2017年7月2日日曜日

★★米空軍はラプターを2060年まで使い続ける


本当に2060年代まで使えるの、その時点でPCA次期制空戦闘機が登場すればラプターは第二バイオリンの役を果たせるのか、UAVの進化をどう予想しているのかと突っ込みどころが多いですが、しょせん日本からすれば往時のF-106のような米国専用機材であり、どこか他人事のようにしか聞こえませんね、というと言いすぎでしょうか。

 

The U.S. Air Force's Stealth F-22 Raptor Will Fly Until 2060

F-22ラプターを2060年まで供用する米空軍

The National InterestDave Majumdar June 26, 2017


  1. 米空軍はロッキード・マーティンF-22Aラプターを2060年まで配備し続ける。そのため空軍は一連の改修予算を計上し、同機の戦力水準を維持する。その一部を2018年度予算案に盛り込む。
  2. 「F-22を2060年まで維持し、途中で脅威の変化に対応し性能を向上させていく。FY18予算に624.5百万ドルをRDT&E用に、398.5百万ドルを調達用に計上している」とアーノルド・バンチ中将(調達担当空軍副長官付軍代表)、ジェリー・ハリス中将(作戦立案担当参謀次長)が下院軍事委員会宛に6月7日に書面で通知している。
  3. 航空戦闘軍団でF-22のアナリストを務めるトム・マッキンタイヤーから記者に2060年という数字にはラプター部隊も驚くだろうが、機体は十分持つの見込みを示した。
  4. 「2060年との予想はなかったので少々驚かされましたが、F-22には機体強度を維持するASIP(機体強度維持事業)があります」

機体構造は強靭
  1. ラプターの機体は冷戦末期に設計されたこともあり厳しい要求内容を反映して極めて強固に作られている。設計上は8,000時間が限界だが、飛行運用実績から12,000時間(ローエンドの場合)あるいは18,000時間(ハイエンド)まで改修せずに使えそうだという。
  2. 「80年代末から90年代初めに機体設計した当時はミッションを10通り想定していました」
  3. 「EMD(技術製造開発段階)中に各ミッションの有効性を試しています。ラプターは実際にはそこまで厳しい条件で供用されておらず機体強度の現状をみると2060年くらいまでなら供用可能と判断されたというわけです」
  4. また機体腐食も米海軍のF/A-18ホーネットほど深刻ではない。ラプターで空軍が見つけたのはステルス塗料による流電腐食現象だが機体構造上で問題になるものではないとマッキンタイヤーは述べている。空軍は問題を起こした特定の導電性ステルス塗装剤を変更し腐食問題の解決を目指す。
  5. 「この補正作業はヒル空軍基地で行っています」とマッキンタイヤ―は述べ、「今後も腐食が発生しないようにすべての作業は2020年までに完了します」

生産用設備はすべて保存中
  1. さらに空軍はシエラ陸軍補給処に保存中のF-22生産用設備の保全状態を調査中だ。現在、調査は85パーセント完了し、今までのところ生産設備はすべて所在が確認されている。それより以前に空軍関係者から一部設備類が所在不明との懸念が出ていたが、調査の結果根拠のない杞憂だとわかった。
  2. F-22の生産再開は米空軍で見込みがなくなっている。「空軍にはF-22生産ライン再開の予定はありません。経済上も作戦上も意味をなさないから」とキャリー・ケスラー少佐(航空戦闘軍団広報官)が記者に述べている。

2060年のラプター像
  1. F-22の機体が2060年までそのまま持つとしても、空軍は21世紀後半でもラプターを戦術的に意味のある機材として運用できるのだろうか。空軍からはこの疑問への答えがまだ出ていないが、2030年代までは有効な機材として維持する構想はある。
  2. 「2060年まで予言はできませんが、」とマッキンタイヤ―は言う。「空軍は2030年代までラプターの航空優勢を維持するべく必要な性能水準を実現していきます」
  3. 中国やロシアはラプターに代表される米航空優勢への対抗手段を大々的に開発中だ。そうなるとF-22は第六世代戦闘機となる侵攻制空機(PCA)とペアで対応することになりそうだ。ラプターはPCAに対して現在のF-15Cの立場になる。
  4. 「PCAが実現すれば第五世代機のF-22やF-35と共同運用する前提で設計されているはずです」とマキンタイヤーは述べている。「2030年代、2040年代や2050年代になればF-22は今日の第四世代機の立場になるでしょうね」
  5. とはいえ想定中の脅威が2019年から2020年に現実のになれば、空軍はF-22の性能改修を模索することになろう。ただしその内容は秘匿情報だ。
  6. 「その後数年すればラプターの供用年数が相当になるため暫定的に中間改修と呼ぶものが必要になるでしょうね」
  7. 中間改修でコンピューターを交換し、エイビオニクスでレーダーやアンテナを更新するのだろう。
  8. 「2025年から2030年の間のどこかで搭載システムがその先も維持できるか検討せざるをえなくなるでしょうね」「現時点はまだ検討の初期段階にすぎませんが」とマキンタイヤーは述べる。

