備えた同システムのバージョンが存在する。

M1E3向けにさらに進んだ新システムは、動力・重量要件や戦車構造設計の面で利点をもたらす可能性がある。いずれにせよ、ハードキル式APSは今後、戦車や重装甲車両にとって重要性を増すと予想され、対ドローン防御の追加層としての役割も含む。

トロフィーAPSを装備した米陸軍M1エイブラムス戦車。米陸軍提供/レオナルドトロフィーAPSを装着したM1エイブラムス戦車。米陸軍提供/レオナルド

米陸軍は既に、運用中のエイブラムス戦車やその他の重装甲車両に追加装甲キットを装着する検討を進めている。これによりドローンによる上空からの攻撃、および程度は低いもののATGM(対戦車誘導ミサイル)に対する防御力を強化する狙いだ。この種の装甲強化は最初にロシア軍戦車に現れ、ウクライナ全面侵攻の前兆となった。現在では両陣営の装甲車両及び非装甲車両に常設装備として定着している。この装甲強化の傾向は着実に世界各国で見られる。

追加の対ドローン装甲スクリーンやその他の防護機能を備えたウクライナ軍のM1エイブラムス戦車。メティンベスト社提供

M1E3には現行型エイブラムスに搭載されている120mm砲よりも大口径あるいはより高性能な主砲が採用される可能性も指摘されている。いずれの兵器が選ばれるにせよ、陸軍は自動装填装置との組み合わせを検討中だ。これは米軍や西側諸国がこれまで戦車設計で避けてきた要素である。

現行エイブラムスの乗員4名には、120mm砲の装填を主任務とする乗員が含まれている。この工程を自動化すればM1E3では乗員数を削減できる。その結果、砲塔設計や戦車の他の部分にもより大きな変更が加えられる可能性がある。小型化砲塔は輪郭を低くし、重量削減に寄与する。

M1E3の武装パッケージは主砲以外にも従来型エイブラムズと異なる可能性がある。今週のAUSA会議でGDLSは「精密効果・偵察用キャニスター収納型発射システム(PERCH)」を公開した。これはエアロバイロンメント製スイッチブレード300/600型徘徊型兵器を発射可能だ。同社によれば、PERCHは現行のM1A2戦車やストライカー軽装甲車への搭載を想定した設計だ。

M1E3には他にも、目標捕捉能力や各種搭載センサー、ネットワーク通信システムなど、数多くの改良が施される。陸軍が次世代戦車の開発加速を推進する背景には、モジュール性とオープンアーキテクチャの重視がある。これにより開発過程で能力統合・改良が容易になり、将来的な改良の組み込みも可能となる。

現時点では、このプレプロトタイプが実際の量産型M1E3をどの程度反映しているかは不明だ。また、GDLSが2022年にエイブラムズX次世代実証機を公開していた点も注目に値する。この実証車両には、陸軍が将来のM1E3に求める多くの機能が搭載されていた。

陸軍のチーフ・テクノロジストであるミラー博士は本日、本誌のハワード・アルトマンとの対談で、来年までに小隊規模のプレプロトタイプを導入すれば疑問の多くに答えることに直結すると説明した。

「小隊を早期配備したい理由は、装甲旅団に何が有効で何が不十分かを判断してもらうためだ」と彼は述べた。「3~4年も待たずにフィードバックを得て、GD(ジェネラル・ダイナミクス)に改良させ、翌年には次の改良型を配備できるようにするためだ」。

「我々が避けたいのは、戦車兵が新型戦車を見るのが完成時で、何も変更できず、しかもそれが6年後になるという状況だ」と彼は続け、「座席に関するフィードバックを得る必要がある。砲撃に関するフィードバックを得る必要がある。自動装填装置に関するフィードバックを得る必要がある」。

ここで特筆すべきは、最終的なM1E3設計が、将来の戦場における戦車や重装甲車両の役割に関する広範な見解の変化を反映している可能性が高い点だ。2023年に公表された陸軍科学委員会による非機密研究は、脅威の生態系が進化・拡大する中で、2040年代の高性能戦場でエイブラムズの将来型や派生型は支配的な存在とならないとの結論に達している。米海兵隊は既に全てのM1戦車を廃棄した。これは新たな遠征型・分散型作戦概念に沿った措置である。

