2015年10月10日土曜日

★どうしてデラウェアに旧ソ連東欧製ジェット機群がいるのか



アメリカ人の趣味に対する熱意には感服しますね。それにしても冷戦終結でこういった機体を売りさばく商売が成立していたことがわかりますね。実際にそれを飛ばす人がアメリカ人というのも歴史の皮肉のような。さらにそれを維持管理するビジネスが成立するというのも驚きです。

Floggers, Fishbeds And Albatrosses In L'il Ol' Delaware

Oct 7, 2015by  Nigel Howarth in Ares

デラウェア州は全米で一番早く生まれた州と自慢するが、航空レースやロシア製軍用ジェット機となると話は別だ。
筆者は米国内でスホイSu-25フロッグフットの機体を追って記事にしたことがあり、今回は目立たない州でその仲間を発掘した。
ウィルミントンのニューキャッスル空港は大型ビジネスジェット機の本拠地であり、州空軍(C-130Hを運用)および州陸軍航空隊(UH-60)も基地を置く。

そこの名もないハンガー内にMiG機が常駐している。元チェコスロバキア空軍のMiG23フロッガー2機とMiG21 フィッシュベッド1機だ。
ここでは新品同様に見えるMiG23 (「05」の記号入)で塗装したてのような白地に青の閃光が入っているのが目を引く。飛行可能な状態だが、飛行コストが高くつくので飛行時間が足りない。それにMiG23を操縦できるパイロットも不足しているのだろう

大柄なソ連時代のフロッガーはマッハ2飛行が可能で、70年代80年代通じ数千機が生産された。排気口の大きさから同機の推力の大きさが推し量られよう
尾翼からはチェコ空軍時代が偲ばれるが、復刻作業を受けている。この機体がもはや飛行する機会はないと思われるが、現在でも運行中のMiG23は少数にすぎない。


MiG21フィッシュベッドは世界で最も多く生産された超音速戦闘機で数千機が各形式で作られた
ワルシャワ条約加盟国以外にも広く輸出され、特にインド、アフリカ、中東が多い。インドは今日でも多くを運用中で、東欧の空軍ではわずかしか残っていない。現在およそ1,600機が運用中でここには中国画生産した改良型も含む。
この機体も無傷の状態で、有名なリノ・エアレースに数回出場した機体だ。超音速性能を武器にぶっちぎりの勝利を収めたのではないか。

ここでは別の機体もある。Let 39 アルバトロスで、チェコ製の同機も数十年に渡り生産された数の型式があるが、39、59、159が有名だ。この機体も多数輸出されており、数千機が世界各地で売却されている。成功の理由として初等練習機、高等練習機、軽攻撃機と多様な任務を遂行したことがあげられよう。
現在は多数が民間所有にわたり、FAAでも250機近くが民間機登録されている。ただし、全機が飛行可能ではない。ここで写っている機体もリノレースに数回出場している。
ニューキャッスル空港の反対側にはレッド・イーグル・エイビオニクス社がソ連時代の機体の保守管理を専門に行なっており、Let 39は定期的に修理点検で訪れている。
訪問時にはたままた一機がサンダーバーズ塗装になってエプロン上に佇んでいた。

もう一機はチェコ空軍塗装仕様で機種にはロシア風にダミー数字が入っていた。

内部では旧スロバキア空軍機に注目。これも良い状態になっている。

Su-25フロッグフットに話しをもどすと、デラウェアの田園地帯に2機が残っている。所有者の一人はレッド・イーグルのオーナーでもある。その後、Su-25のオーナーからマニュアル各種を翻訳し終わり、まもなく飛行開始すると連絡してきた。今後の記事に注目されたい。
記事執筆にあたり、機体オーナー各位およびハンガー内スタッフ各位のご好意に感謝したい。
All photos by Nigel Howarth



2015年10月9日金曜日

★★オーストラリア向け潜水艦建造>日本側提案の概要が明らかになりました



行方が注目されるオーストラリアの次期潜水艦建造ですが、現地生産方式で日本が提案内容をまとめていることが判明しました。オーストラリア人材の養成も含めた総合的な内容のようでオーストラリア政府による公正な選考を期待しましょう。一方で、オーストラリア海軍の作戦構想では北半球のパトロールも視野に入っているようで、これは大型艦ならではの性能でいよいよ日本にとって有利な想定ではないでしょうか。

Japan Outlines Bid for Australia’s SEA1000 Future Submarine Program

By: Mike Yeo
October 8, 2015 11:52 AM
Undated photo of Japanese Maritime Self Defense Force submarine Soryu (SS-501)海上自衛隊の潜水艦そうりゅう(SS-501)

SYDNEY, AUSTRALIA — オーストラリアのSEA1000潜水艦建造計画で日本が提案内容の概略を示した。

  1. シドニーで開かれたPacific 2015 International Maritime Exposition展示会で三菱重工業、川崎造船の共同事業体および日本の防衛省から日本案が採択されれば、建造はオーストラリア国内で行い、日本から技術移転すると明らかにした。

  1. 防衛省関係者から日本側コンソーシアムは「オーストラリア国内でゼロから建造する」前提と述べた。このシナリオでは日本はアデレイドに訓練センターを設置し、300名ものオーストラリア技術者に関連事項を研修する。

  1. さらに実物大のモックアップを政府所有のオーストラリア潜水艦株式会社(ASC)内に設置し、オーストラリア作業員の研修に使う。研修期間は3年に渡り、一部は神戸で行う。

  1. ただし日本からは艦の一部を日本で建造し、残りをオーストラリアで生産するハイブリッド方式のほうが望ましいとの意見が出ている。この方式だと一号艦の引き渡しが早くでき、訓練用モックアップが不要になり長期的に見て費用を下げることが可能になるという。

  1. 日本が提案するのはそうりゅう改ディーゼル・エレクトリック推進艦でリチウムイオンバッテリーを搭載する。ただしオーストラリアから要望があればAIP方式も提供する。

