2015年8月21日金曜日

★スカンクワークスがU-2後継機を準備中


U-2と限りなく近い形状の機体でステルス性が発揮できるのかわかりませんが、下に出てくるオースティン部長はLO(低視認性)技術の専門家とのことなので、考えがロッキードにあるのでしょう。スカンクワークスがもう一度仕事ぶりを発揮することになりそうです。

Skunk Works Studies Stealthy U-2 Replacement

Aug 19, 2015 Guy Norris | Aerospace Daily & Defense Report

ロッキード・マーティンのスカンクワークスがU-2の後継スパイ機の検討をしている。伝説的なU-2のうち最良の部分を無人機ノースロップ・グラマンRQ-4Bグローバルホークの良いところを合わせた機体を目指している。
  1. U-2はこまめな改良を経て2050年までの寿命が残っているが、米空軍は2019年までに退役させる予定で、RQ-4Bが任務を引き受ける予定だ。ただし、ロッキードによればRQ-4Bは敵領空を戦時には飛行できないとし、次世代のU-2がその「穴」を埋めるISR機材になれるという。
  2. 「U-2、RQ-4Bはともに平時に高高度飛行でISR任務を実施する想定です」とロッキード・マーティンでU-2戦略開発事業を率いるスコット・ウィンステッドは言う。「空軍予算が削減されている中で、戦時用の機材を調達するのは困難で平時用の機材といえども多数を保有するのが難しくなっている。そこで検討しているのはその両方をこなせる機材です。グローバルホークとU-2から最良の部分をつなぎあわせて新しい機体にする。ステルス型のU-2といったところです」
  3. 新型機は有人操縦に切り替えが可能となる。運用地まではパイロットがフェリーして、平時は有人飛行、無人操縦でもっと危険な空域を長時間飛行させることが可能となる。機体案はとりあえずRQ-Xの名称で、無人型U-2用にスカンクワークスが検討してきた技術を盛り込む。無人型U-2の提案は直近では2014年にあり、胴体と主翼を延長し燃料搭載を増やし、無人機に必要なサーボモーター他すべてを搭載する案だった。
  4. ロッキードによればこの案で将来の長期間偵察任務で柔軟な対応を可能にし、同社が提案中の極超音速SR-72構想と共通部分があるという。
  5. 現行のU-2は非ステルスの機体のまま1955年初飛行時から大きく替わることなく今日に至っているが、次世代機には「低視認ステルス機の性能を盛り込む」とウィンステッドが言う。ロッキードによればこれまでもU-2のシグネーチャーを減らすべくレーダー吸収塗料材で、現行機は黒色に塗色されているが現在は特別な扱いは受けていないという。
  6. 開発費用を削るため設計案ではジェネラル・エレクトリックF118ターボファン(U-2/TSR-1で換装エンジンとして採用)を使用する。「大変高性能かつ比較的新しい。エンジンを替えないのはコストもあるが、90,000フィート飛行の要求が出てきたら別エンジンに変えれば良い。その際はその他にも再設計が必要になるでしょうがね」(ウィンステッド)
  7. 設計案では実用速度もU-2の 475 mph (マッハ0.58)近くとする。「今の段階ではこれ以上のスピードは不要との解析がありますが、高高度では速度があがります。空気が薄いですから」(ウィンステッド) 現実的な選択肢として「大型エンジン搭載で高度80,000フィートまでの上昇が可能となり、地上速度より50から60マイル早く飛行できます。スピードや後退翼を選ぶことも可能ですが、コストが増える効果があります」
  8. もうひとつコスト削減につながるのが現行U-2と同じセンサー一式を搭載することだ。「グローバルホークの多機種共通レーダー技術導入プログラム(MP-RTIP)を搭載する可能性はあります。強力で高性能なレーダーですから」とウィンステッドは言う。RQ-4BのレーダーはU-2搭載が最近認められたレイセオンの高性能合成開口レーダーシステム(ASARS-2B) に匹敵するという。「どちらが優れているか知りたいので使って見るわけです」 新型機は米空軍のオープンミッションシステム(OMS)機体構造標準で作る。
  9. 機体寸法、重量、出力で現行U-2から大きく外れることはないだろう。「機内発電容量は45kVA以上とし最適規模を検討します。その容量はU-2と同等ですがステルス機体で主翼を延長し、滞空時間を伸ばし、グローバルホークと同等にする他、燃料搭載量を増やします」(ウィンステッド) 具体的な寸法は示されていないが、現行機の翼幅103フィート、全長63フィートが参考になろう。
  10. U-2後継機の開発大日程案は全く不明だが、ロッキードによれば開発工程の重要部分は機体設計で要求内容を実現することだという。「U-2で実現されている最良の部分とグローバルホークが優れている点を合わせた設計になります」とウィンステッドはいい、さらにロッキードは「ノースロップ・グラマン、ボーイング、ジェネラルアトミクスと競合すると予想しており、当社より優れた設計が他社から出てくるか見ものだ」という。
  11. ロッキードはU-2を1950年代に迅速に設計して「スカンクワークス」は困難な事業を短期間かつ極端に低予算で実施できると定評が立った。「初号機を作るのが簡単だった理由として簡潔かつ明瞭な要求内容があり、途中で変更されなかったことがあります」とU-2事業部長メラニ・オースティンは語る。「当社は自由にやらせてもらい、予算はここにあるから短期でどこまでできるかやってみろといわれたわけです。同じ環境ができれば、また要求内容を明確にしてもらえば、また途中変更がなければ、開発は迅速に完了し費用対効果が高くできます」■


