2017年7月23日日曜日

2016年の北朝鮮経済動向が明らかになったが、国連制裁効果は僅少



去年までは中国の後ろ盾があり制裁効果がなかったことがわかります。今年の影響がどう出るかは来年の今ごろにはわかるでしょう。(それまで同国が存続していればですが)
North Korean leader Kim Jong Un gives field guidance to the newly built Ryugyong Kimchi Factory in this undated photo released by North Korea's Korean Central News Agency (KCNA)
稼働開始したリューギョン・キムチ工場を視察する金正恩。Korean Central News Agency / Reuters
North Korea 2016 Economic Growth at 17-Year High Despite Sanctions 北経済制裁の中、朝鮮の2016年は17年間で最大の経済成長を達成していた
   
BY: Reuters
July 21, 2017 2:13 pm
By Christine Kim and Jane Chung
SEOUL (Reuters) — 2016年の北朝鮮経済は17年間で最大の成長を実現したと韓国銀行(韓国の中央銀行)が7月21日発表した。核兵器開発を続ける同国は国際制裁を受けている。
  1. 国内総生産GDPは3.9パーセント増で干ばつと産品価格低迷に苦しんだ前年から大きく成長した。けん引役は鉱業とエネルギー部門で6.1パーセント増記録(1991年)を更新した。
  2. 輸出は4.6パーセント増で北朝鮮の最大貿易相手国は中国だ。
  3. ただし一人当たり国内総所得は150万ウォン(1,342米ドル)と韓国の5パーセント未満にすぎない。
  4. 北朝鮮は経済統計を公表していない。韓国銀行は統一院や国家情報院はじめ政府機関統計をもとに北朝鮮GDPデータの公表を1991年に開始している。同行の推計は国際機関や研究者が利用している。
  5. 北朝鮮はミサイル、核開発のため2006年から国連制裁の対象で、安全保障理事会は核実験5回、長距離ミサイル発射二回を見て制裁内容を強化してきた。
  6. 核・ミサイル開発事業が順調な経済成長の一因と韓国銀行は見る。ミサイル部品製造がGDP統計の一部だ。2016年の発電量も増えたがミサイル製造と関連は不明だ。
  7. 2月に中国が北朝鮮産石炭の輸入を停止し、北朝鮮向け石油輸出でも制限を課した。石炭は北朝鮮の重要輸出品。
  8. 米国は北朝鮮と取引中の中国企業・銀行に新たな制裁措置を検討中で国連安保理で一層厳しい制裁措置の支援をロシア、中国に求めている。
  9. 2016年の北朝鮮貿易では中国が92.5パーセントを占めた。この統計はKOTRA大韓貿易投資振興公社が21日に発表した。
  10. 今年の北朝鮮経済は中国が石炭輸入を全面禁止した影響が避けられないと韓国統一院は見ている。北朝鮮は迂回策を模索するだろうが、密輸は困難で移動はすぐ探知されると統一院は説明。
  11. 制裁効果が昨年出てこなかったのは韓国が米THAAD装備導入を決めたため中国が規制を緩めた効果が高いと韓国国際経済政策研究所の研究部門長Lim Soo-hoが説明している。「制裁拡大で今年は経済減速リスクが昨年より増えます。中国が燃料売却をさらに削減すると北朝鮮の重工業や製造部門は深刻な影響を受けます」
  12. 韓国銀行は中国の石炭受入停止と国際制裁強化で北朝鮮経済が今年どんな影響を受けるかについてはコメントを避けている。
  13. 北朝鮮のGDP(2016年)は32兆ウォン(2,850億米ドル)と韓国銀行はまとめており、韓国経済の1,508兆ウォン(1.34兆米ドル)の数パーセントの規模だ。
  14. 北朝鮮産業で鉱業、製造業が33.2パーセント(2016年)と大きな比重を占めている。
  15. 北朝鮮の輸出総額は韓国向け除き昨年は4.6パーセント増で28.2億米ドルになり、水産品が74パーセント増でけん引役になった。輸入総額は4.8パーセント増の37.3億ドルで生産財と繊維製品が中心だった。
  16. 南北間交易が昨年一気に87.7%の減少を見たのは南北共同工業団地の閉鎖が大きく、北の貿易量に変化がないことが統計からわかる。
  17. 開城工業団地閉鎖は北朝鮮が国連決議を無視し長距離ロケットを発射したのが理由だった。■

2017年7月22日土曜日

★米海軍が進める電磁レイルガン(EMRG)開発の現況



着々と研究は進んでいるようです。砲身の耐久性と電力確保が現状の課題ということですか。ミサイル迎撃を期待するとなるともう一段以上の技術開発が必要ですね。

The Office of Naval Research (ONR)-sponsored Electromagnetic Railgun (EMRG) at terminal range located at Naval Surface Warfare Center Dahlgren Division (NSWCDD). (U.S. Navy/John F. Williams)The Navy’s Railgun Will Get Faster, More Powerful This Summer

米海軍のレイルガンが今年の夏に高速かつ出力増を実現する

 POSTED BY: HOPE HODGE SECK JULY 21, 2017
写真 海軍研究所(ONR)による電磁レイルガン(EMRG)、海軍水上戦センターのダールグレン研究施設(NSWCDD)にて。(U.S. Navy/John F. Williams)

