2017年8月7日月曜日

北朝鮮が核兵器を投入する四つのシナリオ


核シリーズの今回は現実問題です。北朝鮮の存在を抹消したいと考えるイデオロギー対応ではなく、現実を見て金正恩の欲しいアメを与えればよいという趣旨ですが、これでは永遠に日本は北朝鮮の核兵器を意識して生きていくことになり、受け入れられないと考える方も多いかもしれませんね。それがイデオロギー教条的態度です。どちらにせよ今後の朝鮮半島情勢からは目が離せませんね。

North Korean leader Kim Jong Un meets scientists and technicians in the field of researches into nuclear weapons in this undated photo released by North Korea's Korean Central News Agency (KCNA) in Pyongyang March 9, 2016. REUTERS/KCNA.

4 Frightening Ways North Korea's Nuclear Weapons May Actually Be Used 北朝鮮が核兵器使用に向かう4つの恐ろしい可能性


August 5, 2017

  1. 金正恩がまた動いている。ICBMを再度発射し、米国を挑発する言葉の攻撃を加えた。にもかかわらず米国および同盟国は今のところ北朝鮮の核攻撃を受けていない。金正恩は冷静な演技者であり、すべてはひとつの目的すなわち自らの生き残りのためだ。米国あるいは同盟国を核攻撃すれば報復核攻撃を受けるか政権転覆につながる侵攻を受けるのは必至だ。National Interestでロバート・ケリーが言うように「平壌は攻撃に踏み切っても得られるものがないのを承知している」のだ。
  2. だからといって世界が北朝鮮の核攻撃から安全であることにはならない。同国が核兵器投入に踏み切るシナリオ4つが想定できる。外部侵攻、国内騒乱、原子力事故、テロリストによる入手だ。
シナリオ1 外部侵攻
  1. 金正恩が核兵器使用をためらうのは高い代償のわりに得られる結果が少ないためだが、トランプ政権が軍事行動で反応すれば情勢は一気に変わる。金正恩は権力基盤とともに自身の生命が危険になったと判断し核兵器投入を決断する。攻撃軍に対する最後の手段として使い、軍装備を壊滅させるとともに政治的意思の減衰を期待するか、敵国本土への報復として使うだろう。
  2. だが金正恩が果たしてこの通りに行動するか測りかねる。近年の介入事例ではサダム・フセインを放逐した米国、ムアマ・カダフィを退位させたNATOがあるがともに攻撃対象の政権は大量破壊兵器を数年前に廃棄していたからだ。もしそのまま保有して自らの最後が来たと知れば核兵器を使っていただろうか。答えはわからない。
  3. そこで第二次大戦末期を見るとアドルフ・ヒトラーが敵に圧倒された場合に占領地多数の自軍に破壊命令を(通常兵器でだが)出している。そのうち二例が有名だ。パリを「がれきの山に」変える、ワルシャワを「まっ平に」する命令を出しいる。ヒトラーは連合軍の進軍を遅らせる効果があると考えたのだ。またドイツが確保できないのなら地球上から消してしまえばよいと考えた。破壊を命じても連合軍の報復は受けないと考えた。
  4. パリの現地司令官はナチ党員でなくヒトラーの精神状態を疑っていたので命令を無視した。ワルシャワではイデオロギーに忠実なSS高官が司令官で命令を執行し、ワルシャワ市街を破壊し150千名から180千名が死亡した。北朝鮮では軍部隊が政治的に洗脳されており、政権に服従しているので金正恩の命令を受けた指揮官はワルシャワと同じ行動を採るだろう。
シナリオ2 国内蜂起
  1. 北朝鮮国内が反乱状態となると金正恩の理性も消える。極度の治安締め付けで国内蜂起の発生はきわめて考えにくいが一度起これば金正恩も最悪の可能性と直面せざるを得なくなる。深刻な危機であり核兵器投入もやむなしと考えるかもしれない。対象は反抗勢力の国民あるいは外部で反乱を支援支持する対外勢力になるだろう。
  2. 国内騒乱の鎮圧に核兵器を使った国はないが、他の大量破壊兵器なら使用実績がある。サダム・フセインは1988年と1991年の二回にわたり自分の統治を脅かす反乱勢力に化学兵器を投下している。もっと最近ではシリア内戦でバシャー・アルアサドが数回にわたり反乱勢力に化学兵器を使っている。金正恩政権はさらに狂信的であり自国民あるいは国外の支援勢力への核兵器投入をためらわないかもしれない。権力基盤が挑戦を受ければこう決断してもおかしくないのだ。
シナリオ3 原子力事故.
  1. 逆に北朝鮮が意図しない形で核兵器を発射・爆発させる場合が想定される。同国の核開発の歴史は浅く他の核運用国との交流を避けてきたため原子力安全措置が危険なほど未発達である可能性がある。このため核ミサイルを発射し核弾頭がハードウェアあるいはソフトウェアの不具合で勝手に爆発する可能性がある。事態を悪くしているのは北朝鮮が核兵器、弾道ミサイルを増産しようと非常に急いでいることだ。国家が核武装をどんな犠牲を払っても進める姿勢の場合、核・ミサイル双方で安全措置に目をつむる可能性がある。開発ペースを落として安全措置に留意するようにならないかぎり、弾頭やミサイルの事故は発生して当然だろう。.
  2. 別の可能性は北朝鮮の早期警戒システムが無害な飛行物体を巡航ミサイルと誤認識し核兵器による対応を選択することだ。核大国もこのような誤謬を経験し、現場の判断、勇気、個々人の対応で乗り切ってきた。例として1983年にソ連は飛来するICBMと思われるもの5発を探知、緊張下で現場指揮官は探知内容は間違いと判断した。なぜなら米国による攻撃なら5発だけのはずがないからだとした。その判断は正しかったのだが、そこまで考えずにイデオロギーに忠実な指揮官だったら、ミサイル攻撃が迫っていると報告し、報復攻撃を進言していたかもしれない。北朝鮮の専制主義的傾向を考えると早期警戒システムの画面をそのまま解釈する可能性が高く、ソ連指揮官のような分析判断力は期待できない。そうなると北朝鮮が勝手に攻撃と判断し核ミサイル発射に移る可能性がある。このリスクは北朝鮮政権が偏執狂的に外部世界を見ることで高まり、偶発的に核兵器を起動する可能性は大いにありうる。
シナリオ4 テロリストが入手したら
  1. 最後が北朝鮮の核兵器をテロ集団が入手する場合だ。金正恩政権は通常兵器でブラックマーケットの大口売り手だ。ミサイル部品や核技術も同様で核爆弾完成品でも高値がつけば平気で売るだろう。そこにテロ集団が入ってくる。北朝鮮が経済不振や農作物不作に直面すれば売却をためらわないのではないか。核セキュリティ状況をまとめた2016年版報告では核兵器盗難防止など北朝鮮体制を100点満点で38点としている。米軍が北朝鮮核施設を空爆すれば逆効果になる可能性がある。北朝鮮の核貯蔵施設の保安体制も破壊してしまい、核装置が盗難紛失しやすくなるからだ。
  2. 北朝鮮核兵器をテロ集団が入手すれば事態は深刻だ。テロ集団に理性は期待できず国家より行動予測がむずかしい。またテロ集団は行動にも制約が少ない。その例がオウム真理教で最終決戦の日が近いと信じ込み大量破壊兵器を敵に投入した。このカルト集団は世界の終末が近づいており、化学兵器・生物兵器を使用したが、核兵器の取得もめざし、入手していれば使用をためらわなかったはずだ。テロ集団が北朝鮮から核兵器を入手すれば使用をためらうとは思えない。
言外の意味
  1. 米国にとって冷酷な事実は北朝鮮に核兵器があり、各シナリオで投入が想定されることだ。
  2. 受け入れがたいと思うが米国の最良の選択は北朝鮮を核保有国と認め上記シナリオが現実にならないよう同国にはたらきかけることだ。その過程で金正恩に対して米国が北朝鮮を侵攻せず、国内外の反抗勢力を支援することもないと保証することになろう。また中国、ロシアを介して同国と共同作業することになるかもしれないが核兵器の安全体制を引き上げる効果が高まればよい。また合法的チャンネルで同国経済の振興に手を貸せば北朝鮮が急に経済不振や自然災害にあって核兵器をテロ集団に売却するリスクも減るはずだ。
  3. 国務長官レックス・ティラーソンが金正恩に対して出した最近の声明では「米国は政権転覆を求めず、政権崩壊を求めず、半島の再統一を急いで求めず、38度線より北に兵力を送る言い訳を求めず、...米国は貴国の敵ではなく、貴国の脅威でもない」としており、正しい方向に向かう兆候が感じられる。北朝鮮を核保有国ではないと否定する代わりに米国は同国をより安定し安全かつ保安体制の取れた核運用国にするのを助ければ、同国の核兵器の脅威度が低くなるはずだ。■
Francis Grice is an assistant professor of political science and international studies at McDaniel College in Maryland. He has a Ph.D. in defence studies from King’s College London (2014) and recently co-edited the Palgrave Handbook of Global Counterterrorism Policy and the Future of U.S. Warfare. He specializes in Asian Security Studies and International Relations. More of his work can be found here.
Image: North Korean leader Kim Jong Un meets scientists and technicians in the field of researches into nuclear weapons in this undated photo released by North Korea's Korean Central News Agency (KCNA) in Pyongyang March 9, 2016. REUTERS/KCNA.