レーザー搭載機構想を巻き直し


なるほど最近DE(指向性エネルギー)兵器関連の話題が賑やかになった背景に電気レーザーで相当の進展があるのですね。まだ兵器として完成出来る状態ではないようですが、今後に期待が持てそうですね。一方で機密保護が重要ですね。


By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on August 17, 2015 at 4:00 AM

MDA Photo2012年にモスボール保存になった空中発射レーザー機 
HUNTSVILLE, ALA.: ミサイル防衛庁(MDA)がレーザー空中発射機をモスボール保存して3年たったが、MDAは新時代にあわせた構想を再スタートしようとしている。
  1. 以前のABLは巨大なボーイング747に乗員とともに化学原料を搭載し、出力を得ようとしていた。これに対し新構想では高高度を長時間飛行する無人機に小型の電気レーザーを搭載する。だがレーザー武装した航空機で弾道ミサイルを迎撃するのは打ち上げ直後のもっとも脆弱な時間をねらうため、機体は標的近くの空域を飛行する必要があり逆に撃墜される危険性があるのはこれまでと同様だ。
  2. 「打ち上げ直後をねらうため、接近する必要がある」とフランク・ケンドール国防副長官は宇宙ミサイル防衛会議の席上で発言している。接近すると「ロケットという柔らかい目標を狙える。再突入体は相当硬い構造だ」という。だが敵地で打ち上げられたばかりのロケットを狙えば敵もこちらに狙いを定めてくるだろう。
  3. 「空中発射レーザー構想が出た当時の私はペンタゴンにいたので、何機調達して、どうやって空域に配備してどうやって機体を守るのか尋ねたことを覚えている。明確な答えがなかったが、ともかく空中発射レーザー構想を実現することとした」(ケンドール)
  4. ミサイル防衛庁は今回は「漸増型、段階別、事実に基づく」方法論をとるとジェイムズ・シリング長官(海軍中将)が述べている。「前回はいきなり新構想を取り上げ利用できるものすべてに投資をしており、今回は異なる」
  5. MDAは実証実験を2018年から2019年にかけ行い、「どの技術が一番有望なのか」見極めるという。その後、「低出力レーザー実証機」が2021年頃に飛行する。実用規模の出力がいつ実用化するかは不明だ。
  6. MDAはすでに無人機でレーザー照準に必要なシステムの実験を行っている。「ジェネラル・アトミックスのリーパーやボーイングのファントムアイを使い長距離から探知追跡が可能だと証明する」(シリング長官)
  7. ミサイル防衛庁によるレーザー開発の目標は他の軍組織の事業より目標が高い。ミサイルを発射直後に撃ち落とすためには出力、有効射程、光線威力で格段に高い水準が必要となる。これまでの空中発射レーザー構想より高い性能が必要になる可能性がある。
  8. ABLは2010年のテストで弾道ミサイルを「数十キロ」の距離から撃破しているとシリングは紹介し、メガワット級の出力だったという。これに対しシリング長官は「数百キロ地点からこれまでより高い高度かつ長時間滞空する機材から照射する必要がある」という。
  9. 有人型空中レーザー発射機の最大高度は40,000フィートで、雲と空気の乱れから目標へのビーム照射は困難を極めた。「65,000フィートが必要だ」とシリングは言い、その高度だと空気の密度が低くレーザーはずっと遠くまで届く。
  10. 理想的な大気の状況でも高出力が必要だ。「数百からメガワット級」だとシリングは言う。「望ましいビームの品質でいうと現在は実験室内で数十キロワットしか達成していない」
  11. 課題は最大出力だけでなく必要出力を出すにはどれだけの重量となり、機体内に収納できるかだ。以前の空中発射レーザーはレーザー出力1キロワットの発生に55キログラムが必要だったとシリングは述べており、メガワット級の実現のため747が必要になったことがわかる。これに対して電気レーザーは実験室段階でキロワットあたり35から40キロですみ、MDAの開発事業ではさらに10キロ程度に低下させてkWあたり3から5キロまでをめざす。MDAの究極目標は 2 kg/kWで、これだと1メガワットでも重量は5,000ポンドですみ、無人機に搭載が可能だ。
  12. 「簡単だったらもうとっくにやっている」とシリングは言うが、レーザー技術の急進展を受け「実現不可能ではない」という。「まだ多くの課題がある」と長官は認め、「はいはい、立ち歩き、走る」段階別の進展でいくと「現在はまだハイハイだが、止まっているわけではない」という。
  13. 「本当に実用化が可能かと言われれば、イエスと答える」というのはマーク・ガンジンガー(戦略研究予算評価センター、レーザー専門家)だ。「技術の裏付けがあり、300キロワット級の半導体レーザーは5年以内に実現するのではないか」と述べている。「半導体レーザーを超高度を飛行する無人機に搭載するのをゼロから開発すると長期間が必要になるが」
  14. 「ただ重要な点はMDA構想は『ABLの再来』ではないこと」とガンジンガーは続けた。「MDA構想には2つの軍事技術の成熟化が前提だ。無人機と指向性エネルギーで、2つを組み合わせれば全く新しい兵器体系が生まれ、それぞれの長所を活かせる」
  15. 無人機なら24時間以上の滞空が可能だ。化学レーザーや従来型のミサイルや機関銃とちがい、電気レーザーは機内で発電できる間は照射可能だ。さらに空中給油で無人機が飛行を延長し、同時にレーザー発射に必要な発電能力を「再充填」できる。したがって無限大の発射回数が手に入れば一機の無人機を数日間空中で待機させることが可能となり、離着陸を繰り返す有人機との違いが明白になる。
  16. さらに電気レーザーでは出力調整が可能で標的の種類に応じ照射距離も調整可能だ。これにより接近する敵戦闘機や対空ミサイルから発射機を防御することにレーザーが使えるとガンジンガーは指摘する。攻撃される前に敵戦闘機の撃墜も可能だという。.
  17. 「弾道ミサイル対応だけ考えるのはあまりにも視野が狭い」とガンジンガーは言う。もしMDA。が発射直後のミサイル迎撃の課題を解決しているとすれば、搭載レーザーをミッションに応じて威力調整できる機材が開発できるはずだとする。■