性能改修策の内容
  1. 空軍は近未来の脅威にもラプターを対応させるべく資金を投入している。インクリメント3.2BとしてレイセオンAIM-9XサイドワインダーやAIM-120D(AMRAAM)の運用を可能としさらにその他改修をめざす運用テストが今夏に始まり、2019年度の実戦投入をめざす。ソフトウェアではアップデート6を同時に実用化しラプターの情報暗号化が改良されるとマキンタイヤーは解説している。
  2. アップデート6でもう一つ大きな意義があるのがTACLink-16でF-22にリンク-16送信機能を2021年までに追加することだ。空軍は無指向性のリンク-16の搭載を一貫して拒否してきたが、ここにきてラプターに送信機能追加を決めた。その理由としてステルス機の運用実績を積んで作戦上の知見が増えてきたことがある。
  3. 「戦術上でF-22がリンク-16送信してもほぼ常時心配の必要がないと分かってきました」とマッキンタイヤ―は述べる。「同機の知識が増えており運用にあたる賢明な男女が戦術を編み出し初期に心配されてたいリンク-16送信の懸念は根拠がないとわかったのです」
  4. 空軍は新型データリンクのラプターへの導入も検討してきた。たとえばF-35の多機能高性能データリンク(MADL)や海軍の高速広帯域方式の戦術目標情報ネットワーク技術(TTNT)だが、によればこの分野での知見が十分ではないとしつつも空軍がF-15Cが搭載するタロンHATEデータリンクポッドでラプターから情報再配信を信頼できない理由があるという。
  5. 「ごく少数のF-15でしか利用できない性能なのです」とマッキンタイヤーは説明する。「利用可能なF-15が少ないためF-22が集める戦術情報の共有が不可能なのです」
  6. だがTACLink-16には単なるデータリンク機能の追加以上の内容がある。ラプターの機内エイビオニクスベイは三つあり一つは未使用のままなので空軍はここにオープンミッションシステムズ(OMS)の搭載をF-22の今後の性能改修の目玉として検討している。
  7. 「OMSで将来のF-22性能近代化がすべて実現します」とマッキンタイヤ―は言う。「簡単に言うとiPhoneにアプリを追加するようなものです」
  8. TACLinkに続くのがTACMANつまりTactical Mandatesでペンタゴンが求めるモード5の敵味方識別機能の向上だ。「2022年以降になるがTACLink-16とTACMANが使えるようになると威力はすごいはず」(マッキンタイヤー)
  9. ラプターパイロットにはもう一つ朗報がある。F-22でもヘルメット搭載型目標指定装備helmet–mounted cueing systems (HMCS) が使えるようになり、AIM-9Xの性能をフルに使えるようになる。HMCSの開発導入は来年2018年には始まり、2021年に使用可能となる予定だ。空軍はどの型のHMCSにするか決めていないが来年中に選定の運びとマッキンタイヤーは述べた。
  10. “The key enabler is the OMS,” McIntyre said.
  11. 「カギはOMS」とマッキンタイヤーは述べる。
  12. HMCSの追加によりラプターは当初ロッキードが契約を交付された際の高性能戦術戦闘機構想で想定した性能の機体がやっと生まれる。■
Dave Majumdar is the defense editor for the National Interest. You can follow him on Twitter: @davemajumdar.


2017年7月1日土曜日

USSフィッツジェラルドの現況と今後の修理見通し


本件、マスコミは米海軍に非があるとなんとか印象操作したいようですが、海軍はまず艦の修理が可能なのか、同予算を確保するのかと技術的な対応が進んでいるようです。JAG海軍法務部による審判がどんな結論を出すかも注目されますが、長期戦になりそうですね。

 Navy struggles with approach to fix crippled destroyer Fitzgerald, as investigation continues

損傷受けた駆逐艦フィッツジェラルドの修理方法検討に集中する米海軍、他方で調査も進む
By: David B. Larter, June 30, 2017 (Photo Credit: MC1 Peter Burghart)

WASHINGTON — 日本沖合で衝突事故に遭遇した米海軍駆逐艦フィッツジェラルドは乗員7名を喪失し、艦体にはトレーラートラックが入るほどの穴が開いた。同艦の復帰作業は並大抵ではない。
