2010年3月2日火曜日

さらに遅れるF-35の実用化

USAF Slips JSF Operational Debut
aviationweek.com Mar 1, 2010
 
  1. 空軍長官マイケル・ドンリーはロッキード・マーティンの共用打撃戦闘機(JSF)の初期作戦能力 (IOC)獲得は当初予定から遅れ2015年になる見通しと2月25日に発言した。
  2. 一方、海軍関係者は海軍用機体のIOC獲得予定 2014年にこだわっている様子はない。
  3. ドンリー発言はラリー・キッセル下院議員(民主 ノースキャロライナ)からの議会公聴会の質問 に対するもの。同議員は空軍がいつになったら同機を「戦力化できるのか」と聞いていた。
  4. ドンリー長官のスポークスマン、ジェフリー・グ レン中佐も長官発言でIOC時期が公式に変更になる点を確認した。
  5. これでおよそ2年間の遅れとなる。わずか一週間前にはウィリアム・フ レイザー大将(空中戦闘軍団司令官)が同機のIOC予定を再評価すると発言しており、ブロックIIIのソフトウェア搭載の機体でIOC獲得を希望すると 言っていた。海兵隊は性能が劣るブロックIIソフトウェア機体で2012年に運用を開始する。
  6. 2011年予算案ではJSFの飛行テスト 終了は2014年秋となっており、テスト報告書は翌年にならないと出ない。
  7. 今回の予定変更は空軍側が機体と同機のソフトウェア双方のテ スト完了前には作戦能力を認めたくない姿勢の現われだ。機体生産は予定通り進展しているが、ソフトウェア開発が遅れているのが現状だ。
  8. 一 方、海軍は機体数が一定に達し、性能が確認されればIOC獲得とみなす方針。
  9. 総額471億ドルの同機開発予算に追加された28億ドルの うち5億ドル相当がソフトウェア用に確保されており、テスト用のプログラム作成等に使われる。
  10. 開発の強化策として新たにテスト用機材3 機が追加されるが、これが却って同機開発の芳しくない進捗を改めて明らかにしている。また、艦載型1機の追加も以前から承認されており、これで追加は合計 4機になる。飛行テストには合計19機が想定されている。
 
●かねてからJSFには懐疑的なこのブ ログのエディターですが、この記事があらためて同機に対する見方を強化しています。開発には各国も係わっているので、進捗には多大の関心を持っているは ず。ここで日本がFXとして同機獲得に今から名乗りをあげれば、コスト上昇が続くはずの同機開発でまってましたとばかりの歓迎を受けることになるのでしょ うね。
 

2010年2月20日土曜日

進化するプレデター無人機

Predator C Set For Testing At Edwards
aviationweek.com Feb 19, 2010

  1. ジェネラル・アトミックス-エアロノーティカルシステムズはFAAより同社開発のステルス・ターボファンエンジン搭載の無人機プレデターC アヴェンジャーの飛行テスト開始許可が出ることを機体している。飛行テストはエドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)で実施の予定。
  2. V字型尾翼と後退角付き主翼の同機は昨年4月に初飛行に成功しているが、同社は三ヶ月間の予定でテストを開始する意向。
  3. 今 までの同機の飛行テストは比較的制限された飛行区域に限定されており、同社のモハーベ砂漠試験施設付近のみとなっている。エドワーズ空軍基地に移動されれ ば飛行テストの高度も速度も制限がなくなる。アヴェンジャーの運用高度限界は6万フィートで、プラットアンドホイットニーカナダ製PW545Bエンジンに より最高速度は400ノットを僅かに上回る程度だという。二号機は今年後半に完成すると言う。
  4. プレデターAを改修した米陸軍向けMQ-1C スカイウォリアーは今月初旬にヘルファイアP+ミサイルの実弾発射テストを完了している。このミサイルは無人機用にロッキード・マーティンが開発したもので360度で目標補足できる。
  5. まもなくグレイイーグルと改称される予定のMQ-1Cは陸軍の長距離多用途無人機構想で開発されたもの。新編成の即応能力部隊(QRC)でイラクとアフガニスタンにおいて先行使用されている。
  6. ガー ディアンUAVの税関国境警備隊(CBP)の洋上運用テストがカリフォルニア州ポイントマグー海軍航空基地で実施中であったが、2月11日に完璧な8時間 連続飛行の成功で完了している。機体下にAPS-134シーヴュー監視レーダーを搭載しているのが特徴の洋上飛行タイプは麻薬取引取締用に投入される。

