2018年8月14日火曜日

★中国潜水艦隊を探知攻撃する高性能P-1は日本でしか運用できない機体なのか



なぜP-1はここまで一回も海外商戦に勝てないのでしょうか。性能があまりにも玄人むきなのでしょうか。


China Will Soon Have the World's Largest Submarine Force. And Japan Has a Plan to Stop Them in a War. 中国は世界最大の潜水艦部隊をまもなく完成するが日本は有事の対応策を確保しているAnd this plane is a big part of that plan. この機体がカギを握る

August 13, 2018  by Sebastien Roblin

本は潜水艦による経済破壊を経験した世界唯一の国だろう。世界大戦二回で潜水艦を動員し英国の補給線を大西洋で切断しようとしたドイツのほうが知名度が高いが、Uボートは最終的に連合軍の対潜戦の前に破れた。これに対して第二次大戦時では連合軍の潜水艦が日本商船隊の55%を沈めて日本帝国の伸び切った西太平洋内の補給線が寸断された。
この戦訓が自衛隊に残る中、中国人民解放軍海軍の潜水艦部隊が急速に拡充されており、作戦用艦船70隻を有する世界最大の潜水艦保有国になるのも時間の問題だ。大部分は短距離用ディーゼル艦やAIP動力艦だといっても日本に慰めにはならない。日本が各艦の有効半径に入り日本経済が海上交通路の確保に依存しているためだ。
対潜戦(ASW)では大型哨戒機材が鍵となり、日本はこれまで米製四発機のP-3Cオライオンを運用してきた。同機は長時間の海上哨戒飛行が可能で日本周囲で潜水艦含む各種艦船を追尾してきた。オライオンの稼働期間の終わりに近づく中、日米がジェット推進式の後継機をそれぞれ開発した。
この内米国のP-8ポセイドンはボーイング737-800旅客機を原型としつつ高高度哨戒飛行に特化させたが、川崎重工製P-1は2007年初飛行で完全な新型機で低空及び高高度哨戒を任務とする。P-1は双発C-2と並行開発され部品は重量比で25%を共通化している。
搭載するF7-10ターボファンエンジン四発で長時間哨戒飛行でも冗長性が生まれ、P-3Cのターボプロップより騒音が10デシベル低くく音響上のステルスにつながる。P-1は最大飛行距離が5千マイル・最高時速621マイルで対象地点までP-3より30%早く到達できる。その後は双発低速飛行に切り替え燃料を節約できる。
パイロット二名、ミッション専門員9名で任務を実施する。P-1は光ファイバーによるフライ・バイ・ワイヤ(フライバイライト)を初めて実用化した機体で信頼性に優れ搭載センサーからの電磁干渉に強い。
搭載する各種センサーのうちHPS-106アクティブ電子スキャンレーダー4基が特に重要で機体周囲360度が監視可能だ。海面をスキャンし艦船を探知し、潜水艦のスノーケルやセンサーマストも探知できる。一方で対空探知モードにすれば即席AWACS機にもなる。次に電磁センサーアンテナがコックピット上部にあり、情報収集や敵のセンサー・通信活動を監視できる。HAQ-2赤外線電子光学センサーのタレットが機体下部にあり艦船探知に使う。
仕上げがHQA-7音響処理装置で潜水艦のディーゼル音を聞きとり、さらにカナダ製ASQ-508(V)磁気異常探知機を尾部に装着し、潜水艦が生む磁気特性を低空飛行で探知する。
ただし潜水艦探知の基本手段は投下式ソナーブイでP-1は37本を投下装置に搭載し、これ以外に70本が機内にある。各種センサーのデータはHYQ-3戦闘指揮装置に統合され人工知能で潜水艦の動きを予測する。HYQ-3はSH-60K対潜ヘリなどその他対潜機材と情報を共有し、海軍データベースや衛星偵察データベースで敵の正体を判別する。P-1にはLink-16データリンクもありF-15JやE-767AWACS、イージス艦と情報を共有できる。
P-1が敵対空ミサイル発射の標的になった場合はHLQ-9ミサイル警報装置、電子対抗手段、チャフ・フレア発射機で敵攻撃を探知し無効にする。
同機は20千ポンドの兵装を合計16箇所のハードポイントに搭載し、コックピット後方の兵装庫が8箇所、主翼下が8箇所だ。マーク46または日本製軽量対潜魚雷、ハープーン、91式ASM-1C超低空亜音速対艦巡航ミサイル、AGM-65マーヴェリック精密誘導ミサイルを搭載する。
2018年現在はP-1は15機が海上自衛隊の第三対潜哨戒飛行隊で厚木基地、VX-51試験飛行隊で稼働中で、さらに20機超を発注している。運用実績はほとんど非公開だが、Aviation Weekに「P-3より長距離で中高度、低高度で潜水艦探知を普通に行っている」と関係者が述べている。
日本は最終的に60機ないし70機のP-1を導入しP-3C全機と交代させる。またP-1は10年ごとにセンサー類を性能向上させ、その他P-3をもとにしたEP-3C情報収集機(5機)、OP-3C光学偵察機(4機)、UP-3C・UP-3D試験・訓練機(4機)と交代する専用機材もP-1原型で調達するのではないか。
日本は2014年に防衛装備輸出ルールを緩和し、P-1の対外営業を始めた。ただしニュージーランド、英国でポセイドンに敗れている。P-1の機体価格は125-150百万ドルだが調達価格は250百万ドルだ。それでもタイ、ヴィエトナムが関心を示しており、日本はフランス、ドイツにもアトランティック哨戒機の後継機種としてP-1を提示している。ただし米軍事調達ネットワークの強みと737部品の入手が容易な中でP-1には分が悪い。
とはいえP-1にはP-8より優れる点があり、低高度飛行性能で優れ、移動中の最大速度が高いこと、ハードポイントが多い(P-8は11点)、四発エンジンならではの柔軟性、MADセンサー搭載(P-8ではインド海軍用P-8I除きすべて非搭載)がある。両機種の搭載するセンサー類の直接比較は実際の運用実績を見ないと困難だ。その稀な機会が2018年6月のマラバール対潜戦演習で日本のP-1が米、インド両国のP-8と参加した。
高性能対潜哨戒機が海外に販路を開けるかは別として日本はP-1とそうりゅう級大気非依存型推進式潜水艦で中国の増え続ける潜水艦部隊の脅威から防衛が可能と見ている。
Sébastien Roblin holds a master’s degree in conflict resolution from Georgetown University and served as a university instructor for the Peace Corps in China. He has also worked in education, editing and refugee resettlement in France and the United States. He currently writes on security and military history for War Is Boring .
Image: Creative Commons.
ここまで高性能のP-1が海外受注できないのは機体価格だけが原因ではないでしょう。日本の求める性能が高すぎるのであれば一部国には装備を省略した派生型を提示してもいいのでは。また装備売り込みを総合商社に任せてはいかがでしょうか。経済的動機がうまくはたらくといいのですが。MADをP-8が搭載しなくなったのは探知方法としてはもはや必要ないという米海軍の判断なのでしょうか。

