2018年1月21日日曜日

中国を最大脅威ととらえた米国防総省作成の軍事戦略構想

Mattis’ Defense Strategy Raises China To Top Threat; Allies Feature Prominently

マティス長官の下でまとめられた国防戦略では中国を最大の脅威とし、同盟関係を強調
By COLIN CLARKon January 18, 2018 at 2:58 PM
ランプ政権による初の国家防衛戦略National Defense Strategy(NDS)はよくまとまった文書でオバマ、ブッシュ政権からの政策転換を示し、中国とロシアを米国の「中心的課題」と位置付けている。
 戦略案の最終原稿に目を通したが両国を専制主義モデルで世界を作り変える勢力ととらえ、他国の思惑を阻む国だと表現。テロ活動は引き続き米軍の懸念対象だがトップ事項ではない。この戦略構想はホワイトハウスがまとめた国家安全保障戦略をもとに組み立てられている。
 中国に特に強い表現を振り向け、南シナ海人工島構築で周辺国への脅威になっていると指摘。
中国の人工島
 ではアメリカはどう対応すべきか。同盟国と一緒に動ける部隊を整備し、「対抗し、抑止し勝利する」べきとする。だがその前に戦略的萎縮で軍事優位性が揺らいでしまった。米軍部隊は世界各地に展開できるものの各所が込み合っている。中国、ロシアに次いで戦略案hでは北朝鮮、イランを戦略上での競合相手として米権益の前に立ちふさがる主要課題ととらえている。
 民生技術の急速な軍用転用で戦闘の基本が変化していると指摘。高性能演算技術、人工知能、自律運用、極超音速、バイオテクノロジーなどで米国は対応が可能となる。
 なかでも興味を惹かれるのが米国が戦略的に予測可能でありながら作戦上は予測不可能であるべきとのくだりだ。まるでジム・マティス国防長官がトランプ大統領の人柄を財産にとらえているように聞こえる。一方で第二次大戦後から一貫した姿勢も見られる。つまり米国による国際自由政治体制の維持に同盟諸国が中心の役目を果たしてきたことだ。
 報告書では2ページを割いて米国にとって同盟関係の重要性を説いており、不確実性を増す世界において不可欠な要素だとするのは同盟各国にはうれしい内容だろう。さらに多国間の仕組み(国連)やNGOが追加的手段として米権益を支えるとも述べている。
 オバマ政権による太平洋重視政策には言及がないが、この戦略ではインド太平洋地区の同盟関係協力関係の強化につながる。またNATO強化も訴えているのは米安全保障に死活的なためだ。もちろんヨーロッパ各国が攻防支出を増やすべきとの主張もあり、この点はホワイトハウス筋が強く求めてきたのだろう。
 国家防衛戦略とは政策文書ではないことに注意が必要だ。ペンタゴンの予算手続きである企画、立案、予算、執行(PPBE)で重要な位置を占めどの部分以どれだけ支出すべきを述べている。NDSの内容は大部分が秘密扱いで一般が目にすることができるのは総括部分のみだ。
国家軍事戦略の予算編成上の位置づけ
 近代化が待ったなしの分野として、核戦力、宇宙サイバー、C4ISR、ミサイル防衛、高度自律装備を上げている。
 原案ではマティス長官が署名入りでこの戦略で長官が「緊急に変化させようとしている」内容を重視していると解説。秘密扱い内容が公開部分と同様に明確に説明していればホワイトハウスと議会による法案成立につながり、アメリカには軍事力の再構築とともにグローバルな同盟関係のネットワーク作りで有効な刺激が必要だ。■

2018年1月20日土曜日

北朝鮮が韓国併合する日が来るとは思えない理由

 

The Real North Korea Threat: A Forced Unification?

北朝鮮にとって南北統一が脅威になる
Uniformed women march past the stand with North Korean leader Kim Jong Un and other high ranking officials during a military parade marking the 105th birth anniversary of the country's founding father Kim Il Sung, in Pyongyang April 15, 2017. REUTERS/Damir Sagolj
January 16, 2018

