2020年5月9日土曜日

速報 陸自向けV-22が日本へ到着

陸自向けV-22の初号機が日本に到着しました。

米国防総省の広報ウェブサイトDVIDSが写真入りで伝えています。



V-22 Arrives in Iwakuni

IWAKUNI, YAMAGUCHI, JAPAN

05.08.2020

Photo by Cpl. Lauren Brune 

Marine Corps Air Station Iwakuni  



陸上自衛隊向けV-22オスプレイが海兵隊岩国航空基地に2020年5月8日到着した。陸揚げされたV-22はJGSDF向けの初の機材。(U.S. Marine Corps photo by Cpl. Lauren Brune)


2020年5月7日木曜日

武漢ウィルス後のPRC① 中共を危険な存在と認識しないことが脅威

中国の危険性、中国共産党の危険性への認識が世界が広まっているとはいえ、いまだにこの見方を否定する勢力が残っているのも事実です。また、すぐヘイトだ、人種差別だと騒ぎ立てて本質から目をそらさせる勢力があるのはいかがなものでしょうか。今回のウィルス騒動で中共が悪の根源であるというのは明らかです。
国の目標は米国の国力を減退させるにとどまらず、米国主導の国際秩序に代わり共産主義に基づくグローバル統治モデルの樹立にある。

外交政策は自国社会や国際政治のありかたといった観点に基礎を置くものだが、過去に縛られがちだ。▶歴史からの学びに意義はあるものの、条件が変化すれば過去は参考にならなくなる。▶冷戦期の米外交政策は共産主義を世界に拡散するソ連政府像に支配されていた。▶ソ連は米国と協調せず、競合相手であり、そのためソ連の封じ込めが必要だった。▶米国の政策決定層はこの方向を米国社会が完全支持すると見ていた。

だが冷戦の対立構造が終わると安全保障担当補佐官、国務長官を歴任したヘンリー・キッシンジャーのような戦略思考家でさえ共産中国を無害な相手と誤解し、米国にとって「責任感ある相手」とか戦略提携国とさえ見て、中国の発展を好意的に捉えていた。

中国は単なるライバルではない。強敵である。▶目指す目標は米国の弱体化だけではなく米国に代わり、また米国が作ってきた自由な国際秩序に代わり、共産党の価値観に根付くグローバル統治態勢を樹立することにある。

PRCのほうがソ連より危険だ。▶それは中国が予測困難でありながら強力だからだ。▶急速に伸長する国力とイデオロギーが合体した上に強硬な指導者習近平がある。▶習は極端な野望と自らの権力基盤の保全に偏執する人物だ。▶ソ連より予測が難しい敵が中国だ。 

米国との競争に疲弊したUSSRの過ちを中国が学習しているため、中国はソ連より強敵だ。▶中国は極度の適応力がある敵だ。適応力が優れているため、中国は敵というより協力国とみなされてきた。▶中国は協力国として重要視され、西側の経済エコシステムに組み入れられ、繁栄の享受を許されてきた。▶中国の急成長が可能となったのは自国の努力もあるが、米国の政府、産業界、金融市場、高等教育機関があったからだ。
.
米政府、産業界、知識層には今でも中国をパートナーととらえ、米中関係を「正常」状態に戻す期待が残っている。▶コロナウィルス後も米エリート層と中国実業界の密接な関係は変わりがなく、トランプが大統領の座から降りればすべて正常に戻ると考えているようだ。

だがそんな望みも中国が繰り広げる地球大プロパガンダ活動により砕かれている。中国は工作活動でソ連でも実現できなかった形で米国社会へ侵入し弱体化をはかり、機会をうかがっている。そのひとつがUsenetで、GPS情報を盗み、キャッシュを埋め込んでいる。

中国共産党の特徴をもとに中国の行動様式、戦略目標を見ると、今後中国の国力が弱体化する兆候は見えないが、経済面で力の源泉を遮断すれば変化が生じそうである。また習近平の権力基盤を崩し退陣させればよい。