2023年に発表された陸軍科学委員会報告書に添付されたブリーフィング資料の一枚。M1エイブラムスが直面する既存および新興の脅威を概観している。陸軍科学委員会 

優先順位の大幅見直しの中で、陸軍は今年初めにも、GDLSが開発した105mm主砲を搭載した軽戦車型の装甲火力支援車両「M10ブッカー」を打ち切った。同車両は歩兵支援を目的としていた。陸軍は当初500両強のブッカーを調達する目論見で、運用部隊への最初の車両配備を進めていたところだった。

陸軍の戦車部隊構造計画が今後どう進化しても、同軍は12月の試作機納入を機に次世代M1E3の開発をさらに加速させる方針だ。■


M1E3 Abrams Next-Gen Tank “Pre-Prototype” To Be Delivered By End Of Year

The Army wants a platoon of prototypes very quickly to prove out its lighter-weight hybrid-electric Abrams tank concept.

Joseph Trevithick, Howard Altman

Published Oct 15, 2025 1:46 PM EDT

https://www.twz.com/land/m1e3-abrams-next-gen-tank-pre-prototype-to-be-delivered-by-end-of-year


ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭より『The War Zone』チームの一員である。それ以前は『War Is Boring』の副編集長を務め、『Small Arms Review』『Small Arms Defense Journal』『ロイター』『We Are the Mighty』『Task & Purpose』など他媒体にも寄稿している。


ハワード・アルトマン

シニアスタッフライター

ハワードは『The War Zone』のシニアスタッフライターであり、『Military Times』の元シニアマネージングエディターである。それ以前は『Tampa Bay Times』のシニアライターとして軍事問題を担当した。ハワードの作品は『Yahoo News』、『RealClearDefense』、『Air Force Times』など様々な出版物に掲載されている。



2025年10月16日木曜日

トランプ大統領にはマドゥロ大統領追放で新たな戦略がある(POLITICO) ― 大規模侵攻は考えにくく小部隊によるマドゥロ誘拐や殺害が作戦メニューに入っているのでは。中南米の左翼政権の牽制も米政権は期待しているのでしょう

 

トランプ大統領にはマドゥロ大統領追放で新たな戦略がある(POLITICO) ― 大規模な米軍侵攻は考えにくく小部隊によるマドゥロ誘拐や殺害が作戦メニューに入っているのでは。中南米の左翼政権への牽制もトランプ政権は期待しているのでしょう

ヴェネズエラ指導者は米大統領の怒りをかわしてきた

2025年5月25日、カラカスで支持者に演説するヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領。トランプ政権は彼を麻薬王と呼んでいる。| 撮影:フェデリコ・パラ/AFP via Getty Images

ドナルド・トランプ大統領は1期目の政権時にニコラス・マドゥロ・ヴェネズエラ大統領の権力追放をあからさまに試みた。彼はヴェネズエラの独裁者を不正選挙で非難し、マドゥロ政権への米国の承認を取り消し、カラカスに制裁を課し、他の国々にマドゥロ大統領の辞任を迫るよう働きかけた。

しかし、それは不調に終わった。

2期目に入ったトランプ大統領は、マドゥロ大統領に対し以前と違ったアプローチを取り、そのメッセージは、トランプ大統領としては珍しく、直接的なものではない。トランプ大統領は、マドゥロ大統領は非合法な指導者であると主張し続けているものの、カラカスでの政権変更については「我々は話していない」と述べている。その代わりに、この強権的な指導者が麻薬王であり、危険な犯罪者であるという長年の非難を強調している。この状況に詳しい関係者によると、トランプ大統領が麻薬カルテルとの戦いを続ける中で、マドゥロ大統領を追い出すことが計画されているという。

この取り組みには、関連組織をテロ組織指定、ヴェネズエラからの麻薬密輸船への軍事攻撃、マドゥロの懸賞金5000万ドルへの引き上げ、カラカスとの外交交渉断絶などが含まれる。表向きは政権転覆が目的ではないが、麻薬対策の圧力がマドゥロを倒す結果となれば、大統領とそのチームは大いに喜ぶだろう。