2018年に北朝鮮と開戦の可能性が高まるばかりだが、そもそも北朝鮮の最終目的は何なのかで議論がある。筆者は北朝鮮が韓国を併合することを目指しているとは思えないと主張してきた。北朝鮮がこのためならどんな代償でも払うとは考えにくいとも述べてきた。だが極めてタカ派色の強い見方でじゃ北朝鮮がねらうのは最終的に韓国を吸収する南北統一であり、このためあえて冒険を侵しているのだとの説明だ。
右派の解釈には北朝鮮の主張を真剣に取り入れている節がある。事実、北朝鮮上層部は統一への関心を常時口にしている。金正恩は新年のあいさつでこの話題を十数回にわたり取り上げていた。だからと言ってこれが北朝鮮の目標との「確証」と筆者は受け取っていない。
まず韓国エリート層もこの話題に言及している。南北朝鮮の双方が統一を目標にするのは不思議ではない。それでも韓国が無謀にも統一に向けて動き出し安定を危険にさらすとはだれも口にしていない。では嘘つきが当たり前の国の主張をそこまで真剣に取る理由は何か。逆に北朝鮮が統一を口にするのを真に受けるのなら、北の核兵器の目的が抑止力と防衛との主張を信じて不都合があるのだろうか。
二番目に、おしゃべりは安っぽい。南北朝鮮はゼロサム競争で互いの正当性を競い合っている。共に民族を標ぼうし、統一を目指すと主張。これがそれぞれの憲法に書き込まれており、エリート層は統一を公に話す。その結果、統一の話題は頻出する。だがその結果発生する費用負担を覚悟しているのかが双方に試される。社会科学でいうところの「costly signaling」であり、自らの政権基盤を危険にさらしてまで目標を追求するのかという疑問が生じる。米国が放棄した後の韓国を蹂躙するために北朝鮮が攻撃兵器を整備するだろうか。もしそうなら核兵器は別の意図の存在となる、なぜなら核兵器の主たる存在意義は防御にあるからだ。
三番目に北朝鮮は平気でうそをつく。北朝鮮では誇張はあたりまえのことだ。北朝鮮の発言内容に信頼を置いていいのか。発言ではなく実行から意味をくみ取るべき国が北朝鮮だ。北朝鮮が統一の申し出を真剣に考えている証左は皆無に近い。
北朝鮮は費用とリスクを負担してまで統一をめざしているのか。話題が出ているからと言ってその下支えにならない。「我が闘争」顔負けの声明文で統一構想が語られている。たしかに北朝鮮は南の支配を目指している。金一族は統一で社会主義の楽園の実現を指導するとの夢を持つ。だが願望があるからといって確たる証拠にあたらない。
すべてが正しくないとしても力による統一がいかに困難かを次の想定で考えてもらいたい。


(A) 米韓同盟の崩壊
北朝鮮が韓国を攻撃する事態は韓国が米国と同盟関係にある限り実現しない。同盟はほぼ70年に及び、過去の困難な事態を乗り越えてきた。北は同盟の終了を希望しているが、実際に廃棄した場合の負担準備はあるのだろうか。北が米国を追い出したいとするのは自国がその結果を受け入れるとの態度のあらわれのはずだ。1970年代以降の北朝鮮指導者で韓国駐留米軍への武力衝突を公言するものない。
(B) 韓国が戦場で敗北する
米国が朝鮮半島から放逐されても北主導の統一の前に韓国軍が立ちはだかる。ただし韓国軍の戦闘能力がはるかに優勢と信じられており、訓練装備も優れているし、技術も優れ、指揮命令も優秀など優れている。韓国の国防予算は増加中で、間もなく北朝鮮の経済規模に相当するようになる。韓国の人口は北朝鮮の二倍以上ありGDPでは40倍の格差がある。まともに戦闘にならないはずだ。米国抜きの戦闘は厳しくなるといっても、韓国で10年以上会議に出席してきたが北朝鮮が通常戦で勝利すると確信する声は一度も聞いたことがない。核兵器を投入すれば戦場の様相は一変するが勝利条件も無効になる。放射能汚染され混乱した社会を征服して意味があるのか。韓国を無傷のまま手に入れることがポイントとなり、そうでないと負担が増えるばかりだ。
(C) 韓国占領統治は北にとって壊滅的効果を生む
北が勝利したとしよう。戦争で事実上同国は破たんし、韓国占領はあたかも南北戦争後の南部復興の様相を呈し各所の反乱勢力により占領軍はドイツの平和的統一どころではなくなる。核兵器で勝利を収めたのなら占領はもっと悲惨になり、北朝鮮軍が放射能汚染された占領地でまともに機能できるだろうか。もっと悪い状況になるかもしれない。
北朝鮮は直ちに韓国を世界経済から遮断し、貧困化を進める。北は南から富を収奪するので南はグローバル経済との接点を求めるが北がこれを許さない。
韓国市民は自由で開かれた民主体制に慣れきっており、当然反乱を起こす。韓国の人口規模を考えれば占領軍は簡単に人数で不利となる。その後は各所でゲリラ戦となる。
敵意を持った地の占領の代償は驚くべき高額になり、規模が小さい北朝鮮経済に戦争の影響が重くのしかかる。韓国からの収奪で一時的に息をつくだろうが、維持できず、中期的に韓国を取りこむことは一層困難になる。
北朝鮮軍は米軍が「第四段階」と呼ぶ対ゲリラ戦、占領業務、移行業務の訓練は受けていない。米軍がイラクでこれに失敗したというのなら、訓練もろくになく、腐敗して予算も不足した全体主義国の軍隊にできるはずがない。
北朝鮮にも予期できない負の結果は同国体制が大幅に不安定になることだ。北朝鮮は独特の規律で極度にまで定型化された社会である。柔軟性に乏しく、外部を取り込む想定がない社会だ。そこに不満だらけの53百万人を統合するのは不可能に近く、平壌の腐敗し機能しない行政が圧倒されてしまう。北朝鮮軍兵士は南での勤務を終えて憤慨するまでの豊かさの話を土産に戻るだろう。南に進駐する北司令官は豊かな南で別収入をあげようとするだろう。新たに征服した地で住民の思想転換は巨大な規模となり抵抗にもあうはずだ。南を統治するのは規模も内容も複雑となり北の国家崩壊につながりかねない。
先に南北戦争後の復興時代を同様の例に挙げたが、イスラエルによるウェストバンク占領でも同様だ。北指導部がそんなリスクを冒すとは思えない。■
Robert Kelly is an associate professor of international relations in the Department of Political Science at Pusan National University. More of his writing can be found at his website. He tweets at @Robert_E_Kelly.
Image: Uniformed women march past the stand with North Korean leader Kim Jong Un and other high ranking officials during a military parade marking the 105th birth anniversary of the country's founding father Kim Il Sung, in Pyongyang April 15, 2017. REUTERS/Damir Sagolj​


