2017年11月20日月曜日

★★アーレイ・バーク級フライトIIIの設計がほぼ完了。新型レーダーに注目。



レイルガン、レーザーより今回お伝えするレーダー性能の向上は大きな要素になります。ベイスライン9の先を行く10も登場しました。次期イージス艦はますます威力を増しそうです。日本での登場は米海軍と何年か開きが出るはずでそれまでに技術も成熟化するはずですから楽しみですね。NIFC-CAは日本に必要なのか当方は理解できないのですが。一から日本が作れば相当の費用がかかるので使用料を払っても使わせてもらえば米海軍にも有益でしょうね。アーレイ・バーク級は近年まれにみる量産艦となり、途中の技術進歩をうまく取り入れていますね。


Navy Finishing Design for New Guided Missile Destroyers

米海軍の新型誘導ミサイル駆逐艦設計が完了に近づいている



 Scout Warrior - Nov 16, 9:00 AM

  1. 米海軍は新型誘導ミサイル駆逐艦の設計をほぼ完成させた。ハイテク艦としてレーザー、レイルガンの他に高性能レーダーで敵の対艦ミサイルへ現行の二倍の距離から対応可能となる。
  2. 海軍海洋システムズ本部(NAVSEA)関係者がScot WarrorにDDG-51フライトIIIアーレイ・バーク級駆逐艦の設計作業がほぼ完成したと伝えてくれた。就航開始は2020年代になる。フライトIII艦は22隻を建造予定であると海軍の技術文書からわかる。
  3. 新型駆逐艦では高性能センサー、兵装、防御装置、レーダー技術を盛り込み脅威対象の進展に歩調を合わせ米海軍の技術優位性を維持させるのが狙いだ。
  4. 「DDG-51フライトIIIは91パーセントの設計が完了しており、建造開始までに完成する予定です」(NAVSEA広報官)
  5. 際立つのが新型高性能レーダーで現行のフライトIIA艦以降の技術進歩を取り入れる。システムの要が艦載イージスレーダーであり、宇宙空間から大気圏に突入する弾道ミサイルを長距離探知するとともに接近する対艦巡航ミサイルをあわせて探知するのが役目だ。
  6. 海軍はレイセオン製AN/SPY-6(V) レーダーをまず三基発注しており、メーカーによれば現行装備より35倍強力になる。探知距離も二倍に伸び、現行装備で対応可能な大きさの半分も探知対象となる。
  7. AN/SPY-6(V)はミサイル防衛レーダー(AMDR)とも呼ばれ、複数目標を同時に探知識別できる。NAVSEAはシステム機能審査まで終えており、イージスのベイスライン10とソフトウェアへの統合を待つ状態だ。
  8. ベイスライン9でも同時交戦能力の実現が可能と確認できたとNAVSEAは言う。
  9. 交戦シミュレーションで新型レーダーでは対空戦、対弾道ミサイル戦で「トラックループ」と呼ばれる問題を解決する。この処理では生レーダーデータとして処理することでトラックループを狭めて標的を確定する。
  10. 海軍の既存デュアルバンドAN/TPY-2レーダーからソフトウェア技術を流用してレイセオンが開発を加速化した。
  11. AMDR用ソフトウェアではレイセオンは「迅速化」処理したと説明しており、技術進歩に対応して技術も順次対応させていくことでで既存技術を将来の装備にうまく統合できるという。
  12. AN/SPY-6技術は拡張性を最初から想定しており、重要設計審査段階を通過しているので、AMDRは強襲揚陸艦、巡洋艦他にも搭載可能となった。
  13. レイセオンはAN/SPY-6は初の拡大縮小対応レーダーであり、ブロック構造になっていると説明。レーダーモジュラーの編成を変えれば各サイズのレーダー装置に変えることが可能で現行装備より自由に大きく(小さく)できる。
  14. 「冷却、電源、管制ロジック、ソフトウェアの各部分も拡張可能な設計ですので既存DDG-51各艦に後付け搭載可能なほか航空母艦、巡洋艦はじめ各艦でも同様です。高額なレーダー開発費用は都度不要となります」(レイセオン)
  15. 新型レーダーでは化学成分ガリウム窒素半導体技術により高周波で高出力がさらに増幅でき、ガリウムひ素を使う既存レーダーより遠距離探知が可能となるとレイセオンは説明。
  16. レイセオン技術陣によればガリウム窒素で小型化しても十分強力な探知が可能でDDG-51に搭載可能すれば重量軽減とともに消費電力も下がるという。ガリウム窒素は逆電圧が高くなるので出力密度も高くできる。
  17. AN/SPY-6によりフライトIIIのDDG-51駆逐艦は現行のAN/SPY-1Dレーダーより広範囲の防空体制が実現する。
  18. AN/SPY-6は部品単位で簡単に修理可能で、回路数が減り、低単価部品が採用されている。AMDRでは同時にソフトウェア更新へ依存度を高めているので予備部品保管も少なくてすむ。現在のところAMDR用ソフトウェアは予定通りの完成度になっている。
  19. ただし冷却性能が従来より強力に必要となり電源も強化する必要がある。
  20. 電源では艦内で1キロボルトDC電源をAMDR用に確保するのが目標だ。DDGフライトIII艦ではロールスロイス製タービンエンジンをDDG-1000向け仕様と同じものを搭載するが燃料消費で改良が加わる。
  21. AMDRには特別の冷却機能が追加される。海軍は新型300トン冷却プラントを開発中でこれまでの200トンプラントより強力にする。
  22. DDG-51フライトIIIでは海軍統合火器管制防空装備NIFC-CAの性能を拡張する。同装備は搭載が始まっているが、艦載レーダーを航空機センサーと接続し、接近中の敵対艦巡航ミサイルを水平線越しに探知し、必要に応じSM-6ミサイルで迎撃撃破するものだ。
  23. 海軍開発部門によればNIFC-CAで迎撃ミサイルの作動範囲が広がるのと同時にセンサー有効範囲も伸び各種センサーを組み合わせた総合効果を火器管制に生かせる。
  24. NIFA-CAは統合防空・ミサイル防衛体制を構成しベイスライン9のイージスシステムを搭載したDDG-51各艦で導入と試験が始まっている。■


