2025年10月22日水曜日

ヴェネズエラをにらみ展開中の米海軍にロシアが供与したヴェネズエラ空軍の超音速対艦ミサイルが脅威となる(TWZ)

 

ヴェネズエラの超音速対艦ミサイルが米軍艦艇に現実的な脅威となる(TWZ)

ロシア製Kh-31対艦ミサイルはSu-30MK2V戦闘機から発射され、ヴェネズエラ沿岸で活動する米軍艦艇に危険な存在だ

With a steady drumbeat of reports raising the prospect of some kind of U.S. military intervention in Venezuela, it’s worth looking at what is potentially one of its most threatening weapons: the Russian-made Kh-31 air-to-surface missile. Known to NATO as the AS-17 Krypton, the ramjet-powered missile is available in both anti-radiation and anti-ship versions, with the ship-killer being the most relevant in this context.YouTube スクリーンキャプチャ

ェネズエラ沖で活動する米軍艦艇が脅威に晒されている。その脅威とはロシア製高速空対地ミサイルKh-31だ。NATOではAS-17クリプトンとして知られるこのラムジェット推進兵器は、対レーダー型と対艦型の両方が存在する。このうち艦艇を破壊する対艦型が要注意だ。この現実と、ヴェネズエラへの軍事介入の可能性を示唆する報告が絶え間なく続いている状況を踏まえると、同国の保有する兵器体系の能力を詳しく検証する価値がある。

ヴェネズエラの防空システムの各層については以前詳細に論じたが、同国空軍(ヴェネズエラ・ボリバル軍事航空、AMBV)の主要戦力の一つが、Kh-31の発射プラットフォームとなっているSu-30MK2V フラッカー多用途戦闘機で、2006年から2008年にかけて24機が納入され、現在も21機が現役で運用されている。


Maracay, VENEZUELA: A Russian Sukhoi aircraft lands at the Venezuelan Air Force airport in Maracay, 100km away from Caracas, Venezuela, 10 December 2006. AFP PHOTO/Jenny FUNG (Photo credit should read JENNY FUNG/AFP via Getty Images)2006年12月、ヴェネズエラ・カラカスから約60マイル離れたマラカイの空軍基地に着陸するヴェネズエラ空軍のSu-30MK2V。JENNY FUNG/AFP via Getty Images AFP

ヴェネズエラがSu-30用に対レーダーKh-31Pと対艦Kh-31Aの両方を導入したかは完全には明らかではない。しかし少なくともKh-31Aは供給されたようだ。ヴェネズエラ沿岸を飛行するAMBV(武装)Su-30が同ミサイルを搭載している様子を公式映像が示している。最近では、米軍の潜在的な侵攻に対する決意表明として、カラカスがこの種の映像を配布している。ヴェネズエラは過去にも、これらのミサイルを用いた対艦即応警戒訓練を公開していた。さらに、Kh-31Pも対艦能力として使用可能であり、艦艇レーダーを捕捉して攻撃する。


ヴェネズエラ空軍のSu-30がKh-31をで艦船へ模擬攻撃を実行する映像がある:

Kh-31シリーズミサイルの開発は、1970年代後半の旧ソ連で始まった。当初の要求仕様は、高速対レーダーミサイルであり、当時新たに登場した西側の防空システム(米陸軍のペイトリオット地対空ミサイルシステムや米海軍のイージス戦闘システムなど)に関連するレーダーを追尾・破壊できるものであった。

対艦ミサイルであるKh-31Aは1990年に生産開始された。ロシア国外では輸出面で成功を収め、中国、インド、ベトナムなど約12カ国が運用している。

Kh-31の特徴と各種ロシア軍機への搭載構成を示すインフォグラフィック。図示されているのはKh-31P対レーダー型ミサイル全体であり、対艦型Kh-31Aの代替誘導方式と弾頭構成も下部に示されている。ボーイング

Kh-31Aの詳細を見ると、約18マイルのロックオン距離を持つアクティブレーダーシーカーを搭載している。このシーカーは発射前ロックオンと発射後ロックオンの両モードで動作する。また、水上低高度飛行を正確に実行するため、無線高度計を備える。全てのKh-31はロケット・ラムジェット推進システムを採用し、持続的な超音速飛行を実現している。兵器後部のロケットが、ラムジェットが作動するのに最適な速度へ加速する。

終端速度の高さと相まって、Kh-31Aは艦船の側面に貫通して爆発する貫通型弾頭を備える。これはKh-31Pの高爆発性/破片弾頭とは対照的だ。波間をかすめるように飛行しながら最大15Gの多軸機動を可能とする特性が、このミサイルの撃墜を困難にしている。