2015年8月16日日曜日

★★米海軍>スーパーホーネットの機体寿命を考慮した運用を迫られる



これはもったいない。せっかくのスーパーホーネットをタンカーとして使う分だけ機体に負荷がかかっているという話ですね。しかし、もともとは空母運用機材をF-18系に一本化した段階でこうなることはわかっていたはずですが。UCLASSやV-22がタンカーに使えるのか不明ですが、当面はこの状態がつづくのでしょうね。

Navy Getting ‘Smarter’ About Tanking Mission As Super Hornets Approach 6,000 Hours

By: Megan Eckstein
August 12, 2015 4:59 PM

An F/A-18F refueling an F/A-18E over the Bay of Bengal, 2007. US Navy photo courtesy Wikipedia.
F/A-18FからF/A-18Eへの空中給油、2007年、ベンガル湾上空。. US Navy photo courtesy Wikipedia.

ボーイングF/A-18E/Fスーパーホーネットの機体寿命が空母運用で予想より早く消費されていると判明し、米海軍は同機を使った宮中給油ミッションを今後どう展開するか検討を迫られている。

  1. スーパーホーネットが空中給油ミッションを行う頻度が高まり、旧型ホーネットが減少する中で、機体耐用年数延長作業(SLEP)の順番待ちになる機体が増えており、スーパーホーネットで6,000時間という寿命限界に予想以上に早く到達する機体が出現しつつある。
  2. 海軍航空部隊司令官マイク・シューメーカー中将 Vice Adm. Mike Shoemaker が戦略国際研究センターと米海軍協会共催の行事で現状を紹介している。
  3. 「スーパーホーネットを旧式ホーネットと比較すると、スーパーホーネットの飛行回数が増えている中で空中給油ミッションを実施していることがわかる」
  4. 中将によれば海軍は以前はスーパーホーネットに最大5つの燃料タンクを搭載して発艦させていたので、相当の負担が機体にかかっており、耐用年数を減らしていたという。現在は「必要でない限りはタンク5つの搭載はしておらず、機体への負担を減らしている」という。
  5. 海軍もV-22導入を目指しているが、あくまでもその用途はC-2グレイハウンド艦載輸送機(COD)の代替である。海軍仕様のV-22はCODミッションに特化するものの、大型燃料タンクを搭載し航続距離が延長される。シューメーカー中将は同機の運用で柔軟性を期待し、海軍は追加任務を同機に期待しているという。
  6. 一方で海兵隊はオスプレイの多用途化を目指しており、空中給油装置、センサー統合パッケージ、デジタル相互通信パッケージ(搭乗者用)他を追加しようとしている。海兵隊航空副司令官ジョン・デイヴィス少将 Lt. Gen. Jon Davis が同じ席上で発言した。少将は海兵隊用機体から海軍にも参考になる点があるとはいえ、海軍用オスプレイはCODに特化した機体になると発言。
  7. V-22ないしUCLASSが空中給油ミッションを実施できるまではスーパーホーネットが唯一の給油機となり、シューメーカー中将は給油ミッションを行うからといって特別の保守点検項目がSLEP作業に追加されることはないとしつつ、寿命時間上限にそれだけ早く到達すると認めた。
  8. 来年にも6,000時間に達する機体が出るが、海軍とボーイングは共同で機体寿命評価を行い、SLEPに反映させる。ボーイングは各機の整備状況の変化を、また海軍は作戦運用を犠牲にしない整備方法をそれぞれ検討する。シューメーカー中将は旧型ホーネットのSLEPで直面した問題から今回はもっとうまく実施できるだろうと抱負を語った。