2017年11月19日日曜日

スペースXが打ち上げる「ズーマ」衛星の正体は?



SpaceX is about to launch 'Zuma,' a top-secret satellite that's shrouded in mystery スペースXがトップシークレット「ズーマ」衛星の打ち上げ準備中

zuma mission top secret payload spacecraft satellite falcon 9 rocket spacex twitter米政府発注の謎に包まれたズーマペイロードがスペースXのファルコン9ロケットに乗せられている。 Nov. 15, 2017.SpaceX/Twitter
  • Nov. 17, 2017, 9:32 AM
スペースXが米政府向け第三回目打ち上げの準備に入った。積み荷はトップシークレット宇宙機で同社は「ズーマ」と呼ぶが詳細は不明だ。
打ち上げはフロリダのケネディ宇宙センターから17日東部標準時午後8時に予定され、午後10時に変更の可能性もある。スペースXはYouTubeで打ち上げを実況中継する。
スペースXは極秘衛星打ち上げを水曜日に予定していたが延期していた。理由は天候ではないようだ。同社はフェアリング(ロケット先端部)の点検を「別の顧客」が行ったため待機状態になったと説明している。金曜日の打ち上げもキャンセルの可能性がある。
再利用可能ファルコン9のブースター(全長123フィート)はズーマを地上数十マイル上空に送ってからケープカナベラル空軍基地に帰還する。ブースター切り離し後は小型第二段ロケットを点火し極秘ペイロードを軌道に乗せる。
衛星を所有者が米軍なのか民間企業かも不明だ。スパイ衛星は国家偵察局(NRO)が打ち上げるのが普通だが、同局はズーマと関係ないとAviation Weekに述べている。
スペースXもズーマミッションの内容について回答を拒む中で、ノースロップ・グラマンが関与を認めている。同社広報担当役員ロン・レインズがBusienss Insiderに以下伝えてきた。
「ノースロップ・グラマンはズーマ打ち上げに関与できることを光栄に感じております。この政府ミッション打ち上げはコスト効果の高い宇宙アクセス実施方法となります。米政府はノースロップ・グラマンにミッションの打ち上げ部分を委託し、当社はスペースXからファルコン9打ち上げ業務を調達しました」
「当社は今回の事業は記念碑的な意義があり細心の注意を払いズーマ打ち上げを最低限のリスクと費用対効果の高い形で実施します」「ズーマのペイロードは機密性の高く低地球軌道に投入されます」
低地球軌道(LEO)は地表上空1,000マイル以下を指す。レインズはミッション内容の詳細を話さず、同社は「これ以上は何も話せずいかなる質問にも答えられない」と述べた。
機密扱いのズーマだがその目的で観測が多数出ている。
衛星追跡マニアは意味不明のFCC連邦通信委員会による申請を10月に発見し、NASAの宇宙飛行フォーラムのスレッドに公開している。その後の情報が途絶えたことで観測が広がり、打ち上げの意図が問われた。同上NASA宇宙飛行フォーラムのズーマ関連スレッドが11月15日にSpaceflight Nowによる推理を掲載した。
  • 国家偵察局がズーマと無関係ならペイロードは中央情報局、国家安全保障局あるいは他の米政府省庁のものかもしれない
  • ズーマの予想地球周回軌道は中国、北朝鮮の監視に最適であるが、軌道確定は打ち上げた後であることが通常。
  • 予想軌道だとNROのUSA-276(NROL-76)衛星と酷似する。ズーマ打ち上げが東部標準時午後8時ごろならUSA-276から10分未満遅れて軌道に乗ることになり、宇宙空間では異例の接近になる。
  • この事からズーマはUSA-276の燃料再補給ミッションに投入される、あるいは同衛星と密接に関連するスパイ衛星なのか。
11月17日にスペースXはズーマ打ち上げをフェアリングデータ解析の結果で延期と発表しています。

日本国民よ現実を見よ、NBC想定して訓練中の海兵隊岩国基地



こうあってほしいと願うだけでは現実は変わりません。まだモリカケが国政の最優先事項だと考えている人たちは同じ国内ですでにこういう想定で準備がされていることをどう受け止めるのでしょうか。おそらく受け入れないでしょう。しかし、これが冷徹な現実であり、言葉の応酬を繰り返す「民主体制」を冷笑している外部勢力が日本の価値観など全く気にもかけずに着々と準備をしていることを忘れてはなりません。

 


America's F-35s are Preparing to Fight North Korea During a Nuclear War米軍F-35部隊は北朝鮮へ核兵器投入後の想定で準備中

