2024年2月2日金曜日

ロシアがバルト海でGPS妨害を露骨に行っている事実にNATOの忍耐力が試されている。国際合意を無視するロシアには相応の報いが下りて当然ではないだろうか。

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A screengrab of reported navigation issues in the airspace over eastern Europe on Jan. 19, 2023. (GPSJam screengrab)


ウクライナ戦争は、安価な無人航空機の使用からこれまでにない規模の情報戦まで、現代の戦場における新戦術を前面に押し出した。しかし、同時に最新の電子戦も展開されている。ロシアによる可能性が高い、危険な干渉らしきものについて米大統領による国家宇宙ベース測位ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバー、デイナ・ゴワードDana Gowardが分析した。

開されている航空機追跡データベースによると、1カ月以上前から、バルト海沿岸地域を飛行する航空機は、GPS信号への各種干渉を経験している。場合によっては、GPS受信機が電子的に捕捉されたり、航空機が意図したルートから何マイルも外れているように「スプーフィング」されたりしているようだ。

妨害やなりすましは以前からあるが、この地域ではほぼ毎日何らかの妨害が行われており、定期的に広範かつ重大な妨害が行われている。ウクライナ侵攻を支援するNATO諸国への嫌がらせとして、ロシアがこの活動の背後にいることはほぼ間違いないとされてきた。

このような妨害行為は、何千機もの民間航空機に危険を及ぼすものであるが、国際的な圧力は今のところ妨害行為を止めることができないため、NATOは相応の行動をとる時期に来ている。

12月25日と26日、ポーランド北部とスウェーデン南部の広い範囲が影響を受けた。翌週の大晦日には、フィンランド南東部の広い範囲で航空機の乱れが報告された。1月10日、13日、16日にはポーランドの北半分が主な標的となった。19日には、スウェーデン南部とポーランド北部が影響を受けた。直近では1月24日にエストニアとラトビアが標的となった。

いずれの場合も、妨害は民間航空機が搭載する航空安全ADS-Bシステムによって検知され、ウェブサイトGPSJam.orgに表示された。

テキサス大学ラジオナビゲーション研究所の大学院生ザック・クレメンツによるクリスマス妨害の分析。クレメンツ氏はGPSの妨害について研究しており、地球低軌道上の衛星から発生源を突き止めることに関して発表している[PDF]。


インタビューで彼は、広範囲に広がる送信機多数が関与していると判断したと述べた。あるものはGPS信号を妨害してサービスを拒否していた。しかし、少なくとも1個の送信機は、航空機を偽装し、計器が実際の位置から遠く離れ、円を描いて飛行しているように見せていた。

「サークル・スプーフィング」現象は、船舶では頻繁に観察されてきたが、航空では今回が初めての報告であった。

クレメンツによれば、ロシア国内がスプーフィングの発生源であることは間違いないという。「航空機がスプーフィングによる影響を受け始めた地点と、航空機が本物のGPSを取り戻した地点から、スプーファーはロシア西部のどこかにいることがわかる。「興味深いことに、航空機がスプーフィングされた場所は、ロシアの退役したスモレンスク軍事空軍基地から約1キロの野原である」。

スタンフォード大学のジクシー・リュウ大学院研究員は、クリスマスの妨害にはほぼ間違いなく多くの妨害機が関与していることを筆者に確認した。以前の研究でリュウは、ADS-Bデータを使ってGPS妨害の発生源を地理的に特定している。

モスクワは広範囲に及ぶ妨害行為を否定していると報じられているが、ウクライナのメディアは、「...2023年12月中旬以降、ロシアのバルチック艦隊の部隊がカリニングラード州でEW(電子戦)システムBorisoglebsk-2を使って演習を行っている 」と報じている。

米国とポーランドのアナリストによれば、この干渉は、国境付近で西側の影響力が強まっていることに対するロシアの対応の一環だという。12月中旬、米軍とポーランド軍はポーランド北部でイージス対ミサイルシステムを作動させた。その直後、トルコ議会はスウェーデンのNATO加盟に道を開く行動を開始した。

ロシアのこのような反応は前例がないわけではない。2022年、ウラジーミル・プーチン大統領はフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟しようとするならばと脅した。その後、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領はジョー・バイデン米大統領と会談し、防衛関係の改善を話し合った。その後間もなく、フィンランド南部、カリニングラード、ロシア、バルト海近辺の上空を飛ぶ飛行機がGPS妨害を報告し始めたと『ガーディアン』紙が報じた。

最近の妨害やなりすまし事件でポーランドに焦点が当たっているのは、ポーランドの新しいアメリカ製対ミサイル・システムの重要性を軽視しようとするロシアの努力かもしれない。同様の妨害は、米国がウクライナに供給した精密兵器の多くにも及んでいる。ポーランドのイージス施設はGPSではなく高出力レーダーを主に使用しているとはいえ、今回の干渉はシステムに対する国民の信頼を損なう狙いの可能性がある。

また、一部オブザーバーは、ポーランドでの干渉が戦略的なスワウキ・ギャップを通る道路にも及んでいると指摘している。ポーランドのリトアニア国境に平行する全長40マイルのこのルートは、ロシアの盟友ベラルーシとバルト海に面したロシアのカリニングラードを直接結んでいる。軍事アナリストは以前から、この地域はヨーロッパの陸上紛争で重要地点になると考えてきた。

これらの攻撃は、国際空域や海域を航行する他国の航空機や船舶を標的にしてきた。また、NATO加盟国の主権領土やインフラにも影響を及ぼしている。

さらに、生命と財産に多大なリスクをもたらしている。

大手国際航空会社の上級機長ジョー・バーンズは、「GPS信号が利用できなかったり、何らかの形で危険にさらされたりすると、大きなリスクにさらされる」と語った。バーンズ機長はまた、GPSとその関連問題についてアメリカ政府に助言を与える委員会のメンバーでもある。「GPSへの干渉は事故のリスクを高め、ほとんどの場合システムの速度を落とし、フライトをより長く、より高くする」。

GPS信号への偶発的な干渉は、2019年にアイダホ州サンバレーで民間旅客機の墜落を引き起こしかけた。航空関係者はその後、国際民間航空機関(ICAO)にGPS妨害を緊急課題として挙げた。翌年、ICAOはすべての国に対し、この問題の重大性に留意し、適切な行動をとるよう呼びかけた。国際海事機関も同様の呼びかけを行っている。

