2020年11月17日火曜日

強力な米製装備品をさらに改装して供用するイスラエルにかなう敵はいるのか 四つの事例をご紹介

 


 

 

スラエル国防軍(IDF)が米製装備品を各種供用しているのは、米国からの大量な軍事援助があるためだが、米製装備品が過酷な砂漠環境や市街地戦での作戦展開が必要なIDFの要求条件に最適設定になっている保証はない。このためIDFでは米製品を大幅改修しており、なかにはIDF独自の仕様に進化したものがもある。今回はIDFで供用中で大幅改修された米製装備品を見てみよう。

 

1. MAPATS対戦車ミサイル

 

IDFでは長年にわたり対戦車誘導ミサイル(ATGMs)を使用している。イスラエルを取り巻く砂漠地帯では対戦車ミサイルは極めて有効な装備品だ。イスラエルが初めて使ったATGMはフランス製SS.10、SS.11でその後1970年代末に米製TOWに切り替わった。(IDFはオレフと呼ぶ)ただし、TOWは有線誘導式のため射程に制約があり、使用条件も限られる。樹木や送電線があるとTOWの誘導が妨害され、運用部隊も危険になる。そのためイスラエルはレーザー誘導方式TOWを開発した。推進力を増し、弾頭部分も改良したため貫通力と飛翔速度が向上した。このMAPTSは輸出も好調だが、現在イスラエルは完全国産設計の新型ATGMを導入中だ。

 

 

 

 

2. イスラエル製のM16 、CAR-15改良型

 

IDFではテイヴァー銃に大部分切り替えているがM16もまだ使っている。しかし、1980年代後半から1990年代にはFN FALやイスラエル製ガリル小銃にとってかわったM16が第一線で使用されてきた。なお、ガリルカービン銃は全長の短さのため現在でも装甲部隊で供用中だ。イスラエルは小銃の近代化にもとりくんだ。IDF歩兵部隊の戦闘場面は市街地が多いため、M16やコルト653の銃身(それぞれ20インチ、14.5インチ)は扱いにくい。そこで銃身は12.5インチに短縮化された小銃には新たに「メクズラー」の名称がついた。

 

3.対空機関砲マクベトMachbet

 

20mm機関砲を複数備えるM163VADSは米軍では短距離防空装備として「一時しのぎ」の手段とされてきたが、イスラエルはVADSを1982年のレバノン戦争で多用した。シリアのMiG-21撃墜以外にが発射速度の高さを利用し地上支援、市街地や山岳地での敵地上部隊制圧にも投入した。米軍では1990年代からM6ブラッドレイ・ラインバッカーの登場で第一線を退いたが、イスラエルは逆にVADSを改良し、「マクベト」にした。電子光学式追尾装備、新型レーダー、スティンガーポッドとADAネットワークのデータリンクを搭載し、従来より広範な標的に迅速対応できるように進化した。

 

4. F-15 バズメショパーBaz Meshopar

 

イスラエルはF-15を真っ先に導入した。1970年代から今日までイスラエル空軍の主力戦闘機として長年供用している。空対空任務の卓越した性能が1982年のレバノン戦で発揮されたが、オペラ作戦、木の脚作戦の長距離攻撃ミッションでも性能をいかんなく発揮した。この背景に国産の航法センサーポッドの存在がある。イスラエルはその後対地攻撃に特化したF-15EストライクイーグルもF15Iラアムとして導入したが、第一世代第二世代のイーグルも新しい仕様に改修され国産電子装備等を搭載した。これがF-15バズメショパー、あるいはバズ2000だ。改修内容には新型レーダー、AIM-120、イスラエル製パイソンミサイル、コックピットをグラスコックピットにし、電子戦能力も向上させた。改修は1995年から2001年にかけ行われ、改修型F-15は今後も供用される。■

 

この記事は以下を編集したものです。

 

Wanna Know How Israel Wins War After War? Custom U.S. Weapons.

November 15, 2020  Topic: Security  Region: Middle East  Blog Brand: Tags: IsraelIDFAmericaMilitaryArmyTechnologyFmsFmfIsrael Defense ForcesF-35

by Charlie Gao

 

Charlie Gao studied political and computer science at Grinnell College and is a frequent commentator on defense and national-security issues. This article first appeared in 2018.

Image: Reuters.