November 17, 2017

  1. 米国と北朝鮮のにらみ合いが続く中、朝鮮半島は戦争の不安でおおわれている。
  2. 北朝鮮と開戦になれば、史上最も残虐な戦いになりそうだ。核兵器、化学兵器に加え生物兵器まで投入される可能性がある。そうなると米軍は汚染された環境での作戦を覚悟しなければならない。このため岩国基地の121海兵隊戦闘飛行隊は隊員は任務対応防護体制(MOPP)第四段階装備を着用してロッキード・マーティンF-35B共用打撃戦闘機の離発着を繰り返している。
  3. 「MOPPは海兵隊でも普段は使わない装備ですので訓練は重要です。実際に着用しても抵抗がなくなる効果があります」とVMFA-121付け整備統括官マーティン・アルドレーテ二等軍曹が太平洋軍公式報道資料で語っている。
  4. MOPP装備を着用しての訓練で海兵隊はF-35B運用を化学攻撃、生物兵器攻撃後の環境でも実施し、核攻撃後の放射性降下物からも身を守れる。各隊員には北朝鮮による攻撃は現実的な想定だ。
  5. 核、化学攻撃を基地から離れた地点が受ける想定も非現実的ではない。北朝鮮との緊張は高く、開戦となれば平壌は核兵器投入もためらわないはずだ。北朝鮮が化学兵器、核兵器で米軍の大規模航空基地を攻撃するのは論理的にありうる。
  6. ただし、ジム・マティス国防長官は外交手段で北朝鮮との交戦は回避できると信じているようだ。「交渉機会はまだ残るが向こうがミサイル発射、核兵器開発を止めた場合だ」と長官は述べている。
  7. マティス長官によればトランプ政権は北朝鮮問題解決をあくまでも平和的に進める考えだという。「今のところは外交主導だ」「できることは全部想定している。制裁、国連安保理決議、経済制裁の強化、世界各地での外交官追放などすべて外交経済面で北朝鮮に圧力をかけ方向を変えさせるためだ」
  8. だがトランプ政権が北朝鮮に政策変更を期待する中、北朝鮮が核兵器を放棄するとはとても思えない。平壌は核兵器を金政権存続の切り札と見ている。米国がリビア独裁者ムアマ・カダフィに大量破壊兵器廃棄の代わりに政権温存を持ちかけながら2011年に駆逐した事例を見て、北朝鮮は同じ過ちは繰り返せないと決意しているはずだ。
  9. 米国も最終的には核武装した北朝鮮を認めたうえで、抑止政策を採用する必要に迫られるかもしれない。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar.


Tu-160新型M2がロールアウト、ただし調達はスムーズに進まない模様


Russia Rolls Out New Tu-160M2, But Are Moscow's Bomber Ambitions Realistic?

ロシアがTu-160M2をロースアウトしたが戦略爆撃機整備計画は現実に即しているのか

Despite budget cuts and other issues, the Kremlin remains optimistic that flight testing will begin within months. 