コメント 本当にそうでしょうか。国力とは別に北朝鮮には思想面で韓国より厳しく訓練された様子がうかがえます。つまり意思の力が感じられます。そんな国が割りが悪いからと南を併合しないという保証はないでしょう。


現在進行中の南北協議でも北が主導権を握りがちに見えるのは当方だけでしょうか。北朝鮮からすれば米軍さえ放逐すれば南は自然に北と一緒になると見ているのではないでしょうか。

肝心の南の政府を率いる大統領がオリンピックだの南北合同だの面子にこだわる対応ばかりで、平気に北に飲み込まれてもいいという姿勢で日米がせっかくおぜん立てした制裁など強い対応を自ら崩すような姿勢ですので南がいつか消えてしまう日がこないともかぎりません。

2018年1月19日金曜日

USSワスプが佐世保到着、F-35B搭載運用はいつ開始するのか

First F-35B shipboard deployment to begin as US warship arrives in Japan

米艦艇の日本到着でF-35B初の艦上運用が始まる


F-35B ライトニングIIが米海軍揚陸強襲艦ワスプから離陸する。運用試験Iの昼間運用中。 (Cpl. Anne K. Henry/U.S. Marine Corps)

 By: Mike Yeo    16 hours ago


MELBOURNE, Australia — 米海軍揚陸強襲艦ワスプが日本の新しい母港に到着し、ロッキード・マーティンF-35BライトニングII戦闘機が初の海上配備に今年末に展開することになった。
1月14日に佐世保基地に到着した同艦はノーフォーク(ヴァージニア)を昨年8月出港し28,400マイルの行程を終えた。途中、カリブ海のハリケーン災害救援活動に従事し1,129名を収容し、26,720ポンドの装備、170万ポンドの補給物資を運んだ。
「USSワスプの到着は軍事力強化とともに同盟国等への安全保障面と地域安定で米国がコミットメントを貫く姿勢を示すもの」とワスプ艦長コルビー・ハワード大佐が述べている。「F-35B共用打撃戦闘機との組み合わせで各種運用を危機対応や災害救難含め可能になる」
ワスプはボンノムリチャードに代わりタスクフォース76旗艦となり、第七艦隊の揚陸部隊全部を率いることになる。なお、同部隊は米海軍で唯一の前方配備打撃集団を構成する。佐世保にはこのほかに三隻の揚陸強襲用艦船がある。
ボンノムリチャードは五年間に及ぶ日本配備を終えサンディエゴに戻る前にタイがコブラゴールド演習に2月中旬に参加する。
ワスプは初の定期出動を今年末に予定し、沖縄駐留の第31海兵遠征部隊とF-35B海兵隊戦闘攻撃飛行隊121を搭載する。同飛行隊は2017年早々に岩国に移駐し、海兵隊初のF-35B作戦部隊として岩国に16機を配備している。
単距離陸垂直着陸型のF-35BはAV-8BハリヤーIIと交替する。なお、ハリヤー最後の分遣隊は昨年8月に日本を出発して帰国についていた。