2010年2月14日日曜日

センサーの性能向上で無人機の可能性は広がる

General Atomics Chief Forsees Advances In UAS
aviationweek.com Feb 12, 2010

  1. 技術革新で無人航空機(UAS)の状況把握能力は5年のうちに大幅に向上すると無人機業界をリードするジェネラルアトミックスの会長兼CEOのニール・ブルーは考えている。
  2. ブルーは通信リンクあるいは「帯域幅ダウン」が高解像度の広範囲状況把握機能の制約条件となっているという。これに加えて飛行中の複数の機体から送信されるデータの統合処理能力の機内搭載も必要だという。「キャッシュした情報からデータを統合すると非常に正確かつ高精度の目標所在地の情報が得られます」とブルーは本誌取材で語った。
  3. もうひとつの課題は敵側による通信ネットワークへの侵入をどうやって防止するかである。「帯域幅ダウンを非常に高くすれば探知不能隣結果として暗号化も不要となります」という。「この技術はすでに利用可能で超広帯域の波形各種を使えます。その中のひとつが当社がチャイナレイクで実証していますし、これをオーストラリアが現在実験中で国防総省も関心を示すのではないでしょうか」
  4. 一方で国防高度研究プロジェクト庁(DARPA)は1.8ギガピクセル級のセンサーを試験中で、これによりジェネラル・アトミックス製の プレデターなら最高65機から同時にダウンリンクが可能で、単機で特定人物あるいは車両を都市規模の範囲の区内で追尾することも可能だ。自律型リアルタイ ム・ユビキタス地上監視画像システム(ARGUS-IS)の作動実証が昨年の6月から11月の間に実施されている。BAEシステムズはARGUS-ISの性能向上作業に取り掛かっており、今年内に実施予定のDARPAによる飛行実証の最終段階に間に合わせようとしている。

● 漠とした話ですが、要は皆さんがお使いの携帯やデジカメの進化をはるかに超えた軍用のセンサー類の開発が進行中ということですね。無人機の発展性はま すます拡大するでしょう。先回お伝えしたような空中レーザーといい、戦闘のイメージを大幅に変える可能性がそこまで来ているということですね。それにつけ てもわが国が無人機開発、運用に大幅に遅れているのはどういうことでしょう。米海軍では海軍パイロット(Aviators)が無人機に反発しているとのこ とですが、日本でも同じメンタリティがあるのでしょうか。事業仕分けなどといわず、無人機開発予算を大幅にふやすべきでは。


