2021年9月21日火曜日

747を巡航ミサイル母機にする冷戦時の構想を現在実現したら。爆撃機の運行経費と比較すれば、重武装機として活躍の余地があるのでは。

 

ーイングは冷戦時に747に空中発射式巡航ミサイル72発を搭載し、長距離重武装機に改装し、スタンドオフ攻撃に投入する企画書を作成した。同機は747巡航ミサイル搭載機(CMCA)と称し、既存重爆撃機で各型ミサイルを運用するよりずっと費用対効果が高い機体になるはずだった。

747CMCAは結局構想段階の域を出ず、レーガン政権はB-1を復活させ、B-2も直後に供用開始した。だが民間機を貨物人員輸送以外の任務に投入する構想を再考していいのではないか。

747 に巡航ミサイルを多数搭載する?

1977年6月30日、ジミー・カーター大統領から発表があり、B-1開発を打ち切り、同事業の予算超過とともにミサイル技術の進展を理由にあげた。レーガン政権が同機事業を復活させ、現在も供用中のB-1Bランサーとなった。ノースロップ・グラマンのB-2スピリットも80年代に戦力化され、米国の戦略爆撃戦力は世界最上位となった。

だが米国では大ペイロード機材で長距離性能を発揮し、敵標的を攻撃する構想があった。既存民間機を改装し、当時開発されたばかりのAGM-86空中発射式巡航ミサイルを搭載すれば経済合理性からみて順当とされ、ボーイング747が候補機に上がった。

ボーイング7471969年初飛行し、もともとは空軍向け輸送機競合でロッキードC-5に敗退したものを民間航空用に作り直したものだ。それが「ジャンボ」ジェットの誕生の背景で、ジャンボとはよく言ったものだ。747は当時として圧倒的な存在感のある大きさで、全長225フィート、垂直尾翼は六階建てビルの高さに相当した。

同機開発は16カ月と比較的短期で進んでが、その作業規模は莫大なものだった。約5万名が747事業に携わった。技術図面75千点で部品点数6百万をカバーし、配線は全長171マイルに至った。風洞実験は合計15千時間にわたり、フライトテストも1,500時間に及んだ。

大規模事業だが同時に賭けでもあった。ボーイングは開発費用の捻出に苦しみ、20億ドル(現在の価値で149億ドル)を借り入れて完成させた。だが失敗すれば、同社は大変な事態になるところだった。

それを念頭に747CMCA構想が生まれた。ボーイングは空軍が同機の航続距離6千マイル、ペイロード77千ポンド性能に注目しているとわかっており、1980年にCMCAを提案した。

 

747 CMCA構想とは

ボーイングは747-200C一機を選び、機内内装を取り外し大型ペイロードを搭載するとした。同型は機首が開閉し貨物を出し入れする構造だった。

747CMCAAGM-86巡航ミサイルを搭載する構想だったが、同ミサイルはB-52への搭載が先に決まっており、有効射程1,500マイルの性能を生かし、ソ連の地対空ミサイルの射程外から発射し、爆撃機の安全を高める想定だった。

だがB-52では巡航ミサイル20発から21発を搭載するのに対し、747CMCCAなら72発も搭載できるはずだった。

Patent drawing of the 747 CMCA

 

ミサイルは747胴体内の回転式発射機9基に搭載する構想だった。各発射機に8発を装填する。機体後部の側面に発射孔を作り、そこからミサイルを発射する構想で、回転発射機を後部へ移動させるとした。一回で発射できるミサイルは一発に限られるが、ボーイングは短時間で連続発射させる構想だった。

 

ミサイルには衛星データリンクで標的情報を与える。一方、747は空中待機し、機内の指揮統制要員が標的情報を中継する。

これにより、747CMCAB-52三機分の巡航ミサイルを運用し、747でのミサイル運用は大幅な費用節約につながるはずだった。

爆撃機より安価になる

Artist’s rendering of a 747 CMCA firing cruise missiles

B-1Bランサーが747CMCAの実現を不要とする同規模のペイロードを実現し、ジェネラルエレクトリックF101-GE-102アフターバーナー付きエンジンにより同爆撃機は高速飛行とに高い操縦性に加え、強力な攻撃能力を実現した。ただし飛行時間当たり経費は61,000ドルと非常に高価な運用となった。ただしB-52のほうが高く、70千ドルになり、B-2では何と130,159ドルが必要だ。これに対し、747改装案の時間当たり経費は25千ドル程度だった。

