2022年5月27日金曜日

米海軍LCSの早期退役で海外譲渡案が浮上。新型フリゲート艦建造で造船所追加をめぐり綱引きか。

 

フリーダム級沿海域戦闘艦9隻の退役案が米海軍の2023年度予算提案に出ている。 US Navy Photos

海軍は、退役予定のフリーダム級沿海域戦闘艦(LCS)を他国へ譲渡する可能性について、海軍作戦部長のマイク・ギルディー大将Adm. Mike Gildayが連邦議会で語った。

上院歳出委員会国防小委員会で証言したギルディーは、麻薬撲滅活動用に南米諸国にLCSを譲渡する可能性についての評価を提案した。

「今後の選択肢について、効果的に使用できる他国への提供を提案したい。例えば、南米には、少規模乗組員で運用できる各艦を利用できる国があります。廃棄処分は唯一の選択肢とするべきではなく、他にも検討できることがある」。

米海軍の退役艦船を受け取っている国がある。例えば、オリバー・ハザード・ペリー級フリゲート艦をトルコ、バーレーン、ポーランド、パキスタンなどに譲渡した。

海軍は2023会計年度予算案の一部で、フリーダム級LCS9隻の退役を求めているが、すべて予定耐用年数に達していないため、議員から批判が寄せられている。

木曜日に議会でギルディー大将は、海軍が各艦を退役させたいと考えているのは、国防総省当局が「忍び寄る脅威」と表現する中国との潜在的な紛争に各艦では対処できないためと主張した。

「残念ながら、現行の沿海域戦闘艦は、機械的な問題もあるが、より大きな要因として、中国に対し十分な戦闘遂行能力を欠いている。フリーダム級用に開発されていた対潜艦戦パッケージが有効でないことが、判断の主な要因。そのため、中国潜水艦の脅威に対抗できないシステムに追加資金を投入しないことにした。これが、他の艦船と比較して、LCSが戦闘に貢献しないとの判断に至った主な要因です」と、ギルディー大将は語った。

フリーダム級LCSは2つの大きな問題に直面している。1つは、ガスタービンをディーゼルエンジンにつなぐコンバイニングギアの問題、もう1つは、LCSミッションモジュール計画でねらった対潜戦パッケージの搭載が困難になったことだ。

USSフォートワース(LCS-3)。2022年2月15日、カリフォーニア州サンディエゴ海軍基地にて

海軍は、2023年度予算要求を3月に発表した際、フリーダム級へのレイセオンAN/SQS-62可変深度ソナー(VDS)の搭載に苦戦し、LCS ミッションモジュールプログラムの ASW パッケージを断念すると発表した。ASW パッケージ放棄は、LCS ミッション・モジュール・プログラムの Nunn-McCurdy法 違反となった。

代わりに、海軍はコンステレーションConstellation級フリゲート計画(FFG-62)には、ターレスのCAPTAS-4を搭載した対潜戦能力を主装備にする。

木曜の公聴会でギルディー大将は、海軍には駆逐艦やP-8Aポセイドン航空機のような資産があり、暫定的にASWミッションを実行することができると述べた。

このような状況下でも、「対潜戦能力は強化されている。現行の駆逐艦は、対潜戦能力が非常に高い」「対潜水艦に関しては、海上だけでなく、潜水艦が世界で最も静かで最も効果的な潜水艦で、広範囲なASW監視用のP-8機など、他の有能なシステムがある」と述べた。

コンステレーション級フリゲート艦を建造するフィンカンティエリ・マリネット・マリーンFincantieri Marinette Marineは、初期作業を開始したが、まだ初号艦のキール敷設(正式な建造開始)には至っていない。

海軍は、フリゲート第一号艦の建造契約をフィンカンティエリと結んだとき、オプション9隻が含まれていたが、11号艦以降については、別造船所に契約を発注する可能性も残していた。USNI News が以前報じたところによれば、フィンカンティエリは1号艦の受注前に1億 8000万ドルを投資し、競争に勝てばさらに8000~1億ドルを投資し、年間2隻建造すると述べていた。