2020年11月16日月曜日

空母キラーミサイル二型式が洋上艦艇に命中したと主張する8月テスト内容での中国の言い分をあなたは信じますか、

 



 

月に入り中国が8月実施した「空母キラー」ミサイル2型式の試射の詳細を公表している。各ミサイルは数千キロを飛翔し、南シナ海パラセル諸島付近の標的に命中したと中国は説明している。

 

人民解放軍の元大佐で現在は北京の航天大教授Wang Xiangsuiがサウスチャイナモーニングポスト紙にミサイルはともに移動船舶に命中したと語っている。テストではDF-21D、DF-26Bの二種類が投入され、中国の目指す抑止力の中核となる装備だ。

 

DF-26Bは青海省から、DF-21Bは浙江省からそれぞれ打ち上げられ、目標地帯は中国当局があらかじめ立入り禁止措置にしていた。

 

 

 

DF-26とは

 

DF-26は移動式二段ミサイルで固体燃料の中距離弾道ミサイル(IRBM)で2015年9月の軍事パレードで初公表された。射程4千キロとされ、核・非核両用で、地上目標、海上目標を狙う。弾頭は1.2トンから1.8トンを搭載可能で、有事には米領グアムを攻撃可能だ。DF-26が空母キラーと呼ばれるのはニミッツ級フォード級の超大型原子力空母が標的とされるためだ。

 

DF-26は中距離核兵力条約で禁止対象となる兵器である。冷戦終結jに米ソが調印したが、中国は一度も条約交渉に招かれず、米国が昨年に条約から脱退した際に中国が条約から自由に兵器を配備しているためとした。

 

一方、DF-21Dは

 

DF-21Dは世界初の対艦弾道ミサイル(ASBM)で、これも「空母キラー」とされる。射程は1,800キロで艦船、とくに紛争地帯で敵勢力の接近を阻止する機能が期待され、東シナ海・南シナ海への投入がありうる。

 

米海軍の空母以外に日本の新型航空母艦やオーストラリアの強襲揚陸艦も標的になる。

 

今回のミサイル二型式のテストの前日に中国は人民解放軍海軍の実弾演習を展開中の渤海上空の飛行禁止空域に米国がU-2スパイ機を送り込んだとして非難していた。米海軍もUSSニミッツ、USSロナルド・レーガンの各空母打撃群で「自由で開かれたインド太平洋を支援すべく」戦術防空演習を展開していた。

 

サウスチャイナモーニングポスト紙は中国政府が米海軍による演習に強い嫌悪を示し、露骨な挑発であるとしたと伝えている。一方で米国は中国のミサイル発射テストを無謀かつ安定を損ねる行為だと対抗した。

 

今回のミサイルは人民解放軍が保有する地上発射式弾道ミサイル、巡航ミサイル1,250発の一部にすぎないことに注意が必要だ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

Report: China’s ‘Aircraft-Carrier Killer’ Missiles Hit Target Ship in August

November 15, 2020  Topic: China  Blog Brand: The Buzz  Tags: ChinaDF-21DDF-26BASDMMilitaryA2/adTechnology

by Peter Suciu

 

Peter Suciu is a Michigan-based writer who has contributed to more than four dozen magazines, newspapers and websites. He is the author of several books on military headgear including A Gallery of Military Headdress, which is available on Amazon.com.


2020年11月15日日曜日

第六世代ステルス戦闘機は米国で完成している。予想より10年も早く飛行できた理由とは....

 第六世代ステルス戦闘機は米国が各国に先駆け飛行を開始させたようです。F-35で20年以上たっても完成しない間に技術は一気に次の段階に進んだのでしょうか。また数年で完成したのはなぜでしょうか。今回の記事はその片鱗に触れていますが、はいそうですか、と簡単に納得できない点もあります。ただし、航空機製造の技術体系が大きく変わるパラダイムシフトが米国で実現したのは事実のようですね。

 

USAF

 

国の謎に包まれた第六世代ステルス戦闘機は想定より5ないし10年も早く飛行を開始した。空軍の次世代制空戦闘機(NGAD)構想が始まり数年経過しているが、実機登場は2030年以降と見られていた。

この背景になにがあったのだろうか。考えられるのがデジタルエンジニアリングで試作機、設計図面、技術詳細を仮想再現し、テストや解析を「金属切り出し」より先に完了してしまうことだ。この作業で第六世代ステルス戦闘機は完成したのだろう。