2017年8月6日日曜日

ナチドイツが原爆開発できなかった理由


原爆特集です。イデオロギーがからむと科学の進歩には逆効果になる証明でしょうか。一方で戦後に罪に問われないよう自己保身できれいごとを並べる科学者の姿は情けないですね。(731部隊の医官で戦後日本の医学界にのし上がった人たちも同じだったのでしょう)あらためて信念を貫き通すことのむずかしさを感じました。

The Scariest History What-If Ever: Nazi Germany with a Nuclear Weapon 最も恐ろしい架空史、ナチドイツが核兵器を手に入れていたらどうなったか



August 4, 2017

  1. 第二次大戦の架空戦史で最大の悪夢はナチドイツが原子兵器を入手した想定だ。1945年春の段階で米国の核開発が最終段階に入っていたがナチの原子力開発は南部ドイツの洞窟内に作られた実験原子炉がひとつあるだけでしかも運用に携わる科学者に原子兵器製造の知識は不足していた。
  2. 仮にドイツ科学陣に十分な知識があったとしても兵器製造に必要な放射性物質がなかった。第二次大戦の驚くべき事実はナチが原爆開発で道を誤ったことだ。
  3. 原子力エネルギーが秘めた力はアインシュタインの相対性理論E = MC2から導かれた。方程式の意味を簡単に解説するとあらゆる物質はエネルギーであり、物質内のエネルギーを求めるには質量に光速の自乗をかければよい。光速は毎秒186千マイルとわかっており積算の結果は恐ろしく規模になる。
  4. 20世紀初頭の物理学ではいかなる物質(たとえばレンガ)でも内部のの原子力エネルギーを解放すれば最終兵器ができることは理解されていた。幸いにもレンガ含むほとんどの物質内の原子は極めて安定しており、連鎖反応をひきおこしそうになかった。だが1930年代に入ると不安定物質のウラニウムを使った実験で核エネルギーによる恐るべき威力を持った装置の可能性が見えてていた。

「ユダヤ物理学」を排斥したナチドイツ

  1. 理論の世界では1930年代のドイツは原子力研究で世界に抜きんでいた。当時の核物理学研究者のトップは多くがドイツ人やオーストリア人だったからだ。1938年に原子核を初めて分割したのはドイツのオットー・ハーンだった。後年ハーンは功績を自慢するが、当時は自分で何をしたのかわかっていなかった。
  2. ハーンの発見を認めたのはリーズ・マイトナーでオーストリアのユダヤ人科学者だった。マイトナーはウラニウムに中性子をぶつけ、ウラニウムの原子核を分割させたことで巨大なエネルギーが生まれたと理解できた。信じられない話だが、ナチ政策によりハーンはじめ「ドイツ人」科学者はマイトナーをベルリン近郊のカイセル・ウィルヘルム化学研究所から放逐しスウェーデンに亡命させた。マイトナーは聡明な科学者であったが、社会的にも政治的にも疎くハーンをそのまま支えたが、ハーンは彼女をユダヤ人として政府方針と同様に処遇していた。
  3. マイトナーはともかく、ユダヤ系科学者はそこまで運に恵まれなかった。1930年代末になるとドイツ、オーストリアのユダヤ系か物理学者はほとんどが英米等に国外脱出している。中でもアインシュタインが有名だが偉大な科学者は他にも多数いる。
  4. ナチ科学者がその後を引き継いでユダヤ人が去った研究機関でで高位職を貪欲に独占していった。去ったのは他に外国人や反ナチ学者が多数いた。新しく登場した中には二流の教員や科学者もおり、人種思想的に劣等と見ていた者が残した成功例に嫉妬していた。物理法則やアインシュタインの相対性理論を見下す者まであらわれた。
  5. こうした科学者やナチ高官はアインシュタインの相対性理論やその後の成果を「ユダヤ物理学」と呼んでいた。唯一有効な物理学は「ドイツ」の「国民」物理学のみであると主張し、古典的実験物理学の域を出ずアイシンシュタインが解明した現実を無視しがちだった。とはいえドイツ物理学者の全員が「ユダヤ物理学」を軽蔑したわけではなく、ナチ高官の中にも原子力超兵器の可能性を評価する向きもあらわれた。