フィンカンティエリ・マリネット・マリーンによるUSSコンステレーション(FFG-62)のモデル USNI News Photo

木曜の公聴会で、タミー・ボールドウィン上院議員Sen. Tammy Baldwin(民-Wis.)は、フリゲート艦建造の産業基盤を開発するため、増額予算の計上を検討していると述べた。同議員の出身州にフィンカンティエリのウィスコンシン造船所がある。同議員は、毎年3~4隻のフリゲート艦の購入を支持すると述べたが、そのためには2番目の造船所が必要になると認めた。

カルロス・デル=トロ海軍長官Carlos Del Toroはボールドウィン議員に、海軍は1番艦を建造し初期問題を解決してから、造船所を追加したいと考えている、と語った。

「しかし、決定前に、フリゲート艦に搭載する技術や、例えばフィラデルフィアのLBES(陸上工学支援機構)への予算計上は、同艦に決定的に重要となると確認することが大切だと思います」「そして、同艦がスケジュール通り、コスト通り、時間通りに進むことを確認する必要があります」。(デル=トロ海軍長官)

同長官は、年間2隻の導入は、2番目の造船所を保証するものではない、と述べた。

海軍の2023年度5カ年予算計画によると、海軍は2023年度にフリゲート1隻、2024年度に2隻、2025年度1隻、2026年度2隻、2027年度1隻を購入したいとある。

議会は、2022年度予算案に添付の文書で、海軍が二番目の造船所を早急に導入することへ懸念を表明している。

「最初の造船所が技術的、生産的な問題を特定し、修正する前に、早急に2番目の造船所を追加すれば、プログラムに不必要なリスクと複雑さをもたらす懸念がある」と声明にある。

このようなリスクへの懸念から、議会は2番目の造船所と契約を結ぶ前に「重要な艦内部品の技術成熟とリスク軽減、主要システムの統合、艦全体の技術データパッケージ作成、最初の艦運用に即した試験の成功という目的を優先させる」ことを義務づけたとある。

海軍の予算統括ジョン・ガンブルトン少将Rear Adm. John Gumbletoは、3月の予算発表の際に、フリゲートに関する5カ年予算計画は単一造船所で建造する想定と述べている。■

Navy Could Transfer Decommissioned Littoral Combat Ships to Allies, Says CNO - USNI News

By: Mallory Shelbourne

May 26, 2022 1:37 PM

 

 

 


2022年5月26日木曜日

ウクライナ戦線で戦車不足のため、旧式T-62まで倉庫からくり出してきたロシア軍。

 T-62 Tank being shipped into Ukraine

車不足が噂される中、ロシアは旧式T-62の備蓄車両に手を付け、ウクライナに送り込んできた。

3カ月に及ぶウクライナ紛争の最前線に近いウクライナ南東部のメリトポリ駅で、冷戦時代のロシアのT-62戦車が多数撮影された。各戦車がロシア軍に使用されるのか、それとも現地の分離主義者グループに引き渡されるのかは不明だが、多大な損失により、ロシア装備品が枯渇していることに疑問が生じるだけである。

ロシアがT-62を再稼働しているとの噂が、今回の新展開に先立ち流れていた。国際戦略研究所によると、ロシアは1万台の戦車と8500台の装甲車を保管中で、そのうち約2500台がT-62だ(ただし、この数字は資材の状態を考慮していない)。ロシア軍はすでにウクライナで旧式T-72A/Bを使用しており、保管中の1万台の一部はT-62より新型である可能性が高いことから、今回の車両を前線に移動させるという選択は間違いなく魅力的なものである。