性能面では、Kh-31Aの最大射程は31マイル(約50km)、最小発射距離は9.3マイル(約15km)である。長射程のKh-31ADも存在し、最大射程は75~100マイル(約120~160km)だが、ヴェネズエラに供給されたかは不明だ。

このミサイルは固体燃料ロケットブースターでマッハ1.8まで加速される。固体燃料が尽きるとエンジンは切り離され、ミサイル内部がラムジェットの燃焼室へと変形する。これにより高度53,000フィート(約16,000メートル)でマッハ3.5、海面高度ではマッハ1.8まで加速される。

Kh-31。ロソボロネクスポート

発射時の重量は1,323ポンドで、このうち192ポンドが弾頭である。Kh-31Aは全長15フィート5インチと大型のミサイルだ。

米海軍がKh-31Aの脅威をいかに深刻に受け止めているかは、ロシアからミサイルを購入し、艦艇の防空システム試験用の対艦ミサイル標的として転用した決定に如実に表れている。こうして生まれた標的ミサイルはMA-31と呼ばれ、我々が過去に詳細に解説したテーマである。

MA-31の性能範囲を他の標的と比較したボーイングのブリーフィング資料。Boeing

Boeing

今日、Kh-31Aは旧式技術であり、米海軍が(非実戦シナリオではあるが)実際に撃破した経験を持つ兵器ではある。しかし対艦兵器としての威力を過小評価すべきではない。


ヴェネズエラ空軍のSu-30戦闘機翼下に実戦配備されたと見られるKh-31シリーズミサイルを捉えた動画の静止画。via X

With a steady drumbeat of reports raising the prospect of some kind of U.S. military intervention in Venezuela, it’s worth looking at what is potentially one of its most threatening weapons: the Russian-made Kh-31 air-to-surface missile. Known to NATO as the AS-17 Krypton, the ramjet-powered missile is available in both anti-radiation and anti-ship versions, with the ship-killer being the most relevant in this context.

別の静止画では、ヴェネズエラ空軍のSu-30戦闘機が翼下に2発のKh-31シリーズミサイルを装備している様子が確認できる。via X via X

特に、米海軍の各種艦艇が現在ヴェネズエラに近い海域を航行中であり、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領への圧力を目的とした作戦を展開していることを考慮すれば、Kh-31Aは真剣に受け止めるべき脅威となる。

同地域における米海軍の展開には、イオージマ強襲揚陸艦(ARG)/第22海兵遠征部隊(MEU)が含まれる。3隻に4,500名以上の水兵と海兵隊員が乗艦している。ワスプ強襲揚陸艦「イオージマ」と、サンアントニオ強襲揚陸艦「サンアントニオ」および「フォートローダーデール」である。

さらに同海域には、アーレイ・バークミサイル駆逐艦数隻、タイコンデロガミサイル巡洋艦1隻、そしてオーシャン・トレーダー(特殊作戦母艦)が展開している。特に巡洋艦がオーシャン・トレーダーを影のように追尾している事実は、国防総省がこの船舶への脅威を極めて深刻に受け止めていることを示している。『オーシャン・トレーダー』は対艦ミサイルに対する自艦防御能力を持たず、時にヴェネズエラ沿岸の至近距離で活動してきた。

『アーレイ・バーク』級については、海軍が一部艦艇の防御強化に取り組んでいる点を想起すべきだ。スペイン・ロタに前線配備されている艦艇は、シリア沖や黒海といった高脅威地域における対艦巡航ミサイルに対処する物理的・非物理的システムを装備している。黒海はほぼ内陸に囲まれた超対艦ミサイル交戦区域だ。艦隊全体の各種水上戦闘艦では、範囲が画期的なものも含む電子戦能力の強化が継続中である。

これらの艦艇はKh-31に対処可能であり、海軍は過去数年間で艦艇への複合攻撃防御に関して多くの知見を得た。だが、だからといって無視できるわけではない。その速度は反応時間を極めて短くする。特に、艦艇がヴェネズエラ沿岸で活動する場合、早期警戒に制約が生まれることを考慮すればなおさらだ。

米国がマドゥロ政権に対して軍事資産をどう活用するかは依然不明だ。8月に軍事増強が加速した際、米当局者はCNNに語った。麻薬密輸組織の脅威を封じ込めるため、同海域での海軍部隊の移動を命じたと。

過去に概説したように、ARGや様々な水上戦闘艦、その他のハイエンド資産の配備は、マドゥロとカルテルに対して非常に強いメッセージを送る。ドナルド・トランプ大統領が決断すれば、国防総省は空爆を実施したり、特殊作戦による急襲で国際水域から小部隊を地上に投入したりすることも可能だ。これらはマドゥロ大統領自身ではなく、マドゥロ大統領と関係のあるカルテルを標的とするのかもしれないが、それでもなお前例のないことだろう。