ドイツ最高の物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルグ

  1. 1930年代のドイツで最も有名な物理学者はヴェルナー・ハイゼンベルグだった。(アインシュタインはニュ―ジャージーに移っていた)ハイゼンベルグは国際的にも量子論や本人名を付けた不確定性原理で知られる優秀な理論物理学者であり、数学者でもあった。ドイツ最年少で正式な教授職に就任した。
  2. ハイゼンベルグは1932年のノーベル物理学賞を不確定性原理で受賞したが先行員会はハイゼンベルグのカリスマ性の前に他の優秀な物理学者を冷遇したのだった。37年にはライプチヒ大の先任教授職に就く。
  3. 本人はナチ信奉者ではなかったが、ドイツ人として愛国精神に富んだ人物だった。当時のドイツ科学者や兵士同様に本人も政治性がなく、政府へ忠実であろうとした。ドイツの原爆開発の中心人物になったのは当然のことだった。
  4. ところが1937年7月にハーンが原子核分割に成功する数か月前にハイゼンベルグはSS機関紙の攻撃を受ける。非難を扇動した著者はヨハネス・スタルク、熱狂的反ユダヤ主義でハイゼンベルグの成功とユダヤ人物理学者とのつながりを不快に思っていた。ハイゼンベルグの研究分野ではユダヤ人学者との交流は当然だった。記事はハイゼンベルグを「白いユダヤ人」と非難し、アインシュタイン相対性理論を広め、真正ドイツ人の活躍の場を奪い、ナチ党を軽視しようとしたと述べた。
  5. このような個人攻撃はナチドイツで日常茶飯事で、強制収容所送り、さらにもっと深刻な結果も生まれた。ハイゼンベルグは親友の助けを求め、ナチ上層部にさえ頼り汚名返上を狙った。ハイゼンベルグの母親がハインリッヒ・ヒムラーの父親の知己で書簡をSS親衛隊長官に手渡した。SSによる徹底的調査を経てヒムラー自らが本人の容疑を晴らした。
  6. ヒムラーは本人の研究の継続を許したが、相対性理論他ユダヤ人科学者の研究成果を用いる際は事前申請するとの条件付きだった。ハイゼンベルグもこの条件を受け入れ、真剣にドイツ原爆開発にとりくんだ。

重水炉という選択

  1. ドイツは国家プロジェクトとして原子力研究を連合国より数年先行して開始したがその活動が気付かれないはずはなかった。ドイツ帝国を逃れた物理学者が多数おり、連合国の各国政府もドイツの意図を急速に理解し始めた。米国での研究を加速したのがアインシュタインでフランクリン・D・ロウズベルト大統領へ書簡を送りドイツが核兵器開発に成功した場合の懸念を伝えた。
  2. 1941年までにドイツは実験原子炉事業を二型式で運用していたが、成功は限定的だった。ハイゼンベルグのチームはドイツ全体の研究を危険にした工学上の選択をしている。
  3. 反応炉はウラニウム238の連鎖反応を誘導して作動する。反応をはじめるため中性子を放射性アイソトープの周りに流すが、黒鉛や重水で減速させる必要がある。ドイツは重水を選択したが、自然界にほとんど存在せず、製造も困難な物質だ。
  4. 1940年にドイツ軍はノルウェーのベルモック重水工場を占拠した。英軍情報部はドイツ反応炉の基本情報をつかんでおり、ノルウェーの重水供給が脆弱な要素だと理解した。1942年なかごろまでにノルウェー工場は年換算10千ポンドの重水を生産しハイゼンベルグのライプチヒ、ベルリン両拠点に供給していた。英軍落下傘部隊による第一回強襲作戦はグライダーが離れた地点で墜落し悲惨な結果に終わった。
  5. 英軍は再度工場攻撃をやや慎重に実施した。ノルウェー人特殊部隊が工場内に侵入し水タンクを吹き飛ばすと、英潜水艦が海上輸送を止めた。重水の喪失でドイツ研究活動は遅れたが取りやめにはならなかった。

U-235濃縮への挑戦

  1. 重水補給路はその後も攻撃対象となったが1941年までにドイツ科学陣は原子爆弾製造方法で米国の研究とほぼ同じ結論を得ていた。(1)濃縮ウラニウム分裂装置、(2)プルトニウム分裂装置、または(3)「反応炉」爆弾のいずれかだ。米国が原子炉製造に成功し、ウラニウム爆弾・プルトニウム爆弾双方を大戦終結までに完成させたのに対し、ドイツ科学陣は作動可能な原子兵器製造に必要な具体的構想を完成できなかった。
  2. 広島上空で炸裂した米製原爆はウラニウム分裂装置だった。この爆弾製造のカギは十分な量の高度濃縮ウラニウム235の確保にあり、自然界に豊富にあるウラニウム238内に微量があるだけだ。U-238からU-235を抽出するには化学製法ではだめとわかり時間がかかり高価なガス拡散工程が必要だ。
  3. ここでナチの人種政策が原爆製造で大きな障害になった。ガス拡散技術ではグルタフ・ヘルツが最先端だったが本人の叔父がユダヤ人だった。そのためグスタフはベルリン工科大物理学部長の地位を追われ、後を引き継いだドイツ人科学者はヘルツの業績に関心を示さず、研究を続ける能力もなかった。このためドイツはウラニウム・アイソトープ分離技術を実用化できなかった。
  4. 両陣営が原爆製造にU-235がどれだけ必要なのかという疑問に直面した。この問題はとくにウラニウム分離の技術的困難さのため重要となった。ハイゼンベルグ率いるドイツ側はU-235分裂装置で決定的かつ深刻な理論的間違いを犯した。実際より多くのU-235がないと実用に耐える兵器はできないと考えてしまった。
  5. この間違いがその後に続く論議を生んだ。ハイゼンベルグはU-235の臨界量をおおまかに計算しようとしていたようだ。臨界量は連鎖反応をひきおこすものだ。本人たちはまちがって臨界量までにはU-235が1トン必要と結論付けてしまう。
  6. 実際には米科学陣が求めたように臨界量はU-235が100ポンド未満で十分だった。ドイツ側は濃縮U-235の1トン生産は事実上不可能とわかっていた。

シュペーアの支持を取り損なう

  1. ドイツがマンハッタンプロジェクトに相当する開発を開始するかはハイゼンベルグやドイツ科学者ではなく帝国の軍需相アルベルト・シュペーアの責任だった。シュペーアは科学陣が終戦までに強力な兵器を開発できるかを知りたかった。ハイゼンベルグは1942年にシュペーアに会見し、原子力の可能性を軍やSS関係者にも説明している。
  2. 会談でシュペーアがハイゼンベルグに何を話したかは不明だが、あきらかにハイゼンベルグはウラニウム原料の原子力兵器実現の短期的可能性さらに実用的反応炉機関を搭載した潜水艦、水上艦の実現可能性をシュペーアに納得させていない。ハイゼンベルグは研究開発予算の大幅増を要望していない。
  3. シュペーアはドイツ原子科学者の戦争への貢献度は皆無と結論付け、かわりに有望なロケットエンジン、ジェット推進を重視すると決めた。ドイツ科学陣はU-235を十分に抽出して爆弾製造できるとは信じておらず、シュペーアにドイツ産業界の全力をもってアイソトープ分離事業にあたらせるよう求めていない。だが米国ではテネシー州に巨大なオークリッジ施設を建築しこの作業を行ったのだ。