中国を変化が容易な国と見るのは誤りだ。▶中国は国際機関に自国の価値観を持ち込んでおり、一帯一路も経済の外観をかぶせているだけだ。

米国は攻撃を受けたり大きな危機の発生後に、脅威が判明した場合に競合国家からの脅威に最も激しく反応する。▶ただし今回はこれが見当たらない。▶歴史を見れば真珠湾、チェコの蜂起、ベルリン危機後の米国の対応は十分なものであった。▶冷戦により高レベルの脅威が判明してもトルーマン政権の脅威対応は不十分で、ソ連の強権外交に対抗できなかった。それでも同政権が米国や同盟国のために戦略的な基盤を形作ったことは評価せねばならない。

中国との対決には脅威認識など過去を想起させる要素がある一方、米国社会の多数が中国を脅威と認めていないため、状況は冷戦時より悪いといえる。▶これは経済界のみならず安全保障分野でも見られる傾向で、米国の反応を鈍くさせる原因にもなっている。▶米政府関係者や経済界のトップに中国の脅威を過小視する傾向がある背景にはPRCによる精力的な工作活動がある。脅威と捉える傾向を最小限にさせながら必要な対応策へ集中できなくしている。▶こうした特殊な動きのため必要な対応が米国で遅れがちで危険を生んでいる。▶中国に効果を生む対応を開始する前にこちらは戦略面、道徳面で明瞭さを確立すべきだろう。■

この記事は以下を再構成したものです


May 2, 2020  Topic: Politics  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaCoronavirusGreat Power CompetitionRise Of ChinaTrade War

Bradley A. Thayer is Professor of Political Science at the University of Texas San Antonio and is the co-author of How China Sees the World: Han-Centrism and the Balance of Power in International Politics. Lianchao Han is vice president of Citizen Power Initiatives for China. After the Tiananmen Square Massacre in 1989, Dr. Han was one of the founders of the Independent Federation of Chinese Students and Scholars. He worked in the U.S. Senate for 12 years, as legislative counsel and policy director for three Senators. @thayerhan1.


This article by Bradley A. Thayer and Lianchao Han first appeared in Real Clear Defense on April 30, 2020.

2020年5月6日水曜日

ボーイングの忠実なるウィングマンが完成、UACVの様相を変える存在になる




ステルス性能を有する航空戦力チーミングシステム無人機は交換式機首に各種ペイロードを搭載し現場で簡単に交換できる。

れはボーイングのみならず無人航空戦闘全体で大きな一歩となる。無人チーミング機の先行生産3機が完成し、航空戦力チーミングシステム(ATS)と呼ぶ全体システムの中心要素となる。War Zoneは少数の報道機関とATS関係者と懇談し、同システムについて公式発表前に学ぶことができた。

ATSは有人機と同時投入され「忠実なるウィングマン」が驚くほどの低費用で実現する。有人機より大幅に低費用で戦術機の機材数を大幅に増やす効果も期待させる。また全く異なる戦術を実現させる可能性を秘める。有人機の生存性も高める。

ボーイングは人工知能(AI)と自律運行技術の組み合わせが革命的性能のカギと見ており、有人機の戦力を大きく拡張する効果が生まれるという。今回の無人機は遠隔操縦ではない。ポイントアンドクリックで指示を与える。AIにより飛行制御の大部分を自動化して操作員の注意を戦術面に集中させる。操作員は付近を飛ぶ機体に搭乗し、航空戦の様相が一変する。

ボーイング・オーストラリアとオーストラリア空軍(RAAF)の共同作業は早いペースで進展中だ。事業開始発表からわずか14ヶ月でボーイング・オーストラリアは縮小モデルによるソフトウェア、作動原理のテスト実施にこぎつけた。

