2015年1月23日金曜日

☆すべての艦船に攻撃力を持たせる分散武装の構想(米海軍)



米海軍が隻数では中国にかなわないため、発想を転換し各艦船に攻撃力をもたせる新思考を開発中とわかりました。その要は新型対艦(対地?)ミサイルのようです。この積極姿勢には今後も注目していきましょう。それにしても米空軍の元気の無さとは対照的ですね。

‘If It Floats, It Fights': Navy Seeks ‘Distributed Lethality’

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 14, 2015 at 3:33 PM


Aegis cruisers and destroyers. イージス巡洋艦と駆逐艦戦隊
CRYSTAL CITY: 「海に浮かぶ艦すべてに戦闘能力を搭載するべき」とピーター・ファンタ少将 Rear Admiral Peter Fanta は考える。「分散武装‘distributed lethality'で巡洋艦、駆逐艦、揚陸艦、LCS(沿海戦闘艦)等、全艦がとげを有するべきだ」
Rear Adm. Peter Fanta ピーター・ファンタ少将
  1. 「可能な装備はすべて導入する」とファンタ少将(水上戦部長)は言う。「威力」とは武装の強化であり、「分散」で各艦に武装を装備し、それぞれ単艦で戦いが可能になれば敵は広い大洋の中で同時対応を迫られ一度に処理しきれなくなる。
  2. この海軍の構想は予算の制約を受けつつも革新的発想になる可能性がある。これまで20年近くも防御任務についてきた海軍艦艇が単艦で威力を発揮できるようになる。この積極姿勢にリスクもあるのは事実で、中国のように武装を整備している敵対国がLCSのように中途半端な装備をした小型艦に立ち向かってきたらどうなるか、という疑問もある。
  3. 図上演習では「強力な武装を有する敵海軍によりLCS数隻の喪失可能性があると判明した。敵はあらゆる方向から出現し、対艦兵器を完備している」
  4. いいかえれば数の威力で単艦の戦闘能力は無効になるということか。
  5. なぜ米海軍は積極姿勢をとるのか。その答えはペンタゴン文民トップおよび議会筋が中国とロシアの脅威をこれまでになく感じているためだ。そこで米海軍もこれを意識し、クリスマス直前に海軍作戦部長が論議となっていた沿海戦闘艦の武装強化案を発表した。その手段は未選定の長距離対艦ミサイルによる武装だ。今週は水上艦協会の年次総会でファンタ少将他の提督からこの発想を艦隊全体に広げたい旨の発言が出ている。大統領が2016年度予算要求を来月に発表するまで詳細は見えないが、海軍は低コストで武装・センサー強化を図り、現行の各艦艇の攻撃能力強化を目指す。イージス駆逐艦、揚力強襲艦はもちろん、理論上は補給艦もその対象だ。
Vice Adm. Thomas Rowden トーマス・ロウデン中将

  1. トム・ロウデン中将Vice Adm. Tom Rowden(水上艦部隊司令官)は「補給艦に攻撃能力を付与していけない理由はない。攻撃能力にあふれた水上艦部隊の創設の構想だ」とする。米海軍が投入可能なのは空母一隻ないし二隻が関の山なので、ここにセンサーをあわせ、高性能兵器を投入するのが敵の想定だったが、駆逐艦、LCSその他すべてに対艦兵器を搭載するので敵も分散せざるを得なくなる。
  2. また新構想では現状の予算で最良の結果を得ようとする。海軍は新型長距離対艦ミサイルを開発しハープーン全廃をめざすが、その前に頼りになるのは現有のハードウェアの改良や既存ハードウェアの調達だ。その例としてLCSコロナドがノルウェーのコングスバーグ Kongsberg  ミサイルの試射に成功している。
The LCS Coronado test-fires a Norwegian Kongsberg missile. LCSコロナドがコングスバーグミサイルの試射に成功した。
  1. 「予算は減る一方だ。分散武装なら予算内で海に浮かぶ艦全部に威力を与えられる」(ファンタ少将)
  2. 「建造艦数が減る中で、逆に各艦を完璧にすべきとの機運が高まっている」とファンタ少将は付け加え、行き着くとスター・ウォーズのデス・スターのような高性能艦をごく少数保有することになるとする。
  3. 海軍がそこそこの性能の艦を大量に調達すれば、調達ペースが加速して同時に新しい状況にも対応出来る武装の改装も早まるはずだ。「使い物になりそうな装備が今手に入れば、買ってとりつければいい」と少将は言う。
  4. 「すべての艦に最高性能のセンサーや長距離高性能ミサイルが搭載されているわけではない」とフィリップ・デイビッドソン大将 Adm. Philip Davidson(艦隊総司令部)は言う。兵力分散とともに「コストも分散しなければ。そうなるとハイエンド、ローエンド双方の艦艇を組み合わせることになる」とし、華やかなDDG-1000新型駆逐艦から見栄えの悪いLCSの双方を指している。
The two Littoral Combat Ship variants, LCS-1 Freedom (far) and LCS-2 Independence (near).沿海戦闘艦 LCS-1フリーダム(上)とLCS-2インデペンデンス
  1. 沿海戦闘艦に長距離攻撃手段を搭載する海軍の案は軽量艦に重量級の威力を与えるもので、攻撃が最良の防御との古くからの考えを実現するもの、あるいはファンタ少将がいうように「悪者をまず撃つというのが水上戦士官ならだれでも賛同できる選択肢」だという。
  2. ただしこの新構想は海軍の組織内にカルチャーショックや恐れを招くだろう。「ずっと海のどこにでも好きな場所に移動して兵力投射できたので防御のことは心配しなくてもよあかった」とデイビッドソンは語り、「接近阻止領域拒否」は黒海のような場所では成立することはないと見ていたという。「威力とは有効射程や火薬重量のことではない。部隊内文化や考え方にも言及しないといけない」
  3. 「たしかにミサイルやセンサーだけ論じてはいけない」とロウデンも発言。「遠隔地に送り込まれても怯まない新世代の乗組員をどう確保すべきか論じている。」とロウデンも同じ意見だ。
  4. 米海軍にとって小型艦による単独行動は創設期からの伝統だ。ジョン・ポール・ジョーンズのボノム・リシャールによる独立革命時の戦功や第二次英米戦争(1812年)でのフリゲート艦コンスティテューションの活躍がある。ただし第二次大戦後は水上艦に空母の護衛をさせることを優先し、単独長距離行動は原子力潜水艦の独壇場となった。ソ連崩壊と予算縮小で海軍はコストを意識して艦隊戦能力を段階的に縮小している。駆逐艦に対地攻撃をトマホークで実施させる、弾道ミサイル防衛に当たらせるなど新しい任務を想定した。全面戦争時には水上艦艇は空母と一緒に行動し、艦載機が防御するという前提だった。
  5. これに対して新構想では「対潜作戦水上アクショングループ」を3隻、4隻で構成し、空母の行動範囲の先に投入する。小部隊は海軍の新型長距離戦闘通信ネットワークで結び、敵の情報を海軍統合火器管制対空システム Naval Integrated Fire Control – Counter-Air (NIFC-CA)で共有する。しかし敵が電子戦やサイバー攻撃のジャミング、不正侵入能力を向上させていることに鑑み、仮に接続が不通となっても部隊は作戦を継続できるように心理的にも戦術的にも備えておく必要があるとロウデンも認める。
  6. そこで技術が関心の的となるが、「二又対応をとる」とロウデンは記者に発表しており、トップガンに似た「海軍水上戦開発センター」“Naval Surface Warfighting Development Center” (NSWDC) を新設し新戦術を練るほか、教官を各艦に派遣し、考え方を叩き込む方針だ。中将は「一世代かけて実施する業務規模」と認めている。
  7. この動きに賛同する国会議員もいる。「防衛第一の姿勢から水上艦艇が攻撃中心思考へ切り替われば歓迎」と海軍関連の業務につくある議員のスタッフは語る。
  8. 上記スタッフは「誘導ミサイルが発達する中で水上艦艇に未来がないという向きが多いが、ロウデン、ファンタ両提督はそんなことはないと主張している。多分に賛成だ。水上艦で新しい戦闘構想を作れば、今後の海上紛争を当方に有利な方向へ誘導できる。中国やイランにつくらせるのではなく、我が国が独自にルールを作るべきだ。」■