  9. 「前回の教訓からボーイングは最初から効果のある作業を行い、スーパーホーネット全機が恩恵を受けることを期待したい。ただし作業中は機体在庫の四分の一程度は使用できなくなるだろう」旧型ホーネットを使い作戦可能機体数を維持しているが、旧型機の稼働を終了させていくことで現状の機材の即応率が影響を受け、その分だけスーパーホーネットの飛行時間が増えて早く寿命を消化してしまう。スーパーホーネットのSLEPは早ければ2017年に開始する意向なので旧型機の稼働状況が大きく左右してくる。■


2015年8月15日土曜日

★沖縄事故の米陸軍ヘリは陸自に特殊作戦のデモ中だった




Army Black Hawk Was Conducting SOF Demonstration For Japanese When Crash Occurred

By: Megan Eckstein
August 14, 2015 2:15 PM • Updated: August 14, 2015 2:51 PM

A damaged U.S. Army helicopter rests on the desk of the USNS Red Cloud off Okinawa island, southern Japan on Aug. 12, 2015. Kyodo Photo
A damaged U.S. Army helicopter rests on the deck of the USNS Red Cloud off Okinawa island, southern Japan on Aug. 12, 2015. Kyodo Photo

USNSレッドクラウド(T-AKR-313)への着艦に失敗した米陸軍所属のUH-60ブラックホークは陸上自衛隊に特殊作戦用途のデモを行っていたと在日米軍が発表した。
  1. 事故当時、レッドクラウドは米陸軍と陸上自衛隊の共同訓練のため浮原島の東方8マイル地点にあった。
  2. 「米軍特殊部隊が海上訓練を実施中で陸上自衛隊に特殊作戦能力を展示していた」と発表。
  3. 着艦後の写真では尾部が切断されているのがわかる。搭乗していた17名のうち、アメリカ5名、日本2名が負傷しているが命に異常はない。事故は現在調査中。
  4. いは別の構造物に接触して着艦に失敗したのではないかとと日本経済新聞に語っている。
  5. 記事によれば事故発生時は情報共有する取り決めにもかかわらず、米国からの情報提供がないことに地元政府は動揺しているという。
  6. 事故は海兵隊普天間基地の移転問題を巡り菅官房長官と翁長知事の会談が進む中で発生した。菅長官は「事故発生は大変遺憾。政府として米国に迅速な情報開示ならびに事故原因を究明し再発防止を強く求めている」と報道陣に語っているとロイターが伝えている。■


2015年8月14日金曜日

強襲艦のロシア売却取り消しに成功したフランスとまったく痛みのないロシア


結局ロシアが損をしなかったことになりそうですね。ロシアは制裁の意味がないことを政治的に宣伝しそうです。今やフランス艦となった二隻をこれからどうすのかが焦点ですが、一度ロシア仕様として建造してしまった艦ですから買い手は言いたい放題でしょうね。


Mistral Dispute With Russia Settled, France Eyes Exports

By Pierre Tran 11 a.m. EDT August 9, 2015
Mistral warship Sevastopol(Photo: Georges Gobet/AFP)


