2017年12月20日水曜日

ボーイングが12月19日に発表したのはMQ-25海軍向け無人給油機だった

Boeing Unveils Prototype For The Navy's MQ-25 Drone Tanker

Competition ボーイングが海軍MQ-25無人給油機競合への自社提案を発表

After teasing the reveal on social media, we finally get our first peak at the

company's clean-sheet, aircraft carrier-borne, unmanned tanker design.ソーシャルメディアでのもったいぶった発表は完全新型空母搭載無人給油機と判明


BOEING

めいたツイッター投稿で好奇心を刺激してくれたボーイングの謎の機体の正体は米海軍向けMQ-25スティングレイ無人給油機案と判明した。同社はジェネラルアトミックスに次いで同事業参画をめざす二番目の企業となった。
 2017年12月19日、ボーイングが新型無人機をファントムワークス作品として発表した。ファントムワークスは極秘機材の担当部門でロッキード・マーティンのスカンクワークスに相当する。同社はこの機体の社内呼称等を発表していない。これでMQ-25参入を表明しながら機体発表していないのはロッキード・マーティンだけとなった。MQ-25はCBARS(空母搭載空中給油システム)としても知られるが当初はUCLASS(無人空母運用空中監視攻撃機事業)だったが経緯があり変更されたもの。
 ボーイングのファントムワークスで給油機をまとめるドン・ギャディスDon Gaddisは「ボーイングは空母搭載機を海軍に90年にわたり納入しています」と述べ、「技術製造開発契約を交付いただければフライトテストを実施できる状態です」と声明文を発表した。
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Revealed and ready! #BoeingMQ25 #UAS future @USNavy tanker will extend the range of combat aircraft from the flight deck to the fight!
 ボーイングによれば同機は機能状態にあるが飛行していない。地上エンジンテストに次いで艦上公試を2018年早々に行いたいという。米海軍は競合各社の作品の提示期限を2018年1月3日に定めている。
 今回公開の機体には同社が以前発表の構想図と共通点が少ない。降着装置は空母運用を想定してると分かり、ステルス性能の要求はないが、機体形状は低視認性の特徴が見られるもののステルス特化ではないようだ。また今回発表の試作機には下のUCLASS想像図と同じ絵図が使われていることに注目だ。
 ボーイング公開の写真に見られる空気取り入れ口は小さく謎が残る。視覚上の錯覚なのか意図的に小さいのか、あるいは大きな取り入れ口が別にあるのだろう
BOEING

 総合するとボーイングのMQ-25提案はジェネラルアトミックスのシーアヴェンジャー構想と類似している。後者はプレデターC/アヴェンジャー無人機を原型とする。両社案はV字型尾翼をつけ、機体背部に空気取り入れ口があることで共通している。
GENERAL ATOMICS

 ジェネラルアトミックス提案のシーアヴェンジャーは原型のプレデターC/アヴェンジャーを燃料搭載トラックに改装している。ロッキードの構想は不明だがおそらく相当の内容になるだろう。

 ボーイング機に今後のミッション追加を想定した拡張余地があるか不明で、センサー搭載機や通信中継機、少量兵装を搭載する機体などが想定される。このためには機体内部に格納スペースや開口部が必要となる。米海軍はレーダー搭載スペースは少なくとも必要としているようだ。

 その点で機首降着装置のすぐ後ろに見える腹部ベイが比較的大きいように見える。ただし大型のアクセスパネルなのかペイロード搭載用の空間になるのか判断できない。
BOEING
 主降着装置の背後にもアクセス部分またはベイがあるようだ。この空間にミッション装備を搭載できるか、兵装庫に転用できるのか不明だ。

ボーイングに詳細情報や写真の提示を求めたが、同社からは来年まではこれ以上公開する内容はないと言ってきた。ボーイングには高性能無人航空システムで過小評価された過去がある。

 同社はすでに15年以上前に半自律的かつネットワーク化された無人戦闘航空機(UCAV)を誕生させた(少なくとも公表されている範囲で)実績があり自社費用でこれを発展させていたがUSAFはまるでこの画期的な性能が存在しないかのごとくふるまっていた。MQ-25契約自体は当初こそ多大な利益をもたらさないが、受注すれば未来の航空戦闘に大きな足場を確保できる。