  1. 米海軍の進める電磁レイルガンが大きな開発段階を今夏迎えている。毎分当たり発射回数を増やし、出力を大幅増にする。
  2. レイルガンは海軍が10年以上大切にしてきたプロジェクトで試作型の艦載運用は2006年にはじまっている。レイルガンは電磁反発力で発射体を高速発射し、火薬の化学反応に依存しない。
  3. 理論上はレイルガンは安全かつ安価な運用で従来の火砲より優れる。DDG-1000ズムワルト級駆逐艦三隻に搭載するとしていたが、実施するのか不明だ。
  4. 現在は海軍研究部門ONRが照準通りの命中精度を目指して作業中だ。
  5. 今夏から来年にかけての作業の中心は出力増により32メガジュールで発射し毎分10発の発射を実現することとトム・ビュートナー博士ONR海軍航空戦兵装開発部長が説明。
  6. 32メガジュール出力だと射程は110カイリに及ぶとビュートナーはワシントンDCで開かれたONR主催の科学技術エキスポで講演した。
  7. この出力増と発射回数増に耐える設計の複合材製発射装置はヴァージニア州ダールグレン試射場に設置される。同地では試作型の発射実証を行なっている。
  8. 「目標はともに来年にかけて実現できるのではないか」とビュートナーは発射回数、出力の増加について述べている。
  9. 装置にはまだ解決が必要な課題がある。発射による摩耗損傷に装置が耐えなければならない。砲が短時間で壊れる危惧もある。ビュートナーは述べる。「当初は10発しか耐えられなかったが現在は400回までなら耐えられる。今後は1,000回まで延ばしたい」
  10. もう一つは電力だ。
  11. 電力が相当必要となり、これに応えられるのはズムワルト級しかない。ビュートナーも電力問題を認識し他の装備でも共通の課題と認める。レーザーウェポンシステムが揚陸輸送艦ポンスに搭載されているが、試射では専用電源を用意する必要があった。
  12. 「ONRもこの課題を認識し...将来の艦設計では電源確保が課題でレイルガンだけでなく、多様な電磁兵器が搭載されるはずだ」とビュートナーは述べた。発電貯蔵が研究課題の中心だという。■

2017年7月21日金曜日

F-35A:依然不明なパイロット酸素供給トラブルの原因、ルークAFB



要は根本原因がわからないということですか。深刻ですね。しかしルーク基地以外のF-35では報告がないというのも変です。航空自衛隊向けの機材もルークにあるので日本としても看過できない問題です。機内に搭載されている部品の品質管理が問題なのでしょうね。まさかC国製は使われていないでしょうね

Aerospace Daily & Defense Report

Fix Elusive As Another F-35 Pilot Reports Trouble Breathing

Jul 19, 2017 Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

(写真)ルーク空軍基地第六十一戦闘飛行隊のパイロットがケンタッキー州空軍基地のあるルイスビルに自機を駐機した。April 20, 2017. USAF

  1. ルークAFB(アリゾナ)のF-35パイロットでまたもや低酸素症に似た症状が発生し、政府・民間合同専門家が困惑している。
  2. 第56戦闘機隊の教官パイロットが7月10日の訓練飛行中にめまいと息切れを覚えたと広報官ベッキー・ヘイス少佐が発表。パイロットは予備酸素に切り替え無事帰還したという。
  3. これ以前に5件の飛行生理事案がルークで発生したが、当初は最新事案は別の種類と見られていた。F-35運用は一時停止していたが、6月21日に条件付きで再開されている。原因究明は終わっていない。現在は飛行上限は25千フィートに制限されている。
  4. 7月10日事案の飛行後解析からパイロットマスクの弁が不良だと判明したとヘイス少佐は述べている。弁を交換したところパイロットは支障なく飛行できた。
  5. 「マスク上の弁の不良が原因と分かりましたが、先行5事例の原因は未解明のままです」(ヘイス少佐)
  6. F-35共同開発室(JPO)が5月26日に編成したアクションチームはいまだに根本原因をさぐれていない。ただしJPOは「各事例の特徴を把握すべく標準に従った体系的な作業」をしており、「可能性のある範囲をつきとめられそう」とJPO広報官ブランディ・シフが語っている。
  7. JPOが目を付けているのはハネウェルの機内酸素発生装置 (Obogs) に入る抽気でプラット&ホイットニー製F135エンジンが供給している。チームは事故の報告があった各機の空気状態を調査したとシフは説明。JPOは空軍研究部門と共同でルーク基地機の空気状態を調査し、ゆくゆくは同型機全部の点検も行うとシフは述べている。
  8. JPOは長期的にはセンサー技術の進歩をさらに進め飛行中の機内汚染物質の探知をめざすとシフは説明。
  9. Avition Weekから調査中の根本原因のリスト開示を求めたがシフに拒否された。
  10. JPOは酸素発生装置の酸素濃度濃縮アルゴリズムの精度を上げる作業に入っており、各種高度で一番妥当な酸素濃度をパイロットに供給する機能に注目している。高度が上がり空気が薄くなると人体は酸素量が多く必要となる。ただしこれはあくまでも応急措置であり、各事例で酸素濃度自体に問題があったことを明確に示す証拠はない。■

