2018年3月23日金曜日

中国の侵攻作戦から台湾を防衛するには---高度防衛体制を維持する台湾を中国は簡単に侵攻できないのでは

台湾の防衛問題になるとなぜ日本が口を閉ざすのか台湾でも不思議に思っているのではないでしょうか。ここにきて台湾の話題が次々に出ている気もしますが日本ではスルーです。安全保障を避けたいという気持ちもあるのかもしれませんが北京政府に嫌われたくないという忖度なのでしょうか。全人代でまた習近平が台湾を威嚇する発言をしたようですが、台湾海峡を克服できないのが中国軍の実力であり、70年にわたり台湾が民主政体を維持し経済も反映している事実は共産党の教条主義では否定できないのが現実です。では今後はどうなるのか。必ずしも悲観する必要はありませんが、台湾が今後も高度防衛国家体制を維持していくのは大変なことです。

How China Would Invade and Conquer Taiwan (And Here's How to Stop It) 中国は台湾をこのように侵攻する(どうしたら阻止できるか)



March 19, 2018

  
華人民共和国内の各種情報を総合すると台湾の民主政体に残された時間はなくなりつつあるようだ。習近平は「忍耐できなくなりつつある」とされ台湾侵攻を2020年代初めにも命令する可能性がある。世界で最も危険な引火点で圧倒的な勢力の揚陸部隊の電撃作戦が発生するとしたら2021年7月の中国共産党(CCP)創立100周年の前だろう。
と言いつつ、中国は実際には台湾侵攻をそのような派手で高リスク方式では実施しないだろう。習一派は神経戦をエスカレートするはずだ。情報操作他の手段でワシントンの台湾防衛への信頼を崩し同時に台湾の自信を低下させるはずだ。
習近平は台湾政府がプレッシャーに負けて崩壊するのを待てばよい。そうすれば簡単に台湾を制圧できる。並行して中国軍は「聖なる」任務の遂行方法を検討する。力のバランスが中国に有利な形で推移するなかで侵攻作戦は訴求力を強めるだろう。

脅威の評価:
台湾海峡をめぐる政治安全保障の環境は厳しさを増しており、PLA軍事力の長所短所を正確に評価する必要がある。
PLAの強みの方が弱点より明らかだ。中国の軍事力では弾道ミサイル、対衛星攻撃兵器が要注意だ。もっと危険なのは諜報活動で対外政策が影響を受けることだ。
海軍大学校教授アンドリュー・エリクソンAndrew Ericksonは近著 Chinese Naval Shipbuildingで中国海軍が驚くべき勢いで強大になっているが台湾侵攻の支援能力はまだないと述べる。揚陸能力が不足し、防空能力も同様だという。ただし状況は今後大きく変わるはずだ。
デニス・ブラスコDennis BlaskoはThe Chinese Army Today の著者でCCP配下の地上兵力も海軍同様に台湾侵攻が準備できていないと述べる。侵攻を現実的選択肢にするためにはヘリコプター、効果部隊、特殊作戦部隊、揚陸機械化師団、海兵隊のすべてで増強が必要だ。さらにPLAには下士官層を整備し指揮命令系統の全般で訓練を強化する必要がある。既にこの努力に着手しており2020年代にその成果が出てくるだろうという。