 だが極秘の世界で飛ぶ機体については不明のままになっていることに注目すべきだ。ロッキード・マーティンのスカンクワークスがこれまでの高性能無人機技術を応用した機体を提示してジェネラルアトミックス、ボーイングともに驚愕する事態も考えられる。 

 ボーイングのMQ-25提案やCBARS事業の進展では今後も随時お知らせする。海軍初の高性能空母搭載無人機は要求内容が引き下げられ空母航空戦力の無人機化が減速されてしまったが、今後の戦略戦術両面で大きな意味を有することは事実である。■

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★米海軍レイルガン開発はここまで来ている


  • これも何度も出てくる話題ですが、レイルガンの開発は本当に順調なのでしょうか。レイルガンの基本は電力であり、むしろ運動エネルギーを使う超高速弾に関心が移りそうな気もします。しかし既存装備で運用した場合の運動エネルギーを考えるとそんなにすごい威力はないのではと思えますが、真相はいかに。

 

U.S. Navy Rail Gun to Test Rapid Fire and Move Closer to Combat

米海軍レイルガンは迅速連続発射テスト中で実戦化に近づいている


December 17, 2017


ッハ7.5まで電動加速される米海軍の超高速発射弾はレイルガンから発射
され敵の水上艦船、地上車両、ミサイルを狙い射程は最大100カイリ(約185
キロ)だ。
  • 未来の話に聞こえるがSF映画の世界ではなく、あと一歩で実戦投入できる。実現すれば遠距離攻撃しながら敵は攻撃できなくなるはずだ。投入エネルギーは時速160マイル(約200キロ)で走行する小型乗用車とほぼ等しいと開発陣は説明。
  • 海軍研究本部(ONR)は電磁レイルガンを実験室から海軍水上船センターのあるダールグレンでレップレイトテスト試射場に設置し発射テストを行う。
  • 「初期レップレイト発射(連続発射)は低出力ながら成功しています。次のテストはエネルギーを増加させながら安全を確保し、発射回数も増やし一斉射撃も試します」とONRは説明。
  • レイルガンのレップレイト発射テストでは今夏に20メガジュールでの発射に成功し、来年は32メガジュールに増加させる。ちなみに1メガジュールとは1トンの物体を時速160マイルで動かすのと等しいとONRは説明。
  • 「レイルガンやその他指向性エネルギー兵器は将来の海洋優位性達成の手段」とONRで海軍航空戦兵器開発部をまとめるトーマス・ビュートナー博士Dr. Thomas Beutnerは述べている。「米海軍がこの画期的技術を最初に実用化して敵勢力への優位性を維持する必要がある」
  • 作動には電力でパルスを生成させる。パルス生成系統にコンデンサーが瞬時に大電流を放出する。電流は3百万から5百万アンペアで10万分の一秒に1,200ボルトを放出するという。これで重量45ポンドの物体を百分の一秒でゼロから五千マイルに加速する。
  • 時速5,600マイルに達すると超高速発射弾となり運動エネルギーが武器となる。爆発物は使わない。超高速発射弾は秒速2キロと通常の兵器の三倍の速力を実現する。発射回数は毎分10発だという。
  • 巡航ミサイル迎撃の能力もあり、発射弾は艦内に大量搭載できる。大型ミサイルとちがい超高速発射弾の単価は25千ドルにすぎない。
  • レイルガンの出力は艦内電力系統または超大型バッテリーで確保する。装備は大きく発射機、エネルギー貯蔵、パルス生成ネットワーク、超高速発射弾、砲台と五つにわかれる。
  • 現在はGPS誘導で固定目標、静止目標の攻撃を想定しているが、将来はレイルガンで移動目標も攻撃対象になると海軍は説明してきた。
  • 海軍はDoDや陸軍とともにレイルガンの超高速発射弾を海軍の5インチ砲や陸軍榴弾砲といった既存装備で運用する実験を行っている。
  • また電磁レイルガンをハイテク艦のDDG-1000駆逐艦に2020年代中ごろまでに搭載できないかと検討中だ。
  • DDG-1000には統合給配電系統があり、艦内で十分な電力供給が可能だ。海軍上層部もDDG-1000がレイルガン搭載に最適と認めながら追加検討でリスク対応も必要だとする。
  • DDG-1000は統合給配電系統の70メガワット発電容量が将来のレイルガン運用の鍵を握ると見られる。
  • またDDG-1000級の排水量は15,482トンとイージス搭載駆逐艦の9,500トンより大きい。
  • DDG-51アーレイ・バーク級駆逐艦でのレイルガン運用も将来の可能性がある。技術面の要求からその程度の艦体が必要だ。そのため海軍の小型沿海部戦闘艦で電磁砲の運用は無理となりそうだ。■



