2020年8月29日土曜日

ミサイルテスト翌日、航行の自由作戦を実施した米海軍は毅然たる態度を中国に示した

 国軍が南シナ海でミサイルテストを実行したが、米海軍ははやくも翌日に誘導ミサイル駆逐艦で航行の自由作戦(FONOP)をパラセル諸島(中国、台湾、ヴィエトナムがそれぞれ領有を主張)で展開した。USSマスティン(DDG-89)が同地域を航行したと第七艦隊が8月27日に発表。

 

「航行の自由作戦は国際法が定めた海洋の権利、自由、合法的な活用を護持するのが目的であり、中国が設けた無害航行への制限という非合法措置に対抗するもの。台湾、ヴィエトナムも中国の主張するパラセル諸島を取り巻く境界線に反対している」と米海軍はUSNI Newsに語った。

 

中国はヴィエトナム沿岸から東部にひろがる島嶼のつながりに基地を数か所構築し、同地区は自国領海と主張し外国艦船の進入は許可が必要としている。

 

米海軍発表文には「該当三カ国はいずれも軍艦の『無害通航』でも許可または事前通告が必要としている」とある。「許可や事前通告を一方的に求めることは国際法上認められていない。事前通告なしで無害航行を実行することで米国は中国、台湾、ヴィエトナムの非合法要求に挑戦した形だ」

 

USSマスティンが現地を通行した前日に中国は近くにミサイルを着弾させていた。複数筋の報道ではDF-21D、DF-26Bが発射されたとあり、中国が狙う抑止力の中核となる装備だ。

 

「こうした演習も2002年南シナ海当事国宣言でうたった事態を複雑にするような行為を回避するとPRCが応じた姿勢に自ら反するものだ」との声明文をペンタゴンは発表している。

 

米中間のかけひきが忙しくなった週としては控えめな表現といえる。中国の発射テストに先立ち、U-2偵察機が「飛行禁止地帯」のある渤海上空に展開した。中国は人民解放軍(PLA)が飛行禁止地帯と通告したのは中国軍が実弾演習を同地区で展開していたためと説明。

 

中国政府は同機の飛行を「むき出しの挑発行為」と非難し、人民解違法軍海軍(PLAN)が演習を展開中の上空を飛行したとした。

 

「侵入されたため中国の演習訓練が大きく邪魔された。中米間の航空海上安全行動ルールに反するものであり、国際慣行にも違反する」と中国国防省報道官Wu Qianが声明文を発表した。「米軍による行為は意図を誤解されかねずもっと重大な事態に発展していたかもしれない」

Such accidents have occurred with tragic results, unfortunately.実際に事故が深刻な事態になった例があった。

 

2001年4月に、米海軍のEP-3スパイ機が中国のJ-10戦闘機と空中衝突し、中国人民解放軍空軍(PLAAF)のパイロットが死亡し、米軍機は海南島への緊急着陸を迫られた。米軍機搭乗員24名は11日間の身柄拘束を受け、米国政府は事態に関し謝罪せざるを得なくなった。

 

今月では先にUSSマスティンが台湾海峡を通過航行しており、海軍は「通常」かつ「国際法に則った」行為と発表していた。同艦は海上自衛隊艦船と東シナ海で共同演習を先に行っていた。

 

今年に入り台湾海峡通航は10回目となったが、これでおわりそうにない。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

U.S. Navy in South China Sea After China Tests Two 'Aircraft-Carrier Killer' Missiles

August 28, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaA2/adDF-21DDF-26DF-26BMilitaryTechnology


by Peter Suciu


Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


日本初の防衛装備輸出はフィリピン向け防空レーダー。安倍総理辞任発表日に成約という皮肉な事実に注目

 

 

利害が対立するスプラトリー諸島内フィアリークロス礁に集結した中国漁船(AFP/WESTCOM)

 

本初の防衛装備品輸出が成約した。対象はフィリピン向けの固定式及び移動式防空監視レーダーで南シナ海含む地点をカバーする。

 

