2018年3月11日日曜日

期待にこたえられなかった装備①米空軍初のジェット戦闘機P-80

 

新シリーズ 「期待にこたえられなかった装備」 
世の中には想像図の域を超えられなかった装備は山ほどありますが、鳴り物入りで投入したのに想定した性能を超えられなかった装備は何が問題だったのか。どんな運用をされたのかをお伝えします。第一回はロッキードF-80シューティングスターです。

 

America's First Fighter Jet (Built to Fight Hitler) Was Sent to North Korea. It Ended Badly. 米国初のジェット戦闘機(対ヒトラー戦用)が北朝鮮上空に投入されたが散々な結果だった





March 8, 2018

1950年11月8日、4機の直線翼機が中国国境近くの北朝鮮新義州の航空基地に降下を開始した。F-80シューティングスターが基地を機首の.50口径機関銃6門で襲撃するとたちまち黒煙が空に舞い上がった。
シューティングスター各機は数か月前に現地に到着し北朝鮮による全面侵攻に対応する手段とされていた。緒戦こそ大変だったが国連軍の反攻で情勢は逆転した。第51戦闘航空団のF-80は米軍占領下の平壌から発進し北朝鮮軍の生き残りを攻撃し、中国国境に迫っていた。
三回目の通過飛行をした後エヴァンス・スティーブンス少佐はウィングマンのラッセル・ブラウン中尉と高度20千フィートに上昇し残り二機の援護を務めた。突如としてブラウンが高高度に銀色に光る10機ほどのジェット戦闘機が中国国境からこちらに向かい飛ぶのを視認。無線で僚機に攻撃中止を伝えた。MiG編隊がこっちにやってくる!
直後に史上初のジェット戦闘機同士の空中戦が生まれた。だが米軍機は相手より低速機だった。


ナチ新鋭ジェット機の対抗策として急きょ開発
 米国はじめてのジェット機ベルP-59エアラコメットは1942年10月初飛行で60機生産されたが実戦配備されなかったのは初期ターボジェットが信頼性乏しく最高速度も410マイルとP-51マスタングより遅かったためだ。だが連合軍情報部は1943年にナチがMe-262ジェットで最高速度540マイルで実戦投入しそうと知り、ロッキードに英国製ターボジェットの出力増強型を搭載した新型戦闘機開発の打診が入った。ただし6か月の条件つきで。
伝説の航空技術者クラレンス・「ケリー」・ジョンソン(その後SR-71ブラックバードを開発)がゼロから開始しエレガントでアールデコ調の線と三点着陸式機をもとに設計を完成させた。試作機は完全な情報管理下でわずか143日で完成し、関与したのは130名だけだが開発の目的がジェット機だと知っていたのは少数のみだった。
XP-80試作機は速度500マイルを出し、当時のピストンエンジン機をすべて追い抜いた。デハヴィランド製ゴブリンエンジンはその後さらに強力なアリソンJ33に換装されキャノピー下左右に空気取り入れ口が付いた。
ただしシューティングスターはは直線主翼で尾翼は第二次大戦時のピストンエンジン機同様のため音速近くで足を引っ張った。燃料ポンプが原因でXP-80はロッキードの首席テストパイロットのリチャード・ボング(大戦時のエース)が死亡した。
ナチのジェット機は強敵ではあったが燃料不足と産業基盤崩壊で大きな脅威にならなかった。英国もメテオジェット機で対抗したが、大戦中にジェット機同士の空中戦は発生していない。
量産前のYP-80A四機が第二次大戦終結前にヨーロッパに送られ、二機は英国に残り、うち一機が翌年に墜落した。残り二機はイタリアへ送られ終戦まで数回ミッションを実施した。
それでもロッキードはシューティングスター1,700機を大戦後に生産し、設計改良しF-80とした。新型F-80Bで射出座席が導入された。F-80Cはエンジンをさらに強力なJ33-A-35にし時速600マイルを達成し、左右翼端の260ガロンタンクが特徴で、飛行半径が1,200マイルに伸びた。一部が海軍、海兵隊に移管され拘束フックを付け空母運用型になった。RF-80写真偵察機は透明機首にカメラを搭載し広く使われた。
アメリカ初の実用ジェット戦闘機は記録更新もした。1946年にジェット機による初の大陸横断飛行をロングビーチ(カリフォーニア)からニューヨークまで実施。同年に大西洋横断も達成した。特殊改造P-80Rが時速623マイルの記録も出した。