PARIS — ロシアはミストラル級ヘリコプター空母2隻の前金として893百万ユーロ(978百万ドル)を支払っているが、オランド大統領とプーチン大統領が正式に商談を破棄した結果、フランスは全額以上を払い戻すことになりそうだ。
フランス大統領府から8月5日にミストラス商談は破棄され、ロシアは前金分の払い戻しを受けるとの発表があった。ロシアが支払った400名の水兵訓練費用や装備品を撤去してロシアへ返送する費用もフランスが負担する。総支払額は12億ユーロになるとオランド大統領が8月6日に発言したとAFPが報道している。フランス政府は詳細を議会に説明し了承を受ける。総支払額は12億ユーロになるとオランド大統領が8月6日に発言したとAFPが報道している。フランス政府は詳細を議会に説明し了承を受ける。
今回の交渉が成立しないとフランスは窮地に追いやられるところだった。ロシアは払い戻しに違約分を加えるよう求めていた。国際仲裁手続をとっていれば 2年3年かかりフランスの支払総額は20億ユーロになっていただろうと関係者は語る。
ミストラル級への引き合いが高いため、ロシア向け商談が流れてもフランスにとっては関係がないとオランド大統領は発言している。「多くの国が各艦に関心を示しているので、買い手を見つけるのは難しくないし、フランスにとっては余分なコストも発生しないはず」
エジプトがサウジアラビアの支援をうけて二隻の購入に意欲を見ている。どエジプトは域内での海軍力整備に動いているとルモンド紙が伝えている。「エジプトがサウジアラビアとともにミストラル級2隻を引き受ける準備ができているとエジプト政府関係者が発言した旨ルモンドが伝えている。サウジアラビアはエジプトによる海軍兵力整備を期待しており、紅海から地中海に兵力投射を実施させようとしている。
エジプトが取得した場合、2隻あれば1,000名の兵員、装甲車両、ヘリコプターを搭載しイエメン、リビア他へアラブ連合部隊を展開できる。サウジアラビアとエジプトは密接な関係にあり、サウジ政府は40億ドルをエジプトに供与している
保守・極右政治家は商談取り消しを批判しているのは武器輸出国としてのフランスの信用が傷つくことだ。
オランド大統領はこれに対しロシアから支払い済み前金と訓練費用だけを返金しペナルティはないと主張。支払い面の詳細は9月に議会に伝えるという。
オランド発言はエジプトでスエズ運河拡張工事完成を祝う式典に参加した際のもの。フランスはエジプトにラファール戦闘機、DCNS製多用途フリゲート艦1隻、ゴーウィンド海防艦4隻を売却している。エジプトはさらに海防艦2隻を追加購入する交渉中だという。
カナダ、インド、シンガポールがエジプト以外に関心を示しているとフランス複数のウェブサイトが報告している。
「両艦合わせての当初の価格は12億ユーロほどだった。合意内容の価格はこれを下回り、ロシアは前金とほぼ同額を受取る」と国防相ジャン・イブ・ルドリアンが8月6日に語っている。フランスは785百万ユーロで示談を申し出たが、ロシアは1,163百万ユーロの支払いを求めてきたとロイターが伝えている。
今回の払い戻しにより国防産業がどんな悪影響を受けるのか危惧する向きがある。「財源はどこにあるのか。だれが払い戻すのか」と国会議員フランソワ・コムジェンティルが問う。国防省だけに負担を求めれば他の地装備調達が狂うというのが議員の論点だ。
国防省からは商談取り消しと払い戻し問題は政府最高レベルが関与すべき事柄であり、財政負担は広く政府が負担すべき、軍だけに求めるべきでないと言ってくるだろうと国防専門家は見ている。
ミストラルは多用途艦で、人道救難援助には軍民両用で使えるとジャック・ゴーティエ上院議員(国防・外交・軍事委員会副委員長)は説明。「医療用スペースも式発令所用にも大きく使える設計のためブラジルやインドネシアと言った地域内大国も関心を示している、と説明。
フランス海軍はミストラル級3隻を運用中であるが、厳しい予算の中、さらに2隻追加導入する予定はない。今回の2隻の維持費用は最低でも一ヶ月百万ユーロかかかるとDCNS会長エルヴェ・ジローは報道陣に語っているが、同社は論評を避けている。保守維持費用には両艦のエンジンを始動し防錆効果の実施もふくむと業界筋は説明している。
輸出交渉は難航しそうで買い手は値引きを期待するはずだ。ミストラル級二隻がロシアの技術仕様に合わせて建造されているためだと同筋は説明。
軍は通常は自軍の仕様で装備を調達する。ロシアは自国用装備をすべて艦内から撤去するが、艦自体は寒冷海域の運用を想定し、ヘリコプター甲板には暖房装置もついている。格納庫はカモフの攻撃ヘリ運用を想定し拡張されている。ここまで作りこんであるので、艦は非常に特定化されているといってよい。
そのためそのまま売却するのが困難で、実現してもフランスは損をすることになると専門家筋は見ている。
契約書で取消の場合はロシアは前金を受け取り、装着済みロシア製装備は返還することになっており、両艦はフランスが保有管理することになっている。フランス大統領府はこう発表している。
ロシア政府からはフランスが前金返還で本件は終了したとの発言がああった。「フランスからはすでに返金があり、装備品が返却されれば完全にフランスは艦のオーナーとして自由に両艦を処分できる」と声明が出ている。「ロシア政府としてはミストラル問題は完全に解決したと見ている」
フランスは西側同盟各国に加え東欧やバルト海諸国からも両艦の引き渡しを中止するよう圧力を受けていた。ウクライナ危機が申告になり、ロシアがクリミア半島を併合したため猜疑心が強まっていた。ただフランスはロシアと良好な関係を維持しようと画策し、国内にはミストラル級引き渡しを求める動きもあった。■