A-10後継機開発の行方は不明、混迷する米空軍の装備開発方針



A-10: USAF

米空軍が何を目指しているのかわかりにくくなっていますが、
敵対勢力は意外に伝統的な戦法をとり、旧式機でも数にものを言わすのであれば、高性能を持った機材でも数で劣勢ならかなわないのでは。しかも頼みの綱の技術優位も揺らいできており、明らかに思考が行き詰まってきているのではないでしょうか。

Aerospace Daily & Defense Report

Air Force Weighs Scrapping A-10 Replacement

A-10後継機検討はこれ以上進める意向のない米空軍

Jul 17, 2017Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report

  1. 米空軍は近接航空支援の将来像を検討中だが上層部によればA-10ウォートホグの直系の後継機は生まれない可能性がある。
  2. 空軍はここ数年ずっと近接航空支援(CAS)の次期専用機材を検討していたが、現時点で作業は止まっている。専用機材としての「A-X」開発に向けた措置を取っているのか問われた空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドファイン大将は「まだない」と答えている。
  3. すると専用機材としてのCAS機は作らないのか。「多分ね」とゴールドフェイン大将は言う。
  4. 「単一任務機実現への障害が空軍内で高いとは思わない」と参謀総長は7月16日のAviaion Week取材で述べている。「しかし前線指揮官に多様な戦闘状況があり当方はそれを支援する立場で、ハイエンド、ローエンド、その中間と多様な中で空軍にとって最善の結果を予算以内で生む運用が求められているのだ」
  5. 取材は英ロイヤルインタナショナルエアタトゥー訪問から帰国する参謀総長に空軍C-40機内で行われた。
  6. 本人はアフガニスタンの航空部隊指揮官としてCASミッションでA-10だけでなく各種機材にいかに依存しているか直接目にしてきた。地上部隊防護でウォートホグが必ずしもいつも第一の選択にならず、東部山岳地帯ではMQ-9リーパーが山谷を縫って迅速に移動できる点で一番優れた機材だった。不安定な西部では状態が悪化すれば多用途F-15Eが効果を最大限に発揮し、北部なら長時間飛行性能と大量のペイロードでB-1Bが最高の選択だ。
  7. 「特定の単一装備ではなく各種システムのファミリーとして、なら21世紀の近接航空支援が検討できる。単一機能だけで完結するミッション想定は本当に数少ないのです」
  8. 空軍はウォートホグを2020年代中頃まで運用する予定だが、A-10で9個飛行隊すべて運用するには追加予算手当が必要だ。ただし空軍がA-10の後継機を実現できるかは予算状況が安定することが前提とゴールドフェイン大将は強調する。
  9. 強制予算削減や先行きの見えない中、特別決議が年ごとに更新され対応する状況では軍の計画立案能力が大幅に低下していると参謀総長は指摘する。
  10. 「こんな駆け引きをしている状況では先のことは読めません」といい、「無料で何も手に入りません」
  11. 決断を下す前にゴールドフェイン大将はCAS部隊に将来のミッション像で意見を聞くだろう。これまでの姿とは違ってくるためだ。A-10が真価を発揮できるのは完全に航空優勢が確立されたイラクやアフガニスタンのような場合だと専門家の意見は一致しているが、高性能対空装備特に地対空ミサイルの普及で非ステルス性で大柄なウォートホグを戦場で運用するのは危険が増えている。
  12. 「後継機種の話をする前に検討内容が全く新しい形の作戦運用につながることを確認しておきたいですね」とゴールドフェインは語った。■

2017年7月20日木曜日

米空軍向け採用を狙うガルフストリームの狙いは特殊用途機の小型化


以下記事はガルフストリームが行ったメディアツアーの結果なので多分に同社の言い分が中心で内容は要注意です。こんな小型機でボーイング707原型機が行っているミッションがこなせるのなら大幅に運航経費がひらせていいのですが、大きいことはいいことだ、大は小を兼ねると信じる向きには簡単に信じられないでしょうね。


Gulfstream mounts pro-bizjet blitz ahead of major Air Force competitions ガルフストリームが空軍採用を期待しビズジェットを攻勢中

 By: Valerie Insinna, July 18, 2017 (Photo Credit: Gulfstream)