  1. オーストラリア向けそうりゅう級にはオーストラリア国内開発の水力設計を取り入れ、戦闘指揮システムと新開発大型魚雷はオーストラリアが米国と共同開発する。

  1. ASCについて日本側からその機能を高く評価する声が出た一方で、世界でも最大級の通常型潜水艦建造が決まれば設備の更新も必要との指摘も出た。

  1. トラブル続きのSEA1000事業ではオーストラリア政府が不安定だったこと、要求性能水準が明確でなかったこと、安全保障の構図が変わったことがこの数年間発生し執行が滞っていた。

  1. 2009年度版国防白書は当時のケビン・ラッド首相のもとで12隻の潜水艦をASCで建造し、コリンズ級各艦と交代させるとしていた。

  1. ただし2013年までに追加検討がなされ、トニー・アボット首相のもとではASCを重視せず、特にコリンズ級でトラブルが続いたことから「ASCではカヌー1隻も作れない」とまで前国防相デイヴィッド・ジョンストンが発言する始末だった。

  1. アボットがそうりゅう級の設計を好んでいることは公然の秘密でオーストラリア独自の要求内容を実現させ、日本ですべて建造する想定で、競争入札の手順を取らないとの噂が流れていた。

  1. すると国内で政治的圧力が高まり、政府は逆コース選択を迫られた。2月には「競争的評価」をフランスのDCNS、ドイツのティッセンクルップ・マリン・システムズと日本のコンソーシアムの間で行うと発表。この三社は最終提案内容をまとめており、提出期限の11月30日に間に合わせる。

  1. オーストラリアが求める潜水艦での独特の性能要求は南氷洋から熱帯地方までの広範な海洋環境を念頭にしている。また国内基地を遠く離れた展開を想定し、南シナ海や北太平洋までをパトロール範囲に想定しているのが特徴である。■


ブラックホーク他の換装エンジン開発競合始まる 規模は拡大するか



エンジン換装して長く使うということは現行の機材を使い回す、ということですね。回転翼機でも長寿命の機体が生まれるのでしょうか。UH-60系は広範に使われている機体のため、採用されれば大きな潜在的需要が見込まれそうですね。

Battle To Reengine UH-60 Black Hawk, AH-64 Apache Begins

Does a 20,000-engine market await the winner of the U.S. Army’s ITEP contest?
Oct 7, 2015 Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology

米陸軍向けの航空機用エンジン競作は直近が1985年でボーイングシコルスキーRAH-66コマンチ用だったが、結局同機開発はうまく行かなかった。
  1. その前は1971年でジェネラル・エレクトリックT700が多用途戦術輸送航空機事業へ採用が決まり、同機はシコルスキーのUH-60ブラックホークになった。T700は高性能攻撃ヘリコプター事業でも採用が決まり、これはボーイングAH-64アパッチになった。
  2. 米陸軍は新たに主力エンジンの競作を開始した。これは改良型タービンエンジン開発事業(ITEP)として3,000-shp級のターボシャフトエンジンを開発するのが目標だ。ペンタゴン最大のエンジン開発事業となり、陸軍は2024年から合計6,215基を調達し、AH-64E,UH-60M,HH-60Mのエンジン換装を目論む。
  3. だが事業規模は遥かに大きくなるだろう。GEは11月に通算2万基目のエンジンを納入し、T700および民間向けCT7として25種類もの回転翼機、固定翼機に提供している。ITEPでも米空軍のHH-60Mや海軍のMH-60でもエンジン換装が実現するかもしれない。また他の機種でも可能性がある他、構想中の次世代垂直輸送回転翼機事業でも採用になるかもしれない。
  4. T700も今回のITEPが目論むのと同様の過程で生まれたが、遥かに短期間で実現している。GEとプラットアンドホイットニーが契約を1967年に交付され、1,500軸馬力級のエンジンの実証を行った。GE12が1969年に登場し、プラットのST9より優れ、ライカミングのPLT27にも1971年に勝利を収めている。そしてT700の登場が1973年で、ブラックホークは1974年に、アパッチは1975年にそれぞれ初飛行している。T700が実際に投入されたのは1979年だった。
  5. プラットはライカミングと組んで再度コマンチのエンジンとして採用を狙ったが、RAH-66は2004年に打ち切りとなり、エンジンはCTS800として現在も生産されている。
  6. この結果、プラット・アンド・ホイットニーは回転翼機市場から撤退し、カナダの関係会社を通じ例外的に供給しているだけだ。プラットはハネウェルと高性能タービンエンジン製造株式会社(ATEC)を通じ連携している。陸軍はGE単独入札は避けたく、他のメーカー参加を希望するが、ロールスロイスは参加の意向なく、フランスのチュルボメカは回答を避けている。.
  7. ITEPの準備段階の位置づけで陸軍の高性能経済価格タービンエンジン(AATE)事業としてGEとATECがともに2008年に契約交付を受け、3,000軸馬力級エンジンで出力は50%増、燃料消費はT700比で25%低いエンジン開発を進めている。このGE3000とATECのHPW3000地上実証エンジンは2013年に運転を行っており、AATEは2014年に終了している。
  8. 期間2年でITEP初期設計段階の提案要求が9月24日に発表された。契約交付は2016年9月予定で陸軍は初期設計審査用のエンジン2基分の予算を確保しており、その後一基に絞込みを2018年度に行ったあと、技術生産開発段階に移ると目論む。
  9. 初回エンジンテストは2021年予定で、初期低率生産が始まるのは2024年第3四半期となるが、エンジン換装したアパッチ、ブラックホークの初期作戦能力獲得は2027年以降になり、AATEが開始となってからほぼ20年後となる。
  10. T700開発・配備時のスピードとは対照的だが、ITEPで想定する技術課題のレベルが高いのが理由と陸軍は説明する。AATEでは出力とともに効率面でも目標達成が可能と証明する必要があったが、これを高い信頼性かつ予算内でしかもT700と同様の生産規模でできるのかはすでに実証済みであるとカート・キューテマイヤー中佐(陸軍ITEP主幹)は述べる。
  11. ITEPが目指す性能水準はAATEとは異なるが似ていると中佐は語る。RFPでは高度 6,000 ft.で最高出力1,850 shpとし華氏95度の昼間で空気密度が高い条件を想定すると目標は最低でも2,050 shpになる。乾燥重量の目標値は 465 lb未満で出力の目標値と異物分離器の採用も想定する。ITEPでは航続距離の延長、高温高高度性能、到達時間の短縮をUH-60およびAH-64で狙う。
  12. このため、遠心式圧縮機を2基備えた二重スプール方式で必要な性能を実現するとATECは見ている。GEはそこまで複雑ではなく、単スプール式エンジンとして、T700の軸方向遠心圧縮機方式とする。相当のレベルの競作となるとみられる中で、GEは圧縮機、セラミックマトリックス複合材料、タービン技術で陸軍の5,000-10,000-shp級低価格タービンエンジン用に制作した実証エンジンの経験をITEP提案内容で「関連する分だけ」応用するとしている。■

