2022年6月27日月曜日

ロシアが建造中のヘリコプター強襲揚陸艦ミトロファン・モスカレンコに注目。完成後は黒海艦隊旗艦。


Russia Builds new Drone Carrying Hypersonic Missile Firing Amphibious Assault Ship


(Picture source: Yandex account of ОНИ)



最新のプロジェクト23900型強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」は、ケルチ造船所「ザリヴ」で建造完了後、黒海艦隊の旗艦となる。

シアは海域支配に重点を置いており、プーチンは海上輸送で重要な海域に新しい任務部隊を配置する一方、防衛投資の中心は海洋能力を有する艦隊整備に置いている。ウクライナ戦争は、ロシアの利害を劇的に増加させた。対外貿易と商品の85%以上を海上輸送でまかなうロシアは、北洋航路に注目し、海底通信ケーブル(SCC)を敷設済みの各地域で演習を行っている。ウクライナ戦争が長期戦になり、ロシアは身を粉にして臨む中で、プーチンは海軍力増強を強く望んでいる。

 

ミトロファン・モスカレンコとは

2020年7月20日、ロシアは新型強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」[1]を発表した。その後、造船所が建造を開始し、建造が予定通りに進んでいると報告された。最新のプロジェクト23900強襲揚陸艦「ミトロファン・モスカレンコ」は、ケルチ造船所「Zaliv」での建造後に喪失したMoskvaに代わり黒海艦隊の旗艦となる。

 アレクセイ・クリヴォルチコAlexei Krivoruchko国防副大臣によると、新型強襲揚陸艦の排水量は約44,000トンに達するという。他の艦船から発射される極超音速ミサイル「ジルコン」の攻撃任務と目標指定を行うため、最大4機のスホーイS-70オホトニックBドローンを搭載する。また、ヘリ空母である「ミトロファン・モスカレンコ」は、様々な用途の重ヘリ16機を搭載し、1000人以上の海兵隊員を輸送できるとされる。

 強襲揚陸艦は上陸舟艇や装甲車を輸送するためドックを装備する。ロシアのヘリコプター艦は、プロジェクト23900に従って建造されており、ゼレノドレスク設計局によって開発されている。伝えられるところによれば、この艦の全長は220メートル以上になる。この寸法により、最大20機のヘリコプターと海兵隊2個大隊を乗せることができるはずだ。ロシアのヘリ空母は世界最大の揚陸艦を目指す可能性がある。

 また、その大きさにより、あらゆる水路、海峡、湾岸地域を封鎖できます。おそらく、アメリカ海軍のように、ロシアもプロジェクト23900に垂直離着陸機(VTOL)を装備する計画なのだろう。

 Project 23900の最終的な外観は、フランスの汎用強襲揚陸艦(UDC)ミストラルと同様にプロペラ操舵コラムを使うことから、統一電力システムが採用されているのだろう。全体アーキテクチャや、プロジェクト23900の艦寸法がミストラルUDCに近いという事実と合わせると、ミストラルが23900設計のモデルになったと結論付けることができる。

 ロシアを代表するヘリコプターの設計・製造会社であるロシアン・ヘリコプターズ・ホールディングは、プロジェクト23900用に甲板型Ka-52KカトランKatranのテストを再開していると、同ホールディングのアンドレイ・ボギンスキーAndrei Boginsky総支配人がインタファクスに語っている。「総司令官がヘリ空母起工式に参加しました。Ka-52Kの着艦テストは完了しました。あとは空母との接続の問題を処理するのみです。国防省との整合性もとれました」。2019年11月、Rostec航空クラスターの責任者であるアナトリ・セルジューコフAnatoly Serdyukovは、Interfaxとのインタビューで、空母が完成していないが、Ka-52K艦載ヘリコプターの作業は継続し、機体納入は現行の国家軍備計画(SAP)により2027年まで保証されていると述べた。

 戦闘ヘリコプターKa-52Kは、パトロール、ビーチに着陸時に上陸部隊の火力支援、前線と戦術的深部で部隊支援タスク用に設計されている。「カトラン」は以前、重航空母艦「アドミラル・クズネツォフ」の地中海作戦の一環で試験飛行を成功させた。