フィッツジェラルドの損傷の現況
  1. ACXクリスタルのバルバスバウにより艦の喫水線下には12x17フィート大の穴があき、三区画が急速浸水した。乗組員に脱出の余裕は1分程度しかなく浸水で眠りを覚まされた者もあった。
  2. 同艦に衝突警報音を作動させた形跡がないが、鳴らしていれば衝突前に乗組員を起こすことができていたかもしれない。ただし詳細は海軍による調査を待つしかない。
  3. 衝突で艦橋と右舷SPY-1レーダーアレイが大きく損傷し、主機関室と通信装備室が浸水し、損害額は数百万ドル相当と言われる。
  4. 事故原因の追及とは別に海軍は複雑な技術課題に取り組む必要がある。つまり損傷した同艦を浸水からどう守るのか。損傷の正確な評価から修理可能なのか判断し、どこで修理するかを決める必要がある。
  5. 海軍技術陣が浸水箇所の排水はほぼ完了し、艦体の穴に継ぎをあてる作業中と第七艦隊広報官クレイ・ドスが伝えてきた。
  6. 「USSフィッツジェラルドは来月にも横須賀海軍施設内の乾ドックに入れ修理する。弾薬類は6月25日に撤去ずみ。さらに排水、燃料除去さらに応急措置として艦体に継ぎをあてる準備中。ドック内で技術評価を開始の後米本土で本格修理を行う」
  7. 当初から海軍は同艦修理に前向きで、事故直後に第七艦隊司令官ジョセフ・オーコイン中将も報道陣に修理は長期化するとの見通しを語っている。「一年未満で済めばいいほうだろう。USSフィッツジェラルドは必ず復帰します」
どこでどう修理するのか  
  1. 第一段階は艦を安定させ海から出すことだ。この工程は7月6日から8日に完了すると海軍は見ている。その後艦体の完全調査を行う。
  2. 衝突時に艦橋構造にゆがみが入り、SPY-1レーダーのアライメント問題が発生しているとの懸念がある。補正修理に巨額費用が掛かる可能性があるが評価はまだ未完了だ。
  3. 艦を海から出すだけでも相当の作業だと1988年に蝕雷したフリゲート艦サミュエル・B・ロバーツのゴ―ダン・ヴァン・フック退役大佐が述べている。「そもそも乾ドック入りの予定が各艦で決まっています。艦を支えるべくキール下に置くブロックを準備します。ただ艦体に損傷があったり穴があれば艦設計で想定外の応力荷重が発生し、うまく扱わないとキールが曲がったり、外板が損傷することがあるのです」
  4. つまりフィッツジェラルドの乾ドック入り予定を変更し損傷を受けた艦体を考慮する必要があるということだ。初期調査では同艦のキールは大丈夫と見られているが、キールが損傷すれば別途巨額費用が発生する。フリゲート艦ロバーツの場合はキールが折れていたが、海軍は大修理を実施している。
  5. 修理費用は補正予算から確保するだろうとロバート・ナッター退役大将は見ている。ナッターは駆逐艦コールがイエメン入港時に襲撃され修理が必要となった際の艦隊司令官だった。「海軍が予算を確保するとすれば海外緊急作戦用予算が妥当だろう」
  6. 海軍がコール修理に2.5億ドルを必要とした当時は補正予算をあてにした。ジョン・ワーナー上院議員(当時)(共、ヴァージニア)が法案を作り海軍に修理費用を確保させたとナッターは回想する。
  7. 乾ドック内で海軍は艦体を入念に調査し、修理費用を積算する。コールでは2.5億ドルでF-35ほぼ2.5機と同額の費用がかかった。
  8. フィッツを超重量級運搬船で本国回送するのが可能性が高いと語るのはブライアン・クラーク元潜水艦勤務士官で現在は戦略予算評価センターの研究員だ。「海外で修理は不可能でしょう。現時点では自力で本国へ回送して修理できるか大型船で運搬すべきかを判断しようとするはずです。その結果、民間造船所で長期にわたる修理がはじまるはずです」
  9. クラークはジェネラルダイナミクスのNASSCOサンディエゴが修理場所として最適と見ている。
  10. コールの場合は建造場所のインガルス造船(ミシシッピ州パスカグーラ)に大型運搬船ブルー・マーリンにより回航された。インガルスはコールの損傷部分を切断し区画を新造し艦に戻した。2002年の広報資料によると鋼鉄550トン分と主機関二基を交換している。
フィッツジェラルドの乗組員は今どうなっているのか
  1. フィッツジェラルドの乗組員は徐々に通常勤務に戻りつつあると第七艦隊広報官ドスは述べている。
  2. 「乗組員は通常勤務にゆっくりと戻っており、当直ほか乾ドック入りに備えている。技術科は燃料除去に取り組んでいる。基地施設全体がフィッツジェラルド乗組員および家族の支援にあたっており、通常勤務復帰は癒しの重要な過程であることを強調しておく」■