2010年2月13日土曜日

ABLが飛行中ミサイルを連続破壊に成功



ABL Shoots Down Target, Engages Second
aviationweek.com Feb 12, 2010
  1. ミサイル防衛庁(MDA)の空中レーザー(ABL)が照射した化学レーザーが加速上昇中の弾道ミサイルを撃墜して高出力レーザーの有効性を証明した。
  2. 今回のテストは液体燃料弾道ミサイル一発およびテリア・ブラック・ブラント2発を対象としていた。このうちテリアは厳密には弾道ミサイルではないが、固体燃料弾道ミサイルの加速段階の想定として投入されている。この段階でABLが交戦する構想。また費用を節減できる。
  3. 実 験は2月11日実施され、747-400Fを改装したABL搭載機が単独で加速中のミサイルを追尾した。同ミサイルは移動海上艦艇から太平洋標準時午後8 時44分に発射後、数秒で捕捉している。システム内の低出力レーザーが大気中のゆがみを補正したあと、メガワット級の高出力レーザーを目標に照射した。 「上昇中の目標を加熱し構造上重大な故障を引き起こした」とMDA関係者が説明。交戦は全体で2分間で終了したという。
  4. その一時間後にMDAは二番目の実験を実施。テリア・ブラック・ブラントミサイルへのレーザー照射は破壊前に停止された。MDAは今回の実証実験はすべての点で成功だったとしながらも、なぜ完全な破壊まで照射を続けなかったのかについては言及を避けている。
  5. 二回のレーザー照射の途中でABL機は着陸せず、化学物質の再充填は行われていない。
  6. 今回の実験は三回目の空中交戦試験で固体燃料目標の捕捉は二回目。一回目は2月3日で目標破壊に成功していたらしい。ただし、MDAがその事実を今になってはじめて明らかにした理由は不明。
  7. ABLの作動原理はレーザーを目標ミサイルの外皮に照射して内部に不良を発生させ飛行中に破壊すること。
  8. 今 回の実験の実施場所はポイントマグー(カリフォルニア州)沖合の兵装試射場海域で、成功したことでABL計画が大きく前進した。ボーイングが主契約社とな り開発にはこれまで数多くの技術的な困難が立ちふさがり、予算も超過していたが、ペンタゴンの化学レーザー開発の中心的存在となっていた。昨年春の段階で 40億ドルが投入されている。MDAは2011年予算で990億ドルを要求して指向性エネルギー兵器体系の開発を目指しており、このうちABLではテスト の継続しながら将来の応用展開もめざしたいとしている。
  9. 今回のテストがMDAがABLシステムを主管する最後となる。次回の飛行テストからはペンタゴンの国防研究技術開発担当がレーザー関連開発を担当する。
  10. ボー イングは今回の成功について「レーザー兵器が飛行中の弾道ミサイルを捕捉破壊したのは初めてのことで、ミサイルの上昇段階でシステムが有効なことが確認で きた。ALTB(ABL母機)は過去最大規模のエネルギー主力でレーザーを照射したことで世界最強の移動レーザー装置となった」と発表している。
  11. 高出力化学レーザーはノースロップ・グラマンが製作しており、ロッキード・マーティンがレーザー制御・発射管制システムを納入している。
  12. このシステムを追加生産する予定はない。ABLでは国防総省の関心は固体レーザーに移っている。それでもMDAは今回のABL運用で得られた経験を元に将来の実戦対応システム開発の可能性を閉ざしていない。
(写真提供MDA)

大きく前進したことは喜ばしいことですが、実際に運用するとなるとABL母機を水平線の向こうに待機させながら、UAV搭載のセンサー、軌道上の衛星で目 標を捕捉、データを中継してABLからレーザーを照射するのでしょうが、当然敵方も警戒しているでしょうから、F-22によるABL母機の警護が必要で しょうね。かなり大掛かりな話になりそうですが、ミサイルを発射する側にしてみれば発射後数分で虎の子の弾道ミサイルが消えてしまえば元も子もなくなります。システムの信頼性も向上すればまさに夢の兵器となりそうな予感も。ABL開発に神経を尖らせているのは中国、北朝鮮が筆頭でしょうね。オバマ政権もABLには冷淡であると伝えられますが、かような国からのメッセージ にも注意が必要です。

2010年2月11日木曜日

B-2 英空軍も飛行訓練を受ける

British Pilots Train On Upgraded B-2s
aviationweek.com
Feb 8, 2010
  1. ホ ワイトマン空軍基地(モンタナ州); 米空軍の装備の中でも最大級に貴重なもののひとつ、B-2スピリットステルス爆撃機は現在も性能改良がすすんでおり、同盟国にもその利用が許されている。 英空軍との間で長く続いている人員交換計画の一環としてB-2もその対象となったのは2004年のことであった。この決定は当時のブッシュ大統領がブレア 首相に当てて送った電子メールで下されたもの。英空軍の最初のパイロットが同機をオーストラリアに着陸させた。同計画による三番目の英空軍パイロットが訓 練を完了したところだ。
  2. これ以外の米英交換計画と異なるのは、B-2では数ヶ月をホワイトマン空軍基地に滞在することだ。これにより同機の有資格パイロット合計80名の勢力が常時維持されることになる。
  3. ホ ワイトマン空軍基地は米国中央部にあるが、実は最前線基地である。同機運用を常時即応体制に維持していることは昨年10月の核戦力運用即応体制査察 (NORI)でも確認された。同査察で不合格となった同基地内のB-2の機数は非公開情報だが、NORIの期間中に配備中のB-2の大部分が離陸できたと している。
  4. B- 2部隊の全容を逐次理解することは困難がつきまとう。テールナンバー82-1068のB-2 は装備改良の試験機として利用されており、エドワーズ空軍基地(カリフォルニア州)に配備されている。常時二機はメーカーのノースロップ・グラマンのパー ムデール工場にあり、そのほかにも最低二機はホワイトマン基地でメンテナンス作業を受けている。同機をステルス母機に変えるレーダー・通信機器の改修が実 施されつつあり、ボーイングの30,000ポンド級大型貫通爆弾(MOP)の搭載作業も進行中だ。さらにボーイング、ロッキード・マーティン、セイセオン 共同開発の小口径爆弾II型も完成次第同機に搭載される予定。
  5. 将来の運用では各種兵装を同時に搭載し、たとえばバンカーバスターとともに小口径爆弾100発を搭載することが考えられ、同機は真の意味でハンターキラーとなるだろう。
  • 同じ同盟国でも米英間のつながりははるかに密度の濃いものになっているようです。それにしてもB-2という高価なウェポンシステムは今後長期間に使って初めて投資効果が出てくるように設計されているようですね。運用法も大きく変わりそうです。