ウクライナ南東部に出現した車両は、ロシアがこれまでに獲得した南部地域の正式な併合に動き出す可能性があるといわれる中でのことだ。The War Zoneに昨日発表されたウクライナ情勢報告書によると、現在ケルソン地方にあるロシアが支援する地元手先政権は、最近、ロシア軍基地の設置を要請してきたという。

とはいえ、ロシアに追加装甲車両が必要でないのであれば、T-62を再稼働させることはないはずだ。ロシアのT-72、T-80、T-90は、2月の紛争開始以来、ウクライナの大砲、対戦車誘導ミサイル、無人機による猛攻撃に直面し、数は減少している。キエフ・インディペンデント紙によるロシアの損失の推定によれば、5月25日現在、1,300台以上の戦車をウクライナ軍が破壊している。独立系オープンソースアナリストのオリックスは、視覚的に確認された戦車の損失は700台としている。実際の数字はもっと多いだろう。

ウクライナ軍による戦車の損失だけでなく、3カ月にわたる残酷な戦いの後、ロシアがより高度な戦車の即応性を維持する能力も疑問視されており、特に制裁によって一部の主要技術部品の供給が絶たれたことが原因となっている。このことも、T-62がウクライナに配備された理由のひとつかもしれない。

ロシアのT-62は、イギリスのFV4201チーフテンやアメリカのM60パットン主力戦車に対抗するため、1960年代初頭に導入された。T-55シリーズの派生型であるT-62は、ソビエト軍で有名な戦車となり、重くて遅い戦車に代わって、機動性と操縦性の高い選択肢となることを意図していた。T-62は、前モデルより強力な主砲、増加した装甲、小型で効率的なエンジンを備えて設計された。1962年の生産開始後、8年間で推定2万両が生産された。

国立訓練センターのソ連製T-62中戦車。 Wikimedia Commons

しかし、T-62はソ連が当初期待した性能に至らなかった。発射速度が遅く、主砲の照準に問題があり、目的を達成できないと判明し、T-62は1975年にソ連での生産が終了した。

1980年代初頭、ソビエトはT-62の近代化計画を開始した。この計画では、装甲パッケージの改良、より強力なエンジン、火器管制システムの改良を行い、現代の戦場に向けた装備をより充実させた。これが、現在ウクライナにあるとされるT-62Mだ。

また、目撃されているT-62MVは、T-62Mに装備されているBDD装甲パッケージと異なるKontakt-1爆発反応装甲(ERA)パッケージを除けば、ほぼT-62Mと同じである。Kontakt-1 ERAは2枚のプレートの間にC4爆薬を挟み込み、衝撃に反応して車体へのダメージを軽減するもので、BDD装甲は2枚以上のプレートを間隔をあけて使用し、武器の衝撃をよりよく吸収するように設計されていることが主な違いである。

ロシアがT-62を墓場から蘇らせるのは、今回が初めてではない。T-62は、1980年代のソ連のアフガニスタン侵攻、1990年代のチェチェン紛争、2008年のジョージア紛争でも、ロシア軍はT-62を使用した。しかし、なんといっても倉庫から大量の同戦車が出てきたのは、2020年のシリアで、その時のT-62は、現在ウクライナにあるとされる戦車と非常に似たマーキングで塗られていた。

独立系アナリストは、ロシアとウクライナの紛争でロシアが旧式のT-62を再稼働させる可能性は低く、近代化された新型の方が戦闘に適していると推論している。それだけでなく、同型戦車が保管されている状況は現実的ではなく、維持できないと報告があり、旧式T-62は保管開始時よりも状態が悪くなっている可能性がある。

例えば、ブリヤート州ウランウデにある第227軍貯蔵基地では、ロシアの厳しい自然環境にさらされた大量の車両が露天に保管されている写真が公開されている。それだけでなく、盗難や略奪もロシアの備蓄品に蔓延している問題である。ロシアの保管場所は孤立した場所にあり、警備も不十分なため、盗難に理想的な環境といえる。

