2025年12月20日土曜日

2026年に米国が軍事行動を行使しかねない場所はここだ

 

2026年にはここから第三次世界大戦が起こり得る(19fortyfive)

ブレント・M・イーストウッド

U.S. Air Force F-22 Raptors, E-3 Sentrys, C-17 Globemaster IIIs, C-130J Herculeses and C-12F Hurons participate in a close formation taxi known as an elephant walk at Joint Base Elmendorf-Richardson, Alaska, May 5, 2020. This event displayed the ability of the 3rd Wing, 176th Wing and the 477th Fighter Group to maintain constant readiness throughout COVID-19 by Total Force Integration between active-duty, Guard and Reserve units to continue defending the U.S. homeland and ensuring a free and open Indo-Pacific. (U.S. Air Force photo by Senior Airman Jonathan Valdes Montijo)

2020年5月5日、アラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地にて、米空軍のF-22ラプター、E-3セントリー、C-17グローブマスターIII、C-130Jハーキュリーズ、C-12Fヒューロンが「エレファントウォーク」と呼ばれる緊密な編隊地上走行に参加した。(米空軍、上級空軍曹ジョナサン・バルデス・モンティジョ撮影)

要点と概要 

– ドナルド・トランプ大統領の下で一連の停戦と外交上の「勝利」があったにもかかわらず、2026年の世界地図には、米国が戦争に巻き込みかねない火種が散らばったままだ。

– 筆者ブレント・イーストウッド博士は、最も懸念される5つのシナリオ、①中国の台湾侵攻、②ウクライナの安全保障をめぐるロシアとの新たな対立、③④ヴェネズエラやイランに対する米国の潜在的な攻撃、⑤北朝鮮による韓国への奇襲攻撃を解説している。

– 各戦域には、それぞれ独自の引き金、エスカレーションのリスク、条約上の義務があり、それらが相まって、ワシントンの現在の平穏が実際にどれほど脆弱であるかを示している。筆者の主張は単純だ。抑止力、同盟関係、準備態勢が、2026年が冷戦状態のままであるか、あるいは熱戦状態に突入するかを決定する、というものである。

米国が戦争に巻き込まれる可能性のある5つの場所

ョー・バイデン大統領の下で地政学的環境が第三次世界大戦のような危険地帯に近づいていると感じる者もいたが、ドナルド・トランプ大統領の交渉力のおかげで、和平の突破口、戦争を緩和する合意、停戦が実現し、事態は多少落ち着いている。

しかし、戦争は常にその醜い頭をもたげており、2026年には米国が銃撃戦に巻き込まれる可能性もある。

ここでは、戦争が勃発し、アメリカが地上部隊の派遣や軍事攻撃を余儀なくされる可能性が最も高い地域を紹介する。こうした攻撃は、アメリカがグローバルなテロとの戦争で追い込まれたのと同じような、終わりのない戦争となる可能性がある。

中国が最大の脅威だ

将来の紛争が最も起こりそうな地域は、東アジアだ。中国は、好戦的な新興大国で、アメリカを苛立たせるような敵対的な発言や行動をしばしば行っている。

台湾に対する中国の野心は、常に同島への水陸両用攻撃を引き起こす潜在的可能性を秘めている。

米国が中国の台湾侵攻にどう対応するか不明だ。ホワイトハウスの新たな国家安全保障戦略は、中国と台湾の問題に関し現状維持を支持している。戦略文書からはトランプが介入を命じるかどうかは明らかではないが、中国による台湾奪取の試みに対抗して戦争が常に起こり得る可能性は十分にある。

中国が台湾を飢餓に追い込む封鎖や隔離を命じる可能性もある。これにより台湾から世界中の顧客への半導体輸出が凍結される。先進チップは多くの国で経済を支えている。米国は迅速に対応策を模索せざるを得なくなる。