 ロシアの軍事専門家で歴史家ドミトリー・ボルテンコフは、イズベスチアのインタビューで、強力な戦闘艦集団を作る計画を指摘している。プロジェクト23900を含む第1グループは地中海に配備され、ウラジオストクとミサイル巡洋艦「ヴァリャーグ」が率いる第2グループは東南アジア沿岸を巡航する予定だ。

 

Picture1

 

 ロシア海軍総司令官は、「ミトロファン・モスカレンコ」艦の組織構成と乗組員編成に取り組んでいる。乗組員は、水兵のほか、航空、海兵隊が含まれる。その中で注目されるのは、航空技術職だ。ロシアの基地から離れた場所で装備の戦闘能力を維持し、限られた道具と設備で窮屈な状況の中、あらゆる複雑な修理を行わなければならないため、専門家の資格は最高の条件を満たしていなければならない。チームは2022年に完全な人員配置になる予定である。訓練プログラムは作成済みとされる。その承認後、乗員は訓練を開始し、その後、建造後の艦で実際の訓練を行う。

 フランスのミストラル型ヘリ空母に代わるものとして開発されたプロジェクト23900「ミトロファン・モスカレンコ」強襲揚陸艦は、7月20日にクリミアのザリブ工場で海軍軍艦として起工された。プーチンは定礎式でのスピーチで、次のように述べた。「新型艦は、先進的な兵器システム、制御システム、長距離通信システムを装備する。海軍の戦闘能力を大幅に強化し、戦略的能力を向上させるだろう。海軍は常にロシアの国境を確実に守ってきた。現在では、ロシアの安全保障に極めて重要な役割を果たし、国益をしっかりと守り、世界の戦略的バランスと安定の維持に役立っている。ロシアは世界最長の海岸線を持ち、3つの海に面しているため、我々は、有望な武器や装備を備えた艦艇を建造し、現代の戦闘に耐える艦隊の整備を続けている。この8年間で、艦隊には200隻を超える各種船舶、ボート、艦艇があることに注目したい。2027年までに海軍に占める近代的な艦船の割合が70%を超えるように、国家軍備計画の施策を実行し続ける必要がある。

 

 

Russia Builds new Drone Carrying Hypersonic Missile Firing Amphibious Assault Ship - Warrior Maven: Center for Military Modernization


MARINA DIERKS

JUN 21, 2022

 

By Marina Dierks -- Marina Dierks is a Warrior Maven Fellow, Expert Russian Linguist and Russia Analyst. A native speaker, who has lived in Russia for over 20 years, she has trained the military in the Russian language and has written analysis on Russian affairs, Russia’s ethnic and religious issues, history and culture. A linguist with experience in intelligence collection, analysis and interpretation, Marina has also supported the US Coast Guard Auxiliary as a Flotilla Staff Officer for several years.

 

ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月26日現在) ロシア軍指揮官の変更

 

The situation on the Donbas after the fall of Severodonetsk. (ISW)


シア侵攻が始まって123日目の日曜日、ウクライナ軍が撤退したことで、戦闘はセベロドネツクから隣のリシチャンスクに移っている。


戦術的撤退

ウクライナ軍はセベロドネツクから戦術的撤退を終え、現在はそのすぐ西に位置するリシチャンスクを防衛し、戦闘は同市の南郊外で行われている。

 ここ数日、ロシア軍はリシチャンスクの南西で、3マイル以上前進し、小さな突破口を開くことに成功した。ウクライナ軍がセベロドネツク市から撤退を決めたのは、同市が後方からの包囲の脅威にさらされていることが主な理由の1つだった。

 一方、南部ではケルソン方面へのウクライナ軍の反攻に大きな進展がなく、ロシア軍は同方面への防衛態勢を強化し続けている。

 また、ウクライナ第二の都市ハリコフの北部では、両者が陣取り合戦を繰り広げている。どちらも大きな前進はないが、両軍は敵への嫌がらせを試みている。

 地上の動きに加え、ロシア国防省は大規模な人事改編を行い、トップが入れ替わった。新しい指揮系統は、ウクライナ駐留ロシア軍総司令官がゲンナジー・ジドコ上級大将Colonel-General Gennady Zhidko、中央集団司令官がアレクサンダー・ラピン上級大将Colonel-General Alexander Lapin、南部集団司令官がセレイ・スロヴィキン上級大将Colonel-General Serey Surovikinとなった。