安全上の懸念に加え、GPSやその他の衛星信号への意図的な干渉は、国連の国際電気通信連合(ITU)の全加盟国によって合意された国際法および規制に違反する。2022年の通達でITUは、2021年に記録された航空関連の衛星ナビゲーション干渉万件以上の事例を挙げている。同通達は、このような行為が有害な干渉に対する規則に違反することを強調し、次のように述べている。「......一般に『GNSS(全地球航法衛星システム)ジャマー』と呼ばれる装置や、航空機に有害な干渉を引き起こす可能性のあるその他の違法な干渉装置の使用は、無線規の第15.1号によって禁止されている......」。

国際社会は、バルト海で見られるような電子戦が戦争であることを認識しなければならない。そして、宣戦布告がないにもかかわらず、ロシアは他国、特にNATO加盟国を標的とした一連の低レベル攻撃を意図的かつ組織的に行っている。

国際機関による話し合いや宣言が機能していないことも明らかだ。問題は悪化するばかりだ。

NATOと国際社会には、適切かつ比例的な対応で選択肢があり、速やかに検討され、採用されるべきである。例えば、新しい衛星の周波数割当てはITUが管理している。他国の衛星の信号を日常的に妨害していると判明した国に対して、新たな割り当てを拒否することは適切であると思われ、良い第一歩となる。

増大するこの問題が大きな犠牲者を出したり、NATOが直接関与する武力紛争に発展する前に、より断固とした明白な行動をとる必要がある。■

ダナ・ゴワードは、レジリエント・ナビゲーション・タイミング財団の会長であり、米国大統領の宇宙ベースのポジショニング・ナビゲーション・タイミング国家諮問委員会のメンバーである。元米国沿岸警備隊海上輸送システム部長。


Dana Goward is the president of the Resilient Navigation and Timing Foundation and a member of the US Presidents’s National Space-Based Positioning Navigation and Timing National Advisory Board. He formerly served as the Director of Marine Transportation Systems for the US Coast Guard.

https://breakingdefense.com/2024/01/as-baltics-see-spike-in-gps-jamming-nato-must-respond/


米国の対外軍事装備品の売却、2023年度は809億ドルに急増  米国防衛産業株は買いか

 世界各地の安全保障への不安で、米国の防衛産業が好況のようです。FMS制度を使った売上が大幅増。Breaking Defense記事からのご紹介です。

Air Force photo

An Army M1 Abrams tank is loaded onto an Air Force C-17 transport. (Air Force photo)

23年度の外国向け武器販売・納入額は前年度比で55%増になった。

国務省の発表によると、米国の国防企業は昨年、対外軍事販売プログラムの下で809億ドル相当の兵器を他国に引き渡し、契約を交わした。

約810億ドルという数字は2023会計年度(2022年10月から2023年9月)のものである。ウクライナ戦争が激化し、友好国が近代化努力を加速させる方法を模索する中、バイデン政権が太平洋の同盟国を支援する後押しを続けたためである。22年度は519億ドルだった。

810億ドルに含まれるのは、同盟国やパートナー国からの資金による武器売却623億ドル、対外軍事資金プログラムを通じて契約された40億ドル、地雷除去や対テロリズムなどの項目を含む「その他」プログラムラインの147億ドルである。

昨年度の大型FMS案件には、ポーランドへのAH-64Eアパッチ・ヘリコプター96機と高機動砲兵ロケット・システム(HIMARS)100億ドル、ドイツへのCH-47Fチヌーク・ヘリコプター85億ドル、チェコへのF-35航空機と軍需品56億2000万ドルなどが含まれる。

FY23のFMSに加え、政権はFY22の総額1,536億ドルから2.5%増となる1,575億ドルの商業直接販売を昨年許可した。内訳は以下の通り:

  • F-35の主翼アセンブリとサブアセンブリ製造でイタリアに28億ドル

  • GE製F414-INS6エンジン・ハードウェア製造でインドへ18億ドル

  • 韓国にF100推進システムと予備部品用で12億ドル

米国はすでに24年度において、トルコ向けの推定230億ドルのF-16とギリシャ向けの推定86億ドルのF-35を承認し、以前は56億ドル相当と見積もられていたチェコ共和国向けの別のF-35契約を最終決定するなど、高額な潜在的取引の数々が承認ずみだ。■

US Foreign Military Sales deals mushroomed to $80.9 billion in 2023 - Breaking Defense

By   ASHLEY ROQUE

on January 30, 2024 at 1:57 PM


2024年2月1日木曜日

F-35を運用する日米韓豪そしてシンガポールで太平洋の自由と繁栄を守る半円形の「空の壁」を形成せよ

 中国も見方を変えれば出口を西側に押さえられているわけで、その分だけ海洋進出にはずみがついているわけですが、F-35が圧倒的な威力をみせれば中国に対する空の『壁』ができると極めて楽観的な見方をしているのがWarrior Mavenの記事です。ま、フィリピンが重要な前線基地になり、日本も関与すれば台湾は大陸の魔手に落ちないのではないかと思いますが、ものごとはそんなに単純ではないでしょう。しかし、時間が立つにつれPLAが張子の虎だとばれてしまうので、北京もひょっとすると思い切った動きにでるかもしれません。

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米海軍、日本、韓国、オーストラリア、シンガポールはすべてF-35保有国だ

海軍、日本、韓国、オーストラリア、シンガポールはすべてF-35保有国であり、第5世代機による米軍連合が数年以内に中国を「包囲」できる可能性が出てきた。

F-35のような単一のプラットフォームや兵器システムが特別な影響を及ぼすと考えるのは珍しい。しかし、太平洋戦域で増加するF-35の多国籍軍は、大規模なマルチドメイン戦争システムの中で運用される場合、この地域の抑止力方程式に広範囲かつ多次元的な影響を与える可能性が高まっている。

F-35が日本やその他の地域に到着するにつれ、太平洋を囲む完全な半円形の防衛リングの実現はまだ数年先かもしれない。しかし、F-35の配備国を地図で見るだけで、米軍が同盟国と第5世代の「壁」で太平洋全域の中国を文字通り「包囲」できることを示唆している。シンガポール、オーストラリア、韓国、日本、そして前方で運用されるアメリカのF-35は、ステルス性を持ち、ネットワーク化された第5世代のISR、照準、攻撃機として機能する可能性がある。また、あまり認識されていないが、この方程式にまだ存在しない可能性として、最適な位置にあるフィリピンがある。フィリピンにおける米軍のプレゼンスが拡大している今、そこに米軍のF-35を駐留させてはどうだろうか?