8月28日にフィリピン国防相デルフィン・ロレンザナが首都マニラで購入契約書にサインし、三菱電機が固定式長距離対空監視レーダー三基、移動式対空監視レーダー一基を納入する。

 

同日のフィリピン国防省発表はレーダー型式に触れていないが、三菱電機のJ/FPS-3アクティブ電子スキャンアレイレーダーが固定基地に、J/TPS-P14移動式レーダーと配備されるとの報道が出ていた。

 

同省は今回の導入はホライゾン2対空監視レーダーシステム構築の一環であり、納入は2022年からとも発表している。

 

ともに米国の同盟国の両国間で成約した意義は大きい。日本による防衛装備の完成品輸出は2014年の輸出制限緩和以来初めてとなる。日本は当時から各地で輸出を目指してきたが、成約は皆無だった。それ以前の日本からの輸出は部品のみだった。

 

輸出制限緩和は安倍晋三首相が進めた防衛姿勢の変化および国内防衛産業の振興策の一環でもある。背景には急速に軍事力を整備しつつ強硬な姿勢を鮮明にした中国がある。安倍首相は8月28日に健康問題を理由に辞任発表した。

 

三菱電機はホライゾン2対空レーダー調達の採用認定を3月に受けていた。レーダーは政府間契約で総額103.5百万ドルで導入される。

 

導入するレーダーは南シナ海南方のほか、戦略的に重要なベンハムライズBenham Riseでも空中監視に使用される。後者はフィリピン中央部ルソン島から東150マイルにある海中プラトーで、天然資源が豊富である。■

 

Japan secures first-ever major defense export with Philippine radar order

By: Mike Yeo


2020年8月27日木曜日

南シナ海に弾道ミサイルを撃ち込んだ中国の狙いは明白だが、軽挙妄動としかいいようがない

 国人民解放軍ロケット軍が弾道ミサイルを南シナ海北端に続けて打ち込んだ。発射地点は中国本土の別々の箇所で、対艦攻撃を模した演習なのはまちがいない。オンライン飛行追跡ソフトでは米空軍のRC-135コブラボールスパイ機が同地域を飛行中だったことが判明している。

 サウスチャイナモーニングポスト紙が2020年8月26日に中国軍がDF-26B、DF-21D各一発を発射したと報道した。米国国防関係者は人民解放軍ロケット軍(PLARF)は弾道ミサイル4本を発射したと評価しているが、正確なミサイルの型式を断定する情報がない。DF-21DはMRBM(射程621マイルから1,864マイル)だが、DF-26Bは中距離弾道ミサイル(IRBM)で射程も1,864マイルから3,417マイルと長い。

 

DF-21D、DF-26ともに複数弾頭を搭載し、空母のような大型で比較的低速の目標に命中させるよう飛翔制御できるとみられる。中国メディアではDF-21Dを「空母キラー」と呼んでいる。

 

IMAGINECHINA VIA AP

DF-21D medium-range ballistic missiles.

 

IMAGINECHINA VIA AP

DF-26 intermediate-range ballistic missiles.

 

 

サウスチャイナモーニングポストはDF-26Bを青海省から、DF-21Dは浙江省から発射したと報じている。各ミサイルは紛糾中のパラセル諸島と海南島間の海域に到達した。

 

すべては中国が8月25日にNOTAMとして通達した内容と合致する。両発射地点は南シナ海へMRBMとして到達可能な射程範囲だが、実際に発射されたのがMRBMだったとはかぎらない。

 

ミサイルの発射本数ならびに型式で情報が錯そうしてるが米空軍はRC-135Sを同海域に送り、弾頭の着水状況を観察したはずだ。コブラボールは現在三機しかなく、今回の機体は登録番号62-4128がつく。

 

同機は嘉手納航空基地を離陸し、きついUターンをして基地に戻った。この飛行パターンはコブラボールの弾道ミサイル弾頭の画像、映像、電子偵察でよくあるパターンで、同機は弾道ミサイル発射時点の監視も可能だ。

 