2018年8月13日月曜日

★終わりの始まりか 2018年は中国の曲がり角の年として記憶される



米国を本気で怒らせてしまったのは習近平の稀に見る失敗で、このままだと政権基盤もあやうくなるでしょう。思い上がった中国が国際政治の力のバランスを崩すと公言したことが原因とも思いますが、見るに余る中国の言行をここで叩かねばとの思いが米政権にあるからでしょう。たしかに円-人民元レートで見てもずっと人民安になっており、輸出ビジネスなら通貨安で喜ぶはずなのに中国経済は不安に包まれています。そうした事実をなんとか伝えないようにしている日本のメディアとは一体どういう神経なのでしょうかね。中国の場合は一方に偏った意見ばかりではないところがまだ救いなのですが、機を見てから出ないとこうした声が出ず、気がついたら批判合戦になるということの繰り返しのような気がします。民主主義ともっとも縁がない国なのでしょうね。何でもいいですけど世界に迷惑を与えない国になってもらいたいものです。

 

Cracks may be starting to show in Xi Jinping's absolute rule over China due to Trump's trade warトランプの貿易戦争発動で習近平の鉄壁の統治にヒビが入り始めてきた





Xi JinpingReuters/Damir Sagolj
  • 米中貿易戦争の激化で中国共産党CPCに大きな亀裂が生まれている
  • 反対は弾圧を続けてきた習だが党内に中国のイメージ悪化、習の貿易問題対処に不満を持つ向きが出現
  • 中国政府に近い筋はロイターに中国の国家主義が米国を刺激し中国経済を痛めていると指摘
  • 産経新聞によれば胡錦濤含む党内長老がCPCの経済外交政策見直しを求めるという異例の書簡を送付