朝鮮戦争に投入されてどうだったのか
 シューティングスターは北朝鮮人民空軍が朝鮮戦争緒戦で運用したYak-9戦闘機やIl-10ステゥモーヴィク強襲機へは優勢だったがMiG-15となると話は別だった。
はるかに先端設計のソ連のMiG-15は後退角付き主翼とロールスロイス・ニーンからリバースエンジニアで実現したVK-1ターボジェットを搭載。英政府がソ連にエンジン技術を供与したのは驚くべきことだった。最高時速670マイルとシューティングスターを楽々追い抜くだけでなく、武装も23mm機関砲二門に加え大型37mm砲も備えていた
MiGは中国内戦末期に初めて実戦に登場していたが、朝鮮戦争では1950年11月1日に初めて中国から飛来し米軍F-51編隊を強襲しうち一機を撃墜した。ソ連教官が北朝鮮パイロットを養成していたがロシアの大戦時経験者が朝鮮上空の戦闘のほとんどをこなしていた。
11月8日のP-80との遭遇ではソ連戦闘機二機が迎撃コースに入っていた。スティーブンスとブラウンは鋭く左旋回し接近する敵機を射程に収めようとした。ブラウン機のM3機関銃門の銃弾が詰まり、数発しか射撃できなかった。MiGはロールしながら降下しブラウンが追跡し時速は600マイルに近づいた。その後敵機が炎に包まれるまで射撃を続け機首を上げた。
初のジェット機同士の空中戦でブラウンは一機撃墜を主張した。
ただし同日のソ連記録では違う話になっている。MiGのパイロット、ウラジミール・ハリトノフ中尉は米軍機から攻撃を受けたと報告しているが降下で攻撃を回避し、途中で外部タンクを放棄したと報告している。ロシアの戦史記録では初のジェット機同士の空中戦は11月1日となっておりセミヨン・ホミニッチ中尉操縦のMiGがF-80(フランク・ヴァン・シックル中尉)を撃墜したとある。ただし米軍記録ではヴァン・シックルは地上に墜落炎上している。ブラウンの空中戦の翌日に米海軍F9Fパンサージェットがミハイル・グラチェフ操縦のMiG-15を撃墜しており、これは両国の記録で一致している。
そこでジェット機同士の初空中戦での撃墜について意見が食い違うが、MiG-15がF-80を速度、操縦性能いずれも上回っていたのは事実だ。米側記録ではシューティングスター合計17機が空中戦で喪失とあり、MiG-15の撃墜数は7機、プロペラ機11機も撃墜とある。B-29爆撃機編隊を100機のF-80とF-84で援護中にMiGの30機編隊が襲ったのが1951年4月12日でB-29の三機が撃墜され、攻撃側には損失はゼロだった。
米空軍は当時最新鋭の戦闘機F-86セイバー派遣を急がざるを得なくなった。MiG-15と互角に戦える戦闘機としてだ。これで戦況が有利となり中国国境付近の「MiG横丁」で空中戦が頻繁に発生し撃墜被撃墜比率が好転した。F-80には対地攻撃任務が与えられたが想定していない任務で5インチロケット弾8発あるいは千ポンド爆弾二発を主翼下に積み出撃した。
終戦までにシューティングスター113機が対空砲火で墜落した。1952年11月22日にはチャールズ・ローリング少佐機が中国の対空砲火を浴びた。少佐は国連軍を釘付けにしていた火砲陣地を狙っていた。ウィングマンから攻撃中止の勧めを聞かず、少佐は損傷を受けた機体を銃座に体当たりさせ、戦死後に名誉勲章を受けた。
朝鮮にはF-80飛行隊10個が展開したがすべてF-86セイバーあるいはF-84対地攻撃機に1953年までに機種転換を完了した。ただし一個飛行隊のみ旧式マスタング戦闘機に変更している。シューティングスターは随時退けられ、南アメリカ各国に供与されブラジルでは1960年代70年代前活躍した。