2010年2月6日土曜日

DARPAプロジェクトの最新動向

Darpa Eyes SM-3 For Hypersonic Strike
aviationweek.com Feb 4, 2010

  1. 国防高度研究プロジェクト庁(DARPA)は2011年度予算要求にアークライトArcLight 長距離高速攻撃兵器開発の飛行テストを盛り込もうとしている。アークライトはレイセオンのSM-3弾道弾迎撃ミサイルが原型。
  2. SM-3ブロックIIのブースターと超音速滑空部分で構成するアークライトのペイロードは100から200ポンドで飛行距離は2,000海里を越える。性能ではマーク41垂直発進システムと同等規模。
  3. 2010年度予算では新素材の利用可能性について予算2百万ドルを投入している。2011年度予算では5百万ドルで中核技術開発と概念開発を開始する。
  4. DARPA全体の予算は2011年度に31億ドルを要求しており、このうち3億ドルが高度航空宇宙システム関連となっている。
  5. そのほかに67.6百万ドルで長距離対艦ミサイル(LRASM)開発があり、発射テストが開始される。主契約社はロッキード・マーティンで、ラムジェットを主動力とした高速ミサイルと低速低高度ステルスミサイルの双方を開発する。
  6. 60百万ドルがヴァルチャアVulture長期飛行可能太陽電池動力成層圏無人監視機の縮小規模実証機に、43.4百万ドルをアイシスIsisレーダー搭載無人成層圏飛行船の縮小規模実証機製作に投入する。
  7. さらに35百万ドルをターボジェット・スクラムジェットのコンバインドサイクルエンジン地上テスト予算として計上し将来の極超音速機用に開発する。
  8. 2011年度からスタートする新規開発案件には7百万ドルで再利用可能宇宙機の概念開発があり、DARPAによれば民間企業による開発向け助成になるかもしれないという。
  9. 5.1百万ドルが無人機対抗措置に使われ、小型低速低高度飛行の敵無人機の発見技術を開発する。
  10. DARPAの既存プロジェクトで次年度予算増額となるのは垂直離着陸変形陸上車両(12.1百万ドル)、多用途回転翼機実証機(11.8百万ドル)、編隊飛行中の空気効力低減対策用飛行テスト(1.3百万ドル)がある。

うーん、いつもDARPAのプロジェクト内容を聞くと想像が難しいものがありますね。このうち実現するものとしないものがあるのでしょうが。金額も結構小ぶりなのは厳しい財政事情もあるのでしょうが、結構このくらいの金額で開発ができるのだなあということなのでしょうか。