また、ウクライナにあるとされるT-62は、ウクライナ軍が成功させている対戦車作戦に対して脆弱であることも特筆すべきだ。実際、T-62の主砲の弾薬は、T-72、T-90、T-80と同じように車体内に収納されており、攻撃により弾が加熱されると、砲塔が爆発する可能性がある。

歴史的な前例からすると、ロシアはしばしば質より量に頼ることが多い。実際、ヴォロディミル・ズレンスキー大統領報道官のセルヒイ・ニキフォロフは最近、ABC放送に対し、ウクライナ東部の一部ではロシア軍がウクライナ軍を7対1で圧倒している、と語った。この事実と戦車の投入継続を重ねると、ロシア軍の攻撃作戦にとって、ウクライナ軍を圧倒することが重要な戦略となる可能性がある。

また、T-62が分離主義勢力の手に渡る可能性もある。分離主義勢力は通常、ロシアから最新式の武器を受け取っていない。分離主義勢力は長年にわたり、鹵獲した戦車やロシアから供給された戦車、その他様々な装甲車(より旧式の設計のものも含む)を使用していることが確認されている。また、ロシアが掌握している後方地域の安全確保にも役立つと考えられる。このような地域はリスクが低いとはいえ、予告なしに致命的な状況に陥る可能性がある。ロシアがさらに多くの領土を獲得すれば、確保は難しくなるばかりだ。特に、最新鋭戦車は前線で必要とされ、戦闘による消耗で数が減り、即応性が大きく低下しているため、T-62が役立つ可能性がある。

要するに、T-62 を再活性化しても、ロシアが抱える大型装甲兵器の稼働率の問題を完全に解決できるわけではなさそうだが、 現在占領している後方地域の安全をより良く確保するために必要な数を提供できるかもしれない。何よりも、今回の事態は、ウクライナ軍がかつて威信を誇ったロシアの装甲部隊を破壊するのに多大な影響を及ぼした衝撃に改めてスポットライトをあてているのだ。■


Russia Deploys 50-Year-Old T-62 Tanks To Ukraine | The Drive

BY

EMMA HELFRICH

MAY 25, 2022 9:44 PM

THE WAR ZONE

 



USSコネティカット座礁事故の報告書が公表され、艦長の資質が焦点の人的問題が取り上げられています。

 


シーウルフ級原子力攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-22)がカリフォーニア州サンディエゴを出港した on Dec. 15, 2021. San Diego WebCam Photo

 

海軍で最も強力な潜水艦が、2年以上にわたる指導者の甘い監督により、最終的に昨年10月2日の南シナ海の未知の海山への衝突につながったとする事故調査結果が発表された。

 

 

 USSコネティカット(SSN-22)は、米インド太平洋軍の要請で西太平洋に配備され5カ月が過ぎたころ、海図が不十分な海域を高速走行中に海山に座礁したと、米太平洋艦隊海上本部長クリストファー・カバノー少将Rear Adm. Christopher Cavanaughが統括する2021年10月29日の司令部調査が明らかにした。調査結果は月曜日発表された。

 公表前に大幅に編集された報告書は、コネティカットの前艦長キャメロン・アルジラーニ中佐Cmdr. Cameron Aljilaniによる一貫しない監督と劣悪な指揮風土が、南シナ海の海山座礁につながったと述べている。

 「今回の事故は、単一の行動や不作為が原因ではなかったが、予防できた。事故は、航海計画、監視チームの遂行、リスク管理における過失の積み重ねから生じた」と報告書にある。

 「これら3分野の1つでも、慎重な意思決定と基準の遵守があれば、座礁を回避できたはずだ」。

 報告書では、アルジラーニ艦長の784日にわたる指揮の間、同艦が67%をワシントン州ブレマートン母港から離れた場所に展開していた高テンポ運用もわかる。

 座礁までの数時間、乗組員には事故を防ぐチャンスが何度かあったが、危険警告を無視した、と報告書は指摘している。

 

 