ロシアのミサイル攻撃を米海軍協会はこう分析している



米海軍協会は投入された艦艇の情報がさすがに詳しい。心情的な反応ではなく、技術的な情報が豊かですので対照的ですね。しかしクルド人勢力もビデオを自由に扱い、ネットに投稿する時代なのですね。

Kurdish Video Lends Credibility to Russian Navy Caspian Sea Strike Mission Claims

By: Sam LaGrone
October 7, 2015 4:29 PM

Undated photo of Russian Navy guided missile frigate Dagestan firing UKSK Shot.
日付不詳、ロシア海軍誘導ミサイルフリゲート艦ダゲスタンがUKSAによるミサイル発射をしている

4隻のロシア戦闘艦がカスピ海から合計26発の誘導巡航ミサイルをイラン、イラクを通過する形で発射し、シリア国内のISIS目標を900マイル以上離れた地点から攻撃したとロシアが主張している。

  1. 裏付ける証拠がISISと戦うクルド人ペシュメルガ勢力から出てきた。ツィッター上で誘導巡航ミサイルがクルド人部隊の野営地上空を飛行する映像を公開したのだ。

  1. 水曜日発表のにロシア国防省声明によればブヤン-M級海防艦(1,000トン)3隻と2,000トンの誘導ミサイルフリゲート艦ダゲスタンがSS-N-30A巡航ミサイルを発射し、「弾薬製造工場、指揮所、弾薬貯蔵設備、戦闘員訓練所をラカ、イドリブ、アレッポの各地で」目標にしたという。

  1. ペルシェメルガ発表の動画では亜音速巡航ミサイル二本がSS-N-30Aの特徴のまま飛来する様子が見られる。

  1. ロシア外務省からも独自に編集した動画が公表されており、ミサイルを発射する艦船、ミサイルがシリア中央部に飛来する経路とともに亜音速SS-N-30AあるいはカリブルNKまたは3M-14Tと呼称されるミサイルを示している。

  1. 国防長官官房(OSD)の関係者および米中央軍からはロシアの主張への確認ならびに独自の軌跡結果はまだ発表されていない。

  1. ミサイルが飛行した距離がロシアの言うとおりなら、イラン、イラク、シリアの領空内を通過して移動している。

  1. 多数のミサイルが自国の領空内を通過すれば該当国の防空体制が無用な反応をしないよう事前準備する必要があると指摘するのはブライアン・クラーク(前海軍作戦部長付特別補佐官、現戦略予算分析センター(CSBA)の主任研究員)だ。

  1. 「本当なら各国間の調整能力が相当前進して戦域大で作戦を調整できる様になったことを示すものです。これまでは実現できていませんでした」とクラークは USNI News に語った。

  1. 事実だと確認できれば、ロシアには遠隔地から攻撃能力があることになるとエリック・ワーサイム(米海軍協会編世界の戦闘艦艇の編者)も USNI News に語った。

Buyan M guided missile corvette.
ブヤンM誘導ミサイル海防艦


  1. ロシアが有効射程と威力の点でレイセオンのトマホーク陸上攻撃ミサイル(TLAM)に匹敵する兵器を有している事実は「世界各国が技術面で差を縮めてきた」ことのあらわれだとワーサイムは指摘。

  1. 前方配備中の航空機なら簡単に攻撃できたのに、今回ミサイルを投入したことに意味があると見るのはスティーブン・ホーレル(米海軍から大西洋協議会へ派遣の主任研究員)で USNI News にこう語っている。

  1. 「戦術的な意味と関係なく、明らかに米国およびNATOにメッセージを送っている」「またトルコには領空・国境線侵害をめぐり緊張が高まっており別の意味がある」


  1. ブヤンM級の海防艦やダゲスタンは新型の水上艦艇としてロシア艦隊に編入されており、UKSK垂直発射方式で長距離巡航ミサイルを発射できる。黒海配備の水上艦では近代的装備の運用は不可能だ。ロシアが同部隊の近代化をしないと決めているためだ。

  1. ただしロシア海軍は巡航ミサイルを装備した艦艇を拡充している。

  1. 「カスピ海に加え、黒海にも改キロ級潜水艦ノボロシスクが同様の能力を有して先月配備されバルチック艦隊にも新型フリゲート艦が編入されている」とホーレルが言う。■


2015年10月8日木曜日

シリア>ロシアのミサイル攻撃への米側反応①


ロシアによる巡航ミサイル攻撃の実施には今後も多くの評論分析が出てくると思いますが、まず以下の記事をご紹介します。若干感情的になっている感じもしますが、今後も関連記事で意味のあるものを随時ご紹介してきます。

Experts: Russian navy missile strikes were 'bravado'

