2018年1月16日火曜日

★仏ラファールを米空母で今春運用

軍事活動はいよいよ多国間で展開する時代に入っていますね。これが進むと国家間で

装備の共同保有、運用へ発展し、そのうちに軍の組織構造も変わるかもしれません。

当然安全保障の概念がも変わりますが、東アジアでは当面この動きは出ないでしょうね。

French Rafale Fighters to Deploy on Carrier USS George H.W. Bush This Spring 

フランス海軍ラファール戦闘機をUSSジョージ・H・W・ブッシュ艦上で今春運用



フランス海軍のラファールマリンがUSSドワイト・D・アイゼンハワー(CVN-69)艦上で編隊飛行を見せた。Dec. 8, 2017. US Navy Photo


 By: Ben Werner
January 10, 2018 4:50 PM • Updated: January 10, 2018 5:36 PM


ARLINGTON, Va. – フランスは航空要員含む350名を米海軍空母に今春搭乗させる。フランス関係者がUSNI Newsに語った。
 4月から5月にかけFSシャルル・ドゥゴール(R91)は2015年から始めた大修理が完成する予定で航空要員はUSSジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-71)で飛行適性検定を受ける。ただし狙いは検定以外に相互運用の確認とジャン・エマニュエル・ルデルゼ大佐Capt. Jean-Emmanuel Roux de Luze(在米大使館付け海軍武官)がUSNI Newsに語ってくれた。
「米軍との共用運用能力をお見せしたい」と大佐は延べ、「機体整備と兵装搭載の実力をお見せする」
 フランス海軍のダッソー・ラファールM戦闘機、ノースロップ・グラマンE-2Cホークアイはまずオシアナ海軍航空基地(ヴァージニアビーチ)で米航空隊と飛行を開始する。フランス海軍要員は米側と機体整備に取り組むとルデルゼ大佐は説明。その後、フランス部隊はブッシュ艦上に移り、航空隊の一部となる。
 フランス海軍の機材、人員を米海軍で運用する案は昨年12月に発表されており、米海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将Adm. John Richardsonがパリでフランス海軍参謀総長クリストフ・プラザック大将Adm. Christophe Prazuckと会談し合意していた。


フランス空母シャルル・ドゥゴール所属F-1ラファールをUSSハリー・S・トルーマン (CVN-75) 艦上で誘導する米海軍要員。2014年撮影。 US Navy Photo


 水上艦艇協会の国際海軍昼食会で講演したルデルゼ大佐は共同運用で両国海軍間に信頼を醸成しながらそれぞれ補完できる効果を示すことが狙いと述べた。米海軍にとは技術、手順、通信機器が基本的に共通しているという。
 「現時点で95%の相互運用体制にあり、当方の関心はあと10年15年後もこの態勢を維持することにあります」
 米海軍は技術面で他の追随を許さない地位をたえず模索し、新装備開発の先頭を走る。ルデルゼ大佐も米海軍は他国部隊より一歩抜きんでいると認める。「米海軍は規模と戦力微値bbでわが方を必要としておらず他国海軍の手助けも必要としない」
 ただし政治的には米国は多国籍軍やNATO作戦での作戦で正当性を確保する必要があると大佐は指摘。


フランス空母シャルル・ドゴール所属のラファールが空母運用適性検定の一部としてUSSハリー・S・トルーマン(CVN-75)で発艦に備える。2014年撮影。 US Navy Photo

 「フランス海軍は他国海軍部隊と共同作戦を拡充する予定なので他国部隊との共同運用を学ぶ必要がある」とルデルゼ大佐は述べた。

 フランスは対ISIS多国籍軍の空爆作戦で2014年以来大きな役割を果たしている。2015年にドゴールはパリの風刺雑誌シャルリ・エブド編集部がISISに襲撃されたため作戦投入された。同空母はそのほか二回にわたり中東で対ISIS作戦に従事している。■

2018年1月15日月曜日

★ボーイングが極超音速機コンセプトを公表、ロッキードSR-72に対抗

 

ボーイングが積極的に新技術を公開しています。立て続けに発表できるのはそれだけ多くの研究開発が背後にあるからでしょう。特に極超音速技術の開発はピッチが上がってきましたので注目です。まずBusiness Insiderの記事です。