プルトニウム爆弾に向かう

  1. ただしハイゼンベルグに全く希望がなくなったわけではなかった。ドイツ科学陣は実用的な核反応炉の実現に向かっていた。ハイゼンベルグは仲間と反応炉自体を「汚い爆弾」として使う構想を練っていた。炉ではU-238を使い、真の意味の原子爆発につながる急速な連鎖反応は無理だが、臨界段階まで作動させて通常爆発物で強力な放射線を生むことを構想ししていた。その結果大量の放射能汚染が発生する。1トンのウラニウムで作る原爆と同様にこの構想も非現実的だった。そもそも炉爆弾をどうやって運搬するのか。
  2. ドイツの最後の望みは反応炉で相当量のプルトニウムを生産し分裂爆弾の材料とすることだった。長崎で投下されたのがプルトニウム爆弾だ。ドイツは高放射性のプルトニウムが炉内でU-238の「燃焼」の副産物として生まれると理解していた。十分な量があればプルトニウムはU-235と同等あるいは以上に原子爆弾の原料となる。ハイゼンベルグたちはシュペーアやその他ナチ高官との会談でこの点を指摘していた。
  3. ハイゼンベルグのシュペーア等との会談で明らかなようにドイツの反応炉研究が学術研究の域を出ていないのは驚くべきことだ。ドイツも実験用炉数点を作ったが、各チームばらばらで成果を共有せずドイツは炉内でウラニウム堆積がどんな形状になるかを理解するのに連合国より長期を要してしまった。ハイゼンベルグ以下研究陣は原子力研究を他の学術研究で空いた時間で進め、占領国へプロパガンダ目的で訪問したり、論文執筆にいそしんでいた。
  4. ドイツ国内の序列構造のため産業界を原爆製造に動員できなかった。ドイツにはロスアラモスのような科学界重鎮を集めた施設はなく、テネシーの巨大分離工場に匹敵する拠点もなかった。ドイツは不確かな重水供給に頼らざるを得ず、英米の空襲で重要な産業拠点、交通施設、研究施設が次々に破壊されていた。
  5. 1945年までにドイツ研究チームはなんとか研究用反応炉をドイツ内政部のスヴァビアン地方の洞窟内に完成させソ連赤軍を避けていたが、この地は偶然とはいえ若きアインシュタインが青春時代を送った場所だった。ハイゼンベルグの努力にもかかわらずドイツは連鎖反応に成功しないまま米軍が到着した。
  6. 米軍と行動を共にした連合国側の科学者がドイツの成果に目を奪われない状況にドイツ科学陣は驚くことになる。ドイツ製反応炉は好奇心をそそるだけの存在だった。米側の懸念はウラニウム残滓、重水だけであとはドイツ物理学者をロシアの手に渡さないことだった。

ナチ原爆開発はどこでつまづいたのか

  1. 終戦でハイゼンベルグたちは自分たちのプロジェクトが失敗したのはハイゼンベルグが意図的に妨害したためとほのめかした。ハイゼンベルグはU-235の臨界量を1942年時点で理解していたが、わざとシュペーアに誤った情報を与え進捗に不満を感じさせたと説明している。ハイゼンベルグは師と仰ぐデンマークのニルス・ボーアとコペンハーゲンで1941年に会見したが大きな関心を呼んだが、ハイゼンベルグがナチ原爆の可能性を知り道義的に悩んだと描く戯曲がある。
  2. ドイツの失敗の理由は実は戦後に科学者たちが告白した道義上の問題と無関係だとわかる。手に入る証拠のほとんどからドイツ物理学者は条件さえあえば原爆を喜んで作っていたことがわかる。実際に製造できなかったのには明白な理由がある。
  3. 一番はドイツが深刻な頭脳流出に苦しんだためで、原因はナチの反ユダヤ主義にある。ドイツやヨーロッパの優秀な科学者が外国に逃げ、多くは英米でナチ打倒に才能を活用した。ハイゼンベルグなど残された科学者も優秀ではあったがマンハッタンプロジェクトに終結した頭脳力の比ではなかった。
  4. 連合国側の組織力もドイツを上回るものだった。ドイツにレズリー・グローブス将軍やロバート・オッペンハイマーに匹敵する人物はいない。ドイツの事業は各省庁のたらいまわしで結局終戦までこのままだった。科学者も調整ないまま無駄な努力を余儀なくされた。
  5. ドイツは米側の進展具合を戦争中一貫して知らずに幸せだった。だがこれはドイツ側の自己満足にすぎない。いかにも傲慢にドイツは自国科学水準がアメリカの後塵を拝するとは信じようとしなかったのだ。連合軍側の情報管制が有効であったことも一因だ。

ナチ科学者の犯した間違い

  1. ヨーロッパから科学者が続々と脱出する中で1943年に加わったボーアがドイツでの進捗状況をかなり詳しく(同時に遅れた状況も)連合軍情報部に供述した。戦後に捕獲されたドイツ科学者たちは日本への原爆攻撃を知らされた後の会話をこっそり盗聴されている。テープでは彼らが驚き、困惑しながら言い訳を言う様子が残っている。
  2. ハイゼンベルグと仲間たちは戦時中に根本的概念で間違いを犯しており、原爆製造は困難かつ非現実的と思いこんでしまった。間違いにはU-235分裂に必要な臨界量算出から反応炉内でU-238を形成する最良の条件の把握、アイソトープの分離まで多々ある。こういった問題をすべて比較的容易に解決したのが連合国側の科学陣であった。
  3. 最後にドイツに文化的偏見があったことは政権にとどまらず、科学者層のほとんど、政府官僚、軍人まで共通でドイツは本格的な開発に入れず、一方で「真正の」ドイツ人科学者はロケットやジェット開発に従事した。その成果のジェット機やロケットは確かに連合国の技術水準を上回っていたが、軍事的に優柔不断な意思決定が見え無駄も多かった。
  4. 反面、もしドイツが終戦までに原子力兵器数発を完成していれば、V-1やV-2数千発を英国に向け発射する代わりに歴史は明らかに変わっていたはずだ。このもう一つの歴史が現実にならなかったことは幸運以外の何物でもない。■
This article by Jonathan F. Keiler originally appeared on Warfare History Network.
Image: Wikimedia Commons