太平洋全域におけるF-35の拡大は、重要な変数数点のため、正確に爆発的と表現することができる。日本は350億ドルという巨額規模でF-35を獲得し、大規模な海上配備と陸上配備の第5世代JSFを太平洋全域に拡大するネットワークにもたらした。オーストラリアと韓国もF-35保有国であり、あまり知られていないが重要な国であるシンガポールもF-35購入を増やしている。これらの国々と空母や揚陸艦から運用される海上ベースの米海軍F-35とを組み合わせれば、文字通りネットワーク化されたF-35機の輪で太平洋を「包囲」できる。F-35のマルチ・ファンクション・データ・リンク(MADL)により、太平洋戦域全体で各国のF-35が安全かつシームレスにデータを共有できるようになるため、この見通しは計り知れないほど強化される。これは、日本と韓国のF-35が日本海と朝鮮半島に沿って制空権を求めることができることを意味する。日本のF-35が日本の最南端から離陸すれば、台湾の北空域を確保し、給油すれば台湾空域内に到達できる。前方に配置されたアメリカの空母と揚陸艦は、台湾の西で重要な位置を占めることができ、第5世代機が太平洋の中央部と南東部のどこで活動するかによって、台湾または南シナ海の一部の攻撃範囲内に配置される。シンガポールが中国抑止のF-35連合を支持する気になれば、シンガポール空軍は南西太平洋の空域を中国の航空攻撃から守ることができる。シンガポールはF-35の購入数を12機まで増やしたばかりであり、同国のF-35は南東太平洋のオーストラリアのF-35と接続することで、太平洋全域で制空権の輪を完成させることができる。

日本のF-35が大量に整備されるまで数年かかるかもしれないが、海上自衛隊は、日本のミニ空母で台湾上空まで日本の南をカバーできる海上ベースのF-35Bを取得中である。

フィリピンにF-35を配備する?

太平洋全域におけるF-35の存在感の高まりと並んで、米国とフィリピンの大規模な協力関係の強化は、中国抑止にむけた協力関係において最も決定的な要素となる可能性がある。フィリピンは最近、米国との防衛協力強化協定(EDCA)を拡大し、米軍のアクセスを可能にする4カ所を新たに追加した。戦略的にも地理的にも、フィリピンは間違いなく台湾に最も接近しやすい位置にある。スタ・アナのカミロ・オシアス海軍基地、カガヤン州のラルロ空港、イサベラ州ガムのキャンプ・メルコール・デラクルス、パラワン近くのバラバック島だ。

フィリピン北部は台湾上空から数百マイル、せいぜい400~600海里の距離に過ぎず、陸上運用型F-35Aの攻撃範囲内にある。米軍のF-35はフィリピン軍と訓練を行っているが、おそらくもっと多くの機体が、フィリピンの新しい米軍基地に恒久的に駐留する可能性がある。米空軍は現在300機以上のF-35を運用しており、F-35の大部隊を台湾防衛の射程圏内に置くことは、給油を必要とせず、太平洋における前例のない航空戦力の投射をもたらすからだ。PLA空軍はおよそ120機のJ-20を運用していると考えられている。J-20がF-35に匹敵すると仮定すると、その性能は検証されておらず、かなり疑問が残るが、J-20は陸上配備で、F-35より大きく、間違いなく機動性が劣る。この種の対戦における未知の要素は、J-20のセンサー、ミッション・システム、コンピューティング、武器、照準がF-35にどこまで匹敵するのかであることは明らかだろう。これは最も重要な問題に思われるが、たとえ同等であったとしても、中国のJ-20部隊は、フィリピンを拠点とするアメリカのF-35で強化された、アメリカ、日本、韓国、シンガポールの多国籍軍F-35部隊には劣るだろう。米領グアムは台湾から東に1,700km以上離れており、空中給油でのアクセスは困難だが不可能ではない。フィリピンにおける米軍のプレゼンスが拡大しているのだから、米軍のF-35やF-22をフィリピンに駐留させるのはどうだろうか?

というのも、南シナ海のかなり南側から朝鮮半島の北側、そして日本海にまたがるF-35の半円の真ん中の隙間を埋めるからだ。シンガポールから北日本まで、F-35の多国籍半円は、台湾を防衛し、太平洋全域にわたる中国の攻撃を抑止または撃退するために大きな影響を与える、保護的な制空権圏を提供することができる。

この半円の最も重要な補強要素は、間違いなく米海軍の第5世代航空戦力の前方配置だろう。米空母は50機以上のF-35Cを発艦させることができ、アメリカ級揚陸艦は20機を運用できる。これにより、洋上発進の第5世代航空戦力は、太平洋全域でネットワーク化された同盟国のF-35の強固で侵入不可能な「壁」を完成させることができる。

マルチ・ドメイン・センサーとしてのF-35

F-35は、攻撃プラットフォーム、センサー・ノード、ISRプラットフォーム、フライング・コンピューター・システム、空中ゲートウェイ、近隣のドローンの小グループを運用する母機として運用される。F-35はすでに、陸軍の統合戦闘指揮システムや海軍の対艦巡航ミサイル防衛システム(NIFC-CA)で空中センサーとして運用され、重要なミサイル防衛能力を発揮している。これらの事例において、F-35は重要な照準および空中センサー・ノードとして作動し、脅威の特定と、時間的な影響を受けやすい情報を艦船および陸地の火器管制システムに「中継」することで、指揮官が最適な対応、防御、反撃を決定するための、より長い時間的猶予を与えている。 F-35は、NIFC-CAとIBCSの両方において、空中ゲートウェイとして動作する能力を特に実証している。これは、地上レーダー、水上艦船、空中ドローン、衛星、および戦域全体に配置された指揮統制ハブ多数をつなぐ重要なリンクとして機能できることを意味する。つまりF-35は、ドローンに近い機能を実行したり、地上、空中、地上のノード間でターゲット・データを転送したり、あるいは発射前に空中から、あるいは地上で敵の弾道ミサイルを迎撃したり破壊したりする武器を使用することもできる。  