台湾の対侵攻戦略:
では台湾軍関係者は自国をどう防衛するのか、また米国は支援できるだろうか。
台湾は全志願制部隊への移行の最終段階にある。プロの兵員を育てるのはよいことだ。台湾はこれに優位性を与える。中国の軍組織は自由意志による国民軍ではなく短期応召兵が大部分の組織だ。
RANDコーポレーションの最新研究報告では台湾では志願兵部隊をエリート予備役が助ける構造とし、中国の脅威は電子、航空、海上の各方面で対抗できるとする。台湾の軍部隊は新しい訓練の効果も期待できる。米軍との共同訓練や各国との救難訓練で台湾がこれまでできなかった分野で腕を磨ける。
近代戦はむき出しの力より頭脳戦の様相を強めている。このため高度訓練が必要だ。台湾のめざす防衛目標はPLAの電撃戦に備えることだ。このためには高度に動機付けされた人員が組織され訓練され装備を与えられて初めて敵侵攻作戦に強い抵抗力を示せるのだ。    
台湾海峡をはさむ経済規模の格差から台湾防衛当局はあらゆる場面で実力の引き上げが必要と認識し有事に効果発揮をめざす。台湾の防衛戦略では全土動員を前提に健康な男女全員が対侵攻作戦に協力する想定だ。
キングスカレッジロンドンのローレン・ディッキーはLauren Dickey台湾国防部(MND)は常に中国侵攻部隊を斥ける能力に磨きをかけていると指摘する。MNDは毎年全国地方両面で軍事演習を行い、作戦構想を点検、改善し敵上陸作戦に有効な防衛効果の実現をめざす。
台湾は中国侵攻を約4週間前に事前察知できるといわれる。ただし中国が戦略面で偽装工作にたけることを考えると額面通り受け止められない。それでもPLAが想定する揚陸作戦の規模が莫大になるため攻勢は前兆を見せるはずだ
例として部隊移動、予備役招集、物資集積、軍事演習、メディア動向、外交面での動き、台湾での妨害工作があげられる。さらに中国南東部で民間、軍の輸送船が終結すれば心配される事態となる。   
こうした兆候が見つかれば台湾総統は閣僚・議会指導部とともに対応策を審議する。レーダー、衛星の他中国国内の情報部員から続々入る内容を重視するはずだ。即応体制を引き上げ台湾全土を動員して敵攻撃にそなえることになろう。
すぐにも台湾海峡の要所に機雷敷設し海岸線、港湾、空港の防御態勢を強化する。その後に台湾国内の主要橋梁、発電所等の重要施設の防御が強化され不要不急の人員は戦闘地帯になりそうな場所から疎開させる。だがこれを全部実行するには相当の人員が必要で予備役部隊のみならず契約企業の関与が求められる。このため台湾では250万人を軍に、さらに100万人を民間防衛に数日で動員する体制が出来ている
緊急動員体制のテストは毎年行われ、台湾、澎湖等近隣の島しょ部(金門、馬祖)が対象だ。その結果には目を奪われる。市民兵士が大量かつ迅速に動員される。
台湾の全面的動員体制案では軍事力だけが主眼ではない。総統府と各省庁がすべて民間防衛体制を本土防衛に統合する点で機能する。

今後の展望:  
台湾政府と軍は台湾社会もあわせ厳しい態度をとる。だが独自に進めることが可能だ。ペンタゴンは台湾を援助し戦闘能力を向上させる点で重要な役割を果たす。米国の援助があれば台湾は中国に対し有効な防衛体制を実現でき、望むらくは今後も侵攻を阻止できるからだ。   
前出のRAND研究報告では共同作業部会の設立を提言しており、米側は国防次官補がふさわしいとする。台湾軍は米軍式の軍事教練や技術講習から得るものが多いはずで、米側教官も台湾の志願兵部隊移行を支援し、予備役にも戦略的な意義を与えるのを助けられるはずだ。     
台湾軍には装備品調達が定期的かつ頼れる形で必要だが不幸にもブッシュ・オバマ両政権がこれを否定してしまった。米国製装備が作戦運用で意味を出す事は台湾で議論の余地がない。トランプ政権は台湾に日本や韓国同様の能力の実現を目指すべきで、新型ステルスジェット戦闘機、ミサイル防衛や駆逐艦が想定される。  
それだけでなくワシントンは米企業を制約せず台湾が目指す国産防衛潜水艦建造事業に自由に参加させるべきだ。こうした装備品での支援は火力増強よりも国民の希望の維持に役立ち、兵員確保につながる。また強力な意思と決意のほどが中国にも伝わるはずだ。        
台湾軍は堅実な防衛構想を整備しプロの戦闘集団を育成中だ。だが侵攻の恐れは強まるばかりだ。中国の攻撃力増強に歩調を合わせるのは米国のアジアへの関与で大きな変更がない限り極めて困難だ。
この先を考えるとトランプ政権は米台関係を前進させる新戦略の構築で好機にあると言える。台湾が強固な防衛力を整備すれば世界最大の火薬樽の着火を防げる。中国の現実を無視するのでは問題を悪化させるだけだ。■

Ian Easton is a research fellow at the Project 2049 (where this first appeared) Institute and author of the forthcoming book, The Chinese Invasion Threat: Taiwan's Defense and American Strategy in Asia

