2017年12月15日金曜日

★ボーイング・ディフェンスから謎の機体を12月19日発表

  • 12月19日発表ですか。期待しましょう。時差がありますからこちらでは20日でしょうか。写真ではどう見ても尋常な機体ではないですね。

Boeing Defense Teases Mystery Aircraft Unveiling By

Hiding It Under A Black Sheet

ボーイングディフェンスが謎の機体を黒布に隠し発表への期待を高める
The strange teaser came on Twitter, showing a puzzling design that the company says will "change the future of air power."
ツイッター上で通告した同社によれば「航空戦力の未来を変える」設計だという

BOEING VIA TWITTER
BY TYLER ROGOWAYDECEMBER 14, 2017

  • ボーイング・ディフェンスがツイッターで思わせぶりな投稿をした。「力強い? チェック。 準備万端? チェック。航空戦力を一変? チェックしてください。12/19に発表!#PhantomWorks」とある。ファントムワークスはロッキードの伝説的なスカンクワークスをモデルに同社が作った社内先端技術設計部門だ。
  • 新型軍用機のお披露目には新車発表を思わせる派手な企画がつきものだが今回はこの新型機について分かっていることが何もないことが違う。

Robust? Check
Ready? Check
Changing future air power? Check it out!

See the reveal 12/19! #PhantomWorks
  • 一見するとこの新型機はシエラネヴァダコーポレーションのドリームチェイサー軌道飛行機のように見える。だがボーイングは同事業に参画していないので、同様な事業を自社単独で開始するのは変に思えるが、不可能ではない。ボーイングには再利用可能な宇宙機X-37Bの製作実績があるが、それ以前にスペースシャトルで長い実績がある。ボーイングはスペースシャトルのもともとの製造業者ロックウェルを1996年に買収している。国防用に類似した製品を投入しようとしているのか。
  • ボーイングはペンタゴンの最先端研究開発部門DARPAからの受注で新型宇宙機XS-1の開発中だ。今回の機体はこの事業と関連あるのか。リスク低減策としての縮小版か技術実証機かもしれない。
  • あるいは宇宙と無関係かもしれない。見えるのは機体後部からの姿だけだ。傾斜がついた尾翼あるいは操縦舵は非常に肉厚で機体制御用だろう。また機首が二輪で主脚も頑健なことからミッション内容がうかがえる。
  • ボーイングには2000年代初頭に高性能無人戦闘航空機コンセプトで新分野を拓いた実績がある。X-45CファントムレイUCAV試作機が注目を集め、高性能かつステルス機能がついていた。ボーイングはジェットエンジン以来最大規模の航空戦闘革命を始めるように映った。ただし米空軍の関心が急速に萎えてしまった。
  • 米空軍にはローエンドUCAVに対する関心があり、使い捨て機材構想、有人戦闘機から「忠実なるウィングマン」として運用するコンセプトもある。あるいは別のUCAVと大量の機体を運用するコンセプトもある。だが現時点の契約企業は標的無人機のメーカーのクラトスであり、ボーイングではない。
  • 以上を踏まえるとボーイングがUCAVコンセプトでまた大きな一歩を踏み出したのか、あるいは後日そのような機能を実現するための試作機を発表しようとしているのではないか。

BOEING
X-45C Phantom Ray UCAV.
  • 別の可能性は米海軍の求める空母運用型空中給油システム(CBARS)への同社の回答だ。同事業ではボーイング提案はまだ出ておらず、要求内容から低視認性(ステルス)が取り除かれたため、奇妙な外形の機体は十分な量の燃料を機体に搭載するためなのか。ボーイングはCBARSを足掛かりにハイエンド無人戦闘航空機を作り、将来のUCAV事業をめざしているのか。
  • 同社が最近オーロラ・フライトサイエンシズを買収したことと関係があるのではと考える向きもあろう。今の時点では何とも言えないが、可能性は低いようだ。同社がDARPA事業で手掛けたダクテッドファン技術はXV-24ライトニングストライクに搭載されているが今回の写真を見る限り同技術は応用されていない。また買収はごく最近のことであり、オーロラ・フライトサイエンシズの機体設計をボーイングがこのような形で早速発表するとは妙な話だ。