ロシア軍の損失

ウクライナ軍は連日、ロシア人犠牲者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。

 しかし、欧米の情報機関による評価や独立した報告書は、ウクライナ側の主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、約800台のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。

 他のウクライナ側の主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。

 さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報告によると、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出しているという。


Destroyed Russian tanks during the Battle of Mariupol. (Ukrainian Ministry of Internal Affairs)


 実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いものとなっている。

 日曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア人犠牲者を主張している。

  • 戦死者34,850(負傷者、捕虜は約3倍)。

  • 装甲兵員輸送車3,659

  • 車両と燃料タンク2,564台

  • 戦車1,532

  • 大砲764

  • 戦術的無人航空機 630

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 217

  • 多連装ロケット(MLRS)243

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター184

  • 撃墜した巡航ミサイル139

  • 対空砲台99

  • 架橋装置などの特殊装備60

  • ボートおよびカッター14

  • 移動式弾道ミサイル「イスカンダル」4


 ここ数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は大幅に減速している。このことは2つのことを示唆している。1つ目は、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっており、目的を達成するために複合兵器をフル活用していること、2つ目は、ウクライナ軍の戦闘力や弾薬が不足していること、これは3カ月以上にわたってロシア軍と戦っていれば当然予想されることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようだ。

 先月はスロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャー周辺で激しい戦闘が続いたため、ロシア軍の死傷者が最も多かった。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺のバフムート方面に多く移った。


Russian military vehicles getting hit by Ukrainian artillery. (Ukrainian Ministry of Defense)


 その後、欧州最大級の原子力発電所があるケルソンとザポリジャ周辺でのウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は再び西に移動した。

 日曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻しセベロドネツクを後方から遮断しようとしているバフムト付近と、ドネツク近郊のクラホブで最も大きな犠牲を出した。

 ロシア軍は、東部での新たな攻勢について、親ロシア派の離脱地域であるドネツクとルハンスクを完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアとの間に陸上回廊の形成・維持を目的としていると述べている。■


Your daily tactical update on Ukraine (June 26) - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | June 26, 2022


2022年6月26日日曜日

意味のない「勝利」でロシアに本当の苦しみが訪れる。威信のため戦い続けるプーチンはベトナム戦当時の米指導部を思わせる。

 

クライナ戦争が5ヶ月目に入り、侵攻に伴う巨額費用を正当化できるだけの勝利がロシアにあるのか、ますます見えなくなってきた。征服には対価が必要で、そうでなければ戦争は非合理的だ。しかし、わずか数カ月ながら、戦争の費用対効果を分析すると、ロシアにとってマイナスであり、悪化傾向にあるのは明らかだ。しかし、ロシアのプーチン大統領は和平交渉に無関心だ。単に威信のため、つまりロシアが大国であると証明するために、戦争を戦っているように見える。ロシアが大国であるという主張そのものをこの戦争が破壊しているのだから、皮肉だ。

壊滅させての征服が報われることはない

ウクライナ東部で、ロシアはやっと前進を始めた。領土を征服しつつある。ロシアが独立国と主張しているドンバス地方のルハンスクとドネツクを完全制圧の一歩前まで来ているようだ。また、ロシアはウクライナの海岸の大部分を支配している。プーチンは一種の「勝利」宣言が間もなく可能になるかもしれない。

しかし、これは最も基本的で鈍感な形の成功に過ぎない。ロシアが以前より少し多くの領土を支配するようになったのは事実であり、世界の土地空間が無限ではないため、領土支配はゼロサムゲームとなる。ロシアは現在、2月時点より多くの領土を支配しており、これはある種の成功だ。しかし、勝利はそれ以外では非常に限定的なものだ。

ロシアはウクライナを迅速に撃破し、場合によっては同国の大部分を占領すると期待していた。しかし、その代わりに獲得した領土は狭く、反撃に弱い。そして、征服した領土が荒廃している。ロシアは容赦なく空爆と砲撃で占領地を叩いている。物理的なインフラは破壊され、住民は殺されるか追いやられた。