ロシアが米国の軍事的対応を必要とする可能性がある

長年ホットスポットとなっている別の地域がロシアだ。4年近く続くロシア・ウクライナ戦争では、ウラジーミル・プーチンの軍勢に対抗するため、米国がウクライナに数億ドルの支援を行ってきた。今後数週間で交戦当事者間の停戦と和平計画が成立する可能性がある。

しかし、ロシアとウクライナの戦闘停止の代償として、米国はロシアが再び攻撃した場合に備え、ウクライナに対し将来のNATO型安全保障を保証せねばならないようだ。これは、プーチンがウクライナへの新たな侵攻を命じた場合、米国がロシアとウクライナの間の非武装地帯において、何らかの軍事攻撃や地上部隊の展開を命じることを意味する。ロシアとの戦争が可能性として残ることになる。

ヴェネズエラに対する米軍の軍事行動の可能性

米国が西半球で展開する新モンロー主義は紛争を引き起こす恐れがある。米海軍はヴェネズエラを威嚇するため、海兵隊を満載した強襲揚陸艦と共にジェラルド・R・フォード空母打撃群をカリブ海に展開している。プエルトリコの旧米海軍ーズベルト・ローズ基地で米軍活動が活発化している。空軍・海軍機がヴェネズエラ周辺を飛行している。

トランプはヴェネズエラを麻薬テロ国家と見なしている。ニコラス・マドゥロ率いる非合法政権は共産主義者かつ犯罪者であり、違法薬物で米国民を毒殺しようとしている。米国はこれまでにヴェネズエラ麻薬密輸船多数を撃沈してきた。

トランプがカラカスへ実戦攻撃を命じるかは不明だが、軍事的態勢は確実に整ってきた。海兵隊による水陸両用上陸作戦の可能性は低いが、ヴェネズエラ国内の軍事目標への空爆は確実にあり得る。ただし、戦争権限法の発動や、南米国家における潜在的な無期限紛争への議会の激しい反発を招きかねない。

イランに新たな教訓を与える可能性

敵対国への空爆の次の焦点はイランだ。6月の米軍によるイラン核施設攻撃ミッドナイト・ハンマー作戦は成功したが、米情報機関がイランが依然としてウラン濃縮や核兵器開発に向けた活動を継続していると判断した場合、追加攻撃が行われる可能性がある。

イランの最高指導者アヤトラ・アリー・ハメネイは強硬姿勢を崩しておらず、大量破壊兵器技術と制裁解除を交換するいかなる「核合意」でも米国と協力する意思はない。

イランは容易に屈服する相手ではない。テヘランからのサイバー戦争、米国に対するテロ攻撃、あるいはイエメンのフーシ派のような同盟勢力に働きかけ、紅海やアデン湾における民間・軍用船舶への攻撃再開を促す可能性もある。こうした行動が現実化したら、トランプ大統領はイランへの追加攻撃を命じるかもしれない。

北朝鮮が韓国を侵攻し、米国の対応を引き起こす可能性

最後に、北朝鮮はいつでも韓国を攻撃する可能性があり、米国は条約上北朝鮮と戦う義務を負う。この侵攻は急速に進展し、米軍は北朝鮮がソウルを占領するのを阻止するため迅速に対応する必要がある。

これは最も可能性の低いシナリオだが、金正恩が米国を巻き込み、甚大な流血を伴う戦争を引き起こす絶望的な行動に出る可能性を軽視してはならない。

朝鮮半島では冷静な判断が優先され、トランプ大統領が来年の習近平国家主席との首脳会談後に金正恩氏と会談することを望むばかりだ。米下院は最新の国防権限法に条項を盛り込み、議会の承認なしに在韓米軍を削減することを禁止した。

金正恩は米国が依然として北朝鮮侵攻を企てていると主張するかもしれない。この地域の緊張を緩和するには、トランプ政権による直接的な関与が不可欠だ。

今後の展開は?