2017年12月19日火曜日

今年のF-35引き渡し数は66機、目標達成したロッキード・マーティン

  • ロッキード・マーティンによる発表文でF-35Aでコスト低減等の効果を主張していますのでご注意ください。しかし生産が軌道に乗ってきました。増産が続きます。しかしソフトウェアの対応が間に合っていません。今や航空機特に戦闘機材ではハードウェアだけ見ていても間に合いませんね。

気になる表現
the transformational F-35 air system  --- 変化し続ける
the F-35 enterprise ---F-35事業

Lockheed Martin Meets 2017 F-35 Delivery Target
ロッキード・マーティンが2017年のF-35引き渡し目標を達成

FORT WORTH, Texas, Dec. 18, 2017 /PRNewswire/ -- 12月15日ロッキード・
マーティン (NYSE: LMT) が通算66号機のF-35を引き渡し、政府と共に定めた2017
年納入目標を達成したことになる。
  • これで265機が米国ならびに各国向けに納入ずみで、パイロット530名、整備要員5千名の養成が完了している。完成機体の総飛行時間は115千時間に上る。
  • 「2017年の納入目標の達成は政府産業界一体となっての懸命な努力と尽力の結果で変化し続けるF-35航空システムを第一線に提供できた」とロッキード・マーティン執行副社長兼F-35事業総支配人ジェフ・バビオン Jeff Babioneが語った。「チームは今後も課題解決に取り組み今回の達成実績で顧客にはF-35の年間生産量が毎年増えていくのが確信していただけるでしょう」
  • 2017年の引き渡し66機とは前年比40パーセント増で、F-35生産は2023年に年間160機体制を目指している。

生産面での改良続く
  • 増産と改良でロッキード・マーティンの目標はF-35A機体単価を2020年に80百万ドルに下げることにある。これまでの知見を盛り込み、工程改善や自動加工、生産施設の改良やサプライチェーンの努力他でF-35生産はコスト低減の一方で生産性を引き上げている。以下は例。
  1. F-35A機体価格は契約金額より60パーセントも下がった
  2. 修正作業がこの五年間で75パーセント減った
  3. 生産期間が2015年比較で20パーセント削減された
  • 増産に備えロッキード・マーティンはテキサス州フォートワースで2017年1月以降だけで従業員を1,300名増員し、さらに1,800名増員する。F-35生産には米国や世界で数千名が従事しており、サプライヤーは国内とプエルトリコだけで1,400社に上る。米国内で直接間接合わせ17万名の雇用を生む経済効果は年240億ドルだ。さらに各国にサプライヤー100社があり数千名分の雇用になっている。
  • 超音速多用途機のF-35は今後も変化継続する性能で前例のない状況把握能力、威力、残存性を実現している。次世代のレーダー回避ステルス性能、超音速飛行、戦闘機としての操縦性にかつてないほど強力な統合センサーパッケージを搭載し、これまでの戦闘機の水準を超える。

よりくわしくは www.f35.com をご覧ください。

ロッキード・マーティンについて
ロッキード・マーティン(本社メリーランド州ベセスダ)は世界規模の安全
保障航空宇宙企業で従業員数は全世界で97千名が高度技術応用のシステム、
製品、サービスの研究開発、設計、製造、統合、維持にあたっている。■