今回の事業は設計製造がオーストラリア国内で完結する点でも特徴的だ。つまり米国内事業ではないが、成果は米国含む同盟国多数の航空戦に大きな変化をもたらしそうだ。

背景
今回の説明はジェラド・ヘイズ(自律航空技術部長)、シェーン・アーノット博士(航空戦力チーミングシステム部長)の2名が行い、両名は丁寧に対応してくれた。内容には興奮させるものがあった。

同事業は自律運行無人戦闘航空機で新次元を開く歴史的かつ前例のない動きの一部で、米国外での新型機開発はボーイングにも初事例だ。

ボーイング・オーストラリアが製造中の3機は試作機ではなく、自動化製造工程から生まれた実用機材と同様に作動する機体だ。この製造工程自体も量産工程の実証機能を兼ねる。

この3機で実証しながら全体システムの妥当性も検討する。システムは機材以外にユーザーコマンドインターフェイス、モジュラーセンサー装備、整備方法、データリンク、ソフトウェアで構成する。

ボーイングはATSの基本テスト以外も行うため3機を製造した。各機は航空戦への影響も試される。成功すれば生産仕様機材に応用され運用にも反映される。つまり各機で性能実証とともに運動性能を試す。

開発の大部分は仮想空間で行われており、パイロットとの相互連絡、コマンドへのフィードバックや作動状況も精緻な仮想モデルで実証した。

この「デジタルツイン」コンセプトで仮想モデルと関連システムによりテスト、開発、訓練のすべてを実機を使わず可能にした。時間経費を大幅に節約し、ボーイングはATSのデジタルツインで実機完成を加速化する並行開発を実施した。また縮小モデルを飛行させ、テストとリスク低減を実現しつつ実機生産を並行実施できた。

現状通りなら実機の初飛行は2021年2月になる。残る2機も加わりテストは加速する。予定通りならボーイングは革新的な新型機を2年たらずで飛行させることになる。これ自体が驚くべき達成だ。

機首が特徴
ATSの機首はミッションに応じた交換式だ。この部分は8.5フィートの長さで9,000立方インチの空間に各種装備を搭載できる。交換式ペイロードによる任務対応は無人戦闘航空機(UCAVs)のトレンドとなり、同じ機体を各種任務に投入するのが普通となろう。

センサーやペイロードを交換式にすれば多数の機材でそれぞれミッション対応が可能となる。敵戦闘機の排除なら、1機に赤外線捜索追尾装置をつけ、2機にレーダーを、他機に通信ゲイトウェイを、残る各機に電子戦ペイロードや防御用レーザーを搭載すれば良い。このように状況に応じた編成が可能となれば敵に最大の圧力を与えつつ、専用の無人機を都度導入する必要がなくなり費用対効果で有利となる。ボーイングがモジュラー式機首を採用したのはこうした変化を見越したためだろう。

オープンアーキテクチャの採用は各社また各国で独自のミッション用ペイロードを機首に搭載するためだ。統合型エレクトロニクス装置をで既存装備との共存をはかると輸出の際に困難な課題で高価になる。輸出を最初から想定しているATSではペイロード交換式による解決策を模索している。

経済性を重視
事業の大目標は低価格化だ。空軍部隊が機体を一定数購入して戦闘効果を実現する構想だ。喪失しても戦術機材や戦力に大きな損失とならない。ボーイングATSチームは具体的数字を示さなかったが、USAFがテスト中のクレイトスのヴァルキリーに十分対抗できるとの発言があった。

また目標を「損耗受け入れ可能」(場合により処分覚悟)とし、機体価格は2百万ドルとトマホーク巡航ミサイル並にする。同機を投入する環境がハイリスクであることを考慮すれば、戦闘中喪失を最初から織り込む意義がわかる。性能とコストのバランスを考慮している。

このバランスがATS設計に影響を与えた。機体は低視認性(ステルス)を意識しているが、性能とコストを秤にかけステルス水準を決めた。全翼機形状にしなかった理由を問われて、ATSチームは全翼機は製造コストが上がる、また操縦特性を簡素化しつつ強力な動翼4つを使う、そのうち「テイルロン」は大型でYF-23と類似していると回答した。