空軍調達トップのウィリアム・ローパー博士がデジタルエンジニアリングを大々的に提唱している。ローパーがデジタルエンジニアリングの論文 “There is No Spoon: The New Digital Acquisition Reality”を発表している。 

「『デジタル三本柱』とはデジタルエンジニアリング・マネジメント、アジャイルソフトウェア、オープンアーキテクチャアであり、これがステルスに貢献する。次のパラダイムシフトは軍用分野でこの三技術で優位を確保することだ。より良いシステムを構築するのではなく、システムをよりよく構築することで、設計が短縮され、機体組立がスムーズになり、アップグレードが容易になる」

仮想シミュレーションや高度コンピュータ技術で設計が迅速化された以外に試作機多数の製造が不要となりコストが下がった効果が大きい。歴史を眺めるとペンタゴンで新型機というと、短くても10年かけ設計審査、各種調達段階を経たのちに試験開発にさらに数年をかけてきた。

ではどうやって第六世代機特有の技術詳細を試作機の飛行前に実現できたのだろうか。ここに高度デジタルエンジニアリングやコンピュータモデリングの妙義があり魔法がある。仕様が多数あってもシミュレートし仮想評価できる。ローパー論文ではデジタルエンジニアリングでは想像、直観といった人間特集の認知力を使い新装備品システムの開発を進めるとある。

大気の状態、空力学の諸現象、熱特徴、機体外部の構成、エンジン性能のすべてが正確に高度アルゴリズムで再現できる。完璧な際限が不可能な要素もあるが、デジタルエンジニアリングの効果は実証ずみだ。こうした効果からローパーがいうようにデジタルエンジニアリングが重要な検討の「水準を上げる」効果を示し、設計陣も可能性の幅を広げた。■

この記事は以下を再構成したものです。

Why An Air Force 6th-Gen Stealth Fighter is Here Almost 10 Years Early

by Kris Osborn - Warrior Maven

-- Kris Osborn is the Managing Editor of Warrior Maven and The Defense Editor of The National Interest --

Kris Osborn is defense editor for the National Interest*. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.* 


2020年11月14日土曜日

北朝鮮海軍がイルカを軍用用途に訓練中か。衛星画像で浮かび上がった疑惑。

 


HI Sutton Image Used with Permission

 

朝鮮がイルカ等を軍用用途に投入するため訓練を展開しているとする証拠が衛星画像で浮上してきた。

 

イルカなど海生哺乳類の訓練で先陣を切ったのは米海軍で、サンディエゴを本拠に海軍用途への利用を模索した。この用途のための投資は並大抵の国では不可能だ。これまでロシア海軍が黒海、北極海の基地で同じ用途を模索している例が唯一だった。

 

画像情報収集により北朝鮮が早ければ2015年10月に同じ目的で作業を開始していたと判明した。西海岸ナンポの海軍施設で確認された。北朝鮮は海軍近代化の一環でこの事業を進めているようだ。

 

衛星画像では造船施設と石炭搬送用ふ頭の間に茶色の水面があり、ここに動物を飼っている。ただしこの囲いは連続使用されていないようで、訓練は付近の海軍部隊が行っている。その後主要施設は同地を流れる川の付近に移動しており、イルカ飼育と思われる活動は2016年10月に拡張された。

 

米海軍、ロシア海軍の事例が参考となる。米国はイルカ、アシカを訓練し、ロシアはシロイルカ、イルカ、アシカを対象としている。米海軍はイルカ等をヴィエトナム、湾岸戦争で実際に利用した。ロシアはシリアに投入しか可能性がある。ノルウェーに現れたシロイルカがロシア海軍の活動と関係していた可能性がある。ノルウェー沖合でロシアがシロイルカに何をさせていたかは議論の的だ。

 

今回の北朝鮮画像の囲いの大きさから対象はイルカと推測される。

 

また養殖魚用の囲いの可能性もある。北朝鮮は近年魚類の養殖に力を入れており、各地で養殖魚を算出している。多くは軍が運営している。だが、囲いの形状が異なる。各地の養殖施設とも異なる。

 