米爆撃機各型の運航経費がここまで高いのは、機体数と関係がある。空軍はB-1B62機、B-5276機、B-220機運用する。各型の機数がここまで少ないため、部品単価が非常に高くなり、上昇し続けている。これに対し7471,500機製造され、部品製造体制や保守点検インフラは既存のものを世界各地で利用できる。つまり、747原型なら機体価格のみならず運航経費でも大きな経済効果が期待できる。

2014年にタイラー・ロゴウェイが指摘していたが、747で巡航ミサイル72発を運用していれば、20年続いたアフガニスタン戦で重宝されていただろう。運航経費が低く長時間滞空でき、巨大なペイロードを活用できたはずだ。制空権が確立済みの空域で747CMCAは航空支援の大きな効果を実現していたはずで、その他イラク、シリアでも活躍していただろう。さらにJDAM各種の運用にも改装されていれば、同機で対応可能となる標的数は72どころか数百か所に増えていたはずだ。しかも専用爆撃機の数分の一の費用で実現していたはずだ。

CMCA構想が復活する?

B-1BB-2ともに期待の新型ステルス爆撃機B-21レイダーの導入を持って退役する。B-21ではさらに高度のステルス性能でありながら、B-2同様のグローバル攻撃能力を実現する。ただし、一点大きな落とし穴がある。B-21B-2より小型な機体で、ペイロードは30千ポンドに限定される。B-240千ポンド、B-1B75千ポンドだ。

B-21では新技術の採用と機体が一新されることもありB-2より運航経費は下がる見込みだが、ステルス機の運用経費は高くなりがちだ。空軍が非ステルス機のF-15EX導入に走ったのは、F-35より供用期間が三倍でありながら時間当たり運航経費は半分になるためだ。ノースロップ、空軍ともにB-21は予定より早く進展している、大きな障害はない、と主張しているが、同機の飛行時間当たり運用経費がいくらになるのか興味を呼ぶ点である。

米国はもはやアフガニスタンやイラクで航空戦闘は展開しておらず、大国間戦への対応に移ろうとしている。前回の冷戦と同様に米中両国の対立が直ちに武力衝突に展開する可能性は低い。今回の冷戦で戦争への移行を防ぐのは相互破壊が保証された状態ではなく、経済崩壊が確実に発生することだ。

米中両国の経済は複雑にからみあっており、世界第一位第二位の経済大国が開戦となり核爆弾を使えば、世界の商取引は苦境に陥る。両国が戦闘状態になれば、両国は外交力、資源を有しているので、世界各地が戦場になる可能性がある。戦争回避が可能かは定かではないが、冷戦モデルを投入すれば、核の冬の到来を防止できるのは明らかだ。

米特殊作戦部隊が従来より広く世界各地に拡散しているため、同盟国協力国部隊による対テロ作戦の支援では従来に増して経済性の高い航空支援がとくに開発途上国で必要となる。特殊作戦司令部には武装上空監視事業があり、このニーズに対応すべく、民間機を改装した重武装機を投入しようとしている。

アフリカのように広大な対象地において各地で航空支援を行おうとすると「距離の暴力」に直面する。747改装で長距離順応ミサイルや短距離弾を搭載すれば大陸規模の航続距離を前提とするミッションを実現できるし、空中給油で距離はさらに延長できる。言い換えれば21世紀版の747武装機構想は戦場を制覇する可能性が十分あることになる。

747の生産は来年にも終了する予定となっているが、中古機を改装すればはるかに安価に構想を実現できる。同様にその他民間機も改装し、経済的に同じ機能を実現できるはずだ。

 

America's plan to build 747 arsenal ships packed with cruise missiles

Alex Hollings | September 19, 2021

 


 

2021年9月20日月曜日

有事の際に米軍の太平洋作戦展開で重要な基地となる島とは。

 

太平洋で戦争勃発となれば、ウェーキ島が米軍作戦で不可欠な存在となる。

 

ェーキ島に特筆すべきものは皆無だ。サンゴ礁から生まれた同島の海抜は12フィートしかなく、ホノルルから2,300マイル離れている。東京からは2千マイルの位置にある。この位置関係が同島を太平洋に展開する米軍部隊プレゼンスで重要にしている。それ以前にもヨーロッパ諸国が同島を訪れていたが、同島を領有宣言したのは1899年の米国だ。無人島のまま1930年代に入り、米海兵隊がわずかな守備隊を置いた。第二次大戦中は真珠湾と並行し日本軍が同島を攻撃したが海兵隊が守り通した。