これらの征服地を占領するには、反乱を防ぐために大規模な軍隊や警察が必要となるため、費用がかかるだろう。(ウクライナはナチスとソビエトに対する抵抗の温床であった)これらの空間から経済的価値を引き出すための復興にも費用がかかるだろう。世界の大半の国は、これらの征服地をロシアの領土と認めないだろう。投資や貿易はほとんど行われない。また、インフラが破壊されているため、ビジネスも阻害される。経済的に生産性の高い人々が、このような紛争が絶えない地域に移り住むこともない。年寄りや体の弱い人しか残らないだろう。

こうした征服地の存続には、すぐにロシア政府補助金が必要となる。これは、その他ロシアの「凍結された紛争」でも見られるパターンだ。費用と負担に直結する。これでは持続可能な拡大モデルではないし、対価を支払う征服でもない。

このように費用のかかる征服に加え、戦争がもたらす広範な経済的影響がある。侵略によって、ロシアは何十年も西側経済から孤立することになる。たとえガスの購入が最終的に再開されたとしても、西側諸国はロシアとの関係を徐々に断ち切っていく。欧米企業は戻ってこない。制裁措置は長引き、欧米の銀行へのアクセスはIMFなどの国際金融機関へのアクセスとあわせ急激に低下し、レジャーや教育のため欧米を訪れることは非常に難しくなり、重要な輸入品や技術は断たれ、中国依存度が急上昇する。今は実感がまだ湧かないが、中期的にはロシアの成長率は著しく低下し、頭脳流出を深刻になる。プーチンが政権を握ったままでは、ロシアはソ連並みに世界から孤立することになる。

威信のため戦争とはひどい考えだ

上に述べたように、今回の戦争はロシアにとって大失敗だ。ロシアの砲撃で空間が破壊され、その結果、未承認の征服として政治経済的に行き詰まると考えると、領土獲得の価値は低く、おそらくマイナスであろう。このような現実から、ロシアは戦争を止めるべきであり、この点についてクレムリンに異論もあるようだ。

しかし、プーチンは、戦争はもはや特定の価値ある征服のためではなく、それ自体のための勝利であることを示唆して、進めている。これは戦争をする理由としてはひどすぎる。物質的なコストバランスを無視し、名声のための勝利を追求すれば、勝ち目のない泥沼に陥ることは証明済みだ。ベトナム戦争後期のアメリカの論理に非常に近い。

ベトナム戦争では、アメリカの国家安全保障機関の多くが、妥当なコストで戦争に勝つことはできないと認識し、例えば、北ベトナムに侵攻するか核攻撃することなしでは戦争に勝てないと理解していた。ヘンリー・キッシンジャーは、1966年時点でこのように考えていたようだ。しかし、リンドン・ジョンソン大統領は、戦争に負けた最初のアメリカ大統領になりたくなかったし、後継者であるリチャード・ニクソン大統領は、つかみどころのない「名誉ある平和」を望んでいた。アメリカの信用は危機に瀕していた。

戦い続ける理由は、循環論理の中で、米国がすでに戦争状態にあったからとされた。勝利するのが重要であり、物質的、戦略的な目標を明確にできなかった。ジョンソンもニクソンも、戦争にどっぷりつかり、抜け出せないでいた。国内で大きな政治的緊張を生み、海外で同盟国を遠ざけ、経済問題に火をつけ、1970年代の問題の原因となった。

プーチンはこのジレンマに陥っているのだろう。戦争を始めたのは本人だ。勝敗は自分に跳ね返る。そして、膠着状態に陥れば、ロシアの大国としての認識が損なわれる可能性がある。戦争そのものが、ロシアの軍事力の不十分さとロシア経済にコストを蓄積させることによって、大国としてのロシアの主張を弱体化させるからだ。

米国が信頼性を高めるためベトナムで戦い続けたように、プーチンもウクライナで戦い続けることになりそうだ。戦争の物質的コストは、彼には無関係であい、最終的に悪化の一途になるだけだろう。■

The Ukraine War Is Bleeding Russia Dry - 19FortyFive

ByRobert KellyPublished23 hours ago

Dr. Robert E. Kelly (@Robert_E_Kelly; website) is a professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. Dr. Kelly is a 1945 Contributing Editor as well.