Boeing unveils conceptual hypersonic jet design to replace the SR-71 Blackbird

ボーイングがSR-71ブラックバード後継機となる極超音速機設計案を公開
Boeing hypersonic concept SR-71Boeing
  • ボーイングがSR-71ブラックバード後継機を狙う極超音速機のコンセプトモデルを公開
  • マッハ5以上を狙う
  • この性能の機体はまだ製造実績がない


ボーイングがSR-71ブラックバードの後継機とされる新型極超音速機のコンセプトモデルを公表したとAviation Week Aerospace Dailyが伝えている。
コンセプトモデルはオーランドで開かれたAmerican Institute of Aeronautics and Astronauticsの科学技術フォーラム会場で展示された。
「このコンセプトと関連技術は極超音速ISR/攻撃機を想定しSR-71と同じミッションを想定しました」とボーイング広報サンドラ・アンガースがBusiness Insiderに伝えている。「SR-71後継機を目指しています」
「実証機に至る前のコンセプトモデルですが再利用可能な極超音速機の製造は未踏の分野」とアンガースは述べ、「当社は高度技術分野に常に挑戦し顧客からの発注に備えております」
アンガースは次世代機はマッハ5超となるとも述べている。ボーイングの極超音速分野の主任技術者ケヴィン・ボウカットはAviation Weekに極超音速機設計が着々と進んでいると述べている。
ボーイングは防衛産業最大手の一角であり、米国内で大きな政治影響力を誇る。
SR-71SR-71 Wikimedia Commons
Aviation Weekではボーイングが「F-16程度の大きさの単発実証機のフライトテストではじめ、その後双発でSR-71とほぼ同寸の実用機に移る二段構えの対応を想定している」と述べたと報じている。
ボーイングはすでに極超音速飛行を無人機X-43、X-51で実験を行っている。
このうちX-51は2013年にマッハ5.1を三分間維持し海中に没している。ただし、X-51はB-52母機から投下されブースターで加速してマッハ5.1を記録している。
これに対して今回のコンセプトモデルは自力で離着陸する想定で難易度が高い課題に挑戦する。
ロッキード・マーティンもSR-71後継機をSR-72として開発中で2020年にテスト開始を狙う。■
ではそのAviation Weekの記事を見てみましょう。


Boeing Unveils Hypersonic ‘Son-Of-Blackbird’ Contender

ボーイングが極超音速の「ブラックバード二代目」競合策を公開

Hypersonic vehicle design: Guy Norris


Jan 11, 2018Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report


極超音速技術の研究開発が米国で急速に進展する中、ボーイングが初の再利用可能マッハ5超実証機の設計案を発表し、将来の超高速攻撃偵察機へ道を拓こうとしている。