南シナ海に向け発射されたミサイルの本数、型式がどうであれ、発射そのもが米軍に対するメッセージであることは明らかだ。長距離対艦弾道ミサイルは中国の接近阻止領域拒否能力をさらに向上させる装備だ。

 

今回の発射は中国の海軍演習とともに、米軍活動が増えてきたことへの対応であり、米側の同盟国のオーストラリア、日本、台湾もここにきて活動を増強している。7月には米海軍のニミッツ級空母、一番間のUSSニミッツがUSSロナルド・レーガンと南シナ海で訓練を展開し、ここ数年で初の同海域での演習となった。

 

中国も似たような演習を行っている。PLARFは昨年DF-26数本DF-21D数本を南シナ海に向け発射したが、落下地点は今回よりはるか南方でスプラトリー諸島に近かった。中国軍は黄海、渤海でも演習を展開している。東シナ海での演習が最近終わったばかりだ。すべての演習は人民解放軍が太平洋各地で展開した演習につながるものだ。

 

南シナ海と隣接地区に関し中国軍の演習への米軍による航空情報収集監視偵察ミッションが増加している。中国側は昨日もU-2Sドラゴンレイディー情報収集機が演習海域北端上空を飛行したと公式に非難した。同海域では中国艦が実弾演習をしていた。

 

Planet Labsが公表の8月25日の衛星画像に黄海でのミサイル発射らしきものが見えるが、水上艦か潜水艦からの発射のようだ。こうした行動を米側が情報収集の対象としていることは疑いない。

 

こうした行動の背景に米中間での地政学的対立があり、南シナ海医以外に香港の民主勢力への弾圧、台湾が中国と一層の距離をとろうとしていること、貿易問題さらにCOVID-19への対処がある。

 

8月26日、米政府は中国企業24社を制裁対象とすると発表したが、各社は人民解放軍の戦力増強とつながり、南シナ海の人工島構築に関与している。さきだって7月に米トランプ政権は中国の広範囲に及ぶ南シナ海での主張は非合法とする政策方向を正式に採択していた。

 

総体として、中国軍が最精鋭の戦略装備の能力を南シナ海でためし、米側に見せつけたのは驚くべきことではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです

 

China Tests Long-Range Anti-Ship Ballistic Missiles As U.S. Spy Plane Watches It All

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The launches were clearly meant to send a message to the United States, which has been closely observing Chinese naval activity across the Pacific.

BY JOSEPH TREVITHICKAUGUST 26, 2020

 

 


2020年8月24日月曜日

F-35フル生産が2021年3月に実現する

 Two U.S. Air Force F-35A Lightning IIs, assigned to the 4th Fighter Squadron from Hill Air Force Base, Utah, conduct flight training operations over the Utah Test and Training Range on Feb 14, 2018. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee)

ヒル空軍基地(ユタ州)の第4戦闘飛行隊所属の米空軍F-35AライトニングII編隊がユタテスト訓練場で飛行訓練を展開した。Feb 14, 2018. (U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Andrew Lee)



ンタゴンの調達トップが8月20日、ロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機は来年3月までにフル生産に入ると明言した。これまで数々の遅延が発生してきた同機生産だが、一番新しいところではCOVID-19による工場一部立ち入り制限でも予定が狂わされている。


「3月の目標達成は確実とみている」と調達維持担当国防次官エレン・ロードが述べた。


Ellen Lord, undersecretary for AT&L > Defense Contract Management ...



ロードは来週にペンタゴンの運用テスト評価部長ロバート・ベーラーとパタクセント海軍航空基地へ向かい、共用シミュレーション環境(JSE)内でフライト運用テストを行う。


F-35のフル生産はこれまで「JSE内で挫折」してきた。同機はペンタゴン史上で最高の3,980億ドルが投じられている。

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2021年3月の目標はBloombergが先に報じており、疾病管理予防センターの「安全な作業環境だと確認する」ガイドラインのため先送りされてきたものだ。