世界は火薬庫だ。敵を牽制し、偶発的な事態が新たな米軍参戦や武力衝突を引き起こすのを防ぐには、多数の空母、前線配備の陸軍・海兵隊、そして巨額の防衛予算が必要となる。

トランプの国家安全保障戦略は、米国は他国の主権を侵害しないと主張しているが、その留保条項は熱戦を引き起こす可能性のある攻撃を阻止できないかもしれない。トランプが脅威を乗り切り、2026年に平和を維持できることを願おう。■

著者について:ブレント・M・イーストウッド

防衛問題に関する3,000 本以上の記事を執筆しているブレント・M・イーストウッド博士は、著書世界に背を向けないで:保守的な外交政策』および『人間、機械、データ:戦争の将来動向 のほか、さらに 2 冊の著書を執筆している。ブレントは、人工知能を用いて世界の出来事を予測するテクノロジー企業の創設者兼最高経営責任者であった。米国上院議員ティム・スコットの立法フェローを務め、国防および外交政策の問題について上院議員に助言を行った。アメリカン大学、ジョージ・ワシントン大学、ジョージ・メイソン大学で教鞭をとった。ブレントは元米国陸軍歩兵将校である。X @BMEastwoodでフォローできる。


World War III Could Happen: 5 Places America Could Go to War in 2026

By

Brent M. Eastwood

https://www.19fortyfive.com/2025/12/world-war-iii-could-happen-5-places-america-could-go-to-war-in-2026/





国内で死者を多数出しているフェンタニルを米国が大量破壊兵器に分類したので原料を供給している中国は慌てているはずだが・・・

 

トランプ大統領がフェンタニルを大量破壊兵器(WMD)に指定(POLITICO)

中国に対する米国の政策や、西半球におけるトランプ政権の軍事力増強に広範な影響を与える可能性がある


コメント WMDにはWMDで対抗するのが米国の方針ですから、これで米国は中国を核攻撃する口実ができたことになります

2025年12月15日、ワシントン、ホワイトハウス大統領執務室で、メキシコ国境防衛勲章の授与式で演説するドナルド・トランプ大統領。| アレックス・ブランドン/AP

エリック・バザイル=エイミルジャック・デッチ

 2025年12月15日 午後5時32分(米国東部時間)

ナルド・トランプ大統領は12月15日月曜日、フェンタニルを大量破壊兵器に分類する大統領令に署名し、合成薬物の違法取引と闘う米国政府の法的手段を強化した。

大統領令は、同薬物の致死性、毎年何万人ものアメリカ人を死に至らしめている事実、そしてトランプ政権が外国テロ組織に指定した国際犯罪組織が、米国の国家安全保障を損なう活動資金源としてフェンタニルの販売を利用している事実を引用している。

大統領は、大統領執務室で署名しながら、海路で米国に流入する麻薬の量は 94% 減少したと述べた(フェンタニルを含むほとんどの麻薬は、陸路の入国地点から米国に流入している)。トランプ大統領は、麻薬の流入は「米国に対する直接的な軍事的脅威」だと付け加えた。

政権はメキシコ国境の警備強化策の一環で、フェンタニル対策に多大な資源を投入してきた。政府高官は、トランプの厳しい移民制限と国境警備措置が国内のフェンタニル消費減少につながったと主張している。

「国境が安全になれば、毎日人命が救われ、性的人身売買は激減し、フェンタニルも激減する」とホワイトハウスの国境問題担当責任者トム・ホーマンは月曜日に述べた

麻薬を大量破壊兵器に分類する大統領の行動は前例がないが、フェンタニルをそのように位置付けることについては以前から公の議論があった。バイデン政権は以前、超党派の司法長官グループからフェンタニルを大量破壊兵器に分類するよう圧力を受けていた。そしてフェンタニルは、ごく微量でも、過剰摂取となり短時間で人間を死に至らしめる威力を持つ。

この合成薬物は限定的な合法的な薬理学的用途があるものの、主にメキシコ経由で米国に流入している。メキシコでは麻薬カルテルが中国から輸入した「前駆体化学物質」 “precursor chemicals” を用いてフェンタニルを製造している。フェンタニル生産は東南アジアのゴールデントライアングル地域(ラオス、ミャンマー、タイを含む)でも急増している。フェンタニルは簡易な実験室で容易に製造できるため、生産根絶の課題を増大させている。