2015年8月13日木曜日

★8月12日 米陸軍UH-60が輸送艦着艦に失敗



事故は残念ですが、死者が発生しなかったのが救いですね。しかしこの些少な事故(こういうとまた反発を招きます)を政治的に利用する動きがあるのもっと残念なことです。


「USNI News」の画像検索結果

Several Injured After U.S. Army Helo Has ‘Hard Landing’ on MSC Ship off Okinawa

By: Sam LaGrone
August 12, 2015 11:13 AM

米陸軍のシコルスキーUH-60ヘリコプターが海軍輸送司令部の輸送艦への着艦に失敗し、負傷者が発生したと在日米軍が発表した。

事故はUSNSレッド・クラウドRed Cloud (T-AKR-313) で沖縄本島から20マイル沖合で発生した。発生時刻は現地時間午後1時46分だった。

負傷者数は在日米軍は6名、ロイターおよびAPは7名と伝えているが、状況は不詳だ。米国内のMSCへ送付した照会には回答がない。

負傷者はキャンプフォスター内の米海軍病院へ搬送された。機内には他に10名が搭乗していたが負傷していない。

艦は損傷したヘリコプターを甲板に乗せたまま事故調査を待ち、沖縄沖合に停止している。

レッド・クラウド(排水量62,000トン)はワトソン級大型中速ロールオン・ロールオフ(LMSR)事前物資集積艦でディエゴ・ガルシアに配備されている。■


2015年8月11日火曜日

★海上自衛隊>次期イージス護衛艦DD27



Congress Notified of Potential $1.5B Sale of Aegis Combat Systems for New Japanese Ship Class

By: Sam LaGrone
August 10, 2015 6:47 PM

An artist's concept of the planned Japanese 27DD guided missile destroyer. Image via Navy Recognition
An artist’s concept of the planned Japanese 27DD guided missile destroyer. Image via Navy Recognition

イージス戦闘システム、対潜交戦システム、協調型交戦能力(CEC)の各装備を日本が計画中の駆逐艦2隻に15億ドルで有償対外軍事援助を通じ供給する案が国防安全保障協力庁(DSCA)から議会に8月7日に通告された。新型艦は米海軍の戦闘情報ネットワークと接続され情報のやりとりが可能となる。

DSCA通告は海上自衛隊が27DDと呼称され2020年代に就役する新型誘導ミサイル駆逐艦(DDG)(艦名未定)をさしているとNavy Recognitionが報じている。

今回通告は二隻分で米海軍が進める海軍統合火器管制防空 (NIFC-CA)システムと互換性を有する次世代兵装システムが導入される。

米海軍からは「日本は引き続き艦艇の近代化を進め、統合防空ミサイル防衛(IAMD) 任務や特殊任務の要望に答えようとしている。イージス型DDG二隻が追加されると日本がめざす弾道ミサイル防衛能力を有する艦8隻体制が完成し、米海軍との相互作戦実施能力が拡充する」と声明が出ている。「今回提案の日本向け装備売却は米日双方の外交安全保障の高い目標の実現をめざす米政府にとって重要な一歩だ」

27DDは米海軍のベイスライン9型アーレイ・バーク級DDGと同等の性能となり、ロッキード・マーティンのSPY-1DレーダーMk 7を搭載する。弾道ミサイル防衛(BMD)任務に加え、巡航ミサイルと航空機に同時に対処できる他、標的情報を友軍の艦艇・航空機にCECデータリンクで共有できる。