中間の貿易戦争激化で内部筋によれば中国共産党内部の指導層にも緊張が高まっているという。
この十年間の習近平は権力集中で中国国内統治を強化し軍と政府への支配を強め反対派は政治犯として弾圧してきた。
その過程で中国の宣伝工作は中国を強国で国民一丸となった国家としその中心が習近平だと声高に主張してきた。
中国政府に近い筋複数からこうした強気の動きが裏目に出て米国を挑発した結果、経済史上最大とも言われる経済戦争につながったとロイターに述べている。
政策顧問の一人は匿名で中国経済の見通しが「暗く」なり対米関係も通商をめぐり悪化していることで指導部へ懸念が生まれているとロイターに語っている。「貿易摩擦が貿易戦争に発展して考え直す人が増えている」「中国の国力が過大に語られてきたことで米国の考え方が影響を受け中国国内でも別の考え方が出てきたと指摘する専門機関がある」
更に別の筋から政府上層部内部に反感が生まれており、習近平を強力な指導者として売り込んできた張本人Wang Huning王沪宁に反動が及ぶとの声がある。
「宣伝工作に熱中して中国を持ち上げすぎたのはこの男ですよ」と中国統治の中枢で宣伝工作に携わる筋が述べている。
不満の声は中国共産党上層部にも響き渡っている。
産経新聞に寄せられた内部筋の話によれば党長老の胡錦濤前主席最高指導者、前首相温家宝含む数名が7月に党指導部へ書簡を送り、経済外交政策の見直しを求めさらに党が特定個人によるカルト的指導に向かっていると指摘したという。
CPCの長年の党員のひとり(胡錦濤に近い人物)は産経新聞に習近平の「独裁政権」への支持が消え始めたのは6月のことで国家による宣伝工作の中で本人の存在が消え始めたという。7月には習近平の名前が国家メディア人民日報の一面に現れない現象が一週間に二回発生した。
習は先月に政治局会議を唐突に求め、党内25名の最高実力者で構成する決定期間で米関税で打撃を受けた経済の安定化策を検討したといわれる。
習は恒例の北戴河Beidaihe避暑地での党指導部学習会合では習の指導力と米中貿易戦争が主な議題になると台湾報道機関Taiwan Newsは見ている。
今週になり米国、中国はともに貿易戦争を激化しており、米国は中国産品160億ドル相当に8月23日から25%関税を課すと発表している。

反対に中国も米国産品160億ドルに25%関税を同日から課すと発表したが、専門家からは中国の対応策が底をつきはじめており、米国が中国から輸入する規模がその逆より大きいため中国経済が受ける打撃のほうが深刻との指摘がある。■

2018年8月12日日曜日

★F-117はなぜ今も米西部で飛行しているのか



The Air Force retired its F-117 Nighthawks, but they are still mysteriously flying over Nevada — and may be the key to the US' next-generation aircraft F-117ナイトホークは米空軍で退役したはずなのに今も秘密のうちに飛行している。次世代機開発のカギになっているのか

David Cenciotti,

F-117 Nighthawk stealth aircraft1999年4月4日、ドイツ・ボン南西部のスパンダレム航空基地にて。 Reuters
  • 2008年に第一線を退いたF-117ナイトホークステルス機がまだ飛行しているのは謎だ
  • 旧式ステルス機の同機は各種テスト開発用途に投じられているのだろう
  • 新型レーダーあるいは赤外線捜索追尾装置の開発の他、新型SAM装備、新型RAM機体塗装、さらに第六世代戦闘機あるいは新世代のAEW機材開発が関係しているのだろう