デルタ翼で後退角が大きなコンセプトモデルは二十年にわたるボーイングのX-43、X-51A極超音速実証機研究の流れをくむ。その他のボーイングの超高速飛行技術の実績も反映しており、マッハ3のXB-70実験爆撃機もそのひとつだ。ロッキード・マーティンが2013年にSR-72と同じくボーイングもSR-71ブラックバード偵察機の後継機を狙う構想を発表している。
「再利用可能極超音速機で一番実現性が高い形態はなにか。そこで独自に研究を開始しこの答えを探しました」とケヴィン・ボウカット(ボーイング極超音速技術主任研究者)は語る。コンセプトから実寸大開発に進めば、ボーイングは二段構えでテストを開始しF-16サイズの単発機をまず製造してから双発実用機に進み、107フィートのSR-71と同様になる。
ボウカットによれば尾翼二枚でウェイブライダー形状の仕様が極超音速機に進展しつつあり、「通常の形で離陸してマッハ1からマッハ5への加速は生半可ではありません。空気取り入れ効率は速度が上がるにつれ低下しますのでマッハ5ならエンジンは相当大きくしなければなりません。しかし空気取り入れ口もノズルも大きくなり、マッハ1突破だけでも困難になります」
だがボウカットは機体と推進系の設計に学際的設計最適化multidisciplinary design optimization (MDO)を取入れ、多様な分野の技術を同時採用することでボーイングは実用的な仕様を実現したと語る。MDOはX-51Aでも採用された。
X-51Aウェイブライダーは空気取り入れ式機で極超音速飛行を始めて持続した機体だ。
ボーイングは自社費用で極超音速飛行研究を開始したが、現在はDarpaの全域高性能エンジンAdvanced Full Range Engine (AFRE)構想と関連したタービンコンバインドサイクルturbine-based combined cycle(TBCC)飛行実証を進める米空軍研究開発本部(AFRL)の下で研究を続けている。ボーイングはエンジンパートナーにオービタルATKを選定し、オービタルは2017年に21.4百万ドルでAFRE研究契約を交付されている。ボーイングは2016年にAFRLのTBCC飛行実証機コンセプト作成を開始し、オービタルATKに作業を委託している。
機体仕様はTBCC推進系により大きく影響を受ける。TBCCでは従来型タービンエンジンにラムジェット/スクラムジェット(DMRJ)を組み合わせる。タービンエンジンでまずある程度のマッハ数にしてからDMRJに移行する。エンジンは空気取り入れ口とノズルを共有し、移行後はタービンは保護カバーに覆い着陸まじかで減速時に再始動する。取入れ口にはXB-70で採用した分離板が採用されているとボウカットは述べており、TBCCは推進方式の候補の一つに過ぎないとする。ノズルも分離されている。
「推進系で機体長が決まります」とトム・スミス(ボーイング極超音速機開発技術研究主任)も言う。ボーイングは設計原案の詳細を明らかにしていないが、取り入れ口が広く、ナセルが機体下についていることからTBCCエンジンのタービンとDMRJは並列搭載されているようだ。
取入れ口が内側を向くのは機首で生まれる衝撃波を吸収する狙いがある。機体前方のチャインが鋭角で大きなデルタ翼に繋がっていることからウェイブライダーとしての極超音速効果とともに離着陸時の低速時の揚力効果を期待する。ウェイブライダーとは衝撃波に波乗りし抗力が減る効果を期待することをさす。「チャインが主翼につながり良好な空気の渦が生まれます。低速時にこの渦に注意が必要です」(スミス)■