またあたご級駆逐艦の改修も予定されており、これで同級2隻も米日のネットワーク化された戦力の一部に組み込まれる。

DSCAからは6月に総額17億ドルでノースロップ・グラマンE-2Dアドバンストホークアイ4機の販売も通告済みである。また5月にはベル=ボーイングV-22オスプレイ17機を30億ドルで売却する案件も議会に伝えられている。

なお、27DDには上記Mk 7イージス戦闘システム、CECに加え、AN/SQQ-89A対潜戦闘装備一式も搭載される。

以下は8月7日にDSCAが通告した装備一覧である。
Major Defense Equipment (MDE) includes:
-AEGIS Weapon Systems (AWS) MK 7 x2
-J7 AWS Computer Program x1
-Multi-Mission Signal Processor (MMSP) x2
-AN/MK8 MOD4 AEGIS Common Display System (CDS) x2
-AN/SPQ-15 Digital Video Distribution System and Common Processor System (CPS) x2
-AWS Computing Infrastructure MK 1 MOD4 x2
-Operational Readiness Test System (ORTS) hosted in AWS computing infrastructure x2
- MK 99 MOD 8 Fire Control Systems x2
-AN/SPG-62A Radar, Ballistic Missile Defense (BMD) including Mission Planner blade server processors hosted in the CPS x2
-Kill Assessment System/Weapon Data Recording Cabinets (KAS/WDRC) x2
-Mode 5/S capable Identification Friend or Foe (IFF) System x2
-MK 36 MOD 6 Decoy Launching System x2
-AN/SQQ-89A (V) 15 Underwater Surveillance and Communication x2
System x2
- Global Positioning Satellite (GPS) Navigation systems with OE-553/U antenna x2
-AN/SSN-6F (V) 4 Navigation Sensor System Interface (NAVSSI) x2
-WSN-7(V) Inertial Navigation System (INS) x2
-AN/URC-141(V) 3(C) Multifunctional Information Distribution System (MIDS) Radio Set x2
-AN/UYQ-86(V) 6 Common Data Link Management System (CDLMS) x2
-AN/SQQ-89A (v) 15J UWS x2
-Gigabit Ethernet Data Multiplex System (GEDMS) x2
-Maintenance Assist Modules (MAMs) cabinets for Fire Control and Combat Systems equipment x2
-Multi-Function Towed Array (MFTA) and associated OK-410(V)3/SQR handling equipment x2
-Vertical Launching System (VLS) x2
-MK41 components for Direct Commercial Sales (DCS) launcher to support BMD missions employing the Standard Missile 3 (SM-3)
-Launch Control Units (LCU) MK 235 Mod 9 with Vertical Launching
System (VLS) Global Positioning System (GPS) Integrator (VGI)
-VLS launcher components including twenty-four (24) MK 448 Mod 1 Motor Control Panel -Programmable Power Supplies MK179 Mod 0 x4
-Launch Sequencers MK 5 Mod 1 x24
-Fiber Optic Distribution Boxes (FODB) x4
-Single Module Junction Boxes x24
-Gun Weapon System MK 34 x2
-MK 20 Electro-Optical Sensor System (EOSS) x2
-Cooperative Engagement Capability (CEC) x2
-Global Command and Control System-Maritime (GCCS-M) x2
-AN/SPQ-9B Radar x2
-Enhanced AEGIS Combat Systems Trainer (ACTS) with communication suite x2
-technical documentation x2

2015年8月10日月曜日

F-35>イタリア空軍KC-767からの空中給油に成功

なるほどイタリアは4機しかないKC-767を少なくとも一機カリフォーニアに派遣したわけですか。航空自衛隊も同様に4機を保有していますが、南西方面が平穏と言いがたく、派遣する余裕はないのでしょうね。

F-35 Gulps Fuel from Italian Tanker

by BRENDAN MCGARRY on AUGUST 6, 2015
http://defensetech.org/2015/08/06/f-35-gulps-fuel-from-italian-tanker/
An American JSF AF-4 from the 461 FLTS, Edwards AFB, CA, piloted by Maj. Charles "FLAK" Trickey performs the first contact and fuel transfer from a KC-767 foreign partner Italian Tanker.