2015年1月22日木曜日

★ノースロップが第六世代戦闘機開発を開始した模様



民間企業が活力あるところを見せるのは嬉しいですね。ただし、これで失敗すればノースロップ・グラマン(特に海軍向けにグラマン)は戦闘機メーカーとして消滅するかも、というのが業界の見方のようです。F-35で懲りたので次回はJointではなく独自に機体開発をめざす、というのはF-111の失敗の後と同じ展開ですね。「第五世代」機としてのF-22, F-35両機の存在が微妙になりそうです。

Northrop Developing 6th Gen Fighter Plans

By Aaron Mehta6:46 p.m. EST January 21, 2015

LOS ANGELES — ノースロップ・グラマンが「第六世代」戦闘機開発の社内チームを2つ立ち上げた。米海軍と空軍向けを想定し、両軍から情報要求がでていない中で先手を打つ。
  1. ノースロップの航空宇宙部門社長トム・ヴァイス Tom Vice はこの大胆な動きが見返りを生むと期待。「ノースロップ・グラマンは次世代戦闘機競合に参入します」と宣言し、すでに開発主査のもと2チームが社内にできていると強調。
  2. 空軍、海軍共に次世代制空戦闘機あるいは「第六世代」戦闘機といわれる機体を初期企画中。両軍はF-35では合同開発したが、次回は別個仕様で機体を開発する。
  3. 海軍はF/A-XX、空軍はF-Xと呼称し、昨年9月に空軍航空戦闘軍団のトム・コグリトア大佐 Col. Tom Coglitore がDefense Newsに対して技術開発開始となるマイルストンAは2018年度早々を予定と発言していた。
  4. ヴァイス社長はノースロップの目指す機体は超音速、無尾翼機になる可能性が高いとし、従来の機体と大幅に異なる外観になるという。
  5. 「超音速機で無尾翼構成の機体はまだ存在していないのは実現が難しいからです。でも高性能コンピューターの力を借り、新素材を用いればどうでしょうか。そのため現在進行中の研究が重要で、次世代戦闘機の生産を20年以内に実現します。高度技術が必要となりますね。」
  6. 同社長は有人操縦をオプションとするほうが同社には難易度が低いと示唆した。
  7. ヴァイス社長は自信たっぷりだが、ノースロップが攻撃機材メーカーとして生き残れるか疑問視する外部専門家もいる。特に同社が空軍向け長距離打撃爆撃機受注に失敗した場合を懸念している。
  8. 新型爆撃機はノースロップあるいは競合相手のロッキード・マーティン/ボーイング共同事業のいずれかに発注されるが、その時期は今年の春または初夏と予想される。■


2015年1月21日水曜日

★エアシーバトルはJAM-GCへ名称変更



グローバルコモンズという言葉は日本語にまだなっていませんが、地球規模の領域、特に資源が存在する場所という意味らしいです。今回提示されたコンセプトの仕切り直しが今後どう展開していくのか注目です。

Pentagon Drops Air Sea Battle Name, Concept Lives On

By: Sam LaGrone

Published: January 20, 2015 2:21 PM • Updated: January 20, 2015 3:41 PM


ペンタゴンはエアシーバトルの名称を変更する。同構想を取りまとめていたエアシーバトルオフィス(ASBO)は統合参謀本部に吸収する。USNI Newsが入手した1月8日付けの省内メモから判明した。