座礁事故の発生 

USSコネティカット(SSN-22) は、2021年7月31日に横須賀基地に寄港した。US Navy Photo

 

 

10月2日、コネティカットは緊急の乗組員上陸のため、南シナ海を沖縄に向け高速航行中に座礁した。速度や位置情報は報告書から削除されているが、脚注の参考文献には、24ノットでの機器の性能が機密解除で記載されている。

 報告書の未編集部分に詳細が書かれていないが、乗組員を下船させるHUMEVACは、家族の緊急事態など様々な理由で発生する。

 10月1日、アルジラーニ、副長パトリック・カシン中佐Lt. Cmdr. Patrick Cashin、先任兵曹長コーリー・ロジャースChief of the Boat Cory Rodgers、航海士補、武器担当、機関士、作戦担当などが、臨時航路を検討した。

「臨時航路は、承認されたNAVPLANに基づいて運航されている場合に、CO「艦長)の裁量で使用できる」と調査結果にある。

「COは航路を詳しく検討しなかった。任務遂行のため、海図化が完全でない地域を通るコースを計画し、航路の理解度で航海士官と指揮官が食い違った」。

 アルジラーニ艦長は、潜水艦乗組員に海底地形を超精密に把握できる機密航法ツールでルートがカバーできると誤解してていた、と報告にある。

「COを含む航行審査チームは、コネティカットの外洋環境での活動を誤って評価した」と報告書は述べている。

 「航行危険区域の近くを通過する計画航路に基づいて、艦制限水域にあると認識すべきだった」。

 航路の航行中、乗組員は船底の水深を測定する測深機で継続的に測定していた。測深は、海図上と実際の水深を比較するために使用される。

 座礁の1時間弱前、当直員は潜水艦の予定進路と水深を確認し始めた。当直員は甲板長に、海図上の航路との不整合を知らせた。OOD、操舵員ともにアルジラーニに測深計と海図の不一致を知らせなかった。

 時刻が近づくにつれて、甲板長は測深値が浅くなってきたとOODに知らせた。

 「OODは、予想以上に浅い測定値を懸念していたが、積極的な行動を取る必要性を感じなかったと述べている」(報告書)。「OODは速度を下げる指示は考えなかった」。

 衝突の数秒前に、「ソナー・スーパーバイザーは艦首付近に痕跡を確認した。痕跡は[動物]と分類された。ソナー・スーパーバイザーは、他に接触はなかったと述べた」と報告書にある。

 その後、コネティカットは海山に衝突した。乗組員11名が衝撃で軽傷を負い、同艦はグアムへの移動中にドームを失った。潜水艦が2月に乾ドックに入った後の海軍海上システム本部の評価では、「損傷は艦首と舵の下部」とされた。

 アルジラーニ、カシン副長、ロジャースCOBは、10月29日の調査終了後、解任され、譴責文書が出たと、USNI Newsは当時報じている。

 米第7艦隊のカール・トーマス中将Vice Adm. Karl Thomasは調査終了報告で、座礁時の航海士、航海士補、機関士、OODに対して追加の譴責文書を出し、艦内職務から解任したと書いている。また、同艦の電子技師長、航海士も叱責し解雇した。

 

 

衝突前から問題があった

ワシントン州キーポートで行われたシーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN-22)の指揮官交代式で、カリフォーニア州アナハイム出身のキャメロン・アルジラーニ中佐がスピーチした US Navy Photo

 

 

 調査によれば、アルジラーニは2019年8月に艦の指揮を執ってから座礁までの間、シーウルフ級原子力攻撃艇3隻を統括する潜水艦分隊指揮官から3度、指導力での問題点で助言されていたと判明している。

 アルジラーニは着任して1年足らずで、第5潜水艦開発飛行隊司令官リンカーン・ライフステック大佐Capt. Lincoln Reifsteckから業績報告書を通じてカウンセリングを受けた。「不適切な監督、効果的でない説明責任の遂行、表面的な自己評価」を取り上げていた。