WASHINGTON — ガルフストリームは同社G550が空軍向け次期JSTARSおよびコンパスコールに採用されると期待し、空軍への営業活動を大々的に開始している。空軍は特殊作戦向け機材の次期機種検討も始まる。
  1. ガルフストリームはまず小型ビジネスジェット機でも要求水準は十分実現でき、大型旅客機は不要だと空軍の説得する必要がある。
  2. 「米国だけでなく世界各地で進行中の案件で商談していますが、根本的な課題は次世代機材はビジネスジェット機、旅客機のいずれを原型にすべきかという点です」とトロイ・ミラー同社軍用販売営業担当副社長が述べている。同社は報道陣を7月13日サバンナ(ジョージア州)に招き、G550生産拠点を公開し特殊用途への改装工程を見せた。
  3. ガルフストリーム社関係者はボーイングを名指さなかったが同社プレゼンテーションではJSTARSやコンパスコール向けにG550を提案する方がボーイング737-700のような旅客機を原型にするより優れているとの主張が中心だった。
  4. 「空軍が進める構想の方向性そのものについてはコメントできません。空軍上層部とは定期的に意見交換しています。空軍は当社機材の提供する性能に大きく関心を示していますよ」(ミラー)「最終的には空軍は最終決定を迫られます。どちらがふさわしいのか、どちらの提案が正しいのか。ただし世界規模での特殊用途の方向性を考えればビジネスジェットに向かうのが自然な流れと思いますよ」
  5. 今後数か月で空軍は特殊任務用機材二機種で重要な決断を迫られる。結果は各社競合にも影響を及ぼす。JSATRSの後継機選定は早くて来年初めでノースロップ・グラマンがガルフストリーム、L3と共同してボーイングに対抗している。ボーイングは737-700を提案し、ロッキード・マーティンボンバルディアとチームを組みグローバル6000ビジネスジェットを提示している。
  6. ガルフストリームはコンパスコールでも採択を期待する。同事業はボーイング、ボンバルディアからの抗議を受けており、両社の言い分は調達方針がガルフストリームに有利にというもの。
  7. さらにミラーはビジネスジェットは電子戦、ISR、高官輸送、空中早期警戒にも転用可能と同社が見ていると紹介。ガルフストリームはE-3AWACSやRC-135リヴェットジョイント後継機候補にもなるという。
  8. 「これまでは大型機が必要と思われてきたミッション多数で旅客機を原型にしてきましたが今やガルフストリームが適正機材になっています。当社は各分野での応用に前向きに取り組んでいます」(ミラー)
  9. 「空軍は開かれた対話に前向きで当社製品の性能と将来のミッション要求内容に関する意見交換に乗ってくれています。二種類の機材で先入観による判断は働いていないことに自信があります。既存機種から推測が生まれがちですが当社は大きな可能性を見ています」
  10. 興味深いのはガルフストリーム社幹部が同業他社に言及しなかったことで、ボンバルディアはその例だ。そのかわりにG550のコスト低水準や高高度でのミッション能力、高速性能、中距離飛行性能が民間旅客機よりも有利だと主張した。
  11. G550の上昇限度51千フィートは通常の旅客機より10千フィートほど高いとミラーは指摘し、軍用装備で若干の高度性能、速度や航続距離が下がるのは共通と指摘した。
  12. JSTARS(共用監視目標捕捉攻撃レーダー機)の場合は地上、空中共に監視し戦場の全体像を作る必要があり、高高度飛行性能は有利に働く。悪天候や他機の飛行も避けられるとミラーは指摘。
  13. また同機の速度マッハ0.85は民間旅客機平均0.82より高く、高高度に早く到達できる。長い航続距離は途中の給油回数を少なくし現地で長時間情報を集められるとミラーは述べた。
  14. 他方でボーイングは737を原型に特殊用途機材として売り込む意向で、空軍の現行特殊用途機はJSTARTSであれAWACSあるいはリヴェットジョイントまでボーイング製旅客機の軍用転用型が大部分だ。
  15. ボーイングと同社支持派の主張は737-700のサイズが大きいことが大きな利点になるという。余裕ある空間、出力、冷却能力で追加装備の搭載が将来に発生しても対応できるからだとする。
  16. だがガルフストリームの言い分は違い、大きすぎることが良いとは限らないとする。
  17. 「拡張の余裕があるということはミッションに必要以上の機数を提供することになりませんか」とミラーは言う。技術の進歩で装備は小型化し電力消費も少なくなり、冷却の必要も減るということだ。人手も減るので乗員数も減らせるとミラーは続けた。■

2017年7月19日水曜日

米空軍T-X選定で考慮すべきポイントはこれだ


 

Choosing A New Trainer Might Prove Challenging For The Air Force 新型練習機選定は米空軍にとって重要な作業となる