その後の展開
シューティングスターは朝鮮上空では旧型化していたがその後派生型二つを生んだ。一つが知名度が低いF-94スターファイヤーで複座レーダー装備夜間戦闘機で朝鮮で六機撃墜したとされ、MiG-15とも初の夜間交戦をした。
もうひとつが伝説のT-33複座練習ジェット機だ。6,500機が製造され、カナダでもライセンス生産で650機が生まれ40か国の空軍で供用された。キューバのT-33はCIA支援による反カストロ軍迎撃に出撃し、B-26三機と数隻を撃破している。
20世紀後半の世界各国の戦闘機パイロット数千名がT-33でジェット機訓練を受けた。2017年にボリヴィアがT-33を退役させ、同機の長い運用に幕が下りた。
1940年代にナチドイツ新鋭機への対抗手段として急ぎ設計された米国初の実用戦闘機には当初予想もしなかった長きにわたる活躍が展開した。■
Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: Wikimedia Commons

こうやってみるとP-80が駄作だったのではなく、初期ジェット機の性能進化が早すぎて短期で陳腐化した構図ですね。たたかれてもただでは起きないのがロッキードでP-3も売れなかったエレクトラ旅客機が原型でしたね。たくましい会社です。

米朝会談実現で日本をないがしろにしていはまずいとの論調が米側にあります

たしかに今回は急展開なのですが事前に米朝接触があった上の話であり、韓国はお使いの役割を負わされながらも関与していると胸を張れるのですが、日本は困った立場になりました。しかし外交と言うのは必ず状況に応じた展開が出てきますのでここぞとばかりに安倍政権の北朝鮮政策が破綻したとばかりに揚げ足をとるのはいかがなものでしょう。何よりも日本のマスメディアには全体を見る視点は欠落していますので信用しないことが肝心です。Business Insider記事のご紹介です。

One of America’s closest allies could be the biggest loser if talks between Trump and Kim Jong-Un go south 米朝会談が実現すると米国最大の同盟国の一つが最大の敗者になりかねない

shinzo abe donald trumpPresident Donald Trump meets with Japanese Prime Minister Shinzo Abe in the Oval Office of the White House in Washington, February 10, 2017.AP Photo/Evan Vucci
  • 先週木曜日ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮指導者金正恩の招待を受けたことでミサイル問題をめぐり歴史的な外交展開が始まる
  • 会談の場所日程は未定だが日本がこの事態に驚愕したようだ
  • 日本側関係者は急きょトランプ他米関係者と会い事実把握に努める



ナルド・トランプ大統領が北朝鮮指導者金正恩の招待を受託し世界が驚いたが日本ほど慌てた国はないのではないか。
日本政府はトランプの決断について事前に何も知らされていなかったとニューヨークタイムズは報道。トランプは韓国政府によるホワイトハウス内での説明席上で即決したといわれる。韓国側も素早い反応に戸惑ったほどだ。
直後にトランプは安倍晋三首相を電話に呼び出し米国は最大限の圧力を北朝鮮にかけ続けると確約したとホワイトハウスは説明。
関係者によれば電話会談中、日本首相から大統領へ会談要請があった。安倍は報道陣に米国と日本は「100%ともにある」とし、4月にトランプと会談すると語った。
Shinzo AbeJapanese Prime Minister Shinzo Abe.REUTERS/Lucas Jackson
米関係者はトランプ-金会談は北朝鮮の核・ミサイル開発が主題で「具体的かつ実証可能な段階」を話すという。だがこの声明で日本側の懸念が解消されることはない。
ある与党関係者は北朝鮮が緊張緩和を都合よく利用すると見ており「北に有利な情勢だ」とロイターに語った。
日本は北朝鮮が核とミサイルを完全放棄するのを対話の前提条件と見ており、米国務省見解と似る。
河野太郎外務大臣はレックス・ティラーソン国務長官と3月16日ワシントンDCで会談の予定を入れており、北朝鮮非核化で米側の要求内容を確かめるとNHKは報道。河野は訪米前に韓国政府からも南北対話結果について報告を受ける。
日本が今回の急展開にあきらかに狼狽しているのは無理もない。同国は北朝鮮のミサイルテストで脅威を感じると同時に挑発の矛先にもなっているからだ。
朝鮮半島問題専門家も米国は日本の利害を来る米朝会談でのけ者にしてならないと意見が一致している。