 2月、ライフステック大佐はアルジラーニに指示書を出し、「司令部の全体的なパフォーマンス、改善の欠如、フィードバックを受け入れたがらないことに対処するよう指示した」。

 配備前訓練中の2021年4月14日、コネティカットはカリフォルニア州ポイントローマで桟橋に衝突し、別の司令部が調査し、航行安全停止を促した。

 調査官は、アルジラーニ、カシン、ロジャース、桟橋衝突時の甲板長、航海士と航海士補に対し、「職務怠慢による懲戒処分」を勧告した(調査結果より)。

 ライフステック大佐は勧告を覆した。理由は「この調査により、航行、計画、稚拙なシーマンシップ、効果的でない指揮統制における基準低下が明らかになったが、通常ではないパフォーマンスであり、組織的失敗ではない」。「2021年5月13日にUSSコネティカットのブリッジから安全に入港したの確認し、乗員の訓練の適切な反映が示された」と述べた。

 ライフステック大佐はその1週間後にDEVRON 5の指揮を引き継いだ。

 ハドソン研究所の主任研究員で元潜水艦乗組員のブライアン・クラークBryan Clarkは、座礁の調査を見直したが、キャリア終了の懲戒処分になっていてもおかしくないと述べた。

 「普通なら、この男はクビになるはずだ」とクラークは言う。「あれだけ明らかな問題があるにもかかわらず、艦長であり続けたことに、とても驚いてかされる」。

 2021年5月21日、太平洋潜水艦部隊司令官ジェフリー・ジャバロン少将Rear. Adm.Jeffery Jabalonはコネティカットの配備を推奨し、2021年5月24日、当時の米第3艦隊司令官スコット・コン中将 Vice Adm. Scott Connは配備の準備状況完了を認定した。

コネティカットは5月27日に出港した。

 

 

高需要のアセット

北極の氷の中を浮上する高速攻撃型潜水艦USSシーウルフ(SSN-21)。July 30, 2015. US Navy Photo


コネティカットは、冷戦終結時に外洋でソ連潜水艦を狩るため設計されたシーウルフ級潜水艦(SSN-21)3隻の1隻だ。

 シーウルフ級は、ロサンゼルス級やバージニア級の攻撃型潜水艦よりも速く、深く潜ることができ、魚雷数十本を格納できる武器庫を誇る。3隻は最も重武装の艦船の一つで、需要が高い。

 調査によると、アルジラーニがコネティカットの指揮を執っていた784日のうち、527日はコネティカットの母港であるワシントン州ブレマートンから離れた場所で過ごしており、この割合は一般的な潜水艦よりもはるかに高いとハドソン研究所のブライアン・クラークはUSNI Newsに語った。

 2年に1回、半年間の配備がある一般的な攻撃型潜水艦の2倍以上である、とクラークは言う。

 攻撃型潜水艦がより高い運用テンポを持つことができる理由の1つは、最初の10年間、コネティカットは同クラスの他の2隻、USSシーウルフ(SSN-21)と大幅に改造されたUSSジミー・カーター(SSN-23)の部品取り用となり、頻繁に展開しなかったからだとUSNI Newsは理解している。その結果、コネティカットは船体の耐用年数よりも長く存続する過剰な原子炉能力を持ち、急配備で良い候補となる。

 「最初の10年間は、あまり頻繁に配備されなかった」とクラーク氏は言う。

「今は、失われた時間を取り戻しつつあります。

だが衝突による損傷で、重要な潜水艦資産を取り除いてしまった」。

 海軍水上システムズ本部によると、コネティカットは、2月にピュージェットサウンド施設で修理を開始している。NAVSEAの声明では、「損傷の修理にかかる費用は現在計算中」とあり、工期の見積もりを出していない。■


Investigation: USS Connecticut South China Sea Grounding Result of Lax Oversight, Poor Planning - USNI News