追記
  • ボーイングが極めて長くステルス機に関係してきたことを考えると今回の機体は実は20年の技術開発の結果なのかもしれない。

View image on Twitter
Colonel Doug Benjamin in Boeing's other worldly and once very secret Bird of Prey technology demonstrator.
Contact the author: Tyler@thedrive.com


米海軍ヴァージニア級の建造数増加か、今後の戦力内容は


 


The Virginia Class Submarine: The Undersea Killer Russia and China Hate

ロシア、中国が忌み嫌うヴァージニア級潜水艦
December 13, 2017


  • 米海軍は新しい分析でヴァージニア級攻撃潜水艦を現在より短期間で建造するのは「達成可能」であり、米海軍の優位性を維持するためにも必要だと見ている。
  • 分析は2017年から2030年にかけての潜水艦産業基盤と攻撃型潜水艦追加建造の可能性を検討し、2017年7月に議会提出済みだと海軍がScout Warriorに伝えてきた。
  • ヴァージニア級は年間2隻建造中だが2020年代に新型コロンビア級原子力ミサイル潜水艦の建造がはじまると年一隻になると見られている。
  • だが今回の報告書では海軍が産業界と協力すればヴァージニア級2隻、コロンビア級1隻の年間建造が可能であるとする。
  • 分析によりヴァージニア級年間二隻建造体制の維持をしながらコロンビア級SSBNの建造開始は実現可能でありSSN(攻撃型潜水艦)部隊と海軍に大きな利点が生まれることがわかったと海軍関係者がScout Worrierに語る。
  • 海軍上層部は2020年代の潜水艦不足を憂慮しており、ロシアや中国に対抗するため潜水艦の強化が必要とするが、ヴァージニア級年間二隻建造を維持すれば海軍が目標とするSSN66隻体制が実現する。また増産で潜水艦建造企業の生産能力も上方修正され年間3隻建造に道が開ける。
  • ヴァージニア級潜水艦は海軍とエレクトリックボートおよびニューポートニューズ造船の協力合意内容で建造中だ。前者はジェネラルダイナミクス、後者はハンティン・トンインガルス工業のそれぞれ関連会社、事業部だ。各社が潜水艦の「モジュール」部分を製造し一つにまとめ完成させている。
  • ヴァージニア級潜水艦は高速攻撃型でトマホークミサイル、魚雷他を搭載し各種任務にあたる。対潜戦、攻撃任務、機雷敷設、ISR(情報収集監視偵察)、対水上艦戦、特殊作戦と多様だ。
  • ロサンジェルス級はじめとする旧型攻撃型潜水艦と比べるとヴァージニア級は浅海域戦闘能力、偵察能力、大洋での作戦能力が拡大していると海軍は述べる。
  • ソフトウェアコードと電子装置の多用で、乗員による手動制御や微調整が不要となった。ヴァージニア級潜水艦は「フライバイワイヤ」機能で深度を維持できるため浅海域で浮上や深度の手動調整が不要になっており、乗員が深度速度を指定すればソフトウェアが制御操舵して深度速度を維持できるようになった。
  • また以前の艦と違い、ヴァージニア級は「ロックアウトトランク」と呼ぶ区画があり特殊部隊隊員は潜航中に発進できるようになった。
  • ヴァージニア級は「ブロック」単位で調達されている。このうちブロックIとIIの引き渡しが完了している。
  • 建造中の艦はブロックIII仕様でヴァージニアペイロードチューブ(VPM)を搭載し建造単価を下げつつ戦力を増やしている。
  • 既存艦の垂直発射管は直径21インチの12本構成でトマホークが発射可能だが、ブロックIIIは大型87インチ発射管二本で各6本のトマホークを運用する。
  • 新型発射管のねらいは低価格化だが同時に今後登場する新装備の運用も視野に入れ、トマホーク改良型や他の兵器を想定する。
  • ブロックIII艦は大型開口艦首と呼ぶ一体型アレイソナーを搭載し、音響信号を発信し戻ってくる反響で敵の位置や形状を把握する。
  • 今後建造されるヴァージニア級潜水艦(VCS)は沿海域性能、特殊部隊投入、攻撃能力が改良され21世紀の安全保障環境にふさわしい艦になると海軍は述べている。さらにブロックVは84フィートを艦体に挿入しミサイル搭載量を増加させる。これを「ヴァージニアペイロードモジュール」(VPM)と呼ぶ。
  • VPM搭載艦はヴァージニアペイロードチューブ(VPTs)を4本追加し、それぞれトマホーク7発を搭載して40本搭載にする。
  • VPMの試作がはじまっており、海軍上層部から同技術の開発導入を急ぎたいとの意向が表明されたのは攻撃能力の拡大が求められているためだ。VPMミサイル発射菅で大型無人水中機の搭載も可能となる。
  • VPMの目的は明白だ。2020年代になると大型オハイオ級誘導ミサイル潜水艦の退役が始まり、154発のトマホーク運用が可能な艦が消える。このため水中からの大量火力運用能力を喪失するからだ。
  • トマホーク搭載数の増加は2026年までに実現させ、「SSGN」オハイオ級誘導ミサイル潜水艦の退役に対応させる。
  • 2002年から2008年にかけて米海軍はオハイオ級で最古参の四隻を回想し通常型弾頭ミサイル運用に転用した。それがUSSオハイオ、USSミシガン、USSフロリダ、USSジョージアの各艦だ。これをSSGNと呼称している。■