★これが第六世代戦闘機の想定内容だ

 毎度、出し惜しみのような内容ですが、それだけ方向性がはっきりしていないのでしょう。そのため何回も同じような内容ですみません。
 もともと第五世代戦闘機とはロッキードが宣伝用に普及させたの表現ですが、F-22やF-35を超えた戦闘機という意味で第六世代なのですね。
 ステルスや兵装等を考えると将来の(有人)戦闘機は現在のコンセプトと変わるはずですが、米海軍は(空母運用もあり)現行サイズの機体を想定のようです。空軍も追随すれば結局同じサイズになりそうですが、まだわかりません。



Air Force Starts Experiments for 6th Gen Fighter

第六世代戦闘機実験を開始した米空軍

The Air Force has begun experimenting and conceptual planning for a 6th

generation fighter aircraft to emerge in coming years as a technological step

beyond the F-35,

空軍が第六世代戦闘機の概念作りを開始した。F-35を超えた技術進展の機体になりそうだ



Kris Osborn - Dec 16, 9:59 AM


  • 米空軍は第六世代戦闘機関連実験を開始しており、F-35を超えた技術進展が今後数年間で登場すると空軍関係者は述べている。
  • 「実験、開発企画、技術投資を開始した」とアーノルド・バンチ中将(空軍副長官(調達)付け軍代表)Gen. Arnold Bunch, Military Deputy, Office of the Assistant Secretary of the Air Force, AcquisitionがScout Warriorに今年はじめに話していた。
  • 第五世代F-35共用打撃戦闘機を超える性能が新型機の狙いで2030年代登場と見られるが、現在は概念構築の初期段階で、空軍は米海軍と共同作業し、必要な性能や技術内容を検討中だ。
  • バンチ中将は検討内容を詳しく述べないが航空優勢2030構想に言及しており、空軍が目指す将来機材に望まれる戦略要素が念頭にあるようだ。
  • 20年後の戦闘機に採用されそうな技術として、新世代ステルス技術、電子戦、高性能コンピュータ処理、自律運行性能、極超音速兵器、いわゆる「スマートスキン」(機体側部にセンサーを埋め込む)があると指摘するのがTeal グループの航空アナリスト、リチャード・アボウラフィア Richard Aboulafiaだ。新技術の一部は昨年のノースロップ・グラマンのスーパーボウルCMに登場している。
  • ノースロップ以外にも新型戦闘機事業競合の参加企業があるはずだが、現段階ではノースロップがコンセプト、技術、初期設計で先行しているといってよい。ボーイングも開発の初期段階にあるとDefense Newsは解説している。
  • 海軍の新型機は2035年までに退役するF/A-18スーパーホーネットの後継機と海軍関係者は2040年における空母航空戦力像を検討しており、現行のF-35CやEA-18Gグラウラーの次の機体を検討中と述べた。表面塗布やステルス、人工知能、機体操縦、センサー性能、通信データリンク等の技術は急速に進歩していると同関係者は指摘している。
  • 海軍は同時に空母運用型の無人機も開発する。ノースロップが歴史を作ったX-47B実証機は空母発着艦に成功した初の無人機だ。
  • アナリストの中には第六世代戦闘機開発ではセンサーデータの最大限共用、超音速巡航や機体そのものを電子センサーにする「スマートスキン」も模索すると見る向きがある。
  • アフターバーナーなしで超音速移動できれば、戦術上も有利になり、対象地点で滞空時間を増やせる。F-22ですでに実用化されている。
  • 最大限の接続性能とは衛星通信中継でのリアルタイム接続を意味する。極超音速兵器の開発ではスクラムジェット方式の効果実証が必要だが、初期試験では成功失敗が入り混じっている。
  • 空軍科学主任ジェフリー・ザカリアス博士Dr. Geoffrey ZachariasはScout Warriorに対し極超音速兵器の実用化は2020年代中に実現し、極超音速無人機は2030年代、再利用可能極超音速無人機の登場は2040年代と見ている。極超音速技術が将来の航空機設計で大きな意味を有しているのは確かなようだ。
  • スマートスキンでは機体にセンサーを埋め込み、機体をセンサーにし、パイロットに各種情報を表示する。一部はF-35でセンサー融合機能として実現しており、各種センサーの戦闘関連情報を収集、統合し、ディスプレイに表示している。さらにF-35ではノースロップの分散開口システムDistributed Aperture Systemで360度の戦闘空間が見られる。同システムのカメラは機体各所につけられ、抗力低減・レーダー探知性の低下で工夫されている
Northrop Grumman