海生哺乳類は訓練すれば海底で物を拾わせることが可能だ。同じ技で海底の物体を検分させることも可能で、ケーブルほかソナーアレイも対象となる。


HI Sutton Image Used with Permission

 

海生哺乳類を海軍基地の防御に投入することも可能だ。また訓練すれば敵ダイバーを見つけ出すこともできる。潜水して侵入する人員はイルカやアシカのスピードにかなわない。またこうした哺乳類は濁った海水や暗い水中でも「視認」できる特徴がある。ただし、ダイバーが味方なのか敵なのか識別はできないので、対象にブイをつけその後の追跡に役立てることしかできない。とはいえ訓練は可能だ。敵の侵入者なら手りゅう弾を投下したり、網で捕獲できる。

 

首都ピョンヤンではイルカ水族館で訓練もしており、その知見が軍用用途に転用されていても突飛な発想ではない。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

New Evidence Suggests North Korea has a Naval Marine Mammal Program


By: H I Sutton

November 12, 2020 4:57 PM

   

 


2020年11月12日木曜日

低地球周回軌道で一時間以内で世界いかなる場所にも貨物人員を送り届ける....米陸軍がこの構想を実現しようとしている

 軍は世界いかなる場所へも補給物資を送れる「ロケット貨物便」に注目している。

 

こんなシナリオだ。戦闘部隊が世界のはてに展開中で、弾薬糧食が必要だ。そこで特別航空補給を要請する。米輸送本部が承認し、貨物を載せた低地球周回軌道便が打ち上げられる。一時間足らずで5.56mm弾、おいしそうなピザのMREが届き、部隊は気分を一新し士気が高まる....

 

補給ポッドを宇宙から送り込む構想はSFのようだが、真剣に検討していると米陸軍は認めている。

 

「80トンの貨物となるとC-17一機分だが、世界中いかなる地点に一時間未満で送り届けられる」と輸送本部司令のスティーブン・R・リヨンズ大将が空輸給油協会開催の10月のリモート会議で発言した。「これからの兵力投射方法を打ち破る形に挑戦したい。ロケット貨物輸送もその一部だ」

 

リヨンズ大将はこれ以前に全国国防輸送協会のイベントでペンタゴンが航空宇宙企業のスペースXと協同研究開発契約を締結し、外宇宙に輸送経路が確立できるか検討すると発表していた。

 

輸送本部は「商用宇宙輸送手段を利用し、まず部品部材、さらにゆくゆくは人員を世界中いかなる地点に迅速輸送することで緊急事態や自然災害に対応できると着目」しているとニラフ・ラッド空軍中佐が述べている。中佐は宇宙輸送の主任研究員である。

 

国防企業間で「宇宙空間を介しての輸送について利用可能性、技術・事業面での実施可能性の検討が進行中で、輸送本部は国防総省のグローバル輸送部隊として役割が与えられる」と同本部は発表している。「貨物人員輸送ではスピードが重要だ。ここに大きな可能性が秘められている」とリヨンズ大将は発言。

 

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, photographs an unarmed Minuteman III intercontinental ballistic missile during an operational test at 2:10 a.m. Pacific Daylight Time Wednesday, Aug. 2, 2017, at Vandenberg Air Force Base, Calif.

非武装のミットマンIII大陸間弾道ミサイルがヴァンデンバーグ空軍基地から試射された。

Senior Airman Ian Dudley, 30th Space Wing Public Affairs photojournalist, Wednesday, Aug. 2, 2017,Photo via DoD

 

 

宇宙空間を利用した輸送手段の評価の次段階は来年で、輸送本部は「産業界や戦闘部隊と協力し長距離地点間輸送構想を2021年に実施する」と米陸軍が公表している。

 

「民間宇宙輸送手段を提供する企業が常識を破る手段を開発中でその進展は実に早い。2021年の実証で人道救難物資を送り届けることになるだろう。ロケット輸送ミッションは現実となる」(リヨンズ大将)

 

長期目標は宇宙輸送手段の試作型を製造し、輸送本部に空中、海上、陸上の輸送を補完する手段を今後5年から10年以内に実現することにある。スペースXとの研究契約でこの目標が実現できるかが注目される。

 

「スペースXの最新情報については開発は非常に進んでいるとだけお伝えしておく」とリヨン大将は以前述べていた。

 