2020年、陸軍のプロジェクト・コンバージェンスで、米海兵隊のF-35Bが、地上部隊とリアルタイムで標的データを共有する能力を実証したように、陸上攻撃任務を支援する空と地上との接続性もまた、F-35の運用能力にとって重要である。■

Why Not Base F-35s in the Philippines? Form F-35 Semi-Circle Air "Wall" From Singapore & to Japan - Warrior Maven: Center for Military Modernization

By Kris Osborn, President, Center for Military Modernization

Kris Osborn is the President of Warrior Maven - Center for Military Modernization and Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Masters Degree in Comparative Literature from Columbia University.

https://warriormaven.com/china/why-not-base-f-35s-in-the-philippines-form-f-35-semi-circle-air-wall-from-singapore-to-japan



2024年1月31日水曜日

フーシ派ミサイルを発射前に撃破。米軍の探知、情報伝達、攻撃実施のサイクルは画期的な変化を遂げているようだ

 


発射前に撃破できたというのはいわゆるセンサー-シューター間の情報処理が大幅に高速化されていることを意味し、自衛を理由にすれば、敵の攻撃を未然に防ぐ能力がすでに実用化していることになります。あとは政治の決断だけですね。Breaking Defense記事は淡々と伝えていますが、ニュースの裏を考える必要がありますね。


Super Hornets from the aircraft carrier Dwight David Eisenhower struck Houthi missile installations today.U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Michael Battles


スーパーホーネットがフーシ派ミサイルを発射前に攻撃

アメリカが発射準備中のフーシ派のミサイルに対して先制攻撃を行ったのは、3日連続となった


国は1月18日、空母ドワイト・D・アイゼンハワーから発進したF/A-18E/Fスーパーホーネットでイエメンのフーシ派ミサイルに先制攻撃を行った。

「米中央軍司令部は、紅海南部に向け発射準備中のフーシ系対艦ミサイル2発を攻撃した。「米軍は午後3時40分(サヌア時間)頃、イエメンのフーシ支配地域でミサイルを確認し、この地域の商船と米海軍艦船に差し迫った脅威があると判断した。米軍はその後、自衛のためミサイルを攻撃し、破壊した」。

 これは、フーシが紅海地域の船舶を攻撃し始めて以来、イエメンのフーシの標的に対する5回目の攻撃であり、米国が発射準備中のミサイルを攻撃したのは3日連続である。

 米国は水曜日にフーシ派のミサイル14発に先制攻撃を行い、火曜日にもフーシ派の対艦弾道ミサイル4発にも先制攻撃を行った。13日、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦USSカーニーはトマホーク陸上攻撃ミサイルでフーシのレーダーサイトを攻撃した。これは、12日にアメリカとイギリスの航空機、水上艦船、潜水艦がイエメンのフーシ支配下にある28カ所の60以上の標的を攻撃した。

 木曜日未明、ジョー・バイデン大統領は記者団から、フーシ派に対する攻撃は機能しているのかと質問された。

 「うまくいっているとは、フーシ派を阻止できているという意味かだって?」バイデンは一瞬自問し、「いいえ。攻撃は継続するのか、というならそうだ」。

 木曜午後の記者会見で、この発言への回答を求められた国防総省のサブリナ・シン副報道局長は、本誌含む記者団に対し、国防総省は「フーシがただちに停止するとは言っていない。それは彼らが決断し、計算しなければならないことだ。やめることが彼らのためになる。木曜日以来、彼らの能力を低下させ、著しく混乱させ、破壊することができたのは見ての通りだ」。

 同海域で別の船舶が攻撃をうけたとの情報もあるが、当局はすぐには確認できなかった。

 さらに、木曜日にバグダッド近郊で米軍のMQ-9リーパー無人偵察機が撃墜されたという報道を、シンも中米中央司令部も確認していない。

 確認されれば、10月7日のイスラエルとハマスの戦争開始以来、2機目の撃墜となる。イエメンのフーシ派武装勢力が11月8日未明に同国沖でリーパーを撃墜したと報じられている。■


Red Sea Ship Attacks Continue After Super Hornets Strike Missiles


BYHOWARD ALTMAN|PUBLISHED JAN 18, 2024 3:48 PM EST

THE WAR ZONE


チェコがF-35導入を決定。ヨーロッパにF-35が600機飛び回る。ライフサイクル通じた莫大な負担に耐えられるか。

 


チェコがF-35戦闘機の導入を正式決定したことで、NATOだけでなくスイスも含めヨーロッパで600機ものライトニングIIが運用されることになります。ロッキードには朗報ですが、これから50年もの間にわたり多額の負担がのしかかってきます。The War Zoneの記事からご紹介しましょう。



チェコ共和国は2031年にF-35受領を開始する


ェコ共和国がF-35ステルス戦闘機で最新の顧客となった。ヨーロッパ、特にNATO加盟国でのF-35の導入が急増している。

 F-35の製造元であるロッキード・マーティンは本日、チェコ政府が米国政府の対外軍事売却(FMS)プログラムを通じ第5世代F-35を24機調達する意向を示す申し出受諾書(LOA)に署名したと正式発表した。チェコ共和国へ売却されるF-35の型式は確認されていないが、通常離着陸(CTOL)型のF-35A型と思われる。

 ロッキードによれば、F-35本体に加え、今回の調達には「人員訓練、サービス、後方支援、その他の支援サービスの開発も含まれ、F-35全24機の納入を成功させる」という。

 全体で契約はおよそ1,500億チェココルナ(本稿執筆時点で66億ドル)相当と報告されている。チェコ政府は合意のうち50億ドルを航空機、パイロット訓練、弾薬に費やし、残りはチェコ共和国中部にあるチャースラフ空軍基地のアップグレード、燃料、スタッフの訓練に充てたいと提案していた。現在の考えでは、チェコ空軍は2031年に最初のF-35を受領し、残りは2035年までに到着すると言われている。