July 17, 2017

  1. 米空軍は新型ジェット練習機T-Xで契約企業を今年後半に選定し、老朽化進むT-38タロン後継機を実現する。調達規模は350機と大規模ではないが重要案件だ。第五世代機のF-22、F-35で複座型がなくパイロット養成は基礎飛行訓練からいきなり世界最高水準の機体に移行する。そのため新型練習機にも高性能が必要で最新鋭エイビオニクスで飛行速度も十分高速にし訓練生に第五世代機に必要な技能を獲得する機会を作る必要がある。
  2. T-X最終提案を出しているのは三社で、ボーイングSaabと組んで完全新規設計を、ロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業のT-50原型案、DRSテクノロジーズが親会社レオナルドの支援を受けM-346を元にT-100を提案している。各社はパイロット養成システムを高性能シミュレーターや地上配備の支援設備も含め提案している。
  3. 選定のどこが難しいのかと思う向きがあるかもしれない。T-Xは単一ミッション機をめざし、戦闘投入は想定しない。製造機数は比較的小規模だ。高性能戦闘機、新型空中給油機KC-46、新型爆撃機B-21の決定と比較すればT-Xの選定など「朝飯前」ではないか。
  4. だが新型高性能練習機選定には考慮すべき要素が多い。まずコストだ。空軍の要望は最低価格だが、基本性能を満たすものを選定するともしている。空軍が長期間にわたる機体改修で戦闘機、爆撃機、給油機、情報収集機で相当の費用を覚悟する中、T-Xで予算節約が望ましいのだろう。
  5. ただ価格だけが選定基準ではない。評価部門はリスク要因に注目するはずだ。その一つに技術リスク、言い換えれば技術成熟度がある。T-X訓練システムのすべての構成部品やサブシステムが期待通りに機能し最初から仕様通りに動くか。新型機では長期テストでバグを取り除くのが通例だ。
  6. 技術リスクに関連し生産リスクがある。新型機の設計・試作型製造と量産型生産は別の話だ。生産上の難題のため設計変更となった例は多い。さらに学習効果の問題もある。生産ラインの作業員は時間経過とともに技能を上げていく。
  7. つぎが生産日程のリスクだ。T-38の退役は2020年代で待ったなしだ。同時期に空軍はF-22・F-35向けパイロット養成が必要となので今回のT-X選定の勝者は2020年代初頭に量産体制に入っている必要がある。
  8. 資源リスクもある。予算環境が厳しいまま2010年代が終わる予想の中で重要な機体改修事業が数々あり、2020年代に実施の必要がある。T-Xが遅れると空軍の調達予算にしわ寄せがくる。またT-38の供用期間延長にもつながりかねない。T-38を長く使えば保守支援コストも高くなる。
  9. 運用維持性も考慮すべきだ。新型ジェット練習機と支援体制は今後数十年稼働する。ウェポンシステムの総費用の7割は調達後に発生する。高い維持費は初期価格の低さを打ち消す。
  10. 訓練用シミュレーターの性能が重要になる。シミュレーターや訓練機器を使い空軍は費用ならびに機体消耗を節約するはずだ。さらに空軍にはあらゆる想定に応える訓練空域が不足している。そのため今後の訓練では基地内実施が増えるだろう。合成的に作る飛行環境を多用したほうがいい。そこでT-X選定で空軍は訓練システム全体の効率も機体の性能・価格・維持費用とあわせて評価すべきだ。
  11. T-X事業は機体数、費用ともに大規模ではない。だが重要な調達事業である。空軍評価部門は選定で事業全体に影響を与えそうな要素すべてを考慮すべきであり、価格のみで判断すべきではない。■
Daniel Gouré, Ph.D., is a Vice President of the Lexington Institute. He served in the Pentagon during the George H.W. Administration and has taught at Johns Hopkins and Georgetown Universities and the National War College. You can follow him on twitter @dgoure and you can follow the Lexington Institute @LexNextDC

第二次大戦中の日本に米本土を細菌攻撃する構想があった


重い題材です。731部隊出身者は戦後の日本医学界でそれなりの地位につき、この話題はタブー扱いだったようですが、さすがに関係者がこの世から消えてきた今は、真正面から話題にしていいのではないでしょうか。事実は事実として認めるべきは認め、デマや風説を抑止すべきでは。科学データとして貴重な内容を米国はどう活用してきたのでしょうか。もともと毒ガスはじめ細菌兵器は禁じられていたのですが、日本では勝つために手段を択ばない=戦争にはルールがないとの考え方があったのでは。これはオウム事件でも感じられた向きがあると思います。現在は中国が当時の日本と同じ思考になっていないか危惧せざるを得ません。歴史の皮肉ですね。

 

Fact: Japan Wanted to Drop Plague Bombs on America Using 'Aircraft Carrier' Subs これは事実だ:日本は「潜水空母」で米本土にペスト菌攻撃を目論んでいた