By Andrew Tilghman, Staff writer3:44 p.m. EDT October 7, 2015
Russian missile launch(Photo: Screen image via YouTube)
ロシアがシリア国内の目標を1,000マイル以上離れた地点から攻撃したが、艦載長距離巡航ミサイルの投入は軍事的に米国を愚弄する行いだと米専門家は見る。
  1. 「虚勢を見せつける行為です。見えを張っているのです」と話すのはクリストファー・ハーマー退役海軍士官で戦争研究所(ワシントン)で海軍アナリストをしている。
  2. ロシアは26発のミサイル攻撃をシリア反乱勢力に加え、武力投射として初の試みとして艦載超音速「クルブ」ミサイルを投入した。これは米国製トマホークとほぼ同様の性能で「空母キラー」の名前で呼ばれる。
  3. ロシア軍はシリア国内で前方配備中の航空機を使えば同じ目標を簡単に攻撃できたはずだ。.だが今回の攻撃はロシアが初めて海軍の艦対地長距離ミサイルを使ったことに意味があるとハーマーは見る。
  4. 「これまでもロシアが紙の上では戦力を有していることが判明していました。実際に戦闘に投入して威力を示すのは全く違う話です」(ハーマー)
  5. ペンタゴン報道官ジェフ・デイビス海軍大佐からは7日にロシアから米側上層部へはミサイル攻撃の事前連絡はなかったと明らかにした。攻撃対象の反乱勢力はシリア大統領バシャアル・アサドに対抗して戦っており、ロシアはアサドを同盟と捉えている。
  6. 今回の攻撃はロシア海軍の能力を示したばかりか反米同盟関係が中等に生まれつつあることも如実に示している。
  7. ミサイルの飛行経路はイラン、イラクの北部空域を通過し、両国政府にはあらかじめ防空対応は不要との了解を得ていた可能性が高い。
  8. 「またもやイラン・イラク同盟がロシアとつるむ状況を目の前にしました」と語るのはスティーブン・ブランク(アメリカン外交協議会でロシア専門家)だ。「連中は合衆国が中東で行うこと全てに反対の立場です」
  9. 米軍機はシリア上空を毎日飛行しており、ISに対する空爆を実施しているが、ロシアの空爆が9月26日に始まると米軍の作戦にも影響がでできた。米ロは現在のところ意思疎通の手段を有しておらず、空域での衝突回避の手段がなく、偶発事故や武力衝突のリスク低減で手段がない。
  10. 「わが方は航空機の投入数を減らさざるを得なかった」とデイビス報道官は述べた。「安全な飛行を確保する対策を取っている」.
  11. 国防長官アシュ・カーターはロシアが弱体化するアサド政権のテコ入れで軍事行動を展開することに反対と発言している。「わがほうは戦略面で協力する準備ができていない。戦略はロシアにより悲劇的に狂ってきた」と訪問先のローマで7日に述べている。
  12. ただし長官は基本レベルでの調整については可能性を残している。「今後も基本的な技術協議を続け、わが方のパイロットがシリア上空で事故を回避できるようにする」とし、「チャンネルは開けておく。なぜならこれは安全保障の問題であり、パイロットの安全の問題だからだ」
  13. そこで今回のロシア海軍による攻撃はロシアのシリア作戦が一段階拡大していることを示しているとブランクは指摘する。
  14. ロシア軍用機はシリア国内の空爆を開始したが、米国の抗議は無視した形だ。ロシアは同時にロシア兵から「義勇部隊」を募り、シリアの地上戦に投入する構えを示した。
  15. 「これはロシアに武力投射能力があることを示すものです」(ブランク)「尊大さと自己顕示が多大に見られます。プーチンが横柄になっているのでしょう。『お前たちは弱いがこっちは強いぞ。こんなこと朝めし前に実行できるが、お前たちには止められないぞ』ってね」■

シリア>ロシア海軍がカスピ海から巡航ミサイル攻撃を実施


先にお伝えした東地中海に展開中のロシア黒海艦体は旧式艦だらけですが、今回はあえてカスピ海から遠距離攻撃を実施したロシアの狙いはずばり力の誇示でしょう。どれだけの効果があったのかは不明ですが、今後も継続使用すれば相当の効果を上げてくるでしょうね。巡航ミサイル技術でも相当の追い上げが出ていることの証拠で、ますますペンタゴンは三番目の相殺を技術開発面で進めていくのではないでしょうか。

Russian Warships Launch Missiles into Syria: Report

by BRENDAN MCGARRY on OCTOBER 7, 2015

(Photo RT / YouTube / Russian Defence Ministry)
ロシア海軍艦艇から20発以上の巡航ミサイルがシリア国内に向け発射された
ロシア海軍艦艇4隻がカスピ海から26発の巡航ミサイルをISIS関連とみられる11箇所の目標に発射した。ロシア報道機関RTが10月7日報道している。
ロシア国防相セルゲイ・ショイグが「誘導データによればすべての目標の破壊に成功している。民間人の被害は発生していない」と発言しているという。
報道で言及された艦船はゲパード級フリゲート艦ダゲスタン、ブヤンM級海防艦グラド・スヴィヤツク、ウグリッチ、ヴェリキ・ウスチュグの各艦。それぞれカリブル-NKの発射装置を搭載し、最大1,550マイル(2,500キロメートル)までを射程に収める。
ミサイルはラッカ、イドリブ、アレッポ各地方のISIS目標に命中したと言われる。
この攻撃任務はシリア国内を飛行するロシア軍機から容易に行えたはずなのに、あえて巡航ミサイルによる攻撃にしたことはおそらくロシア海軍の実力を示威することが目的だったのではないか。しかも実施には小型艦を用いている。■


2015年10月7日水曜日

シリア情勢>ロシア海軍が東地中海に展開中


シリアをめぐるロシアの動きに西側は神経を尖らせています。ウクライナ情勢が落ち着いてきたことからロシアにも余裕が生まれているのでしょうか。しかし目的も目標も違う軍事勢力が同じ場所で軍事行動を取ることで不要の緊張が事故をきっかけに発生しないとも限りません。今後も事態の進展を見ていく必要がありますね。