  1. 新コンセプトはグローバルコモンズへのアクセスおよび運用共用コンセプトJoint Concept for Access and Maneuver in the Global Commons (JAM-GC 発音はジャムジーシー)の名称となり、ASBOが手がけていた作業を引き継ぎ、今年末までにASBコンセプトを改変する、と国防総省関係者がUSNI Newsに伝えている。
  2. 統合参謀本部のJ-7局がJAM-GCの「統括及び支援」を行うと、統合参謀本部長の空軍中将デイビッド・ゴールド・ファイン Lt. Gen. David Gold Fein の署名付きメモにある。
  3. 「名前を変えてコンセプトの全体像が見えるようにする」と国防総省報道官はUSNI News取材に答えている。米陸上部隊を広範な任務につかせることも含むという。「エアシーバトルは陸を言及していなかった。陸上部隊をどう活用して米軍のアクセスを確保するのか不明だった」。
  4. エアシーバトルは米軍が戦闘が発生しそうな地域に接近するのを拒否する能力が高まってきたことへ対応すべく考えだされたと国防関係者は認める。
  5. 接近阻止領域拒否(A2/AD)の脅威が現実になったことへの対応でもあるが、米軍は当時はイラク・アフガニスタンの地上戦に釘付けになっていた。
  6. 目指すところは米軍が「領域に移動し、敵がジャマーを使ったり、機雷を使ったり、潜水艦で水上艦の脅威としようとしても、十分対応できるようにすること」とジェイムズ・ファゴ海軍中将Rear Adm. James Foggo(当時)(作戦立案戦略部門長)が2013年当時にUSNI Newsに語っていた。
  7. 「コンセプトのいいところは問題の本質に焦点を合わせたことで、各軍にとって非常に有益なレンズとなりました」とASBOに詳しい国防関係者が2013年にUSNI Newsに語っている。「エアシーバトルは戦争のやり方を変える。多様な手段を有する敵に対応できる作戦を組み立てる」
  8. コンセプトはペンタゴンが考えぬいたものだったが、海外で政治問題化している。
  9. ASBを中国人民解放軍への挑発だと批判し、中国を敵視しているという評論家があらわれた。国防総省はこの見解を否定。
  10. 国内でも、コンセプトづくりに関与した空軍と海軍がついた名称に、陸軍は不満でA2/AD対応で疎外感を訴えていた。■


2015年1月20日火曜日

★主張: F-35をめぐる議論は新局面に入った



F-35が歴史に残る可能性はプロジェクトの失敗例としてだろうと見ていますが、一方で莫大な費用をかけてそれなりに当初の性能を実現しつつあるのも事実です。しかし、実用化してもステルスの優位性が維持できない、前提としてた運用コンセプトが使えない、など時代の変化に対してあまりにも遅すぎる登場になりそうですね。各国も同機には及び腰になっているのが確定発注数の少なさでわかりますね。F-35の失敗からもう一度空軍力のコンセプトを考えなおし、無人機にせよ有人機にせよ、もっとましな手段が近い将来に登場することを願わずにいられません。

Opinion: Joint Strike Fighter Debate Enters New Phase

Cost and counter-stealth will be key issues
Jan 15, 2015Bill Sweetman | Aviation Week & Space Technology

「防衛ビジネスの動向を追っていないと、F-35がトラブルを起こしていると思い込んでも仕方ない」とロッキード・マーティン社のコンサルタントが5年前に記した数週間後に当時の開発室長が更迭されている。後任者は公開されていた工程表が現実と3年から4年も乖離しているのを発見した。
  1. 現在はF-35のトラブルの大部分が解決されていると考えても無理は無い。2013年2月に仕切り直された日程表は2年たっても有効なままで、二年越しで計画変更がないのは同機開発で初の出来事。海兵隊は初期作戦能力獲得を今年中に実現しそうだ。昨年発生したエンジントラブルの原因究明も進行中と伝えられる。
  2. F-35が中核的性能パラメーターkey performance parameter (KPP) の要求水準を満たしているようにみえるが、それだけで成功とはいえない。開発コストと日程、調達、運用費用はKPPに入っていない。今のところKPPの各数値が安定しているが(安定しないと大変なことになる)そもそもKPPは開発の目標そのものではない。
  3. 運用側にとっては開発リスクが現実のものとなっている。オランダは当初の85機調達を37機にとどめる。韓国はF-15を60機導入予定だったが、その予算でF-35Aを40機調達する。米空軍は死活的なF-16改修を凍結し、即応体制に問題が発生している。F-35は機体診断システム、補給システムが不十分なため熟練整備員多数を必要とする。
  4. 今年はコスト面が重要視される。各国から受注は700機を超え、計画生産数を2020年以前に達成するには海外受注が頼りだが、確定受注は5%未満。そこで発注意向を確定させることが緊急課題だ。デンマークは今年中に決定の見込みで、英国の138機調達案が実現するのか、いつ実現するのかが大きく注目される。
  5. 各国は予算と日程をにらみつつブロック4A/4Bアップグレードの内容を知りたがっている。ブロック4A開発は来年に始まり、4Bは2024年に利用可能となるが、熟成化は2026年だろう。計画では核運用能力、ノルウェー製・トルコ製巡航ミサイル運用能力、英国向けにはブリムストーン、メテオ各ミサイル運用能力、米海軍向けにはAIM-9Xブロック3空対空ミサイル運用能力、海兵隊向けには「第五から第四」向け通信及び近接航空支援システムが含まれる。ただ、全て完全になる保証はなく、4A/4Bでも運用テストから修正が発生するだろう。利用者側は一定の妥協を覚悟したほうがいい。
  6. 2番目のリスクは運用面だ。ステルス対抗技術は机上の理論から現実のハードウェアに進化している。2013年にはロシアの55Zh6MEレーダー装備が登場しVHF方式アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)でネットワーク化し、高周波数レーダーを組み合わせたシステムとなった。赤外線による捜索救難装備でステルス機を探知したとの報告があり、中国からも55Zh6MEを模倣した装備が出てきた。ステルスが時代遅れとは言えなくてもF-35の運用上の優位性は消えつつあるのだろうか。
  7. 2015年は同様の傾向がもっとあらわれる。中国が建造中の新型055型駆逐艦は低帯域AESAを搭載する。ロシアのP-18レーダーのデジタル版が流通し、ステルス対抗は安価になってきた。
  8. 海兵隊は短距離離陸垂直着陸型F-35Bの活用方法を工夫して運用リスクを軽減しようとする。最新の運用コンセプトでは艦艇や陸上基地は敵の移動型ミサイルの有効範囲の外に配置し、燃料再補給・武装再搭載地点を目標の付近に置く。生き残りができるかはこの前線基地を敵が狙うより前に移動できるかにかかってくる。
  9. 海兵隊構想ではF-35が卓越した戦術戦闘機であることが前提だ。だがこれは戦略的なリスクにつながる。第三相殺戦略ではひとつ論文がでており、戦闘半径が600マイルしかない戦術機への投資を中止し、長距離爆撃機やUAVへ予算を振り向けるよう求めている。長距離打撃爆撃機開発が勢いを増す中で、この議論は重要度を上げてくるだろう。
  10. これまでF-35の開発リスクのため多大な費用をかけてきた。これからは運用リスクが中心に変わろうという中、戦略上のリスクが水平線上にあらわれてきたのだ。■