さすがAviation Weekは航空力学にも言及していますね。ビジネスマンにはそこまでの情報は必要ないということでしょうか。Business Insiderもコンパクトながら重要な情報はちゃんと伝えていますね。両誌とも今後もフォローしていきます。

2018年1月14日日曜日

極秘衛星ズーマ打ち上げは本当に失敗したのか

Aviation Week & Space Technology

Analysts Disagree About Classified Sat Zuma’s Fate

極秘衛星ズーマの打ち上げ結果で見解が食い違っている


Jan 11, 2018Irene Klotz | Aviation Week & Space Technology

1月7日午後8時にスペースXのファルコン9がケイプカナベラルAFSから打ち上げられ極秘の米政府ペイロード(コードネーム、ズーマ)を打ち上げた。その後から話が見えなくなった。
東アフリカ上空を飛行中のパイロットがロケットの上段が減圧され推進剤を放出する様子を撮影していた。打ち上げ後およそ2時間15分後のことだ。オランダの科学者にして衛星ウォッチャーのマルコ・ランブロークMarco Langbroek,が衛星観察者メイリングリストSeeSat-Lに寄稿したところによればズーマの軌道は高度900から1,000キロので赤道から50度南北に傾いているという。
しかしメディア報道では匿名の情報機関関係者や業界筋を引用して宇宙機は二段目から分離に失敗し大気圏再突入しインド洋南方に墜落したと伝え始めた。
スペースXは本件に関し情報を遮断しており、1月9日に以下短い声明文を発表しただけである。「事実を明確にするため、これまでのデータを整理するとファルコン9はすべて正常に作動していた」と同社社長グウィン・ショットウェルGwynne Shotwellが発表。
「当社あるいは外部で詳しく検討した場合は直ちにご報告する。この声明内容に反する情報が発表されているが全くの誤りと断言しておく。ペイロードが極秘のため、これ以上言及できない」と述べた。
これまで解析したデータでは設計、運用等で変更の必要は認められないとし、今後の打ち上げに影響を与える要因はみあたらないという。
米空軍とノースロップ・グラマンは非公開の政府機関向けに同衛星を製造したがコメントを拒否している。国家偵察局もズーマは同局ミッションと無関係という。
ズーマは北米防空司令部が登録するだけの長期間にわたり宇宙空間に残った。つまり地球周回軌道飛行を最低一回は行っているとハーヴァード大の宇宙物理学者ジョナサン・マクダウェルJonathan McDowellは解説し、「仮説ですがズーマは二段目から切り離しされないままで軌道に残ったため登録番号を振られたのですが、その後軌道を外れたのだと思います。ただし非常にわかりにくい状況」と述べている。
産業界の専門家筋はズーマのペイロードアダプターが作動しなかったと見ている。これもノースロップ・グラマン製だ。だがす全員がその通りには考えていない。「衛星が地球に落下すれば壮大な見ものとなりますがズーマはまだ作動中でしかも正常に作動しているのでは」とSeeSat-Lの管理人で本人も長期にわたる衛星ハンターのテッド・モルカザンTed Molczanは語る。
モルカザンは仲間とまだ行方を追っている。「二週間すれば北半球で飛行経路がはっきりするでしょう」とランブロークも述べている。■