Russian Warships in Eastern Mediterranean to Protect Russian Strike Fighters in Syria

By: Sam LaGrone
October 5, 2015 11:48 AM

Russian cruiser Moscow.
ロシア巡洋艦モスクワ

黒海に本拠をおくロシア水上艦艇グループが東地中海に演習名目で進出しており、同地でロシア空軍機の支援に入った。シリア国内の空爆を継続するのが目的だとロシア国内報道が伝えている。

  1. この三週間で戦闘艦数隻がロシア黒海部隊の本拠地セパストポリを出港し、クリミヤ半島から地中海に対艦、対潜演習を行うとして移動している。”
  2. ロシア国防省(MoD)は演習とシリア国内でのロシア軍増強に関連はないとするが、独立系ロシア国内の報道機関インタFAX-AVNはロシア軍関係筋を引用し演習の目的はラタキア近郊の空軍基地の防空能力をテストすること」と伝えている。
  3. 別の報道でDaily Mailが「海軍任務部隊の艦船はミサイル巡洋艦モスクワが先導して東地中海でラタキア近郊の空軍基地の防空体制を強固にするべく行動を実施中である」と伝えている。
  4. 国家統制を受けたロシア報道ではロシア海軍艦艇4隻が水上戦と対潜戦の演習を行ったと月曜日に伝えている。
  5. 誘導ミサイル巡洋艦モスクワは黒海艦隊の旗艦で、クリバク級誘導ミサイルフリゲート艦ラドニ、ピティヴィ、カシン級フリゲート艦スメティルヴィとともに砲撃演習を実施したと黒海艦隊が国営通信スプートニクを通じて発表している。
  6. 水上艦以外にロシア海軍は観測船および数隻の揚陸艦を展開している。
  7. 過去四週間でロシアはこっそりと空軍機材をシリア国内に移動させており、表向きはイスラム国を目標にするとしているが、ロシアの同盟国たるシリアのバシャ・アル-アサドの政権維持を助け、自らの中等における発言力を増やすのが真の目的である可能性が高い。
  8. ロシアは空爆作戦を先週開始しているが、ISISの目標以外にFSA(自由シリア軍)も攻撃対象にしているとの報道が相次いでいる。
Russian Sukhoi Su-24 Fencer operating from the Latakia Air Base in Syria.
ロシアのスホイSu-24フェンサーはシリア国内ラタキア空軍基地から作戦行動中

  1. 今回動員された海軍艦艇による防空体制でロシア軍には米主導の有志連合軍がシリア西部で軍事行動を取っても防備体制を確保したと言える。
  2. ロシア海軍の存在は有志連合側には警告となるかもしれないが、1980年代のロシア艦艇の兵装及びセンサーの有効性は未知だ。
  3. 冷戦終結後のロシア水上艦艇部隊はソ連崩壊後の軍組織でもっとも放置されており、装備の近代化の試みも数回挫折している。■

★9月習近平訪米は中身なし オバマ政権の弱体化がひどい



オバマにはきつい見方ですが、米国では賛成する向きが強いのでしょうね。オバマ政権の8年間は安全保障ではいいことは少なく、その分中国が台頭してきましたから。ところで習近平の訪米で何が生まれたのでしょうかね。ローマ法王の訪米を何とかして変更したかった北京の予想通り、習訪米は地味で目立つことが少ない、中国人としては不満遣る方ない展開になったのではないでしょうか。

Summits Over Substance: Obama Yields To Chinese President Xi

By DEAN CHENG on September 23, 2015 at 2:44 PM
ワシントンでは習近平主席の公式訪問を控え準備に忙しいが、中国による行動が緊張を高めている事実を米国は伝える緊急性がある。だがそこまで率直に話すつもりがないオバマ政権は弱体化をさらけ出し、主体的に課題解決をめざす様子はない。この数週間で露呈した現象を考察してみよう。
  1. 中国官憲が米国籍ビジネスウーマンをスパイ容疑で逮捕し、身柄を今後6ヶ月に渡り拘束しそうだ。「複数の米政府高官」から米国が中国によるサイバー諜報活動に制裁を検討中と判明したが結局実施に踏み切らなかったのと好対照だ。
  2. 事案 米偵察機に向け中国戦闘機2機編隊が迎撃に向かった。偵察機は当時公海上空を飛行中。同様の事件は以前にも発生している。中国戦闘機がバレルロール飛行で米軍機と空中衝突一歩前まで行った例や米艦船の手前で停船し衝突しそうになった中国軍艦もある。対照的に米政権は中国が建造中の人工島から12カイリ地点には立ち入っていないとしぶしぶ認めている。
  3. 事案 中国は軍事作戦の範囲を大きく拡大中でロシアと初の合同海軍演習を地中海で行ったばかりか、アリューシャン沖まで任務部隊を航行させた。リムパック演習に正式に参加しながら2014年に中国はスパイ艦を派遣しているが、次回も招待されているが逆に中国は自国演習へ米国のアクセスを認める兆候はない。
  4. 事案 中国の国防支出は2015年は10%増加している。今月初めの軍事パレードで30万人削減の発表があったが、全体の軍事予算の削減に繋がっていない。むしろ海軍、空軍、第二砲兵隊、宇宙軍の予算増に振り向ける。一方で米国は引き続き予算削減の下で全体の削減額の半分を国防分野に期待する。中国の軍事演習が拡大する一方で、米艦船は係留されたまま、パイロットは飛行時間を減らしている。
  5. 中国は米国の決意を試しているのか、アメリカの指導力を低く見ているのか、どちらにせよ結果は同じだ。中国は自国の望む方向で米国に対処できるが、米国は同じことができない。中国の力強さと対照的に米国の無気力さを見せつけられる西太平洋地区の米側同盟各国は米国への信認を低下させる結果になる。米国が航行の自由原則を堅持し中国の主張を受け付けないとしても、意図的に中国を敵に回さないのであれば、米国の約束は信頼を失う。首脳会談させ無事に終われば良いと考え、自国民が逮捕されても対応せず中国のサイバー活動への抗議にも反応がないままにしておくのであれば、中国の領海領有権の主張に異議を唱える意図があるのか疑わしく思われても仕方ない。
  6. さらに危険なのは何をしてもオバマ政権から処罰をうけることはないと習主席を誤解させることだ。オバマ政権の残り任期16ヶ月はそうかもしれないが、後を引き継ぐ政権はそうは行かないだろう。民主党、共和党問わず次期大統領がオバマ大統領と同様に中国の主張に理解を示すとは考えにくい。
  7. ひとつだけ例を挙げると台湾海峡問題がある。この7年間は静かだが、再度熱い地点にもどるかもしれない。 台湾の総統選挙は2016年で独立を主張する政党が政権を握ることになりそうだ。米国が台湾を見捨てればアジア全体から信用を失うし、悪影響が欧州・中東に及びかねない。.
  8. オバマ大統領は歴史の表舞台からほどなく消えるが習主席は残る。中国の政治形態の特徴で大きな変動が発生しないまま習は2017年の党大会で再選される。現時点の中国共産党政治局常務委員は大部分が引退する予定なので、あらたな顔ぶれに囲まれるだろう。そうなると習の影響力は遥かに大きくなり、政治局では第一期5年間で得た経験が以後の政策決定に大きく影響してくるだろう。
  9. 中身より体裁を重視することでオバマ大統領は米中間の意見の相違、誤解を生む要因を作り出し、アメリカの意図を中国が誤って解釈する事態を生もうとしている。■