2010年1月29日金曜日

ロシア第五世代戦闘機が初飛行に成功


Sukhoi's PAK FA fighter completes first flight 
29/01/10,Flightglobal.com

    1. スホーイの第五世代戦闘機プロトタイプPAK FAが本日午前47分間の初飛行に成功した。 テスト飛行はコムソモリスクで行われ、テストパイロットはセルゲイ・ボグダンで、スホーイによると「大変良い結果」だったという。 「飛行中に同機の操作性、エンジン性能、主要システムの作動状況の初期評価を行いました。」(ボグダン) 飛行中に同機の降着装置の格納、引き下げが実施された。
    2. PAK FAのエンジンはNPOサターン「117型」が二基でスホーイSu-35とSu-27Mに搭載の117Sエンジンの改良型だ。機内の統合飛行制御システムでエンジン他機内の主要システムを制御する。
    3.  スホーイによると同機には複合材料が使われている他、より進んだ空力学技術によりエンジンの排気特徴を減らしておリ、「前例のない小さな レーダー断面積を実現し」ているという。その他、より進んだフェイズドアレイレーダーを搭載している。昨年のモスクワMAKSエアショーにおいてティコミ ロフNIIPが同機用に開発したアクティブ電子スキャンアレイレーダーを展示していた。
    4. PAK FAに第四世代戦闘機部隊を加え、ロシア空軍は次の10年間の対応力を備えることになる。
    5. PAK FAの飛行試験は2012年まで続き、その後ロシア空軍は同プロジェクトの成否を決定する。同機の量産型はT-50と呼称される見込み。
    6. あるいは同機の設計を元にロシア・インド共同開発の第五世代戦闘機に発展する可能性がある。

    2010年1月24日日曜日

    電子戦装備の開発が進展しています

     戦闘機の話題になると急にアクセスが増えていますが、地味ながら電子戦の話題です。無人機と電子戦は日本がこれから力を入れなければならない分野ですね。


    Electronic Warfare Evolves
    aviationweek.com Jan 22, 2010
    1. 電子戦の重点は防御ではなく攻撃に移るだろう。電子パルス、相手方の情報を混乱させるデータ・ストリーム、アルゴリズムが次世代ジャマーNext-Generation Jammer (NGJ)に搭載されるだろう。
    2. 米海軍へのNGJの配備は2018年の予定。
    3. EP-3Eの後継となるEP-X情報収集機の最終仕様案、設計案は未定だ。
    4. EP-Xは敵の信号を探る目であり耳となってNGJで撹乱、操作を行う構想だ。敵の信号発信源を正確に捉えることが鍵となる。
    5. EA-18GグラウラーがNGJ搭載の主力となる。次に海兵隊のF-35に装備されるだろう。空軍のF-35Aがこれに続き同時並行で大型高速の無人機への搭載が実現するはずだ。
    6. JSFの開発当初から電子戦に応用する構想があるが、電子装備向けの補助電源の確保が課題だ。
    7. 海軍の視点は地対空ミサイルが高性能になるほど発信する波形が複雑になることから低出力ジャミングにより敵の防空システムに攻撃を加え対応能力を低下させることであり、要は敵のネットワークを使えなくさせることだ。
    8. そこで海軍の優先事項は既存のALQ-99ジャマーポッドの性能を向上してNGJの能力をEA-18Gに搭載することであり、F-35Aに搭 載することだ。空軍はかねてからスタンドオフ能力を求めており、B-52を電子戦に応用する構想があったが現在は継続していない。そこで空軍もNGJに関 心を寄せており、空軍が求める周波数帯が微妙に違っていることもあるが、基本設計は空軍機にも搭載可能なものだ。
    9. レイセオンによると空軍から2012年締切で情報の提供が求められてきたと言う。同社の通信・電子攻撃・偵察監視ポッドを発展させる構想のようだ。
    10. 要求されるジャミング有効距離は秘匿情報だが情報を総合すると水平線の湾曲を考慮するとざっと200マイルというところだろう。B-52利用 案はこれよりも大きな距離を想定していたが、現有のEA-6Bプラウラーの有効距離よりも長い。同機の電子支援でF-117を運行していたが、ジャミング は80マイルしかなく、ステルス機はセルビアで1999年に撃墜されている。(機体残骸はその後ロシアへ移送された) EA-6のジャミング性能はあらか じめ伝えられていたが作戦立案時に考慮されていなかったのだ。
    11. 専用UAVの開発が秘密裏に進んでいることは業界では公然の事実であり、空軍はすでにレイセオン製小型空中発射おとりジャマーMALD-Jへ相当の予算を使っている。敵領空上で短距離からの電子戦ミッションを実施するのに無人機の方が適している。
    12. F-35をEF-35に改造するコンセプトもあるが、ステルス性を犠牲にしないためにも搭載するハードウェアは相当奇抜な形状になると思われる。
    13. RAT(ラムエアタービン)で電源が確保できればグラウラー用のポッド設計の制約条件がなくなる。同じようにF-35にも応用が可能となる。
    14. RATをウェポンベイに搭載する案もあるが、本来は電子戦装備を格納するスペースだ。
    15. ただし、NGJには機関砲搭載スペースで十分だ。そこでロッキード・マーティンはF-35用のNGJ案を検討中。同機の機種左側の機関砲ブリスターにNGJ開口部をつける。