2018年3月22日木曜日

★★台湾イーグル・リース構想の続き:台湾国防省は提案来ていないと否定するが....イーグル2040C改装機材の提供を米側が検討か



台湾の話題が続きます。早速の火消しにかかったのでしょうか。台湾国防省としてはイーグルは喉から手がでるほどほしいはずですがね。増槽を付けずと言っても後でいくらでもできますし、そもそも2040Cは(お金を出せば)コンフォーマルタンクを搭載するのではなかったでしっけ。すると台湾が空中給油機取得を目指しているというのも意味が出てくる話ですね。F-35Bはそう簡単に米国も提供してくれないのは最初から分かっているのでAV-8+でまずSTOVL運用を習熟するという構想が生きてきますね。国防省が否定しても大きな流れは変わらないのでは。旧型イーグルを「ミサイルトラック」にする2040Cは日本としても注目していいはずですがどうなのでしょう。

 

Ministry denies US offered to lend fighters to Taiwan 台湾国防省が米戦闘機供与提案を否定

Eagle 2040C concept, Source:Boeing


‘PURE SPECULATION’:A media report quoted an unnamed source as saying that the US wanted to lend jets without external fuel tanks to allay Chinese fears 「観測記事に過ぎない」と匿名筋が米国が増槽なしでの機材提供で中国の神経をさかなでしない方式を提案したとの報道を否定

By Jonathan Chin  / Staff writer


湾国防省が米国からボーイングF-15C/Dイーグル戦闘機のリース提供提案が出たとの報道を否定した。報道ではイーグルは2040Cイーグル仕様に改修され制空戦闘機として威力を当面発揮するとあった。
台湾に戦闘機をリース提供する提案は米国から来ていないと国防省報道官Chen Chung-chi (陳中吉)少将は述べ、同記事は「メディアによる観測に過ぎない」とした。
今週月曜日に華字オンラインニュースサイトUp Mediaが匿名筋の話として米政府関係者が台湾に退役済みF-15を改修の上供与することに関心ありと伝えてきたと報じた。
国防省はロッキード・マーティンF-35Bの提供は求めないと決断し、その代わりに空軍が求める高高度性能を有する戦闘機取得でギャップを埋めることにする。.
現在供用中の高高度迎撃機はダッソー・ミラージュ2000で老朽化が目立ち運用が困難になっていると国防省は認める。
台湾側関係者はボーイングF/A-18E/FスーパーホーネットあるいはF-15の2040C仕様の名前を挙げている。後者はF-15C/Dの改修型でこちらの方が望ましい後継機だとする報道もある。
Up Media取材先は費用と外交上の懸念から米政府関係者が米国は販売ではなくリースで退役済みF-15を2040C仕様に改修したうえで引き渡す可能性があると発言していた。
米政府関係者は改装済みF-15に補助燃料タンクなしで台湾へ渡せば中国も高性能長距離多任務戦闘機を台湾が取得することを拒絶しないと見ていると取材源は述べている。
リースによる米国装備提供を台湾は以前にも受けており、ノースロップT-38タロンジェット練習機やノックス級フリゲートの例があると報道していた。
2040C改修は空対空ミサイル搭載を16発に増やし、一分間で15,240m上昇し比較的短い滑走路で離陸可能だ。

記事では飛行寿命が半分程度残った機体から選びエイビオニクスも換装し、航空自衛隊が運用する三菱F-15Jに匹敵する性能となるとある。■

最新鋭攻撃型潜水艦コロラド就役、ヴァージニア級はさらに進化を続ける

ヴァージニア級はハンターキラーでありながら攻撃力を大幅につけた潜水艦なのですね。ブロック方式で進化できるのは大量建造を前提にしているからでしょうが息の長い整備計画です。中国ロシアの動きをにらみながら水中優越性を今後も維持するのは大変ですが、これが崩れると力のバランスも崩れるので官民あげてがんばっているということでしょうか。海軍長官が沿海域でも威力を発揮すると発言していますがよほどの自信があるのでしょう。ただ、東シナ海から中国沿海部にかけて活躍するには原子力潜水艦では扱いにくいと思っています。米海軍でも通常型潜水艦を復活すべきかの議論は平行線のままですが、米国も日本の潜水艦技術には注目しているはずで、日米共通の通常潜水艦部隊が生まれるといいですね。


Attack Submarine Colorado to Commission Saturday

March 16, 2018 2:37 PM

Nuclear attack boat Colorado (SSN-788) sits pierside on March 17, 2018. US Navy Photo


子力推進攻撃潜水艦USSコロラド(SSN-788) がコネチカット州ニューロンドン潜水艦基地で3月17日に就役式典を迎える。

建造は2012年開始されヴァージニア級高速攻撃潜水艦の第15号艦、ヴァージニア級のブロックIII仕様艦としては5番目となる。コロラドはコロラド州の艦名を冠する四番目の米海軍艦艇となる。