★電子戦能力整備が今後急成長分野になる。専用電子戦機材開発も検討中



Air Force photo
空軍最後の電子戦専用機材EF-111Aレイヴンは1998年に退役している。
ステルス命だった空軍がやっと現実の厳しさに気付いてこれまでの努力の不在を一気に埋めようと必死になっているのでしょうか。電子戦の技術が相当進展し、装備の小型化も進んでいますが電力、容量を考えると737サイズは必要ではないでしょうか。空軍としては次期主力戦闘機PCAの派生型にして投資効率を高めたいでしょうね。各軍共同研究しても結局はそれぞれの仕様に落ち着くのではないでしょうか。ここでもF-35の悪夢は繰り返したくない思惑があるようです。
電子戦は「成長分野」、各軍共用EW機材開発の検討が進行中

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 23, 2017 at 3:22 PM
ARLINGTON: 二十年間も放置されたままだった電子戦での対応がゆっくりだが良い方向に向かっているとEW担当国防副長官が評している。予算増に加え、(非公表の)新戦略案が国防長官官房で準備されており、各軍トップから一様に関心が高まる中、将来のジャミング機材で共同検討が続いている。
  1. ウィリアム・コンレイは「一か月、二か月いただければ」もう少し詳しくお話しできると現在進行中の統合空中電子攻撃の代替策検討について空軍協会で語っている。
Sydney J. Freedberg Jr.
William Conley
  1. この件の背景に触れよう。電子戦とは敵の無線周波数(RF)を探知し、欺瞞し、妨害する科学技術と言える。また無線通信網からレーダーまですべてがRFを使っていることからEWは近代戦の成否を握っているといえよう。冷戦終結後のロシアがソ連時代のEW機材を確保したままだったのに対し米陸軍と空軍は装備を大幅に減らした。特に空軍は最後の高性能ジャミング機EF-111レイヴンを1998年に用途廃止した。EC-130Hが少数残っているが、EWは海軍に任せている。空軍はステルス機のF-22とF-35を重視し、探知されないので海軍のEW機材の手助けは不要だとまで四つ星将官が記者に2014年に語っていた。
  2. 敵側が電子面の実力を整備する中、空軍はPEA侵攻型電子攻撃と呼ぶ構想を検討中だ。PEAには専用の有人機を想定しており、かつてのEF-111を思わせる。今後登場するPCA侵攻型制空戦闘機を原型の専用機材にするか、無人機にするか、あるいは各種機材に機能を分散させるのかを検討する。情報の多くは非公開だ。
  1. 既存のEA-18GやEC-130Hは敵装備を相当の距離からジャミングできるがステルスF-22やF-35の電子戦能力は近距離に限られる。
  2. 空軍が明確に示しているのが「スタンドイン」ジャマー機材で敵の強固な防空網を突破する狙いがある。この代替策がスタンドオフ方式のジャマー機でミッションを比較的安全な距離から行うもので、海軍のEA-18Gグラウラーがその例だ。
  3. だがコンリーはスタンドオフとスタンドインの違いが誇張される傾向があるとみる。「個人的には『これはスタンドインだ、これはスタンドオフだ』と区別することは避けたい」とし、細かく分類するよりそれぞれの機能をよく理解するべきで、そのあとで実戦部隊が両方を柔軟に使い新しい効果を生むべきだという。
  4. そこで各軍ばらばらに対応するのではなく、ペンタゴンが共用(各軍の壁を壊して)代替策検討を電子戦機材で開始しているのだ。その結果生まれるのは単一巨大事業による各軍共通の電子戦機ではなく共通戦闘機を作ろうとしたF-35事例とは違うとコンレイは強調している。
米陸軍NERO事業では海軍のジャマー装備を改修し、グレイイーグル無人機に搭載している。
  1. コンレイは明確に述べていないが、もし空軍が独自仕様の侵攻型電子攻撃機を作りたければ作れることになる。海軍、海兵隊、陸軍とともに共通の全軍対応アプローチの一部になっていればよいことになる。
  2. PEAは2030年代以降の供用開始になるが、空軍が関心を示していること自体が大きな転換点だ。コンレイは各軍トップが電子戦の位置づけを重要視するようになったという。「電子戦能力のおかげで部隊が生き残れることに感謝している」
  3. いいかえると軍上層部はネットワーク、センサー、通信の防衛含む電子戦能力なしでは残存はままならないと理解している。
CSBA graphic
中国の武器の有効範囲 (CSBA graphic)
電子環境での戦闘
  1. スマート兵器は一時はアメリカが独占していた。今やロシア、中国、イラン、北朝鮮等が精密誘導ミサイル、標的へ誘導するセンサー、指令を与えるネットワークを運用している。
  2. ペンタゴンが使う新しい形の脅威の呼称は「接近組織領域拒否」A2/ADだが、一言で言えば多層構造の防衛体制で陸上配備ミサイル、高性能航空機、潜水艦、機雷他で米軍を近づけず介入させないことだ。だがA2/ADはすべてセンサーに依存し、探知、通信、調整を行って攻撃が可能となる。そこでセンサーや通信機能はすべて無線周波数を利用しており、電子戦の格好の標的になるとコンレイは強調する。
  3. 「A2/ADとは基本的に電子電磁の世界での戦闘です。A2/ADのバブルをいかに出し抜くか、いかに小さくできるでしょうか」とコンレイは続ける。ステルス機は一つの手段だ。「探知されないように特徴をなるべく多く取り除く手です。逆にノイズを上げても同じ効果が生まれて探知されにくくなります。意味のないデータを大量に送って分別分類に時間がかかるようにする手もあります」
今日の米軍の戦闘方法は無線ネットワークに依存している。各装備をネットワークで結ぶのは実は簡単ではないとコンレイは強調し、ネットワークが攻撃を受ければ一層困難になる。
  1. 未来の戦闘構想のひとつにマルチドメイン作戦があり、電子戦への依存度は一層高まる。「マルチドメイン」とはあらゆる環境で作戦中の米軍をネットワークで結ぶことを意味する。陸上、海上、空、宇宙、そしてサイバー空間だ。そして各作戦をシームレスに調整し敵をすべての方面からの攻撃で圧倒することだ。この実施には無線周波数のネットワークが不可欠だ。
  2. 「マルチドメイン戦には信頼性の高い通信が必要です」とコンレイは言う。ハッキング、ジャミングの能力がある敵のためこちら側で使えなくなる帯域が出るかもしれないが、目標は必要なデータを確実に送信し、必要とされる相手に時間通りかつ改ざんされずに届けることだ。
  3. その目標に到達するためには資金時間両方が必要だ。2017年度予算には50億ドルが国防総省全体で準備され「さらに増えますよ」とコンレイは言う。(省内の電子戦執行委員会がこの動向を指導している)
  4. さらにEW予算から大規模な影響が生まれるとコンレイは主張する。まず民生部門からの流用で高機能構成部品が安価に利用できるようになっており、軍専用仕様の高価な開発の必要がなくなってきた。次に小規模で安価なEW機能改修が航空機、艦船、地上車両で可能となり、システム全体の残存性が高まる。「数百万ドルの投資が数十億ドル数兆ドル単位の投資に大きな影響を生んでくれる」(コンレイ)
  5. 道のりは長いとコンレイは説明する。「電子戦に関しては25年間放置状態でした。これからの25年間しっかり育てていく出発点にいま立っていうるのです」■

2017年6月30日金曜日

★★PLAN最新鋭055型駆逐艦の性能、運用想定、その意義



China's First Home-grown Missile Destroyer Launched In ShanghaiVCG—VCG VIA GETTY IMAGES

駆逐艦、巡洋艦という従来の区分が意味がなくなってきたのでしょうか。なんでも盛り込むと大型艦になります。同時に大型艦の艦容が十分に威圧的になる意味もあります。性能よりも面子を重視した中華価値観の表れなのかもしれませんが、軽視は許されないでしょう。

China's Type 055 Super Destroyer Is A Reality Check For The US And Its Allies

中国の055型駆逐艦は米国、同盟国を現実に直面させる


This is one impressive ship that underlines China's changing weapons development capabilities and its emerging greater naval strategy in the region and beyond. 