低出力核兵器による新しい抑止力効果に期待する米軍



8月になると核兵器を巡る話題が増える日本ですが、戦争と天災を同様に受け止める日本人の感性では現実世界の核兵器の意義は理解不能です。ここでいうミニ核兵器も日本の良識では非人道的かつエスカレーションにつながる手段としてほぼ全員が排斥するのではないでしょうか。しかし相手側はそんな情緒的な対応は皆無で力による平和、自分たちの正当化を進めてきます。70年間以上も大戦が発生しなかったのも核兵器の抑止効果であり、抑止手段も多様化していいのではないでしょうか。広島、長崎の原爆投下で戦争終結が実現したという主張に日本は反発しますが、ここは現実を見直した方がよくないですか。

A depiction of what a 20 Kiloton bomb would do to Washington, DC
  1. 統合参謀本部副議長によれば低核出力兵器が将来の抑止力に必要だという。
  2. 将来の核兵器は大型で大破壊力よりも小型戦術用でも脅威となる方向に向かう。米空軍は「核出力調整型」爆弾の研究を始めており、ダイヤルひとつで近隣地区からもっと広範囲まで爆発範囲を変える方法を模索している。
  3. 空軍には低核出力に調整できる落下式爆弾がすでにあり、20キロトン未満の爆発効果を得られる。ワシントンDCの中心地に落下すればジョージタウンやフォッギーボトムに直撃効果は生まれない。だが300キロトン弾頭を搭載したミニットマンIIIミサイルだとワシントン中心部全体が壊滅するのみならずヴァージニア、メリーランド両州で第三種火傷の被害者が生まれる。
  4. 冷戦下のワシントン、とくにモスクワは核爆弾は大きければ良いと考えてきた。核出力が大きければそれだけ破壊力が増えるからだ。この考えでソ連は史上最強の爆弾、ツァーボムバ(100メガトン)を実際に製造しており、ワシントンDCに命中すればボルティモアまで全滅できた。
  5. だが核抑止力の将来は小型核兵器にあり、実際に使用することもありうると空軍大将ポール・セルバ統合参謀本部副議長がワシントンのミッチェル研究所主催イベントで講演した。相互破壊保証方式ではソ連相手の場合のような抑止効果は生まれないとセルバ大将は述べ、世界最後の日とまでいかずとも無差別大量殺戮も発生させなずに核攻撃を実施する能力が必要と主張した。
  6. 「低核出力攻撃を受ければこちらに対応できる兵器は核兵器しかない。通常兵器で対抗したら抑止効果は低くなり、『そちらが低出力兵器を使えばこちらも対抗するぞ』との脅かしが空虚に聞こえる。選択肢が大統領が受け入れられないような無差別大量殺戮を生む高核出力兵器しかなかったら、核攻撃に対応するオプションが提示できなくなる」
  7. 米国は核兵器の全般的近代化に取り組んでいるところで、新型ICBMの性能要求をとりまとめている。昨年12月に国防科学委員会がペンタゴンに対し低核出力、出力変更型再突入部を将来のICBMに採用すべきと提言している。セルバ大将は空軍の結論はまだ出ていないと当日述べた。
  8. だが議会内批判派はこのような兵器が出現すれば安全保障上マイナス効果しか生まれないと主張する。
  9. 「低核出力兵器の研究提案は実際の製造に向けた第一歩に過ぎない」とダイアン・ファインスタイン上院議員(民、カリフォーニア)が2月にRoll Callに語っている。「以前もこのような無分別な提案に反対してきましたが今回も使える手段はすべて使って反対します」
  10. 「限定核戦争というものは存在しないし、ペンタゴン諮問機関がそんな提言をするのは困ったこと」という同議員の主張は戦術核兵器全般への猜疑心と聞こえる。
  11. だが戦闘で超小型核兵器の利用を検討するのは米国だけではない。ロシアは今も超大型核威力兵器を保有しているが、同時に小型「戦術」兵器を演習で使ったと自慢している。また核を先制使用しないと公言していない。NATOが東ウクライナの親ロシア勢力を攻撃すれば低核出力核兵器の投入をロシア国会が脅かしてきたこともあった。
  12. .北朝鮮は水素爆弾のテストに成功したと昨年発表し、15千から50千トンの間の威力としたが、地下実験の解析では10キロトン未満で通常の核分裂爆弾と大差ないとわかっている。
  13. アメリカ科学者連盟の核情報プロジェクトを率いるハンス・クリステンセンは「回答が出ていない疑問が多々ある。どうして低出力弾頭が弾道ミサイルに必要なのか。既存の弾頭で不可能な攻撃とは何か。核爆発力が大きすぎるから大統領が自粛するか、相手方が有利な状況でこちらに低出力兵器がないと抑止効果が下がるのか。また既存装備でリスクを低く抑えられない理由は何か。疑問はたくさんありますが、答えは皆無に近い」と述べる。■

2017年8月5日土曜日

速報 韓国がTHAAD完全受け入れに方針転換



文在寅大統領は大統領選挙の公約が次々に実現不可能であると悟らざるを得ないようですね。政策の選択肢が実際には狭いとはそれだけ現実路線にならざるを得ないことになりますが、それ自体は良いことでしょう。面子をつぶされた中国はさらに韓国いじめをしてくるはずです。ここで日本がどんな態度をとるか注目されますね。

South Korea Will Allow Deployment of Full THAAD Battery

韓国がTHAAD完全配備を認める方向へ


The first elements of the Terminal High Altitude Area Defense, or THAAD, system arrived in the Republic of Korea on March 6, 2017. (U.S. Defense Department photo)高高度広域防衛(THAAD)装備の第一陣は2017年3月6日に韓国ね到着した。(U.S. Defense Department photo)
 POSTED BY: RICHARD SISK AUGUST 5, 2017