「USSコロラドは驚異の技術革新そのもので産官連携の力を示しています」と海軍長官リチャード・V・スペンサーRichard V. Spencerが報道資料で述べる。「今日の世界に必要とされる海中機材は広大な海域のみならず沿海域も含む広範な分野で優位性を示す必要があり、コロラドはわが国の権益をこれから数十年にわたり防護する艦になると自信を持っています」

 Lt. Anthony Matus uses an Xbox controller to maneuver the photonic mast aboard the USS Colorado (SSN-788). (Navy photo)
Lt. Anthony Matus uses an Xbox controller to maneuver the photonic mast aboard the USS Colorado (SSN-788). (Navy photo)


ブロックⅢでは艦首部分を再設計し大口径(87インチ)ヴァージニアペイロード発射管二本を装着し一本でトマホーク巡航ミサイル6発を運用する。対象は2008年から2013年度予算の計8隻だ。さらに3隻が建造される。

ヴァージニアペイロード発射管により建造は簡略化され調達費用が下がりながら従来の小型垂直発射管(12本)よりペイロード運用の柔軟性が高まる。ブロックIとIIの各艦が垂直発射方式を採用していた。

Artist’s conception of the redesigned Block III Virginia-class bow.



その他ブロックIIIの改良点ではこれまで空気で支えていたソナー半球を水支持型の大型開口艦首(LAB)アレイに変えたことで建造費用保守管理費用を低減させたながらパッシブ防御力が高まったと海軍は説明。

ブロックIV建造も始まっており、設計改良で各部品の稼働期間が延びる。このためブロックIV各艦の供用期間が長くなる。供用期間中に三回補修を受けて15回の展開が可能となるという。現行の実績は4:14になっている。

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海軍はジェネラルダイナミクス・エレクトリックボートに696.2百万ドルでブロックV一号艦の建造材料調達をさせるべく契約を改編するとは票。ブロックVは全長を伸ばしヴァージニアペイロードモジュール発射管4基を搭載し、トマホーク対地攻撃ミサイルを発射する。ヴァージニアペイロードモジュールはヴァージニアペイロード発射管と類似し、実証済み設計を応用することで費用とリスクを低減させる。■

2018年3月21日水曜日

台湾向けF-15リース構想についてより詳しくはこちらをご覧ください。

先にお伝えしたF-15の台湾リース構想にはさっそく皆さんも反応していますが、さらに詳しい分析記事が出ましたのでご紹介します。ハリアーの取得というオプションは以前も出ていた気がしますが、イーグル+ハリアーの組み合わせが実現すれば台湾は相当強力になりますから、北京は何としても阻止ししょうとするでしょう。


The United States Could Offer Taiwan Leased F-15C Eagles According To Report米国が台湾にF-15Cイーグルをリース方式で提供可能との検討結果

Taiwan wants the F-35B but second-hand leased F-15Cs could give the country a boost in air power without setting off a geopolitical storm.

台湾が欲しいのはF-35Bだが中古F-15Cでも空軍力は相当増強できしかも地政学上の波紋は起こさない

BY TYLER ROGOWAYMARCH 19, 2018

TYLER ROGOWAY
湾がほしいのはF-35とくに固定翼機では不可能な分散基地から運用できるF-35Bなのは公然の秘密だが、オバマ政権は台湾のF-16購入要請でさえ却下した。仕方なく台湾はF-16A旧型を新鋭機に近い形に改修せざるをえなかった。トランプ政権は米台関係を書き直したいというが、F-35は簡単に入手させないだろう。だが使用済みF-15Cイーグルのリース契約なら可能性はある。
習近平に媚びて北朝鮮対決の手助けを求めることは最初から明らかなトランプ政権は台湾の取扱いについては何ら計画がないままだ。トランプは旅行法案に今週署名し米政府関係者の台湾直接訪問を勧奨することとなったが、これで中国が怒りをあらわにし米台間の軍事関係強化に警告を出している。だが二国関係の変化で米国は高性能装備を台湾に提示することになりそうだ。
台湾のUp Mediaが米国提示案を最初に報道し最新鋭戦闘機を台湾に輸出することと戦術機材の改修を否定することの中間の妥協策だという。それによるとUSAFで使ったF-15C/Dに聞こえる機材を厳しく使用制限しながら改修してリース供与するという。
TYLER ROGOWAY/AUTHOR