2015年1月19日月曜日

★トマホーク巡航ミサイルの改良を自社開発で進めるレイセオン



海上自衛隊にもトマホークを装備するよう求める声があありますが、高度のISR運用があってはじめて目標の特定、評価ができることを忘れてはいけません。記事にある移動目標を攻撃できるトマホークならさらに一歩先を行くものですね。しかし、意外にトマホークってお安いんですね。

Raytheon Working on Tomahawk With Active Seeker

By Christopher P. Cavas7:23 p.m. EST January 13, 2015
Tomahawk missile(Photo: MC2 Carlos M. Vazquez II/Navy)
WASHINGTON — 1991年以降、トマホーク巡航ミサイル2,000発以上が実戦で発射されたが、標的はすべて固定目標だった。
  1. 今後数年間でこれが激変する可能性が出てきた。レイセオンが水上戦協会Surface Navy Association の年次総会で自社開発で移動目標を追跡できる能力を開発中と発表した。「当社はマルチモードで作動するシーカーを、パッシブ、アクティブ双方で開発すべく巨額を投じています」とクリスチャン・スプリンクルChristian Sprinkle(レイセオン社対空戦闘システム主任開発責任者)が発言。
  2. 既存のトマホークにも耐用期間途中の重整備時に赤外線シーカーの搭載が可能、とスプリンクルが説明している。トマホークの設計寿命15年だが重整備で再認証を受ければ計30年間の製品寿命となる。
  3. この重整備時は性能追加をする絶好の機会。通信機能の向上、多弾頭、多モードセンサー装置の搭載を検討中、とスプリンクルは言う。
  4. 現行のブロックIV戦術用途トマホークが投入開始されたのは2004年で、2019年から再認証手続きに入る。レイセオンは海軍が予算を新型シーカーの研究開発に計上するよう働きかけているが、現時点では未採択。スプリンクルは予算規模を明示しなかったが、2018年にかけて予算が必要だという。
  5. 移動目標にも対応可能にする費用はミサイル一発につき25万ドル程度だという。なお、現行トマホークの単価は110万ドルである。
  6. レイセオンはブロックIVトマホーク合計3,250発を米海軍及び英海軍に納入している。年平均100発が実射されているという。敵の指揮命令機能を攻撃する手段として選択されている。■

2015年1月17日土曜日

UPIがツイッター上で米空母が中国の攻撃を受けたと報道(ただしハッカーによる虚偽報道と判明)


これは恐ろしいことです。何者かが(大体想像はつきますが)単なるイタズラをこえて情報を操作しようとしただけでなく、世界を混乱させ挙句は本当に戦争を巻き起こす意図があったためです。ソーシャルメディアの成り立ちそのものが思わぬ効果を巻き起こしかねません。それにしても大通信者のアカウントを易易と乗っ取るとはすごい、と認めざるを得ません。一層のセキュリティ強化が必要ですね。

Navy: China has not attacked U.S. aircraft carrier

By Jeff Schogol, Staff Writer3:22 p.m. EST January 16, 2015

UPIがツイッター上で空母ジョージ・ワシントンが攻撃を受けており、第三次世界大戦が始まったと報じたが、米海軍はこの内容を否定した。
同艦は停泊中であり、南シナ海に入っていない、と海軍がMilitary Timesに返答している。
UPIからは16日金曜日に同社ツイッターのアカウントが不正侵入されたと午後に入って発表があった。「ツイッター上で6件の虚偽のヘッドラインがおよそ午後1時20分から10分間の間に掲載され、連邦準備理事会のほか、USSジョージ・ワシントンが攻撃を受けているとの内容もあった」と発表。
UPIが不正侵入に気づいたのは「緊急速報」の表示が出た際だったという。社内の技術陣が同社ツイッターアカウントの回復に成功している。
問題の虚偽報道記事は同日午後2時ごろまでに削除されている。
(下 ツイッター上に現れた偽報道。スクリーンショットで撮影。削除済みなので見られません。
635570122184650488-Screen-shot-2015-01-16-at-1.36.36-PM
(Photo: screen shot)
上の拡大 統合参謀本部からUSSジョージ・ワシントンが中国の攻撃で損傷を受けたとしている。中国は対艦ミサイルを発射とも。
The Navy says this Tweet is wrong.
The Navy says this Tweet is wrong.(Photo: Screenshot.)

2015年1月16日金曜日

☆深刻な米空軍の人員不足 無人機だけでなく、F-35でも さらに....



予算もありますが米空軍の構造そのものが大変な危機にあることがわかります。戦闘機パイロットが幅を効かせてきた風土がもはや変更せざるを得ないところに来ているのに変革できなかったというとでしょうか。そういえば、最近は新技術や戦術構想などさっぱり米空軍から出てくるニュースが減っていますね。翻って我が航空自衛隊はどうなのでしょうか。将来の姿をUSAFが暗示している気がするのですがどうでしょうか。


Drones Need Humans, Badly

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on January 15, 2015 at 5:25 PM