  1. 韓国が方針を変えTHAADミサイル防衛装備の完全導入で北朝鮮の脅威に対応するとペンタゴンが8月4日に発表した。
  2. 文在寅大統領はTHAAD先行二個隊導入後に残る装備の展開を止めていた。
  3. 文大統領は残る装備の展開は環境評価後に決定するとしていたが、韓国政府関係者はTHAAD展開と環境評価は並行実施すると3日に発言した。
  4. 「小規模環境影響評価の結果および一時的配備の開始はどちらが先でどちらが後という話ではない」と国防省報道官Moon Sang-gyunが述べ「両者は別個に実施する」とし、さらに「残るTHAAD発射装備四個は韓米協議後に実施に移す」と述べたと聯合通信が伝えている。
  5. ペンタゴン報道官ジェフ・デイビス海軍大佐はTHAAD完全配備の工程表はないが、在韓米陸軍はいつでも実施に向かう態勢だと述べた。
  6. ソウル南方185マイル星州のゴルフ場にTHAADを展開することで地元住民は有事の際に北朝鮮の攻撃目標となるのを恐れ強く反対している。
  7. しかし先月に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を四週間で二回発射し、米本土も狙う性能があることがわかりTHAAD配備は喫緊の課題になった。
  8. THAADはICBM迎撃用ではないが、短中距離弾道ミサイルには高い命中率を示している。まだ実戦での使用実績はない。
  9. 北朝鮮のミサイル実験により議会は拒否権発動できない形で法案を決議しており、北朝鮮、ロシア、イランへ追加制裁を可決した。
  10. ドナルド・トランプ大統領は今週初めに同法案を不承不承ながら署名し、外交政策での大統領権限侵害だと不満表明していた。
  11. 北朝鮮は一連の制裁措置を金正恩指導者が北朝鮮を核大国にする政策への妨害を試みる意味のない試みと一蹴している。
  12. 同国外務省報道官は北朝鮮中央通信に対して水曜日に「米国がDPRK(朝鮮人民民主主義共和国)向け制裁措置を採択したが高性能核戦力を連続かつ迅速に開発したDPRKへ恐れをなした土壇場の行為以上のなにものでもない」と解説している。■

潜水艦戦力の増強に走る米国の事情とは




原子力潜水艦の建造は他にハンティントン・インガルスのニューポートニューズも行っていますね。三隻以上建造となると船台をふやさずに工程を工夫して対応できるのでしょうか。これは日本でも同じですね。


America Desperately Needs More Submarines (Thanks To Russia and China)

アメリカは潜水艦建造増に迫られている(ロシア、中国のため)

July 26, 2017


  1. 米海軍が48隻ある攻撃型原子力潜水艦(SSN)を66隻に増やそうとする中、議会が予算さえつければジェネラルダイナミクスエレクトリックボート事業部の将来は約束されたようなものだ。同社ではコロンビア級戦略弾道ミサイル潜水艦 (SSBN)も順調に開発中で、レーガン時代のオハイオ級に代わる核抑止力の屋台骨となる。
  2. ジェネラルダイナミクスのCEOフィービ・ノヴァコヴィックは株主に「海軍がSSNヴァージニア級の追加調達に関心を寄せていること」は大変心強いと述べている。「SSN18隻追加建造に向かうと38%増となり中身はヴァージニア級なので予算案成立に大きな関心を寄せています」
  3. ペンタゴンの各種事業中でヴァージニア級建造は極めて順調で工期より早く引き渡しされ、予算以内に収まることが多い。コロンビア級ミサイル潜水艦もこの流れを継承しそうだ。
  4. 「潜水艦事業ではヴァージニア級ブロック3ブロック4の建造ならびにコロンビア級弾道ミサイル潜水艦の技術開発が順調に進んでいます」(ノヴァコヴィック)
  5. 排水量20,810トンの巨大なコロンビア級ミサイル原潜の設計は順調なようだ。2021年建造開始し2031年から実戦化の予定だ。遅延は許されない。オハイオ級SSBNがそのころ退役し始めるためだ。コロンビア級建造での遅れは米戦略抑止力が弱体化する。
  6. 「コロンビア級戦略ミサイル潜水艦に重点を移しつつあるのはご承知のとおりです」とノヴァコヴィックは述べている。「設計工程は極めて順調で予定通り建造開始できそうです。米海軍の海中抑止力、海中戦闘力は国家安全保障の柱であり、海軍が潜水艦増強に向かうのはこの点を理解しているからにほかなりません」
  7. 米海軍はコロンビア級弾道ミサイル潜水艦建造が始まっても年間二隻のSSN建造ペースを維持したいとする。さらにSSBN調達がない年度にはヴァージニア級の年間3隻建造の可能性を検討している。
  8. このたび海軍が議会に提出した報告書では年間SSN2隻とSSBN1隻の建造は可能性ありとあり、この通りなら2030年までに7隻の追加導入が可能となる。だが7隻増でも海軍が目指す攻撃潜水艦66隻体制には不足する。ただし7隻追加で潜水艦全体の減少を緩和する効果はあり、2029年までに41隻に減少する見込みもある。
  9. 海軍は当面は最低でも年間SSNを三隻建造しないと要求戦力水準を維持できないだろう。要求と現実のかい離を埋めるためSSN三隻以上の建造が必要ということだ。
  10. ロシア、中国が米国に海中で挑戦の手を緩めない中で潜水艦建造の需要は強まるばかりだ。■
Dave Majumdar is the defense editor for The National Interest. You can follow him on Twitter: @Davemajumdar

2017年8月4日金曜日

★中国経済はいつ破たんするのか



中国経済の破たんを期待する向きは中国経済そのものが虚構であり、成長の持続は不可能と見ているのではないでしょうか。ある程度それは正しいのですが、ではXデーが来ないのはなぜでしょう。もちろん中国経済の大恐慌を歓迎する経済セクターはないわけですが、軟着陸も不可能と思います。世界秩序を乱す中国の動きを止めるには中国経済の破たんが有効ですが、ことはそんなに簡単ではないでしょう。まず経済事象を冷静に外部から見ていくことが肝要ですね。
U.S. Dollar and China Yuan notes are seen in this picture illustration June 2, 2017. REUTERS/Thomas White/Illustration

How Long Can China Ignore Its Growing Debt Pile?