提案ではイーグルが迎撃任務に向いており短距離滑走路から運用可能とあり、ミサイルを多く搭載できることと航続距離には触れていない。台湾は中国空軍力の増強のみならず地理条件からも脅威を受けている。
中国は空母搭載機で台湾東部からも接近可能で長距離爆撃機が全島一周警戒飛行を行っており台湾を各方面から威嚇している。中華民国空軍はF-16A/B、ミラージュ2000、F-5、F-CK-1軽量国産戦闘機の各型を運用するがいずれも航続距離、兵装、レーダー性能でF-15に劣る。
仮に提案通りの実施となればF-15Cをどこから調達できるだろうか。およそ100機のF-15Cと少数のD型がアリゾナ州ツーソンの航空機墓場に保管中である。大部分は供用年数をすぎており構造補強ないし集中点検をしないと飛行可能にならない。
だがリース契約なら機体の構造改修を十分に行える。その他改修もあるが国務省がAPG-63V3アクティブ電子スキャンアレイレーダーの搭載まで認めるか不明だ。
同レーダーは世界最強の戦闘機用AESAレーダーと言われ、台湾のF-16A/B型も小型ながら強力なAESAに換装している。台湾がイーグル部隊をレーダー換装して運用すれば台湾は中国と質的に同等となり、低空飛行中の巡航ミサイル探知には有効だろう。台湾には巡航ミサイルが大きな脅威になっている。
TYLER ROGOWAY/AUTHOR
F-15C with APG-63v3 installed.

一方でUSAF内部でのF-15C/Dの将来は必ずしも保証されていない。F-15C/Dを退役させ改修F-16に置き換える構想が昨年に検討された。当面この物議をかもす構想は棚上げされているがUSAFは2020年代末にはF-15の主翼交換という高額出費を覚悟する必要が生まれる。
そこでF-15C/Dで待ち焦がれていた電子戦装備の改修が取り消しになったとの報道が先週出たばかりだ。イーグルが今後も活躍するためにはこの改修がどれだけ必要か力説しても足りないぐらいだ。

View image on Twitter
Scoop: USAF Forgoing @BAESystemsInc EPAWSS Survivability Upgrade On @Boeing F-15C Fleet, Will Only Upgrade E-model Strike Eagles http://aviationweek.com/awindefense/usaf-forgoes-epawss-upgrade-f-15c-eagle … JD @AviationWeek


もしUSAFが同機を数年以内に退役させれば新型レーダー装備の機体が台湾に渡ることになる。 
F-15の台湾売却案はロッキード・マーティンが行った太平洋軍向け背景説明にある台湾F-16の能力向上策から浮上した。ボーイングは中国に民間機製造で相当の投資をしており、イーグル売却には難色を示すのは十分予想される。だがリース契約ならF-15はボーイングを介さずに米国政府が準備することとなり議論の余地は残る。
2010 PACOM BRIEFING

イーグルの性能がずば抜けているとはいえ、台湾が本当は欲しいのはF-35Bで別の能力が実現する。だが台湾にはステルスやセンサー融合は重要ではない。イーグルでは不可能な極端に短い滑走路での運用こそ魅力の点なのだ。
AP

台湾では戦闘機を高速道路上で運用訓練を行っているが、中国情報機関にこの点は知られており、F-35BやAV-8Bならもっと小さな運用地点で十分なのだ。
このことを念頭に台湾にAV-8Bを提供することも追加解決策になる。米海兵隊のハリアー部隊が退役すれば各国で引っ張りだこになると以前指摘しているが、同機を艦載運用する想定の国がある一方で台湾は陸上配備し有事に臨時基地から分散運用する構想だ。
USMCのハリアーはAV-8B+型で中古APG-65レーダーを搭載する。レガシー・ホーネットから取り外したものだ。強力なAIM-120AMRAAMを搭載し小型AESAを付ければ非常に有能な対空兵器システムになる。とくに巡航ミサイル防空に有効で、機体は地方に隠せる。AV-8Bは海上目標を攻撃可能で有事に対地対艦攻撃に活躍出来る

USN
そうなると台湾に一番良いのは政治的にも最善と言う意味では中古イーグルとともにAV-8Bもリースすることではないか。短距離離陸運用の経験を得てから台湾はF-35B導入に向かえばよい。ただしその道が開くのは相当先のようだ。
イーグルの台湾向けリースは興味深い構想だが実現するかわからない。またハリアー調達の方が理屈の上でも実現性も高いように見える。ただし補給兵站上は難易度が高いが。