中国の兵器開発状況の変化を示す艦であり中国の海軍戦略が周辺海域から外部へ伸びるあらわれだ


 BY TYLER ROGOWAYJUNE 28, 2017
  1. 中国が055型駆逐艦一号艦を本日進水させた。中国で最高水準の水上戦闘艦で公表された写真を見ると中国がここまでの偉容の艦を建造したのを見て驚く向きも多いはずだ。055型は海のJ-20ステルス戦闘機といったところで中国の急速な水上戦闘力開発能力のみならず中国の海洋戦略が現実のものになってきたことを如実に示すものだ。
  2. 中国海軍にとって055型は米タイコンデロガ級巡洋艦とズムワルト級駆逐艦の中間といったところだろう。艦体と性能はタイコンデロガ級に近いが搭載技術は中国水上艦の将来を開く点であることがズムワルト級に近い。055型の外装はステルス性がありセンサー搭載マストが一体型になっているのはアーレイ・バーク級とズムワルト級の中間といってよい。
  3. 055型は駆逐艦というより巡洋艦と言ってよい。全長590フィート排水量は10千トンから12千トンの間で、アーレイ・バーク級の最新型より全長で81フィート、排水量で2,500トンほど多く、タイコンデロガ級巡洋艦に近い。武装もタイコンデロガ級と同様に垂直発射管は128セルあり、アーレイ・バーク級の96セルより多い。このセルに陸地攻撃型(YJ-18)と対艦攻撃型(YJ-12)のミサイルさらに対潜ロケット(CY型)を搭載する。タイコンデロガ級と同様に広域防空能力と対空ミサイルが同艦の主要任務で、高性能センサー類一式は過剰といってよい装備だ。
  4. この新型艦はデュアルバンド方式レーダーを搭載し、DDG-1000ズムワルト級で搭載予定だった装備と類似している。なお、USSジェラルド・R・フォードに同レーダーが導入される。アクティブフェイズアレイレーダーを二組搭載し、一つは大型Sバンドで艦橋に、もう一つは小型Xバンドを一体型マスト内部に搭載する。Sバンドを長距離の捜索追尾に使い、高感度Xバンドを小型ステルス機や高速飛行目標の追尾に使うが有効距離は短くなる。それぞれの特性を生かしながら冗長性も持たせる。中国海軍でここまでの高性能レーダー装備を有する艦は他にない。
  5. 海軍用のHQ-9長距離対空ミサイルが搭載されそうだ。またHQ-16中距離SAMや四発搭載のDK-10Aもありうる。DK-10AはPL-12空対空ミサイルが原型で、米海軍のRIM-162発展型シースパロウミサイル(ESSM)に近い役割を果たすのだろう。将来的に大気圏高高度で極超音速機の迎撃能力や中国の弾道ミサイル迎撃ミサイルも搭載するだろう。ここにデュアルバンドレーダー、高性能戦闘指揮機能、大量のVLSが加わると大きな意味が生まれる。
  6. 対潜能力でも従来の中国艦の水準を上回り、ヘリコプター二機を運用し(Z-18のASW仕様機が導入されそうだ)、後部格納庫があり飛行甲板も延長している。えい航式深度可変ソナーで潜水艦を狩るだろう。魚雷とロケット推進式魚雷で水中目標を破壊するはずだ。
  7. H/PJ-38 130mm主砲一門と H/PJ-11 30mm近接対応兵器システム(CIWS)が主要兵装だ。米RIM-116回転式ミサイルに相当する「FL-3000N」を艦橋後部に搭載するのではないか。これに30mmCIWSを組み合わせ強力な近接防御能力が実現し、海面すれすれを飛ぶ飛行物体や小舟艇への守りが固まる。
  8. 055型には統合発電配電系統が搭載され、タービン発電で推進力を得る構想とすると従来の中国艦より先を行くことになる。同時に電子戦能力でも人民解放軍海軍PLANで最高性能のミッションっシステムになる。
055型の完成想像図 果壳军事-WIKICOMMONS  .
  1. 055型は多用途能力があるが、主任務は中国版の空母打撃群の掩護でこの点でもタイコンデロガ級巡洋艦と同様だ。戦闘群の指揮統制機能も含み、055型は従来のPLAN艦艇に欠けていた要素を埋める存在となる。052D型駆逐艦が以前は戦闘力で最大の艦だったが055型と比べると相当見劣りがする。
  2. PLANが最低でも四隻の空母運用を目指す中で055型も4隻建造する理由は明白だ。空母戦闘群に一隻ずつ配備し、空母が外洋に出ない場合は遠隔地に出没させ威力を示威するのだろう。また高機能の戦闘能力と指揮統制機能をPLAN部隊に提供するだろう。055型はさらに4隻建造される可能性もある。
  3. そうなると新型055型駆逐艦は米国や域内有力国と互角の戦闘能力を目指す中国に大きな一歩となる。ただし米海軍と同等の威力を有しているとは限らない。多くの面で米海軍の水準に達していない。中国の建艦技術に問題があるといわれ、米艦の水準と比較すれば品質面で劣る。搭載センサーと兵装の一体化、ミサイルの信頼性、またミサイルの全般的性能に疑問が残る。
  4. ただそれが本質的な問題ではない。大事なのは中国が将来の海軍兵力投射能力整備を目指し、空母二隻を建造中で今回空母と行動を共にする艦を作ったことだ。二種類の艦が就役すれば今よりも大胆かつはるかに遠隔地への航行をめざす海軍戦略の中核となる。米海軍は恐れる必要はないが、域内有力国のインドや日本にとっては意味がちがってくる。055型や空母は南シナ海、台湾海峡、インド洋さらに東シナ海で長期間にらみを利かす存在となる。
中国は軍艦の推進式の意義を正しく理解しているようではないか AP
  1. 055型は同時にいわば「後追い」モードで技術ギャップを埋めるのに必死な敵対勢力ではなくなったことを示している。中国では技術国産化が進んでおり、ときには技術リスクも恐れず(例 デュアルバンドレーダー艦載化で米国に先行)挑戦している。そのため中国軍は支援に回るアン業界とともに防衛装備のコンセプトで模倣しているように見えるが、実はハードウェアや兵装の統合化でその傾向は強くなっている。
  2. この変化がさらに進めば米国や同盟国が中国の軍事力整備に対応せざるを得なくなる状況となる。これまでの中国の軍事技術開発は米国やロシアの過去装備を後追いしているような状況だったが、今や予測自体が難しくなっており懸念をそれだけ生む状況になったといえる。■

米国が台湾向け大型武器販売を承認



US clears arms deal for Taiwan worth up to $1.3B

台湾向け武器販売13億ドルを米政府が承認

By: Aaron Mehta, June 29, 2017 (Photo Credit: Sam Yeh/AFP via Getty Images)

WASHINGTON — 米国務省は6月29日総額13億ドルにのぼる台湾向け大規模武器販売を承認した。
  1. 今回の販売はトランプ政権が北朝鮮への核兵器能力廃棄に向けた圧力を中国に期待する中で実現した。
  2. 今回の売却内容には台湾政府が求めてきた装備7種が含まれる。