主翼は大型複合材2枚だけで構成し、787で実用化された高性能技術を応用した。残る部分も高度複合材でコスト削減と製造工程の短縮化を図りながら耐腐食性と軽量化を実現した。

BOEING
ATSは F-15 Strike Eagle派生型と同時に飛行する。 


ボーイングは画期的な戦力拡大手段として世界中の空軍部隊が導入できる価格の機体にしたいとする。RAAFのみを顧客に想定せず、ペンタゴンの導入も期待する。同社はATSが空軍の要求内容にどこまで合致するか米空軍へ説明しているという。クレイトスのヴァルキリーがDoDで注目を集めているのを意識し、ボーイング・オーストラリアとRAAFはXQ-58を共同開発中のクレイトスと空軍研究本部(AFRL)のチーム以上の技術成熟度、柔軟性、価格水準を実現しようというのだろう。

ただワイルドカードは別の機材が開発中の場合で、ロッキード・マーティンノースロップ・グラマンも新型機を開発中かもしれない。

ボーイングからATSは既存のボーイング機材との統合運用は不可能と発言が出た。統合化作業は相当の経費あるいは大幅なハードウェア変更が必要になる。ボーイング以外の機材を稼働中の各国に輸出する想定で、障壁を予め排除しておく意図からだろう。

戦闘機以外と機材と組む
ATSは戦闘機部隊支援だけが目標ではない。ボーイングはATS編隊を給油機や海洋哨戒機、早期警戒機に随行させる想定だ。この三型式の機材整備を進めるオーストラリアには納得の行く想定だろう。

最重要ながら最も脆弱な機材の援護ミッションが実現すれば有人戦闘機は前方作戦に専念できる。

画面が大型化したとはいえ戦闘機コックピットからではATSの性能をフル活用できないと考えボーイングは大型機にATS操作員を搭乗させ大画面でATS編隊の制御を細かく行う構想だ。戦闘機一機で3ないし4機の無人機の制御が可能とボーイングは説明しており、E-7ウェッジテイル早期警戒機のような機材なら数倍の機数を一度に統制できる。

有人機による統制なしで無人戦闘航空機(UCAV)として運用する可能性を尋ねたが、チームは回答を避け、あくまでも忠実なるウィングマンとしての投入が中心だと述べた。

背後に規制と役所仕事があるのだろう。AI搭載の高性能航空戦闘無人機の輸出でも同様だ。今後実証が進めばハリウッド映画がイメージを作った信頼度への疑問も減るだろう。ということで当面はATSは自由に運用できない。

未解明の要素
ボーイングは忠実なるウィングマンについて情報開示する姿勢を強くしているが、疑問も多々残る。運動性能、航続距離、G耐性、離着陸性能、稼働期間はどうなのか。もっと重要な疑問はペイロードだ。機首が交換式なのはいいが、どんな兵装や装備を搭載するのか。空中給油に対応するのか。さらに同機が将来投入されるミッションでどこまでの効果を発揮するのだろうか。

こうした疑問が残るが、ボーイングには大きな成果となり、高性能無人機技術での主導的立場を実証した形だ。同社には米海軍向けMQ-25スティングレイ艦載給油機があるが、全く異なるATSを世界の軍用機市場に投入できればボーイングが将来の航空戦で中心となる可能性が出てきた。■

この記事は以下を再構成したものです。


BY TYLER ROGOWAYMAY 4, 2020

パンデミック中だからこそ中国の動向は要注意:台湾海峡をめぐる米中の動き


ーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSバリー(DDG-52)が4月24日今月2回目の台湾海峡通航を実行した。中国は同地区での海軍活動を活発化している。

バリーは4月10日にも台湾海峡を通過航行し、同日に中国は夜間軍事演習を展開していたとワシントンDCに本拠を置くジェームズタウン財団の中国ウォッチャー、ジョン・ドッツォンが指摘。