TYLER ROGOWAY/AUTHOR

トランプ政権が「一つの中国」政策への姿勢を変化させる中で台湾の戦闘機部隊の構成がどうなるかは引き続いてお知らせしていく。■
Contact the author: Tyler@thedrive.com

期待にこたえられなかった装備②ヘンシェルHs 129対戦車攻撃機はなにがまずかったのか

期待にこたえられなかった装備シリーズ②はドイツのヘンシェルHs129対戦車攻撃機です。コンセプトはいいのですが、優秀なエンジンは戦闘機優先で使えずフランス製の非力エンジンを搭載しましたが、登場のタイミングが悪くあと数年前に供用開始していれば話はかわっていたでしょう。ヘンシェルと言う会社には航空機部門はあまり重要ではなかったようです。

The Hs 129 Was Supposed to Be the A-10 of World War II Hs 129は第二次大戦時のA-10をめざしたがエンジンの性能不足と官僚統制のまずさで傑作機になれなかった

Bad engines and poor management doomed the German ground-attacker

The Hs 129 Was Supposed to Be the A-10 of World War II
March 21, 2016 Paul Richard Huard


ンシェルHs 129は一見すると完璧な対地攻撃機に見える。
双発で強力な装甲を施したコックピットはパイロットを小火器銃弾から守る。同機は当時最大級の機関砲を前方発射する設計だった。
Hs 129はドイツ空軍の究極の戦車キラーとなりソ連T-34戦車を上空から葬るはずだった。言い換えると第二次大戦版のA-10ウォートホグになったはずだ。
一つだけ問題があった。Hs 129の性能だ。原型のHs 129 A-1の性能が低すぎてドイツ空軍も受領を拒否したほどだ。
Hs 129はウォートホグではない。失敗作だった。
ただし同機は航空史上で特異な位置につく。ジェット戦闘機や弾道ミサイルまで製造したドイツ技術でも失敗作があることがわかるからだ。
「Hs 129はその時点でのA-10を目指したもののその目的は果たせなかった」とジョン・リトル(シアトルの航空機博物館学芸員)が語る。「A-10は低速ながら操縦性が高く戦車を狙い撃ちしてパイロットは生還できる」
「Hs 129は再設計し強力なエンジンに換装し低速性能を強化しながら操縦性を高めて標的を視認しやすくするべきだった」とリトルは述べる。「ドイツ空軍には残念ながらHs 129の必要性は高く実戦化前の段階で投入する必要があった。Hs 129は頑丈に作ってありパイロットの間ではA-10と同様だった」
1930年代末にドイツ軍地立案部門はルフトヴァッフェには専用の対地攻撃機が必要と判断した。スペイン内戦でコンドル部隊が対地攻撃ミッションを行い、低空攻撃で共和国軍が対地掃射で士気が低下する効果を確認し、物資補給処を攻撃し、砲兵隊をピンポイント攻撃していた。
攻撃専用機構想は前からあり、第一次大戦に初の機体が生まれている。

だがヒトラーは第一次大戦のやり方で戦争したくたなかった。迅速な移動でドイツの敵を一掃したかったのだ。このためドイツ地上部隊を支援する専用機材が必要となった。
だが設計上の困難さ、情報収集の失敗、空軍上層部の決定のまずさがHs 129の製造と配備に悪影響を与えたとリトルは言う。
上層部は「専用対地攻撃機の必要度を低く評価し特に対戦車攻撃機でこの傾向が強く、時を逸した」とし、「バルバロッサ作戦の前にドイツ情報部はソ連の戦車はわずか1万両と見積もっていたが、実は2万4千両だった。ドイツで専用対戦車攻撃機が必要と痛感されるまでに時間がかかりすぎた」
さらにドイツ政府はヘンシェルを汎用メーカーとみなし、他社機材の生産にあたらせたりしていた。
その結果、ヘンシェル製造の機体は少ない。Hs 129試作機が3機、Hs 129生産前試作機8機のあとHs 129は870機しか製造していない。これに対しメッサーシュミットBf 109は33千機、フォッケウルフFw 190は20千機も製造された。
Hs 129量産が始まった時点でドイツ陸軍は守勢に回り、ソ連装甲車両の破壊が急務となっていた。十分な機数がそろい兵装を積んだHs 129はソ連戦車に効果を発揮した。
ドイツでは残念ながらHs 129は5飛行隊しか編成されずしかも最適な兵装を搭載したとはいえなかった。
さらに設計に問題があった。Hs 129は満載時最高速が200マイルと低速でキャノピーは三インチのガラスがパイロット視野を妨げていた。
さらにHs 129が搭載したフランス製ノーム・ローヌ14Mエンジンが埃や砂に極度に弱く飛行中に突然停止することがあった。
パイロットが頑強な機体のHs 129を気にいったのはほぼ破壊不可能なためだった。また装甲車両攻撃用に大重量のRüstsätze攻撃パッケージを搭載できた。
ドイツ空軍の対地攻撃エースのルドルフ・ハインズ・ルファーは戦車80両を撃破し鉄十字騎士賞を受けている。ルファーは戦車撃破パイロットとして史上最も大きな成果を上げた。