Venezuela's President Nicolas Maduro and First Lady Cilia Flores parade in a military vehicle during celebrations for the Independence Day, in Caracas on July 5, 2025. (Photo by Juan BARRETO / AFP) (Photo by JUAN BARRETO/AFP via Getty Images)

2025年7月5日、カラカスで独立記念日のパレードに参加したヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領とファーストレディのシリア・フローレス。写真:Juan BARRETO / AFP JUAN BARRETO

このような軍事行動が開始されれば、Kh-31Aミサイルを装備したヴェネズエラの Su-30 が投入される可能性がある。ただし、米海軍の軍艦を標的にすれば非常に大きな問題であり、多大な影響をもたらすだろう。

しかしここ数週間、ヴェネズエラは戦闘機を米軍艦艇に直接接近させている。国防総省当局者は本誌に対し、9月にヴェネズエラのF-16戦闘機2機が米海軍艦艇に接近したことを確認した。同様の事例が他にも報告されている。米海軍艦艇がヴェネズエラ沿岸近くで活動している現状では、こうした接近遭遇により戦闘機がKh-31の発射射程内に入るため、艦艇への奇襲攻撃が現実的な可能性として存在する。

Su-30/Kh-31の組み合わせ以外に、ヴェネズエラの対艦ミサイル能力は現在かなり限定的だ。

ヴェネズエラ海軍が運用するフリゲート艦は、1980年代初頭に就役した艦艇「アルミランテ・ブリオン」1隻のみである。このイタリア製艦艇には、オトマットMk2対艦ミサイル用発射装置8基が装備されていた。同じミサイルが、2連装発射装置でヴェネズエラ海軍のコンスティトゥシオン級高速攻撃艇に搭載された。この攻撃艇は3隻が現在も運用中と報告されている。

イタリアはまた、ヴェネズエラ海軍のAB.212ヘリコプターにシーキラー対艦ミサイルも供給した。同ヘリコプターは現在も数機が現役だが、主に攻撃や後方支援任務に用いられている。

これらのイタリア製システムの運用状況は疑問視されるべきだ。たとえ現役であっても、Kh-31Aに比べれば脅威度ははるかに低い。両ミサイルとも亜音速性能であり、オトマットMk 2の射程は約110マイル、シーキラーは約6.2マイルの目標を攻撃可能だ。

より最近の対艦ミサイル納入品には、テヘランがPeykaap IIIZolfaghar級)高速攻撃艇と共に供給したイラン製CM-90(ナスル輸出型)が含まれる。これらも亜音速兵器である。

米海軍は現在、AS-17クリプトンの脅威を十分に認識しており、同種の脅威に対処可能な防空システムを艦艇に装備している。しかし、このミサイルは依然として非常に強力な兵器である。

ヴェネズエラが米軍艦艇を直接攻撃すれば、米国と戦争に発展する可能性が極めて高い。しかし政権が既にそのような窮地に陥っている場合、あるいは崩壊が差し迫っている場合、そのような行動を取る可能性はさらに高まるだろう。■


Venezuela’s Supersonic Anti-Ship Missiles Are A Real Threat To American Warships

Fired by Su-30MK2V Flankers, the Russian-supplied Kh-31 anti-ship missiles are still a danger to U.S. warships operating near Venezuelan shores.

Thomas Newdick

Published Oct 20, 2025 3:42 PM EDT

https://www.twz.com/sea/venezuelas-supersonic-anti-ship-missiles-are-a-real-threat-to-american-warships

トーマス・ニューディック

スタッフライター

トーマスは防衛分野のライター兼編集者であり、軍事航空宇宙分野や紛争に関する取材歴は20年以上である。数多くの書籍を執筆し、さらに多くの書籍を編集し、世界の主要航空出版物に多数寄稿してきた。2020年に『The War Zone』に参加する前は、『AirForces Monthly』の編集長を務めていた。



2025年10月21日火曜日

プーチンの没落はもう始まっているのかもしれない(National Security Journal)―ロシアでこれまで考えられなかったプーチン批判が始まっている模様ですが、日本メディアは伝えていません

 

ロシア国民がプーチンの愚行の結果、どれだけの被害を被っているのか、その回復に何十年を回り道することになるのか、本当に哀れです

Vladimir Putinロシアのウラジーミル・プーチン。画像クレジット:クリエイティブ・コモンズ

要点と概要 – サンクトペテルブルクで撮影された動画がネット上で話題になっている。動画には、ウラジーミル・プーチンの故郷で、何百人ものロシア国民が、禁じられた反戦歌を公の場で歌う、稀に見る危険な反抗行為が収められている。この歌は、ソ連時代、指導者の死を告げるために国営テレビでバレエ「白鳥の湖」が放送された慣習に言及しており、政権の終焉への希望を明確に表現している。

この前例のない抗議行動は、燃料不足など問題に対する国内での失望の高まりと相まって、一見強固に見えるプーチンの支配は、これまで考えられていたよりも「もろく」、突然崩壊するリスクが高いことを示唆している。

プーチンの「もろい政権」がついに亀裂を見せ始めたのか?