中国はいつまで増え続ける債務の山を無視したままでいられるのか

July 28, 2017

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  1. どの四半期でも中国発表の国内総生産は政府予想と完璧に一致する。世界第二の経済規模の中国の問題は債務増加が止まらない中で改革施策は国家主席の政治的野心のため後回しにされたままになっていることだ。
  2. 中国国家統計局によれば今年第二四半期のGDPは前年比6.9パーセント増でアナリスト予想の6.8パーセントを上回った。成長率は第一四半期と同様で工業製品出荷高(7.6%増)、固定資産投資(8.6%増)、小売り販売(11%増)が支えた。粗鋼生産は記録更新で、消費が今年上半期GDP成長の63パーセントを占め内需主導経済への切り替えを助けた形だ。
  3. 中国政府は2017年の年間経済成長率を6.5パーセント程度に定めており、秋に開催される全国党大会を前に習近平の地位は安定する。次回大会では習近平の任期を5年間延長する見込みで国家政策担当部門は経済成長の維持で社会的安定を図ることに躍起だ。
  4. ただしインフラの多くが人口まばらな西部砂漠地帯で、「どこにもつながらない橋」に政府支出が増える中、財政赤字はGDP比260パーセントを突破した。
  5. 社会支出に加え国債発行がある。中国の国債発行額は6月に15パーセント増加し5月の15.3パーセントに次いだ。6月の中国国内銀行の新規貸し出しは1.5兆元(2,270億ドル)で前月の1.1兆ドルを上回り、住宅価格の上昇につながっている。
  6. 不動産の全国平均価格が第二四半期で前年比16パーセント上昇したのは中小都市での上昇が大きい。ただし今や不動関連支出より食品酒類支出が大きくなっており、今後の住宅価格上昇で消費者は我慢を強いられそうだ。
  7. 「特筆すべきは今回のGDP成長が信用と固定資産投資で支えられている点です」と分析するのはクリストファー・ボールディング北京大学HSBCビジネススクール准教授でブルームバーグに語っている。「議論ばかりで中国の成長モデルは全然変わっていません」
  8. 「公式発表のGDP統計と当方の独自の経済活動指標の双方が成長の持続を示し、第三四半期にかけて減速の兆候は見えません」とキャピタルエコノミクスは述べるが同社はこれまで中国のGDP統計の中身を批判していた。「財政リスクを抑える政府の動きが経済成長に影響を出し始めるのは時間の問題と見ています」
  9. 5月にはムーディーズ投資機関向けサービスが中国の信用格付けをほぼ30年ではじめて引き下げたのは、債務増加の懸念が理由だった。
  10. 「引き下げは中国の財政余裕がこれから減少するとしているためで債務増加で経済成長が減速すると見るためです。改革が進めば経済財政構造が変化するはずですが、全般的債務そのものの上昇を食い止めるまでに至らず、政府の臨時債務は逆に増えるでしょう」ムーディーズ)
  11. 中国政府は引き下げに反論し「決定方法が不適格」としている。中国財務省報道官はムーディーズが「中国経済の困難を過大評価しながら中国政府によるサプライサイド構造改革努力さらに国内総需要の緩慢な拡大策を過小評価している」と批判した。
  12. ただしキャピタルエコノミクスのマーク・ウィリアムズによれば最近の中国経済の成長は「ゾンビー」企業の存続のため信用を緩く認めていることで支えられているのであり、新規産業の支援はあとまわしだという。2008年の世界金融危機の前の先進各国と同様の状況で、中国が銀行の不良債権救済策を取らざるを得なくなれば成長全体に大きな悪影響が出る。
  13. 住宅価格の低下が始まれば、建設企業デベロッパー企業は借入返済が困難となり、銀行に悪要因が増える一方で多額債務を抱えた消費者は支出を控えるだろう。
  14. 習近平は財務関連会議の席上で政府の優先順位は「財政セクターのシステム的リスクを抑えることと政府部門では国営企業の債務を減らすこと」と述べたとウォールストリートジャーナルが伝えている。
  15. ただしNational Interestが前に伝えたように中国の債務上昇に減少の兆候はなく、一方で政府は一帯一路のような野心的な支出事業に乗り出している。
  16. 国際通貨基金予測では中国の今年のGDP成長は6.7パーセントだが2020年にかけて6.4パーセント成長に減速する。この目標達成には市場の経済力が今以上に重要となり、政治的に触れたくない国営企業の改革は避けられない。中国政府がこの課題にこれまで及び腰だったのは国民の不興を買いたくないためだった。
  17. 2008年不況を予測できなかった信用格付け機関はムーディズだけでなかった。今回の中国格下げは過去から学んでの結果だとしても中国政府も教訓を得ているだろうか。
Anthony Fensom, a Brisbane, Australia-based freelance writer and consultant with more than a decade of experience in Asia-Pacific financial/media industries. You can find him on Twitter: @a_d_fensom.
Image: U.S. Dollar and China Yuan notes are seen in this picture illustration June 2, 2017. REUTERS/Thomas White/Illustration.

2017年8月3日木曜日

トランプを忖度して新古747を購入する米空軍


これはお得な買い物なのでしょうね。そえそれにしてもロシアが引き取らなかった機体を大統領専用機に使わざるを得ないのは情けないですね
Take-Off Runway 26 with Pdt Donald Trump on board.

Trump Wanted a Cheaper Air Force One. So the USAF Is Buying a Bankrupt Russian Firm’s Undelivered 747s

トランプがエアフォースワンの価格が高すぎると不満を言ったので米空軍は倒産ロシア企業の未使用747を購入する

 BY MARCUS WEISGERBER
AUGUST 1, 2017

  1. ドナルド・トランプ大統領が新型エアフォースワンの予想価格が高すぎると発言したため、米空軍は打開策を見つけた。破産したロシア航空会社が残した747を二機購入する。
  2. 空軍はボーイングと売買契約をまもなく妥結しそうだと防衛関係者三名が語った。ペンタゴンも今週中にも契約内容を発表しそうだ。
  3. 空軍は契約金額等の詳細は非公表にするとみられるが、関係者によれば空軍に得な契約だという。ボーイングの747-8公示価格は386.8百万ドルだが実際にエアラインが支払う金額は発注数、仕様等で異なる。
  4. 大統領専用機に改装される747は2013年にトランスエアロが発注した機材で、当時ロシア第二位だった同社は2015年に倒産した。ボーイングは発注4機中二機を完成させていたがロシア側は受領しないままだった。
  5. エアラインは発注時に機体価格の1パーセントを頭金として納め、残高を分割払いにするのが通常だがトランスエアロは支払っていないと業界筋は解説する。
  6. 「アエロフロートがトランスエアロ機材をほぼ全機引き取ったが、額面価格15億ドルの747-8Iは引き取り拒否した」とFlightGlobalが先月報じていた。
  7. そこでボーイングは完成済み二機を飛行テストに使った後保管していた。飛行データ追跡サイトによればN894BA、N895BAの登録番号の二機の最後の飛行は今年2月のモハーベ砂漠南カリフォーニアロジスティクス空港行きで腐食防止の補完用だったことが分かる。「飛行機の墓場」は使用済み民間機が旧塗装のまま残る場所だ。
  8. ボーイングが747二機を新機のまま残し保管料を払いながら買い手を探す中で空軍は有利な条件で交渉が可能となった。年が変わって昨年モデルの新型車を安く買うようなものだ。
  9. 標準型747を空飛ぶホワイトハウスに改装するのは青白塗装だけではすまない。空軍に所有権が移れば委託業者が最新鋭通信装置、機体防御装備等に加え核爆発で生まれる電磁パルスに耐える強化工事を施すはずだ。機内には会議室、執務室、ホワイトハウス関係者用座席に加え招待客や報道陣向け席もしつらえる。
  10. 議会に2月提出されたペンタゴンの2018年度予算要求では2018年から2022年にかけ32億ドルで新型エアフォースワン二機を完成させるとある。トランプが再選されれば新型機に搭乗できよう。
  11. 「空の女王」の名がついた四発747は近年は販売不調だった。エアライン各社は運航経費が安い双発機の777などに関心を移しており、ボーイングは旅客型747生産を完了した模様だ。今後の発注は貨物機に限定する。
  12. 旧型747を最後まで運航していた米系エアラインのユナイテッド、デルタ両社は今年末に同機運用を終了する。米国内最後の有償定期運航でユナイテッドが先週シカゴからサンフランシスコまで飛ばしたばかりだ。■

2017年8月2日水曜日

★日本が中国ミサイルの先制奇襲攻撃を受ける日が来るのか



北朝鮮なんか子どもの火遊びに思えるのが中国の狂ったようなロケット軍の陣容です。飽和攻撃あるいは記事で想定するような在日米軍、自衛隊の基地を狙い撃ちする十分な数のミサイルを発射してきたら北朝鮮ミサイルとは全く異なる状況です。レーザーなど新兵器導入が早期に望まれるゆえんですが、実現すれば中国は狂ったような日本非難を始めるでしょうね。また国内に根強く残る「平和勢力」も中国の意を受けて暴れまわるでしょうね。

Missile Strikes on U.S. Bases in Asia: Is This China's Real Threat to America?アジア各地の米軍基地が中国のミサイル攻撃を受ける日、中国の脅威は本物か?