By: Sam LaGrone

May 24, 2022 5:49 PM


バイデン発言は台湾政策を一変させるのか 文脈に隠れた日本の役割にも注目

 

ョー・バイデン大統領は、台湾の地位に対する米国の曖昧政策に終止符を打ったのだろうか。5月23日月曜日、日本訪問中のバイデン大統領は記者会見で、台湾が中国から攻撃された場合、米国は台湾の防衛に乗り出すと述べた。その後、バイデンは自分の立場を繰り返した。スタッフは発言を撤回しようと強引な手段に出たが、結果として、米国は久しぶりに、中国から台湾を防衛する意向を公に表明したのだ。

バイデン発言は、米国が台湾を軍事防衛することに関して、数十年にわたる「曖昧さ」政策の多くを消し去った。これまでの米国は、中国による台湾への攻撃を抑止すると同時に、台湾が中国本土から独立を宣言することを抑止するため、曖昧政策を採用してきた。曖昧さにより、両岸紛争の政治的側面を凍結し、米国が両岸と生産的な経済・政治関係を築くことが可能になり、台北と北京が平和的に折り合いをつけてきた。

では、何が変わったのか。ジョー・バイデンは中国についてタカ派ではなく、米国の著名政治家として、同政策の論理を認識しているのは確かなはずだ。

可能性が数点思い浮かぶ。第一に、中国の海・空軍力の増大により、米国は台湾の地位について立場を明確に表明せざるを得なくなった。中国が台湾を占領したくもできなかった時代には曖昧さが許容されたが、強力になった中国にはもっと明確な抑止力が必要だ。

第二に、米中関係はこの15年間で全体として悪化しており、オバマ政権時代は緩やかに、トランプ政権時代は急速に悪化した。バイデン政権は悪化を止めていない。

第三に、バイデン政権は、ロシアのウクライナ侵攻が、攻撃的な領土征服に関する長年の規範を侵したと考えているのか。

最後に、中国が侵攻に踏み切ったロシアから間違った教訓を学んでいるとバイデンは考えているのか。米国はウクライナを何とか存続させているものの、ロシアの戦略核戦力への懸念からか、直接介入は控えている。

こうしてみると、「曖昧性」の終わりは、過大に決定されたようだ。トランプ政権では、大統領が台湾防衛に肯定的と思われる場面が何度かあった。米台の軍事関係は近年濃くなっており、防衛支援の下地ができた可能性がある。

にもかかわらず、バイデンの決断は多くの人を驚かせた。同様に驚かされたのは、台湾の政治的防衛に日本を関与させるかの文脈だった。 バイデン発言を撤回させようとしたスタッフの努力は、バイデンの明瞭さにもかかわらず、曖昧さをある程度保持する狙いの可能性がある。

バイデン発言はどんな影響を与えるのだろうか。 中国の反応は冷静とはいえない。 米アナリストは、軍事支援の約束は、強制的な懲罰から海・空域の拒否、台湾への米軍の事前配置まで、非常に多くの内容を意味しうると指摘し、声明を分析している。バイデン発言には、米国がウクライナに注力するあまり、中国の侵攻を抑止・撃退できないのではとの懸念を静めるねらいがあるのは確かだ。しかし、中国が今すぐ侵略を計画している証拠は乏しい。 中期的には、中国がロシアを支援する姿勢を再確認するかもしれないが、これまで中国は外交的・経済的な支援にとどめてきた。中国が侵攻すれば、米国は必ず介入してくるというのが、両岸バランスを分析する大方の見方であったのは確かだ。

これは分岐点かもしれない。以前の米国は核巡航ミサイルを台湾に配備するなど、台湾防衛に贅沢な手段をとってきた。冷戦中には北京と生産的な政治関係を、冷戦後には経済関係を築きたいとの願望が、それまでの台湾向けコミットメントの継続を不可能にした。

地政学の状況が流動的で、経済関係も危うい今、変化の時を迎えている。そう遠くない将来、米国が台湾を負債ではなく、軍事的資産ととらえ、中国の近海支配を脅かす前方位置と考えるように至っても、決して驚くべきことではない。■

Joe Biden's Taiwan Declaration: A Real Game-Changer or Not? - 19FortyFive

ByRobert Farley

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. Robert Farley is a Senior Lecturer at the Patterson School at the University of Kentucky. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), and Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020).