  • スマートスキンに電子装置を分散配置すれば外部に装備搭載が不要となり,機体そのものが統合レンズの役割となる。これも抗力低下に貢献し飛行速度、操縦性が向上しながらセンサー性能を引き上げられる。
  • 第六世代戦闘機のステルス技術は防空性能の向上に対応可能となる。敵側の防空体制ではデジタル処理コンピューターの連携機能で広範な周波数対応が可能となり、ステルス機も遠距離から探知可能になりつつある。
  • 新型第六世代戦闘機にはレーザーや電子攻撃能力も備わるだろう。■



2017年12月18日月曜日

★ロッキードがアエリオンと共同開発する超音速ビジネスジェットは軍用で大きな役割を果たしそう


Lockheed Likely Sees Big Military Applications Potential In

Aerion's Supersonic Bizjet

ロッキードがアエリオンの超音速ビズジェットに軍事転用の可能性を着眼

A jet that can cruise for thousands of miles at mach 1.4 will be just as

enticing to the Pentagon as it is to billionaires


マッハ1.4で遠距離巡航飛行できる同機には裕福層のみならずペンタゴンも注目

.


AERION



  • ロッキード・マーティンアエリオンコーポレーションAerion Corporationと世界初となる超音速ビジネスジェットで共同開発に乗り出すと正式に発表した。実現すれば同社の旅客機製造は30年ぶりとなる。機体はAS2と呼ばれF-104スターファイター戦闘機と727旅客機を混ぜたように見え、プライベート航空運行のみならず商用航空に革命を巻き起こしそうだ。だがまだ話題にのぼっていないが軍用にも転用可能だ。
  • 2017年12月15日、ロッキード・マーティンとアエリオンは共同声明で翌年中に両社提携の大枠を定めると発表し、技術検討と設計作業から試作機製作さらに型式証明取得を目指した製品版までを視野に入れると明らかにした。2017年5月にジェネラルエレクトリックが同様の提携内容を発表しており、同機用エンジン開発中だ。
  • 「提携は超音速時代ルネッサンスに道を開く重大な鍵となる」とアエリオン会長ロバート・バスRobert Bassも報道資料で述べている。「超音速ではロッキード・マーティンの知見が著名であり、伝説とも言える。当社はロッキード・マーティンのめざす高効率民生超音速機の長期開発で一助となりたい」
  • 「当社でアエリオンの空陸特性設計技術を検討し他ところ同社のAS2コンセプトには当社の時間・資金の投資の価値があることがわかった」とオーランド・カルヴァルホOrlando Carvalho(ロッキード・マーティン航空機執行副社長)が声明発表した。「航空宇宙技術の最先端企業として残る決意をしている当社としてもアエリオンとともに航空史の新しい一ページを開くことにわくわくしています」

AERION

  • アエリオンのAS2はエンジン三発で長時間超音速巡航を目指し、目標はマッハ1.4だ。同社は高翼案と低翼案それぞれ発表し、エンジンはそれぞれ後方に配置している。
  • AS2の航続距離はマッハ1.4で4,200カイリ(7,770キロ)の見込み。音速に限りなく近いマッハ0.95では5,400カイリ(1万キロ)となる。
  • 同社は当初はビジネスジェットとして売り込み客室内の意匠もビジネス用途を強く意識していた。客室は小型旅客機にも簡単に転用できる。
  • 2015年にフレックスジェットFlexjetが24億ドルでAS2を20機発注し、機体単価はおよそ120百万ドルとガルフストリーム650のほぼ二倍だった。この価格は上昇するかもしれないが、取得価格は販売の制約になりにくい。というのはこの種の機体では性能と運行コストこそが大切だからだ。
  • ビズジェットを使ったチャーター業界は同機の納入開始を2023年、完全運行開始をその二年後と想定しており、ロッキード・マーティンが正式に加わったことで以前の不安が解消されAS2の開発工程表は十分実現性があると見ている。