一方で米政府はカリブ海で麻薬密輸とされる船舶への武力行使を正当化するため、ヴェネズエラで活動するカルテルがフェンタニルを米国へ密輸していると非難している。ヴェネズエラはコカイン密輸の拠点と見なされているが、世界的なフェンタニル密輸の主要な供給源とは見なされていない。

この指定のタイミングは注目に値する。米国がヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領に対する圧力キャンペーンの一環として、ヴェネズエラ領内の麻薬密輸容疑目標に対する地上攻撃を実施するとの憶測が高まっているからだ。フェンタニルを大量破壊兵器と宣言することは、米国がヴェネズエラに対して軍事力を行使する追加的な法的根拠を与えることになる。

イラクが大量破壊兵器を保有しているという主張は、ジョージ・W・ブッシュ政権下で中東国家への侵攻と当時の指導者サダム・フセインの打倒を正当化する法的根拠として用いられた。

米国は以前からコロンビアやメキシコの麻薬カルテルに対する軍事攻撃を示唆しており、ヴェネズエラのあとはこれらの国々の組織による脅威へ焦点を移すとの予想があった。■

Trump declares fentanyl a weapon of mass destruction

The designation could have sweeping impacts on U.S. policy toward China as well as the Trump administration’s military buildup in the Western Hemisphere.

https://www.politico.com/news/2025/12/15/trump-fentanyl-weapon-mass-destruction-00691742


2025年12月19日金曜日

F-35導入を中止し、グリペンEに食指を動かすカナダは後悔することになる

 

F-35でなくグリペンを導入したいカナダの選択は正しいといえるのか?(Sandboxx News) ― 性能や費用といった事実より政治上の対立から機種選択を覆そうとするカナダへの疑問

アレックス・ホリングス

2025年12月11日

特集画像:2024年6月18日、欧州米軍司令部管轄区域上空で実施された「爆撃機任務部隊ヨーロッパ24-3」作戦中、第69遠征爆撃飛行隊所属の米空軍B-52Hストラトフォートレスの翼から離脱するノルウェー空軍mpF-35ライトニングIIとスウェーデン空軍サーブJAS 39グリペン。(撮影:エミリー・ファーンズワース軍曹

2017年、カナダは老朽化したCF-18ホーネットの代替を目的に「未来戦闘機能力プロジェクト」を開始した。2021年までに、ユーロファイター・タイフーンとダッソー・ラファールは、カナダの要求がアメリカのメーカーに不当に有利になっていると主張して、それぞれ撤退した。その後、カナダはボーイング F/A-18 スーパーホーネットを、ほとんど正式な説明もなく選考対象から除外し、ロッキード・マーティンの第 5 世代 F-35 とサーブの第 4.5 世代グリペンE の 2 機種に絞った。

2022年、カナダはF-35の選定を発表し、2023年には、同国初のF-35A 16機の購入を含む契約が締結され、長期的に合計88機のステルス戦闘機を取得する計画が立てられた。しかし、それはすべて、米国とカナダの関係が悪化する前の話だった。トランプ政権は、北の隣国との関係を非常に敵対的なアプローチで管理していた。

しかし、2025年、新たに選出されたカナダのマーク・カーニー首相は、カナダはすでに最初の16機のF-35Aの購入を決定しているが、政府は残りの72機の購入計画を見直し、グリペン対F-35の議論を再燃させ、アメリカ製戦闘機よりもスウェーデンの戦闘機の購入を再び推進すると発表した。