2017年12月14日木曜日

MDAが目指すICBM打ち上げ初期段階でのレーザー攻撃



MDA awards contracts for a drone-based laser design

MDAが無人機搭載レーザーの設計を各社に発注

An MQ-9 Reaper sits on the flight line Nov. 16, 2016, at Creech Air Force Base, Nev. The MQ-9 provides persistent attack and reconnaissance capabilities. (Airman 1st Class James Thompson/U.S. Air Force)

By: Jen Judson 1 day ago

  • 米ミサイル防衛庁(MDA)がUAV搭載の数キロワット級レーザーと光線安定装置試作を三社に契約交付した。
  • ロッキード・マーティンジェネラルアトミックスボーイングの各社でそれぞれ9百万ドル程度だ。
  • これまでMDAは指向性エネルギー技術の段階的増加を目指し、「実験室レベルから規模拡大し精密照準を無人機から行い数キロワット級レーザーを機体搭載する可能性を模索する」としてきた。MDA局長サミュエル・グリーヴァス中将Lt. Gen. Samuel Greavesの声明をDefense Newsは入手した。
  • MDAは2015年に低出力レーザー実証事業を開始し概念設計をボーイング、ジェネラルアトミックス、ロッキード・マーティン、ノースロップグラマンレイセオンの各社に求めてきた。
  • 概念設計ではMDAの要求内容に合致し、実現可能性の評価や日程管理、費用面も検討したとグリーヴァス中将は述べている。
  • この結果をもとに飛行テストの仕様をMDAは固めた。
  • 実証機は追尾レーザー、防御レーザー、光線制御装置で構成し、高高度無人機に搭載する。
  • 選定企業は実証機開発で機材選定やレーザー、光線制御装置の初期設計を自社責任であたるとグリーヴァス中将が説明。「有人機でもいいが、レーザーや光線制御部分は地上操作としUAVへの移行リスクを低減させたい」
  • 契約企業三社は第一段階で初期設計を完成させ最終案を第二段階でまとめる。第二段階は2018年末から1年間の予定。重要設計審査で第二段階を終える。
  • 第三段階は2019年開始とし2023年までにすべて順調なら終了する。設計案から一ないし二機種を製造し飛行テストする。各種滞空中テストで「飛翔中ミサイルの捕捉、レーザーの脅威対象への照射持続を実証する」とグリーヴァス中将が述べている。「各段階で各社による競争効果を評価していく」
  • 低出力レーザー実証事業はMDAがめざす指向性エネルギー・レーザー技術の実証の一環で今後弾道ミサイル防衛システムに統合するとグリーヴァス中将が述べる。
  • 「可能性のある各コンセプトを試しており、ここから各種装備が生まれる可能性がある」
  • そのひとつがUAV搭載レーザーで大陸間弾道ミサイルを発射直後の加速中に長距離スタンドオフ攻撃で撃破するという。
  • このためにはミサイル追尾と「高度に安定しながら軽量で正確に照準を合わせられるレーザー光線が必要」とグリーヴァス中将が説明。
  • 低出力実証は段階を追って向上させる実証事業で目指す機能の実現が目的だ。
  • 「各種技術をテスト中で可能性がある分野を選定する。テスト結果に基づき、ペンタゴンや議会と協力して指向性エネルギー装備、レーザー装備や測距技術の最良の選択をミサイル防衛に取り入れていく」(グリーヴァス中将)■