日米世論調査で浮き彫りになった日米国民の核兵器のとらえ方の違い

日本では核の話題になると必ず被爆者、福島と言った心情問題が先立つ傾向が日本にありますが、選択肢としていかに非効率だとしても最初から除外していたのでは現実問題に真剣に対処していると言えないでしょう。米核兵器に頼り、米国を「番犬」扱いすることがいつまでも続く保証もありません。考えてはいけない、ではなく考えられないことを考える思考空間を確保することが肝要ではないでしょうか。


Pollster: Americans Willing to See a Nuclear Armed Japan to Deter North Korea 世論調査で米国が日本核武装で北朝鮮抑止効果を期待していると判明した

North Korean KN-14 Launch on July 4, 2017. KCNA Photo

January 10, 2018 9:16 AM
国世論調査で米国人が日本を核兵器運用国にする、米核兵器を日本・韓国に配備し北朝鮮への抑止効果を期待することに前向きとわかり、調査を実施した日本側に「ショッキング」な結果になった。
 ブルッキングス研究所で言論NPOの工藤泰志代表が講演し日米同時実施した北朝鮮核危機への調査結果から自衛隊の「核兵力保有を真剣に議論」が政府内部に生まれる可能性に触れた。
 工藤代表は米国民の意見は以下の二点で日本と大きく異なるとした。安倍晋三首相がめざす憲法改正で自衛隊を合憲にすること、および日本国外での自衛隊投入だ。
 国防長官ジェイムズ・マティスは緊張の高まる中で日本と韓国に対して米の「核の傘」があるから安心と伝えている。
 まもなく長官就任後一年になるが、長官は日本の世論調査結果から核兵器保有へ前向きな意見が増えていると指摘。核兵器を受容する意見はまだ9パーセントと一般的ではないが、前回の5.1パーセントから増えている。
 質疑応答で北朝鮮に関して「非核化が多くの日本国民の唯一の選択」で、「平和的解決が最良」だが問題は北朝鮮核兵器開発や長距離弾道ミサイルテストを「どうしたら凍結できるのか」だとした。
 世論調査結果では日本では68パーセントが日本、韓国の核武装化に反対し、辛うじて過半数が米核兵器の日本あるいは朝鮮半島持ち込みに反対した。
 この調査で米国でパートナーとなったメリーランド大のシブリー・テラミShibley Telhamは日本側回答の7割が北朝鮮を核保有国と認めることに反対している点に注目。また日本では63パーセントがトランプ大統領の危機対処は極めて望ましくない、やや望ましくないと答えている。回答ではトランプが金正恩同様に世界の安全に大きな脅威だと見ている。
 日本はトランプ、あるいは米国を危機解決の多国間協議の推進の力はないと見る。言論NPOは日本成人千名、メリーランド大は米国民2千名を対象としたがともに大多数が多国間交渉で核兵器・ミサイル問題を解決すべきと考えていると判明した。
 ただしテラミは軍事力行使について米国民の意見が鋭く分かれていると指摘。共和党支持者の53パ―セントは実行オプションと考えるものの全体としての米国人で軍事行動支持は32.5パーセントにとどまった。日本ではほぼ半数がいかなる軍事行動に反対している。
 調査方法は日本では回答シートを回収したが、米国では電子メールと電話回答を使った。
 今回の合同調査および韓国国内の最近の調査とおりなら朝鮮半島の現状維持で金正恩を権力の座にとどめ、北朝鮮に核兵器保有を認め、米国は韓日両国と同盟関係を維持し、国連安保理の経済制裁を残すことがすべて続きそうだが、現在の危機状況の解決にはつながらない。
 例えば韓国の「北のいとこ」への視点は「今は大いに恐れ大いに否定的」だとリチャード・ブッシュRichard Bush(ブルッキングス研究所)は述べ、今週に始まった南北会談で冬季五輪への北朝鮮参加は実現してもそれ以外は大した成果は期待できないと加えた。「そもそも北朝鮮指導者は対話を真剣に望んでいるとは思えない」
 当日の司会進行をしたブルッキングスのマイケル・オハロランMichael O’Halloranは目標はあくまで「北朝鮮核兵器製造を凍結させること」で核兵器より広範囲を対象にし、北朝鮮には食料援助や貿易支援以上の「あまり多くを与えない」ことだと述べた。