ワスプの配備とF-35搭載による後日の航海は通常型式の前方配備海軍部隊の運用で国防総省が目指す同盟国支援策として最高峰の装備を前方配備する方針に沿う。だが通常の西太平洋配備の装備と違う意味合いが今回は見られる。米国とアジア域内諸国が北朝鮮のミサイル核兵器テストに対応を迫られているからだ。■

2018年1月18日木曜日

北朝鮮に不穏な動き:五輪前日に軍事関連行事を強行か

North Korea reportedly plans to hold a military event, one day before the Winter Olympics kick off in South Korea

北朝鮮が冬季五輪開幕前日に軍事行事を開催
north korea
North Korean army recruits in Pyongyang, North Korea. Reuters/KCNA KCNA



北朝鮮が軍事関連行事を朝鮮人民軍の70周年記念として2月8日に実施するとの報道がある。同日は2018年冬季五輪の開幕前日にあたる。NKNewsが1月17日伝えている。
国防関係者と配偶者あてに招待状が出ており、それによれば北朝鮮は「祝賀行事」を準備しており平壌での軍事パレードも含まれる。
「『パレード』と呼ばないかもしれないが、何らかの行事が金日成広場で繰り広げられるのは確実だ」と北朝鮮事情を研究するフョードル・テリティスキーが伝えている。「北朝鮮としてはこれは敵対行為ではないというのだろうが一度出席を求めた行事を同国は取りやめたことがない」
モンテレーのミドルベリ国際研究所で東アジア核非拡散をテーマとするジェフリー・ルイスは近隣の空港衛星写真から北朝鮮が行事の準備中と述べている。
A series of satellite images of Mirim airfield taken by @planetlabs over 26 December-1 January show that North Korea is preparing for a massive military parade. (1/2) @T_Hamm @rsimmon@DaveSchmerler pic.twitter.com/eDv0YorAqK
— Jeffrey Lewis (@ArmsControlWonk) January 17, 2018
展示物の大きさと形態から行事は韓国との緊張を招きかねず、韓国は冬季五輪主催の準備に追われているが、北による最近の挑発の記憶はまだ新しいところだ。
韓国は北に譲歩し、恒例の米国との軍事演習を五輪閉幕まで延期までている。

南北協議に警戒心を隠さない向きもあるが、両国の対話は進展しており、北朝鮮代表団に楽団、応援団含め移動滞在の支援方法が現在議題となっており、北朝鮮ホッケーチームが韓国チームに合流することとなった。■

歴史に残る機体16 U-2

歴史に残る機体16はU-2です。現役の機体ですのでまだまだ歴史を作りそうですね。



No Plane Has Made More History Than the U-2 (And It Never Fired a Shot)

U-2を上回る歴史を刻んだ機体はない(しかも一発も発射せずに)
January 16, 2018

U-2スパイ機は今も世界の空を飛んでいるが、もともとCIAで供用開始して60年以上たつ。世界史でここまで影響を与えた機体はない。米外交に有益な情報を提供しただけでなく、高高度飛行は期待通り妨害を受けなかったためだ。