LRS-B契約交付先の発表は間もなく?



USAF in ‘Final Closing Phase’ of Bomber Contract

By Lara Seligman5:54 p.m. EDT October 6, 2015

635797311321575465-DFN-bomber-avenger(Photo: US Navy concept/Wikimedia)
WASHINGTON — 米空軍は次世代爆撃機の契約交付先選定の最終段階に入っており、結果発表は間近に迫っている。
「最終選定の段階にあり、順調に進んでいるので、結果はまもなくわかります」とウィリアム・ラプランテ空軍次官補がDefense One主催のイベント会場で述べている。
仮に空軍が一年間におよぶ削減措置延長を受けても、長距離打撃爆撃機(LRS-B)の契約交付は予定通り実施すると同次官補は発言。
業界は息を飲んで相当遅れた契約先発表結果を待っている。ペンタゴンはまず今年夏に結果を発表する予定だったが、それが初秋になった。直近ではある空軍関係者があと数ヶ月だと見ている。
ペンタゴンはノースロップ・グラマン案、ボーイング=ロッキード・マーティン案のいずれを選択すべきかを検討中だ。
ペンタゴンはマクダネル・ダグラス/ジェネラル・ダイナミクスのA-12アヴェンジャーII事案からの教訓を得ていると現在の調達トップ、フランク・ケンドール副長官は言う。同機は全天候艦載ステルス爆撃機として海軍、海兵隊向けに計画されたもので、費用超過と遅延を理由に1991年に計画が打ち切られた。
A-12は「ブラック」つまり極秘開発計画が失敗した例だとケンドールは見る。ペンタゴンが「事業段取りで失敗」したためだという。契約受注2社は開発を目的にチームを組み、製造契約であらためて競争するはずだった。同時に両社とも最先端機に必要な技術開発に懸命だった。
A-12の失敗で固定価格開発契約方式が封じられたとケンドールは解説する。
そこでペンタゴンはLRS-BがA-12の轍を踏まないよう、成熟技術を多様することで新規開発の途を選択肢なかった。ただし、同事業は設計、テストの点では既存事業より先を言っている。空軍は両陣営による試作機を受領している。■

2015年10月6日火曜日

★★C-17後の軍用輸送機の展望はこうだ






なるほどC-17がなくなるとA400M以外に選択肢がなくなるわけですね。そうなるとわが方のC-2では開発遅れや機体強度不足による貨物搭載量の低下が恨めしいですね。もしC-2Bとでも言うべき強化改良型が生まれれば、今後30年に渡り生産が続けられるのではないでしょうか。米国としてもC-2の存在に注目しているのでは。