 「米国の選択肢に軍事演習の実施回数制限があります」とし、参加兵員数や回数を軍事当局者同士で協議しながら保安体制や即応態勢には影響を与えない方法があると述べた。■

2018年1月13日土曜日

日曜特集 日本が橘花をもっと早く実戦化していたら太平洋戦はどうなっていたか

良くも悪くも当時の日本の技術を体現しているのが橘花ですが、そもそもジェットエンジンが注目されたのが粗悪な燃料でも運用可能なこと、精密な内燃機よりも構造が簡単なためであったはずで、ひっ迫する状況の日本では論理的に正しい選択だったのですね。また、戦時末期に陸軍、海軍の航空兵力を統合する構想があと一歩で実現しそうだったのですが、この「空軍」が橘花から派生したもっと高性能機を運用していたらと考えるのは楽しいですね。

Could This Japanese Jet Fighter Have Won the Pacific War?

このジェット戦闘機で日本は太平洋戦争に勝利した可能性があったのか
January 12, 2018


二次大戦でジェット戦闘機開発に成功したのはドイツだけというのは誤りだ。ドイツが最先端を行っていたのは事実だが、主要国はすべて戦時中に開発を進めていた。日本も例外ではない。
よく知られており、実戦投入された日本機は桜花だけだが、これはロケット推進で有人操縦のカミカゼ兵器だった。だがもう一つ日本には終戦までに飛行にこぎつけたジェット機があり、その時点で終戦しなければ戦闘投入されていたはずなのが中島の橘花である。
日本の科学陣はジェットエンジンを1930年代から研究していたが、政府の支援はほとんどないままで1943年にはターボジェットを完成していた。日本はドイツでMe-262ジェット戦闘機が1942年に開発されたことは承知していたが、1944年夏に米B-29爆撃隊が日本本土を空襲するに至り、日本海軍は皇国兵器第二号橘花の実現を求めた。
橘花がMe-262に似ているのは偶然ではない。また単なる模倣でもあない。日本のジェット機開発は多くをドイツの研究成果に依存していたが支援はほとんど得ていない。1944年7月にルフトヴァッフェ司令ヘルマン・ゲーリングの命令で日本にMe-262の青写真、ユンカース・ユモ004、BMW003の両ターボジェットエンジンの青写真、さらにMe-262実機も提供することになった。
だがドイツから日本へ運送中の潜水艦数隻が米軍に沈められてしまうが、BMW003エンジンの断面図のみ日本に届く。(当時はエンジンの信頼性が低くエンジン情報の方が重要視された) これだけで日本技術陣はネ-20ターボジェットエンジンを製造し、橘花が当初搭載を酔え地下純国産のネ-12より高性能と判明した。
橘花に驚くべき点が二つある。まず同機はMe-262小型版に見えることだ。類似点は内部にもみられる。橘花はMe-262の後退角主翼は採用していない。もう一つは同機がもともとカミカゼ攻撃用に設計されたことだ。「神風(しんぷう)攻撃に合わせ初期設計には着陸装置はなく、RATO(ロケット補助離陸)でカタパルト発進を想定していた」と航空史家エドウイン・ダイヤ―が記している。「計算上の飛行距離は204キロしかなかったのはネ-12エンジンの燃料消費がすざましかったためだ。海面上最高速度は639km/hだった。爆弾一発を搭載するだけの武装で、主翼は折り畳み式で洞穴などに隠し攻撃を避ける構想だった」
1945年3月に橘花の任務は戦術爆撃機さらに迎撃機に変更され、30mm機関砲を搭載しネ-20エンジンに変更された。(ただし金属材料の不足でネ-20エンジンの性能が制約されていた) だが難関は生産だった。本土空襲が続く中で機体、エンジンの製造工場も被害を受けていた。それでも同年8月7日に高岡中佐が初飛行に成功した。8月11日の第二回飛行で着陸に失敗し、試作機は修復不可能になってしまう。
計画では1945年末時点で橘花500機を製造するはずだったが、8月15日の日本降伏で実現しなかった。結局完成した機体は一機だけだった。
橘花はMe-262と比較するとどうなるか。Me-2262A1Aの最高速度は540マイルで米軍P-51Dマスタング(最高速度437マイル)を引き離した。橘花の迎撃機型は最高速度443マイルを想定していたので、ほぼマスタングと同等で、しかも第二次大戦時のジェット機は機体操縦性とエンジン信頼性が劣っていた。
しかしそもそもこの日本ジェット機で太平洋戦争の行方が変わっていただろうか。その答えではドイツを見るのが一番わかりやすい。Me-262は1,400機が製造され、一部が1944年11月から1945年5月にかけて戦闘投入された。連合軍には厄介な存在であったが、結局第三帝国を救うことはできなかった。連合軍機が多すぎたこと、英米空軍部隊がMe-262基地を常時哨戒し脆弱な離着陸時をねらったこと、それにドイツ本土が連合軍戦車部隊に席巻されたことが理由だ。
ドイツより日本の燃料事情、原材料供給は厳しく、ドイツ以上の活躍はできなかっただろう。橘花は米軍機に圧倒されていたはずだ。もし実戦化が早期に実現していれば、1944年のフィリピン戦線などで結果が違っていたかもしれない。ただし橘花の航続距離が短いため太平洋戦線で必要とされた長距離戦には不向きだっただろう。橘花は本土防空専用とし昼間のB-29空襲を迎撃していただろうが、米軍が夜間空襲に切り替えたためレーダーを搭載しない橘花は対応できなかっただろう。
Me-262同様に橘花もあまりにも機数が少なく登場が遅かった。ご関心の向きはダイヤ―の著書をご覧ください。