高高度を飛ぶスパイグライダー機
チャーチルが有名な「鉄のカーテン」が東欧に下りたと述べた時点でその向こうを覗く米スパイ機は文字通り生死をかけていた。写真偵察機の有効性は実証済みだったがソ連ジェット戦闘機がレーダー誘導で運用開始するとソ連領空への侵入は自殺行為になった。
スパイ機がソ連MiG戦闘機の追撃を回避する方法はないのか。米空軍は解決策は高高度飛行と考え、レーダー探知も回避できると想定した。ソ連の初期型レーダーは大戦中に米国が与えた装備で最大探知高度は67千フィートと想定されたためだ。RB-57Dがこの任務用に改装されたがこれだけの高度は不可能だった。
ロッキードの伝説的設計者ケリー・ジョンソンから1953年にCL-282スパイ機提案が空軍に届いた。グライダーに近く長い胴体ととんでもなく長い主翼が特徴だった。CL-282は機体重量を極限まで下げて降着装置さえ省き胴体着陸の想定だった。空軍は採用しなかったが、CIAが関心を示しロッキードに構想研究の継続を求めた。
ロッキードはU-2になったこの機体開発を完全秘密体制で進めた。機体呼称の「U」は多用途機の意味で偵察機としての目的を隠ぺいするためだった。ロッキードは協力企業には高高度気象観測機と説明していた。
ドワイト・アイゼンハワー大統領が同機運用に直接関与したのはソ連上空に軍人を乗せた機体を送り込むのは政治的に危険との助言を考慮したためだった。U-2は当初非米国人で運用する想定だったがCIAは退役空軍パイロットをCIAに「運転手」として雇い入れる形を思いつく。CIAと空軍の共同事業には「ドラゴンレイディ」のコードネームが尽き、以後同機にこの名前がついてまわることとなった。
細長い胴体と80フィートの主翼で高度72千フィートに到達した。この高度では宇宙空間に近くなりパイロットは部分与圧服を着用した。高高度飛行のストレスでパイロットは一回8時間のミッションで体重6ポンド減らすほどだったが、液体食をヘルメット直結チューブからとれた。
エンジンはJ58ターボファン一基で特殊JP-7燃料が高高度でも蒸発しない形にされていた。最高速度は430マイルで大戦中のP-51マスタング並みだった。後期のU-2CはエンジンをJ75に換装し、最高高度75千フィートに引き上げた。ここまでの高高度では失速速度は最高速度から10マイルしか違わず、パイロットは常時注意を払う必要があった。
搭載カメラは180インチのフォーカルレンス式レンズで地上の高解像度写真を撮影可能だった。その後通信情報収集装置が加わった。
CL-282原案と異なりU-2には降着装置が付いた。離陸時に投棄する「ポゴ」車輪二基もついた。主翼は異例なほどの揚力を生んだ反面、着陸が極度に困難になったのに加えコックピットの視界は極度に悪く、地上で誘導車による無線指示が必要だ。良い面では高度と揚力の組み合わせで長距離の滑空が可能となり、エンジン故障になった一機は300マイルを滑空してニューメキシコに着陸している。
60年間にわたり同機操縦資格を得たのはわずか950名で女性9名も含む。「怪しい伝説」でU-2は「操縦が一番難しい機体」だったのか検証し、車輪投棄、与圧服、高高度飛行の様子とともに誘導車を引き連れての着陸の様子が放映されている。
ロシア、中国、キューバ上空のドラゴンレイディ
アイゼンハワーはU-2上空飛行で戦争が誘発されないか心配していたが、ドイツに展開したCIA分遣隊A所属のU-2が東欧上空を初飛行したのは1956年6月20日でソ連上空飛行は7月4日だった。
ソ連レーダーではU-2探知は不可能との甘い期待はすぐに裏切られた。だがMiG-15や-17戦闘機ではU-2の飛行高度まで到達できなかった。米国はその後もU-2を英空軍パイロット操縦で送り出しており、英国内基地の設置の代償としてさらに収集情報量を増やすためだった。
CIAはプロジェクトレインボウでU-2を低レーダー断面積化によるステルス機改装に取り組んだ。ただし、結果は芳しくなくロッキードはA-12事業に取り組むことになった。これがSR-71ブラックバードになった。
U-2の写真偵察がすぐに効果を発揮した。当時の米軍指導部はソ連との「爆撃機ギャップ」に憂慮させられていた。U-2の上空飛行により新型長距離M-4戦略爆撃機は実際に作戦基地に配備されていないと判明した。中東上空ではスエズ危機での英仏軍の作戦状況を米国はつぶさに見ることができた。結果として英国は介入を断念させられた。
にもかかわらずアイゼンハワーはU-2フライトのリスクを認識しており、運用を取り消したり再度承認することを二期目に繰り返していた。1950年代末にソ連は地対空ミサイルの配備を増強しCIAは高高度でU-2を捕捉する可能性を認識していた。ただし当時のペンタゴンは今度は「ミサイルギャップ」がソ連首相フルシチョフが豪語したICBMで生まれていると恐怖に駆られ、アイゼンハワーはあらたにこの脅威の実態をさぐるべく新規ミッションを承認した。
最後のミッションは1960年5月1日まで延期された。ソ連では休日で通常は探知を遅らせる効果のある民間航空の稼働が低下する日である。CIAパイロットのゲイリー・パウワーズがトルコ・インチルリック基地を離陸すると即座にソ連レーダーに捕捉され三発のSA-2ミサイルが発射された。うち一発は迎撃に出撃したロシア空軍MiG-19に命中しパイロットは死亡した。もう一発は命中しなかったが三発目が機体近くで爆発した。パウワーズは機外脱出し墜落したが機体は意外にも損傷少なかった。
CIAはU-2喪失に備えてあらかじめカバーストーリーを準備していた。U-2は高高度気象観測器で「行方不明になった」というものだった。ソ連はアイゼンハワーに釈明の機会を与えてから翌週になってパウワーズの身柄を確保したと発表しアイゼンハワーの体面をつぶし5月に予定されていたパリ首脳会談は大荒れになった。バウワーズ逮捕にCIAは恐慌する。U-2の高高度で撃墜されて生存は不可能と考えていたためだ。パウワーズはソ連スパイと交換で帰国しU-2のロシア上空飛行は取りやめになった。
それでもロッキードは機体改良を続けた。U-2A、U-2Cに空中給油能力が追加されU-2E、U-2Fになった。飛行距離は9,200マイルに延長された。U-2GとU-2Hは空母発進にして海外国内の基地依存を減らそうとした。空母発艦は成功したが海軍艦船からのスパイ機運用は実施されていないといわれる。
パウワーズ事件を受けて海外展開していたU-2分遣隊は撤収したが、今度はキューバ上空の飛行を始めた。1962年10月14日、リチャード・ヘイサー少佐操縦の機体がソ連製中距離弾道ミサイルの展開状況の撮影に成功し、キューバミサイル危機が始まった。米ソ関係でふたたびU-2が重要な存在になった。危機を通じて上空飛行は続き、10月27日にはルドルフ・アンダーソン少佐操縦の機体がまたもやSA-2に撃墜され、少佐は死亡した。
アンダーソン少佐撃墜のあと、空軍は徐々にCIAのU-2各機の管理を強め戦略偵察飛行隊を創設した。その後、タイ、日本、フィリピン、インドの各地に展開し、北ヴィエトナムの防衛体制の様子、北朝鮮やインドネシアの兵員輸送状況、中国国境の警備体制強化等の写真撮影にあたった。中東でもアラブイスラエル間の衝突の動向を監視した。
また中華民国(台湾)と分遣隊Hを共同運用開始したのは1960年代前半で、黒猫飛行隊として知られた。台湾パイロットが中国本土を北西では蘭州、南西は昆明まで飛行したが、不幸にも台湾運用のU-2も地対空ミサイルを逃れることはできず、5機が撃墜された。台湾のU-2ミッションは合計104回実施された。残るU-2は1974年に撤収された。ニクソン訪中で米中国交が成立したためだ。