このうち国際戦略研究所朝鮮問題部門長のヴィクター・チャは「米国の北朝鮮政策のため同盟国が犠牲になってはいけない」と解説している。「韓国は明らかに関与しているが日本も加えるべきであり、日本国の指導者はこれまでトランプへの最大のチアリーダーとして平壌に圧力をかけ軍事オプションまで検討しながら今回の外交展開で大被害をうけている」と解説した。■

★★心配になるF-3の行方、既存海外機材原型開発論が浮上

ロイターの記事です。うーん、どうなんでしょう。財務省の情報操作のにおいがします。費用対効果とか産業基盤温存とか技術論の前に日本に必要な戦闘航空機(戦闘機ではありません)はそもそもどんな姿であるべきかをホリスティックに考えるべきではありませんか。ステルスありきでもないはずです。大きな買い物だけに短期集中でもよく考えるべきでは。その際にいったん既存の利害は忘れてコンポンを考えるべきだと思うのですが。おそらく一週間も不要で数時間あれば出る結論のはずですが。



Exclusive: Japan's new advanced fighter may be based on existing foreign design - sources 特報:日本のめざす新型戦闘機で既存外国機原型案が浮上



TOKYO (Reuters) - 日本は新型ジェット戦闘機で既存西側機材を原型に米英との協力で開発を短縮化する提案を求めている。事業費は総額400億ドル(約4.3兆円)の試算がある。ロイターは取材源三か所から内容を把握した。
日本は今月に入り第三回目の情報開示要望(RFI)を防衛産業各社に発出し新型機F-3の提案を求めている。前の二回と違い、今回は米国と欧州の企業に限定し詳細情報を求めている。
二回にわたる募集で詳細な提案は得られず、「日本は既存機を原型にした設計案で具体的内容を期待している」と消息筋は述べている。
既存機を基にした設計案の募集文書が英米政府に送付されたことは報じられていなかった。
日本が利用可能な機体としてF-35ライトニングII(ロッキード・マーティン)、F/A-18E/Fスーパーホーネット(ボーイング)、ユーロファイター・タイフーン(BAEシステムズ含む欧州共同事業体)がある。
国産戦闘機の直近の機種はF-2で三菱重工業とロッキード・マーティンが米F-16多用途戦闘機を原型に完成させ2000年に供用開始した。日本の戦闘機生産で主導的立場の三菱重工がF-3事業でも中心になると予想される。
「国産開発、共同開発、既存機体の改良いずれも検討中でまだ最終決定ではない」と防衛省関係者が述べている。
日本の次世代戦闘機が外国の既存機を原型に実現すれば費用は節約できるが、ステルス性を断念する可能性も生まれる。タイフーン、スーパーホーネットはステルス設計ではない。
「ボーイングは米日両政府と協力して日本側産業界と次期戦闘機開発に臨むことに大きく期待している」とボーイング広報は述べた。
ロッキード・マーティンとBAEシステムズからはコメントが出ていない。
日本が米英政府に接近しているのは米国がF-22後継機検討に入ったのも関係する。英国も日本との安全保障上の関係強化を狙いタイフーン後継機が早晩必要となる。
日本はF-35ステルス戦闘機の導入を始めているが、中国の軍事力増強を見ながら2030年めどに制空戦闘機を別途導入し日本の空への侵入を防ぎたいと考えている。
日本は国産開発で新型機を目指してきたが、疑問も生まれている
2019年4月から新規五か年防衛整備計画がはじまりF-3事業をここに含めるためにはすぐにでもワシントンとの協議をが必要になる。
米製装備調達の増加で弱体化した日本の防衛産業の存続のため純国産機開発を求める声が防衛省内や国会議員にあるが、財務当局は費用対効果を疑問視している。
国際共同開発にすれば航空自衛隊以外にも販路を広げて費用面で効果が生まれるからだ。
三菱重工は2016年にステルス試作機ATD-X(X-2)をテストしており、開発費用は3.5億ドルだった。■
Reporting by Tim Kelly and Nobuhiro Kubo; Editing by Gerry Doyle


2018年3月10日土曜日

あなたの知らない戦史シリーズ① ウラジオストック沖米ソ空中戦(1952年)