一つ確かなのはロケット貨物輸送はハインラインの「宇宙の歩兵」構想につながることで、筆者は構想を支持する。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

US Army Developing 'Rocket Cargo' To Transport Gear To Troops Via Space

JARED KELLER16 HOURS AGO


TAGSSPACEXROCKETSOUTER SPACENEWSMILITARY TECHRESUPPLY INBOUNDU.S. TRANSPORTATION COMMANDU.S. SPACE FORCEU.S. ARMYRESUPPLY


2020年11月10日火曜日

F-15EXの納入に備える米空軍。一方、日本向けF-15JSIはEXの機能ほぼ全部を搭載する構想と判明。ただし、フライバイワイヤを除く。

 規製造のF-15が納入されるのは2004年以来となるが、米空軍が準備を進めている。来年早々にボーイングF-15EX二機がエグリン空軍基地(フロリダ)に到着し試験用途に投入される。最新鋭のF-15EXは今後15年かけて200機調達が予定されている。

F-15EXにはイーグルドライバーが熱望してきた装備がほぼ全部ついてくる。フライバイワイヤ制御、兵装装着部の追加、電子戦装備を一新し、高性能レーダー、超高速コンピュータ、一体型燃料タンク、さらに強化構造だ。 


ただし同機は第四世代機のままで、ステルス性能は1974年にロールアウトのF-15Aと大差ない。防空圏内作戦では低視認性が必須とされるので、同機は新型といっても敵防空圏の手前に留まり、防空体制が打倒されるまで待つことになる。


空軍予算にF-15EXが登場したのは2018年のことでジェイムズ・マティス国防長官(当時)がペンタゴンの分析結果を受け入れ、攻撃力増強とともにF-35Aを製造するロッキード・マーティンへ競争原理を働かせる意図もあった。


前空軍長官ヘザー・ウィルソンは空軍は実はF-15EXを望んでいなかったと明かしている。2004年以降の米空軍方針は「旧型機の新造機材」は導入せず、第五世代機に集中するとしていた。


空軍は戦闘機部隊の強化につながるとF-15EXを歓迎したものの、予算はきびしいままだった。もともとF-15C/Dの後継機とされたF-22が、予定の381機調達は実現せず、186機で打ち止めとなった。グローバル規模の部隊展開の要求では機齢が若いF-15C200機を当初想定より長く供用する必要がある。


それから11年経過し、F-15C/D各機は摩耗し、空軍関係者は修理しながらの供用は費用対効果が劣ると指摘している。安全性確保のため高負担の点検を続け、構造部品を使用可能に保つ必要がある。 


F-15EX一号機がボーイングのセントルイス工場で最終組み立てに入っている。ボーイングは自社費用でまず2機の製造を始め、想定より早く完成させようとしており、テストは2021年早々に始まりそうだ。空軍契約は今年7月に公布された。 Eric Shindelbower/Boeing


イーグル部隊の維持が予算を食いつぶすとデイヴィッド・S・ネイホム中将(計画担当副参謀長)が悲鳴を上げている。


旧型機運用で空軍には多方面で負担になっているとネイホムは認めている。「単に経費の問題以外にリスクが高いのが問題だ」と経年変化で飛行制限も発生しているという。空軍はすみやかにF-15EXを導入し、F-15C/Dと交代させるべきだという。


ボーイングはF-15EXの機体価格を80百万ドルとしており、F-35Aと大差ないが、運用コストで差が出る。退役したばかりのデイヴィッド・L・ゴールドフェイン大将はF-35の時間当たり飛行経費が35千ドルのまま変わらないことに警戒していたが、F-15は27千ドルだ。空軍はF-35でブロック4仕様を中心にしたいとするが、同型機の生産はまだ始まっていない。


参謀総長チャールズ・Q・ブラウンジュニア大将にとって、どちらかを選択すればよいという問題ではない。「あくまでも性能だ」とDefense One が主催した10月のオンラインイベントで発言していた。参謀総長は「F-35を重要視する」としながらF-15EXは「機会となる」と述べた。海外顧客がこれまでF-15の性能向上に多大な投資をしてくれたおかげで、空軍は自ら開発投資をせずに第四世代機の強力な性能を手に入れることができる、というのがブラウンのいいぶりだ。

 