予算削減他にもかかわらずクレムリンはフライトテスト開始は数か月以内と楽観的

UAC
BY JOSEPH TREVITHICKNOVEMBER 16, 2017

ロシア合同航空機企業(UAC)が同社カザン工場で改良型Tu-160M2試作1号機をロールアウトした。ロシア空軍は同機をTu-95MSと並ぶ戦略核攻撃力の柱と見るが、予算不足、産業基盤の弱体化他で装備近代化は簡単にいかないだろう。
  • 2017年11月16日、ロールアウトと同時にロシアの副首相ドミトリ・ロゴジン Dmitry Rogozin は2018年にフライトテストを開始、低率初期生産はその翌年に開始し、2023年から連続引き渡しすると発表。その時点でUACは年間2-3機を引き渡す。クレムリンは2015年にブラックジャック生産ライン再開を発表していた。
  • Tu-160Mと比べてTu-160M2の改良内容の全体像がわからないが、ロシア関係者はM2は従来型Tu-160と部品点数ほぼ6割が共通と説明していた。
  • M2が完全新規製造機なのかも不明だ。UACでは試作機は既存機を改装したものと認めるが、ロシア軍は最低50機調達したいとしており、Tu-160Mの生産機数はわずか16機だ。
  • UAC公表の試作一号機の写真を見ると機体大部分は大きな違いはないようだ。ソ連時代のTu-160はロシア愛称がBeliy Lebed (白鳥)であり、1970年代に開発開始し、初飛行は1981年だった。2015年まで実戦投入されなかったが、同年にシリア国内に向け巡航ミサイルを発射している。
  • M2はエンジンをNK-32 02シリーズに一新したと伝えられる。NK-32原型は最高強力な低バイパス比ターボファンエンジンであり、アフターバーナーで55千ポンドの推力を出す。これに対してB-1爆撃機のジェネラルエレクトリックF101の推力はアフターバーナーを作動させて31千ポンドだ。ただしTu-160は機体サイズがB-1より大きい。
  • エンジンメーカー合同エンジン企業(UEC)によれば02シリーズでは大幅に効率が改良されTu-160M2は燃料比率が向上しており、航続距離は600マイルも伸びた。同じエンジンはロシアのステルス戦闘機PAK-DAにも使われている。エンジンテストは2017年10月に始まったばかりだがM2試作一号機に同エンジンが搭載されているかは不明だ。
  • さらにロシアによればTu-160Mからエイビオニクスを刷新している。M型でも改良があったが、UACは完全デジタル「グラスコックピット」だとほのめかしている。
ALEX BELTYUKOV VIA WIKIMEDIA
Tu-160ブラックジャック原型のコックピット
  • 2017年6月に無線電子技術集団(ロシア名KRET)の第一副CEOウラジミール・ミヘイエフ Vladimir MikheyevがTu-160M2に新型電子装備が搭載されるとTASS通信に伝えていた。国営企業の同社は無線、航法、レーダー、情報収集機器を軍民双方に提供している。
  • ミヘイエフによれば新型ブラックジャックには慣性航法装置と天測航法装置が搭載されるという。注目したいのは後者でGPSに相当するGLONASS衛星航法が攻撃を受けたり機能しない場合の予備となる点だ。ロシア軍はGPS衛星の攻撃妨害手段を開発中で自軍への損害も想定している。
  • ロシア報道によればTu-160M2には電子スキャンアレイレーダー(AESA)も搭載される。乗員は危険となる脅威対象を長距離で正確に探知できるようになる。
UAC
UACカザン工場でのTu-160M2
  • もっと重要なのは白鳥が強力な防御手段を搭載することで、KRET幹部は「あらゆる形式のミサイルから防御」すると言っている。ミヘイエフもTASSも共にこの点について語っていないが可能性はある。
VLADIMIR RODIONOV/AFP/GETTY IMAGES
プーチン大統領が2005年にTu-160に搭乗したことは広く宣伝された。 白鳥はロシアの誇りの象徴として見られている。
  • 防御装備の詳細は不明だが、Tu-160M2がどこかの段階で「ハードキル」と呼ぶミサイルを物理的に破壊する手段を搭載するといわれる。2017年6月にノースロップ・グラマンがそのような装備の特許を申請している。新型の白鳥には各種防御装備を共通センサーを中心に搭載し、爆撃機の防御を多層構造で実現するのだろう。
  • Tu-160M2は旧型Tu-160M同様の戦略核・通常ミッションを実施するとロシア関係者は述べている。ただしM2は低視認性がないため、長距離空中発射式Kh-101、核弾頭付きKh-102巡航ミサイルでスタンドオフ攻撃し、敵の統合防空体制を回避するはずだ。
  • クレムリンは最低50機調達したいと言っているが、ここに試作機、旧型からの転換機が含まれるか不明だ。UACに未完成機が何機あるか不明で保管中の機体状況も不明だ。
  • ソ連時代にツボレフ(現UAC傘下)がTu-160を35機生産し、うち19機がソ連崩壊でウクライナに残った。このうち8機が2000年代にウクライナの債務支払い分としてロシアが回収したがスクラップ処分されたようだ。現在作戦行動可能なのは16機で、稼働していなかった8機がTu-160M2仕様に改装用に使える。
  • ただしUACが新規製造の再開を避けるのであれば26機を集めなければならないことになる。生産再開となれば非常に高価になる。いずれにせよ同社が言うように2023年以降に年間2-3機を納入するのであれば全機がロシア空軍にそろうのに10年以上かかることになる。
  • ロシアでは原油価格低迷により国防事業削減が続いており、ウクライナ、シリア関連で制裁措置の効果が加わっている。
  • クレムリンはTu-160M2の実現でPAK DAステルス爆撃機開発の「再計画」つまり遅延させてもよいと決定している。後者についてUACから構想決定案は出ていない。
  • M2関連は既存Tu-160M16機の保守管理と並行し資源を取り合う状況になっている。そロシア石油大富豪の希望で白鳥の一機を超高速プライベートジェットに転用する余裕などない。
MAKSIM BOGODVID/SPUTNIK VIA AP
UACカザン工場で16機残るTu-160Mの一機が大修理に入っている。
  • Tu-160M2の新規生産が開始されればPAK DAの実現が遠のく。新規製造にせよ改装にせよ新仕様の白鳥はロシア戦略兵力が完全新型機のステルス爆撃機を製造するより近道なのは明らかだ。
  • M2改修化がすでに遅延しているのは明らかで2016年にロシア空軍トップのヴィクトル・ボンダレフ上級大将Colonel General Viktor BondarevがRIAノーボスチ通信に本格生産は2021年開始と述べており、現在の2023年見通しと食い違っている。
PHOTO BY MARINA LYSTSEVA\TASS VIA GETTY IMAGES
  • 2017年11月にロゴジン副首相はプーチン大統領にTu-160M2フライトテストが2018年2月開始と報告していたが、本人はTASS通信には「見込み」と語っていた。
  • ただしブラックジャック50機を運用する際の総経費は意識されていないようだ。現在のロシア空軍のTu-160機数が三倍になるわけで、白鳥のうち何機が常時作戦可能状態になるのか不明だ。
  • ロシア当局は戦略爆撃機の近代化改修を高優先国防事業にしているが、それだけで機体が予定通り実現して期待通りの性能が全部実現するわけではない。■
Contact the author: jtrevithickpr@gmail.com

2017年11月18日土曜日

中国の台湾侵攻等野望を止めるのは周辺国のA2/AD戦略だ



うーん、この通りなら中国の軍拡が進んでも日本含む周辺国がA2/ADを独自に整備すれば、中国はさらに軍事支出をふやしいつか破綻するのではないでしょうか。もちろん周辺国も侵攻を受けるリスクが増えるわけですし、中国の既得権も認めることになるわけですが。一種の開き治り戦略ともいえるでしょうね。両陣営が戦わずに勝利をそれぞれめざすことになります。それにしても中国に同盟国がないことが救いで、それだけにふらふらする韓国の動向が非常に気になるところです。