ロシアのサンクトペテルブルクはモスクワに次ぐ第二の都市であり、ウラジーミル・プーチン大統領の故郷でもある。

ソ連時代、公式プロパガンダでは「革命の揺りかご」と呼ばれ、ボリシェヴィキ党を権力の座に就かせた十月社会主義革命が起こった都市とされた。

最近の出来事は、この都市が現代においてもその異名にふさわしい姿を見せている可能性を示唆している

火曜日の夜、街の中心部に集まった群衆は、かつて「外国の工作員」と非難されたロシア人ミュージシャンが録音した、禁止されている反戦歌を歌った。

この出来事のビデオは、その後、ネット上で話題になった。

Telegramメッセージングアプリで流布されたビデオクリップは、公共の広場に集まったグループが、Noize MC が書いた「Cooperative Swan Lake」を歌う様子を映していた。

歌詞は、ロシア国家当局、ウクライナでの戦争に対する国民の大衆の沈黙と一般的な受動性、そしてウラジーミル・プーチン大統領の侵略を絶えず正当化するクレムリンのプロパガンダ担当者を非難している。

その後、この即興の合唱の首謀者が逮捕されたと報じられた。

また、超国家主義的でプーチン大統領を支持するロシア人も、この動画に怒りを表明したと報じられている。

プーチンへの反発が始まっている

2022年2月のウクライナ全面侵攻以降、ロシア国家当局は表現の自由に対する抑圧的な一連の法律を強化したかたちで施行してきた

この法的措置は、戦争やプーチン政権への反対を促すあらゆる公開デモに特に残酷に執行されてきた。

「相当なリスクを承知で公然と集結し、著名な反体制派アーティストの録音曲を歌う――しかもプーチンの故郷で――という行為は、現代のロシア社会にどれほどの怒りと異議が沸騰しているかを示している」と、米国亡命中の反プーチン派政治家兼野党指導者は述べた。

プーチンの国家機構に対するこのレベルの反発は、抑圧的な秘密警察機構の存在ゆえに、珍しいだけでなく前例のないものだ。

しかし抑圧的な当局が国民を威嚇しようと躍起になる一方で、国内情勢、特にロシア石油産業への攻撃が原因の燃料不足は、元KGB中佐の体制に対する新たな失望を生み出している。

映像には、サンクトペテルブルクに集まった人々が、40歳のイワン・アレクセーエフ(芸名ノイゼMC)が録音した歌を歌う様子が鮮明に映っている。

この中年活動家はロシア人ミュージシャンで、その楽曲はロシアにおける蔓延する汚職や警察の残虐行為を糾弾している。

ロシア政府への批判的見解とウクライナで犯された数々の残虐行為のため、アレクセーエフはロシア政府によるコンサート中止、検閲、監視の対象となってきた。

彼はクレムリンから「外国の工作員」とレッテルを貼られ、その後リトアニアに移住を余儀なくされた。リトアニアでも反戦運動を支援し続け、ウクライナ人のためのチャリティーコンサートも開催している。

抗議運動

サンクトペテルブルク中心部で撮影された夜間の映像には、何百人もの人々が「クーパー・スワン湖」を歌っている様子が映っている。この曲は、戦争開始後の 2022 年にアレクセーエフが発表した。

その歌詞は、戦争を正当化するクレムリンのテレビプロパガンダ担当者たちに向けられたものであり、「君と話したいが、テレビが大音量で鳴っている、それは君の頭のように振る舞い、そのスピーカーは君の口のように振る舞っている」といった内容が含まれている。

この歌の別の部分では、「バレエを見たい、白鳥を踊らせてほしい」と歌われている。

これは、1982年、1984年、1985年にソ連の指導者であるレオニード・ブレジネフ、ユーリ・アンドロポフ、コンスタンチン・チェルネンコが相次いで死去した際、常に、定期的に放送されていたテレビ番組が、チャイコフスキーの有名なバレエ「白鳥の湖」に差し替えられた事実を引用している。