トランプ大統領は世界の独裁者の多くを称賛しているが、マドゥロに対しては長年、本心から嫌悪してきた。この南米の指導者は社会主義的ルーツを持ち、トランプが支持するハンガリーのオルバン首相やロシアのプーチン大統領のような極右的傾向とは程遠い。そして——これは長年複数の米当局者から聞いた話だが——トランプは、かつて活気に満ちていたヴェネズエラ経済をマドゥロが荒廃させたことに心底愕然としている。

「マドゥロの退陣を望むかだって?もちろんさ」とトランプ政権高官は米大統領とその側近について語った。「彼に多大な圧力をかける。彼は脆弱だ。我々が直接的な行動を起こさずとも、この圧力だけで彼が倒れる可能性は十分にある」、

しかしトランプは最終的に「あらゆる手段」を講じる覚悟があるのか? ヴェネズエラへの侵攻部隊派遣や、マドゥロの名前を刻んだミサイル発射も選択肢か?トランプ陣営はあらゆる可能性を排除していないようだ。

当局者によれば、トランプはヴェネズエラ国内の麻薬関連施設への空爆を含む計画を有しているが、マドゥロを直接排除する命令は出していないという。それでも、協議に詳しいある関係者は、マドゥロが麻薬王かつテロリストと見なされれば、正当な標的となり得ると示唆した。「起訴された麻薬密売人やテロリストを我々は常に追っているのではないか?」と同関係者は述べた。機密性の高い内部協議について話すため、両者には匿名を条件とした。

ホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。

この手法に特別な呼称があるかは不明だ。裏工作による政権転覆?呼称はどうあれ、トランプ政権がこれまで取った措置より実行が困難かもしれない。

米国は独裁者に対し様々な圧力作戦を試みてきた。経済制裁を重点的に用いた例(イラン、キューバ)もあれば、反政府勢力に武器を供与した例(アフガニスタン)もある。技術的には政権転覆が目的ではなかった米軍介入(リビア)もあれば、目的だったケース(イラク)もある。

こうした取り組みは独裁者を弱体化させ、時にはその失脚を早めることもある。しかし、何年もかかる場合もあり、米国による圧力か他の要因か、失脚の直接原因が不明確なことも多い。

パナマの軍事支配者で、長年CIAにとって厄介な存在だったマヌエル・ノリエガを米国が失脚させた事例は、マドゥロとの対峙と比較する上で興味深い。米国は1980年代にパナマに制裁を課し、ノリエガを麻薬密輸容疑で起訴し、彼が統治する傀儡政権との外交的接触を拒否した

しかしノリエガが権力を失ったのは、1989年末に米国が2万人以上の兵力でパナマに侵攻し彼を拘束するまで待たねばならなかった。侵攻の背景にはノリエガ勢力の米国民への攻撃やパナマ運河支配への懸念もあったが、当時のジョージ・H・W・ブッシュ大統領は自らの決断を説明する際に麻薬関連容疑を必ず言及した。

ヴェネズエラは大きく複雑な国であり、トランプ政権のアプローチは予測不能だ。国民が繰り返し彼に反対票を投じているという強力な証拠があるにもかかわらず、マドゥロは治安部隊の支持で長く権力を維持してきた。

トランプは麻薬カルテル対策の強化には乗り気だが、マドゥロ打倒のための本格的な侵攻部隊を派遣するとは考えにくい。その理由の一つは、MAGA支持層には強い孤立主義的傾向があり、警戒感を抱かせる恐れがあるからだ。

しかし、麻薬王マドゥロだけを標的とした小規模な部隊なら?可能性はある。MAGA支持層は麻薬カルテルとの戦いなら支持している

元米政府高官らが筆者に語ったところでは、公式に「政権変更」と名乗らずに反マドゥロ作戦に固執することには他の利点もある。トランプがマドゥロ追放を公言しながら失敗すれば弱腰と見られる(前回も印象は良くなかった)。全面侵攻を避け「法執行任務」と主張する限り、米政府はヴェネズエラで発生する可能性のある高コストな余波への責任を軽減できる。

ジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障担当を務めたピーター・フィーバーは、「トランプ政権は、安価な政権交代によって『ポタリー・バーン・ルール』の罰則を回避できると計算しているのではないか」と述べた。これは、コリン・パウエル元国務長官の「イラクを破壊したら、イラクを購入したことになり、その後の治安安定に責任を持つことになる」という有名な格言である。

ヴェネズエラには、政権が倒れた場合に備え計画を立てている、安定した野党が存在している。野党の主要人物マリア・コリーナ・マチャドが金曜日、ノーベル平和賞を受賞した。これはトランプ自身が切望している栄誉である。マチャドは、ノーベル賞の一部をトランプに捧げ、「私たちの大義を断固として支持してくれた」と感謝した。

この議論に詳しい人物によると、米国当局者はヴェネズエラ野党と連絡を取り合ってはいるものの、トランプ政権は野党と行動を調整しているわけではないという。

マチャドの代表であるデビッド・スモランスキーは、野党がカルテル対策についてトランプ政権と調整しているかどうかについて言及を避けた。しかし、スモランスキーは、マチャドの事務所は、ヴェネズエラから発生している麻薬活動に関する情報の提供を含め、政権や議会と常に連絡を取り合っている、と述べた。

ヴェネズエラで長年政治犯として収監された野党活動家レオポルド・ロペスは、米国政府がようやく自分らが長年主張してきた見解に追随したと指摘。「マドゥロは国家元首ではなく犯罪組織の首脳として扱うべきだ」と述べている。

ロペスは、マドゥロを有名な麻薬王と比較した。「パブロ・エスコバルがコロンビアの大統領だったとしたら、パブロを追及することは、政治的な変化を可能にするのと同じことだろう」とロペスは語った。

マドゥロに対する米国の措置(その一部はニューヨーク・タイムズ紙が以前報じた)は、トランプ大統領の側近たちの個人的な目標とも合致している。

国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官代理を務めるマルコ・ルビオ(キューバ系フロリダ州出身)は、ヴェネズエラ政権がカラカスの同盟国であるキューバ政権に悪影響を及ぼす可能性があることを理由に、かねてからヴェネズエラ政権の打倒を望んでいた。強硬な反移民派であるトランプ大統領の顧問、スティーブン・ミラーは、カラカスに新政権が誕生すれば、特に政権崩壊後の混乱が限定的であれば、米国在住のヴェネズエラ人の国外追放が容易になると期待している。トランプ大統領の側近たちはまた、マドゥロ大統領に対する弾圧が、他のラテンアメリカの左派指導者たちに不安を与え、麻薬の流通を減少させることを望んでいる。

筆者が話を聞いた人々は、トランプ大統領が、麻薬カルテルに対する、しかし厳密には政権交代ではない作戦を、どのように、そして果たしてエスカレートさせるかについては予測を避けたが、彼が近い将来、その作戦を縮小することはないだろうと示唆している。

何しろ大統領は、麻薬運搬船とされる船舶への空爆を承認することを大いに楽しんでいるからだ。

「相当の間、毎週のようにボートを水面から吹き飛ばし続けられるだろう」とトランプ政権関係者は語った。■


Trump Has a Different Plan to Oust Maduro This Time Around

Venezuela’s leader has survived the US president’s wrath before.


Venezuelan leader Nicolas Maduro, speaking to supporters in Caracas on May 25, 2025, has been labeled a drug lord by the Trump administration. | Federico Parra/AFP via Getty Images

By Nahal Toosi10/12/2025 10:00 AM EDT

https://www.politico.com/news/magazine/2025/10/12/trump-war-on-drugs-venezuela-regime-change-column-00603440


B-52爆撃機がヴェネズエラ沖を数時間にわたり飛行した意味(TWZ)― 日本人が意識していないのがヴェネズエラを巡る緊張です。麻薬問題を超えて中南米での米国権益を守るというトランプ大統領の意思がポイントです

ヴェネズエラ沖に3機のB-52爆撃機が出現したことは、拡大中の米軍の南カリブ海作戦で新たな展開を示している

A trio of U.S. Air Force B-52 bombers was tracked flying orbits in international airspace off the coast of Venezuela earlier today.