Why China Can't Conquer Taiwan in a War

中国が台湾を背圧武力制圧できない理由
November 17, 2017


第19回党大会で権力基盤を固めた習近平主席が内向きになる米国を見てアジア太平洋を中国の思いのままにする好機と見ているかもしれない。この度発表された研究成果ではこの点に触れつつ、北京に周辺国を敗退させる軍事力はないと分析し、とくに台湾占領は無理だとする。
  1. 研究をまとめたのはマイケル・ベックリー Michael Beckley(タフツ大准教授(政治学))で学術誌International Securityに掲載した。ベックリーは米軍支援が最小限でも中国周辺国が各国で接近阻止領域拒否戦略を取れば中国軍の阻害は可能と主張。
  2. 「東アジアで新しい軍事力バランスが出現の兆候があり、米国は中程度のリスクで兵力増強が可能だ」「このバランスは今後も安定したままとなる。各国のA2/AD効果を打ち破る兵力投射能力は中国に実現しないためだ。根拠は兵力投射部隊の整備はA2/AD部隊整備よりはるかに大規模な予算が必要となるからだ」と述べている。
  3. A2/ADは米国の介入をさせない中国戦略として語られているが、ジェイムズ・ホームズ、トシ・ヨシハラ、アンドリュー・クレピネヴィッチ等は米国はアジア同盟国とともにこの戦略を中国相手に展開すべきと主張している。中国を困難にさせればよいというのだ。ベックリーは「この戦略では米国は東アジア制海権は断念するかわりに周辺国を助けて中国の制海権制空権確立を困難にすればよい」と説明。
  4. ベックリーは新戦略を想定される軍事衝突シナリオ数点で試した。その一つが台湾海峡からの中国侵攻だ。そもそも揚陸侵攻作戦は難易度が一番高いが、侵攻部隊の移動途中を狙える精密誘導兵器の時代では一層困難になる。
  5. 台湾侵攻作戦の成功には中国は航空優勢、海上制圧の完璧な確立が必須だ。「台湾に防空体制や攻撃手段が温存されれば中国の侵攻は不可能となる。台湾海峡を移動中の中国艦艇を攻撃できる制海権を台湾が維持するからだ」とし、中国にはミサイル相当数があり開戦直後に台湾防空体制を破壊するといわれるが、台湾を無力化するには完全な奇襲攻撃でない限り無理とする。台湾の早期警戒が有効なら作戦機材を国内36箇所の航空基地、民間空港さらに高速道路に分散させ緊急運用体制を整えるだろう。台湾には移動式ミサイル発射機、対空兵器もあり艦船潜水艦も巡航ミサイルで中国部隊を攻撃するだろう。
  6. ベックリーが指摘するように中国が防衛体制を先制攻撃ですべて壊滅させるとは考えにくい。まず台湾には高性能早期警戒防空体制がある。米国でさえ第一湾岸戦争でここまでの実力がないイラク防空網や1999年のセルビアで完全破壊できなかったではないか。
  7. 当時の米国を上回る実力を中国が示したとしても揚陸作戦の成功は確実とは言えない。例えばベックリーは上陸に適した地点は台湾海岸線の1割しかないと指摘し、台湾は一部地点に重点的に防御態勢を敷けばよく中国上陸部隊は数の上でも劣勢になるという。
  8. そうなると最大限に楽観的な評価(北京の視点)をつかってまでも中国は台湾占領に躍起となるだろう。ベックリーは「米国は侵攻部隊を失敗させ戦況を一変させるべく米軍艦船や非ステルス機を中国のA2/ADに晒せる必要のない対応方法多数がある」と述べている。具体的には米軍による試算では「台湾の沿岸部に1万ないし2万ポンドを投下してPLA侵攻部隊をなぶり殺しにする」必要がある。この役目にはB-2爆撃機一機あるいはオハイオ級潜水艦一隻を投入すればよい。
  9. さらにベックリーは東シナ海、南シナ海の制海権を中国は簡単に確立すできないと指摘する。ヴィエトナムや日本の抵抗をその理由にあげる。中国が地域内で軍事優位性を手に入れる可能性がは一般に考えられるより低い。このため中国は戦わずに勝利する戦略をとっているのであり、今までのところ比較的成功していると言える。■
Zachary Keck (@ZacharyKeck) is a former managing editor of The National Interest.
Image: Reuters


新型英空母クイーン・エリザベスの就航は12月7日に


Queen Elizabeth to formally join fleet

クイーン・エリザベスの就役近づく

  
Source: Crown Copyright

Tim Ripley - IHS Jane's Defence Weekly
17 November 2017
英海軍クイーン・エリザベス級空母一号艦が建造業者による海上試験をこの度終了し、12月7日に艦隊編入される。
国防相ギャビン・ウィリアムソン Gavin Williamson が11月16日にイングランド南西海上で公試中の同艦を訪れ発表した。
就役式典にはエリザベス女王が参列しポーツマス海軍基地で行う。同艦の建造はエアクラフトアライアンスが行った。式典後に正式HMSクイーン・エリザベスとなる。
同艦は10月30日出港し建造者公試験第二段階を開始している。狙いは通信機能、レーダー等のセンサー機能だ。オープンソースAISトランスポンダー追跡によれば同艦はランズエンド周辺からコーンウォール北海岸を航行していたのがわかる。■