  1. コメント スタンドオフで敵ICBMの発射直後に攻撃するためには現状の処理速度を数倍に引き上げたうえでもっと出力増が必要となるはずです。さらに防御のためにはおとり機も同時にうんようするのではないでしょうか。探知には衛星も使うはずで相当大掛かりなシステムになりそうですね。しかしこれが実現すれば各段階でのMD手段が実現します。核廃絶を理念だけで訴える勢力には到底理解できない体系だと思いますが。


AC-130ガンシップは活躍の場が今後もあるのか

Close Air Support Debate: We Go Inside an AC-130 to See if the Gunship is Still Relevant

近接航空支援を巡る議論あるが、AC-130を見ればガンシップは未だ有意義だとわかる



AC-130スペクター・ガンシップは近接航空支援で重要な役目を担い続けている

 By Tom Demerly
Dec 13 2017 - 0 Comments

  • 鈍足で防空装備特に携帯型SAMに脆弱な機体である。戦場環境が許せば驚くほど各種弾薬で正確に火砲支援を実現する。これがAC-130スペクターガンシップだ。
  • A-10の役割に疑問がつきF-35共用打撃戦闘機が台頭し、空軍は軽攻撃機実証を行い、武装つき遠隔操縦機(RPAs)も運用する中、AC-130スペクターは空軍が想定する各種作戦機材に適合するのだろうか。
  • まず「ガンシップ」が戦闘機材の一つになったのはヴィエトナム戦のことでプロジェクト・テイルチェイサーとしてミニガンをコンヴェアC-131B輸送機に搭載したことに始まる。ミニガンはGAU-2/A一丁だった。これはベルト駆動複数中弾倉を備えたガトリング銃で銃身の過熱を避けつつ高速発射が可能だった。
  • 興味深いのはこの1960年代のガンシップコンセプトが今日の軽攻撃機実験に類似していることだ。ヴィエトナム戦のガンシップでは既存装備と機材を使った。ガンシップはそもそもは非対称戦のゲリラ戦への対応策として構想された。この二つの要素は今日の軽攻撃機実験でも生きている。
  • プロジェクト・テイルチェイサーから有名なAC-47ガンシップが生まれた。同機こそ最初の「ガンシップ」と目されている。
  • コールサインを「パフ」(ヒット曲Puff the Magic Dragonから)としたAC-47が初出撃したのは1964年12月15日でその成功に続いたのがAC-119Gシャドウ、AC-119Kスティンガーでこのうち後者はターボプロップと補助ジェットエンジンを装備した唯一の機材だった。その後をうけてAC-130Aプロジェクト・ガンシップIIが1967年に始まりヴィエトナムにすぐ投入された。
  • ヴィエトナム戦以前にも機体に機銃を搭載し対地攻撃、対空攻撃にあたらせる構想があった。B-25ミッチェルは機首に8門の機関砲を搭載し対地攻撃に投入された。B-17空の要塞はブラウニングM2機銃18丁を搭載し空対空専門のガンシップYB-40に改装され、味方爆撃機編隊を敵戦闘機から守るのが目的だった。48回出撃し単発護衛戦闘機の航続力不足を補った。
  • ガンシップの脆弱性が痛感されたのは湾岸戦争時の1991年1月31日の早暁のイラク・カフジだった。AC-130Hスペクター(コールサイン「スピリット03」)が第16特殊作戦飛行隊からカフジ攻防戦で米海兵隊の支援にあたっていた。海兵隊からイラク軍の「ミサイル陣地」に空爆要請が入り、周囲が明るくなるとAC-130Hは地上から格好の標的になったが海兵隊の指示通りの場所に銃弾の雨を降らせた。だがイラクのSA-7「グレイル」携帯型対空ミサイルが「スピリット03」に命中した。同機はそのまま飛行したが洋上に墜落し乗員14名が死亡した。この事件で大型低速で低高度を飛ぶガンシップが最新式小型対空兵器に脆弱だと明らかになった。
  • ガンシップの投入はテロ対策戦で続いており、最新事例では地上情報収集との統合の必要性が明らかになった。2015年10月3日、AC-130Uがアフガニスタン・クンドゥズで精密航空攻撃に投入された。標的はクンドゥズ治療所でタリバン戦闘員が占拠していると思われていた。攻撃は30分間で国際援助団体国境なき医師団によれば「少なくとも42名が殺され、30名以上が重軽傷になった」とし、多くは非戦闘員だったと主張。この事件は政治的にも人道的にも悲惨だが、逆にAC-130ガンシップの威力を知らしめた。
  • イラクでのガンシップ運用の実態はよくわからない。わかっているのはAC-130がA-10とともに有名な空爆作戦に投入されISIS支配下の燃料トラック116両をシリアのアブカマルで破壊した事例だ。2015年11月15日のことだった。
  • その後もガンシップの成果はつづき、2017年11月に最新のAC-130Jゴーストライダー6機が引き渡されている。AC-130Jは大幅改修されており、30mm砲、105mm砲、AGM-176グリフィンミサイル、ヘルファイヤーミサイル、GBU-39小口径爆弾を運用する史上最強のガンシップになったとAir Froce Timesがまとめている。
  • 同紙はまた2016年10月の記事で新型AC-130Jゴーストライダーは軽量、高速、高性能と評し、空軍少佐ジャロッド・ビアーズが「旧式機より燃費が25から30パーセント改善され最高速度は365ノット(416マイル)でAC-130Uの300マイルより早い。航続距離も3,000マイルで高度も28戦フィートまで上昇可能とAC-130Uより3千フィート高く昇れる」という。