 チェコのヤナ・チェルノチョヴァー国防相Czech Minister of Defense Jana Černochová は、本日未明にLOAが正式署名された後、「遅くとも3月末までにアメリカのF-35航空機の契約を締結すると約束し、本日その約束を果たした」と述べたという。

 24機のF-35をめぐるチェコ共和国とアメリカとの交渉が開始されたことは、チェルノホヴァーとチェコのペトル・フィアラ首相Prime Minister Petr Fialaによって2022年7月に確認されていた。この交渉の後、チェコ政府は2023年9月に航空機の購入を正式に承認し、その時点で国務省はこの取引に最大56億2000万ドルという見積もり額をつけた。

 24機のF-35が将来的に加わることで、チェコ共和国の戦闘機部隊は能力だけでなく規模も拡大し、サーブJAS 39C/Dグリペンの1個飛行隊に取って代わることになる。

 単座型12機と複座型2機のグリペン部隊は、主に本土防空と、バルト三国とアイスランドの領空を守るローテーション任務で使用されている。最初の航空機は、2004年にスウェーデンと締結されたリース契約で、2005年に引き渡された。2014年締結の同契約の延長により、少なくとも2027年まではグリペンが飛行を続けることになっているが、2029年まで延長される可能性もある。

 以前、スウェーデンはプラハに対し、F-35戦闘機を調達する代わりに「ほぼ無償で」グリペンを保有する選択肢を提示したと報じられた。また、F-35調達の方が、新型グリペンJAS39E/Fを調達するより経済的に有利だとプラハは判断した。     

 これに加え、チェコ共和国は16機の単座のL-159Aアドバンスト・ライト・コンバット・エアクラフト(ALCA)と5機の複座L-159T1バージョンも運用しており、これらは主に軽攻撃と近接支援に使用されている。F-35がこれら体を置き換えるのかは、まだ不明だ。

 グリペンからF-35に移行することで、チェコは控えめながらアップグレードされた第4世代戦闘機を、ステルス特性を持ち、先進的なスタンドオフ兵器を搭載できる第5世代戦闘機と交換することになる。

 F-35への切り替えは、チェコ共和国にとって、ヨーロッパのNATO加盟国および将来のNATO加盟国とのプラットフォーム共有という点でメリットをもたらす。プラハが当初、航空機を取得する理由として東ヨーロッパの緊張とウクライナ戦争を挙げていたことを考えれば、これは重要な要素である。ベルギー、デンマーク、フィンランド、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、英国はすべてF-35を発注しており、ルーマニアは今年中に同機のLOAに調印する。

 直近では、バイデン政権がギリシャに40機のF-35と関連装備を売却することを承認し、トルコがスウェーデンのNATO加盟を批准したのに伴い、40機のF-16ファイティング・ファルコンブロック70 もトルコに売却された。ロッキードは、2030年代までには、イギリスのレイケンヒース空軍に駐留する米空軍F-35飛行隊2個を含め、ヨーロッパの10カ国以上で600機以上のF-35が運用されると予想している。

 NATO非加盟国のスイスは、20年代後半にF-35受領を開始する予定だ。

 技術的、相互運用的な利点があるにもかかわらず、チェコ共和国がすF-35全機を受領するまでに長い時間がかかる。


Some of the unclassified upgrades are expected to be part of Block 4. The exact configuration is not publicly disclosed just yet.&nbsp;<em>DOD</em>


 遅れを生んでいるのがTR-3ハードウェア仕様でブロック4アップグレードに伴う様々な要求を処理するために必要な新しいハードウェア・バックボーンと関連するベースライン・ソフトウェアである。TR-3の遅れは、F-35が製造後に引き渡されず駐機したままになっていることを意味する。

 この遅延で、F-35プログラムにも多大なコストを上乗せしている。今月初めに述べたように2023年12月の下院軍事委員会の公聴会で、ニュージャージー州選出の民主党議員ドナルド・ノークロスは、TR-3問題が10億ドルのコスト超過につながっていると述べた。 会計検査院(GAO)によれば、2070年代に予想されるライフサイクル最終段階までのF-35プログラムの全費用見積もりは、約1兆7000億ドルである

 チェコ共和国がF-35取得を正式に約束したことは、チェコだけでなく、航空機の製造プログラムにとっても明らかに追い風だ。■



Czech Republic Officially Joins The F-35 Fighter Program | The Drive

BYOLIVER PARKEN|PUBLISHED JAN 29, 2024 2:54 PM EST

THE WAR ZONE


2024年1月30日火曜日

日本周辺で気になる動き 24年1月29日現在 ①北朝鮮の巡航ミサイル試射 ②ロシア艦艇の動き ③在日米海軍の動き

 日本が北朝鮮、中国、ロシアと「不良国家」に囲まれていることは不幸としか言いようがあリませんが、逆にそういった勢力に対する抑止効果を最大限に発揮できる位置にあることも確かです。だからこそ、日本の一般市民も周囲の同行にもっと敏感であるべきですね。USNI Newsがコンパクトに最新状況を伝えていますので共有いたします。


The North Korean submarine-launched cruise missile Pulhwasal-3-31. KCNA Photo



北朝鮮が潜水艦用巡航ミサイルの試射を続行


北朝鮮は日曜日、潜水艦発射式の最新型巡航ミサイルの発射実験を継続した。

 国営朝鮮中央通信(KCNA)は月曜日、金正恩委員長が日曜日の朝、朝鮮労働党中央委員会の書記、北朝鮮の海軍部長や他の主要な高官を伴って、新しく開発された潜水艦発射型巡航ミサイル「プルファサル3-31」の試射を誘導したと報じた。2発のミサイルは日本海上空を通過し、標的の島を攻撃した。

 KCNAは発射場所や使用されたプラットフォームを明言せず、公開された発射地点は発射の煙で見えず、発射装置は不明である。

 北朝鮮は昨年9月、弾道ミサイルや巡航ミサイルを搭載・発射できる改良型ロメオ級潜水艦とみられる戦術核攻撃型潜水艦「英雄キム・クンオク」841番艦を運用開始したが、この潜水艦の運用状況に関する分析は分かれている。

 北朝鮮は水曜日未明、同じ巡航ミサイルの初打ち上げを行い、水面から海上に発射した。北朝鮮に対するさまざまな国連決議は弾道ミサイルだけを禁止している。

 韓国軍合同参謀本部(JSC)は日曜日に簡単な声明を発表しただけで、新浦Sinpo付近で数発の巡航ミサイルが探知され、米韓の情報機関がその分析を行なっていると述べた。