だが本人のHs 129戦闘記録の幕切れは悲惨だった。1944年にソ連対空砲火が乗機をポーランド上空でとらえた。ルファーは即死し乗機は爆発した。■

2018年3月20日火曜日

速報: 台湾にF-15リース提供提案が入った(らしい)

台湾向けF-15リース案が浮上。実現すれば中国本土近くにイーグル展開へ
Defense.gov photo essay 120719-F-AD344-174
By: Staff Sgt. Christopher Hubenthal [Public domain], via Wikimedia Commons

台湾のUp Mediaが3月19日報じたところによると米政府からリース方式でF-15を台湾に提供する提案が入ったという。
  • 成立すれば米台両国にウィンウィンの結果が生れる。米国はイーグルを台湾に売却することに消極的で台湾は新造F-15を多数購入する財政負担を回避できるからだ。
  • 提案では機体寿命がまだ半分残る機材を改修し新型ミッションコンピュータや火器管制レーダーを搭載する。.
  • 台湾はT-38高等練習機を40機リースし、ノックス級フリゲート艦でもリース提供を受けたことがある。

詳細がわかりませんが、本当なら販売ではないのでレトリックで中国も文句はいえないわけです。しかし米空軍の老朽機材をリースするのでしょうか。新造機体だとまだいつになるかわかりません。いずれにせよ中国は神経質になるでしょうね。

★韓国向けF-35A一号機完成を盛大に祝わない事情とは

緊張緩和は韓国軍ではだれも信じていないのでしょうが、政府や国民が誤った考え方を強めているため「国民感情第一」の韓国では軍も大きな声を出せないのでしょう。大きな間違いでないことを祈るばかりです。前政権のすべてを否定したい現政権はなんでもいいから材料をさがしているのでしょう。実に非生産的な動きです。韓国聯合通信の記事です。



No hype expected for S. Korea's first F-35A stealth jet 韓国向けF-35A一号機では控えめな祝い方になりそう

A photo provided by Lockheed Martin of an F-35A (Yonhap)A photo provided by Lockheed Martin of an F-35A (Yonhap)


2018/03/17 10:10


SEOUL, March 17 (Yonhap) -- 韓国はF-35Aステルス戦闘機の韓国向け一号機ロールアウト式典は控えめに行うようだ。半島情勢に緊張緩和ムードがあることとロッキード・マーティン案件で汚職の疑いが出てきたことがあると防衛筋が指摘した。
韓国空軍は参謀次長Lee Sung-yong中将をテキサス州フォートワースの同社組立工場で3月28日に開く式典に派遣する。当初は空軍参謀総長Lee Wang-keun大将が参加すると見られていた。
国防調達事業庁 (DAPA)のJeon Jei-guk長官も式典に参列しないのは日程が合わないためと同庁は説明。
DAPAは韓国報道陣をソウルから現地へ招待する予定を取りやめた。
安全保障情勢がここにきて変化していることを指摘する筋がある。南北朝鮮の首脳会談とともにドナルド・トランプ大統領も金正恩との会談に合意している。昨年中の軍事緊張感と大違いだ。
さらにロッキードとの契約では贈収賄汚職があったと見る向きが多い。朴槿恵前政権の関与が疑われている。
韓国は2014年にF-35Aの40機調達を決めた。■

2018年3月19日月曜日

誕生から60年、DARPAの課題は今日でも有効

スプートニック人工衛星打ち上げ成功ででソ連に先を越された米国は大きなショックを受け科学技術の総合力を高めようとDARPAが生まれたのですが、いつもDARPA発表のプロジェクトは時代の先を狙い突飛な内容がいっぱいで楽しませてくれます。今回は生物学分野にも研究の焦点があることがわかりましたが内容はよくわかりません。ただ中国がDNAデータベースを全国民対象に構築するのは別の目的がある気がします。人体改造によるスーパー兵士製造の話は前からロシア、中国から聞こえてきますね。倫理上の制約がない両国だからこそ実現してもおかしくない構想です