あなたの知らない戦史シリーズです。これは廃刊になったソノラマ文庫の「朝鮮戦争空戦史」にも紹介されいましたがここまで詳しくなかったと記憶します。性能では劣るパンサーを巧みに操った海軍操縦士の腕の方が上だったということですね。ロシア人がMiGに乗っていたことは前線では知られていて、不時着したロシア人パイロットを捕虜にしようと米軍が近づくと別のMiGがこのパイロットを射殺したということです。

A Secret for 40 Years: Navy Jets Battled Russian Jets Siberian Snow 40年間秘密になっていた米海軍ジェット機対ロシアジェット機編隊の交戦記録



1952年11月18日午後のこと、ネイヴィーブルー塗装のジェット機の4機編隊が空母USSオリスカニーから日本海を覆うシベリア低気圧の中へ発進した。同空母は空母3隻含む25隻の任務部隊77の一部で北朝鮮の橋梁他を空爆していた。その日早くは中国、ソ連からの補給物資が集まる場所で国境線近くのHoeryongの物資集積基地を空爆していた。
4機はF9F-5パンサーで雪嵐で視界500フィートまで下がっていたが戦闘航空哨戒(CAP)に当たった。艦体の航空捜索レーダーは有効半径が100マイルしかなく、ソ連にはIl-28ジェット爆撃機がありその距離なら数分で到達し、現にその姿が写真に収められていた。ソ連や中国機が空母部隊を襲う事態は発生していなかったが、奇襲攻撃をCAPで予防するに越したことはないと思われていた。
パンサー編隊が哨戒パターンで高度16千フィートを飛行中に報告が入った。敵味方不明数機が現在の地点から83マイル北で探知され、ウラジオストックの方向から飛んでいるというのだ。
海軍戦闘飛行隊VF-781所属の四機は迎撃コースをとった。飛行機雲を視認しソ連軍7機が高度40千フィートを飛行中で金属製胴体が光を反射していた。それはIl-28爆撃機ではなく、MiG-15戦闘機編隊でF9F-5は後期型だったが時速70マイルも上回る性能を有する相手だった。
すると編隊長クレア・エルウッド大尉の乗機で燃料ポンプが作動不良となり、空母に呼び戻され、ウィングマンも援護で離脱した。ロイス・ウィリアムズ大尉とデイヴィッド・ロウランド中尉の二機で優勢なソ連戦闘機編隊の7機に立ち向かうことなった。
その後に発生した事態はその後40年間極秘にされたが、2013年にロイスがFlight Journalのトマス・マケルヴィーの取材に答えて明らかになっている。
1950年11月からソ連のMiG-15が米戦闘機と朝鮮上空で交戦していた。ただし、各機は必ず中国国内基地から発進し中国あるいは北朝鮮部隊として交戦していた。公式にはソ連軍は参戦していないことになっており、ワシントンもこの虚構をわざわざ暴いて朝鮮戦争をエスカレートするつもりもなく、交戦はその結末をもとめていた。
ソ連戦闘機は米偵察機を数回にわたり撃墜していたし、米軍は国境近くまで進出しソ連空軍基地を実際に攻撃した事例が数回発生していた。だが一般にソ連領内に配備した戦闘機部隊が戦闘に加わることはなかった。
米海軍パイロット二名がソ連戦闘機に高度16千フィートで接近すると高空を飛ぶジェット機編隊は方向変換で基地に戻るように見えた。だがその後に編隊は二つに分かれ、4機からなる小編隊が米戦闘機に向かい10時方向から降下を開始しながら機関砲の弾丸を発射してきた。
ロイスは機体を激しく旋回させ編隊最後のMiGの後方につき、機関銃射撃で同機が炎に包まれるのを見た。だがロウランド機の機関銃の弾丸がつまった。ロイスの撃墜をガンカメラで撮影しようとロウランドはMiGの尾部を飛び、ついにMiGは海中に墜落した。
ウィリアムズ大尉にはまだ6機のMiGが残っておりドッグファイトは20分も続いた。後退翼のMiGは直線翼の米機より速度も操縦性も優れていた。だがF9Fには伝説になったほどの頑丈な機体構造があり、高速発射20mm機関砲4門を備えていた。MiGには23mm機関砲二門と強力な37mm砲一門があったがいずれも発射速度が低く精度も敏捷な戦闘機相手では不足気味だった。
ウィリアムズ大尉はフルスロットルのまま攻撃してくるMiGの内側を旋回しながら短めに射撃した。当時26歳の大尉はミネソタ出身で射撃訓練では高得点だった。素早く編隊の先頭機とウィングマンに20mm弾丸を浴びせると旋回してその場を離れ、二機は炎に包まれ、四機目のMiGにも大損害を与えた。
だが別のMiGが乗機の尾翼に銃弾を浴びせ機体や主翼、エンジンに命中して損傷し、油圧系統をやられた。パンサーの方向舵とフラップが反応せずエルロンはわずかに動くだけだ。そうなるとパンサーは唯一残った水平尾翼の昇降舵を使って回避行動をするしかない。
大尉は下方の雲に向かい降下を開始したがMiG-15の一機が追いかけてきて機関砲を発射した。ロイスは昇降舵で機体を上下させながら弾丸を避けた。だがウイングマンがse扇動するとソ連機はひきさがったが、なんとロウランド機の機関砲は弾丸がつまったままだった。ロイスは損傷した自機の降下をなんとか止めたがわずか海上400フィートで射出脱出には高度が低すぎた。
大尉は自機をオリスカニーになんとか帰還させた。途中で敵機と誤認され米艦から対空砲火もあびたが、生命の危険につながる日本海での着水は御免だ。減速できず時速170マイルで接近するパンサーは安全に制御できなかった。オリスカニー艦長が機転を利かせ風上に角度を付けて操艦してくれたためロイスはテイルフックを空母の三番ワイヤーにひっかけ半破壊されたパンサーは停止した。整備員が機体に263か所の命中箇所を見つけ、機体は利用可能な部品どりの後海中に投棄された。
巡洋艦USSヘレナのNSA情報班がソ連の無線交信を傍受しておりウィリアムズ大尉にMiG編隊の接近を警告しながら同時に三機が撃墜され、四番機が損傷しヴィクトル・ベリヤコフ大尉がソ連領内で墜落した内容を受信していた。35分間の小競り合いでロイスは朝鮮戦争開始後のパンサーパイロット全体の撃墜数と同じ数のMiGを一人で打ち落としていた。
ウィリアムズ大尉はある提督から今回の特筆すべき功績を決して口にしないよう釘をさされた。米国とソ連は公式には交戦状態になくNSAによるスパイ活動でソ連を監視している事実も知られてはならない。だがロイスの功績は埋もれたままにはならなかった。一か月後にソウルへ呼ばれ、大統領選に当選したドワイト・アイゼンハワーと飲みながら航空戦の実態を話した。本人によると大統領の勧めるままスコッチに手を出したことは一生後悔するとのことで、本人はいつもはバーボン水割りを飲んでいたという。
1990年代に入りロシアも情報の機密解除をしウラジオストック付近での航空戦で死亡した四名の氏名を公開した。これでウィリアムズもやっと秘密の誓いから解放された。
ラジオストック上空のMIG対パンサーの衝突以降米戦闘機がロシア戦闘機を撃墜した事例はないが、米ソの空中対決はその後も続き、1953年にはF-84サンダージェットがチェコのMiG-15にボヘミア上空で撃墜され以後1970年までに米輸送機、偵察機十数機がソ連戦闘機やミサイルに撃ち落されている。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring

インドネシアがA400Mの調達を決定

A400Mはいろいろトラブル続きだと分かっているのですがインドネシアがここにきてわざわざ同機を調達するとは思いませんでした。しかも2機だけというのがよくわかりません。同国の場合は兵力投射機能以前に広大な国土を抱えていますから国内輸送だけでも仕事量は十分あるのでしょうね。またマレーシアが先に導入しておりその実績を見て判断したのかもしれません。


Indonesia confirms A400M acquisition plan インドネシアがA400M調達を決定

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
08 March 2018
  
王立マレーシア空軍のA400M。インドネシアは隣国に倣い同輸送機を導入し、二機を調達する。Source: IHS Markit/Gareth Jennings

インドネシア空軍(TNI-AU)がエアバス・ディフェンス&スペースA400M輸送機の導入を決めた。
空軍の3月7日発表では二機調達し同国の東西を結ぶ物資輸送で地方政府を支援するという。大日程や調達価格の詳細は発表がない。
Jane’sはインドネシアがA400Mに関心を表明していると2017年1月に初めて伝えていた。その時点で政府と国内防衛産業筋はインドンシアが最大5機の購入を検討し調達予算として20億ドルを確保したと述べていた。その後同年4月にはエアバス側と調達をめぐる契約の準備が始まっていた
TNI-AUの固定翼機輸送部隊は近代化を迫られており、現行機材にはロッキード・マーティンC-130B/HとL-100ハーキュリーズ19機、エアバスDS-PTディルガンタラCN235(6機)、C212(7機)があるが、2000年以降にC-130は5機が墜落している。
A400Mはペイロード37トンだ。インドネシアはでは国内の貨物輸送に投入するが同機は軍用仕様で各種軍事装備も輸送可能だ。■