    2010年1月22日金曜日

    JSF開発の遅れを深刻視しない米空軍




    USAF Chief Downplays JSF Testing Delay
    aviationweek.com Jan 21, 2010
    1. F-35のテストが遅れていることで同機の単価上昇が避けられなくなるが、空軍参謀長ノートン・シュワーツ大将は「影響はあくまでも短期間のもの」と見ている。
    2. 同大将は大幅な価格上昇があってもナン-マカーディ法の報告義務条項に違反することはないと語った。同条項によれば一定の価格上昇が発生すると ペンタゴンは代替選択枝の検討が必要となり、同時に議会に対し費用あるいは日程の大幅な変更が発生した原因について報告しなくてはならない。
    3. また、同大将は遅れといっても「複数年」の規模ではなく、必要なものであったという。政府関係者の中には同機のテスト完了は最高で30ヶ月も予 定より遅れるとの見方がある。現在の見通しではテスト終了は2014年の予定。シュワーツ大将は具体的な遅延の規模の言及は拒んだが、本年2月1日に公表 されれう2011年度予算案で明らかにすると語った。
    4. 開発と生産を同時並行させる度合いを減らし、テスト期間を延長し、テスト機材を増強すると同大将は以前に発表している。この結果、量産への移行はより現実的になるというのが考え方だ。
    5. F-35開発は「F-22の同時期と比較するとはるかに進んでいる」と同大将は表現する。両機種ともロッキード・マーティンが主契約社。
    6. JSFの共同開発パートナー各国に加え購入希望各国も開発計画の進展に「関心を有している」ことを同大将は認める。同機以外の選択枝も検討している国もあり、開発が遅れるとそれだけF-35導入の可能性が減ることになる。
    7. ただし、最初の訓練部隊の初期作戦能力獲得時期は予定通りだと同大将は語った。
    8. 全体の遅れにより空軍はF-16から運用の重複なく、旧式機からステルス機に完全な引継ぎができると同大将は発言。 
     
    コメント F-35は時限爆弾だと当方は見ますが、いかがでしょうか。ましてやわが国が手を上げれ ば待ってましたとばかりに費用負担を押し付けられるのは明らかですね。そもそも開発がこれからまだ5年もかかるとは。同機には手を出さないのが賢明では。少数機導入の選択肢もあるはずですが、この機体に日の丸をつけたところを見るのは勘弁願いたいですね。

    2010年1月18日月曜日

    サイレントイーグルの初飛行に備え販路拡大を狙うボーイング

    Boeing Looks To First Silent Eagle Flight
    aviationweek.com Jan 16, 2010


    1. ボーイングの簡易ステルス機F-15サイレントイーグル試作機のレーダー断面積(RCS)試験が完了し、同社は最初の導入国は韓国になると期待している。
    2. 韓国のF-X3契約で60機の需要があり、韓国国会で完全ステルス機の導入に慎重な姿勢が出ていることを受けて同社は自信を強めている。同機の新型一体型燃料タンクは国際開発の予定だが、提携先は未定。
    3. ボーイングが狙うのはF-15を運用中の各国。ロッキード・マーティンのF-35に関心をもつ各国にも有望な選択肢となる。サイレントイーグルのステルス性はJSFより劣るが、国防予算に制約のある各国には選択の巾が広がる。
    4. 航空作戦の初期段階においてサイレントイーグルの一体型燃料タンク内部に空対空あるいは空対地兵装を装備させれば、正面RCSを減少できる。敵の脅威を一層すれば数時間でより多くの兵装を搭載して制圧作戦を開始することができると言うのが同社の構想。
    5. 空 軍からボーイングに貸出されたテスト機F-15E1のRCSテストは同社セントルイスの無響室内で昨年8月から9月に行われた。各種の表面塗装材料から絞 り込んだ塗装が機体に施された。テストの結果は期待にそったものだったという。ただし、同社は塗装の種類およびRCS値を公表していない。
    6. テスト機の尾翼は標準形の垂直取付であり、同社が昨年に発表した15度の角度つきの尾翼ではない。新型尾翼によるRCSへの影響は数値理論上求めると同社は言う。
    7. 初飛行は7月末としている。当初は2010年第一四半期が予定だったが、同機を購入する可能性のある各国からの事前設計作業への要望を反映すべく遅らせたという。
    8. 初飛行後は発達型中距離空対空ミサイル(AMRAAM)を一体型タンク内に装着し、7月末から8月に高度2マンフィート速度マッハ0.6で初の試射をする。
    9. 一方でボーイングは輸出許可を申請中で裁定は今春に下ると見込む。
    10. 同社の販売見込みは合計190機規模だが、イスラエルがF-35 に熱心で、サイレントイーグル構想には乗り気でないのが気になる点だ。
    11. 韓国は2011年に新型戦闘機の仕様書を提示すると予想。サウジアラビアも初期型F-15合計80機の更新を検討するとボーイングは見ている。シンガポールも導入の可能性がある。
    12. ボーイングの試算ではサイレントイーグル単価を1億ドル。