 

今日でもウェーキ島は世界で最も隔絶された場所である。第二次大戦後は大幅に姿を変え、3千メートル級滑走路一本が構築され、米軍が供用中の航空機材なら全機種の運用が可能だ。

 

太平洋で戦闘が始まれば、グアム、沖縄といった前線基地は敵ミサイル攻撃の標的となる。とくに沖縄は中国沿岸から500マイルしか離れていない。グアム、沖縄ともにミサイル防衛装備が配備されており、ペイトリオット、THAADがあるが、ミサイル大量発射の前に圧倒されかねない。アジア最前線の基地機能を開戦当初に喪失する事態は必至といってよい。その点でウェーキ島は攻撃を受けにくい。なんといっても距離の要素が大きい。

 

ウェーキ島の防御は距離だけではない。地上配備中間段階防御(GBMD)ミサイル迎撃装備がある。ペイトリオットやTHAADは局地防衛用だが、GBMDはもっと広い範囲の防空が可能だ。

 

GBMDはアラスカ、カリフォーニアにも配備され、主に長距離ミサイルから北米の防御を任されている。ウェーキ島はこのミサイル防衛の傘の一部を構成しているようだ。

 

太平洋で戦闘が始まれば、米爆撃機は西太平洋で敵ミサイル防空拠点の破壊をめざし何回も出撃することになる。この際にウェーキ島は米軍最後の西太平洋拠点となり、爆撃機他に燃料補給を行う重要な機能を担うことになる。■

 

 

This Island in the Pacific that you Have Never Heard of is Vital to US Naval Power

by Caleb Larson

September 6, 2021  Region: Pacific  Blog Brand: The Reboot  Tags: MilitaryTechnologyWeaponsWarNavyChinaStealthDefense

 

Caleb Larson holds a Master of Public Policy degree from the Willy Brandt School of Public Policy. He lives in Berlin and writes on U.S. and Russian foreign and defense policy, German politics, and culture.

Image: Wikimedia Commons


ノースロップ・グラマン、スケイルド・コンポジッツが相次いで発表した新型無人機は空軍スカイボーグ採用をめざす、ファミリー構成のシステム装備品なのか。

  

 

モデル401、モデル403の構想図。Northrop Grumman illustration

 

ースロップ・グラマンの新型自律無人機は空軍の求める次世代機として有人機と戦闘に臨む想定だ。

 

 

 

同社は9月8日にモデル437をパームデイル施設(カリフォーニア)で公開し、スケイルド・コンポジッツと共同開発したと発表した。

 

スケイルド・コンポジッツも独自にモデル401技術実証機を発表しており、こちらも自律運航を想定している。

 

同社幹部にょれば二機とも自律運航機技術事業に応募するとし、米空軍のスカイボーグ、英国のプロジェクトモスキートをさしている。

 

スカイボーグは空軍が科学技術面で最高度の優先順位をつけており、戦闘の様相を一変させる「ヴァンガード」構想の一環となっている。その狙いは比較的安価で消耗品扱いを覚悟の無人機とし、人工知能を搭載することで威力を高め、有人戦闘機とともに戦闘に参加することにある。試作型は4億ドルの契約規模になる。

 

これに対しプロジェクトモスキートは英国版の忠実なるウィングマン構想でF-35以外に、タイフーンさらに今後登場するテンペストとの同時運用を狙う。

 

モデル437の実寸大試作型はまだないが、同社幹部は次世代無人機ファミリーの一部となると確信している。

 

スケイルド・コンポジッツ社長兼CEOコーリー・バードは低価格、消耗品扱いの機体の実現策になると報道陣向けイベントで語った。

 

消耗品扱いの機体は各種機能を戦場で実現し、センサー機、ジャマー機あるいは攻撃機にもなると空軍関係者はみている。

 

バードの試算では今後登場するモデル437の単価は5-6百万ドルとなり、受注規模により変動するという。コストの大きな部分がエンジンでウィリアムFJ44を採用し、高速と航続距離を両立させる。エンジン価格が2.4百万ドル程度になるが、これも調達規模により変動するという。

 