ソーシャルメディアではこのバレエへの言及が数多く見られ、時には街灯柱に貼られたビラにも登場する。

「ここでの明らかなメッセージは『朝一番に白鳥の湖が放送されるのを待ちきれない。だってそれはこのクソッタレのプーチンが死んだって意味だからだ』ってことだ」と、同じ反プーチン派政治家は語った。

『白鳥の湖』は1991年8月、ソ連崩壊の始まりを告げる大規模デモの最中にもテレビで放映された。プーチン政権に嫌気が差した人々にとって、それは「KGB独裁の終焉が間近だという合図のようなものだ」と同氏は語った。「ソロヴィヨフを画面から消せ、白鳥に踊らせろ」と歌は終わる。

これはウラジーミル・ソロヴィヨフを指す。ロシア1テレビ局の公式番組司会者で、熱心なクレムリンのプロパガンダ屋であり、最も嫌われるプーチン側近の一人だ。

昨年『フォーリン・アフェアーズ』誌に寄稿した現代ロシア史の第一人者、スティーブン・コトキンはこう指摘した:

「プーチン体制は、老齢の独裁者が運営する高度に個人化されたシステムであり、見た目以上に脆い。プーチンの気まぐれと妄想に駆り立てられたモスクワは、自滅的な失策を犯す危険性が高い。ロシア国家は上層部の命令を効果的に実行するが、その命令の質を制御することはできない。そのため、30年前にソ連がそうであったように、一夜にして崩壊する恒常的なリスクに晒されている」。

今週サンクトペテルブルクで表明された感情が何らかの指標なら、「一夜にして崩壊する」事態はそう遠くないのかもしれない。■

著者について:ルーベン・F・ジョンソン

ルーベン・F・ジョンソンは、外国の兵器システム、防衛技術、国際的な武器輸出政策の分析と報告において36年の経験を持つ。ジョンソンはカシミール・プーラスキ財団のアジア研究センター所長である。彼はまた、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻の生存者でもある。長年、米国防産業で外国技術アナリストとして勤務し、後に米国防総省、海軍省、空軍省、英国政府、オーストラリア政府のコンサルタントを務めた。2022年から2023年にかけて、防衛関連報道で2年連続の受賞を果たした。デポー大学で学士号、オハイオ州マイアミ大学でソ連・ロシア研究を専門とする修士号を取得している。現在はワルシャワ在住である。


The Fall of Putin Might Have Just Started

By

Reuben Johnson

https://nationalsecurityjournal.org/the-fall-of-putin-might-have-just-started/


ロッキード、ボーイング両社がペイトリオットを増産中(Aviation Week) ― 同ミサイルへの需要は増えるばかりですが、一方でウクライナ戦で消耗戦の怖さが痛感され、弾薬類の生産が増強されています

 

U.S. Army Patriot PAC-3

米陸軍のペイトリオットPAC-3。クレジット:米陸軍

ロッキード、ボーイング両社がペイトリオットを増産中(Aviation Week)

要が根強いペイトリオットPAC-3ミサイルセグメント強化型迎撃ミサイルでは、生産能力を継続的に高めている。ただし、現在進行中の政府機関閉鎖が影響を及ぼす可能性がある。

ボーイングは10月14日、2030年まで年間最大750基のペースで3,000基以上のPAC-3 MSEシーカーを供給する27億ドル契約を受注したと発表した。同社は6,000基目のシーカーを最近納入し、年末までに最大700基の納入を目標としている。

ボーイング統合防空ミサイル防衛部門のジム・ブライアン執行役員は、アラバマ州ハンツビルに新設した生産施設をはじめ同社が生産能力を拡大中だと述べた。同施設は今後数ヶ月以内に稼働開始予定だ。ペイトリオットは近年、特にウクライナや中東でその能力を発揮し、需要の継続的な増加を牽引している。

「陸軍の統合防空・ミサイル防衛能力において、これと同等の能力と成功を収めている兵器システムは他にない」と、ブライアンは米国陸軍協会会議の席上で述べた。

ペイトリオットの主要契約業者であるロッキード・マーティンは、生産台数を 650 台に増強しており、さらに大幅に上回る計画だと、同社副社長兼統合防空・ミサイル防衛部門長のジェイソン・レイノルズは述べている。

しかし、進行中の政府機関閉鎖が影響を与える可能性があると彼は言う。陸軍契約司令部は、PAC-3 プログラムに携わる従業員のほとんどを一時帰休させ、生産増に対応する未確定契約措置(UCA)に基づく一部の作業を中断させている。陸軍は「これまで」は迅速に対応してきたが、政府職員の不足でその取り組みは遅れている。