    2010年1月17日日曜日

    中国のJ-10戦闘機は海外に販路を広げるか

    Chinese Chengdu J-10 Emerges
    aviationweek.com Jan 14, 2010


    1. 1998 年の初飛行以来秘密のベールに包まれていたChengdu 成都航空機のJ-10多任務戦闘機が世界市場に参入してくる。源をたどると60年代までさかのぼり人民解放軍空軍(PLAAF)に配属されて5年のJ- 10はおおよそロッキード・マーティンF-16ブロック60と同程度の性能で価格は半分なので急速にその存在を高めるだろう。
    2. 150機がPLAAFに配備されているとみられるが、この数は300機になるかもしれない。その根拠は中国がロシアから購入したといわれるサリュートAL-31FNエンジン(推力12.7トン)が300から400基であるため。パキスタンがJ-10の最初の導入国になる。
    3. パ キスタン報道では合計36機を14億ドルで購入するという。単価は40百万ドルになり、UAEが購入したF-16ブロック 60(AN/APG-80アクティブフェイズドアレイレーダー装備)は約80百万ドルだった。ただし、パキスタンの購入価格に予備部品、支援、訓練が含ま れているかは不明。
    4. パキスタンの購入機数は150機程度になる可能性がある。その他イラン、ミャンマー、フィリピンがJ-10に関心をもっていると の報道がある。
    5. 中国はJ-10 の性能諸元を公表していないが、同国国内の報道を総合すると以下のようである。全長16.43メートル 翼端長8.78あるいは9.75メートル 最大離 陸重量19,227キログラム 最大武器搭載量7,000キログラム 戦闘行動半径1,100キロメートル 最高速度マッハ2 機体限度9G
    6. 同機開発にはロシア、イスラエルの支援があったこと、さらにサリュートエンジンに依存しているにもかかわらず、中国はJ-10 を純国産戦闘機としている。昨秋のPLAAF設立60周年記念式典でJ-10が曲技飛行を展示し、同機の複座型の原型機および実寸大モックアップが国立航 空博物館で公開された。
    7. 価格以外の魅力は同機が搭載する新型の電子・兵装システム。J-10Bとしてインターネット上で写真 が流出した最新型では超音速空気取り入れ口がどことなく共用打撃戦闘機に類似している。機首には再設計され赤外線捜索・追尾システムが装備されており、電子スキャンアレイレーダーが搭載されているようだ。これが正しいと中国のレーダー技術も相当進歩してきたことになるし、J-10 も西側・ロシアの第四世代戦闘機に肩を並べることになる。コックピットには多機能ディスプレイが3面とヘッドアップディスプレイがついている。
    8. 武 装取り付け点は合計11あり、うち機体に5点ある。主要対空兵装はLuoyang洛陽PL-12アクティブレーダー誘導空対空ミサイル(AAM)で有効 射程は70キロメートル。主翼と機体に装着され合計8初のPL-12を搭載できる。短距離空対空ミサイルにはPL-8(イスラエル製パイソン-3のコ ピー)および同ミサイルの性能向上型PL-9がある。今後はヘルメット装着ディスプレイと第五世代のAAMが導入される。
    9. 同機が海外市場で成功するかは信頼度の高い高性能ターボファンエンジンが国産化出来るかにかかっている。国内のライバルメーカーShenyang瀋陽がWS-10Aターボファンエンジンを80年代から開発しており、推力は13.2トンだが、ロシア筋は開発は難航していると見ている。
    10. Chengdu は別により高性能のHuashan華山ターボファンエンジンの開発を進めており、開発には90年代後半に入手したトゥマンスキR-79ターボファン(中止 になったヤコブレフYak-141超音速垂直・短距離離陸戦闘機用)の技術データが元になっていると見られている。にもかかわらず、ロシアによると中国か らより強力なサリュートAL-31FN(推力13.5から15トンクラス)への関心が示されているという。
    11. Chengduは空母搭載型J-10の開発を開始する動きを示している。前述のPLAAF式典では地上テスト結果からJ-10が空母からも運用可能と関係者が認めたという。