中国が同地区で軍事活動を強化しているのは「台湾総統選挙で蔡英文が再選され中国メディアが強い論評を展開するのと呼応」(ドッツォン)。

バリー航行の同日に中国は075型揚陸艦2号艦を進水させた。
.
中国の揚陸作戦は台湾に焦点をあて、人民解放軍(PLA)海軍、海兵隊は海上からのミサイル発射能力を向上させているとペンタゴンは昨年5月に指摘していた。

ただし同報告では中国には台湾海峡を横断し台湾へ揚陸作戦を実施する能力はないとしていた。揚陸部隊装備では075型より小型の揚陸艦が大半だ。

071型揚陸輸送ドック型艦艇は排水量19,855トンの推定で、米海軍のサンアントニオ級揚陸輸送ドック艦は25,900トンだ。

昨年9月25日、中国は075型揚陸強襲艦の1号艦を進水し、排水量は30千から40千トンの推定。米海軍のアメリカ級、ワスプ級強襲揚陸艦は各41千トン、45千トンで、議会調査局は075型3隻が建造中と推測している。

「071型、075型ともに大型艦で台湾相手の揚陸作戦で重宝されるはずだが、中国のねらいは別にあるとみる向きもある」と調査局は指摘。

中国は揚陸艦艇を充実し平時の人道救難活動、非戦闘住民避難活動や海賊対策に投入する可能性もあるが、同時に南シナ海、東シナ海での領海主張の一部に使いそうだ。■

この記事は以下を再構成したものです。

USS Barry Transits Taiwan Strait

April 24, 2020 6:20 PM


2020年5月5日火曜日

南朝鮮陸軍の実力で北朝鮮侵攻を食い止められるか


たしかに韓国陸軍は同国の存続を守っていますが、現政権があまりにも親北的なため軍にも悪影響が出ていないか他人事ながら心配です。軍関係者が政権よりまともならよいのですが、当の軍が北による射撃事案を人的エラーとして軽く扱ったのを見ると心配になります。

まとめ:ROKが防御を崩さず勝利する可能性が高い。北朝鮮軍は旧式装備の上、栄養不足だ

去70年間にわたり大韓民国陸軍(ROK陸軍)は単なる警察隊から世界有数の戦力を整備し技術的にも最先端をゆく部隊に進化した。この驚愕の進化は1950年から53年の北朝鮮による侵攻がもたらした。以後北朝鮮は再侵攻を一環して狙う脅威のままだ。

ROK陸軍は朝鮮半島の南半分へ進駐した米軍が1945年に創設した。「国家保安連隊」9個が軽装備歩兵部隊として25千名態勢で生まれた。米ソ関係悪化を受け規模は50千名に増強された。

1950年6月の北朝鮮による侵攻で創設されたばかりのROK陸軍は準備不足を露呈した。対戦車砲の欠如は明らかで朝鮮人民軍の第105戦車旅団がT-34/85戦車、SU-76自走砲およそ120両を展開してきた。ROK側の第二次大戦時標準による小規模装甲部隊では対抗できず釜山までの撤退を余儀なくされた。

それから3年間に渡り米国がROK陸軍を近代的な基準に引き上げるべく懸命に訓練し、装備を提供したが防衛の任には不十分なままだった。だがその効果もあり、戦争終結後の数年で韓国駐留米陸軍部隊は2個師団に、その後1個師団に縮小できた。

1960年代、70年代を通じROK陸軍は高度の警戒態勢を解かず、北朝鮮の侵攻に備え、軍事的挑発は国境地帯で数回発生したものの、相当規模の部隊をベトナム戦に派遣し、対ゲリラ戦で勇猛果敢さの定評を得た。ベトナム戦には合計31万2千853名が参戦し、戦死者4,687名・負傷者5千名を数えた。