 港湾都市新浦は、潜水艦建造を含む北朝鮮の主要な防衛産業の拠点で、弾道ミサイル搭載潜水艦の母港でもある。

「今回の試射は隣国の安全保障には何の影響も与えず、地域情勢とも何の関係もない」とKCNAは報じた。KCNAはまた、北朝鮮指導者が、現在の状況と将来の脅威から、北朝鮮の海洋主権を守るための努力をさらに加速させる必要があると述べ、北朝鮮は強力な海軍兵力の構築を目指した軍事近代化計画を引き続き実施すると述べたと報じた。

 KCNAによると、金委員長はその後、原子力潜水艦の建造詳細について説明を受け、潜水艦やその他の新型軍艦に関する問題について協議した。


RFS Varyag (011). JMSDF Photo


ロシア太平洋艦隊の巡洋艦、駆逐艦が日本海からフィリピンまで移動

 一方、日本の統合幕僚監部(JSO)の発表によると、ロシアの巡洋艦RFSワリャーグVaryag(011)と駆逐艦RFSマーシャル・シャポシニコフ(543)は、別々に東シナ海を通過した後、現在フィリピン海にいる。木曜日の発表によると、水曜日の午後4時、シャポシニコフは与那国島の北東50マイルの海域を南西に航行しているのを目撃され、その後与那国島と西表島の間を航行し、フィリピン海に入った。海上自衛隊の給油艦「とわだ」(AOE-422)と海上自衛隊鹿屋航空基地(九州)の第1航空群のP-1海上哨戒機(MPA)がロシア駆逐艦を追跡した。リリースはまた、ロシア艦が1月22日に対馬海峡を通過したことを指摘している。

 金曜日のJSOのリリースによると、ワリャーグは同日正午に西表島の北43マイルの海域を南西に航行するのを目撃された。同巡洋艦はその後、沖縄の那覇基地を拠点とする第5航空群のP-3CオライオンMPAに監視されながら、西表島と与那国島の間を航行し、フィリピン海に入った。リリースによると、ワリヤーグは1月22日に対馬海峡を通過したが、同日引き返し、水曜日に再び通過したという。

 ロシアのソーシャルメディア・チャンネルでは、ワリャーグとシャポシニコフ元帥が1905年の対馬海峡での戦いで犠牲になったロシア人に花輪を捧げるセレモニーを行っている様子が紹介された。ロシアのTASS通信は金曜日に、両艦が東シナ海で防空訓練を行ったと報じた。ロシア海軍太平洋艦隊の一部である両艦は、艦隊の活動計画の一環でアジア太平洋に展開中である。


退役を控えた巡洋艦USSアンティータムが横須賀から移動


一方日本では、巡洋艦USSアンティータム(CG-54)が金曜日に横須賀海軍基地を出港し、「太平洋における計画的なローテーションの一環として」、ハワイ真珠湾の新しい母港に向かうと、海軍は同日発表した。巡洋艦は2013年2月、米第7艦隊の作戦区域内での活動を支援するため横須賀基地に着任し、2020年の260日間の派遣を含め、同艦隊で数多くの任務とパトロールをこなしてきた。

 また、同リリースには、アンティータムが米海軍日本前方展開部隊の一員として最後の年となる2023年に、約3万4000マイルを航行し、オーストラリア海軍と史上最大規模のタリスマン・セイバー演習に参加し、ベトナム、韓国、フィリピン、パラオを訪問した。

 アンティータムは今年後半に退役する可能性が高い。■


North Korea Tests Sub Launched Cruise Missile, Russian Warships Sail Near Japan - USNI News


DZIRHAN MAHADZIR

JANUARY 29, 2024 3:27 PM - UPDATED: JANUARY 29, 2024 4:22 PM


2024年1月29日月曜日

PLAロケット軍で粛清が相次ぐ:ロケット軍の任務実行能力はどうなっているのか。習近平の反腐食運動の本当の狙いはなにか。

 習近平が繰り広げている汚職追放運動はPLAなかんずく「水入りのミサイル」などロケット軍の中枢に及んできました。文化の一部とはいえ、倫理観の欠如は申告で、自分さえ良ければ良いと考える人物があちこちにいるのであれば習近平といえども有事に効果が出るのか心配になるのは当然でしょう。ただし、指摘にもあるように反腐敗キャンペーンの結果、習近平の意向に逆らえなくなる幹部が増えれば、それだけ習近平の独裁体制が強化されてしまうことになります。War on the Rock 記事からのご紹介です。


PLAロケット軍で広がる腐敗:なぜミサイル部隊が習近平の粛清対象となったのか?


近平指導部による粛清の波が、人民解放軍にも押し寄せている。2023年7月以来、習近平は李商務相、ロケット軍司令官と司令官、国防産業の高級将校と文民指導者数人を含む約15人の軍と国防産業の幹部を罷免した。12月27日、全国人民代表大会(全人代)常務委員会は幹部9人を、説明もなく、同国の名目上の立法機関から追放し、軍と中国国防産業の多くのレベルで大規模な腐敗が習近平によって発見されたのではないかという疑惑をさらに深めた。習近平が人民解放軍に向けた新年の演説で「腐敗との困難で長期的な戦い」を強調したわずか1週間後、ブルームバーグは、習近平の粛清はロケット軍内で見つかった腐敗の横行が原因である可能性が高いと報じ、ミサイル燃料の誤った取り扱いや、大陸間弾道ミサイルの発射を妨げる可能性のあるサイロの蓋の不具合など、米情報機関からの憂慮すべき話を引用した。液体燃料ミサイルは通常、事故を防ぐために空になっているため、「水入りミサイル」の話に異議を唱える情報筋もいるが、中国のミサイル準備態勢を損なうレベルの腐敗があれば、根深い腐敗が中国軍の戦闘態勢と近い将来の大規模作戦実施の可能性を蝕んでいるという疑念が高まる。