    2010年1月16日土曜日

    イスラエル空軍 KC-707空中給油機を増強する理由



    Israel Bolsters KC-707 Refueling Fleet
    aviationweek.com Jan 14, 2010

    1. イスラエル空軍はイランとの戦闘行為の可能性が高まる中、KC-707給油機部隊に8号機を追加し、仮にイラン核施設を攻撃する事になった場合の攻撃能力を引き上げた。
    2. イスラエル航空宇宙工業(IAI)が23百万ドルでボーイング707改装契約を2008年に受注したのは同国の長距離攻撃能力増強を目指す戦略的な決定だった。
    3. 「我が空軍のミッションは長距離化が進み燃料がもっと必要です」とイスラエル空軍第120「国際」飛行隊司令アミール中佐(イスラエルでは保安上の理由から本人の姓は公表しない)が本誌に語った。具体的な攻撃想定の論評を避けながら、同中佐は「これで命令が下り次第短時間でいかなる遠隔地でもすべての任務が実施できるようになりました」と加えた。
    4. イスラエル空軍はイラン核施設攻撃を想定し、準備している。そのため空軍は空中給油訓練を常時行っているのだ。
    5. イスラエルは長距離攻撃能力を備えるF-15I、F-16Iを導入しており、F-15飛行隊のふたつが地上攻撃ミッションを実行可能。アミール中佐は「空中給油でどの航空機にもより多くの弾薬を運ぶことができます」とする。
    6. イラン核施設は広く分散した上で地下深くに設置されている。イスラエルはイラクのオシラク原子炉をF-16の8機編隊に各2基の爆弾を装 備してこれを破壊した実績がある。イラン攻撃ではバンカーバスターが必要でありより多くの機体を投入することになる。イランまでの距離を勘案するとミッ ション時間も大幅に伸びる。このため途中で空中給油が必要だ。
    7. 2008年6月にイスラエルは地中海上空で大規模演習を実施し、イラン攻撃のリハーサルと見られていた。その際にKC-707がF-15・F-16部隊に空中給油している。
    8. 予算制約によりイスラエルはボーイング707を使用しているが、一番新しい機体でも36年、古い機体では飛行年数50年が経過している。「現有機体を少なくともあと10年は使う必要があります」とアミール中佐は話す。
    9. そこで2004年に飛行寿命延長を開始し、IAIが主契約社となり、アナログ計器を換装し新型通信機器を取り付けている。さらにイスラエル製の給油ブームは米空軍KC-135のブームに換装された。
    10. その作業を完了した一号機は2009年11月にイスラエル空軍に引渡されたが、新装備の作動不良に遭遇したことで計画が遅れた。同機はネバティム空軍基地で試験中で空軍内で不良を解決しようとしている。
    11. イスラエル空軍が空中給油の運用を開始したのは比較的遅く、KC-707の2機でF-15の8機編隊がパレスチナ解放戦線の司令部があったチュニスを2000キロメートルかけて空爆した1985年のことであった。以来、イスラエル空軍ではKC-707を安全空域以外に敵空域内でも運用する作戦構想である。ただし、KC-707に防御装置が装備されているのかは明らかでない。
    12. イスラエルのKC-707には独自装備として当初客室だった区画に30千ポンドの追加燃料タンクが取り付けられている。内部タンクの 160千ポンドも合わせると合計190千ポンドを給油できる。また、給油機仕様から人員輸送仕様に短時間に変更できるのも特徴。その他給油ブームは3D画 面を見ながら操作できる。
    13. アミール中佐は航空作戦の詳細を語らなかったが、司令室に大量のシャンパンがあったのは同隊の任務成功の回数が相当な規模であることを物語っていた。