滑走路の女王 F-35A は、全長 51.4 フィート(約 15.7 メートル)、翼幅 35 フィート(11 メートル)である。単発プラット・アンド・ホイットニーF135ターボファンエンジンを搭載し、アフターバーナー作動時に43,000ポンドの推力を発生する。これによりマッハ1.6まで加速可能で、燃料タンク半分の状態かつ完全な戦闘装備時でも1.07:1の推力重量比を実現する。現在は内部に4発の武器を搭載可能だが、ブロック4アップグレードでは6発に拡張される。ステルスが不要なら、外部ハードポイントがさらに6箇所追加される。世界最高性能の戦闘機レーダー、赤外線分散開口システム、電子光学照準能力を備え、正面レーダー断面積は約0.005平方メートル(ゴルフボール大)とされる。高度な電子戦能力、電波妨害装置、曳航式デコイによって敵による補足はさらに妨げられる。

グリペンEの全長は49フィート10インチ(15.2メートル)、翼幅は28フィート3インチ(8.6メートル)である。単一のGE F414ターボファンエンジンを搭載し、アフターバーナー全開時でも推力はわずか22,000ポンド(約10トン)に過ぎない。しかし最大離陸重量がF-35の半分強であるため、軽量な本機はマッハ2の最高速度と1.04の推力重量比を実現している。E型は計10箇所のハードポイント(全て外部)を備え、先進的なES-05レイブンレーダーアレイ、赤外線探知追尾能力、強力な電子戦・対抗措置システムを有する。重要な点として、グリペンはステルス機ではないため、生存性においてF-35が即座に優位となる。

Brazilian Gripen E


ブラジル空軍のグリペンE型(写真提供:Brazilian Air Force

2021年、カナダ国防省(DND)は両機種を比較する模擬飛行試験を実施し、5つのカテゴリー(重要度順:任務遂行能力、アップグレード性、維持管理性、技術基準、能力提供)で評価した。

当時この情報は非公開だったが、最近明らかになったところでは、F-35が全カテゴリーでグリペンを圧倒していた。任務遂行能力では、F-35が97%という圧倒的なスコアを記録したのに対し、グリペンは22%に留まった。改良可能性ではF-35が100%、グリペンは28%だった。維持管理能力ではF-35が劣ると予想されたが、それでも85%を獲得し、サーブの81%をわずかに上回った。技術基準では、F-35 は 86% を獲得したのに対し、グリペンは 55% だった。そして最後に、能力発揮では、F-35 は 67% と、この比較の中で最低のスコアだったものの、それでも 54% のグリペンを十分に上回る結果となった。

加重スコアが完全に集計された後、ジェット機には 60 点満点で最終評価が付けられた。ロッキード・マーティンのステルス戦闘機は57.113 点(95% をわずかに上回る)と、完璧にわずかに及ばなかった。一方、サーブのグリペン E は 19.762 点(33% をわずかに下回る)が最高点だった。

この結果は、フィンランドが F-35A の購入を決定する前に実施された「HX 戦闘機」プログラムという同様のフィンランドの競争の結果を反映している。この競争では、さまざまな航空機の組み合わせが連携して運用されたが、結局のところ、F-35 がすべてのカテゴリーで 1 位または同点 1 位となり、F/A-18 スーパーホーネットと EA-18G グラウラーの組み合わせが 2 位、グリペン E は 2 機のグローバルアイ空中警戒管制機(AWACS)の支援を受けて飛行したにもかかわらず 3 位に留まった。

この比較では運用コストの比較も焦点となり、グリペンEの飛行時間当たりコストはわずか8,000~10,000ドルと主張されたのに対し、F-35は約30,000ドルであった。フィンランドの調査では、ユーロファイターやラファールを含むどの戦闘機も、運用コスト面で他機を大きく上回ってはいない。サーブの「1時間あたり8,000~10,000ドル」という主張は、2012年の自社資金による調査に由来するもので、現在のインフレ調整もされておらず、燃料と消耗品以外の費用は一切含まれていない。Aviation Weekによれば、グリペンEの実際の時間当たり運用コストは22,175ドルに近い。内訳は運用費9,975ドルに加え、サーブが省略した時間当たり12,200ドルの整備費だ。一方F-35の公表運用コストには整備士や技術者の人件費を含むほぼ全てが含まれている。