これに対し有人戦闘機の代表たるF-35Aでは機体単価や80百万ドル程度だ。

 

モデル437の最高速度はマッハ0.85で、巡航速度はマッハ0.8となる。F-35と並んで飛び、燃料4,000ガロンを機内に搭載する。

 

バードによればシステムは低価格消耗品扱い技術事業に最適化されて、発注元のニーズにあわせ設計変更可能という。

 

モデル437はモデル401の「いとこ」であり、別名でSon of Aresと呼ばれる。設計には似たところがあるが、自律運航が可能な新型機は従来機より速力、航続距離が増えている。このSon of Aresはプラット&ホイットニーJT15Dエンジンを搭載し、マッハ0.6で飛行しながら機体価格はさらに低くなるとバードは説明。

 

437は滑走路を離陸するものの、3,000フィートあれば十分で、供用中機材の大部分より短くて済む。

ノースロップ・グラマン副社長リチャード・サリバンは「滑走路の依存度を低くしています」と語る。

 

モデル437、モデル401はともに自律運航を前提とし、任意にスカイボーグとして運用も可能とサリバンは説明する。ただし、要求性能内容はまだ流動的で、同社は空軍からの指示を待っているところだという。

 

製造面ではデジタルエンジニアリングや低コスト製造技術で新型機の開発期間が短縮可能となったとサリバンは指摘する。ノースロップ・グラマンは要求内容を実現すべく、新技術の完成度を上げようとしている。

 

 

「デジタルエンジニアリング、デジタルトランスフォーメーションの双方で当社は知見があり有利な立場です」とし、「驚異的なシミュレーションやモデリング能力が社内にある」という。

 

サリバンはさらに新型無人機は今後の超大国相手の競合で優位性を迅速に確保する意味で重要な存在だと述べている。

 

「敵側は米国や同盟国が享受してきた技術優位性の差を埋めつつあります」とし、「各種システムのファミリー構成を利用する」ことが新しい脅威に対抗する意味で効果が一番大きいという。■

 

JUST IN Northrop Grumman Debuts Unmanned Plane

AIR POWER

9/10/2021

By Meredith Roate


2021年9月19日日曜日

ご自分の敷地に突然ヘリコプターが着陸してきたら、しかも機種がロシア機だったら....米陸軍の極秘飛行隊の存在が改めて明らかになったノースカロライナの事件。

アメリカらしいスケールの大きな話ですね。同時におおらかでもある。ノースカロライナという場所ゆえでしょうか。小学校に故障ヘリが緊急着陸して大騒ぎになり、挙句の果ては飛行停止を申し入れるような日本の地方公共団体とは大違いです。にしても米軍の闇の部隊が今回は絡んでいるようです。


A screen capture from a YouTube video showing an Mi-17-type helicopter at a farm in North Carolina in 2021.

YOUTUBE SCREEN CAPTURES

 

 

年はじめのこと、ノースカロライナで農園を経営するダン・ムーアは尋常でない訪問者を迎えた。しかも二回も。まずロシア製Mi-17ヒップヘリコプターが緊急着陸すると、暗灰色塗装のベル407が到着し、交換部品を届けた。このベル407は今年初めにロサンジェルス上空で目撃されている。両機種は米軍の秘密航空部隊の所属のようだ。

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ムーアは民間航空パトロール隊員でもあり、長年パイロットを務めているが、その際の出来事を航空専門誌Air Factsに寄稿した。

 

「隣家からお宅の前庭にヘリコプターがいるぞ、との連絡が入った」とムーアは回想している。「なに、ヘリコプターだって、うちの敷地に」と混乱したが、すぐに緊急着陸だなとわかったという。

 

「ノースカロライナに住んでいると上空で軍の活動が多い。隣人に機種がわかるか、と聞くと特殊部隊の駐屯地フォートブラッグに関係する本人も機種がわからない。見たことのない機種だ。大型機だと答えた」

 

問題のヘリコプターはMi-17でカモフラージュ塗装を施し、機体排気口後部が黒く塗装されていた。ムーアは写真とビデオを撮影したが、運用者の素性を現す表示ははっきり示されていない。

 

ただし、軍用仕様の特徴がみられた。センサーボールが機首機銃タレットの下につき、側面には装甲版がついていた。双発エンジンの空気取り入れ口の前に分離版がついており、砂漠や非整地の運用に有効だ。尾部にはアンテナがあり、皿状アンテナは高周波衛星通信(SATCOM)でよく使われる。