Michael Peck is a contributing writer for the National Interest. He can be found on Twitter and Facebook.
Image: Wikimedia Commons

★ドイツ空軍トーネード後継機巡る意見対立を考える

ドイツがめざすトーネード後継機については前もお伝えしていますが、今回は任務から考えてみようというIISSの提案です。自由落下式の核爆弾運用など自殺行為にしか思えないのですが、NATOとしては自らの主張として米核戦力の一部であってもその存在そのものに意味があるのでしょうね。そして文末にあるように今や独仏でさえ戦闘機を共同開発する時代になっているのですね。

Dogfight over Berlin: Germany’s Tornado replacement aspirations

ベルリン空中戦:ドイツのトーネード後継機候補を巡る意見対立

Germany’s selection of a future combat aircraft for the air force may not be a binary choice.


ドイツの選択は二者択一にならないかも


German Tornado jet. Cedit: CARSTEN REHDER/AFP/Getty Images
By Douglas Barrie, Senior Fellow for Military Aerospace
Date: 21 December 2017


フトヴァッフェ上層部とドイツ国防省の間でトーネード後継機にヨーロッパ産米国産いずれの機材を導入すべきかで意見が分かれている。空軍側はF-35を、国防省はタイフーンをそれぞれ推す。ただし議論の出発点がまちがっている。
機種より任務で考えた方が選定の透明度が高まる。ルフトヴァッフェでトーネードは核・非核両用のペイロードを搭載する。核任務はNATOの重要な機能でトーネードはB61核爆弾を搭載する。ドイツがこの任務を続けるのであればトーネード後継機にも同機能が必要となる。
ルフトヴァッフェで運用中のユーロファイター・タイフーンは核兵器運用配線がない。この事は開発当初から認識されていたが実装されなかった。タイフーンに核爆弾投下能力を付与するのは可能だがコストがかかる。ヨーロッパ産業界は3億から5億ユーロと見ている。また米側が同機の構造・システムに細かくアクセスを求めてくる可能性もある。さらに関係者は型式証明が長くて7年かかると見る。仮に型式証明がスムーズに行ってもルフトヴァッフェ工程表ではトーネード後継機導入開始を2025年と見ており、2030年までに完全に交代させる想定なのだ。
ドイツ空軍のトーネードが核・非核両用になっていることがNATOの核抑止力の一部であり、その効力を有効にするためには十分な信頼性が必要だ。運用が自由落下式核爆弾なら戦闘航空機や高性能地対空ミサイルが候補になる。長距離スタンドオフ兵器は想定外で、低視認性戦闘機材なら目標地へ接近すしやすくなる。
ただし考え方を変えればトーネードの核・非核任務を少数のF-35とそれよりは多いタイフーンに分担させれば、空軍と国防省の対立は解消できる。前者に核運搬任務でB61-12爆弾を搭載し、通常攻撃にも低視認性を利用してあたらせる。一方でトーネードが行っている対地攻撃はタイフーンに任せる。
にもかかわらずルフトヴァッフェはトーネード後継機探し以外に、タイフーン後継機も長期的に模索することになる。次世代戦闘航空システム(FCAS)の検討作業で当初は新型戦闘航空機材の導入を2035年開始と見て対地攻撃能力を重視していたのはトーネード後継機を意識したためだ。だが考えたかが2017年に変化しF-35が支持を集めるようになった。ドイツの長期的戦闘航空機材の要求内容ではタイフーン後継機に空対空戦闘能力の実現が求められている。就役開始は2045年に先送りされている。
FCAS検討はフランスと共同作業で、就役開始時期はフランスの求めるラファール後継機の供用開始時期にあわせているが、F-35の導入コストと新型戦闘機の調達のコストで格差が拡大する傾向にある。■



This analysis originally featured on the Military Balance+, the new IISS online database that enables users in government, the armed forces and the private sector, as well as academia and the media, to make faster and better-informed decisions. The Military Balance+ allows users to customise, view, compare and download data instantly, anywhere, anytime

2018年1月12日金曜日

ロシアが海中ケーブルを切断したらインターネットはどうなるのか

では本当にロシアが海底ケーブルを切断したらどうなるか。点にご関心の向きは以下をご覧ください。米誌Wiredの記事です


WHAT WOULD REALLY HAPPEN IF RUSSIA ATTACKED UNDERSEA INTERNET CABLES

ロシアが海中インターネットケーブル線を切断したらどうなるのか

デンマークを通過するロシア原子力潜水艦Dmitrij Donskoj July 2017.
 MICHAEL BAGER/AFP/GETTY IMAGES
01.05.18
07:00 AM