2018年3月9日金曜日

速報 金正恩がトランプを会談に招待したとの韓国政府発表に見られる奇妙な点

今回の発表にはいくつか奇妙な点があり案す。1)なぜ韓国政府がホワイトハウス前で発表したのか しかも米政府の立ち合いなく 2)外交チャンネルをすべてバイパスしての発表である 3)なぜ米大統領が「格下の」北朝鮮首都を訪問する必要があるのか などなどです。1)については米政府としてコミットしたくないからでしょうし、このまま実現しない場合の責任逃れでは。それよりも韓国は仲介役として点数稼ぎしたいのでしょうが、世界は北朝鮮の使い走りとしか見ないはず。そもそもなぜ北朝鮮が自ら意思を伝えないのか。2)については今後あちこちで軋みが生まれるでしょう。3)については平壌訪問は論外で第三国、中国を大統領は希望するでしょうができれば中立国で会談すべきでは。(ニクソンはいきなり北京を訪問した前例はありますが) 米側もいきなりの発表で驚いている感じで反応はこれからでしょうね。問題は日本です。新しい事態に早く適応してはしごをはずされない=以前の立場に固執しない ことではないでしょうか。それだけに全体像を把握する思考が必要になるはずです。

South Korean leaders announce unprecedented invitation for Trump to meet Kim Jong-un in North Korea 韓国政府高官から前例のない金正恩と北朝鮮での会談にトランプ大統領の招待が発表された



  • 北朝鮮指導者金正恩がドナルド・トランプ大統領を会談に招待し核・ミサイルテストを一次停止すると述べた。
  • 発表は韓国政府政府関係者が行い、先の北朝鮮報恩結果を米側に説明した後のこと。
  • トランプは「背景情報説明に感謝」し、金正恩と5月にまでに会い「恒久的非核化を実現する」ことを目指すと述べたという。



朝鮮指導者金正恩がドナルド・トランプ大統領を会談に招き、同時に北朝鮮は核・ミサイルテストを一時停止すると述べた。
韓国国家保安室長鄭義溶Chung Eui-yongと国家情報院長官徐薫Suh HoonがワシントンDCを訪問しH・R・マクマスター国家安全保障担当補佐官に北朝鮮との外交面での新たな進展を説明した。
この説明で金正恩発の親書が韓国側からホワイトハウスに手渡されたとの報道がある。
「金正恩は非核化に正面から取り組んでいる」とChungは3月8日述べている。「金は北朝鮮はこれ以上の核実験あるいはミサイル試験は行わないと確約した」
「合わせてトランプ大統領とはなるべく早く会談したいと希望を表明した」(Chung)
Chungによればトランプは「情報提供に感謝」し金正恩とは5月までに会談したいと述べ「恒久的非核化の実現」が目標と述べた。
同日はそれ以前にトランプから「重大発表」が出ると思わせぶりな発言が出ていた。「これで当方の成果となるはず」と述べていたとABCニュースのメレディス・マクグローが伝えていた。
トランプはこれまでも北朝鮮と適当な時期に適当な状況で」対話の用意があると繰り返し述べていた。
1月になり北朝鮮から外交面で動きが多数出て、米国、韓国と交渉の用意があると示していた。2018年冬季五輪大会に参加し、韓国とは数回にわたり協議を行っている。
「あちらに誠意はあると思うが制裁はじめこちらの対応があるから誠意を示しているのだと思う。その一つが中国が提供中の強力な支援だ」とトランプは今週火曜日に述べ、包囲網で中国の役割の増大に言及していた。
金正恩が非核化を言葉の上で約束したことで米国には対話の条件が整ったと言える。「当方の条件は非核化だ」と米国務省報道官ヘザー・ノイアートは報道陣に2月末に語っていた。「我が国の政策は不変だ。政権初日から政策を語っており、最大限の圧力についても同様だが同時に朝鮮半島の非核化も一貫して主張している」