F-35がイタリア空軍機から空中給油を受けた。これでまた同機はひとつの節目を通過したことになる。
  1. 先週、エドワーズ空軍基地(カリフォーニア州)でイタリアのKC-767が米空軍のF-35Aに給油ブームで数十回の給油手順を実施し、合計16千ポンドの燃料給油に成功した。
  2. 「米空軍所属機以外の海外給油機が給油認証取得の試行をしたことになる」とF-35開発室広報は説明。さらに今月通じテスト実施が予定されている。
  3. イタリアはF-35を90機導入する予定で、うち30機はF-35Bだ。
  4. またイタリアはKC-767A給油機を4機運用中で、プラチカディマーレ空軍基地(ローマ近郊)に配備中。■

★経済制裁解除で新規機材調達に動き始めたイラン空軍



イラン制裁の解除で石油収入を期待できるイランが大幅な装備の更新に向かうのは必至ですが、湾岸諸国やイスラエルは神経質になるでしょうね。核開発合意=制裁解除が本当に西側とイランのあらたな時代の幕を開けることになるのか、しばらく静観すべきと思うのですが、やはり中国は商機と見て動き始めたようです。

Analysis: Boom time beckons for Iranian air force, with sanctions set to be lifted

Gareth Jennings, London - IHS Jane's Defence Weekly
05 August 2015

イラン・イスラム共和国空軍の機材はほとんどが米国製で、グラマンF-14Aトムキャットもあるが、調達時期はイラン王政時代まで遡る。36年間に及んだ精細が解除され、イランは旧式機の修理あるいは更新が視野に入っており、すでに数カ国がイランに接近している。
ir wares ahead of an expected recapitalisation process. Source: Mehr news agency
イランは中国、フランス、ドイツ、英国、米国と経済制裁の解除の代償に核開発を制限することで7月14日に合意した。
  1. イラン・イスラム共和国空軍(IRIAF)にとって今回の進展は願ってもない装備更新の機会になる機材はイラン革命前に米国から導入したり、旧イラク保有機を湾岸戦争で捕獲したものが大半だが老朽化が進み、使用できなくなっている。
  2. 戦闘喪失や自然消耗によりIRIAFの陣容は1979年当時より相当縮小している。 IHS Jane's World Air Forces によれば高速ジェットが370機あることになっているが、実際に飛行可能なのはこの数分の一だといわれる。
  3. 歴史的な合意から一ヶ月も立たないうちにIRIAFは中国、フランスから新型戦闘機材の調達を検討している。成都航空機(CAC)のJ-10Bやダッソー・ミラージュ2000を想定している。報道によれば中国はJ-10Bを最大150機に武装も合わせて提示し、フランスは余剰機材のミラージュ2000の提供を提案したという。
  4. ロシアは動きが鈍い。ロシアもMiGスホイの余剰機材または新造機材の提供を検討していると言われる。
  5. イラン革命の1979年以前には米国は国王におよそ500機の当時の新鋭航空機を提供している。(グラマンF-14Aが79機、マグダネル・ダグラスF-4Eが177機、F-4D32機、RF-4E16機、F-5E141機、F-5FタイガーIIが28機) それにロッキード・マーティンC-130E/H多数とボーイング707輸送機、ロッキード。マーティンP-3Fオライオン哨戒機、ボーイングCH-47Aチヌーク、ベルUH-1イロコイ、ベルAH-1ヘリコプターがある。
  6. 革命後は米国の支援はなくなり、自国で整備せざるを得なくなった。中国製機材やイラク戦闘機の捕獲で補ってきたが、国際経済制裁によりイランは各機の整備に相当苦労してきた。
  7. 武器等の禁輸措置で IRIAFは部品が手当できなくなり、一部機材から部品を取り外して辻褄を合わせてきたほか、リバースエンジニアリングで部品を作成したり、闇市場を活用したほか、国産化も試みている。
  8. イランは多数の部品をリバースエンジニアリングで製造している。国内の航空宇宙産業のHESA社およびイラン軍航空産業機構(IAFAIO)が実施してきた。イラン政府によれば部品の7割を国内生産できるという。
  9. それ以外に海外の闇市場で部品を確保しようとしてきた。2009年には第三国経由で入手しようとする動きが表面に出て三名が英国で刑務所に入った。2011年にはベル212ヘリコプター9機(部品含む)をスペインから輸入しようとしている。
  10. さらにイランは戦闘機を自国開発しようとし、F-5を元にしたアザラクシュ(電光)、サエゲ(雷電)、シモー(不死鳥)がある。しかし、F-313カヘール(征服王)「ステルス戦闘機」が2013年にロールアウトしているが、戦闘投入できるレベルではなかった。
  11. 今回の制裁解除でイランはこれまでできなかった機材の更新を通常の形で追い求めることができる。すでに各国が列を作っている状態で、IRIAFは国王時代の調達規模を上回る調達に乗り出そうとしている。■