B-52爆撃機のストック写真。

米空軍

空軍のB-52爆撃機編隊が本日早朝、ヴェネズエラ沖の国際空域を飛行した。これはカリブ海地域における米軍増強とい動きの中で行われた大規模な軍事力の示威であり、表向きは違法薬物の北米流入を阻止するのが目的だ。同時にトランプ政権はヴェネズエラの強権者ニコラス・マドゥロ政権へ圧力を強めており、致死的な海上阻止作戦を超えた直接的な軍事行動の可能性が着実に高まっている。

BUNNY01、BUNNY02、BUNNY03のコールサインの3機のB-52は、今朝早くルイジアナ州バークスデール空軍基地を離陸し南下した。その後東へ進路を変え、ヴェネズエラがマイケティア飛行情報区(FIR)と呼ぶ国際空域へ進入した。

B-52はマイケティアFIR内を約2時間旋回して離脱した模様だ。米軍のF-35統合打撃戦闘機(おそらく海兵隊のB型で、プエルトリコのローズベルト・ローズ海軍基地から飛来)や、空軍の空中給油機、その他の航空機も、同じ海域付近でここ数週間飛行する様子を追跡されている。

未確認情報によれば、ヴェネズエラ空軍の米国製F-16戦闘機小規模部隊のうち少なくとも1機が、B-52が沖合を旋回中にカラカス西部のエル・リベルタドール空軍基地から離陸した。ただしこれは無関係の訓練飛行だった可能性もある。爆撃機を迎撃する試みがあったかは不明だ。マドゥロ大統領は本日、ヴェネズエラ近海国際水域で米国が麻薬密輸船と称する船舶を攻撃した事件を受け、新たな緊急演習を命じた。9月には、米国の潜在的な脅威から国境地帯と重要石油インフラを防衛するため、約2万5千人の兵士を配備したと表明している。

本稿執筆時点では、B-52が基地に帰還したか、あるいは依然として飛行中かは不明である。本誌はカリブ海上空への爆撃機出撃に関する詳細情報を得るため、空軍グローバルストライク司令部(AFGSC)および南米方面空軍(AFSOUTH)に問い合わせた。AFSOUTHは国防総省へ連絡するよう指示してきた。

特筆すべきは、B-52爆撃機をはじめ、空軍のB-1爆撃機やその他の米軍戦闘機が、数十年にわたり断続的にカリブ海上空で麻薬取締作戦に参加してきた事実だ。特にB-52が有する航続距離と標的捕捉能力は、麻薬密輸船の発見と追跡調査に有用である。

同時に、B-52をカラカスにここまで接近飛行させる行為は、明らかにマドゥロ政権へのメッセージ発信を意図したものだ。同爆撃機はスタンドオフ巡航ミサイルの連射が可能で、陸上及び海上目標に使用可能な各種通常兵器を搭載できる。ただし、ヴェネズエラ軍は防空能力が限定的ではあるが、依然として脅威となり得る。B-52など航空機によるスタンドオフ攻撃は、将来の米軍による国内目標への直接行動において、味方部隊のリスク低減に寄与する可能性が高い。さらに防空システムを標的とし、後続作戦の道を開くことも可能だ。

本日早朝、米空軍のC-17輸送機がカリフォーニア州エドワーズ空軍基地からプエルトリコのホセ・アポンテ・デ・ラ・トーレ空港へ直行する異例の飛行が確認された。この出撃の目的は現時点で不明だ。エドワーズ基地は作戦部隊の拠点ではなく、空軍随一の試験基地である。

既に同地域では米軍の大きな増強が行われており、前述の通り海兵隊航空機が旧ローズベルト・ローズ海軍基地に展開している。空軍のMQ-9リーパーや、AC-130Jゴーストライダーガンシップもプエルトリコから出撃しているのが確認されている。ここで指摘しておく価値があるのは、AC-130Jは特殊作戦部隊の襲撃支援も含まれるということだ。