夢のシナリオになる。テロリスト集団あるいは極悪国家が世界のインターネット利用を妨害しようと海中の光ケーブルを切断したとしよう。
 米海軍は何年も前からロシアが海底ケーブルを攻撃対象にしたら大変な事態になると警告している。ロシアがケーブル敷設場所付近をうろつくのが目撃されている。英国の最高位軍人も12月にロシアが回線を切断すれば「ただちに壊滅的になる可能性のある」効果が生じると述べた。NATOは冷戦時と同様の指揮所を復活させロシアのケーブル付近での活動状況を北大西洋で監視しようとしている。
 グローバルに伸びるインターネットが使用不能になれば、恐ろしいことだ。だがロシア他がケーブル数本を切断してもその結果は軍部が言うほどの結果にならないと述べる専門家もいる。確かに世界のインターネットインフラは脆弱だが最大脅威はロシアではない。
 「妨害工作でケーブルが妨害工作を受ければ不安だというのは誇張しすぎだ」と語るのはニコール・スタロシエルスキ Nicole Starosielski・ニューヨーク大教授でインタネットケーブル研究に詳しく著書もある。「システムの作動原理を理解して正しく攻撃されればシステム全体が妨害される。しかしその可能性は極めて小さい。懸念と恐れは理解できるが実際の脅威とは全く違う」
 たとえばケーブルの亀裂は普通に発生している。推定428本ある海底ケーブル世界網では毎日どこかで損傷は発生している。ほぼ全数が事故であり意図的ではない。海底地震、地滑り、投錨や舟艇による損傷だ。だからと言ってケーブルの人為的妨害が不可能なわけではない。ヴィエトナム沖合で2007年に漁民が27マイルに及ぶ光ケーブルを引き上げてしまい、数か月もインターネット運用に影響が出たことがある。(この場合も途絶ではない。同国はもう一本ケーブルが利用できたためだ)
 ケーブルに故障があっても気づくことはない。とくに米国のような国に暮らすと利用中のサービスはただちに別ルートに迂回するためだ。ルーマニアのような国に住む友人とスカイプでやり取りしている間に漁船あるいは錨がケーブルを裂くと三分の二までなら作動し、通話は単純に別回線を介して続く。ヨーロッパ、米国、東アジアでは多数のケーブルが同じ経路上に走る。地図で確認したい向きはhereここをクリックしてほしい。
 つまりロシアが大西洋でケーブル数本を切断すべく潜水艦を位置につけても世界規模でのインターネット運用にほとんど影響を受けない。仮に大西洋のケーブルを一本ずつ全部切断してもすべて太平洋経由に迂回される。
 「作動状況は最高といかず通信品質も下がりますが全くの不通になりません」と語るアラン・モールディンAlan Mauldin は市場調査企業TeleGeographyの調査部長だ。同社は通信分野とくに海底ケーブルを専門とする。
 仮にロシアが米国両岸の敷設ケーブル全部を切断したら、インターネットは光速で作動しなくなる。米国国内では地上線を活用できるが海外通信は利用できなくなる。
 「海底ケーブル全部を喪失しても米国内ならメールは送れるでしょう。ただヨーロッパではアメリカらフェイスブックに投稿した内容は見られなくなります」(モールディン)
 故障は日常茶飯事のためケーブル修復船が世界各国の海域で活躍している。もしロシアが切断に動けばこうした船舶が直ちに修理する。またロシアによるケーブル攻撃の仮説だが自国民も被害の対象になる。「ロシアにも損害が生まれ、しかもアメリカへの打撃以上になるのでは。というのはコンテンツの大部分は現地に局部的に蓄積されていますから」と上級アナリストのジョナサン・ヒヘンボ Jonathan Hjembo が述べる。
 だからと言って世界の海底ケーブルに危険がないわけではないし、防護が不要でもない。アフリカや一部東南アジアのようにインターネットインフラが貧弱な地域で要注意で、故障が発生すれば影響はもっと深刻でインターネットが遮断されかねない。
 「ケーブル損傷は深刻な問題ですが、ケーブルへのアクセスが困難な場所では接続が困難になるでしょう」とモールディンが述べる。2011年に地中のケーブルを老女がスライス状に切断してアルメニア全土でインターネット接続が遮断された事例が発生している。この時の衝撃は大きく、アルメニアに代わりジョージアが同国のアクセスほぼ全部を肩代わりし、文字通り一本のケーブルに同国は全部依存していることがあきらかになったことがある。
 ケーブル一本が文字通り「死活」を握ることもあり、例として一部では海底ケーブルは多数国との国境線付近の狭い場所を通る。マラッカ海峡や紅海がその例だ。こうした場所では投錨のリスクが大きい。また地政学的な紛争による影響もあり、ケーブルに関心を寄せる国や企業が多数あらわれる。
 ケーブル多数のハブとなる場所もあり、こうした場所がリスクだ。エジプトの海底ケーブルが断裂すれば、世界のインターネットの三分の一が使えなくなる可能性をスタロシエルスキの研究が明らかにしている。ブラジル北部のフォルタレザは海底ケーブルの一大拠点で南北アメリカを結ぶ地点になっており、同地が侵入されればブラジルから米国へ往復するデータ全部が取られてしまう。
 世界規模のインターネット危機は投錨ではなく政策の誤りから大きな危険にさらされる。2011年の例としてスタロシエルスキはインドネシアが同国水域内のケーブル修理にはインドネシア国籍技術者の乗った船しか投入できないと要求してきた。問題はそのような船が存在しないことで、修理が大きく遅延すると影響は同国のみならず付近を経由する通信全体にあらわれた。
シアによるケーブル断裂事故は一件も発生していない。プーチンは少なくとも今は海底ケーブルに手をかけていないようだ。その一方でわれわれはインターネットインフラの脆弱性解決に努力すべきだ。■
仮に全部切断しても米国には影響がないということですか。であればロシアの狙いは通信線の遮断ではなく、サイバー攻撃や情報の盗み取りでしょうか。いずれにせよ全艦がケーブル線にかかりきりになるわけでなく、言われるようなインターネット暗黒時代は到来しないようですね。