南朝鮮が大規模な陸上部隊を維持してきたのは160マイルにおよぶ軍事境界線防御に必要なこと、朝鮮人民軍も兵力規模を重視する構成になっていることが理由だ。このため世界各地に展開する米陸軍が47.5万名なのにROK陸軍は56万名体制という特異な状況が生まれた。

今日のROK陸軍は41師団15個旅団で11軍団を編成している。戦車2,360両、戦闘車両・装甲兵員輸送車2,400両、野砲5,180門を備える。さらに各部隊は概ね米軍式に編成されており、3個師団に独立した火砲、工兵隊、通信隊がつき軍団を構成する。ROK首都防衛司令部が別にある。

ROK陸軍は技術面で北朝鮮に優位性を保っており、装甲車両では世界トップクラスの装備を供用する。K-2ブラックパンサー戦車、K-21歩兵先頭車両、K-9サンダー自走迫撃砲が機械化部隊の中心装備だ。にもかかわらず、部隊は防御作戦を中心に訓練され、装甲師団を常備軍として保有せず、4個装甲旅団が反攻作戦の先鋒となる。ROK陸軍の中心は歩兵師団で6個師団が機械化師団、16個歩兵師団が常備軍として存在する。さらに機械化旅団2個が米第2歩兵師団の一部となる。

米陸軍と同様にROK陸軍も特殊作戦部隊を重視する。第707「白虎」特殊任務大隊は米デルタフォースと類似した存在だ。特殊部隊4個旅団と特殊強襲6個連隊が通常部隊を支援する。別の特殊部隊旅団3個は陸上、海上、空中からの侵入を専門とし北朝鮮工作員を殲滅する。常に侵攻の脅威にさらされてきた同国では常備軍と別に「郷土」防衛師団12個が分散配置され後方の守りとして北朝鮮特殊部隊や工作員に対応する。

ROK陸軍は大規模かつ強力な地上軍で国境地帯で北朝鮮侵攻部隊に対応できる。このため北朝鮮は長距離火砲を国境地帯に配備し、軽歩兵と敵地侵入部隊、さらに化学放射能部隊を整備し、南の技術優位に対抗しようとしてきた。この70年間の戦闘をROK陸軍が抑止してきたのは事実で、平時の陸軍部隊として成功の証と言える。■

この記事は以下を再構成したものです。

by Kyle MizokamiMay 2, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: The Buzz  Tags: North KoreaKim Jong-unNuclearWarMilitaryMissileTechnology

Here's how each side's forces stack up.

ソ連上空のU-2撃墜から60年で明かされる当時の情報

U2Credit: Lockheed Martin Skunk Works

ソ連スヴェルドロフスク上空でU-2(フランシス・ゲイリー・パワーズ操縦)が撃墜され60年になったが、事件を取り巻く興味深い事実7つを紹介したい。
1. 撃墜の瞬間
1960年5月1日午前10時ごろ、CIAのパイロット、フランシス・ゲイリー・パワーズは高度7万フィートでロッキードU-2Cのコックピットに座りソ連の工業都市スベルドロスク上空を飛行中だった。南部のICBM基地があるチュラタムから開始してソ連の秘密都市数カ所のスパイ飛行は半分完了していた。共産革命前のスベルドロスクはエカテリンブルグと呼ばれ(今日この名に戻っている)ニコラス二世暗殺の舞台となった。だが1960年の当日はソ連の主要工業都市のひとつだった。CIAはU-2Cでソ連上空偵察飛行を開始して4年目だったが、スヴェルドロスク上空飛行は今回が初めてだった。
高高度を飛ぶパワーズに地上のソ連防空軍がしつように乗機を狙っていると知る由もなかった。SA-2地対空ミサイル部隊が機体をロックしていた。ミサイルの一発はパワーズ機を迎撃しようとしたMiG-19を撃墜したが、別の一発がパワーズ機の水平尾翼を吹き飛ばしたため、U-2Cは高高度操縦が困難になった。機密解除のCIA文書ではロッキードでU-2を設計したクラレンス・「ケリー」・ジョンソンも同席し1962年に身柄を解放されたパワーズに事情聴取しており、本人はその瞬間で機体制御ができなくなったと語っている。