「UCA契約で資金枠組みは整っており、資材調達を進められる。ただ価格と契約条件が確定していないだけだ」と彼は説明する。「近い将来に決着する見込みだったが、少し時間がかかるだろう」。

現時点で資材の在庫は十分にある。しかし、政府機関の閉鎖が「長期間に及ぶ場合、悪影響が出る可能性がある」とレイノルズは述べた。

各社は、生産増に対応するため、PAC-3 MSE のほとんどの部品について、二次調達先を確保している。ロッキード・マーティンとミサイル防衛庁は現在、二次調達先を考慮して設計されていなかった高高度防衛ミサイル(THAAD)システムの二次調達先を探している。レイノルズによれば、ロッキード・マーティンは、不良率が高い部品や品質問題が発生している部品を優先的に調達しているが、具体的な部品名は明らかにしていない。■


Lockheed, Boeing Continue Patriot Production Increase

Brian Everstine October 14, 2025

https://aviationweek.com/defense/missile-defense-weapons/lockheed-boeing-continue-patriot-production-increase

ブライアン・エバースタイン

ブライアン・エバースタインは、ワシントン D.C. を拠点とする「Aviation Week」誌の国防総省担当編集者である。



中国の巨大ステルスドローン「GJ-X」の飛行が初めて確認された模様(TWZ)― この機体はあきらかに長時間滞空性能をねらったものでISR以外の攻撃的な任務を想定している可能性がありますね

 

「クランクド・カイト」形状の巨大全翼機は、中国のマラン近郊にあるドローン試験基地の滑走路で数ヶ月前に初めて目撃されたばかりだった

GJ-X Chinese large flying wing drone.

X経由

国が開発中の超大型ステルス「クランクドカイト」全翼機形状ドローン(非公式名称GJ-X)が飛行する様子がおそらく初めて捉えられた。本誌は9月、この機体の存在を報じた。新疆ウイグル自治区マラン付近の広大な試験飛行場で衛星画像に捕捉された。当時、本誌は同機の翼幅を約42メートル(137フィート)と推定していた。これはステルス無人機としては極めて稀なクラスに属する。本報道以降、同機の翼幅がB-21より大きいとの主張が絶え間なく出ているが、その可能性は極めて低い。それでも巨大なステルス飛行翼ドローンではあることにかわりないが、中国最大の機体とは程遠い

上記の短い動画は、同じ機体か、あるいは極めて類似した設計の機体が飛行している様子を示している。ただし、この衛星画像に写っていた機体とは別の機体の可能性もある。両機とも「クランクドカイト」と呼ばれる類似の翼形を採用している。中国は少なくとももう1型式、同様の主翼形状の開発中の無人機を保有している。両機が関連している可能性もある。

同機の存在を初めて示した衛星画像は、中国のマラン近郊試験基地の滑走路で機体が映っていたものだ。(写真 © 2025 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. 許可を得て転載)

動画クリップで最も興味深い点は、機体の下側コーティングだ。高度から機体形状を正確に識別しにくくする意図で、逆陰影塗装が施されているようだ。暗い部分の形状は伝統的な胴体と翼の形を呈している。これはコーティング施工工程の副産物の可能性もあるが、形状が従来型機体の構成と類似していることから、迷彩である可能性が高い。この手法は航空機の形状を視覚的に崩すため、あるいはその向きを誤認させるために長年用いられてきた。

同機の目的が最も議論の分かれる点だ。一部の中国軍事ウォッチャーは非常に大型の無人戦闘航空機(UCAV)で、運動エナジー兵器による攻撃を主目的としていると主張する。他方、純粋な無人ステルス爆撃機だと主張する者もいる。一方で偵察任務は最も見過ごされがちだが、最も現実的な選択肢かもしれない。これは米国の噂される極秘機「RQ-180」のような高高度・長航続型ステルスドローンの任務と類似している。しかし、物理的攻撃から偵察まで多様な任務を遂行できる多用途機を有することは、非常に有利となる。現時点では、中国がどのような意図を持っているのか、決定的に知る由もない。

GJ-Xは、過去1年間に開発が進んだ目まぐるしい数のステルス戦闘機の一つに過ぎない。その始まりは、いわゆるJ-36超大型ステルス戦術機大型J-XDS戦闘機の同時初飛行(少なくとも公に確認・公表された初飛行)であり、両機とも先進的な無尾翼設計である。さらに同世代の無人戦術機絶え間なく確認または公開されている。中国が先進戦闘機開発で示すスピードは実に驚異的だ。これは我々が目にする範囲、あるいはリーク情報に過ぎない。裏でさらに多くの機体開発が進行中である。■


China’s Huge ‘GJ-X’ Stealth Drone Appears To Have Been Spotted In The Air For The First Time

The massive 'cranked kite' planform flying-wing was first spotted on the runway at China's drone test base near Malan just a couple of months ago.