MQ-9 Reaper drone.MQ-9 Reaper drone.
WASHINGTON: 無人機といえども飛行には人員が必要だ。空軍長官デボラ・リー・ジェイムズから過労気味な無人機飛行隊へのてこ入れ策が発表された。その記者会見の席上で空軍参謀総長もF-35整備要員の不足も認め、今回の対応策は「苦痛がともなう」と発言。一見、技術最先端の運用部隊でも人員不足という古くからの問題に悩んでいると露呈した格好だ。
  1. MQ-1プレデター、派生型MQ-9リーパーは無人機航空戦の象徴的存在だが、その裏でどれだけの人員が必要かは意外に知られていない。点検補修、情報解析、センサー操作に加え、遠隔操縦するパイロットが各機で常時必要だ。このため空軍では無人機を「遠隔操縦機」remotely piloted aircraft (RPA)と呼ぶ事が多い。なお、高性能機のグローバルホークやトライトンでは必要人員は減っている。人員すべてに高いストレスがかかるが、特にパイロットの負担が重い。
Predator drone operators.プレデターの操作員.
  1. 「昨年6月にクリーチ空軍基地(ネヴァダ州)を訪問し、遠隔操縦ISRミッションを間近に見ることができました」とジェイムス長官がペンタゴンで述べている。中東での無人機需要は予想に反し落ち込んでいない。対イスラム国戦が拡大しているためだ。そのため「この部隊は密度が高まる一方作戦のため相当のストレスを受けている。週6日、一日13から14時間勤務が普通」 平均でRPAパイロットは有人機パイロットの4倍の時間を操縦するという。
  2. 「RPA機材数の保持もあるが、目下の危機はパイロットだ」とウェルシュ参謀総長が補足した。養成には複雑かつ長時間の訓練が必要で、かつ作戦で必要とされることがふえているため酷使されがちな部隊から教官パイロットが引き抜かれる、と同大将は説明。しかも教官といえども実戦に従事することが多く、新人パイロットの養成がままならない。この悪循環がパイロット不足を生んでいる。その結果、空軍の試算では一年間でRPAパイロット300名必要なところ実際には180名しか誕生していない、しかも240名が第一線を退いている。
  3. さらに危機的状況に近づきつつあるのは雇用契約だ。「経験豊かな操縦要員の多くが現役期間の末期に達しようとしている。つまり、各自に選択の余地が生まれるということだ」とジェイムズ長官は指摘するが、多くは退役を選ぶだろう。
Air Force Secretary Deborah Lee Jamesデボラ・ジェイムズ・リー空軍長官
  1. 「そこで迅速に事態を軽減する案を作成した」と長官は発表。長期的解決策には議会の支援も必要となるという。
  2. まずは予算増額だ。ジェイムズ長官は自らの裁量でRPAパイロットの月額手当をこれまでの650ドルから1,500ドルにする。それでも総額はたいしたものではないが、関係者の家計には年1万ドルの増額となる。さらに長期的には追加手当が必要だとする。現役に残るパイロット向け「航空勤務継続手当」(最高年2万5千ドル)を現在は有人機パイロット限定だがRPAにも適用したいとする。
  3. 次は人員増だ。空軍は各州軍航空部隊や空軍予備役に呼びかけ、RPA部隊へ志願を求める。RPAパイロット有資格者で別任務につく予定のものも「志願」できるようにする。ウェルシュ大将によれば「隊に残るよう依頼中のものが33名」とのことだが、四つ星将官がここまで細かく気を配ることから、その33名が受けている圧力の大きさが想像できる。また有資格者にRPAパイロット復帰を求めている。
  4. 長期的には空軍は他軍からの有資格者を引き入れたいとする。規模縮小される陸軍などを想定。実施すれば100年近くの伝統を破り、無人機限定とはいえ下士官兵がパイロットになる。(空軍と海軍では飛行操縦は士官限定。陸軍ではヘリコプターで准尉に、無人機を下士官兵に操縦させている。) ウェルシュ大将も「下士官兵に道を開ける」と認め、「長官になるべく早い時期に提言を申し入れる」とする。
  5. 空軍の下士官兵ほぼ全員が地上勤務で保守点検業務などに従事しているが、この保守点検でF-35が問題になっている。
  6. 空軍の原案ではA-10ウォートホッグを全廃し、余剰予算と人員をF-35に振り向けるはずだった。だが、議会がA-10対地攻撃機に愛着を残し原案を拒否。そのため空軍はA-10用と新型F-35の両方で整備要員が必要となった。開発室長クリス・ボグデン中将も人員不足から空軍向けF-35Aの初期作戦能力獲得が遅れる可能性を警告していた。
Gen. Mark Welshマーク・ウェルシュ大将
  1. 「十分な数の整備員を確保する」とウェルシュ大将は発言。F-35AのIOC日程は2016年8月から12月の間だと念を押している。遅れることは受け入れがたいが、「可能な策をすべて実施するが苦痛をともなうものとなろう」
  2. その「苦痛」がどんなものかウェルシュ大将は言明していないが、一部は議会の承認が必要となるようだ。「提案が受け入れられないとIOC実現が危うくなる」とし、議会とはすでに密接に競技していることを伺わせる。
  3. ただし、空軍の人員不足はF-35やプレデターだけではない、とジェイムズ長官は明らかにしており、1,100名を他分野から転換したとするが、これまで軽視されてきた核運用部隊でも人員不足がある。「全体として各部門で人員は不足している」と長官は認め、「規模縮小はもう限界」と言う。■


平成27年度防衛予算の中身を伝えるDefense News




Japan Defense Budget Rises 0.8%

By Paul Kallender-Umezu8:36 p.m. EST January 14, 2015
TOKYO — 日本の平成27年度防衛予算は0.8%増で4.82兆円(411億ドル)になると判明した。支出規模は平成2年実績水準に復帰する。
昨夏に要求の2.4%増からは相当下がったものの、増額は三年連続となり、保守的な阿部政権が積極的な防衛姿勢を示していることを反映している。
昨年7月に安倍政権は憲法解釈を変更し、限定的ながら集団的正当防衛行使に道を開いている。これに伴う法改正が本年の国会審議の中心課題だ。
また1997年以来初めてとなる防衛協力のガイドラインが改訂に日本と米国が取り組んでおり、より緊密な共同作戦ができるようにする。
防衛省は大型調達案件全部で予算を獲得し、航空自衛隊の装備更新、沖縄以南の南西諸島防衛強化、海上自衛隊の整備を進め、中国人民解放軍海軍へ抑止効果を強化する。
今回の予算規模4.8兆円は防衛省の要求にほぼ沿ったもので、さらに追加予算として次期政府専用機導入や米軍再編関連予算があり、総額4.9兆円となる。
大型案件は川崎重工のP-1哨戒機20機を調達(3,504億円)、新型あたご級イージス駆逐艦(1,680億円)、F-35A共用打撃戦闘機6機の導入(1,032億円)だ。