July 17, 2017


  1. 第二次大戦中の日本は生物兵器を使い中国国民数千名の生命を奪った。だが日本が病原菌を米軍への散布を狙った機会が少なくとも四回あったことはあまり知られていない。毎回辛うじて実行に移されなかった。その最後の機会が夜桜特攻作戦でペスト菌に感染させたノミでサンディエゴを狙う作戦だった。
  2. 日本の生物兵器は石井四郎陸軍中将の頭脳の産物で、1930年代に最高レベルの支援を受け731部隊が「防疫給水部」として関東軍内部に生まれた。731部隊はハルビン平房区Pingfang Districtで150棟の巨大施設となり、生体標本を使い生物兵器開発に努めた。人体実験に投入された者のうち三分の二が中国人で残りはソ連で捕獲していたが、その後連合軍捕虜、朝鮮人、太平洋諸島の住民も加わる。
  3. 731部隊の実験内容の非人道性は簡単に言い尽くせるものではない。麻酔なしで生体解剖し主要臓器を除去しどれだけ生存できるかを実験し死体は標本にした。凍傷の開始を見るため四肢を冷凍し、梅毒に感染させ銃の監視下で収容者同士を性交させた。手りゅう弾、毒ガス、火炎放射機や爆弾の標的に生身の人体を使い、炭そ菌つまり液状バクテリアを充填した爆弾投下もあった。
  4. だが日本の生物戦専門部隊の好みはペスト菌で14世紀のヨーロッパで黒死病として猛威を振るったバクテリア感染だった。感染後数日で症状が現れ、不気味な横痃、高熱、壊疽や悪寒や発作で治療がない場合の致死率は50パーセントだ。
  5. 731部隊はペスト菌60ポンドほどを数日程度で製造する能力があり、伝染方法は自然界からヒントを得て感染ノミを使った。ノミを陶磁器製宇治50爆弾に入れ一般市民の居住地区に航空機から投下した。ノミはネズミを感染させ食料備蓄を汚染し、病苦が人体に広がった。
  6. 日本がこの生物兵器攻撃を加えたのは寧波Ningboや常徳Changdeでペスト感染が確認され「成功」と判定されたこともある。ただし被害者が数十万人なのか数万人なのかで論争がある。ドーリットルが東京爆撃を敢行した1942年に日本軍は報復として浙贛(せいごう)作戦を展開し、コレラ菌、チフス、ペスト、赤痢の生物兵器も投入し、中国人数万名を殺害したが日本軍にも1,700名の被害者が生まれている。
  7. 中国を生物兵器の実験場にしながら日本軍はこの兵器を主敵に使えないか検討を始める。1942年3月に感染させたノミ1.5億匹を数回にわけバターン半島を防備していた最後の米軍、フィリピン部隊を攻撃する案がまとまった。しかし連合軍が4月に降伏し攻撃は実施されなかった。同じ年に日本軍指導部はダッチハーバー(アラスカ)、カルカッタ(インド)およびオーストラリア数か所への攻撃を企画したが実施には至らなかった。米国内の家畜や農産物を汚染する案、風船爆弾で北米にペスト菌攻撃する案もあった。
  8. だが1944年になると日本の軍事優位性は悪化の一途で米軍はマリアナ諸島サイパンへ上陸する。同地には生物戦分遣隊があったが結局何もできず粉砕されてしまった。これとは別に日本潜水艦がトラック島に派遣され生物戦部隊20名と強力な病原菌を運ぶ途中で米潜水艦おそらくUSSソードフィッシュにより撃沈されている。硫黄島の激戦では731部隊はドイツ製グライダー二機で生物兵器を使おうとしたとの証言がある。しかし肝心のグライダー二機は中国の731部隊へ移動中に破損してしまう。
  9. 日本の敗色がいよいよ濃くなると石井中将はPX作戦を考案する。1944年12月のことで決死の特攻作戦として米本土攻撃を考えた。目標はサンディエゴで新型イ-400級潜水空母の完成が近づいており、第二次大戦中最大の潜水艦となるはずだった。全長122メートル排水量6,670トンで愛知M6A晴嵐水上攻撃機を3機搭載し格納庫内に主翼を折りたたんで搭載し、フロートは脱着式だった。
  10. 中国の人口稠密地を襲ったペスト菌攻撃と同様に感染ノミを収容した爆弾を投下すれば数万名のカリフォーニア住民の命を奪える。さらに決死隊が米本土に上陸しコレラやペスト菌を散布する計画だった。
  11. 石井中将の命名で暗号名夜桜作戦とされ1945年9月22日決行と決まった。終戦で同攻撃が実施されずに済んだとする解説がある一方で、生物兵器攻撃そのものが同年3月に中止されていたという説がある。梅津美次郎参謀長が作戦に効果ないことを認めたためだ。「最善の場合」でペストで数千名が死亡し米経済活動に混乱がある程度望めたが、それで日本の劣勢がばん回できるとは妄想にすぎなかったのである。だがある飛行教官の回想によれば攻撃決行のため7月に隊員が招集されたという。
  12. いずれにせよ日本海軍はイ-400級潜水艦を別の用途に投入する案だったようだ。最初はパナマ運河攻撃を狙い、晴嵐搭乗員は6月に運河の堰に見立てた目標で攻撃訓練を行っていた。別案がウルシー泊地に集まった米軍への奇襲攻撃で晴嵐を米軍標識に偽装する非合法手段まで考えた。イ-400とイ-401がウルシーに向け航行中に日本降伏の連絡が入り、艦載機は直ちに洋上で廃棄された。
  13. 敗戦後の石井は米軍と取引する。研究データすべてを提供する代わりに本人および部下に人体実験等での戦争犯罪免責を求め、ナチ・ドイツの科学者多数と同様の態度に出た。米生物兵器開発の責任者が研究成果を「かけがえのない貴重な内容」と評価したのは研究所見が米国では「人体実験に伴う罪の意識のため」得られない内容だったからだ。その後、石井がメリーランドに赴きフォート・ディートリックの米生物兵器開発に携わったとのうわさがある。
  14. ソ連は満州で捕らえた731部隊関係者12名にそこまで寛大ではなく、1949年にハバロフスク法廷で戦争犯罪人として有罪にした。被告人の自白内容は冷戦期の宣伝戦として西側が相手にしなかった。ソ連も731部隊で手に入る書類すべてを回収し、スヴェルドロヴスク(現エカテリングルグ)に生物兵器開発拠点を作った。炭そ菌開発に主力を置いた同施設では1979年に施設内汚染が発生し数十名が死亡している。
  15. 生物兵器を投入する作戦構想は無差別かつ予測不可能な疾病を生む可能性があり近視眼的と言われても仕方がない。だがバターンで実施していれば、勝利一歩手間にあった日本軍にも被害が生まれていたはずだ。民間人を標的とした大規模空襲が残虐かつ軍事的な効果はわずかしかなかった第二次大戦で、生物兵器は民間人殺戮には「有益な」選択だっただろう。だが生物兵器が感染症の大流行の引き金となれば、破滅的効果が双方に発生していたはずである。■
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.
Image: The only surviving Aichi M6A1 Seiran.​ Wikimedia Commons

2017年7月18日火曜日

米空軍OA-Xの比較検証は今夏実証、勝者は?