現在のU-2、そして将来は?
最後の機体が生産ラインを離れたは1989年で104機のU-2が製造された。現在のU-2はすべてU-2Rの系列で胴体は30%延長され、主翼幅は100フィートを超え燃料搭載量が増加している。
1981年には新型U-2Rに特殊偵察ポッドと側面監視空中レーダー(地上スキャン用)がつきTR-1A(戦術偵察機)と改称された。
U-2とTR-1は防空体制が整備された場所での深度侵入飛行はおこなっていない。衛星により人命喪失を心配せずに行える任務だ。だがU-2は脅威がない場所なら高高度飛行を安全に行い高精度画像を衛星では得られない柔軟度で提供できる。
冷戦終結に伴い、U-2RやTR-1はU-2Sに改修され現在も31機が供用中だ。U-2Sは推力増加F118エンジンで時速500マイル超となり、センサー性能も向上しGPSも搭載する。2012年に同機はCARE事業で改修されキャビン与圧を下げ排尿回収も快適となりパイロットの肉体的負担を軽減した。
ここ数年は第9偵察航空団所属のU-2が最長12時間に及ぶイラク、アフガニスタン上空飛行を実施し、ISISやタリバンの動向を詳細に写真偵察している。
空軍は当初はU-2を2014年に退役させRQ-4グローバルホーク無人機に交替させる予定だった。だがU-2は大型で高品位センサーが積める点でRQ-4よりすぐれていること、また飛行運用費用も半額程度で済む。さらに空軍将官のひとりはRQ-4がU-2と同じ量の偵察を実施するまでにまだ10年かかるとも述べている。
結局のところ対ISIS戦で偵察機需要が高いためU-2運用予算は少なくとも2019年まで確保された。
ロッキードはTR-Xスパイ機の提案をしている。これはU-2を遠隔操縦機つまり無人機として高リスク空域での運用を目指すもので、ペンタゴンは40億ドルかけて30機ないし40機の非ステルス偵察機を配備すべきか検討中だ。

ただし今のところ旧型U-2が引き続き任務にあたりそうだ。機体が老朽化しても搭載センサーは別でドラゴンレイディは地上の様子を高高度から米国に伝える目の役割を提供している。■


Sébastien Roblin holds a Master’s Degree in Conflict Resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing, and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring.