★中国が超大国になれない5つの理由




中国の経済崩壊がいつになるのか、しびれを切らしている方もいるでしょうが、永久に今の虚偽は続けられないはずです。その日が来た時になんとか世界に影響を最小限にしてもらいたいものですが、そうはいかないでしょう。北朝鮮崩壊どころの話ではありません。以下の記事を読むと中国指導部の悩みがわかるはずですが、そんな悩みは顔に出さず強硬姿勢を貫くのは共産党独裁体制で培われた能力なのでしょうか。いつまで張り子のトラを維持できるのでしょうか。

These 5 Things Could Challenge China's Rise

中国の台頭を阻む5つの要素
China’s fear of domestic fracture persists even as Chinese focus on the outside world increases.
対外世界への関心が高まっても中国は国内分断に恐れを抱く
November 14, 2017


ジョージ・W・ブッシュ大統領が胡錦涛主席(当時)に夜眠れなくなる悩みがあるのか聞いたところ雇用創出と答えたそうである。毎年中国に加わる25百万人に仕事を提供するにはどうしたらいいか。
 胡錦涛時代の中国と今は違う。「平和理に中国を発展させる」は「偉大な中華国家の再生」に道を譲り、先月の第19回共産党大会で習近平は中国は「世界の中央舞台に進みつつある」と堂々と宣言した。
 今日の中華人民共和国(PRC)は自信たっぷりで南シナ海、初の海外基地、アジアインフラ投資銀行、一帯一路まで世界規模で中国の足場構築を進めている。では中国指導部はどれだけ変化しているか。外向きの自信と裏腹に最高指導部には心配が絶えないのである。
 中国共産党(CCP)はの脳裏を離れない問題を取り上げてみた。地理、米国、他勢力の動向、「分離主義」、経済安定の五つだ。

地理
中国の拡張主義と自信の強さの背景で触れていないが戦略的地理条件は中国に不利だ。
 中国は世界最大の交易国であり、繁栄の持続のために開かれた海上交通路が必要だ。だが中国の海洋アクセスは大きく制限され敵に回りそうな日本、台湾に挟まれた海峡を通過する必要がある。南シナ海へのアクセスはマラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡を通らないといけない。
 この戦略的弱点を克服するべく中国は海軍力を整備し、人工島を南シナ海で建設し、一帯一路を提唱しているが、これらはまとめて一つの政策と見るべきだ。エネルギーを例に挙げると中国の2016年エネルギー需要の64%が輸入だったが2035年には80パーセントに上昇する見込みと国際エネルギー機関は予測している。一帯一路の目玉プロジェクトが中国-パキスタン経済回廊で輸送とエネルギーインフラをグワダールから新疆まで延ばすのは中国のエネルギー供給源が多様化している証だ。中国の海外投資に軍がついてくる。人民解放軍(PLA)が初の海外基地を開設したジブチは戦略的な通過地点でPLAはインド洋展開で海賊対策に使うと説明している。「動的防衛」に政府あげて取り組み始めている。
 中国の目指すグローバル展開を国力増大の印と受け止めがちだが、世界各地に権益を有して危険度が高まっているためと理解することも可能だ。習近平の「中国の夢」の成功はひとえに戦略地点数か所の制圧にかかっており、これが実現して中国指導層は初めて安心できる。

米国
「いつの日か、米国が西太平洋から手を引く時が来る。世界その他地区でも同じことが起こっているように」---毛沢東
 CCPはアジアから米国の排斥を目指している。今日の中国はアジアの大国である以上にグローバル大国である。先に述べたように中国が必要とする資源は国境付近だけでは調達不可能だ。中国軍事力の増強は中国の交易と軌を一にしており、ゆくゆくはグローバル規模に拡大するだろう。ただし中国の経済、軍事両面の整備は圧倒的な超大国である米国の影の下で進めざるを得ず、あくまでも中国の発展を妨げるような挑発はできない。
 米国は実質GDP、軍事力、グローバルな同盟関係、提携関係、兵力投射の経験で中国に対して優勢だ。だが米国は各地に目を配る必要があり、優先順位を巡り各案件が競い合うのが現状だ。中国指導部はパックスアメリカーナ下で国力を慎重に増進させる必要があり、中国の台頭を米国が不快に感じ、米国の指導力に真っ向から挑戦していると受け止められるのを恐れる。ここから中国に厄介な事態二つが出てくる。ミサイル防衛と経済報復措置だ。
 中国指導部は現在を「戦略的好機の期間」だとし誰にも邪魔されず国力が増進できるとみている。南シナ海から一帯一路まで中国は強気だが実は計算ずみリスクの上で米国を挑発せずPRCとして可能な範囲で野望を推し進めているのだ。