2022年5月25日水曜日

ウクライナ戦線の状況 ロシア軍の損失累計「ウクライナ発表) 5月23日現在

 

英国軍事情報部による月曜日時点の戦況。(イギリス国防省)



シアの侵攻が始まって89日。5月23日月曜日、ロシアウクライナ両軍はドンバスで激しい戦闘を繰り広げ、双方が目的を達成しようとした。


 戦闘のほとんどは、ウクライナ東部でロシア軍の戦術的優先目標の1つであるセベロドネツクSeverodonetsk地区で展開した。



ロシア軍車両から情報を読み解く

英国防省は、ロシア軍がウクライナに投入した戦車支援車「BMP-Tターミネーター」に注目した。BMP-Tターミネーター戦車支援車を持つ作戦中隊は1つのみで、セベロドネツク地区に配備している。

 「ロシア軍はBMP-Tターミネーター戦車支援車の唯一の作戦中隊をドンバス攻撃のセベロドネツク軸に配備しているようだ。その存在は、この攻撃には中央軍集団(CGF)が関与していることを示唆している。CGFは以前、侵攻の第一段階でキエフ東部の突破に失敗し、大損失を被った」と英国軍事情報部は述べている。

 BMP-Tターミネーターのような戦車支援車両は、アフガン戦争とチェチェン戦争で最初に開発され、ロシアの主力戦車に専用の防御力を提供する設計だ。

 「セベロドネツク地域は、ロシアにとって当面の戦術的優先事項の1つであることに変わりはない。しかし、最大10台のターミネーターが配備されているが、作戦に大きな影響を与えることはないだろう」と英軍情報部は評価している。

 ロシア軍はウクライナで、兵力と物資の両面で壊滅的な損失を被っている。装甲車や機械化歩兵大隊の戦術集団は、戦車、装甲兵員輸送車、歩兵戦闘車両数千台を失った。

 ロシア軍は東部での新たな攻勢について、親ロシア派のドネツク、ルハンスク両地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアとの間に陸上回廊を形成し維持することを狙っている。


ロシア軍の損失

ウクライナ軍は毎日、ロシア人犠牲者数を発表している。数字は個別に検証されたものではない。

 しかし、西側の報道は、ウクライナの主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この発言は英国国防省によって再確認されている。ウクライナのその他主張についても、同様に独立した検証が存在する。

 月曜日の時点で、ウクライナ国防省は、以下のロシア軍喪失を主張している。


  • ロシア軍戦死29,200人(負傷者・捕虜はその約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,166台撃破

  • 車両および燃料タンク 2,206両

  • 戦車1,293両

  • 大砲604基

  • 戦術的無人航空機システム 476機

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 204機

  • 多連装ロケットシステム(MLRS) 201機

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター170機

  • ウクライナ防空隊が撃墜した巡航ミサイル110発

  • 対空砲台93基

  • 架橋装置などの特殊装備プラットフォーム43基

  • ボートおよびカッター13隻

  • 移動式弾道ミサイルシステム「イスカンダル」4基


 先週までは、スロビャンスクSlovyansk、クリビャリKryvyi Rih、ザポリジャーZaporizhzhia周辺で激しい戦闘が続いていたため、ロシア軍の死傷者が最も多くなった。しかし、現在、激しい戦闘はウクライナ東部のスロビャンスク南東にあるバフムートBahmut方面に移っており、ロシア軍の死傷者が最も多い状態が続いている。■


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Stavros Atlamazoglou | May 23, 2022