Opinion: After the C-17, A Tier Of Choices

Oct 5, 2015 Richard Aboulafia | Aviation Week & Space Technology

数カ月するとボーイングはC-17輸送機の最終号機を納入する。同機事業で特筆すべきは同機が全く新しい需要を作り出し、戦略輸送機の輸出が実現したことだ。
  1. 英空軍(RAF)がC-17を四機受領したのは2001年だったが、それ以前に米国以外で西側製軍事輸送機を導入した国はあったがショート・ベルファーストが機体サイズの上限だった。例外的にソ連製輸送機を導入したインドやリビアがあったが「友好」価格での調達であり、大型輸送機といえば米空軍あるいはソ連軍だけが運用していた。それ以外の各国はC-130あるいは小型ターボプロップ機を使っていた。
  2. ただしRAFのC-17導入から二年たつとNATO加盟7カ国がエアバスA400Mを立ち上げた。C-17の貨物搭載量に及ばないが、戦略的な飛行距離を実現する。また日本も旧式C-1の後継機種としてずっと大型の川崎重工C-2の導入を決めた。C-2は来年から就役する予定で、日本は44機を調達する。同機はA400Mとほぼ同じサイズで同様に戦略級航続距離を有する。
  3. だが驚くべきことはRAF向けC-17販売に続き、ボーイングが47機を輸出したことだ。その背景には同社がC-17を訴求力のある価格で強力な顧客支援体制とともに提示したことがある。
  4. こうして軍用輸送機の市場が出現したことの意味は大きい。米、ロを除く輸送機市場の総需要はずっと年間10億ドル未満で受注の多くがロッキード・マーティンC-130Jで構成されていた。しかし、今年は60億ドル規模になり、納入機数も5年間確実に増えている。
  5. 2013年9月にボーイングは通算223号のC-17を米空軍向け最終号機として納入し、生産ラインは2015年で閉鎖すると発表している。その時点で22機の生産予定があり、うち13機は買い手がついていなかった。その後、この13機は1機除き購入先を確保した。直近ではカタールが当初の購入規模4機を倍増する発注をパリ航空ショー会場で表明した。
  6. C-17生産ライン閉鎖の決定はつらいものだっただろう。ひとつには市場が急拡大しており、同機でも受注追加が期待されていた。戦略級軍用輸送機の導入予定がある数か国のうち、サウジアラビアは10機ないし15機を買うと見られていた。一時はアルジェリアも同機を真剣に検討しているとの噂さえあった。.
  7. また現行ユーザーにも追加購入の兆候があった。8月にはインド空軍がC-17を3機追加導入すると述べたが、その時点で残った機体は一機だけだった。ただ米空軍や海外運用国の要求により、使用済み機体の再販売は認められない。つまり、ボーイングが仮に生産ラインを半年ほど維持しても数機しか売りさばけなかったのではないか。
  1. だがライン閉鎖を後押しした要因は他にもある。ボーイングはロングビーチ工場を閉鎖することができ、同地の資産価値は相当ある。またC-17最終号機はかつては航空業界の中心だったカリフォーニア州で生産される最後のジェット機にもなる。
  2. もう一つの問題はA400Mだ。エアバスは同機の海外営業に精を出しているが、お膝元の二国ドイツとスペインが運用中の26機を再販売しようとしている。販売価格は相当低くなるはずで、それだけボーイングの立場が困難になる。
  3. そもそもボーイングがライン閉鎖を決めた最大の理由は米国内でこれ以上の受注が望めないためだった。当初は米空軍の追加発注までのつなぎとして海外向けに販売し、C-17Bの提案までしていた。だが米空軍は220機のC-17と51機のエンジン換装C-5M体制を今後25年ないし30年維持するとしている。確かに海外販売は順調だが、ライン維持には規模が足りず、もっても1年ないし3年維持できるかどうかだった。
  4. C-17後の国際軍用輸送機市場は分化するだろう。戦術輸送機の候補としてエアバスC-295、アレニアC-27Jがある。戦域レベルの輸送機にはC-130Jならびにエンブラエルの新型KC-390があり、後者は2018年末に就役する。ただし戦略級輸送機を求める向きにはA400Mしかない。ただし、川崎重工がC-2輸出に踏み切れば話は変わる。
  5. もし戦争あるいは緊急事態が発生すれば、米空軍には戦略輸送能力の拡大が必要になるが、代替機開発の予算も時間的余裕もないので、A400Mを買わざるを得ないというバツの悪い立場に追いやられるかもしれない。■

F-15>EW装備の近代化で残存性向上をめざす


F-15も息の長い機体になりそうです。機齢50年を超える機体になった場合、構造的に大丈夫なのでしょうか。電子戦装備は防御性を重視した内容のようですが、ステルス性に関心を奪われるあまり攻撃能力が減少してしまうF-35を補完する機体として運用する構想のようですね。

Boeing, BAE Will Develop EW Suite For F-15

By Lara Seligman2:54 p.m. EDT October 1, 2015
WASHINGTON — 米空軍はボーイングを主契約企業に選定し、新型完全デジタル方式の電子戦装備をF-15に搭載する。BAEシステムズが開発にあたる。
ボーイングが10月1日発表した声明文ではEPAWSS(イーグル・パッシブ・アクティブ警戒残存システム)により脅威対象に対応してF-15乗員を守ることをめざす。空軍保有のF-15CおよびF-15E合計400機に搭載し、旧式化した戦術電子戦装備(1980年代より使用)を置き換える。
EPAWSS事業は40億ドル規模。
「今日そして明日の戦闘には最新のジャミング、目標捕捉、赤外線探知、高性能のおとり能力が必要」とマイク・ギボンズ(グローバルストライクF-15担当副社長)は声明文で語る。「EPAWSSでF-15は2040年代の先まで有効性を維持できる」
ボーイングはBAEシステムズをEPAWSS開発担当企業に選定した。BAEシステムズが10月1日に発表した声明文ではEPAWSSを高性能電子戦能力を実現し、F-15の「拡大成長可能性」を開くものと表現。同システムにより機体の防御能力が格段に向上し、高性能電子対抗手段、レーダー警報、チャフとフレアの能力アップで実現する。
「完全デジタル化で空軍は次世代電子戦能力をF-15CおよびF-15Eに搭載し、現在および将来の脅威対象に有効に対応できる」とブライアン・ウォルターズ(BAEシステムズの電子戦ソリューションズ部長)■

米大統領選挙候補の国防観を見る①


来年の大統領選挙まで一年ちょっとになりました。二大政党では指名争いをめぐり、はげしい争いのようですが、国防分野ではどんな主張が出ているのかのぞいてみましょう。両極端な主張の反面、不思議に一致している点もあるようです。これまでの選挙なら大風呂敷を広げていても大丈夫だったのでしょうが、財源が実現の決め手であり、今の段階では各候補は好き勝手に主張しているようっです。その中でまともな内容がカーリー・フィオリーナ候補(元ヒューレット・パッカード会長兼CEO)から出ているようです。