ただし予算環境が厳しい中で防衛省は主要装備は小分けして調達するため、P-1は2018年から2021年にかけて五分割して導入される。また、イージス艦8隻体制は平成32年度以降に実現する。
「増額規模はわずかとはいえ、領土防衛能力が向上し、米国の同盟国としての実力が涵養される。とくに、P-1対潜哨戒機、イージス艦も有益だ」と見るのはグラント・ニューシャムGrant Newsham(日本戦略研究フォーラム上級研究フェローa senior research fellow at the Japan Forum for Strategic Studies),だ。
一方で防衛省はF-15、F-2の性能向上と潜水艦22隻体制への増強を進める。そうりゅう級潜水艦の推進手段を変え高性能ステルス性をさらに高める。
また今回の予算で防衛省はISR機能の充実に踏切るとともに南西諸島の防御を強化する。V-22オスプレイ5機の導入に予算がつき、ノースロップ・グラマンRQ-4グローバルホーク導入3機調達のうち初号機を導入する。またAA-7強襲水陸両用車両30台を調達する。
南西諸島駐留部隊は仮称で水陸両用強襲遠征連隊Amphibious Rapid Deployment Brigade (ARDB)と呼ばれ、平成30年までに3千名規模になるとコーリー・ウォレス Corey Wallace,(ニュージーランド、オークランド大 University of Aucklandで日本安全保障論を研究)は指摘する。700名がすでに初期訓練を受けており、今後の中核となり、今年中に佐世保で隊が発足する。オスプレイも九州に配属されるはずとウォーレスは指摘する。
「強襲能力の必要性が予算でも認められたことを評価したい。またオスプレイで南方地域での活動範囲を拡大できる」「AAV導入も評価に値する。陸上自衛隊と海上自衛隊の連携が必要となる。大して高価とも言えないハードウェアが戦略的な効果を生むのは珍しい。これまで各軍が独自に動いていた傾向一変できるからだ」(ニューシャム)
南方重視方針で陸上自衛隊は小規模ながら第303沿岸監視隊を与那国島に駐とんさせるが、同島は台湾から70マイルしか離れていない。
「日本は海上自衛隊を充実させ中国が東シナ海で制海権を握るのを阻止しようとしており、南方島しょ地域の防衛にも本腰を入れはじめた」と見るのはクリストファー・ヒューズChristopher Hughes,(英ウォーウィック大University of Warwick教授、国際政治・日本研究論)だ。
Email: pkallender@defensenews.com.

2015年1月14日水曜日

★米海軍は次期COD機材にオスプレイを採用



オスプレイの使用範囲がどんどん広がっていくという話題です。未だにオスプレイに反対の姿勢を示す人はどんな気持ちなのでしょうか。技術の進歩についていけないのか、特定の思い入れがあるのか、情報を操作されているのか。ともあれ、早晩厚木基地からもオスプレイが空母に向けて飛ぶ日がやってくるし、自衛隊も堂々と飛行させる日が近づいてくるわけですが、破綻した論理(感情?)で声を上げていくつもりなのでしょうか。まとこに非生産的ですね。それにしても海軍といえば、グラマンだったのがますます過去の話になっていきますね。

Navy Decides to Buy V-22 Ospreys for Carrier Delivery

By RICHARD WHITTLEon January 13, 2015 at 11:13 AM
http://breakingdefense.com/2015/01/navy-decides-to-buy-v-22-ospreys-for-carrier-delivery/feed/
米海軍はV-22オスプレイをC-2Aグレイハウンド(ターボプロップ輸送機)の後継機種に選定し、空母艦上空輸carrier on board delivery (COD) に投入する。Breaking Defenseが入手した1月5日付海軍長官レイ・メイバス、作戦部長ジョナサン・グリナート大将、海兵隊総司令官ジョセフ・ダンフォード大将間の覚書でV-22を2018年から2020年の間に毎年4機調達することになっている。
  1. この覚書通りなら海軍航空システム本部のV-22業務室、海兵隊その他オスプレイ支持派に大きな勝利となる。これまでC-2Aが老朽化する中でV-22への切り替えを主張してきたからだ。
  2. 海軍はV-22機材をHV-22仕様に改修し、COD任務に投入する、と覚書は記載。「以後の文書で作戦概念と今後の予定を詳説するものとする。海軍のHV-22導入にあたっては海兵隊の支援を前提とし、乗員訓練のほか、海兵隊のMV-22機材・乗員でCOD任務を支持させる」とある。
  3. 海軍・海兵隊間の合意事項は次年度の国防予算に組み込まれた上で議会が承認してはじめて成立する。また第三次の複数年度調達契約が2018年度から始まり、この動向にも左右される。
  4. 双発ターボプロップのC-2Aは貨物、郵便物、人員を運び、空母と陸上機地の間を往復する。これを海軍はCODと呼ぶ。グレイハウンドの原型機は1964年に初飛行。一方、オスプレイはベル・ヘリコプター・テキストロンボーイングが対等折半した共同事業で海兵隊には2007年から、空軍には2009年から就役している。翼端のローターを傾けて垂直離着陸が可能で、水平飛行にはローターを前方に向けてターボプロップ機並みの高速長距離飛行が可能な点でヘリコプターより優れている。C-2Aのメーカー、ノースロップ・グラマンからはE-2D高性能版ホークアイ戦術早期警戒機にならって近代化の提案が出ていた。.
  5. 今回の覚書でV-22の歴史にも1ページが加わる。開発は1980年台にさかのぼり、当時の海軍長官ジョン・レーマンの肝いりで始まっている。海軍は当初380機を調達し、捜索救難のほか対潜任務に投入する構想だったがレーマン退任で48機に削減した。海兵隊は360機、空軍は特殊作戦用に50機の調達を進めている。現行の複数年度調達契約は2017年まででオスプレイの「フライアウェイ」価格は68百万ドルだ。
  6. ごく最近まで海軍上層部は48機予定の調達にも関心を示してこなかったが、2011年に海兵隊がMV-22の艦上運用認証を得たことで六日間の「海軍用多用途評価」を昨年フロリダ沖で実施。V-22で人員貨物をUSSハリー・S・トルーマン(CVN-75)と陸上の間で往復輸送してみたところ、「V-22はCOD任務の実施に効果的かつ、柔軟対応が可能で安全だと判明。特に機体改修なしに、連続運用にも悪い効果は発生しないとわかった」
  7. 海軍と海兵隊揚陸即応部隊(海兵隊遠征部隊を輸送)ではオスプレイを投入すれば現行のCH-46シーキング運用よりはるかに長距離でも補給任務の実施が可能だと理解している。
  8. 上記1月5日付け覚書によればHV-22の最初の10機は海兵隊仕様のMV-22となるはずの機体を転用する。その後海軍と海兵隊で機材を相互交換する手順だという。■