第一特殊作戦飛行集団第二分遣隊のAC-130J ゴーストライダー機内で105mm砲を操作するTech. Sgt. Jarred Huseman(左)とTech. Sgt. Oscar Garcia。Ghostrider gunship, “Angry Annie,” during a training mission over Eglin Range, Fla., Jan. 23, 2017年1月23日の訓練ミッション(フロリダ州エグリン演習地)にて。(U.S. Air Force photo by Senior Airman Jeff Parkinson)
  • さらにレーザー兵器をAC-130Uに搭載する構想がある。2017年4月の「National Defense」誌は「空軍はAC-130Uの化学レーザーとは別に高性能電気レーザーをテストする。機体振動の影響を受けずにビームを安定させられるかが課題だ。ただし民生品で光学安定機能がGoProカメラ、望遠レンズまで応用されており、AC-130U搭載のレーザー兵器でも早期に解決される。テストでは30mm砲の位置にレーザー兵器を搭載している。


将来のAC-130はレーザー兵器を安定して運用するだろう (Photo: USAF)

  • AC-130Uゴーストライダーにレーザー兵器を実戦導入する案はいまのところないが、試験結果で変わりそうだ。ただAC-130ガンシップ搭乗員の間で一つだけ絶対に確かなことがある。大型ガンシップが当面消えることはない。F-35や遠隔操縦機、軽攻撃機実証の結果にかかわらず。大型ガンシップは実力を発揮する機会があり、戦力を強めながら相当の間にわたり脆弱性をカバーしていくだろう。■


★★CSIS によるJ-20戦闘機の評価をご紹介

  • 有力シンクタンクCSISの中国研究部会がJ-20についてまとめていますのでご紹介しましょう。当初の予想からずいぶんと変わってきましたが、中国独特の用兵思想も見えてきます。少数生産で終わるのか、長期間の供用期間で改良を加えて変化していくのか今後の要注意点と思われます。



Does China’s J-20 rival other stealth fighters?