サウジアラビア、カタールがあわせて50億ドルを負担し、それぞれの仕様のF-15開発が実現したとボーイング副社長プラット・クマールが10月取材で述べており、米空軍はその恩恵を利用しているわけだ。


F-15EXは実はF-15QA(カタール向け)とほぼ同じである。そのQA型はF-15SAサウジアラビア向けが原型で、デジタルフライバイワイヤを初めて導入している。


クマールは空軍がF-15EXを採用したことで今後海外でも同型機の導入にはずみがつくとみており、イスラエル、日本、カタール、韓国、サウジアラビアを想定している。


「世界各国が米空軍の買い物を注視していますよ」とクマールは言い、「世界各地の既存顧客から関心が寄せられています」。イスラエルが新型F-15に関心を寄せているが、日本はEXと同じ機能を導入しようとしている。ただし、フライバイワイヤは除外されているという


ボーイングのテストパイロットはF-15QAの飛行特性はF-15C/DさらにE型とほぼ同じであるが、性能限界にもっと早く到達できるとし、米空軍の旧型イーグルからの機種転換は楽だという。ただしEXの新型「グラスコックイット」表示に慣れる必要がある。C/D型やE型では1980年代物の計器が今も使用されている。


今年8月に航空戦闘軍団司令を退いたジェイムズ・M・ホームズ大将はEX導入を支持したのは議会が予算を付けてくれたことに加え、機体価格が導入可能で初号機が「生産ラインから出てすぐ飛行可能」だからだと発言していた。ただし、敵防空圏に接近できない制約がつくが、EXは本土防空任務や敵の脅威度が高くない場合に有効に投入できると見ていた。


空軍内部でも将来の部隊編成の姿でた結論は出ていない。当面はF-15EXがF-15C/Dの任務を引き継ぐ。ただし、将来はEXがE型の対地攻撃任務の一部をこなすという。E型は2030年代に退役をはじめる。EXは複座構造だが空軍は同機をパイロット一名で運用すると公式に発言している。

new F-15sGraphic: Dash Parham and Mike Tsukamoto/staff

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「EXはストライクイーグルで運用中の兵器すべてを搭載可能。プラス数点を追加できる」とボーイング関係者は述べる。


ボーイングはF-15EX関連で12億ドルをまず今年7月に受領した。契約では固定価格にコストを付加し、コストに応じ報奨金が出る構造で、200機調達の場合の最大費用を228.9億ドルに設定したが、空軍はこれまで144機の購入しか公言していない。これと別にGEエイビエーションは1億ドルでGE-F110-129エンジン19基をEXテスト機材用に製造する。F-15SA、QAでも同じエンジンを使う。レイセオンテクノロジーズ傘下のプラット&ホイットニーにはF-15EX用にエンジンを自社費用で開発し代替策とすることを空軍が許している。


空軍のかかげる防空計画案ではF-15EXを76機必要としているが、議会は空軍から戦闘機調達戦略方針の提出がないとこれ以上の導入は認めないとしている。


共用性によりF-15C/D飛行隊はF-15EXに三か月以内の機種変更が可能となるとゴールドフェイン大将は述べており、既存の地上支援施設がそのまま使え、新規設備の必要はほぼない。これに対し、F-15C/D部隊がF-35に機種変更しようとすると数年間かかる。機種が全く違うと訓練も必要なためだ。米空軍からすれば迅速に導入可能な点がEXの最大の利点だ。


F-15EXでは今後のアップグレードを視野に入れているとクマールは説明している。


「主翼を改良しており、基地での点検さらに補給処での点検を不要にしました」といい、デジタル技術で再設計した主翼はボーイングのセントルイス工場で作業員10名程度がロボットと製造している。対して以前の型式では86名が作業していた。デジタル製造技術により作業エラーや手直しが減っている。


また「オープンミッションシステムとオープンアーキテクチャ」が特徴とクマールは述べており、空軍のアジャイルソフトウェア開発で「先駆者になるという。 DevSecOpsと呼ばれるソフトウェア開発で時間短縮をねらう方法だ。


米空軍の調達トップ、ウィル・ローパーはF-15EXを「初日から進化する設計」と述べ、進展が著しい通信やデータ共有装備に対応していくと説明している。



F-15EXは「将来の新技術をすばやく搭載可能」で「空軍の技術テスト機材」になれるとクマールは説明している。同機に搭載したコンピュータの処理能力が最速であること、光ファイバーネットワークが搭載され、機内に余裕があることが理由だ。