F-35は2019年10月現在で440機以上が世界各地に納入されている。フル生産の許可が下りれば、ロッキードは年間160機までの生産が可能となる。

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Military.comでは昨年9月に、共用シミュレーション環境のためF-35の初期作戦能力テスト評価 (IOT&E)が遅れていると報じてきた。


「JSEが適切にテストを完了すれば」IOT&Eは進展するとDoD報道官空軍中佐マイク・アンドリュースがその時点で声明文を発表していた。「敵の最新鋭機や高密度防空体制といった現実的なシナリオでF-35のIOT&Eを進めるためJSEは必要だ」■


この記事は以下を再構成したものです


 

F-35 Will Finally Go into Full Production Next March, Acquisitions Chief Says

21 Aug 2020

Military.com | By Richard Sisk


2020年8月23日日曜日

理解に苦しむ韓国の原子力潜水艦取得構想は「愚行」に終わるのか

 

 

国国防部が8月10日に発表した「2021-25年度中期国防事業」では作戦統帥権移転後に備えた国防力増強を主張している。北朝鮮の核脅威に対応し各種装備品で能力向上を図るとあるが、もっとも目を引く、かつ物議を醸しだしそうなのが原子力推進潜水艦(SSNs)取得の可能性だ。

 

韓国国防省は4千トン級の次期潜水艦で推進方式を特定していないが、ディーゼル電気推進や大気非依存型推進ではなく原子力推進にするとの明言が高官から出ている。文在寅大統領は2017年大統領選挙運動中に韓国にSSNsが「今の時期に」必要と訴えていた。今回の国防省発表は米韓ミサイルガイドライン改訂の直後に行われた。韓国がSSNs建造に向かうと仮定すると、朝鮮半島を取り巻く安全保障面でジレンマが生まれるが、一方で規模は小さいものの北朝鮮脅威に対する抑止力になる。

 

原子力推進潜水艦が追加されれば数の上の劣性を覆せると主張する向きがある。韓国は潜水艦18隻を供用中だが北朝鮮は70隻近くある。韓国でSSNs保有の声が強くなったのは北朝鮮が潜水艦発射方式弾道ミサイル(SLBMs)の初発射に2015年成功したのがきっかけだ。昨年は金正恩が新造潜水艦を視察したニュースを国営通信が配信した。記事では新型艦の詳細に触れていないが、専門家は北朝鮮が核弾頭付きSLBMの発射技術を磨いていると分析する。北朝鮮の潜水艦戦力は急成長している。SLBM発射テストもその後数回実施している。2010年の天安事件が示すように、北朝鮮には被害を与える意思も能力もある。そのため、北朝鮮が海上で展開する脅威へ対抗戦略が必要となる。ただし、本稿では原子力推進潜水艦の導入でこの課題はすべて解決できないと主張したい。

 

まず、黄海では4千トン級潜水艦が安全に作戦実施できない。平均深度は日本海の1,500メートルに対し、黄海は50メートルしかない。さらに海底に膨大な量の廃棄物があり、潜水艦のプロペラが破損する恐れもある。そもそも原子力潜水艦を導入するのは北朝鮮潜水艦を長時間追尾する目的のはずだ。だが、水中環境が不利だと大型艦では北朝鮮の超小型潜水艇をうまく追尾できない。しかも北朝鮮は沿岸近くで運用するはずだ。2010年に天安を攻撃した潜水艦は130トンの小型艦で白翎島の海岸近くだった。実際に北朝鮮の潜水艦は東沿岸のシンポでの建造が多くなっている。

 

次に原子力推進潜水艦は通常動力艦より騒音が大きい。気づかれずに行動できてこそ潜水艦は実力を発揮し、脅威になる。韓国海軍の演習では潜水艦探知の成功率は25パーセント未満とわかっている。探知を逃れるカギは騒音をどこまで抑え、かつすぐれた操艦ができるかにかかる。だが、小型原子炉はディーゼル電気推進艦以上の騒音を発生するので敵の探知に引っかかる可能性が高い。

 