AERION

  • 航空業界に民間超音速旅客輸送に対する関心が絶えずあるのは、米空軍の伝説的人物チャック・イエーガーがベルX-1で音速の壁を破った1947年以来のことだ。ただ大きな壁は運行コストであり、騒音問題だ。また超音速飛行によるソニックブームも立ちふさがっている
  • 英仏合作のコンコード超音速旅客機をエールフランスとブリティッシュエアウェイズが1976年から2003年まで運行したが、人口稠密地帯を避けた経路を飛ぶことが多かった。運行には両国政府の補助金が投入されたのが大きい。コンコード以外にはソ連にTu-144があったが、その他の超音速機事業は実現していない。
  • アエリオンは超音速飛行の復活に向け尽力し、2004年には超音速ビジネスジェット(SBJ)構想を発表し、2017年か2018年の飛行開始を想定していた。2014年に発展させたAS2コンセプトを発表したが試作機は製造していない。
  • 同社はNASAと広範な共同研究を行い、その結果をAS2に取り入れた。中でも重要なのは表面上で滑らかかつ連続して気流を流すことで、高速度域では乱気流が発生しやすい環境でもこれは変わらない。
  • 理論上は効率的に飛行しながらソニックブームを緩和する、あるいは消滅させることは可能だ。特に後者が重要で連邦航空局(FAA)は民間超音速機の米本土上空飛行は認めておらず、同様の規制は欧州ほかにもある。

AERION
機内は6フィート2インチ(190センチ)と、高級ビジネスジェット各機より高く軍用装備
搭載にも使えるはずだ。

  • アエリオンによればAS2は複合材を主に使い、マッハ0.95巡航でソニックブームを発生させない。さらにそのままマッハ1.2まで加速可能だが「大気の状況特に気温と風力に大きく影響を受ける」と説明している。
  • この「無ブーム巡航」で超音速飛行は一変すると主張するアエリオンはFAA規制の適用除外を求めているが、道は遠いようだ。
  • アエリオンはエアバス・ディフェンスアンドスペースと機体構造やフライバイワイヤ制御系統を2014年から共同研究してきた。ところがエアバスで汚職が発生しCEOとCOOの辞任につながる事態になり、研究は中止されてしまった。
  • 「エアバスの貢献には感謝しています」とアエリオンの執行会長ブライアン・バレンツBrian Barentsが述べている。「同社がなければ事業はここまで進展できなかっただろう」

AERION


  • GEによればAS2向けエンジンの基本構造が完成したところでこれから基本設計作業を開始するという。FlightGlobalによればGE開発の高圧部をCFM56ターボファンから流用し新設計の低圧部と組み合わせるようだ。
  • 「大きな課題は高高度で稼動する超音速エンジンの取り入れ空気の高温問題です」とGEのビジネス一般航空事業の社長ブラッド・モティエBrad MottierFlightGlobalで説明していた。「簡単に解決できる問題ではなく、できていれば民間超音速飛行はもっと前に実現していたはずだ」
  • そこでロッキード・マーティンが登場する。アエリオンとは別に同社もNASAと共同で静かな超音速技術の実証機を製作しており、QueSSTとして知られる。目標はマッハ1.4、高度55千フィート飛行でソニックブームを地上では「心臓の鼓動」程度にしか聞こえない音にすることだ。

NASA
QueSST

  • NASAはロッキード・マーティンと初期設計案を検討し、機体設計図と風洞試験結果を2017年早々に完成させた。有人実験機として2021年に初飛行する。
  • 超音速飛行に多大な知見を有するロッキード・マーティンにはA-12/SR-71スパイ機、提案に終わったL-2000旅客機、戦闘機各種、極超音速戦闘機材さらに極秘プロジェクト数件もあり、QueSSTの共同事業社として魅力的な企業だ。見返りに同社はで期待したほどの成功が得られなかったL-1011トライスターで1980年代以降放棄してきた民生航空機事業の復活への道をさぐることになる。
  • 両社がAS2を実現させれば、ロッキードには世界初のビジネスジェット機の同社ジェットスター投入時より大きな意味が生まれる。ジェットスターはケリー・ジョンソンの作品のひとつで航空業界に新しい部門を創設することでも似ている。AS2が実現すれば米軍にも魅力あふれる機体になる。