 

ムーアは隣人に電話でヘリコプター乗員に連絡させると、機付長から状況の説明があったという。Mi-17は修理が必要でそれまでムーアの敷地内に残るという。

 

「農園にトラックがあり、キーがついたままだ。それを運転して町で必要なものを調達していいよと答えた。また農園の作業所に工具類がそろっている。ここも使ってもらってよい。二時間でそちらへ移動するので工具でも何でも使ってくれ、と伝えた」

 

機付長は予想外の好意に驚いた風だったという。ただし、ムーアが農園に到着すると、乗員が機体の油圧油冷却器を取り出そうとしていた。トラブルの原因はこの部分だった。

 

「パイロットを見つけ、話を聞いた。着陸地点の下に以前送電線が走っていたと伝えるとパイロットは驚いていた。前年に滑走路を造るべく移動させていた。飛行経路のその他の場所は沼、樹木、住宅だった。話を聞いてパイロットは顔面真っ青になった。唯一の安全地帯に着陸していたことがわかったからだ」

 

ムーアは息子(陸軍でヘリコプター操縦を希望)と一緒にヘリコプター乗員としばらく話した。その場を離れようとするとスペアパーツがこちらにむかっているとわかった。

「どこから運転してくるんだい」

「いや、空を移動中なんだ」

 

ベル407がその後到着し、部品を運んできた。尾部に機体番号がついていたがビデオでははっきり見えなかったという。

 

暗灰色のヘリコプターは同じ機体3機がロサンジェルス近辺で1月に目撃されていた。「エッグビーター」あるいは「Oリング」形状の超高周波(UHF)SATCOMアンテナが尾部につき、機体前方の左右にブレイド状のアンテナがあり、これが高周波無線交信他の通信用だとみられる。また着陸用スキッドは法執行機関の機体と通じる形状だったという。

 

SCOTT LOWE

今年1月にロサンジェルス近郊で目撃されたベル407の三機のひとつ。

 

ベル機は部品を下ろすと早々に立ち去った。翌朝にMi-17も修理を完了し離陸していった。

 

各機の運用者の正体がわかる話は一切なかったとムーアは述べている。「全員かつて軍にいたようで、何らかの秘密任務を秘密機関でおこなっているようだった。すべて秘密だった」とし、「州外から飛んできた」と聞いたという。

 

Air Facts 記事の誤植か、Mi-17乗員が意図的に誤った情報を与えたのかが不明だが、ムーアは「乗員からMi-24でソ連で一般的に使われた機体の輸出型」と説明を聞いたとある。ただし、明らかに今回の機体はMi-24ハインドではない。同機は外見も異なるガンシップだ。

 

ロサンジェルス近郊で今年初めに目撃された暗灰色塗装のベル407について運用者を推理していた。米陸軍の極秘部隊航空技術室(ATO)がヴァージニア州のフォートユースティスのフェルカー陸軍飛行場に駐留しており、これが運用者である可能性が高い。

 

ATOはかつて飛行コンセプト部門(FCD)と以前呼ばれており、中央情報局(CIA)とつながりが強く、Mi-17含む外国製機種を運用していることが知られている。

 

フェルカーの衛星写真を見るとベル407数機がMi-17とATO/FCD格納庫近くに駐機しているのがわかる。またBing Mapsの高解像度写真でMi-17とわかる機体が見られるが、ムーア農園に着陸した機体と同一かは不明だ。

 

PHOTO © 2021 PLANET LABS INC. ALL RIGHTS RESERVED. REPRINTED BY PERMISSION

フェルカー陸軍飛行場の衛星写真。2020年12月2日撮影。ベル407が三機ランプ右に見え、Mi-17と思しき機体も5機わかる。

 

BING MAPS

フェルカー陸軍飛行場に駐機するMi-17の高解像度写真

 

 

ここ数年オンライン上で別のヒップ、Mi-171E型で機体番号15-5207がつく機の写真がでまわっていた。同機は米軍の運用という説と米政府のほかの機関としてたとえばCIAが運用しているとの観測があった。CIAがMi-17を運用し、特にアフガニスタンでここ20年利用していることがで知られている。ヒップと同局のつながりはカブール近郊での飛行状況でもあきらかで、今年8月にはハミド・カルザイ国際空港へ米国人や米国のため従事したアフガン人を移動させていた。