最後に北朝鮮潜水艦全隻を同時追尾するのは不可能に近い。これは原子力潜水艦で航続距離が伸びても同じことだ。例として2015年に北は潜水艦50隻を同時に出動させた。通常は韓国情報部が衛星画像で基地内の北朝鮮潜水艦の動向を把握している。出港が判明すれば警告を出す。しかし、潜水艦多数の同時出港から混乱が生じ、心理的影響は絶大だった。そうなると数が意味を持ってくる。ただし、上記の海洋面の制約条件のため、少数かつ高価な原子力潜水艦をいかに効率よく運用しても数のギャップを埋めることはできない。

 

こうした戦術面での制約条件に加え、原子力潜水艦の導入で安全保障上のジレンマが地域内に生まれ、朝鮮半島の安全保障が低下する恐れがある。

 

現時点で原子力潜水艦を運用するのは六か国にすぎない。うち、五カ国は国連安全保障理事国であり、核兵器保有も国際的に認知されている。残る、インドは核不拡散条約 (NPT)を批准していない。

 

逆に韓国は同条約に加盟している。韓国が原子力潜水艦を建造すれば、世界で合意形成済みの不拡散原則に反する。国際社会の反発以外に韓国は「米韓核協力合意」で定めた制約を克服する必要にも迫られる。

 

同合意では濃縮ウランの軍事利用を禁じている。2015年改定で韓国も20パーセントまで濃縮ができるようになったが、軍事利用は厳しく禁止されている。米国は不拡散原則を中核的な国益とみており、韓国が原子力潜水艦を建造すれば米国の反対は目に見えている。韓国は2003年に原子力潜水艦建造を極秘に進めようとしたが、構想が明るみに出ると国際原子力エナジー機関、米国双方から注目されてしまった。さらに同地域では中国も重要な国であり、韓国の原子力潜水艦建造に敏感に反応するはずだ。

 

2016年に韓国が米THAAD装備の導入を決定するや、中国は報復経済措置をとり、韓国とのビジネスや中国旅行客の訪韓を制限した。この結果、韓国はいわゆる「三無」政策を迫られた。THAADの追加配備はなし、米韓日三カ国軍事同盟は成立させない、米主導ミサイル防衛ネットワークに加入しない、という内容だ。米中間の競合が強まる中で、原子力潜水艦建造に走れば、安全保障面の懸念を招き、さらに不利な条件が韓国に課せられるだろう。

 

National Interestではザカリー・ケック、ヘンリー・ソコルスキの両名が韓国原子力潜水艦の費用対効果を分析し、「愚行」と断言していた。両名は原子力潜水艦一隻の建造単価70から90億ドルはP-8Aポセイドン哨戒機他ミサイル防衛に投入する方が費用対効果が高いと主張していた。原子力潜水艦建造の単価は張保皐 Jangbogo-III級SSKなら三隻、あるいは小型のSon Won-II級なら9隻に相当するとの分析もある。

 

原子力潜水艦の建造費用が効果を大きく上回るのは戦術面の理由以外に周辺国の示す対応がある。そうなると韓国にとっては敵潜水艦探知に役立つ哨戒機に投資する方が賢明だ。また無人水中機にも投資し、今後の技術成長に期待する方がよい。

 

文政権が目指すのは戦略装備品を整備し北朝鮮を抑え込み戦時統帥権移転に静かに備えることである。文大統領は戦時統帥権移転を2022年までに実現すると公約している。そのため、韓国の独自継戦能力評価に基づく三段階移転条件を満たそうとしている。ただし、ここで疑問となるのは「もし北朝鮮が米韓両軍の膨大な戦力でも抑止できないのなら、韓国の原子力潜水艦一隻で抑止効果が期待できるはずがない」(マイケル・ペック)との見方だ。単純な答えは米国の「核の傘」が北朝鮮を抑え込んでいるというものだ。核の脅威には先制攻撃を受けても核反撃能力を残存させ報復能力を維持して対抗できる。文大統領が原子力潜水艦があれば一次攻撃を生き残れない核兵器がなくても北朝鮮へ抑止効果が生まれると見ていると仮定しよう。そうならケック、ソコルスキがいう「愚行」が戦略面で生まれる。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Time for South Korea to Build Nuclear Submarines?