everything was orange

2. スパイ機の領空侵犯にフルシチョフが猛烈に抗議
ソ連内部で墜落した米パイロットを捕獲し混乱が生まれた。ソ連のニキータ・フルシチョフ首相は国連安全保障理事会に米国に対する措置を求めたが、米政府は偽装情報を公開し、Aviation Weekが律儀に報道している。米政府の嘘はフルシチョフの開いた記者会見ですぐに露呈した。ソ連がU-2の残骸から回収したスパイ装備を公開したのだ。
Spy plane intrusion
Source: Aviation Week Archives

3. キャリフォーニア州バーバンクのスカンクワークスではジョンソンの部下たちがU-2Cがソ連の防空装備で高度7万フィート飛行中に撃墜できたとは信じられなかった。CIAはアイゼンハワー大統領にソ連防空体制でU-2を喪失するリスクは低いと伝えていた。ジョンソンのU-2記録を見ると当時の政治の混乱ぶりが伺える。
Project logbook image

  1. ロッキードのCEOロバート・グロスはソ連がU-2を高度7万フィートで撃墜できたと信じようとしなかった。パワーズがソ連での拘束を18ヶ月後に解かれ帰国するまで真実は不明だった。当時のロッキードはマッハ3飛行可能なA-12シグナスをCIA用に開発中で、高度と速度で迎撃から逃れるのは可能としていた。U-2撃墜直後のロッキードの考え方がグロスが英国の関係者向けにしたためた書簡に示されている。
 CEO's letter
5. 墜落するU-2からの高高度脱出
ソ連のSA-2地対空ミサイルはスヴェルドロフスク上空高度70,500フィートの機体後方で炸裂した。パワーズは遠心力で体がキャノピーに押し付けられたため射出座席を作動できなかった。そこでキャノピーを吹き飛ばし自爆装置を作動させてから脱出しようとした。高度34千フィートで爆発物をセットする前にシートベルトを外したが、コックピットが半分飛ばされ、自身の酸素ホースでつながっていた。自爆スイッチに手が届かず、ホースが破れ、パワーズは機体から放り出された。パラシュートが自動的に開く15,000フィートまで降下した。U-2パイロット用ハンドブックもCIAが2012年に機密解除されており、「高高度脱出は、緊急時を除き、推薦できない」とある。コックピット火災や「制御不能」の事態が緊急事態とされていた。ミサイルが高高度でU-2を撃墜する事態は当時は想定外だった。
Pilot HandbookCredit: CIA

6. 最後の望みとしての自爆装置
CIA編集のU-2飛行ハンドブックでは「自爆装置」として機体脱出前にパワーズが作動させるはずの爆発物の言及がある。説明では2.5ポンドの高性能火薬とあり、「機体の緊急時破壊用」とある。別のCIA報告書も2013年に機密解除となり、パワーズ事案の詳細説明がある。それによれば「仮にパワーズが爆発物の作動に成功していても、機体の破壊は不可能だったろう。爆発物は小型でカメラの破壊用だった」とある。
CIACredit: CIA

7. 高高度で低視認性
パワーズ機がミサイルで撃墜される前、ソ連は3年に渡りスパイ機の迎撃を試みていた。MiG-19やMiG-21がレーダー操作員に誘導され、機関銃やミサイルの有効射程まで接近するべく、エンジン出力最大でのズーム上昇で対応しようとした。だがソ連戦闘機は大気が薄い高高度では十分な操縦性を発揮できず、迎撃できずに帰還するのが常だった。U-2パイロットはMiGを視認することもあり、当初は重量軽減のため無塗装機体だったため目立ち、脆弱だった。このため以後のU-2では銀色の機体に青黒色の塗装が施された。■


この記事は以下を再構成したものです。

Seven Artifacts Surrounding The 1960 U-2 Shootdown

May 01, 2020