こ数年にわたりF-117ナイトホークジェット機がネヴァダ上空を飛行しているとお伝えしてきた。同機は公式には2008年に退役になったがミッションは続いている。
2014年に入り映像画像がオンライン上に出回り、米空軍も同機が「タイプ1000」保存機としてトノパ・テスト施設(TTR)に保管されている事実を認めた。この分類は実戦に呼び戻されるまで保守管理の対象となる機材のことだ。米国は同機は現在の想定でも十分使い勝手があると見ており、その後も飛行ミッションに投入しているのだろう。ミッションのねらいは乗員(複数筋によれば米空軍隊員ではなくロッキード・マーティン社員だという)の習熟度維持と機体の飛行可能性の維持にあるといわれる。ネヴァダ砂漠の環境はステルス機の維持管理に理想的とされ乾燥気候のため機体腐食の可能性が低い。このためTTRを舞台に同機が活動をしているのだろう。
だがこれで謎がすべて解けたとはいいがたい。
2016年7月に本誌は二機のF-117が編隊飛行する画像を公開した。撮影箇所は距離の離れた丘陵地でトノパ演習場の端だった。画像分析した読者はさらに二機のF-117が滑走路にあり、うち一機は通信アンテナらしきものを機体上部に立てているのがわかったはずだ。もう一機のナイトホークにはそのようなアンテナはなかった。新型アンテナなのか。何のためなのか。遠隔操縦F-117なのか。如何せん画像の解像度が低くなんとも断言できなかった。
One of the interesting photographs taken by The Aviationist’s contributor “Sammamishman” at the end of July 2016. One of the aircraft seems to show a slightly different antenna/shape: just a visual effect caused by the distance?Aviationist’常連の “Sammamishman” が2016年7月末に撮影した写真では駐機中の一機に別のアンテナがついているようにも見えるが、遠距離からの視覚効果にすぎないのか。The Aviationist


昨年米空軍から発表があり同型機は完全に廃止するとあった。「2017年国家防衛予算認可法に準拠し、空軍は毎年四機のF-117を廃棄し最終的に全機を処分する」とオリアナ・ポーリクが昨年伝えており、今年は一機、その後は毎年四機のF-117が姿を消すとあった。
2017年11月13日、F-117の一機がトレーラーに乗り高速95号線を移動する様子が目撃された。場所はクリーチAFB(ネヴァダ南部)だった。この目撃は2017年末までに一機のF-117を処分するとの発表と符合していた。2018年からは毎年4機を処分するという内容だ。言い換えればトレーラーに乗せられていた機材は飛行機の墓場への移送途中だったのだろう。だが翌日の11月14日に、別のF-117がネヴァダ州レイチェル北方で目視され、チェイス機はグルームレイク所属の複座型F-16だった(おそらく同機はその後スターウォーズキャニオンを飛行したのと同じ機体だろう)。
一気に2018年7月26日に話を飛ばす。Youtubeユーザーの"pdgls"がF-117二機がまたもやトノパ試射場上空を飛ぶ映像を投稿した。
映像ではF-117二機がナイト(NightまたはKnight--第9戦闘機隊コールサイン)17、19として離陸している。試射場上空でブラックジェットの特徴がよく見える。
ただし交信記録に興味をそそられる。
以前の目撃事例と違い、今回は視覚聴覚の両面から興味深い詳細情報が見られる。離陸後のF-1172機編隊はシエラ98と呼ばれるKC-135給油機(フェアチャイルド空軍基地所属)から給油を受けている。F-117がストラトタンカーから給油を受けるのは通常ではない。その後編隊を説いている。ナイト17はテストミッションへナイト19はトノパ試射場へ戻っている。注意したいのは17が途中でコールサインを変更してダガー17になっている。ダガーはステルス機部隊で知名度の高いコールサインだ。410試験飛行隊が使っており、ロッキードと空軍がグルームレイクで使うコールサインだ。
The War Zoneのタイラー・ロゴウェイも同時に指摘している。
「コールサイン変更の前にブルーバード、ブロンドガールの名前が呼ばれており、なんらかの管制部隊の名称なのだろう。その後F-117が『ラムロッド』RAMRODとチェックのあとテストを開始している。ラムロッドがF-117に『スピン』開始を告げており、通常は飛行経路パターンの開始を意味するが、このバイアは暗号付きのテストカードの実施の指示が聞こえる」
ラムロッドというのは何らかのセンサー装備のことだろう。可能性が高いのはDYCOMSレーダー断面積測定施設のことでエリア51にあり飛行中の機体のレーダー特性を各種角度で測定する地上センサーのことだ。また別の可能性としてラムロッドが飛行中に同様の特性測定を行う機材なのかもしれない」
ダガー/ナイト17が何らかの地上レーダー関連施設と共同作業している間にナイト19は別の任務として低空接近を繰り返しILSローカライザーアプローチで探知アンドゴー他を実施している。通常任務につかない機材がよく行う一連のパターンだ。
ADS-B記録からはKC-135ストラトタンカーの支援内容の中身がわかる。同機#58-0086は前日(7月25日)もEAAエアヴェンチャー・オシュコシュで飛行しており、ワシントン州フェアチャイルドAFBを出発し6時間超のミッションに投入されている。同時間帯にシエラ98が別の機材にも給油しているかは不明だ。保存中の機材二機には通常ミッションとはいえ相当の支援であったことは間違いない。
The KC-135 supported Night 17 and 18. It did not broadcast its GPS position and was not geolocated via MLAT. The only detail gathered from its transponder is the serial 58-0086.
ナイト17,18を支援したKC-135はGPS位置情報を発せずMLATによる表示に出てこない。トランスポンダーから判明したのは機体番号58-0086のみだ。@CivMilAir