一番興味を惹かれる機体がスコーピオンですが、選定はA-29になるのではないでしょうか。ただしいきなり一機種に絞り込むようではないためスコーピオンにも目があると思いますが、皆さんはいかが考えますか。

 

New Air Force Light-Attack Plane May Soon See Combat Operations

米空軍のめざす新型軽攻撃機候補が即戦闘作戦に投入される可能性がある

Visit WarriorKris Osborn SCOUT WARRIOR


  1. 米空軍が進める軽攻撃機構想で実弾発射試験に投入する候補機種を実際の戦闘シナリオに送ると空軍上層部が説明している。
  2. OA-X軽攻撃機は低コスト、民生仕様での製造で戦闘投入可能な機材で航空優勢を確立した環境で各種ミッションを容易に実現する想定だ。F-15やF-22のような高性能高価格機材をISIS攻撃のような対地攻撃に投入せず貴重なミッション時間を節約できないか。これが構想の出発点だった。.
  3. 今夏に空軍は提案中四機種を実弾発射試験で比較検討する。
  4. 「実弾発射飛行テストでは広く使われている戦闘機攻撃機用兵装を試し、軽攻撃機としての性能を現行機種と比較する」と空軍広報官エミリー・グラボウスキ大尉がScout Warriorに説明している。
  5. 空軍が試すのはシエラ・ネヴァダのA-29スーパーツカーノ、ホーカー・ビーチクラフトAT-6、テキストロンのスコーピオンジェット、エアトラクターのAT-802Uだ。
  6. 評価試験では各種武装の投下、センサー機能、監視偵察機能と各種ミッションを戦闘状況を想定して行う。
  7. 各シナリオでは実際の戦闘状況を想定し近接航空支援、航空阻止、戦闘捜索救難、攻撃偵察がある。
  8. アーノルド・バンチ中将(調達担当空軍次官補付き軍事補佐官)はScout Warriorに対し一ないし二機種を戦闘投入する可能性があると紹介した。「良好な結果が得られれば戦闘実証したい。一部の機種を作戦戦闘シナリオに投入し限界を確認したい」
  9. 事業には相当の予算裏付けがあり、議会からの支援も手厚い。上院軍事委員会委員長ジョン・マケイン議員もそのひとりで空軍にはOA-X軽攻撃機300機の調達を期待するという。

A-29スーパーツカーノ
  1. 米国で訓練を受けたアフガニスタン軍パイロットがタリバンをA-29スーパーツカーノで攻撃している。A-29はターボプロップ機で20mmキャノンを胴体下に搭載し毎分650発発射できる。FN ハースタル製12.7mm機関銃各一を主翼下に搭載し、7.62mmディロン・アエロM134ミニガンは最高4基搭載すれば毎分3千発の発射が可能。
  2. また70mmロケット弾、AIM-9Lサイドワインダー、AGM-65マーヴェリックや精密誘導爆弾も搭載可能。レーザー誘導兵器も利用できる。
  3. スーパーツカーノは操縦性に優れた軽攻撃機で高温かつ厳しい艦橋でも運用可能だ。全長11.38メートルで翼幅11.14メートル、最大離陸重量は5.4トン、戦闘半径は300カイリで最高時速は367マイルだ。


テキストロン・スコーピオンジェット
  1. この自社開発機型の新型は昨年12月に飛行に成功している。それに先立ち同機は高性能精密攻撃兵器システムのロケット弾とAGM-114Fヘルファイヤーの発射に成功している。当初は地上からレーザー照準器で誘導され、その後機内のL-3WESCAM製MX-15Diセンサーで発射に成功したとテキストロンが発表している。
  2. テキストロン発表では改良型スコーピオンではエイビオニクスがガーミン製になるという。またG3000エイビオニクス一式で大型高精細度ディスプレイにタッチスクリーン式コントローラーを付け、ミッション実施能力が前席から制御可能となり、後席には航法機能を拡充させながら北重量を軽減化し性能を向上している。
  3. さらに機体には主翼に後退角4度を追加し、水平尾翼を改良し高速性能を向上し、降着装置を簡略化し、次世代ヘッヅアップディスプレイと実証済みのスロットルスティック制御を付けているとテキストロン資料からわかる。
ホーカー・ビーチクラフトAT-6軽攻撃機
  1. AT-6は多用途軽攻撃機である。ロッキード製A-10CミッションコンピュータとCMCエスターライン製のグラスコックピットにL3 Wecam製MX-H a15Diマルチセンサーを搭載し、カラーおよびIRセンサー、レーザー照準技術とレーザー距離計も搭載する。■

アラスカ沖でTHAADテストを電子監視したPLAN、津軽海峡も通過




中国が次々に導入している装備、新型艦には要注意ですね。ハードウェアの優劣よりもその意図が重要です。当面気が抜けない展開になりますね。
写真 JAPANESE MINISTRY OF DEFENSE 815G型 天狼星Tianlangxing

Chinese Spy Ship Was Snooping Off Alaska For the First Time During THAAD Test

中国スパイ艦がアラスカ沖でTHAADテストを監視していた

The Type 815's visit is a significant display of China's expanding naval capabilities.