ただし米関係者からは北朝鮮との対話に警戒する動きもある。木曜日にレックス・ティラーソン国務長官は「交渉への道のりは遠い」と述べていた。「目を見開いて現実的な対応が必要だ」と長官は報道会見で述べていた。■

B-52の攻撃能力はここまで引き上げられ2040年代まで供用される

エンジン換装の話もあるのですが別プロジェクトのためまず兵装関係の改修を行うのですね。ここまで頑丈な機体を作った1950年代の設計の冗長性が大きな効果を生んでいますね。

 

Meet the 'New' B-52 Bomber: How This Old Plane Can Drop Even More Bombs 「新しい」B-52爆撃機はもっと多くの爆弾を搭載する



March 6, 2018

空軍が歴史的機材になったB-52爆撃機で大幅な兵装搭載能力アップを機内兵装庫の改修で実現し、攻撃力を引き上げる。
1760機内兵装庫改修事業(IWBU)でB-52各機は最新「Jシリーズ」爆弾を8発まで搭載でき、さらに主翼下のパイロン各6点も活用する。これで攻撃力アップのみならずこれまで以上の種類の新鋭兵装を運用できるようになる。
IWBUはデジタルインターフェースと回転式発射装置で兵装ペイロードを増やすのが狙いだ。
「B-52の1760機内兵装庫改修で機内にJシリーズ(スマート)兵器運用能力が生まれ、共通戦略回転式発射機も近代化され機内ソフトウェアもアップグレードする」と空軍広報官エミリー・グラボウスキ少佐がWarrior Mavenに語ってくれた。
B-52はこれまでもJDAM兵装を機外に搭載していたがIWBUで機内に最新精密誘導方式の共用直接攻撃弾や共用空対地スタンドオフミサイル他の運用が可能となる。
空軍兵装開発部門はIWBUでB-52の兵装搭載能力は66パーセント伸びるとWarrior Mavenに語ってくれた。
空軍開発部門の説明では機内搭載兵装庫能力のアップで爆弾を機内に移して燃料消費率が改善される。抗力が減るためだ。
今回の改修は空軍の近代化改修では大掛かりな規模だが、B-52がかつての「絨毯爆撃」はもはや行わない事実は周知の事実だ。近代戦では戦闘員掃討戦であれ大規模機械化交戦であれ精密度が求められる。今回の改修はさらに大型の精密誘導兵器やスマート兵器の搭載につながるとグラボウスキ少佐が説明してくれた。
もちろんB-52は今でも必要なら絨毯爆撃できるのだが、現在の環境では長距離センサーや誘導兵器あるいはレーザーで今まで以上のスタンドオフ精密攻撃が可能だ。
またB-52の機体寸法を考えると同機の活躍場所は米空軍が航空優勢が確保済みの空域となるはずだ。ロシア防空体制が長距離を有効範囲に収め精度を高めつつあり、高高度飛行爆撃機にはさらに危険な状態になっている。
指揮統制技術、有人無人機の同時運用、人工知能の進展ぶりを考えるとB-52にも無人機の統制機能が導入されることが十分ありうる。
IWBUの初回機能アップで機内兵装庫でレーザー誘導JDAMが発射できるようになる。二回目改修が2022年予定で共用空対地スタンドオフミサイル(JASSM)、JASSM射程延長型(ER)やミニチュア空中発射デコイ(MALD)の運用能力が実現する。MALD-JのJはジャマーでB-52で運用可能となれば敵レーダーの妨害機能も実現する。
供用中のB-52の76機にデジタルデータリンク、移動地図画面、次世代エイビオニクス、新型通信装置を搭載し多様な兵装を機内搭載しながら今後登場する新型ハイテク兵器の運用を可能にしていくと空軍関係者は述べている。
B-52の機体構造と頑健性は極めて強固と評価されており、2040年代以降も飛行可能なため空軍は最新かつ高性能のエイビオニクス、兵装、技術を惜しみなく投入すると空軍兵器開発部門がWarrior Mavenに説明してくれた。■
This article originally appeared on Warrior Maven.

Image: U.S. Air Force