F-15EXの防御手段はイーグル・パッシブ警告残存システム(EPAWSS)と呼ぶ新型電子戦装備だ。EPAWSSの機能は極秘扱いだが、関係者は各種脅威対象を探知、捕捉、識別し、電子攻撃が可能だと述べている。テスト用EXの最初の二機にもEPAWSSが搭載されるが、ボーイングによればその後のテスト用8機でさらに性能向上させたEPAWSSをテストするという。なお、EPAWSSはF-15Eにも搭載される。


F-15EX価格にEPAWSSは含まれているとクマールは述べ、同様にレイセオンのAPG-82(V) 1レーダーもついてくる。同レーダーは空軍がC/D型、E型に導入を始めている。


80百万ドルの機体価格に含まれるものにスイート9共用運用飛行プログラム、MIDS/JTRS(多機能情報分散システム・共用戦術無線交信システム)がある。これはソフトウェアにより設定変更可能な無線装置だ。目標捕捉システムを搭載した共用ヘルメットは政府支給品として搭載する。


価格に含まれていないのはその他のセンサーで、スナイパーやライテニングポッド、リージョン赤外線捜索追跡(IRST)ボッドが例だという。


またボーイングによればF15EXのペイロードはF-15Eより28パーセント増え、兵装装着ポイントが二つ追加されたという。この追加で装着時の柔軟性が増えるというのが同社の説明である。

F-15EXの機体中央パイロンは全長22フィート、重量7千ポンドまでの兵器を搭載できる。この想像図では極超音速ミサイルを発射している。Sherif Wagih/Boeing


地域作戦司令官の一部からは担当地域を考慮した「別の装備品搭載」を求める声が出た。「2千ポンド爆弾7発を搭載する要求があり、EXはこれが可能で大きな効果が生まれる。その他の地点では目標が多数あるため小直径爆弾28発」の運用が意味を持ってくる。EXはこうした兵装を搭載しながら空対空ミサイル4本を搭載可能で、空対地任務もこなす。空軍はEXを当初こそ空対空任務に投入し、F-15Cと交代させる予定で、空対空ミサイル12本を搭載しながら追加兵装ポイントにはAIM-120あるいはAIM-9が搭載できる。


最初の機体はエグリン基地に契約上の予定より9か月早く到着する。ボーイングは自社資金を投入してまで納入が迅速に行えることを空軍に見せつけた。


「最初の二機は契約交付から数か月で納入できることに興奮状態です。空軍はすぐ機体を飛ばせます」とクマール。「この二機でほぼ二年間にわたり飛行させるとロット1の残り機材が納入され、データ収集に利用します」


サウジアラビア政府はF-15SAの飛行テスト経費を米空軍に支払っており、フライバイワイヤ初の採用となった同型機をテスト部隊があらゆる角度から試している。カタール向けの機体はサウジ仕様機とさして変わらないのでテストの規模は小さく、焦点はレーダー、画像ディスプレイ、コンピューターに当てられている。


EXで新趣向となるのがスイート9運用飛行プログラムと新型兵装管制一式でミサイル試射が必要となる。

 

新型シミュレーターもあるが、F-15C/DあるいはE型用のシミュレーターも最小限の手直しで使えるとボーイングは説明している。また新規に建屋等大型出費が不要だという。同様にF-15EXは国防総省の戦闘演習シミュレーションに簡単に統合できる。


F-15EXでは空軍の通常の性能要求設定手続きやその後に続く開発段階を不要としたので、事業でつきものの各段階通過手順は適用されないいとクマールは述べている。「通常と異なる。マイルストーンCの判断」として重要設計審査ではなく統合設計審査と呼ぶベンチマークは使うのだという。


「すぐ本格生産可能な機体ですので」統合運用テスト評価の「直後に生産に移せる」という。


ボーイングはF-15EXを月産4機のペースで生産する。ここに外国向け機体も含む。だがF-15EXの機数が十分そろうまでF-15C/D部隊は供用を続けられるのか。■                 


この記事は以下を再構成したものです。


Joining Up on the F-15EX


By John A. Tirpak

Nov. 1, 2020


2020年11月9日月曜日

米海兵隊は中国海軍をミサイルで狙い、各地を迅速移動する戦術構想を訓練中。

 