同様に、サーブのマーケティング資料はグリペンが北極圏環境に適した選択肢だと強調しているが、これも疑問の余地がある主張だ。ノルウェーで2015年に配備されたF-35Aは北極圏環境で良好な性能を発揮している。ただし、短く凍結した滑走路での運用を改善するため、特別設計のドラッグシュートを装着している。米国も2020年以降、アラスカからF-35を運用している。

グリペンは確かに高性能な第4世代戦闘機だが、結局のところF-35のような第5世代戦闘機は別格の存在だ。新たな世代区分が与えられた所以である。

報道で政治的な発言がなされているにもかかわらず、米国とカナダの防衛協力には長く実り多い歴史があり、現在は密接に絡み合っている。例えば北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)は米国の指揮系統ではなく、米加共同の組織だ。カナダは広大な北部領土の警備において、F-35の長距離探知能力とセンサー融合能力の恩恵を受けるだろう。

多くの点でカナダの安全保障はアメリカの安全保障であり、その逆もまた然りだ。したがって、両国の関係は重要かつ強固すぎ、いかなる政権の政策下でも衰退することはないと考える根拠は存在する。

カナダは既に少なくとも16機のF-35購入を決定しており、カナダ軍は戦闘機の混成運用を望まないと公言している。混成運用は訓練体系・兵站網・整備施設の二重管理を意味し、あらゆる面でコスト増大につながるからだ。

一方、サーブはグリペン戦闘機の受注を満たすため、カナダ国内に製造施設を建設する提案を行っている(スウェーデンにはカナダ、ブラジル、ウクライナなど複数の受注を同時に処理する産業能力が不足しているため、これは必須の措置だ)。さらにサーブは、グローバルアイ監視機の製造施設もカナダに建設する案を提示しており、これらを合わせるとカナダ市場に推定13,000名分の雇用が創出される見込みだ。おそらく最も重要な点として、サーブはグリペンの知的財産権をカナダに売却することを提案している。これによりグリペンはカナダ製戦闘機となり、オタワ政府が自ら輸出することも可能となる(ただしほぼ確実にサーブとの提携下での輸出となる)。

しかし、グリペンの提案には多くの不確定要素があり、唯一確かなことは、カナダは最終的には性能の劣る戦闘機を運用することになるだろうということだ。

一方でF-35プログラムは、長年にわたりカナダ産業に恩恵をもたらしており、F-35 用部品の開発と生産のために、30 社以上のカナダ企業に 33 億カナダドル以上の契約が授与されている。また、F-35購入契約の一環として、ロッキード・マーティンとエンジンサプライヤーのプラット・アンド・ホイットニーは、カナダ政府と経済的利益協定(EBA)を締結しており、将来の契約がカナダに確実に回ってくることを保証している。

F-35がアメリカのサプライヤーによってロジスティック面で遮断されるという懸念も指摘があrるが、この考え方は、グリペンでも同じことが言えるという事実を完全に無視している。結局のところ、グリペンE は、依然として米国の輸出規制の対象となっている米国製のGEF414 ターボファンエンジンを搭載している。サーブが GE エンジンをロールスロイス製エンジンに交換するとの噂もあるが、そのためには大幅な(そして費用のかかる)再設計が必要となり、納入も大幅に遅れることになる。

さらに、報道によればグリペンの部品の約3分の1は米国サプライヤー製であり、ハネウェル製の生命維持システムの重要部品も含まれる。グリペンはユーロファイター・タイフーンやダッソー・ラファールよりも米国製ハードウェアへの依存度が高いと報告されており、戦闘機ラインを米国の支援から切り離すことが意思決定の主因なら、グリペンは不適切な選択肢となる。

そしてもちろん、F-35プログラムのコスト上昇もある。カナダが当初88機のF-35購入に合意した際の総額は190億カナダドルだったが、現在では277億カナダドルに膨れ上がっている。この金額には当然ながら、戦闘機本体だけでなく、インフラ整備、関連装備、維持体制とサービス、訓練・情報サービスも含まれている。大幅なコスト上昇は疑いようもないが、メディアがこのコスト増を報じる姿には少し歪んだものがある。