August 22, 2020  Topic: Security  Region: Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: NuclearSubmarinesKoreaMilitaryTechnologyNuclear Submarines

by Sanghoon Kim


Sanghoon Kim is a Research Fellow with the Political and Security Affairs team at the National Bureau of Asian Research (NBR). He is also a graduate student at Korea University, majoring in international security, and had served in the Republic of Korea Navy as an officer for three years.


2020年8月22日土曜日

米海軍の目指す次期戦闘機NGADはどんな機体になるのか

 

Lt. Rob Morris, from Annapolis, Md., observes a F/A-18F Super Hornet from the “Jolly Rogers” of Strike Fighter Squadron (VFA) 103 land on the flight deck of the Nimitz-class aircraft carrier USS Abraham Lincoln (CVN-72) on May 30, 2019. US Navy Photo

 

海軍が新型艦載戦闘機の開発作業を静かに開始した。20年ぶりの開発となり、事業室を立ち上げ、業界と協議を始めた。USNI Newsの取材でわかった。

 

新型機はF/A-18E/Fスーパーホーネット、EA-18Gグラウラー電子攻撃機を2030年代に更新する大規模事業だ。

 

調達部門トップに就任したジェイムズ・ゴーツは次世代航空制空戦闘機(NGAD)構想の事業推進室を立ち上げたと先週記者団に明かしている。

 

海軍航空システムズ本部(NAVAIR)が発足させたNGAD事業推進室だが、時あたかもペンタゴンは予算不足に直面しながら新国防戦略でロシア、中国の脅威にインド太平洋地区で対抗する必要に直面している。

 

 

新型有人戦闘機の目指す方向

米海軍は有人戦闘機の実現にむかっており、F-35CライトニングII共用打撃戦闘機で実現した性能以外にさらに進歩した技術も導入し、航続距離は伸びるはずとブライアン・クラーク(ハドソン研究所で海軍関係アナリスト)はUSNI Newsに以下述べている。

 

「既存の性能と同様の水準を21世紀モデルとして構築する必要がある。センサー入力は全てシームレスに融合統合し、パイロットに活用させる必要がある。自律運航機能の採用も必要だ」とクラークは解説する。「そうなるとパイロットにはコンピュータとの共同作業がF-35以上に必要になり、コンピュータが機体を飛ばしシステムを操作する度合いが今以上になる」

 

海軍は完全新設計の第六世代機というものの、ロッキード・マーティンF-35とボーイングF/A-18を合わせて新技術を盛り込もうとしているとクラークは解説する。

 

「これではうまくいかないのではないか。コストが上昇するが、海軍には予算に余裕はない」

 

F-35の戦闘行動半径が700カイリだが、海軍は1,000カイリ以上を望んでいる(クラーク)。

 

開発工程を加速化する

 

海軍が新型機の配備開始に想定する2030年代にはスーパーホーネットが耐用年数末期に達する予定で、海軍はスーパーホーネットの供用状態をにらみながら時間の余裕がないことも承知している。

 

事業を加速しつつ新設計構想の実現を狙う海軍だがペンタゴン予算に余裕がない。

 

「海軍は時間表を早めてNGADをスーパーホーネットに交代させるつもりだが、新設計でエンジンも新型になれば、技術リスクも増える。同時に日程を早めれば日程上のリスクが増えるし、対策予算が確保困難な環境になる」(クラーク)

 

海軍の2021年度予算案ではスーパーホーネット調達を終了し、製造元ボーイングとの複数年度調達の最後とする。海軍は5年間で45億ドルを捻出してNGADに使うと説明している。

 

議会予算局の2020年1月報告ではF/A-18E/Fの更新機に670億ドルが、グラウラーでは220億ドルが必要と試算している。

 

「試算には新型ジャマーポッドの配備費用、既存装備の能力向上費用は含んでいない」と報告書にある。「たとえば、海軍は新世代ジャマーポッドをEA-18Gに搭載するが、これだけで40億ドルかかる」