 

海兵隊が火力を迅速展開する新方式で訓練中だ。HIMARSミサイル攻撃を展開すれば海兵隊に実用的かつ残存性の高い対艦攻撃能力が実現する。

海兵隊の迅速展開訓練から西太平洋における米軍の軍事戦略が垣間見える。

 

2018年12月7日に第352海兵燃料補給輸送隊がM142高度機動ロケット発射機(HIMARS)をカリフォーニアのキャンプペンドルトンからユタのダグウェイ試射場まで移動させ、演習を展開した。

 

HIMARSは車輪つきだが自重12トンあり、各種対地攻撃ロケット弾を発射できる。KC-130J輸送機から展開し、訓練弾を発射し、またKC-130Jで原隊に戻った。

 

 

航空機による迅速展開演習は米陸軍が先行し陸軍では「HIMAR迅速展開」(HIRAIN)と呼んでいる。

 

新型装備、新型戦術と組み合わせHIRAINにより米軍部隊は長距離砲兵部隊を迅速移動させ敵軍を混乱させるのが目的だ。この手法で米軍は西太平洋で中国の動きを封じようとする。

 

中国は日本列島からフィリピンへ伸びる「第一列島線」を中国の影響圏ととらえ、中国共産党は貿易、外交、軍事脅威を使い影響力を行使している。有事になればこの列島線で多数地点を占拠するだろう。

 

ペンタゴンはこの動きを困難にしたいとする。航空・海軍戦力が米戦略の中心であることにかわりはないが、地上部隊へも固有の役割が期待される。H.R.マクマスター米陸軍大将(退役)は短期間ながらトランプ大統領の安全保障担当補佐官を務め、陸軍に「陸地からの兵力投射」を期待している。オバマ政権で海軍次官だったジャニーン・デイヴィッドソンも「陸軍に艦船を攻撃させる」よう動いたと発言。海兵隊には陸軍と同程度の装備品が多数あり、敵艦攻撃も可能だ。

 

近い将来の戦闘で中国艦艇が日本あるいはフィリピン近隣の諸島へ向け移動中としよう。海兵隊のロケット中隊が輸送機で諸島の一つに迅速移動し、中国艦へ数発発射する。その間輸送部隊が待機する。「発射するたびに部隊は別の場所に隠れ、次の発射命令を待つ」とRANDコーポレーションが2017年に構想を発表していた。

 

「遠隔島しょ部分の防御を強化し、隣接水域に海軍部隊が展開すれば低コストで戦略上の優位性が大きく確保できる」と海軍大学校のジェイムズ・ホームズ教授も2014年に提案していた。

 

陸軍は構想の一部を現実的な条件で訓練している。2018年のリムパック演習では陸軍HIMARS部隊が除籍した海軍強襲揚陸艦ラシーンをロケット弾5発で沈めた。発射地点は50マイル先で無人機が射撃を調整した。

 

とはいえ、無誘導227ミリロケット弾(弾頭200ポンド)を40マイル先から運用するHIMARSは理想的な対艦兵器とはいえない。

 

そこでHIMARSで誘導式610ミリ陸軍戦術ミサイルATACMS(弾頭500ポンド)を190マイル地点から発射させればよい。2016年に陸軍はシーカーの改良で艦船攻撃の効果を増大する作業を開始した。

 

海兵隊はHIMARS発射機に専用対艦ミサイルの導入を検討中だ。2018年にアリゾナでの試射では、F-35ステルス戦闘機から標的情報をロケット部隊に送信し、命中精度を引き上げようとした。海兵隊のF-35Bは地上のコンテナを探知し、データリンクでGPS座標をHIMARS要員へ送った。

 

HIMARSにより海兵隊に実用に耐えつつ残存性が高い対艦攻撃能力が実現する。そこにF-35を加え、ロケット攻撃の命中精度が向上する。また発射部隊は迅速空輸により敵の反撃を逃れ、敵は所在をつきとめようと懸命になる、という目論見だ。■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

How Would U.S. Marines Fight China in a War? This Photo Is a Hint.

 

November 7, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: MarinesArmyF-35MilitaryTechnologyHIMARS

by David Axe 

 

David Axe is the author of the new graphic novels MACHETE SQUAD and THE STAN.