カナダのカレン・ホーガン監査総長は、コスト上昇の一因は、カナダ政府が 2022 年の将来コスト見積もりにおいて、時代遅れの数値を使用していたことであると説明したが、最大の要因は、実際には航空機自体とは無関係の外的要因であると判断した。「同省が更新した 277 億ドルのコスト見積もり増加の重要な部分は、世界的な要因、具体的にはインフレの上昇、外国為替レートの変動、および世界的な軍需品需要の高まりによって引き起こされていることがわかった」。これは、グリペンについても、時間の経過とともにコストが増加する可能性が高いことを意味するが、それほど先進的ではない戦闘機では、増加はそれほど顕著ではないと主張することもできるだろう。

グリペンもコスト増や遅延の影響を免れてはいない。ブラジルではグリペンEの納入が8年遅延し、プログラム全体のコストはこれまでに13%増加した。これは実質的に6機のグリペンE相当のコストが総額に上乗せされた計算だ。

しかしF-35に対する最も的を射た公正な批判は、おそらく機体の稼働率と任務遂行可能率だろう。F-35が常に整備で第一線を離脱しているという話は珍しくなく、F-35の稼働率が空軍の目標を下回り続けているのは事実だ。しかしこうした数値は、ほとんどの場合、比較の基準となる意味のあるデータなしに、単なるF-35の稼働率として報じられている。

例えば、2024年には米軍のF-35Aがその他戦闘機よりも高い稼働率を示し、F-15E、F-16C/D、F-22、F-15C/Dを上回った事実は驚くべきものだ。F-35Aは2024年、米空軍における1機あたり飛行時間でもトップだった。また、F-35の運用コストが高すぎるという見解がネット上で依然あるが、議会予算局は2024年時点でF-35Aの運用コストがアメリカのF-15Eストライクイーグルとほぼ同額だったと指摘している。

F-35は将来性においてもはるかに優れている。例えばF-35の驚異的な性能なAN/APG-81アクティブ電子走査アレイレーダーは、現在世界最高峰だ…しかしノースロップ・グラマンのAN/APG-85が既に後継装備として開発中である。

しかしアップグレードに関して最も重要な点は、F-35が実際にそれらを搭載できることだ。グリペンEは単一のF414-GE-39Eエンジンを搭載し、アフターバーナー全開時で22,000ポンドの推力を発生する。一方F-35はアフターバーナーを使用せずとも28,000ポンド、使用時には驚異的な43,000ポンドの推力を生み出す。これによりF-35はより多くの装備を搭載可能だ。

さらに、グリペンEの最大搭載量は約15,900ポンドであるのに対し、F-35は主翼下に15,000ポンドの兵装を搭載可能で、さらに5,700ポンドの兵装を内部に収納できる。

しかしグリペンの軽量性は、より高い最高速度(マッハ2対マッハ1.6)と戦闘行動半径(グリペン930マイル対F-35770マイル)をもたらす。F-35のF135ターボファンエンジンは冷却能力の限界に近づいており、本格的なアップグレードにはエンジン改良との同時進行が必要となる。

グリペンEもF-35も完璧な戦闘機ではない。あらゆる戦闘機設計は妥協の産物だ。だが「どちらが優れた戦闘機か」という問いへの答えは明白である。F-35が圧倒的に優れている。

とはいえ、この現実を実際に争う者はほとんどいないようだ。むしろグリペン推進の動きは、戦場での能力よりも政治的な動機に起因しているように見える。政治的な力でF-35の圧倒的な性能優位性を覆せるかどうかは、時が経てば分かるだろう。■


Does it make sense for Canada to get Gripens instead of F-35s?

  • By Alex Hollings

  • December 11, 2025

https://www.sandboxx.us/news/gripen-f-35/?ue-mini-cart-product-added