2015年1月13日火曜日

☆ 今年の軍事航空はこうなる 注目すべき機体・動向をご紹介



今年注目すべきトピックスを以下紹介しています。今年だけでは完結しない話題もあるようですが。F-35が本当に実戦化になるのかが一番の注目ですね。大穴として次世代長距離打撃爆撃機の構想が水面下で進んでいることでしょうか。アメリカでは予算をめぐりコンセンサスが出来ず、ロシア経済が後退し、中国も怪しい中で軍事航空も減速が避けられない感じです。日本の防衛予算はその意味では難易度が低いようですね。

J-10B, F-35 Nearing In-Service Debuts

With a handful of fighters nearing operations, F-35 is still the one to beat
Jan 6, 2015 Amy Butler | Aviation Week & Space Technology


ロッキード・マーティンF-35は2015年も戦闘機分野の中心だが、今年は大きな転換点を迎える予定だ。中国、ロシアでもそれぞれ新型機の実戦化が近づいており、米国だけに依存したくない諸国には選択肢となるだろう。

【F-35B】 一番の注目は米海兵隊のF-35Bで初期作戦能力(IOC)獲得がいつになるかで、2001年から始まった開発もやっと実戦部隊が編成されるところまできた。通常型のF-35Aを選択する向きが多い中でF-35Bが先導する形になり、有償海外軍事援助(FMS)の対象にもなろう。
 FMSの利用国はF-35がスムーズに実戦化するか見ているはずで、とくに信頼性、運用上の問題の有無、予備部品含むロジスティクスに注目するだろう。その成果いかんでF-35全体が評価されそうだ。なお、B型はすでに英国が導入を決めており、イタリアも少数機を調達するとみられる。

【F-35A】 米空軍もルーク空軍基地(アリゾナ州)で各国向け訓練体制の整備を進めている。また自国のF-35Aはヒル空軍基地(ユタ州)でIOCを獲得する予定だ。またイスラエル、オーストラリア、英国でそれぞれ配備先の検討に入っている。これまで開発が遅れ、予算も十億ドル単位で超過してきた同機だがようやく世界規模で足場を固める段階に入ったことを意味する。
 しかし当初の協力国のうち二か国がまだ正式に調達の意思を示していない。カナダとデンマークでこのうち後者は来年に機種選定を発表する見込みだ。もし、デンマークがF-35不採用とすれば協力国で初めて開発に投じた費用の弁済を求めることになる。反対に採用すれば各国向けの発注機数が増えることとなり、ロッキード・マーティンや開発室が想定する2019年時点でのF-35Aの単価85百万ドル(エンジン含む)の実現に近づく。


 海外の協力国、購入国は一様にF-35の「国際まとめ買い」“international block buy” を進める格好だ。定率初期生産の第11から13ロット分で購入意思を明示した場合にどこまで価格割引が可能か開発室からは今夏にもロッキード・マーティンに企画提案を求める予定だ。各ロット50機を想定し、合計150機になる。これは各国に早期導入を促して生産を安定化させ、なるべく早期に機体価格を引き下げることをねらうものだ。
 この提案が実現するかがF-35の野心的ともいえる価格引き下げの可否を握る。半分近くの年間営業収入は海外各国が支払うもので、海外顧客の意向次第で価格水準が高止まりとなれば今後にも悪影響が出てくる。
 各国としては今年のロイヤルインターナショナルエアタトゥー(7月)に同機が出展されるのか気になるところだ。昨年は直前に発生したプラット&ホイットニーF135エンジン火災により出展を取り消している。完成済み機体では解決策を実施中で、想定外の摩擦が第三段ローターで発生しないよう改良しているが、生産段階での解決策はまだ完成していない。

【イタリア・日本...】 イタリアは米国以外では初の最終組み立て点検施設を完成させたが、カメリ施設から一号機が今春にもラインアウトする見込みだ。日本も名古屋に類似施設を準備中だ。日本は2015年末に電子装備組み立てシステムを稼働させる。日本向けF-35Aの五号機から名古屋工場からロールオフするのは2016年の予定。さらに航空自衛隊への納入開始は2018年春を想定している。なお、日本には有償海外軍事援助制度が適用されるのはイスラエル、韓国と同様である。
 これとは別に機体、エンジンの重点検個所に選択された各国でも弾みがついてきた。2014年末にペンタゴンからヨーロッパ向け機体の点検修理オーバーホールならびに改修 (MRO&U)はイタリアとトルコで行うと発表があった。オランダとノルウェーはエンジン施設を2021年に立ち上げる。日本とオーストラリアはそれぞれ重点検施設を2018年までに完成し、太平洋の南北で業務を分担する。その中でオーストラリア施設が先行し、日本はそれから5年以内にエンジン施設を稼働させる。
 米海兵隊の予定ではF-35Bのうちまず10機を対象に7月1日にIOC宣言をするとしているが、年末以前には可能性は少ない。この対象機は2B仕様となる。海兵隊の最初の機材は岩国海兵隊飛行基地に2017年に配備される。開発室長クリストファー・ボグデン中将によれば改修はうまくいくのだが、いわゆるミッションデータのロードのためIOC宣言が当初の7月1日より後になりそうだという。
 ミッションデータのファイルはF-35の高性能エイビオニクスが多様な条件で作動するため必要となる。例として地域により異なる脅威の識別に必要だという。
 ICOを正式に宣言すれば、次はF-35BによるUSSワスプ艦上での運用テストが始まる。海軍のF-35Cでは第二期開発テストが9月開始の予定だ。昨年の初回テストは成功との評価を受けた。多岐にわたるテスト項目を合格しただけでなく、予定外の夜間カタパルト発着艦も実施した。再設計の拘束フックは想定通りに作動している。開発テストの最終段階は2016年実施予定。