MUSEUMOFAVIATION.ORG
VC-140は民間ジェット移動に新時代を開いたロッキード・ジェットスターの軍用版だ。

  • マッハ1.4で長距離飛行可能なビジネスジェット機が生まれればUSAFに多大な意味が生まれる。長距離移動の時間を大幅に短縮でき、空中給油能力を付与すれば大きな意味が生まれる。
  • VIPや緊急装備など少人数の世界各地展開だけでなく、戦術面で監視偵察や電子戦支援用途にも投入できれば有益だ。AS2にしかできない性能をこうした任務に投入すれば接近阻止領域拒否(A2AD)に直面する米国や同盟国も対応が容易となる。

DOD
ガルフストリームC-37 (GV) とC-20 (GIII/GIV) がペンタゴンの高速庁k慮移動タクシーに使われて
いる。AS2ではより高速な移動手段隣、特殊任務にも有益だろう。

  • 太平洋では主要地点の距離が長く、しかも中国が人工島上の施設整備で米軍の航空機艦船を妨害するなかで難易度が高くなってきた。だがAS2なら高速物資補給や支援用機材として広く活用でき、遠くはなれた地点間を結ぶことは絶対必要なのだ。
  • AS2を電子戦支援に投入しステルス攻撃機の後方を飛行させればスタンドオフジャミング支援やサイバー攻撃用機材として敵防空網の機能を低下できる。最終目標は無害な通行路を作り、脆弱な各機を敵沿岸地方に接近させることにある。
  • 無給油で戦闘半径が2,200マイル(3,500キロ)程度のAS2なら敵防空網の外側から重要な敵の電子情報を吸い上げながら、一体型レーダーで敵領土内部を探知できるだろう。高速ダッシュで進入撤収するため残存性は保証される。
  • つまりF-22ラプターのような超音速準高機能がありながら飛行距離が長大なAS2は戦闘作戦空域を「縮める」効果を生み、戦術・兵站面で新しい可能性を生む。あるいはAS2をもとに「運動性」攻撃手段の母機が生まれる可能性もある。
  • アエリオン公開の画像を見ると機体には機首降着装置から主脚までが兵倉庫にぴったりなようだ。ただし相当小ぶりの兵装扉にするか射出式の兵装搭載にして、時間が貴重な攻撃時の機能を提供するのだろう。小口径爆弾やスタンドオフ兵器一発を搭載すしても迅速攻撃用機材として柔軟かつ容易に運用できるだろう。
  • AS2が生産されれば、ロッキードとアエリオンは販売に苦労することはなさそうだ。裕福なうえに裕福な層や社用族にとって時間が一番貴重な資源であり、アエリオンはタイムマシンを提供するようなものだ。
  • 同機が稼動すればビジネスジェット市場に波乱を呼びそうだ。現在は737改装のボーイングビジネスジェットから757改造はては747-8iまで大型プライベートジェットになっている。確かに潤沢な機内スペースは魅力的だが、目的地に半分の時間で到着できるほうがありがたい。だが軍用用途では時間とは生と死の差でしかない。つまり敵よりわずかでも有利な状況がほしいので、AS2は民間航空同様に軍用用途でも重宝されるはずだ。ここまでを頭に入れた上で、ロッキードのスカンクワークスが軍事転用に関係しても驚かないように。
  • ロッキードとアエリオンがこれまで多くの業者が失敗してきた超音速民間プライベートジェットを市場販売に成功できるかお手並み拝見というところだ。■


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中国の南シナ海既成事実の積み上げに警戒を

  • どうも我々は多方面へ同時に関心を示すことが下手なようです。イラン、イエメン、サウジアラビアと注意が必要な地点は増える一方ですが、北朝鮮はともかく、モリカケだ、お相撲だ、はては有名人のスキャンダルだと騒ぐ一方で見えなくなっていく対象がいかに多いか。中国は既成事実の積み上げに余念がありません。地上設備などミサイルで一掃できると米軍が思っているかもしれませんが、オセロで言えば隅の要所を取られてしまったと思えてなりません。南シナ海を抑えた後は東シナ海、本命は沖縄でしょう。かつて日本企業が長期的に物事を考えているといわれていましたが、中国共産党はもっと長い視野で考えているのではないでしょうか。もっと警戒が必要です