  • 早期警戒レーダー監視活動へ技術支援(4億ドル)
  • AGM-154C共用スタンドオフ兵器(JSOW) (1.855億ドル)
  • AGM-88高速対放射線対応HARMミサイル (1.475億ドル)
  • MK 48 6AT大型魚雷 (2.50億ドル)
  • MK 46 からMK-54魚雷の性能改修 (1.75億ドル)
  • SM-2 ミサイル用部品 (1.25億ドル)
  • AN/SLQ-32A電子戦(EW) 艦載装備改修 (0.8億ドル)  

  1. 海外軍事装備販売案件のため今回の合意内容でも議会承認がまず必要でその後個別装備ごとに協議が控える。その結果、実際の販売内容に変化が生じ総額も13億ドルを下回る場合もある。
  2. 米政府関係者からは今回の売却の背景について武器販売は「一つの中国」原則に反するものではないと述べている。中国は台湾を主権国家として認めていない。
  3. 「台湾の防衛力があってこそ海峡間関係の改善を目指す対話に本土が真剣になる。その関連で台湾向け装備売却は平和と安定を維持するのに役立つものであり、台湾海峡のみならず広くアジア太平洋地区に資するものだ。海峡間の更なる発展が海峡両岸住民が受け入れられる形で今後も進むことを支援していく」と同関係者は語っている。」■

FY18国防予算:上院が7,000億ドル支出案を発表しました


次年度予算を巡る話題です。トランプ政権になり特色がでてくるはずですが、上下両院と行政府がそれぞれの主張と根拠を示しながら最終案が生まれるのは時間がかかりますが健全な内容が期待できますね。予算管理法による支出キャップが厄介な存在ですね。

Senate unveils $700 billion defense authorization plan

米上院が総額7000億ドルの国防支出認可法案を発表
By: Leo Shane III, June 28, 2017 (Photo Credit: Rick Bowmer/AP)

WASHINGTON —米上院で総額7,000億ドルの国防支出認可法案が6月28日上程され下院の予算関係議員、ホワイトハウスと協議を経て国防立案計画の正しい姿に収れんするはずだ。
  1. 上院案ではその他筋の提案より国防基礎予算は大きいが、兵員数を減らし、昇給幅が小さい特徴で、大統領府の要求より航空機で54機、艦船5隻多い内容になっている。
  2. 上院軍事委員会からは声明で「米軍即応体制の改善に必要な措置であり、将来の課題をにらんだ米軍再建、兵力近代化にも必要」と述べている。委員長ジョン・マケイン上院議員(共、アリゾナ)は案は「六年間におよぶ国防予算カットを受けた我が国の軍事力再構築の出発点になる」と述べた。
  3. その他の予算支出案と同様に上院案も議会が2018年度に求める支出キャップとどう折り合いをつけるかに中心をおいている。
  4. 国防予算の基礎部分では5,490億ドルのキャップが来年度に設定されており、上院案ではこれを6,400億ドルとし下院案の6,210億ドル、大統領府の6,030億ドルを上回る。
  5. 上下両院の共和党国防関連議員はペンタゴンとともに軍事支出では今後数年の予算案で相当の増額が必要と主張し、この10年間で軍事活動が緩慢となっていた中で戦力再建が必要とする。これに対して民主党議員は上下両院で非国防関連で支出増を軍事力拡張に合わせるべきと主張しており議論は袋小路に入りそうだ。
  6. 同案は来月に上院本会議で審議にはいるが、隊員の給与は1月に2.1パーセント引き上げる内容でホワイトハウス案と同率だが予想より低い。
  7. 下院案は2.4パーセント増で民間部門の給与上昇率に合わせているので200百万ドルの差額が生まれ、ペンタゴンはこれを訓練や近代化に支出したいとする。
  8. 上院は下院案より戦力増強幅を小さく想定しているのが特徴だ。上院は大統領府提案より現役隊員5千名を上乗せしている。(下院は10千名増としている)また陸軍州軍・予備役でも1千名(下院は7千名増)、海兵隊員1千名増としている。
  9. かわりに上院では装備調達に予算を多く割り当てる。大統領府提案より31億ドル多くし共用打撃戦闘機を24機調達し、4億ドルでKC-46A給油機を二機追加し、12億ドル追加しMC-130Jを12機追加調達する。
  10. 海軍には739百万ドル追加でF/A-18スーパーホーネット10機、10億ドル追加でP-8Aポセイドン6機の調達増を認める。■

化学攻撃の警戒? シリア沖に米情報収集機材多数が飛行していた



アサドと呼び捨てにしているところが面白いですね。シリア政府軍は再度化学攻撃を実施してしまったのか、しようとしているのかいずれにせよ米国は実施をさせないよう圧力をかけているのでしょう。米政府がシリアに警告したのが6月26日でしたので迅速に機材を展開させたことになります。

U.S. Intelligence Gathering Aircraft Amass Off Syria As Assad Visits Russian Detachment Near Latakia

米情報収集機材がシリア沖を飛行しアサドのロシア部隊訪問時に対応していた

 Jun 27 2017 - By David Cenciotti

 

米RC-135リヴェットジョイント他偵察機がシリア沖合の国際空域を飛んでいた。一方でWC-135「核嗅覚探知機」は黒海に向け飛行した。

ホワイトハウスはシリアが化学攻撃の実施に踏み切ることを強く警告しており、アサドがラタキア付近のフメイミム空軍基地を訪問したことが異例とも言える米スパイ機材のシリア付近飛行の高まりの理由と説明している。

情報収集活動が活発になっているのはシリア西岸の沖合でふたたび先に気付いたのは航空機スポッター、航空バンドやADS-Bを見る愛好家だった。それによるとRC-135複数と米海軍P-8ポセイドン一機も見つけたという。