その他多数の米空軍・海軍資産も現在この地域で活動中である。これには、イオージマ強襲揚陸群(ARG)/第22海兵遠征部隊(MEU)、複数のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦、タィコンデロガ級ミサイル巡洋艦、ロサンゼルス級原子力攻撃型潜水艦、さらにはオーシャン・トレーダー(特殊作戦母艦)も含まれる。

結局のところ、現在この地域には、合計で約 10,000 人の米兵が前線展開していると報じられている。先週、米南部軍(SOUTHCOM)は、西半球全域での麻薬対策作戦の拡大を支援するため、第 II 海兵遠征軍(II MEF)の部隊が主導する新たなタスクフォースを立ち上げた。

9月以来、米軍はカリブ海で小型ボートに対し少なくとも5回の致命的な攻撃を行い、麻薬密輸に関与したとされる個人多数を殺害した。ドナルド・トランプ大統領が最新の攻撃について昨日発表した。これらの作戦とその背後にある法的権限について、深刻な疑問が投げかけられている。

それ以外にも、ここ数週間、トランプ政権がマドゥロへの圧力を強めていることを報じる報道が絶え間なく続いている。ちょうど今日、ニューヨーク・タイムズ紙、トランプ大統領が中央情報局(CIA)に対し、ヴェネズエラおよびカリブ海のその他の地域での秘密作戦の実施を承認したと報じた。先週の報道では、米国当局者を引用し、トランプ大統領がヴェネズエラ当局との現在の行き詰まりを外交的に解決する取り組みの終了を命じたと報じられた。

トランプ政権の一部は、マドゥロ大統領を放逐する行動を推進していると報じられている。2020年以降、独裁的なヴェネズエラ指導者は麻薬密輸などの容疑で米国から指名手配されており、米当局は現在、本人の逮捕に5000万ドルの懸賞金をかけている。■


B-52 Bombers Just Flew For Hours Off Venezuela’s Coast

The B-52 sorties are a major show of force aimed at Venezuelan dictator Nicolas Maduro as U.S. forces further step up operations in the Caribbean.

Joseph Trevithick

Published Oct 15, 2025 4:38 PM EDT

https://www.twz.com/air/b-52-bombers-just-flew-for-hours-off-venezuelas-coast



ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭より『The War Zone』チームの一員である。それ以前は『War Is Boring』の副編集長を務め、その署名記事は『Small Arms Review』『Small Arms Defense Journal』『ロイター』『We Are the Mighty』『Task & Purpose』など他媒体にも掲載されている。


 

2025年10月15日水曜日

C-130Hの8枚羽根NP2000プロペラ換装計画は米空軍が中止(TWZ)―米空軍はH型はもう見切りをつけたようですが、わが航空自衛隊も決断を迫られますね J型が日の丸をつけて飛ぶ日がやってきそうです

 


C-130Hの8枚羽根NP2000プロペラ換装計画は米空軍が中止(TWZ)―米空軍はH型はもう見切りをつけたようですが、わが航空自衛隊も決断を迫られますね J型が日の丸をつけて飛ぶ日がやってきそうです


C-130HへのNP2000プロペラ換装は性能と整備面で利点があるが、米空軍は新型C-130Jの購入に注力している

空軍は、C-130H ハーキュリーズ輸送機の老朽化に対し、8枚羽根のNP2000プロペラを追加装備しない方針を決定した。これにより、同型機のアップグレード計画は縮小され、新型C-130J型機への移行がさらに進められる。NP2000はH型機の推力と燃料効率を向上させ、信頼性を高めつつ整備需要を削減するもので、旧型ハーキュリーズの運用継続を支えてきた。

八枚羽根NP2000プロペラを装備したC-130H。USAF

国防総省は2025年9月29日付の予算再編成文書を発表した。これは各種資金を汎用近代化口座へ移管する詳細を記したもので、C-130HのNP2000プロペラ改修用に確保されていた約2400万ドルも含まれていた。予算内の資金流用には議会の承認が必要だ。