Tyler Rogoway

Published Oct 19, 2025 4:47 PM EDT

https://www.twz.com/air/chinas-huge-cj-x-stealth-drone-appears-to-have-been-spotted-in-the-air-for-the-first-time

タイラー・ロゴウェイ

編集長

タイラーは軍事技術・戦略・外交政策の研究に情熱を注ぎ、防衛メディア分野でこれらのテーマに関する主導的な発言力を築いてきた。防衛サイト『フォックストロット・アルファ』を創設した後、『ザ・ウォー・ゾーン』を開発した。

2025年10月20日月曜日

ウクライナとロシア、先進迎撃ドローンの配備を競い、ドローン技術は進展していく(Forbes)―ウクライナ上空で展開しているのはまさしく第一次大戦の空戦の進化をなぞるハード、ソフト両面の進化です

 

ウクライナとロシアが先進迎撃ドローンの配備を競い、ドローン技術は進展していく(Forbes)―ウクライナ上空で展開しているのはまさしく第一次大戦の空戦の進化をなぞるハード、ソフト両面の進化です

Kozytskyi Charity Foundation Delivers UAVs To Ukrainian Armed Forces

ウクライナ、リヴィウ州 - 2月21日:ウクライナ、リヴィウ州で、ベソマル迎撃ドローンの間に立つコジツキー慈善財団のメンバーたち。(写真提供:Mykola Tys/Global Images Ukraine via Getty Images)

Global Images Ukraine via Getty Images

ロシア・ウクライナ戦争の経過とともに、ドローン技術は急速に進歩している。現在のシャヘド(Shahed)やリュティ(Liutyi)ドローンは、紛争初期に使用されたオルラン10(Orlan 10)やバイラクタルTB2(Bayraktar TB2)よりはるかに高度で多機能である。こうした進歩に歩調を合わせ、対ドローン技術も著しい進展を遂げている。特に両陣営は、ドローン運用を妨害する非物理的手段である電子戦システムを数多く開発してきた。しかし現在、敵ドローンを物理的接触で標的化し破壊する迎撃ドローンの開発と配備を両国が競っている。

ドローン迎撃機への需要が高まっている背景には、戦場におけるドローンの数と高度化の進展がある。光ファイバードローンの登場により、従来型の妨害装置の有効性は低下した。これらのシステムは電子戦の影響を受けにくいからだ。ドローンの多数は高度な人工知能処理を組み込んでおり、指令信号が妨害されてもフェイルセーフモードで動作可能だ。同時に、配備されるドローンの膨大な数が、高価で供給量に限りがある従来の防空システムを圧倒し始めている。こうした状況から、手頃な価格で大量生産可能な物理的対ドローン手段の必要性が痛感されている。

新型迎撃ドローンは低コストで軽量

迎撃ドローンの大きな利点は、ロシアとウクライナ双方で急速に拡大するドローン生産能力を活用できる点だ。その結果、1発あたり数十万ドルもする地対空ミサイルに比べ、比較的低コストで生産可能となる。この手頃な価格により、両国とも前線全域に大量配備できる。

Anti-aircraft Unit Uses FPV Drones To Take Down Russian Reconnaissance Devices

ウクライナ・ドネツク州 - 2025年7月18日:コスティャンティニフカ前線付近のドネツク州で、装置を点検する迎撃ドローンのカメラからの眺め。(写真:コスティャンティン・リベロフ/リブコス/ゲッティイメージズ)...

これらのシステムは軽量かつ高い機動性も備えている。多くのモデルはバックパックに収納可能、あるいは手投げで発射できるほど小型化されており、兵士が輸送や展開用の特殊車両を必要とせず、戦場で直接運用できる。これにより、特に兵士が主に徒歩で行動する地域において、前線全域への広範な配備が可能となる。

低コストかつコンパクトな形態でありながら、速度や性能は犠牲にされていない。多くの迎撃機の速度はは敵ドローンを飛行中に追い越せる。近年では高度なコンピュータビジョンと目標認識を可能にする小型AIチップの搭載が進んでおり、発射後は自律的に敵ドローンの識別・追跡・攻撃を行う「発射後放置」方式での運用が可能となる。