ステルス他機種と比較して中国J-20は対抗できるのか




  • 成都J-20は中国軍初のステルス戦闘機だ。国防総省(DoD)によれば、中国はステルス技術を空軍の「国土防空部隊から防御攻撃双方で実力を発揮する部隊への変身で中核の存在ととらえている」。J-20はステルスと機体性能で従来は不可能だった軍事オプションに道を拓き、中国の兵力投射能力を向上させる効果を生む。

J-20の開発



  • 高性能多用途ステルス戦闘機としてJ-20は対空対地双方で人民解放軍空軍(PLAAF)、海軍航空隊(PLAN-AF)に投入されるはずだ。DoDの2016年報告書ではJ-20を「高性能機材で地域内兵力投射能力を向上させながら地域内空軍基地等を攻撃する」中国の狙いで重要な存在と見る。2014年に米中経済安全保障検討委員会はJ-20を「アジア太平洋各国の現有戦闘機より高性能」と評した。
  • J-20搭載のサブシステムと低探知性技術は国際的に通用する「第五世代」機に相当する。つまりステルス技術、超音速巡航性能、高度に統合されたエイビオニクスを有する。J-20はこの定義に当てはまる初の中国機だ。
  • ただし中国の機体世代名称の定義が国際基準と違う。中国定義では機体の就役開始時期で世代を分ける。中国基準ではJ-20は第四世代機になる。

世代別機材の分類
世代
国際定義
中国の定義
1st
Circa 1945-1955 aircraft, such as:
F-86.
Aircraft deployed in 1950s-1960s, such as:
J-5 & J-6.
2nd
Circa 1955-1960 aircraft, such as:
F-104 & F-105.
Aircraft deployed in 1970s-1980s, such as:
J-7 & J-8.
3rd
Circa 1960-1970 aircraft, such as:
F-4.
Aircraft deployed in 1990s-2000s, such as:
J-10 & J-11.
4th
Circa 1970-1990 aircraft, such as:
F-15 & F-16.
Aircraft deployed in 2010s, such as:
J-20.
5th
Circa 1990-present aircraft, such as:
F-22 & F-35.
N/A


  • 現時点で第五世代機を作戦展開できるのは米国だけだ。ロシア、インド、日本が独自に第五世代ステルス戦闘機を開発しようとしている。
  • J-20と別のステルス戦闘機を中国は同時開発中だ。これが瀋陽FC-31小型多用途ステルス戦闘機で輸出用機体だろう。二機種は補完関係にありF-22とF-35の関係と似る。ステルス戦闘機二機種を同時開発するのは米中のみである。
  • 空軍参謀総長デイヴィッド・ゴールドフェイン大将によればJ-20は情報時代の戦闘機として国防ネットワークへのリンクを前提にし、リアルタイム情報を衛星や無人機から利用できるはずとする。そのためF-35と同様にJ-20も単独機種というよりも「システムファミリー」として見るべきとする。
  • 2017年9月28日にJ-20が正式に軍で供用開始したとの発表があったが、完全な戦力化は2018年ないし2019年とみられる。

J-20 と他のステルス機の比較
  • J-20は高性能戦闘機の一機種としてF-22ラプターやSu-57(T-50) PAK FA と同類だ。当初報道ではJ-20の全長は23メートルとされたが、衛星画像解析から20.3から20.5メートルとされ、米ロ戦闘機とほぼ同じとなる。
  • J-20のMTOW(最大離陸重量)は34トンから37トンと見られ、F-22のMTOWは38トン、Su-57は35トンから37トンだ。一部分析でJ-20のMTOWはF-22を下回らないとする。両機種の寸法はほぼ同じだがJ-20ではエンジン配置が後方に寄せられており機内搭載容積が大きいはずだ。

機首
全長
全鷹
翼幅
最大離陸重量
燃料搭載量
J-20
20.3 – 20.5 m
4.45 m
12.88 – 13.5 m
34,000 – 37,000 kg
25,000 kg / 12,000 kg (w/o external tanks)
F-22
18.90 m
5.09 m
13.56 m
38,000 kg
11,900 kg  / 8,200 kg (w/o external tanks)
T-50 PAK FA
19.8 – 20.8 m
4.74 – 5.10 m
13.95 – 15.0 m
35,000 – 37,000 kg
10,300 kg
Figures for the J-20 and T-50 are estimates and likely to change as more information becomes available.