韓国へEC-130Hコンパスコールが今年に入り展開している理由

The U.S. Air Force Has Deployed One Of Its EC-130H Compass Call Electronic Warfare Aircraft To South Korea 米空軍がEC-130Hコンパスコール電子戦機材を韓国に展開中

Jan 15 2018

EC-130Hコンパスコールは敵部隊を探知し通信系統を(おそらくサイバーで)攻撃して使用不可能にする能力があるが、数少ない同型の一機が韓国のオサン航空基地に配置されている。

EC-130Hコンパスコールはハーキュリーズに各種情報集装置、妨害装置等を搭載した改装機で、米空軍資料によれば「情報妨害機能および電子攻撃能力を有し米軍、多国籍軍の地上戦、航空戦、特殊作戦を支援する」とある。
米空軍のEC-130H部隊はわずか14機と小規模で、デイヴィス-モンタンAFBがあるアリゾナ州ツーソンに配備され、第55電子戦闘集団(ECG)隷下の二個飛行隊第41、43電子戦飛行隊(ECS)が運用する。同基地には第42ECS訓練隊もあり、TC-130H訓練機等を使う。
EC-130Hコンパスコールが南西アジアの場所非公表飛行基地をタキシ―している。コンパスコールは戦術機として敵の指揮命令系統を妨害し通信を遮断することで実戦で重要な即時の対応をできなくする。 (U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Jonathan Hehnly)
コンパスコールの任務は敵指揮統制能力の妨害にあり、このため敵通信を探知し重要度を把握して標的を設定する。つまり同機は敵通信式機器の発信を探知し妨害する機能がある。EC-130Hの当初の任務はSEAD(敵防空能力制圧)で、敵のIADS(統合防空体制)を利用不能にし敵迎撃機に地上レーダー管制誘導を使えなくすることだった。その後この役割は発展し、同機は無人機と地上操縦設備間の通信遮断も可能となった。
EC-130H部隊にはベイスライン1と2の機材がある。第55ECGは戦闘出撃10,900回66,500飛行時間を最近達成し、米軍多国籍軍部隊に各種戦闘で有利な状態を作ってきた。コンパスコールが優れているのは空軍物資本部第661航空機材隊が進めるビッグサファリプログラムによる性能改修が一貫して行われてきたためだ。同隊が中心となり各方面が協力してEC-130Hは新型通信技術にも対応できる。
ブロック35ベイスライン1仕様のEC-130Hで空軍には通信遮断効果が増進できる。早期警戒レーダーや航法支援装備が高出力を放射するとベイスライン1機材は敵の動きに柔軟に対応可能だ。
ベイスライン2ではさらに改修が進め操作員の負担が軽減されている。外部との通信も改良され状況把握のみならず作戦環境での接続性が向上している。
ベイスライン2の実現でDoDに「第五世代電子攻撃能力」が実現した。EC-130Hコンパスコールのベイスライン2で実現した改良点はミッション直結のため極秘扱いだが攻撃の精度と威力を向上している。さらにシステムが再設計され「プラグアンドプレイ」で迅速対応できるようになり現実の脅威が毎回違う対応を迫る中で対応力が増している。衛星通信が可能となり今後登場するDoD装備と互換性が生まれる。また多様な装備とのネットワーク、データリンク用端末も備える。ベイスライン2では機体改修をしており機体の性能と残存性が向上した。
2015年にはUSAF所属のEC-130Hコンパスコールがネットワーク攻撃を実証し、機内からのハッキング機能がサイバー戦に有効だと分かった。電子戦では機体からマルウェアを放出するのが通例だ。
現在は機材の三分の一が不朽の決意作戦支援に投入されている。EC-130H4機がRC-135リヴェットジョイント他EA機材とチームを組んでイラク、シリア上空でイスラム国の通信を遮断している。その中でEC-130H(73-1590 “Axis 43”) がオサン航空基地に移動する前に横田基地に2018年1月4日に飛来していた。実に興味を惹かれる。
今回の電子戦機材の展開の理由は推測が困難だ。サイバー攻撃能力を有する同機がDMZの南側に配備する理由は何なのか。ここまで特化した機体が朝鮮半島に配備されその他情報収集機に加わり緊張が高まる中で空を飛ぶのは注目すべきなのは確かだ。■

2018年1月17日水曜日

インド海軍が空母三号艦を企画、ただし実現は簡単ではない

Indian Navy plans to acquire its third aircraft carrier for a whopping Rs 1.6 lakh crore