 

事業推進室立ち上げ

 

海軍はNGADの代替策検討(AOA)を2019年7月に行ったが、国防長官付のコスト評価事業評価(CAPE)はAOAは「不十分」と2019年9月にまとめたとNAVAIR広報官コニー・ヘンペルがUSNI Newsに明かしている。

 

NGAD事業のスタートとして海軍は次世代制空機事業推進室を5月に発足し、海軍ではこれをPMA-230と呼称している。その主幹にアル・ムソー大佐が就任した。ムソーは以前はミッション統合特殊事業室(PMA-298)でも主幹を務めていた。

 

海軍はNGADに関し民間企業との接触を始めており、ボーイング、ロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンの競作になりそうだ。

 

情報請求がいつ出そうかと問われて、ヘンペル広報官は必要書類を準備中と答えた。

 

海軍からスーパーホーネット、グラウラーの後継機の詳細はほとんど発表されていない。だが2016年に海軍は各種システムのファミリー構成方式を模索しこれをF/A-XXとして戦闘機一機種を調達する以前の構想を変更した。

 

各種システムのファミリー方式で海軍は空軍のNGAD開発と類似した道をたどるとクラークが解説し、海軍は有人戦闘機を購入し、その他無人装備で補完してミッションを完遂する。

 

「ウェポンペイロード、ステルスも大切だが、速力、航続距離を重視する。C4ISR性能を引き上げるが、搭載量や敵防空網突破能力の一部は重視しない。こうした性能は無人装備に任せる。そこで各種システムのファミリー構成が活きてくる。F-35を5機投入するかわりに新型機3機うち無人機数機で同じミッションが実行できる」(クラーク)

 

新型有人機にはステルスを、無人機には速力、航続距離、大量搭載能力を任せるのが各種システムのファミリー構成の骨子だ。

 

海軍作戦部長マイケル・ギルディー大将は昨年末に海軍が目指す将来の航空戦力は有人、無人双方の装備で構成するとワシントンDCで開かれたフォーラムで述べていた。ただし、航空機の運用装備については今日の原子力空母以外の可能性もあると匂わせていた。

 

新型戦闘機構想が進む中で、敵勢力が低コスト長距離ミサイル整備を進めており、空母を狙うことへ対抗策が必要とクラークも指摘する。

 

「新型有人機の航続距離を延長して、中国、イランさらにロシアが長距離ミサイルで空母を狙う状況に対抗する構想ですが、勝ち目のないゲームになります。というのはミサイルのほうが安価なためです。航空機は高価ですので費用対効果で不利なのです」

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有人機、無人機の併用でこの問題に対応できそうだ。

 

「費用対効果の問題はこれで解決できるかもしれません。航空機をそこまで長距離飛ばす必要がなくなります」

 

「機体を何千マイル飛ばしても、敵の対艦弾道ミサイルは2千マイル先から発射できるわけで、有人機は到達不可能です。有人機にはせいぜい千マイルまで対応させればよく、その先は無人装備に任せればよいのです」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Navy Quietly Starts Development of Next-Generation Carrier FighterN

By: Mallory Shelbourne

August 18, 2020 7:27 PM


2020年8月21日金曜日

今再び注目されるベルグラード中国大使館爆撃事件(1999年)

 ベルグラード中国大使館が爆撃で全壊したことで反米デモが中国で広がった。ただ大使館を意図的に爆撃する論理的な理由がなく、反中感情が爆撃につながったとの説明も不可能だ。

 

NATOによるユーゴスラビア航空戦はセルビア、コソボ双方で数百地点を空爆したが、ある施設の破壊により反西側、反米の非難が世界半周離れた地点で発生した。標的はベルグラードの中国大使館だった。

 

NATO空爆作戦は1999年3月24日に始まった。コソボのアルバニア系住民の迫害を止める交渉が流れた後のことである。ユーゴスラビア陸軍全体がコソボ住民の虐待に関与していたといわれる。目標リストには首都ベルグラードにある政治軍事両面の施設があった。