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月25日現在) ウクライナ軍がセベロドネツクから撤退


シアのウクライナ侵攻が始まり122日目の土曜日、ウクライナ軍はセベロドネツクから秩序ある撤退を続けた。


次回戦うため撤退

金曜日の朝、ウクライナ軍参謀本部がセベロドネツクから撤退し、隣のリシヤンスクに撤収すると決定したとの情報が入った。この決定は、セベロドネツクの南西でロシア軍が前進し、リシチャンスクとセベロドネツク間のウクライナ軍の通信網を遮断し、市内に残るウクライナ軍を閉じ込める恐れが出たことが引き金となった。


The evolving situation in the Donbas. (ISW)



 「セベロドネツクを出たことで、ウクライナ軍はよりよく守れる立場になった。そして、この非常に小さな、非常に漸進的な利益のためにロシアが支払った代償について考えることが重要だと思う」と、米国防高官は金曜日に述べた。

 南方から進攻してきたロシア軍は、ウクライナ人居住地二三個を包囲し、ウクライナ人守備隊を罠にかけることに成功した。

 一方、南部では、ケルソン方面へのウクライナの反攻が、遅いペースではあるが続いている。


ロシア軍の損失

ウクライナ軍は連日、ロシア人犠牲者数を発表している。これらの数字は公式の数字であり、個別に検証されたものではない。

 しかし、欧米の情報機関による評価や独立した報告書は、ウクライナ側の主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、約800台のロシア戦車を破壊または拿捕したことを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。

 他のウクライナ側の主張のほとんどについても、同じような独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆる種類の戦闘車両数千台を失ったことを認めた。

 さらに、西側情報機関の関係者を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の死者を出したという。

実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近いという。

 土曜日の時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア軍損失を主張している。

  • 戦死34,700人(負傷、捕虜は約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,64

  • 車両および燃料タンク2,560

  • 戦車1,511

  • 大砲764

  • 戦術無人航空機システム626

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 217

  • 多連装ロケットシステム(MLRS) 24

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター 184

  • 撃墜した巡航ミサイル137

  • 対空砲台99基

  • 架橋装置などの特殊装備60

  • ボートおよびカッター 14

  • 移動式イスカンダル弾道ミサイル4


Destroyed Russian armorRussian armored vehicles destroyed during the Battle of Mariupol. (Ukrainian Ministry of Internal Affairs)


この数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は大幅に減速している。このことは2つのことを示唆している。1つは、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっており、目的を達成するために複合兵器を十分に活用していること、もう1つは、ウクライナ軍が戦闘力や弾薬を使い果たしつつあること、これは3カ月以上にわたってロシア軍と戦っていれば予想されることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦いの疲労が双方に追いついてきているようだ。

 先月の大半は、スロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャー周辺でロシア軍の死傷者が最も多く、激しい戦闘が行われていたことを反映している。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東にあるバフムト方面、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺に多く移行していった。

 その後、ウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるケルソンとザポリジャの地域へと再び西へ移動した。

 土曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻しセベロドネツクを後方から切り離そうとしているバフムート付近と、ドネツク近郊のクラホーブで最も大きな犠牲を出した。

 ロシア軍は、東部での新たな攻勢について、親ロシア派の離脱地域であるドネツクとルハンスクを完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアとの間に陸上回廊を形成し維持することが目的と述べている。■


Your daily tactical update on Ukraine (June 25) - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | June 25, 2022


2022年6月25日土曜日

世界規模のインフレはロシアが原因ではない。G7の失策だと主張するプーチン。

 

Know Your Enemy: 

ポイント: 西側世界のルールに従うつもりはない。世界規模のインフレを招いたのはG7の無策が原因だ。


新ブログ Know Your Enemy との同時発表記事です。ご了承ください。

https://knowyourenemy2022.blogspot.com/




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米諸国がインフレ率の上昇への対処に躍起になる中、ジョー・バイデン米大統領は、インフレは「プーチンの値上げ」の結果と主張し、自国とヨーロッパの経済苦難の責任をロシア大統領に押し付けようとしている。