 

SPRINGERVILLE MUNICIPAL AIRPORT

別の謎のMi-171E(機体番号15-5207)が2016年にアリゾナのスプリンガーヴィル市営空港で目撃された。ダン・ムーア農園に着陸したヒップ同様に手尾部に各種アンテナをつけており、大型桐生分離器をエンジン空気取り入れ口前につけていた。同機のその他写真が最近でまわっているが、ダン・むーた農園でみられたのと同様のセンサータレットや追加装甲版が視認されている。

 

 

ATO/FDCは米軍航空部隊中で機密度が最も高く、War Zoneでも以前お伝えしている。公式にわかっている内容から同部隊は極度に専門化されており、他部隊と全く違う形で特殊作戦部隊を支援し、秘密工作に従事していることがわかる。同時に高リスク技術開発任務もあり、陸軍航空部隊の次期技術にもかかわる。UH-60ブラックホークのステルス改装型が2011年のパキスタン・アボタバードでのオサマ・ビン・ラディン襲撃に投入されたが、同部隊が開発に関与していたようだ。

 

総合すると短時間ながらヘリポートの様相を呈したムーア農園の事例から基本的な事項が見えてくる。ムーア親子が遭遇した出来事が極めて異例で、秘密を旨とするヘリコプター各機と乗員にじかに接する貴重な体験だったといえる。■


Russian-Made Mi-17 Helicopter Flown By Secretive US Unit Lands In Farmer's Field

 

A Bell 407 helicopter from the same organization swooped in after the Mi-17 was forced to make an emergency landing.

BY JOSEPH TREVITHICK SEPTEMBER 17, 2021



 

ヘッドラインニュース

 

ヘッドラインニュース9月19日号

編集の都合上、最新ニュース以外も入ります。ご了承ください。



オーストラリアがトマホーク、極超音速ミサイル導入へ

オーストラリアは長距離攻撃能力の拡充をめざし、トマホーク巡航ミサイルをホバート級駆逐艦に導入する。さらにJASSM(ER)を空軍のF/A-18、F-35Aへの導入を行う。スーパーホーネットには長距離対艦ミサイル(LRASM)を装備する。米国とは極超音速ミサイルの共同開発を続ける。陸上部隊には射程400キロの精密攻撃ミサイルを導入する。一方で国内ミサイル開発製造基盤の拡充も図る。



ロッキードがLMXT空中給油機構想を発表

ロッキード・マーティンが空中給油機LMXTを発表し、空軍がめざすつなぎ給油機KC-Yへの採用をめぐり、ボーイングのKC-46への対抗心をあらわした。LMXTはエアバスA330多用途給油輸送機を原型とし、米空軍での供用向けに改装する。9月20日予定の空軍協会イベントで詳細を発表する。(Brandon Stoker/Lockheed Martin)

 

 

 

ロッキードがX-59超音速機の最終製造工程を公開

Xプレーンの最新型X-59は静かな超音速技術実証機 (QueSST)と呼ばれ、同社最終組立に入っている。伝説のスカンクワークスが作業にあたっており、NASAとの共同で開発している。X-59は静かなソニックブームが地上で受け入れられるかを試す目的で運用される。データはNASAで今後の商用超音速騒音基準作りに役立てられる。現在は地上上空での超音速民間飛行は禁止されている。

Credit: Lockheed Martin


フィリピン、現行予算でF-16は2機しか調達できない

デルフィン・ロレンザナ国防長官はF-16機体価格は高すぎ、現行予算で購入できるのは2機に限られると述べた。同じ額でグリペンなら6機買えると同長官は述べた。フィリピンはMRF(多任務戦闘機)の導入を目指している。長官の真意は米国の財政支援でF-16を採用したいという点か。

Graphic: Lockheed Martin

 

チリ潜水艦が演習でカール・ヴィンソンを撃沈していた

チリ海軍スコルペネ級潜水艦CSカレラ(SS-22)が米海軍との演習をこの度完了した。演習にはUSSカール・ヴィンソン(CVN-70)も加わり、二カ月にわたり展開された。チリ海軍の発表では「空母打撃群への模擬攻撃を二回にわたり実施した」とある。ディーゼル電気推進式潜水艦を運用する南アメリカ諸国との演習で米海軍に対応の知見を蓄積するのが演習の目的だ。