その報告でRC-135Uコンバットセント一機、RC-135Vリヴェットジョイント一機、P-8ポセイドン一機が6月27日に確認されており、ちょうどそのころアサドがロシア軍スホイ機のコックピットで記念写真をとっているころだった。

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リヴェットジョイントは米空軍のSIGINT情報収集機材であり、「敵の」無新通信を傍受し場所を特定したあと情報を戦術データリンクで他の機材に発信するの役割がある。コンバットセントは敵のレーダー信号の技術情報を収集するのが役割。P-8は米海軍が多用途監視偵察機としても運用中で敵の通信信号を探知する能力がある。言い換えれば最重要ISR(情報収集監視偵察)機材三機種をレバノン、シリア近辺で飛ばしたことになる。同時刻に各機が同じ場所を飛んだのは単なる偶然だろうか。あるいはもっと可能性があるのは何か特別な対象の情報を収集していたのか。

もう一つ興味を引く動きがシリア関連で見られた。WC-135コンスタント・ファニックス「核嗅覚探知機」が無線交信コールサイン「ランド90」を使いRAFミルデンホール基地から離陸し、6月26日に黒海方面に向かっている。通常は大気中の放射性物質の採取用に使われる同機は「事前計画展開」した可能性があり、同機には化学物質を探知する装置があり、攻撃実施後に風下で数日後数週間後に化学物質の拡散を探知できるのではといわれる。

これも偶然なのだろうか。
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Nuke sniffer - 33,000ft heading over Romania...

🇺🇸 USAF WC135C 62-3582 LANDO90


2017年6月29日木曜日

米韓関係は本当に揺らいでいるのか、初の米韓首脳会談に注目



文在寅大統領といえば左翼で政策に不安のある人物との見方が日本では大統領選挙前に強く、現在も良い評価はなかなか出ていないのですが、以下の米分析では盧泰愚元大統領時代の残滓はあるものの結構現実的な見方をしていると決して低く評価していません。果たしてこの評価が正しいのか今週の米韓首脳会談で明らかになります。その行方は日本の安全保障にも重要な影響があるので軽視できませんね。ソウルから過激な主張しか聞こえてこないのは北朝鮮勢力による言論操作なのでしょうか。だとすると過激な発言に日本が過激に対応すれば北朝鮮の思うつぼになるのでは。沖縄の反対運動の背後にも不純な動機を感じるのは当方だけでしょうか。


People watch a TV broadcast of a news report on North Korea firing what appeared to be several land-to-ship missiles off its east coast, at a railway station in Seoul, South Korea, June 8, 2017. REUTERS/Kim Hong-Ji


Is the U.S.-South Korea Alliance in Trouble?

米韓同盟関係は揺らいでいるのか


June 26, 2017
  1. 韓国保守勢力とオバマ政権が接近した時代を経て、ドナルド・トランプ、文在寅両大統領の間の緊張で米韓関係が揺るがしかねず以前のジョージ・W・ブッシュ=盧泰愚両政権の関係に似るとの観測に米側が備えている。ただこの見方が見逃しているのは文大統領が直面する制約のため軌道を外すことはないはず点だ。韓国国民が息をのみ見守るのはトランプ大統領の不確実性により米韓関係が危機に陥る可能性の方だ。
  2. 文は盧政権の首席補佐官を務めたことがあり、大統領選挙で盧の戦術を借用している。THAADミサイル配備の一時停止措置を国内手続きと環境基準を理由に発表したのも米国側に10年前のとげとげしい米韓関係の記憶を呼び戻してしまった。
  3. ただ文在寅大統領が直面する現実は盧大統領時代に本人が主席補佐官として経験した当時の国内国際情勢と大きく異なる。まず国内では政権政党は少数党であり、一方で韓国民の米韓同盟関係(THAADミサイル防衛装備の配備含む)への支持は高い。一方で文の政策課題は主に国内汚職追放と経済平等の追求であり、そのため外交方針は現実的かつ分別をわきまえた路線とする必要があり、米国との同盟関係を基礎にすべきことは明らかだ。
  4. 次に金正恩下の北朝鮮は父金正日時代と異なる。文は選挙期間中に繰り返し北との対話と経済関係刷新を訴えたが大統領選挙からわずか四日で北がミサイル実験をし、目を覚ます効果があった。北朝鮮が非核交渉の席を蹴って久しく文政権による民間交流の再開にも応じていない。北朝鮮軍部は韓国体制の転覆に注力しており対話には関心がない。
  5. さらに国際関係でも変化が生まれている。文が提唱する南北朝鮮間の経済交流再活性化はトランプ政権がめざす圧力強化に反するどころか国連による制裁措置にも違反する可能性がある。また、文政権がめざす対中関係修復では米国を弱体化させTHAAD配備を中止させるべく圧力をかけている中国が障害になっている。
  6. 最近の国際環境で韓国が直面している制約とリスクの中で文は対米関係で現実主義と協力姿勢を賢明にも示している。訪米を控え文は各種米報道機関の取材でトランプ政権との相違点を極力出さないように動いている。自身の対北朝鮮外交姿勢はトランプ政権の「最大の圧力と関与」と共通していると主張している。
  7. 米国が提唱する制裁と圧力を目指した政策に協調姿勢を示した文は開城工業団地など南北朝鮮経済協力の再開では控えめな姿勢に終始した。文は実施には北朝鮮が核廃絶の姿勢を示すのが条件だとし、米学生オットー・ウォームビアの死去は北朝鮮に責任があると怒りを示し、さらに金正恩は「非合理性の塊の指導者かつ極めて危険な人物」だと6月20日にワシントンポスト取材で答えている。こうした現実的な発言が文から出ているのは自身の政治の師廬武鉉と対照的だ。
  8. だがTHAADを巡る決定で文はトランプ大統領を怒らせたとの報道があるが、環境評価の結果が出てもミサイル装備受入の決定が覆ることはないと韓国側は保証している。同様にトランプは韓国の防衛・通商政策はタダ乗りだと長年にわたり発言しており、その考えがいつ表面に出てきてもおかしくない。文は韓国の国防体制を強化するとしソウル南部に在韓米軍基地を新設する事業も続けると確約しているのだが。米韓協議では在韓米軍の駐留費用負担で韓国の負担を増やす点が重要でその他に米韓自由貿易協定の見直し協議もありうる。
  9. 韓国にとって最大の恐怖は文とトランプ間の相性がうまく行かない場合で韓国存続の基盤たる安全保障が消えることだ。実際には両国間には共通目的で深く結ばれた仕組みがあり半島情勢や地域内の不安定に対応するべく安全保障上の同盟関係があるのだが。
Scott Snyder is Senior Fellow for Korea Studies at the Council on Foreign Relations. He is the author of the forthcoming book, South Korea at the Crossroads: Autonomy and Alliance in an Era of Rival Powers (Columbia University Press, 2018).
Image: People watch a TV broadcast of a news report on North Korea firing what appeared to be several land-to-ship missiles off its east coast, at a railway station in Seoul, South Korea, June 8, 2017. REUTERS/Kim Hong-Ji ​