As tensions ease, China keeps building on disputed islands

緊張緩和の一方で中国は引き続き問題の島しょで建設工事を強行中


CSISのアジア海洋透明性確保事業がDigitalGlobe と共同で公開した画像では南シナ海スプラト

リー諸島で中国が2017年になり構築した建築物を区別して表示している。(CSIS Asia Maritime

Transparency Initiative/DigitalGlobe via AP)





WASHINGTON — 南シナ海での中国人工島建設による緊張が鎮静化の観がある
が、中国は建設工事を依然として続けている。
  • 新たに公表された衛星画像では中国がスプラトリー、パラセル両諸島で2017年に構築した建築物は延べ72エーカー(28ha)に及び、海軍空軍基地にしようとしていることがわかる。
  • ワシントンンに本拠を置くアジア海洋透明性確保構想Asia Maritime Transparency Initiativeが南シナ海の動向を逐一追っており、中国他数か国が領有権を巡り対立している様子を監視している。12月14日に同団体から中国による格納庫、地下諸侯施設、ミサイル収納陣地、レーダー施設等の建設の最新状況が発表された。
  • 中国と東南アジア各国とで南シナ海の「行動規範」を形成する交渉が長引く間に中国の活動が進展している。米国と緊張が緩和した観があるが米政府は中国の行動を批判していることに変わりはない
  • スプラトリー諸島では2016年初めに埋立て造成工事が完了し現在は建築物構築工事が続いている。同諸島領有を主張するのはマレーシア、台湾、フィリピン、ヴィエトナム、ブルネイもある。ペンタゴンによれば中国は同地区で合計3,200エーカー(1,248ha)を造成した。
  • パラセル諸島では中国の拡張工事をは停止中のようだと同団体は説明。
  • 米国はじめ各国が中国が同地区を軍事転用していることを非難し、南シナ海各地で地形変更したことも非難の対象だ。中国の言い分はスプラトリーの人工構築物は主に民生用で漁業や海上交通の安全確保用とするが、滑走路や軍事施設が整備されている。
  • 同団体役員のグレッグ・ポーリングGreg Polingによれば中国はフィリピン大統領ロドリゴ・デュテルテ当選の機会をとらえ新大統領の中国への対話路線を利用した一方でトランプ政権が北朝鮮核問題や中国との交易問題に忙殺されているのをいいことに同政権は軽くあしらってきたと解説。
  • 「一面見出しに出なくなりましたが中国が軟化したと誤解してはなりません。中国は目指す目標に向けて建設工事を継続中です」(ポーリング)

This image provided by CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe shows a satellite image of Woody Island in the Paracel island chain in the South China Sea taken Nov. 15, 2017, and annotated by the source, showing two Chinese Y-8 military transport aircraft. (CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe via AP)
CSISのアジア海洋透明性確保事業がDigitalGlobeと共同で公開したパラセル諸島のウッディ
島の画像(2017年11月15日)ではY-8軍用輸送機二機が見える。 (CSIS Asia Maritime
Transparency Initiative/DigitalGlobe via AP)


  • スプラトリーで一番目立つのがフィアリークロス礁での建設工事で格納庫群のわきに3千メートル滑走路があり、地下貯蔵庫はおそらく武器等用で、強化掩体壕はミサイル部隊用で他に通信レーダー施設が確認されると同団体は述べる。
  • またパラセル諸島内のウッディ島に新型軍用機が飛来している。10月末に中国軍はJ-11B戦闘機部隊が同島に訓練展開した時の写真を公表した。11月にはY-8輸送機が同島で視認されており電子情報収集活動に従事したのだろう。
  • ペンタゴン報道官クリストファー・ローガン海兵隊少佐Marine Lt. Col. Christopher Loganは12月14日に米側情報解析結果の詳細に触れることはできないが「これ以上の軍事化が進めば緊張が高まり各方面の不信を招くだけ」と述べている。
  • 米国は南シナ海に何ら領有権を主張しないが領有権をめぐる対立は国際法に則り平和的解決を求め航行の自由、上空飛行の自由の保証が欠かせないとの立場だ。中国はアジアの問題に米国が介入するものだとして反発している。■