 世界中で観察されるインフレ上昇の原因は、ロシアのウクライナでの軍事作戦ではなく、G7諸国による長年の「無責任な行動」にあると、ウラジーミル・プーチン大統領が金曜日述べた。

「インフレの急激な上昇は昨日起こったことではなく、G7諸国の長年にわたる無責任なマクロ経済政策の結果である」とプーチン大統領はBRICSプラス会議の中で述べた。

 西側諸国はウクライナでの軍事行動をめぐりロシアに圧力をかけ続けているため、インフレの急上昇を経験している。米国ではインフレ率が8.6%を超え、英国の前年比インフレ率は9.1%、ユーロ圏では8.1%と報告されている。

 しかし、欧米諸国はロシアの軍事作戦を「侵略」と非難し続けており、モスクワはドンバスの人々の救援要請に応じ作戦を開始し、「ウクライナの非軍事化、脱ナチス化」を目標に掲げていると強調している。


ルールは誰が決めるのか?

ロシア大統領によれば、世界の貿易は「混迷」しており、世界の金融システムはぐらつき、サプライチェーンは混乱しているという。

 プーチン大統領は、ウクライナ産穀物の供給への懸念について、こうした懸念は人為的に煽られたものであり、ロシアはウクライナから輸送される穀物にいかなる障害も与えていないと述べた。

 「農産物、肥料、エナジー担体、その他重要製品の供給に関するすべての契約上の義務を誠実に履行し続ける用意があるのは確かだ」と述べた。

 さらにプーチンは、国連中心の世界の安全保障構造を、いわゆる「ルールに基づく秩序」に切り替えようとする国があると指摘した。

 「何のルールだ?そのルールは誰が作るのか」と疑問を呈した。

 BRICS諸国が多くの問題で意見を共有していることから、BRICS+は「有用」であり、参加者は世界に「真に民主的な多極化秩序」を確立しようとしていると、ロシア大統領は続けた。

 中国の主催で2日間のBRICSサミットは、木曜日にテレビ会議で始また。サミットには、グループ国の首脳が出席し、プーチン大統領はインドのナレンドラ・モディ首相、ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領、南アフリカのシリル・ラマフォサ大統領、中華人民共和国の習近平国家主席と出席した。

 金曜日には、アルゼンチンのアルベルト・フェルナンデス大統領が自国のBRICS加盟を要請し、同国が 「世界人口の42%、世界総生産の24%を占める 」グループの一員になることを熱望していると強調した。■



Putin: G7's 'Irresponsible' Actions Triggered Global Inflation, Not Russia's Special Op in Ukraine

https://sputniknews.com/20220624/putin-g7s-irresponsible-actions-triggered-global-inflation-not-russias-special-op-in-ukraine-1096632717.html


ウクライナ小麦輸出へ海軍部隊派遣を求める声があるが、実施前によく考えるべきだ

 grain

 

SHUTTERSTOCK



世界的な小麦不足と食糧価格高騰は、黒海での海軍力行使を米政権に迫りそうだ。だが1915年の英国の行動から多くの教訓が得られる。慎重姿勢が求められる。


界は食糧危機に直面している。高度なまで最適化されたグローバルな貿易システムへの一連の衝撃のため、小麦価格が急騰している。戦争でウクライナの穀倉地帯へのアクセスが途絶え、輸送システムは混乱状態に陥った。天候不順は、穀物の主要輸出国の作物に損害を与えた。そのひとつインドは、収穫物ほぼ全部を輸出禁止にした。食料価格上昇に伴い、暴動と予測不可能な政治的影響が懸念される。心配した指導者たちは、ウクライナの小麦へのアクセスを再び確立しようと躍起になっている。


似た状況は以前にもあった。


今回の食糧問題では、「前例がない」との言葉が飛び交っているが、実は前例があった。1914年、トルコは黒海と地中海を結ぶ唯一の水路であるダーダネルス海峡を封鎖し、オデッサからのウクライナ産小麦の移動を妨害した。現在は、ロシアの黒海艦隊と、双方が敷設した機雷が障害となっている。効果は同じであり、力学もまた同じである。これを理解することは、米国が1915年に英国が犯した悲惨な前例を倣わないため重要であろう。