北朝鮮より厄介な中国のミサイルから日本は防衛できるのか



ここでいうミサイル防衛は米軍基地の防衛のことであり、中国ミサイルが正確無比ではないはずなので当然付随被害が人口稠密のわが国土で発生することは避けられないのです。日本政府は真実を伝えるべきです。イージスアショアを選択した日本はTHAADを投入する予定はないので、米軍次第ということでしょうね。韓国がTHAADは要らないというのであれば日本が受け入れることも可能でしょうか。(ありえないと思いたいですが)

Chinese Missiles Can Wipe Out US Bases In Japan: Aegis, THAAD Can Stop Em

中国ミサイルで在日米軍基地は全滅する。阻止にはイージスとTHAADが必要だ。


By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on June 28, 2017 at 3:07 PM

eng.chinamil.com.cnDF-15B 短距離弾道ミサイル(SRBM)、PLAロケット軍の演習にて。
WASHINGTON: 中国が奇襲攻撃に出れば在日米軍の基地は全滅すると海軍士官二名が結論を出した。だがミサイル防衛装備を増強すれば沖縄以北の大部分の目標は防御可能だ。トーマス・シュガート、ハビエル・ゴンザレスの両中佐がシミュレーションから述べている。陸軍のTHAADや海軍のイージスを増強すれば中国も先制攻撃には動きにくくなるはずだ。
このシナリオは非現実的とは言えない。1949年以来の中国の実績と指導原理を見れば奇襲攻撃を多用する傾向が明白だ。韓国を1950年に、インドは1962年、ベトナムは1974年1979年それぞれ突如攻撃している。中国は攻撃を防衛措置であり、主権や中核的国益が脅かされたためと毎回正当化してきた。ただし南シナ海全域における中国の領有主張など中核的国益は非常に広く定義されており、純粋に政治的かつ非暴力の挑発行為への軍の投入は正当な対応とされている。
米国との危機状況では先制攻撃の誘惑が特に大きくなる。もしアメリカが事前に警戒態勢を敷けば、航空機・艦船は基地から出動し、防衛体制が機能する。しかし大量奇襲攻撃を陸上配備弾道ミサイルで行い、さらに巡航ミサイルや空爆を実施すれば航空機艦船を基地で破壊できる。格好の標的だ。このような通常兵力による大規模攻勢が中国のロケット軍(旧称第二砲兵隊)の大目的である。ロケット軍は2016年に独立組織となった。商用衛星の画像情報を見ると中国のミサイル試射場があるゴビ砂漠で航空基地や実寸大の艦船の外観を横須賀軍港に停泊しているのと同じ形で配置し試射しているのがわかる。シュガート、ゴンザレス両中佐は新アメリカ安全保障センター主催の会合で発表してた。
両名は自主的に研究を開始しており、シミュレーションに一般入手情報のみを使った。シュガートはCNASで海軍から派遣され研究員で、ゴンザレスはジョンズ・ホプキンス大応用物理学研究所に籍を置いている。それでも相当の情報を集めている。
在日米軍の基地に関する公開情報から標的を特定しつつ中国の指導原理から優先順位を付けた両名は500か所を選び出した。航空基地、港湾、指揮命令所、通信基地、燃料貯蔵所、他軍事作戦実施上に必要なインフラだ。中国にはそのすべてを破壊するのに十分な装備がある。

CSBA graphic中国兵器の到達範囲 (CSBA graphic)
中国には推定1,200発の短距離弾道ミサイル(SRBM)があり沖縄を狙う。沖縄は米軍最大の拠点であり中国から近い。一方、中距離弾道ミサイル(MRBM)200-300発なら日本のあらゆる地点を攻撃できる。ミサイル発射後15分で目標に到達する。その後、第二波として爆撃機や巡航ミサイルが一次攻撃が撃ち逃した地点の攻撃にやってくる。特殊硬化弾頭で強化施設も破壊できるし、滑走路を穴だらけにして航空機運用を不可能とする。
日本にはペイトリオットミサイルやイージス搭載艦船があり、北朝鮮からの攻撃を念頭に置いているがシュガート・ゴンザレス両名によれば中国の大量攻撃の前には圧倒されてしまうという。仮に防衛体制が完璧に作動してもすぐに迎撃弾が尽きてしまう。レーザー、レイルガン、他の新手段が有望と言われるが、現時点では配備できる状態ではない。そこで両名は現時点で利用可能なミサイル防衛手段だけに注目した。
そうなると中国の全面攻撃を食い止める手段はあるのだろうか。ペイトリオット部隊をあと二個追加し、イージス艦もあと二隻そしてTHAADを5部隊導入するのだという。米陸軍のTHAADで超高空で長距離で迎撃させる。■