Aviation Week & Space Technology

 

DARPA At 60 Still Working To Prevent More ‘Sputnik Moments’ DARPA創立60年、「スプートニクショック」再来の予防に努める

Mar 8, 2018Graham Warwick | Aviation Week & Space Technology


1958年、ロシアがスプートニク人工衛星を打ち上げた余韻の中、米国は先端研究プロジェクト庁を発足させ「技術面での奇襲攻撃」を防止しつつ米国技術の進展を進めることとした。以後60年がたちDARPAの活動する世界では軍事競合国のみならず民生市場からも奇襲攻撃を受ける可能性がある。
 民生電子産業、バイオ技術、人工知能(AI)等で開発の進展が早く悪用の可能性があることをDARPAは警戒し、ロシアや中国が極超音速兵器、電子戦、宇宙戦で進展を見せていることも懸念材料だ。
 プーチン大統領が発表した新型核兵器・極超音速兵器への防衛手段の開発はDARPAの担当範囲ではない。ミサイル防衛庁(MDA)の担当だとDARPA長官スティーヴ・ウォーカー Steve Walker は語る。だがDARPAも米国で極超音速兵器開発を提唱してMDAにロシアや中国技術の性能情報すべてを提供しているのも事実だ。
 「DARPAは極超音速技術を以前から研究している」「昨春に国防副長官に面会し米国の現状を他国との比較で示し国家として極超音速兵器開発の必要を理解させようとした」とウォーカーは述べる。結果として2019年度予算で研究は増額された。「欲しかったすべてではないが第一歩としは妥当」(ウォーカー長官)
 宇宙空間が厳しい場所になる中で同庁の関心は衛星を攻撃に強くするべく現在は地球静止軌道(GEO)に機能が集中しているのを低地球周回軌道(LEO)に移動させる。「GEOからLEOへの移動させLEOに多数の衛星を置いて代替させる」(ウォーカー)
 DARPAの新規プロジェクト、ブラックジャックの目的は民生産業が得意な安価で小型化技術を利用して衛星を大量製造し常時標的に対応させることだ。「必要なペイロードを乗せた衛星多数が常時上空にあり、耐用年数も2-3年で使い捨てにする」(ウォーカー)
 高性能電子技術、バイオ技術、AIの世界で米国がライバルから遅れているとウォーカー長官は見ていないがDARPAが特に関心を持つ技術分野があるという。「生物学が急速に進展中で中国はDNA解読に多大な投資をし自国民のDNAデータベースを構築中です。またバイオ関連で新規起業が多数あります」
 DARPAの関心事は本土防衛で攻撃の兆候を迅速探知するバイオ偵察biosurveillance技術で遺伝子操作の予防策を確立しつつ遺伝子を意図的に利用する勢力へ対抗することにある。また疾病への免疫性を短期長期で確立する技術も研究中だ。
 電子部門では「後れをとっていないが中国が大規模投資で国内基盤を強化中だ。もっとリードを取る方法が必要だ」とウォーカー長官はいい、DARPAの解決方法は電子産業再興事業Electronics Resurgence Initiative (ERI)で次世代の設計方法と製造技術を確立することだ。「中国は旧式技術で産業基盤を整備する。こちらは次世代レベルをめざす」。
 ERIはチップ製造に3D構造設計を導入するのが目的で現状の2Dレイアウトと違いを出す。「三次元設計に挑む」とウォーカーは述べ、パッケージング効率が上がれば劇的なまでの高速処理が消費電力を低いまま実現できる。
 人工知能でのDARPAの狙いは「第三の波」のAIだという。「現在は第二の波の中で、AlphaGoのような統計的学習システムが実用化されています。大規模データセットからパターン認識しますがまだ不安定です」といい、これに対し第三の波のAIシステムは「文脈適応」“contextual adaptation”で背景環境を理解し変化から学習していく。
 DARPAの説明可能AIでは信頼性高いマシン学習技術で人間の側にシステムによる決定を理解させ信頼させることがねらいだ。「マシン学習が何を考えてどうしてその決定にたどり着いたのかを説明させる」(ウォーカー長官)

 プーチンが公開したロシア兵器はスプートニクショックほどではなかったとはいえ発足して60年が経過したDARPAが技術面の奇襲攻撃を防止しつつ自国技術開発を進めるという任務で力を抜けないことを示している。■