文書には「C-130H NP2000八枚羽根プロペラ改修計画の完了に伴い、議会増額分より防衛近代化基金(全軍共通)への資金移管が可能となった」と記されている。「C-130Jの追加調達により数量面での効率化が達成された。これにより、未改修のC-130Hは廃棄されるため、必要なC-130H NP2000八枚羽根プロペラ改修機数が減少した」とある。

空軍は「2025年6月時点で90機のC-130Hに[NP2000]の設置を完了した」と、同軍が提出した最新の2025会計年度予算要求書に記載されているが、これがこれまでの総改修機数を示すものかどうかは不明である。ただし、2026会計年度末までに空軍のC-130H保有数が92機まで減少すると見込まれていることから、この数字は少なくとも総数に近いと考えられる。これには空軍州兵部隊に配備されている機体も含まれる。2021年時点で、空軍は約140機のH型機のプロペラをアップグレードする計画を立てていた。空軍がC-130のH型を初めて運用し始めたのは1970年代半ばである。


空軍には10機のLC-130Hもある。極域周辺での作戦用に特別に構成された機体であり、NP2000プロペラを装着している。米海軍のC-130T輸送機およびKC-130T給油機の一部(いずれもH型を基に開発された機体)も、現在では新型プロペラを装備している。

NP2000 は、海軍の E-2CE-2D ホークアイ 空中早期警戒管制機、 C-2 グレイハウンド 空母搭載輸送機 (COD) にも標準装備されている。

空軍の C-130H に搭載されている 4 枚羽根のプロペラを NP2000 に交換し、新しい電子制御システムを導入する作業は、2010年代半ばにさかのぼる。このプロペラは、H型のハーキュリーズ航空機に最大 20% の追加推力を与え、さまざまな要因にもよるが、離陸に必要な距離を約 984 フィート(300 メートル)短縮できると、アップグレードパッケージの現在の請負業者コリンズ・エアロスペースは述べている。推力の増加は、燃費の向上にもつながる。

さらに、NP2000 はC-130H に元々搭載されていた 4 枚翼のプロペラよりも振動が少ないため、メンテナンスの必要性が低減される。また、静粛性が高く、信頼性にも優れているという利点もある。

空軍はさらに、C-130Hのロールスロイス(旧アリソン)T56 シリーズターボプロップエンジンに追加のアップグレードを施し、NP2000 と組み合わせた。これによりさらなる性能とメンテナンス上のメリットがもたらされている。

新しい NP2000 プロペラを取り付ける過程にある米空軍の C-130H。USAF

予算再編成文書が指摘しているように、空軍の優先事項は、より多くの C-130J を取得することだ。新しいロールスロイス AE 2100 シリーズターボプロップエンジンと 6 枚羽根のプロペラは、以前のモデルと比較して J モデルに見られる改良点の一つだ。

C-130J ハーキュリーズ。ロッキード・マーティン

2029年までに、空軍はC-130Hの機体数が61機に減少すると予測している。これは2026年度予算要求に基づく予測である。残りの特殊仕様機であるLC-130Hを含め、H型機がいつ完全に退役するかは不明である。現在、少なくとも後者のフリートを新しい LC-130J で補完する作業が進められている。

少なくとも、空軍の C-130H 向けの NP2000 アップグレードプログラムは終了した。■


C-130H Eight-Bladed NP2000 Prop Upgrade Plans Cut Short By USAF

Refitting C-130Hs with NP2000 propellers offers performance and maintenance benefits, but the USAF is fully focused on buying newer C-130Js.

Joseph Trevithick

Published Oct 8, 2025 7:44 PM EDT

https://www.twz.com/air/eight-bladed-np2000-prop-upgrade-plans-for-usaf-c-130hs-cut-short


ジョセフ・トレヴィシック

副編集長

ジョセフは2017年初頭より『The War Zone』チームの一員である。それ以前は『War Is Boring』の副編集長を務め、その署名記事は『Small Arms Review』『Small Arms Defense Journal』『ロイター』『We Are the Mighty』『Task & Purpose』など他媒体にも掲載されている。