【F-35C】 この海上公試は米海軍には大きな意味がある。海軍だけが購入を保留扱いにしていたためだ。海軍は260機のF-35を調達する予定とはいえ、いつも海兵隊や空軍に先に調達枠を譲り、自身はボーイングF/A‑18E/Fの追加調達を優先させてきた。テスト結果が出たことで今後は海軍にもF-35調達を進める政治的な圧力がかかるだろう。.

【ボーイング】 ボーイングはF/A-18E/FスーパーホーネットやEA-18Gグラウラーを生産するセントルイス工場は2016年までの操業を確保している。しかし、受注の不確かさもあり、生産ライン維持のための最適解を検討している。その生産量変更の決定は2015年中にボーイング防衛宇宙安全保障部門のクリス・チャドウィック社長Chris Chadwick lが発表するだろう。

【韓国】 同社関係者は口を閉ざすが、スーパーホーネットをもとに大韓航空との提携、同時に韓国航空宇宙工業(KAI)と完全な新型機を作る案がある。ただし、韓国内の複数筋によればこれは検討中で結論は出ていないという。もし韓国が既存機種を原型にする案を採択すればロッキード・マーティンもF-16をもとに提案をし、エアバスグループもタイフーンを原型に参入するだろう。韓国の開発事業は8.5兆ウォン(77億ドル)規模とみられる。KF-Xは現行F-16の後に2025年までに整備する企画だ。インドネシアが開発予算の2割を負担する用意をしている。
 F-35が話題の中心になりがちだが、韓国が自国のF-16改修をどうするかが関心を呼んでいる。韓国は一度決まったペンタゴンのBAEによる実施案を廃案にしている。126機のコックピット、エイビオニクス改修でAESAレーダーも加えるものだ。この結果、ロッキード・マーティンが契約を獲得すると広くみられている。ロッキードはすでに台湾向けに同様の業務を実施している。契約規模は13億ドルとみられ、米空軍がF-16のエイビオニクス改修を2014年に取り消しているので、注目を集めそうだ。

【インド】 もう一つ注目すべきなのがインドで、ダッソー・ラファール126機導入で総額200億ドル規模になる。ダッソーは最初の18機は既存の生産ラインから供給し、ヒンドスタン・エアロノーティカルが最終組み立て施設を建設し残りの108機を生産する。ラファールは中型多用途戦闘機としてロシアのMiG-21およびMiG-27の代替機となる。
【スウェーデン】 JAS39Eグリペンは2015年下期に初飛行する予定。ブラジルにより複座F型開発が進んでおり、100機以上の導入を期待している。

【ロシア】 他方、ロシアのスホイはT-50の実戦デビューに向けて準備中で、PAK-FA事業として単座ステルス双発戦闘機となる。F-35の競争相手となる同機は2016年に第一線配備の予定だが、今年中にもデビューするかもしれない。米国製ハードウェアへの依存に躊躇する諸国には代替機材になるかもしれない。.
 ロシアは最低でも150機を調達することとしており、スホイはインドとも提携して同機を改修し自国仕様にする協力をしている。なお、同機の初飛行は2010年だった。

【中国】 中国のJ-10B多用途戦闘機もまもなく就役しそうだ。成都航空機製の同機を中国は単座J-10Aを256機、複座型は海軍用に24機調達する。.
 パキスタン向けの派生機種はFC-20の呼称がついている。レーダー吸収素材をより多く使い、AESAレーダーも搭載している。.
 中国のステルス機J-20には謎が多いが、ペンタゴン関係者は同機は2018年ごろに実戦化されるとみる。2014年には別の試作型J-20が現れたが、一部設計が変更になっている。
 さらに2014年にはステルス双発のFC-31が輸出用機材として珠海航空ショーで公開されている。こちらにも謎が多いが、もし中国が真剣に輸出を目指すのであれば、2015年中に機体の詳細が漏れ伝わってくるはずだ。

【次期戦略爆撃機】 ボーイング/ロッキード・マーティンかノースロップグラマンかどちらの新型爆撃機案を採択するかは来年早々になりそうだ。すでに提案要求は昨年秋に発出されているが、空軍は依然として同機の調達方針や詳細は極秘扱いとしている。発注規模は100機だが、採択の結果は米国の軍用機生産の地図を決定しかねない。ボーイングのF-15やF/A-18生産ラインは閉鎖に向かっており、ノースロップ・グラマンも完成機関連の業務は少なくなっている。.

【練習機の刷新】 一方でステルス機導入を決めた各国には訓練体系も刷新する動きがある。米空軍では長らく待たれたT-38Cの後継機種を決めるT-X調達事業を2015年に開始する。これをめぐっては厳しい競争が予想されている。350機調達という同事業は当面は最大規模の調達事業になる。
 ボーイングはSaabとの提携を公式に認めたが詳細は明かしていない。ノースロップ・グラマン/BAEチームはホー練習機を押してくるだろう。ジェネラルダイナミクスアレニアはイタリアのM346を、ロッキード・マーティン/韓国航空宇宙工業はT-50を提案している。.
 北アフリカやアジアの各軍はT-Xの選定結果を待って自国向け機材の調達に動く。

【無人機の動向】 無人機でも2015年は進展が期待できそうだ。ペンタゴンは二転三転してきた無人空母運用空中監視攻撃システム(UCLASS)の開発を続行すべきかを決定する必要がある。海軍は同機に長時間情報収集機能を期待し攻撃力は限定的でよいとする。大西洋の反対側ではダッソーがニューロン無人機の攻撃能力をスウェーデンで実証する。同機はMk82(500ポンド)汎用爆弾を投下する。■