 核弾頭を搭載した弾道ミサイルを秘密裡に管理する中国で、高レベルの腐敗が見られるのは驚くべきことではない。これは、賄賂、利益誘導、接待が、監督が緩い中国軍とその国防装備取得において一般的だからというだけではない。核ミサイルのような大型で政治的に重要でありながら、めったにテストされないシステムは、悪行の磁石でもある。これらのシステムは、戦略的パワーの道具として不可欠であり、維持・運用に多額の予算が与えられているが、即応性が実質的にテストされることはめったにない。さらに、軍と国防産業の選り抜きのトップがひどく腐敗していることが判明したのは、人民解放軍に近い将来戦う必要が生まれるという不信感が幹部の間に広がっていることを示しているのかもしれない。

 

このことは、歴史的使命を果たすための軍の実際の準備態勢を習近平が正確に評価できるかどうかを疑問視させている。数カ月でこれほど多くの幹部が解任され、反腐敗調査が遡及的に行われたことは、習近平が強欲よりも大きな問題に対処しなければならないことを示唆している。制度化された腐敗、そしておそらくは近代化され、政治的に信頼でき、即戦力となる軍隊という習近平のビジョンに対する信頼の欠如である。このため習近平は、作戦能力や指導力などよりも、将校の個人的な忠誠心や服従を優先させるかもしれない。これでは、習近平の台湾に対する計画は、外部からは予測しにくくなるだけだ。


腐敗のスイートスポット 

現在の粛清の波は、特にミサイル産業など、高コストの買収プログラム内の腐敗をターゲットにしている。公式な説明なく解任された15人の幹部の半数以上がロケット軍の幹部で、さらに数人が以前は中央軍事委員会の装備開発部の責任者だった。その中には、元トップの周亜寧、張振東、最近解任されたロケット軍司令官の李玉超と徐中波、元装備開発部リーダーの李尚福と饒文敏が含まれる。

 解任された幹部15人を詳しく見てみると、人民解放軍と国防産業における経歴には、ロケットが共通点となっている。ミサイル旅団や有人宇宙計画、ミサイルを含む兵器取得計画を指揮した軍将校(空軍の丁来煌元軍将だけは例外のようだ)は別として、12月27日に解任が発表された3人の民間幹部も、ロケットの専門家だった。中国航空宇宙科学工業公司の元幹部で、解任前は中国北方工業集団公司の会長を務めていた劉世泉は、ミサイル技術者としてキャリアをスタートし、弾道ミサイル研究プログラムを指揮し、2003年に弾道ミサイル防衛に関する本を書いた。中国航空宇宙科学工業集団公司の指揮を執る前は、大陸間弾道ミサイルDF-31と潜水艦発射弾道ミサイルJL-2の動力源である固体燃料技術を研究する第4研究所(航天四院、航空宇宙固体推進技術研究院とも呼ばれる)を指揮していた。中国航天科技工業公司を率いた他の2人の民間企業幹部、呉燕生と王長慶もロケット技術者だった。呉は有人宇宙計画に10年間携わった後、指導者に昇格した。王は中国航天科技工業公司第3研究院を率い、軍事航空宇宙技術の中でもミサイル研究に取り組んでいた。これらの幹部の経歴と中国の防衛産業基盤における影響力からすると、ここ数カ月の一連の解任は、ミサイル産業内の腐敗を一掃することにレーザーが当てられているようだ。

 では、なぜミサイル・ロケットなのか?一見すると、中国軍が数々の成功を収めてきた分野で深い腐敗が見られるのは直感に反するかもしれない。人民解放軍は現在、世界最大の陸上弾道ミサイル部隊を運用しており、極超音速ミサイルDF-17、軌道砲撃システム、DF-21D対艦弾道ミサイルのような高度なミサイル技術でめざましい成功を収めている。しかし、汚職から得られる利益と摘発されるリスクを天秤にかけた合理的な計算が汚職の動機と考えれば、直感的となる。第一に、国有企業と国営研究機関が独占するミサイル産業は、中国で最も潤沢な資金が投入されている防衛ポートフォリオである。この産業の正確な予算は不明だが、弾道ミサイルの主要な研究・製造機関である中国航天科技集団公司は財務報告を公表しており、事業収入を明らかにしている。2017年、同企業の収入は約23億5000万人民元で、2015年のほぼ倍増。2020年には44億4000万人民元弱まで上昇する。有人宇宙計画とCZシリーズロケットを主に担当する並行航空宇宙国有企業である中国航天科技総公司は、2020年に24.2億人民元をクリアしたが、その数字は2017年(58.0億人民元)の方が大幅に大きかった。中国の購買力平価を考慮すると、ミサイル計画の資金は中国国内では潤沢で、多くの関係者の懐に潤沢な資金が残されている。実際、装備開発における汚職は党内でも注目されている。2012年、中国共産党中央政法委(政法委)の機関紙『法制日報』は、製品の品質を保証するために兵器メーカーに派遣された一部の軍代表が、メーカーから賄賂を受け取っていたと警告した。2018年、『人民解放軍日報』もまた、軍代表の制度には下層部の規律を徹底させる上で「弱いつながり」があると報じている。 

 第二に、検証可能な試験や検査で暴露されるリスクは、核ミッション用に確保されたミサイルでは低い。これは特に、中国が新たに建設した320基のサイロを埋める大陸間弾道ミサイルに当てはまる。液体燃料のDF-4やDF-5、固体燃料のDF-31やDF-41のような戦略的抑止兵器は、認知された即応性があってはじめて抑止任務を果たす。中国が先制不使用を長年公約していることから、中国ではこれらのシステムの日常的な即応性のレベルは低く、システムの即応性を常時テストする必要性は低い。また、効果的な抑止力を実証するために定期的に試験発射される米国のミニットマンIIIと異なり、中国の大陸間弾道ミサイルの試験は主に新技術のデータ収集のために行われる。例えば、DF-41は2012年以降、7~10回ほどテストされているが、いずれも複数の独立再突入ビークルやレール移動式キャニスター射出などの新技術をテストするためだった。DF-31は数回しか試験発射されておらず、古い液体燃料のDF-5B/Cも同様だ。直近のDF-5Cテストは2017年で、新しいサイロが建設される前だった。つまり、ミサイルが製造・配備段階に入れば、本格的な試験発射はあり得ないということだ。したがって、このミサイルの高い威信、多額の予算、準備検証のために発射されるわずかな可能性の組み合わせが、腐敗のスイートスポットを生む。