現在、米国は食糧をほぼ自給しているが、このような供給ショックに見舞われる可能性はある。食料不足はないだろうが、食料はグローバル商品であり、海外での混乱はあらゆる国の価格に影響を与えるため、米国人は上昇し続ける価格へ対処を迫られれるだろう。その結果、ワシントンに政治的圧力が高まり、100年以上前に英国指導者が犯したような過ちに米国の指導者が追い込まれ、米海軍と海兵隊に直接的な影響を及ぼす可能性がある。


第一次世界大戦の前に、英国政府は食糧安全保障を慎重に研究していた。輸入小麦に依存することがアキレス腱であることを認識した英国政府は、グローバル化した国際経済の中で、真の危険は実際の小麦の不足ではなく、小麦が入手できなくなることと結論づけた。供給の問題ではなく、システムの問題だったのだ。当時も今も、システムに大きな衝撃が加われば、小麦価格は暴騰しかねない。


1914年の終わり頃、英国の指導者たちが恐れていた小麦価格の高騰が、一連の出来事で引き起こされた。COVID-19パンデミックと同様に、第一次世界大戦の勃発は、国際経済を狂わせた。そして、世界の小麦市場は、大嵐に見舞われた。7大小麦輸出国が次々と閉鎖された。トルコのダーダネルス海峡封鎖でウクライナとルーマニアの小麦がストップ、アルゼンチンでは季節外れの大雨で作物が壊滅、オーストラリアでは大干ばつの年だった。北米では、異常な冬の寒さで鉄道や水路が凍り、米国とカナダの収穫物が市場に出回らくなったが、結果的には控えめな収穫量に終わった。さらに、インド政府は小麦輸出を禁止し、イギリスを激怒させた。インド産小麦は不作ではなかったが、高騰する価格に魅せられ、インドの中心地から小麦が吸い上げられ、バザールで価格が高騰し、国内政治の混乱を招いたのである。


ロンドンでは、小麦の世界価格が4倍になると予想されていた。貧民の不安を煽られ、パンの値段を下げることに躍起になった。しかし、西欧資本主義社会では、価格統制と配給制はイデオロギー的に許されない。小麦の先物取引を秘密裏に行い、市場の機密情報の漏洩を防ぎ、期待値を操作した。しかし、市場の力はあまりにも強く、コントロールできなかった。


そこで英国閣僚は、最後の手段として、若き精力的な海軍大臣ウィンストン・チャーチルが提唱したダーダネルス海峡の強行突破を検討しはじめた。案はチャーチルの思いつきで、何の戦略的意図もない作戦と当初は見なしていたアスキス首相も、政権の維持という最も切実な戦略的意図を見出した。ウクライナの小麦を再入手できれば、穀物価格が下がり、パン暴動を回避できるだけでなく、イギリスの同盟国であるロシアが喉から手が出るほど欲しい外貨を獲得でき、イギリスから多額融資を受けずに済むようになる。価格統制や配給制という強引で政治的に不穏な選択肢に比べれば、「ダーダネルス海峡を襲撃する方がはるかに簡単で安上がりだ」とのケインズ発言が記録されている。海軍と軍の上級幹部は、失敗の危険性と潜在的な影響力を警告したが無視され、かわりに「できる」と断言する将校を優先した。



結果は大失敗だった。ダーダネルス海峡を攻撃した艦隊の4分の1が(機雷で)沈没した。損失を取り戻したい欲望から、エスカレートの論理が支配的となった。イギリスは、ガリポリへの上陸攻撃で事態収拾を図った。これは屈辱的な敗北となり、アスキス政権の崩壊に直結した。さらに、上陸直後、イギリス政府はオデッサに小麦在庫がないのを知り、愕然とした。農場から穀物を運ぶ列車が、収穫前にすべてロシア軍に徴発されてしまったのだ。 