815型は中国海軍力の伸長を示す大きな存在

 BY JOSEPH TREVITHICKJULY 17, 2017
PLAN

  1. 人民解放軍海軍(PLAN)が目に見張る拡張を続けるのは海外軍事力展開をめざす中国の願望の表れだ。アフリカに新設した基地に注目が集まっているが、海軍関連で別の進展があった。初めて米国近海に高性能スパイ艦が航行し、重要なミサイルテストを監視した。
  2. 2017年7月11日、PLANの高性能電子情報収集艦815型北極星級の一隻がアラスカ沖の国際公海に到着したとEpoch Timesが報じている。同日に米軍ミサイル防衛庁が最終段階航行高度防空(THAAD)弾道ミサイル防衛装備を模擬中距離弾道ミサイル(IRBM)を標的に発射するテストを行っている。
  3. 米北方軍並びに米加共同の北米防空軍(NORAD)の広報官マイケル・クチャレックがEpoch Timesに815型艦は同群の分担範囲内に侵入したと述べている。これは2015年に初めてPLAN部隊がベーリング海経由でアラスカに接近したのに次ぎ二回目の米国沿岸接近事例になった。今回のスパイ艦の具体的な行動は不明だが同艦は国際公海にとどまっていたとクチャレックは述べている。
  4. ただし同艦がTHAADテストを監視していた可能性は高い。北極星級情報艦にミサイル追尾用のレーダーが搭載されているか不明だが、アラスカ沖で電子信号を吸い取っていたのは確実だ。THAAD部隊の通信機器やデータリンクも含まれていたはずで、さらに広義の米ミサイル防衛システムにも探りを入れていたはずだ。XバンドのAN/TPY-2レーダーから出る電子信号は中国軍の大きな関心事項であることは間違いない。
  5. このことから中国側分析官は個別米装備の特徴を理解するのみならず米ミサイル防衛装備の理解にもつながり、迎撃ミサイルの弱点や限界も解明するだろう。特に妨害対策や電子戦対抗手段がTHAAD以外の米ミサイル防衛全体で講じられる。またサイバーセキュリティの穴も中国が把握するかもしれない。
  6. 北極星級(東調級)は新鋭艦ではない。PLANで一号艦北極星Beijixingの就航は1999年で大型パラボラアンテナを搭載し外観は米海軍の冷戦時スパイ艦USNSヴァンデンバーグやソ連海軍のコスモナット・ユーリ・ガガーリンに似ていた。
  7. ほぼ10年にわたり同型は北極星一隻だけだったが2010年にPLANは5隻を導入した。うち四隻は改良型815G型だったが、2017年に就役した海王星Kaiyangxingは815A型という別の型になった。今回アラスカ付近に出没した艦の種別は不明だ。
  8. 815型の詳細は極秘事項だが海王星就役時にPLANから重要情報が紹介されている。815A型の排水量は6千トンで最高速度23ノットと共産党公式新聞China Dailyが伝えていた。「海王星は全天候下で常時偵察活動を多数対象に同時に行う能力がある。PLANは情報収集艦の詳細を明らかにしてこなかった」
PLAN
PLAN報道資料から海王星のレドームがわかる

  1. 海王星では不明の点が多く、とくに姉妹艦との違いがわからないが、艦体と形状は米海軍の退役ずみUSNSオブザベーションアイランドに類似し、排水量はUSNSハワード・O・ローレンゼンより小さい。ただしローレンゼンは「ミサイル飛翔距離測定艦」とされ外国のミサイル実験や米テスト時の情報収集を強力な電子スキャンアレイ型レーダーで行うものの多用途電子情報集機能はない。同艦に匹敵する中国艦は远望Yuan Wang級だ。815型はロシアのバルザムBalzam級やノルウェーのマルヤッタMarjataに近い存在のようだ。
USN
USNSハワード・O・ローレンゼン

  1. 815型の性能が各艦に近いと仮定すると2017年7月にアラスカ沖合に姿を現したのは重要な進展と言えるが、驚くべきことではない。同艦はTHAADミサイルテスト関連の重要な電子情報を広範に吸い上げることが可能だ。中国は韓国へのTHAAD配備に反対の姿勢を示しており、AN/TPY-2の長距離探査能力が中国領空も範囲に収め中国の抑止能力が脅かされると主張する。
GADFIUM/WIKICOMMONS
远望Yuan Wang級
  1. 815型がアラスカ近辺で集める情報により新兵器設計やTHAADへの対抗策が生まれる可能性がある。また中国がつかんだ情報が北朝鮮情報筋に流れる可能性もある。
  2. 815型情報収集艦が米沿岸近くに出没した意味は大きい。世界規模で海上での電子情報収集はこれまで米ロ両国の独壇場だった。ロシア海軍はバルザム級を派遣し大規模軍事演習時に情報収集をしており、リムパック演習(2016年)でも出没が見つかっている。2017年2月にはより小型のヴィシュニヤVishnya級スパイ艦が米本土東海岸沖合に現れている。2015年には815型北極星もリムパック演習を監視していたがPLANは同演習に正式に参加していた。
  3. 中国艦の性能が米ロより劣っていても、6隻もあることで中国は多様な情報収集ができる。2017年7月2日に815G型艦天浪星が津軽海峡を通航している。
  4. 同艦の日本領海通航で日本政府は厳しい対応に迫られたが、その時点で同艦が電子情報を収集していたか不明だ。中国は国際法で航行は認められていると主張。
  5. 815型のアラスカ沖到着がTHAADテスト前だったのとは別にこれからもミサイル発射は中国が沖合から監視することを米軍は覚悟する必要がありそうだ。■