ウクライナの迎撃ドローン

ウクライナは2年以上前から一人称視点ドローンを用いてロシア製ドローンを迎撃してきたが、現在ではロシア製シャヘドドローンの集中攻撃に対抗するため、専門の迎撃ドローンを急速に増強している。これらの標的は分散配置されることが多く、防空システムによる十分な防護を欠いている。同時にシャヘドドローンは高度化が進み、ウクライナの妨害対策に対する耐性も高まっている。迎撃ドローンは、巡航ミサイルや極超音速ミサイル対策に高価値防空資産を温存しつつ、シャヘドの脅威を無力化する現実的な手段をウクライナに提供する。この優先順位を反映し、ウラジーミル・ゼレンスキー大統領は8月、ドローンに搭載型AI処理機能を提供するSkyNode Sモジュール3万基の大半を迎撃ドローン開発に振り向けると発表した。

ソーシャルメディアキャプチャ

ウクライナで最も広く報じられている迎撃機の一つが、ワイルドホーネッツ社製のスティングだ。地対空ミサイルの数分の1のコストで、時速300キロ超に達し、既にロシア製シャヘドドローンの数多くの迎撃成功実績がある。もう一つの注目システムは、ドイツ人技術者との共同開発によるタイタンで、自律追跡のAIを統合し、高速ロシア製ドローンの撃墜に最適化されている。

ウクライナは国内でも低コストの固定翼プラットフォームを生産している。例えばテクノ・タラスは1600ドル未満で、高度6000メートル・航続距離35キロを達成する。同様にウクライナの防衛企業ジェネラル・チェリーは1000ドルの迎撃機を開発し、300機以上のロシア製ドローン撃墜の実績がある。さらにウクライナのボランティア団体が開発した「スカイボーン・ルソリズ」ドローンは、400機以上のロシア監視ドローンを撃墜したと報告されている。

ロシアの迎撃ドローンは進化を続けている

ロシアもウクライナの深部ドローン攻撃増加に対応し、小型キネティック迎撃ドローンの開発を強化している。代表的なモデルがヨルカ迎撃システムで、5月9日のモスクワにおける戦勝記念日式典でロシア治安部隊が携行していた。これらのシステムは「発射後放置型」のキネティック装置で、AIを活用して最大1キロメートル離れた小型ドローンを迎撃する。現時点では重要イベントでの使用に限定されているが、複数の新型迎撃ドローンが開発中であり、近い将来配備される見込みだ。

Russian soldier firing a Yolka interceptor drone

2024年9月、ソーシャルメディアに投稿された動画からキャプチャ。ロシア兵がウクライナドローンに向けてヨルカ迎撃ドローンを発射する様子。ソーシャルメディアキャプチャ

「アーキペラゴ2025」展示会では、無人システム技術センター(CBST)が複数の新型モデルを展示。スクヴォレツ防空、キンジャール、ボルト、オヴォド防空、クレスチニクMなどが含まれる。各システムは高速交戦能力を有し、スクヴォレツ防空の速度は約270km/h、キンジャールは最大300km/hに達する。これらのシステムにはAI搭載の目標捕捉機能も組み込まれており、低高度自律迎撃を目的として設計されている。これはロシアのドローン防衛戦略の転換を示すものだ。

ロシアは他にも多数の迎撃ドローンを開発中であり、中には斬新な迎撃手法を採用するものもある。例えばオソエド迎撃機はネット発射機構を用い、時速140キロまでの敵UAVを捕獲する。さらに体当たり式迎撃にも対応した設計で、多様な運動エナジー攻撃手段を提供する。

迎撃ドローンの未来

その他の対ドローン技術と同様に、ドローンと迎撃機との競争は激化の一途をたどる一方だ。双方が生産能力を拡大しているため、技術面だけでなく数量面でも競争が生まれている。効果的な迎撃機をより多く配備できる側が、自軍の部隊やインフラをより効果的に保護できる立場に立つ。同時に、迎撃機より大量のドローン群を展開できる側が攻撃的優位性を維持する。欺瞞技術や探知技術の進歩もこの競争をさらに形作るだろう。双方が相手側のシステムの効果を低下させるべく取り組むからだ。

迎撃ドローンがその潜在能力を最大限に発揮するには、電子戦、指向性エナジーシステム、従来の防空システムなど、対ドローン防衛の他の層と完全に統合される必要がある。この統合により、迎撃ドローンは広範な防衛体系の中で費用対効果が高く柔軟な層として機能し、進化するドローン脅威に対する回復力を確保できる。


Ukraine And Russia Race To Deploy Advanced Interceptor Drones

ByVikram Mittal,Contributor. 

Sep 09, 2025, 02:14pm EDTSep 12, 2025, 10:33am EDT

https://www.forbes.com/sites/vikrammittal/2025/09/09/ukraine-and-russia-race-to-deploy-advanced-interceptor-drones/?ss=aerospace-defense


ヴィクラム・ミッタル、寄稿者。ヴィクラム・ミッタルは航空宇宙・防衛分野を担当する寄稿者です。