その他有力国の興隆や復帰
ヘンリー・キッシンジャーが米中の今後をドイツの興隆が引き起こした英国との第一次大戦時の関係と比較している。だが自身も同じ興隆と言っても中国とドイツで決定的な違いがあると説明している。ドイツはヨーロッパで諸帝国が崩壊した中で大国になったが中国は有力国が取り巻く中で大国にのし上がった。
 中国の登場は力の真空で発生したわけではない。PRCは米国のみならず有力国多数と競う必要があり、各国が結束してPRCに対抗する動きが見えてきた。さらに各国はPRCより地理面で優位で中国のジレンマはさらに深まりそうだ。
 中国は交易エネルギー資源の輸送をインド洋に依存しているが、インドが着々と力をつけており、米国、オーストラリア、日本等と連携して軍事力経済力を放射するだろう。日本は急成長こそないが大国であることに変わりなく米国との同盟関係がある中でPRCとの一戦を我慢できるかを問われそうだ。インドネシアはGDPが一兆ドルの大台に近づく急成長国であり、海軍力を整備し中国への対抗勢力になりうる。ロシアは人口問題を抱え経済も停滞中だが軍事大国であることに変わりはない。中露軍事・経済協力関係が現在は実を結んでいるが、ロシアが長期的に中国の利益と同調したままでいられるかはわからない。中国の台頭が既存大国の中で実現していること、他の大国がPRCには危険な存在になる可能性があることを改めて想起させられる。
 米主導の「包囲網」や「封じ込め」はPRC発足後直後から存在しており、米国がアジアの他国と画策するのを「冷戦思考」と中国で官民あげて非難しているが中国自身の行動と領土主張がPRCへの反感と行動を招いていることは理解していないようだ。CCPは各国が団結して立ち上がることを重大問題と認識している。

分離主義
「台湾、澎湖諸島、東北四省(満州)、内外蒙古、新疆、チベットはそれぞれが砦で国防に役立つ。一つでも分離独立すれば国防に支障をきたす」--蒋介石
 中国の国内治安維持予算は国防予算とほぼ同額だ。つまり国内安定の確保が重要課題であることを示している。新疆からチベットへ、香港から台湾へと中国の恐れる国内分断の可能性は国外への関心が強まっても変化がない。2015年版の中国国防方針では「政治的保安体制と社会秩序」の維持は「難易度の高い任務」だと強調し、チベット、ウイグルの独立運動に言及している。さらにCCPは「分離主義」を引き続き警戒し、「反中勢力は国内で『色の革命』の扇動を断念していない」と述べていた。
 中でもある地域でCCPが行っていることが参考になる。「一国二制度」を香港で実施することに失敗したことは台湾にもあてはまる。台湾は「香港化」を恐れ本土による統一で自由が奪われることを警戒している。
 香港には「雨傘運動」でアイデンティティーに目覚める動きがある。2016年調査では59パーセントが台湾人だと自認したが、中国人と認識しているのは3パーセントしかなかった。CCPは経済統合が進む一方で政治面での同化はまだ道途中だと見ている。
 政治面で「国家再生」に統一は避けて通れない課題だ。また戦略的意義もある。台湾は第一列島線の要所であり台湾を手中に収めれば中国は近海を支配できる。中国軍教本では「台湾を中国本土に統合すれば日本の海上交通路は中国軍用機の攻撃範囲に完全に収まる」とあり政治、戦略双方の目標が一致している。
 新疆でも国内治安と国防は一致している。中国-パキスタン経済回廊がインド洋に対する陸上アクセスとなり、困窮するパキスタンを助けるだけでなく中国の北西地方の支配を継続する手段となる。新疆やチベットに漢族が大量移住したとはいえ中国西半分の各省は全国人口の6パーセントにすぎず、漢族以外の民族は弾圧を受けつつも強いままだ。
経済安定度
中国経済は減速中だ。CCPは経済学者が呼ぶ「経済再バランス」過程にあり、輸出から国内消費に経済成長の主役を移そうとしている。だが中国は増え続ける巨額債務にも直面している。とくに国営企業に集中している。政府には財政金融対策があるが、信用危機と資産バブルの破裂を経験するのはまもなくかもしれないし、債務も維持できない規模になりそうだ。景気刺激策より変革を求める声があるが、真の構造改革が実施されていない。ゴースト都市、非効率な企業への支援、不良債権や要注意先債権の存在がその証だ。このままだと刺激効果が減り債務が増えるだけで移行が困難になるだけだ。
 「Made in China 202」のような運動で中国のヴァリューチェーンを引き上げようとするものだしているが、欧米で技術取得に奔走している姿からCCPが経済構造の移行に執心していることがわかり、生産性を引き上げながら経済不況を避けようとしているのは明らかだ。ただしCCPの全能力をもってしても実現には数年かかるほど巨大規模の事業だ。
結語
中国の台頭は深刻な問題と並行しており、CCPがめざす「国家再生」の実現は困難になる。中国が大国になり力のバランスが歴史的な変化となったが、習近平の「中国の夢」の意味を一層多くの諸国が悟るにつれて力のバランスがPRCに逆作用になる可能性もある。中国の軍拡や経済力の増大に対して中国のイデオロギー輸出に各国が反感を感じ始めている。PRCが恐れる事態が生まれつつあると言えよう。中国の野望への対処で厳しい選択に迫られる各国があらわれており中国の「総合国力」で世界が包まれるのを防ぐ動き、警戒する動きが出ているのは中国に恐怖を感じさせている。CCPが恐れるのは「戦略機会の時期」が終わり世界が目覚めることなのだ。■
Dr. Jonathan Ward is the founder of Atlas Organization, a consultancy on China, India and the Indo-Pacific Region. He received his PhD in China-India relations from the University of Oxford and his undergraduate degree from Columbia University. He speaks Chinese, Russian, and Arabic, and has traveled widely in China, India, and the Indo-Pacific Region.
Reed Simmons is an officer in the U.S Navy. He is a graduate of Harvard University. The views and opinions expressed herein by the author do not represent the policies or position of the U.S Department of Defense or the U.S Navy, and are the sole responsibility of the authors.