Fiorina’s Plans Require DoD Spending Boost Of $100B

By MARK CANCIANon October 02, 2015 at 2:53 PM

Carly Fiorina at CSIS
Carly Fiorina, 2016 presidential candidate.
大統領予備選が近づいてきた。政治日程で一番馬鹿げた行事だといえる。各候補とも支持基盤拡大に公約の大盤振る舞いだが、国防関係でもドナルド・トランプ含む各候補が国家安全保障を都合よく現実から遊離した形で口にしているのが実態だ。
にもかかわらず候補者ごとに方法論の違いが浮き彫りになりつつある。では各候補の言い分から将来の国防予算や装備計画にどんな影響が出るだろうか。
まず各候補で立場が相当異なっており、共和党は大幅予算増を主張するが、上院でただ一人社会主義を主張するバーニー・サンダースはその逆で大幅予算削減を唱えている。
共和党は全員が国防予算増額で強力な国防基盤の構築を主張。国防体制再構築のため予算削減を逆に変え「地球最強の軍事力」の実現を求める。だが具体論はほとんどない。たとえば前フロリダ州知事のブッシュはISIS対決策を詳細に説明するが、予算上の裏付けや具体策は殆ど無い状態である。前オハイオ州知事ジョン・ケイシックは自らを「安上がりのタカ派」と呼び、自らが支持した1986年のゴールドウォーター=ニコルス法案でペンタゴンを合理化したと自慢する。その反面、海軍の空母は現行の10隻を15隻体制に増強する主張だが、整備には巨額出費が必要となる。概して共和党員に海軍支持の傾向が強いのは現行の海軍力が弱体すぎると見ているからだ。
HP前CEOのカーリー・フィオリーナが一番具体的に提案しており、一等賞といえる。提案では陸軍は50旅団体制、海軍は300ないし350隻体制、海兵隊は36個戦闘大隊とし、核三本柱それぞれを近代化すると直近の共和党大統領候補者討論会で主張している。直接の引用ではないが、ヘリテージ財団が原案のようだ。同財団は米国の優位性が減少している中、この規模の兵力があれば大規模戦闘2個の同時実施は可能だという。
フィオリーナ提案には現状の予算ならびに規模をめぐる論争を大幅に変える可能性がある。財政的に実施は十分可能だ。現在の国防支出はGDP比で3.5%相当だが、冷戦時の1980年代の5ないし6%や1950年代の8ないし9%より相当低くい。また提案内容は世論の変化とも方向性があっており、昨年までの軍事規模が「巨大すぎる」との多数回答が「弱体すぎる」に変化しているのだ。フィオリーナ提案で支出すると冷戦終結後に米国が維持してきた軍事優越性を再構築し、中国の軍事的台頭にも対応しつつ、ロシアの強行策や冷徹なISISにも立ち向かえる。
ただし問題はこの支出をどうまかなうかだ。フィオリーナ構想を試算すると現政権による2016年度国防予算(1,350億ドル)に最低でも1,000億ドルの追加支出が必要だ。これは共和党自らが求めて発効した2011年予算管理法による赤字削減努力を破棄することになる。
左翼にはこれと真逆の動きがある。バーニー・サンダース上院議員は社会主義を信奉し自らを赤字削減のタカ派と称するが、その削減対象の大部分は軍関係であるのは驚くに当たらない。国防関連のどこを削減するのかと問われて、「冷戦時代の兵器体系」(このことば自体が賞味期限の切れた表現だ)として核兵器や空母を例とした。また国防での能率改善や同盟各国にもっと負担を押し付けると主張。サンダース議員の主張では国防関連で良いことがないが、一部詳細な意見になっていることは認めざるをえない。主張にはとっぴなところはないものの、一環して大幅軍事削減を唱えている。実現すれば大きな変化が調達や戦略案で出現するだろう。
  • 核兵器では、どれだけ量が必要なのかが議論の中心だった。現在は大型予算対策の対象だ。その中でも一番お金がかかるのがオハイオ級弾道ミサイル潜水艦の後継問題であるが、左翼・右翼ともにこれを支持している。なぜなら三本柱の中で一番残存性が高いからだ。
  • 空母は冷戦時代の兵器体系ではないが、一番高価であり最も強力な存在だ。海軍の兵力編成は空母中心に考えられており、空母が議論を呼ぶのは単価120億ドルの値札が理由だ。危機対応時に極めて有益であり、地域内紛争にも対応できる。ただし、中国やロシアを相手とした場合に残存できるかが問われ始めている。
  • 行政の効率追求は解決策にはならない。効率性の概念は無駄と同様に見る人で異なり、軍人の給与に上限を設けていいのか。民間流に効率を追求して空っぽの組織にならないか。真の意味の効率性はコストを削減するが、結果まで減らすことはないのだが実例は少ない。基地閉鎖は専門家多くが賛成する極めてまれな例だ。
  • 同盟各国に負担を求めるのはすでに米国政策の目標になっている。9.11以前のアメリカはNATO支出の半分を負担していたが、現在は75%になっている。
前国務長官ヒラリー・クリントンは慎重に中道の立場をとっており、自らの立場を明らかにするよりも誤ちを避ける方法を支持率トップ候補者として模索している。一部の政策案は共和党から借用し『プーチンに対抗する」「中国に責任ある対応を求める」「最先端装備を軍に配備する」などがその例。自身のウェブサイトでただひとつ具体的な説明をしているのはアメリカについてでなくイスラエルであることが興味深い。アイアンドーム・ミサイル防衛システムを支持している。報道ではクリントンはオバマより厳しい立場を取るという。ペンタゴン予算や事業についての立場は不明だがおそらく戦略や投入財源などでオバマと同様になんとか切り抜けようというのだろう。ただし現在の財政状況から見て実施可能なのかは議論のまとになろう。統合参謀本部は現行の大統領予算は国家安全保障・軍事戦略の上からは最低限に過ぎないと語気を強めている。民主党で急速に支持を伸ばすサンダースはクリントンを左寄りに動かそうとしており、今後クリントンの戦略方針や財政裏付けで一貫性が消える可能性がある。
著者マーク・カンシアンはオバマ政権の予算管理局で国防予算専門家を務め、現在は戦略国際研究センターで国防アナリスト。