  • J-20には小型空対ミサイルを収納する兵装庫二つの他に大型兵装庫1があり各種ミサイルや対地攻撃兵器を収納できる。F-22の兵装庫仕様と似ているが、ロシアSu-57とは異なる。ロシア機は大型小型兵装庫各2をそなえる。.
  • J-20は各種高性能電子装置も搭載するはずだ。その一部としてアクティブ電子スキャンアレイ、赤外線電子光学探知装置もあり、F-35搭載装備に匹敵する。さらにJ-20には高性能通信装置が付きデータリンクで友軍機材と情報共有できるはずだ。
  • 試作機と初期生産機材はロシア製AL-31エンジンを搭載したが中国はより強力なエンジンの開発を目指している。2017年3月には Aero Engine Corporation がJ-20に次世代エンジンを採用すると発表した。報道を総合すると国産WS-10の搭載をめざしている。これはF-22のプラット&ホイットニーF119に匹敵するものになりそうだ。ただしWS-10がいつ実用化になるか不明で導入は後期生産機材以降になりそうだ
  • オーストラリアのシンクタンクは物理光学シミュレーションでJ-20のステルス性能を確認した。ただし初期型の機首が丸くなっておりステルス性には不利だ。中国はJ-20のステルス性能を段階的に引き上げる意向なのだろう。WS-10エンジンの改良型では排気口をギザギザにしレーダー探知を逃れるとの報道があるが、F-22のF119エンジン排気口は四角形でステルス性に優れている。
  • ただしJ-20の詳細面は多くが不明のままだ。確認された機体番号から少なくとも11機が生産されているらしい。また現在は低率初期生産段階にあるようだ。J-20の機体価格では30百万ドルから120百万ドルと意見が分かれている。比較するとF-22は143百万ドル、Su-57は100百万ドル未満と思われる。J-20が何機生産されるかも不明だが旧式戦闘機の代替として数百機の生産になるともいわれる。

中国はJ-20をどう活用するか



  • J-20で中国の軍事力は飛躍的に向上する可能性がある。2014年の米海軍大学校報告書では「東アジア各国の中で最も強力な戦闘機になる」と見ており、米中経済安全保障検討委員会も同様の評価だ。J-20があと数年で完全戦力化されればPLAAFはインド、日本、韓国の空軍力に差をつけることになる。各国が国産高性能戦闘機を導入するのは2020年代以降とみられるからだ。
  • ただしJ-20の航空優勢戦闘機あるいは攻撃機としての威力について評価が分かれる。J-20のステルス効果が前面重視のため長距離迎撃任務に向くと見る評価がある一方、長距離攻撃機として最適と見る向きもある。2015年のRAND報告書ではJ-20の「前面ステルス性能と長距離性能を考えると米海軍水上艦艇に脅威となる長距離海上攻撃能力を真剣に受け止めるべき」と指摘した。ただし、同機の機体寸法と兵装を見ると攻撃機材として効果的な運用はできないと見るべきだ。中国パイロットがどの任務で訓練されるかでJ-20運用のねらいがわかるだろう。

開発の歩み
Date
Milestone




January 11, 2011
J-20 completes its first test flight.




December 26, 2015
New J-20 prototype spotted, J-20 possibly enters low-rate initial production phase.




November 1, 2016
China debuts the J-20 at the 11th China International Aviation & Aerospace Exhibition in Zhuhai.




March 9, 2017
It is reported that the J-20 has entered service with the PLAAF.




September 28, 2017
The J-20 is officially commissioned into military service.






  • 報道でJ-20の航続距離は1,200キロから2,700キロとばらつくが、戦闘行動半径が中国本土から相当先までカバーするのは確かだろう。米海軍大学校はJ-20を「数百カイリ先で水上艦艇を狙うのに最適の機材」と見ている。Air Power AustraliaはJ-20を中国の「第一列島線」と「第二列島線」での作戦用機材と見る。中国が空中給油を実用化すればJ-20の作戦範囲はさらにひろがるだろう。
  • 飛行距離が伸びれば中国は基地運用で大幅な柔軟性を手にすることになる。J-20が現在内陸部に配置されているのは遠隔地での作戦後に統合防空体制のある範囲に帰還させる意図だろう。J-20を追尾する敵航空機を早期警戒と長距離地対空ミサイルや迎撃機で追い払うねらいがある。■