インド海軍が空母三号艦を250億ドルで建造したいとする

INSヴィクラマディティ(写真)は現時点で唯一のインド海軍空母でINSヴィクラントが建造中。Ajit Kumar Dubey
  • New Delhi
  • January 15, 2018
インド海軍が空母三号艦の実現に向かっており、戦闘機57機を搭載する同艦の建造費用は250億ドルと言われる。現時点のインド海軍には唯一の作戦用空母としてINSヴィクラマディティVikramadityがある。
もう一隻INSヴィクラントVikrant,がコチン造船所で建造中で来年就役予定だ。
海軍は三号艦用に双発艦載機57機を購入予定で米F-18と仏ダッソー・ラファールが競合している。
中国の脅威を理由にインド海軍は三号艦を原子力推進で米技術も取り入れ建造したいとするが、建造は既存艦より高額になる。
インド海軍はインドの東西海域に一隻ずつ配備し、もう一隻を予備とする空母三隻体制の実現を目指している。
ただし国防省が前向きではないのは建造費以外にその他装備の調達にしわ寄せが行き調整が必要となるためだと内部筋が解説する。
空母発艦システムは米企業が特許を有し、建造費の最終額にも影響を与える。
インド海軍は艦載機材の情報開示要求を出しているが、正式な価格見積もり手続きは国防省が認可していない。
ただし海軍はロシア設計のINSヴィクラマディティからの発艦についてはすでにメーカーに性能確認を求めている。国防省筋は空母部隊の拡充では計画済みの空母と陸上基地だけでインド洋地区(IOR)をすべて監視できることから三号艦取得の予定は再考すべきと主張している。
このため、国防省は海軍が求めていた五か年計画を承認していない。

インド政府の国防調達費用は総予算の28パーセントになっておりこれ以上増やすのは当面不可能と言うのが各筋の見方だ。■

2018年1月16日火曜日

お知らせ 当ブログは正常に読めますか


者の方から改行問題、行長が極端に短い、レイアウトが崩れるとの報告がありました。
Chrome, Firefoxともに本文が読めない、iPhoneで改行がされ本文が読めないとのことです。

Bloggerが昨年仕様を変えたようで年末からトラブルが増えています。

当方としてはアップロード前にプレビューで正常に見えることを確認しているつもりですが引き続きトラブルが発生して入れば大変申し訳ありません。

現状はGoogleドキュメントで原稿を作成してからBloggerに貼り付けており、これが昨年途中から不具合を生んでいる原因かもしれません。このメッセージは直接Blogger上で作成しており、プレビューでも正常に読めます。

いては最近の記事(12月より)を正常に読めない方はご面倒でもお知らせください。

また修正方法で知識をお持ちの方はお助けください。

よろしくお願いいたします。

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追記 1/16/2018 2115HRS
たくさんのコメントありがとうございます。

拡張機能のAdBlockが問題だったとのご報告が出ていますのでご参考まで。

当方の別のBloggerブログでも原稿をアップロードするとやはり同じ問題が発生していますのでBloggerと当方の間の問題かもしれません。

ここらへんは残念ながらAをやったらBだった、という結果論でしかお話しできないのですが...

ひきつづきご愛顧お願いします。

B-52H編隊がグアムに移動し、USAF爆撃機三機種がそろい踏みへ

B-52s Are Headed Toward Guam Where B-1Bs And B-2As Are Already Forward Deployed

B-52がグアムに移動中、B-1BとB-2Aがすでに展開中

If the bombers do touch down at Andersen AFB in Guam it'll be the first time all three USAF heavy bombers will be there at once since August of 2016.

アンダーセンAFBに着陸するとUSAF重爆撃機各型がそろうのは2016年8月以降はじめてとなる。


Rim of the Pacific exerciseSTAFF SGT. KAMAILE O. LONG—1 CTCS
 BY TYLER ROGOWAYJANUARY 15, 2018

B-52Hストラトフォートレス戦略爆撃機少なくとも2機がコールサインMYTEE 51で太平洋を移動中で、ハワイを超えると到着地がアンダーセンAFBとなるのは確実だ。同地でB-1B、B-2Aに合流すれば三機種の同時配備は2016年8月以降のこととなる。
B-2はグアムに突如展開した際に米太平洋軍は爆撃機展開と抑止ミッションにあたると発表。緊張高まる中でこれには核兵器の運用も含むが、B-1Bにその能力はなく、B-2とB-52Hなら実施が可能だ。
B-52のグアム配備がいつまでかは不明だ。ごく短期間で重爆撃機をグアムに展開する訓練は随時行われているが2016年8月同様に三機種が当面そのまま残り同時訓練にあたる可能性もある。
2017年はほぼ通年でB-1Bがグアムから「力の誇示」ミッションを朝鮮半島付近で行っている間に米朝間の緊張が高まった。米側には残る手はあまりない中で戦略爆撃機を北朝鮮近くで飛ばす選択肢は残る。あるいは三機種を同時に飛ばし大規模な力の誇示を行うかもしれない。まるで航空ショーだが米国は同盟国とともにこれまでもこれを実施している。
冬季五輪が近づいているが、今回は世界有数の緊張地帯での開催となる。同時に南北朝鮮で会談が進行中だ。

B-52ミッションが明らかになれば記事をアップデートしたい。■