July 29, 2017



  1. 米国防関係者が中国のいわゆる「空母キラー」弾道ミサイルに焦点をあてる中、中国最大の脅威が別にあると注意喚起する報告書が出た。
  2. 「米国のアジア内権益への最大の脅威は実は中国ミサイル部隊の能力向上であり、米軍基地が標的となることだ」とトーマス・シューガート、ハビエル・ゴンザレスが連名で新アメリカ安全保障センター (CNAS)から報告書を発表した。
  3. 両名は米海軍現役将校であり、ゴンザレスはCNASで軍事顧問も務める。報告書では中国が台湾または尖閣諸島をめぐり米軍が介入できないよう域内米軍基地をミサイルで奇襲先制攻撃すると見る。「先制攻撃の利点に新鋭精密誘導長距離兵器が加わり大きな効果が生まれる。中国ミサイル部隊の指導原則と軍事戦略とも合致する」と記している。
  4. サダム・フセイン相手に圧倒的勝利を収めた第一次湾岸戦争の米軍を見て中国指導部はミサイル軍整備を進めた。第二砲兵隊はかつては核兵器運用部隊だったが、今は核兵器と並び精密誘導通常弾(弾道ミサイル・巡航ミサイル)を運用する。戦略構想は中国の優位性である地理的条件やミサイルの低価格生産を活用する。
  5. 米軍基地への先制攻撃を実現すべく中国はミサイルを大量整備している。中国の地上配備ミサイル装備は世界最大規模だ。ペンタゴン試算では通常弾頭付き短距離弾道ミサイル1,200発、通常弾頭準中距離弾道ミサイルが200ないし300発、さらに数量不明の通常弾頭つき中距離弾道ミサイルがあり、地上発射巡航ミサイルも200ないし300発ある。多くはきわめて正確に敵を攻撃し、核弾頭なしで目標破壊が可能だ。
  6. ランド研究所の報告書では中国ミサイルの「着弾誤差半径は1990年代の数百メートルから現在は5ないし10メートルに改善された」とある。よく話題にのぼるDF-21D「空母キラー」では制御可能な再突入体複数を搭載し命中精度をさらに上げ、ミサイル防衛をかいくぐる能力がある。
  7. シューガート=ゴンザレスは人民解放軍PLAが米軍基地の先制攻撃を演習していると指摘。例としてPLAロケット軍が「アーレイ・バーク級とほぼ同寸の艦船が港湾係留中の想定で標的とし、港湾は横須賀の米海軍基地そっくりだった」とする。中国が米海軍への劣勢を覆せるのは港湾内に休む艦艇へ奇襲攻撃を加えた際に限られるため演習の意義に注目すべきと両名は注意喚起している。
  8. 中国軍の装備能力と指導教義を検討したうえで両名は攻撃シミュレーションで効果を確かめた。両名は中国は在日米軍基地や日本の自衛隊を狙いながら韓国攻撃は回避するとし関心を集める。「朝鮮半島で第二戦線が生まれるのは避けつつ、主要軍事目標に集中する」のだという。またグアムの米軍基地も当初は狙わない。グアムは米領土であり、中国は米軍が中国本土を攻撃するエスカレーションは望まないためだ。 
  9. シューガート=ゴンザレスは米軍同盟軍のミサイル防衛体制を念頭に先制攻撃二案を試した。両案で「弾道ミサイルの相当の量が防衛網をかいくぐり、米軍基地に深刻な被害を与える」との結果を得た。主な点は
•指揮命令拠点、補給施設ほぼ全数が攻撃を受け、とくに主要司令部は開戦数分後に攻撃対象となる
•日本国内に停泊中の米艦船は例外なく弾道ミサイルの標的になる
•在日米軍が運用する滑走路、誘導路が弾道ミサイルで使用不可となる
•滑走路が使用不能で司令部が破壊され防空能力が劣化し、開戦数時間で米軍機200機が地上で破壊される
  1. 一つ明るい話題は日本のミサイル防衛能力が強化されつつあることと両名は指摘し、在日米軍基地の防御に投入され奇襲効果が減る。沖縄はミサイル多数を防げないものの被害は軽減できる。より重要なことは在日米軍基地で中国から距離が離れている地点はミサイル迎撃効果を期待でき機材や艦船にも逃れる余裕があることだ。両名は域内の米軍は迅速退避演習を定期的に行うべきと提言する。
  2. 中国が完全な奇襲攻撃を米軍基地にかけてくるとは考えにくいと異論を唱える中国専門家が多いが、両名は米軍は奇襲攻撃をうけた経験があると指摘する。真珠湾だ。また先制攻撃は中国の積極的防衛思想に合致すると両名は指摘している。
  3. 確かに指摘の通りだ。だが真珠湾の場合は日米両国に緊張状態が続き発生まで時間があった。また中国の積極防衛思想が緊張状態で実行に移されたこともある。もし中国が台湾あるいは尖閣諸島侵攻の支援として先制攻撃に踏み切るとすればその前に相当の緊張があり中国が事前に兵力動員の動きを示すはずだ。そうであればシュシュ―ガート=ゴンザレスが描く悪夢のシナリオを回避すきるはずだ。緊張が高まれば米軍を事前に各地に分散させればよい。第二次大戦時の太平洋各地の米軍航空基地を再開する動きもあり、艦船をなるべく多く出港させる必要もあろう。
  4. いずれにせよシューガート=ゴンザレスによる報告書は国防アナリストに空母キラーのような耳目を集める脅威より深刻かつ現実の脅威があることを実感させてくれる。米国は強力な戦闘力をアジア各地の固定基地に配備しているが、こういった固定目標の破壊は極めて容易だ。
Zachary Keck is the former managing editor of the National Interest. You can find him on Twitter: @ZacharyKeck.
Image: Military vehicles carrying DF-21D ballistic missiles roll to Tiananmen Square during a military parade to mark the 70th anniversary of the end of World War Two, in Beijing, China, September 3, 2015. REUTERS/Damir Sagolj.