2017年11月17日金曜日

歴史に残らなかった機体(11)コンベアB-58ハスラー


歴史に残らなかった機体(11)はコンベアB-58ハスラーです。外観と高性能と裏腹に使えない機体になってしまったのですね。システム構築が誤ったというより時代の変化についていけなかったので全員の熱意が無駄になった例です。進化の木の変な枝に入り込んだような機体ですね。そういえば同社の前作B-36も結局使えない装備になってしまいましたね。

The B-58 Hustler Was a Beautiful Mistake

B-58は美しい失敗作だった

Blazing-fast nuclear bomber had many problems

高速核爆撃機には多くの問題があった

The B-58 Hustler Was a Beautiful Mistake
November 16, 2017 Robert Beckhusen


1956年11月11日、B-58ハスラーが初飛行した。高速飛行で核攻撃を目的に作られた独特の美しさを備えた爆撃機だがソ連の戦術変更や技術開発がハスラーの運命も変わった。B-47ストラトジェットの後継機の想定だったが実戦には投入されなかった。
  1. コンベア製デルタ翼のハスラーはマッハ2.0超音速飛行が可能でB-52ストラトフォートレスやB-47より大幅に高速で上昇限度も63,400フィートと他機より高高度だった。
  2. ハスラーは爆撃機としては小ぶりでB-52より全長で64フィート、翼幅で128フィートも小さい。
  3. ハスラーではスピードがすべてで、空軍は9メガトンB53核爆弾一発あるいはB43あるいはB61核爆弾4発を搭載させソ連や中国に飛び込ませ迎撃態勢が届かない高速と高高度を活用するつもりだった。
  4. 1964年にCIAは同機を迎撃可能な中国機はMiG-21フィッシュベッドのみで、迎撃成功の確率は「わずか」と評価した。
B-58A Hustler in 1968. U.S. Air Force photo

  1. それを可能にしたのは四基のJ79-GE-5Aターボジェットで各10,400ポンドの推力を発揮した。デルタ翼で抗力が生まれたため機体形状は再設計で「コークボトル」形にした。大型爆弾ポッドと燃料ポッドは機体下に取り付けた。
  2. 耐熱対策でコンベアはB-58の表皮をはにかむハニカム構造ファイバーグラスをアルミ、鋼板の上にリベットではなく接着剤で貼り付けた。この工法はその後の民間航空機に応用された。
  3. ただしハスラーの小型外寸がソ連領空への侵入機として決定的な欠陥を生んだ。空中給油なしでは行動半径が1,740マイルしかなかった。このためハスラーはヨーロッパに配置するか、相当数の給油機を配置する必要があった。
  4. 短距離性能が空軍内部でも深刻に受け止められていたことが2012年刊行のRearming for the Cold War, 1945-1960 でわかる。著者は米空軍退役大佐エリオット・V・コンヴァースIIIである。
  5. 戦略航空軍団司令カーティス・ルメイ中将は同機を忌み嫌い、SACから排除したがっていた。「1955年に作戦担当のジョン・P・マッコネル少将はカナダならまだしもソ連が敵なら距離が肝心だと皮肉を込め発言していた」とコンヴァースが記している。
B-58 Hustler. U.S. Air Force photo

  1. 構造が複雑なことが事態を悪くしたし、運用費用はB-52の三倍で開発も手間取った。機体を「コークボトル」形状に変更したため開発が遅れ費用が増大した。
  2. 調達機数も変更され、116機と当初の三分の一に削減された。高速性能のため航法、爆撃照準装備もスぺリー AN/ASQ-42を新たに導入したがこれが開発の足を引っ張った。
  3. J79エンジンもトラブルが続き、ブレーキ、射出座席も同様で後者は射出可能ポッドに変えられた。「スピード記録こそ樹立したがB-58は支出の価値があるのか疑問だった」(コンヴァース)
  4. ハスラーの運命を決めたのは二つの要素だった。まずソ連が地対空ミサイル性能を向上し1960年5月に高高度飛行中のU-2スパイ機を撃墜した。使われたS-75(NATO名SA-2ガイドライン)はB-58の上昇限度を数千フィート上回る性能があった。
  5. 解決策として低空飛行があったが空気密度が高いため高速飛行ができない。またハスラーは高速飛行を想定したので低速では機体制御が難しい。これで機体の2割を喪失した。
  6. 次に空軍が開発を同時並行で求めたことがある。
  7. 「中心にシステムは最初から統合された形で企画すべしとの考えがあり、これに基づいて各要素がシステム、サブシステムとして成り立ち、その他支援装備、訓練内容まで同時に準備するものとされた」(コンヴァース)
  8. だがいざ着手すると問題が洪水のように全体事業に影響した。「技術問題が出現するたびに事業全体の見直しが必要となるか問題解決まで待たされた。このため開発が遅れ、せっかく準備した生産体制を廃棄する事態も発生し、費用が上昇し、展開が先延ばしされた」
  9. どこかで聞いたような話に聞こえるのはF-35のためだ。空軍は同時並行方式で費用を抑えられるとステルス戦闘機事業で公約していたが事実はその真逆だ。
  10. B-58は一回も実戦投入されず、非核任務も想定外だった。1970年1月に全機が退役し、空軍の核攻撃ミッションはB-52、B-1、F-111、ステルスB-2、弾道ミサイルに引き継がれた。なお、ミサイルは同時並列開発の成功例である。
  11. B-58の失敗例は画期的な新型機開発で同時並列手法を誤る危険性を包み隠していたのだ。■