 

合計28千発もの爆弾がユーゴスラビアに落とされた。同国はオハイオ州と同じくらいの面積だ。当時の国防長官ウィリアム・コーエンは連合軍を「史上最高の精度を行使する空軍力」と述べていた。空爆で一般市民500名が死亡しているが、これだけの量の空爆としては目立って少ない犠牲で、NATOは各標的を「慎重に選択し」たうえで「セルビア市民の被害を最小限に抑えるよう多大な努力を払った」と説明していた。

 

ところが5月7日に、ベルグラードの中国大使館に共用直接攻撃爆弾5発が衛星誘導で命中した。投下したのは米空軍B-2スピリット編隊だった。中国人3名が死亡した。新華社のShao Yunhuan、光明日報のXu Xinghu 夫妻、さらに中国人20名が負傷し、5名は重傷だった。

 

ビル・クリントン大統領が異例の陳謝として「深い哀悼の念」を被害を受けた中国人に示し、攻撃は誤爆だったと述べた。NATOは大使館がユーゴスラビア連邦補給調達局 (FDSP)の司令部として機能していたとの情報で動いたと主張。

 

トーマス・ピッカリング国務次官は中国側への詳細説明で米国は国家主導によるミサイル部品のリビア、イラク、ユーゴスラビア各国向け供給先だと認識していたと述べた。ピッカリングは「多重要素の過誤」が1997年から続き、誤爆の原因を三点あげた。FDSPが入る建物だと誤って認識したこと、米軍、米情報筋が中国大使館の所在地を誤認識していたこと、またFDSPを実際に知る筋から裏をとらなかったことである。ピッカリングの指摘の通り、米NATO外交筋は移転後の中国大使館を「非爆撃目標」データベース上で改訂していなかった。

 

攻撃は誤爆だったというものの、反米抗議の波は中国全土に広がり、北京の米大使館はじめ各地領事館に数万名のデモ隊が押し掛けた。一部で略奪行為が繰り広げられた。中国当局が立ち入り禁止にしなかったらそのまま大変な事態になるところだった。

 

中国ではベルグラード大使館が破壊されたのは事故ではないとの見方が大半だった。中国政府でさえ、地図が古くて大使館が爆撃されたと信じることはできなかった。攻撃が意図的だったのかは別として、中国国民には外国人への反感が深く、その背景は数百年前にさかのぼる。不平等条約、一方的な要求やその他植民地主義が中国を弱体化させたとみる向きは今回の攻撃を外国勢力による恥辱が再び発生したとみた。

 

ただし同時に中国共産党が反西側デモをあおっている証拠もあった。中国当局は共産党の大学組織を通じてデモ隊をあおっていた。ガラス瓶、石、レンガ、ペンキさらに火炎瓶が北京の米大使館に投げられた。成都では領事公邸が放火された。中国共産党は厳しい統制を全国に敷いていたので、これ以上の暴力沙汰が許容されたとは思えない。ただ強力な米軍と情報機関が大使館の緑の屋根を軍事補給拠点と間違えたと想像するのは困難だ。

 

中国が陰謀説に傾いたのは無理もない。中国大使館が爆撃を受ける理由がなく、そもそも、すべての情報を握り、強力な米軍が誤爆するだろうか。単純な誤りのはずがない、中国大使館を爆撃するとは中国人民を苦しめる帝国主義の動きなのではないか。

 

だがそもそもなんのためなのか。意図的に大使館に爆弾投下することで中国を挑発する理由は論理的に考えてられない。米国の反中感情に動かされたとも思えない。陰謀説に動機が見つからないのが欠陥だ。説明がつくような悪意は愚行が理由ではないとのハンロンの剃刀の警句が思い起こされるのである。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Oops: In 1999, a U.S. B-2 Bomber 'Attacked' ChinaAugust 19, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: B-2MilitaryTechnologyWorldWarChinaAir ForceStealth

by Kyle Mizokami

 

Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.