ここから、今日の米国が学ぶべきことが2つある。


まず、穀物の価格高騰を前に何もしないという選択肢はないだろうが、行動するリスクを理解し、認識する必要がある。海軍を派遣して護衛任務や機雷掃海を行えば、長期かつ高リスクの作戦となり、エスカレートの危険性も高い。国内の政治・経済問題を解決するため、軍事的な解決策を押し付けること、あるいは軍事的な解決策しか残さないようにすれば危険と言わざるをえない。事態は手に負えなくなる。


1915 年時点の英指導者たちは、軍事行動のリスクを過小評価し、インフレの中で生活し、配給制を受け入れ、ロシア向け大規模借款を支払う形で国民に犠牲を求めれば選挙に影響が出ると恐れていた。ダーダネルス海峡での軍事行動は、英国人に何かを断念する要求するのを避けるためと思われたかもしれないが、犠牲を納税者や消費者からガリポリで戦い死んでいった兵士に移しただけだった。


今日、自国民に犠牲を求めることに熱心な欧米政府はないようだ。そして、小麦の作付けが始まるカナダ西部(世界最大級の小麦輸出国)の状況が、今年は最適とはいえないため、食料価格の上昇傾向は続くだろう。カナダの収穫が予想より少ないと確認され、さらに米国で中間選挙が近づいていることから、バイデン政権への圧力が高まるに違いない。


第二の教訓は、米国は、ウクライナの小麦がオデッサから輸出可能であり、さらにこれから輸出されるとの主張を前提にした作戦に賛同する前に確認が必要だということである。ウクライナ産小麦が港で眠っているのは確かなようだが、処理施設は機能しているのか?岸壁は荒れていないか?また、通常、小麦を農場から港に運ぶの鉄道インフラはロシアの猛攻に耐えられているのか?港にある穀物はサプライチェーンの一部でしかない。サプライチェーンとは、農場から港までのベルトコンベアーと考えた方がいい。重要なのは、介入は単に入出港し、小麦を掴んで出発すれば終わりではないということだ。小麦は流れなければならないし、それには時間がかかるし、時間が経てばリスクも高まる。



Ukrainian corn, wheat, and sunflower crops

ロシア侵攻前にウクライナは小麦の世界市場で9%のシェアだったが、戦闘によりウクライナから搬出できなくリ、世界の食品価格上昇につながっている(Shutterstock)

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だが米国が教訓を学ぶ見込みは怪しい。ひとつには、米軍の指導層は、戦略的環境を構成するグローバル経済力の理解に関心を払っていない。この関心の欠如のため、政治家と政治家自身の条件に合わせることができず、政治的問題の解決に必死な民間に蒸し返される脆弱性を高めている。一方、政治・経済・戦略の各要素のダイナミックな相互作用について、文民指導者が把握できているかは不明である。過去20年間、各政権は一貫して軍事行動に頼りすぎ、その結果生じる影響を過小評価してきた。商務省、財務省、農務省が米海軍の上級幹部と会談し、商業的な海洋の流れを話し合ったのはいつが最後だっただろうか。定期的に開催されるべきなのに、なぜ開催されないのか。まるで、軍民の双方がそれぞれ片隅に引っ込んで、戦略、政治、経済が相互に作用し、何十億人の運命を決定する中間地点で会うのを拒否しているかのようだ。


この夏、食糧価格が上昇し続ければ、バイデン政権に対して黒海に米海軍を展開せよという圧力がかかるだろう。小麦2千万トンを運ぶには海路しかない。その前に、ホワイトハウスと国防総省は、ガリポリと1915年の英国の教訓を考慮する必要があろう。行動を起こすコストは、消費者が毎日のパンのために支払うコストより大きくなると判明するかもしれない。■


Look Before You Leap


By Nicholas A. Lambert

June 2022 Proceedings Vol. 148/6/1,432

COMMENTARY VIEW ISSUE

https://www.usni.org/magazines/proceedings/2022/june/look-you-leap?mc_cid=1937a3c0c2&mc_eid=75a6d71837


Nicholas A. Lambert

Dr. Lambert is author of The War Lords and the Gallipoli Disaster: How Globalized Trade Led Britain to Its Worst Defeat of the First World War (Oxford University Press, 2021), which is short-listed for the Gilder Lehrman Military History Prize.