 ブルームバーグが報じたミサイル関連の汚職の説明は、これがもっともらしい。もしブルームバーグ報道が本当なら、水充填ミサイルはおそらく液体燃料のDF-5であり、中国の新型ミサイル・サイロの約30基を満たすことになる。DF-5の試験発射はあり得ないことなので、ミサイルが運用可能な状態でなくても誰も困らないと、スキャンダルに関与した取得担当者や運用担当者が安心していることは想像に難くない。一方、ミサイル産業には多額の資金が定期的に流れ込み、関係者全員の懐を潤す十分な機会とインセンティブが与えられていた。それに比べ、頻繁に使用されるジェット戦闘機や無人偵察機のような航空宇宙産業の「検証可能」なシステムでは、取得プロセスにおけるキックバックや接待が存在したと思われるが、システムの即応性を直接損なうような汚職が公になることはほとんどない。これらのシステムの即応性が高い状態であればあるほど、調達プロセスの調査につながるような重大な不具合が発生する可能性が高くなり、これらのシステムにおける汚職の規模に上限が設けられる可能性がある。


平和病の症状としての腐敗 

中国のロケット産業における深刻な腐敗は、腐敗そのものと同じくらい蔓延しているかもしれない別の問題を指し示している: それは、人民解放軍がすぐに戦争に駆り出されることはないだろうという幻滅である。もし、支隊長から中隊級将校に至るまで、部隊のメンバーが、台湾との統一という党の使命はすぐにでも遂行されなければならないと固く信じていれば、中国の国防産業は、軍用燃料庫から燃料を盗むような、横行する自滅的な腐敗に対して、少なくとも多少の抵抗はできるはずだ。人民解放軍に自省や批判ができなかったわけではない。実際、2005年の『人民解放軍日報』は、ミサイル旅団司令官である姜学利上佐の記事を掲載し、製品が重すぎてサイロの蓋が開かないことを発見した際、サイロの蓋の受け取りを拒否したことを称賛している。中国が現在300以上のサイロを建設していることを考えれば、この種の失敗が気づかれないはずがない。しかし、戦争は起こりそうもないから蓋はそのままだろうと、上級指導者たちが見て見ぬふりを決め込めば、このような腐敗を止めることはできないだろう。


実際、人民解放軍は精神的な弛緩と戦闘にさらされることへの不信を自覚している。『人民解放軍日報』は"戦争は絶対に起こらない。たとえ戦争が起こっても、それを戦うのは私ではない"という心理と呼んでいる。軍の近代化を促進するため抜本的な改革を行い、中国共産党の皇太子として育った習近平は、「平和病」がいかに蔓延しているかを認識しているのだろう。習近平は2014年の九天会議で将校の自己規律が低いと指摘し、「五体不満足」のような軍のさまざまな不備に不満を表明し、人民解放軍に台本にとらわれない現実的な訓練を採用するよう指示した。おそらく彼が落胆したのは、ロケット部隊の汚職スキャンダルが、長年にわたる汚職撲滅キャンペーンが平和病の核心に達することができなかったことで、彼が選んだ忠実な支持者でさえ克服することもできない制度化された腐敗を指摘したことだろう。


結論 習近平の不信と組織腐敗の危険性

習近平によるロケット部隊の粛清は、中国軍と国際安全保障情勢の双方に憂慮すべき影響を与えかねない「信頼の危機」を効果的に示した。政敵や前任者に忠誠を誓っているとみなされた人物を対象とすることが多かった習近平のこれまでの粛清とは異なり、2023年の大掃除は、習近平の軍内部と貴重なロケット部隊内の腐敗を根絶することに焦点を当てているようだ。習近平の軍事改革と執拗な権力強化の努力により、習近平は以前からの付き合いや実績のある忠誠心、家柄から政治的に信頼できるとみなされる軍指導者を厳選することができた。これら信頼できる人物に李商福が含まれる。李商福は、鉄道軍副司令官であった李少将の息子で、習近平が個人的に審査した他の粛清された幹部も含まれる。習近平は自分の裏庭に火の手が上がっていると見ているため、ロケット軍を率いる副司令官に、飛行士から幕僚に転身した王虎斌副司令官のような完全な部外者を任命したように、昇進に関して何よりも個人的な忠誠と服従を優先させるかもしれない。当然ながら、これは権威主義的指導者が直面する情報の問題をさらに悪化させるだろう。関連する専門知識を持たない極めて忠実な将軍や "イエスマン"を据えることは、粛清された将軍たちを指導的地位に導いたのと同じプロセスを繰り返すことになる。  

 さらに、指導者の交代は、軍事資産の売却、海軍艦船の密輸への転用、無駄な宴会など、ひどい形態の接待を止めることはできるかもしれないが、現在発覚している蔓延した腐敗を正すことはできない。人民解放軍を苦しめているひどい腐敗は、制度に起因している。国防調達における国有企業の支配、昇進を買い取るという以前からの慣行につながった透明性と監視の欠如、さらには中・下級将校とその家族に対する後進的な報酬制度はすべて、腐敗を単に規律の悪さや貪欲さの反映というだけでなく、システムを維持するために必要な通貨や潤滑油の一形態にまで高めている可能性がある。根本的な問題に対処せず、汚れた金の流れを突然遮断することは、士気と忠誠心をさらに萎縮させ、より大きな不満の種をまくだけかもしれない。最近北京で起きた、退職将校の家族が、おそらく他の将校のためのスペースを確保するため、アパートから強制的に追い出された事件を考えてみよう。おそらく習近平にとっての真の問題は、腐敗が軍の進行中の近代化にどの程度影響を及ぼしているのか、そしてより重要なのは、中国の国防界と表裏一体となっている不正慣行がなくなった場合、近代化が維持できるのかということだろう。■

 

Elliot Ji is a Ph.D. candidate in international politics at Princeton University. He was a member of the 2023 class of the Nuclear Scholar Initiative of the Center of Strategic and International Studies’ Project on Nuclear Issues. From 2022–2023, he served as the director of the Strategic Education Initiative at Princeton University’s Center for International Securities Studies. 

Rocket-Powered Corruption: Why the Missile Industry Became the Target of Xi’s Purge - War on the Rocks

ELLIOT JI

JANUARY 23, 2024