言うまでもなくF-117のフライトは謎のままだ。ナイト19が基本パターンの飛行をしていることから機体の飛行状態の維持が目的なのだろう。一方ナイト17は複雑な飛行を始めるに当たりコールサインをダガー17に変更していることからブラックジェットで何らかの別の作業が進行中のようだ。The Aviationistで度々お伝えしているようにレーダー探知されにくい機体としては「レガシー」といわれるF-117だが今でも各種テスト開発業務に投入できるのだ。新型レーダー、赤外線探知追尾装備、新型SAM地対空ミサイル、新世代AEW早期警戒機の開発等だ。ステルスUCAVの研究支援も可能性があり、以前指摘があったように一部機材が無人機に改造されているのかもしれない。さらにナイトホークがアグレッサーとして実際の演習やシミュレーションに投入されている可能性も排除できない。これがレッドフラッグと関連しているかはわからないが大規模LVC(ライブ仮想構造)のシナリオでは実機を仮想機材と一緒に運用する。
読者の皆さんはどう思われるだろうか。■

シアトルの盗難旅客機にF-15C編隊がアフターバナー全開で迎撃していた

F-15Cs break sound barrier to intercept stolen airliner out of Seattle airport in bizarre incidentF-15C編隊が盗難旅客機を超音速で迎撃したシアトルの奇妙な事件

Tom Demerly,


F-15CF-15C US Air Force
  • シアトル-タコマ空港を離陸した盗難旅客機をF-15C二機で迎撃する事件が8月10日に発生。
  • フェイスブック利用者の報告によるとソニックブームがイートンヴィル上空で聞こえたという。
  • 空港整備員がダッシュ8双発ターボプロップ機を盗み出したが機体墜落で死亡。


妙な事件がシアトル-タコマ国際空港(ワシントン州)で発生し、アラスカエアラインズ/ホライゾンエアボンバルディアダッシュ8双発ターボプロップコミューター機が男性一名により離陸したあとタコマ南西のケトロン島に墜落した。機内に乗客は乗っていなかった。男は墜落で死亡し報道では唯一の犠牲者とされる。
同機への対応としてオレゴン州軍航空隊のF-15Cイーグル二機がポートランド国際空港から緊急出動した。同編隊は旅客機に向かう途中で「音の壁」を破ったとの報告がツイッターや現地報道で多数見られる。フェイスブックではソニックブームがイートンヴィル上空で聞かれたとある。
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Rock 41 and Rock 42 scrambling out of PDX this evening
航空写真家ラッセル・ヒルがスクランブル発進するイーグル二機を撮影しており、アフターバーナー全開だったのがわかる。同編隊には対抗手段としてフレア発射の許可が出ており、ダッシュ8の飛行進路を変えさせ着陸させようとしていた。赤外線フレアを発射するのは通常は熱追尾ミサイルへの囮となる熱源をつくるためだ。
ツイッターで投稿された映像や報道記事を見るとダッシュ8は曲技飛行を行い海上に突っ込んだようだ。
別の映像ではF-15C編隊がダッシュ8のそばを飛行している。現地放送局WMURチャンネル9の記者は「F-15が盗難機を人口集中地上空から郊外に移動させようとした」と述べている。
Some dude stole a plane from #Seatac (Allegedly), did a loop-the-loop, ALMOST crashed into #ChambersBay, then crossed in front of our party, chased by fighter jets and subsequently crashed. Weird times.
今回の事件は「ハイジャック」扱いとされていない。乗客が一人も乗っていなかったためだ。代わりに遭難機事件の扱いだ。
無線交信記録を見るとダッシュ8を盗んだのはパイロットではなくシミュレーター訓練しかしていないようだ。犯人は航空管制官と交信し、管制官は着陸させようとしていた。

この事件で付近の空域は一時的に閉鎖されたがその後飛行を再開している。シアトル-タコマ空港では大幅なフライト遅延が続いた。■

2018年8月11日土曜日

米空軍はステルス過信を捨てることができるのか

今回ご紹介する退役空軍大将のエッセイが意外な波紋を呼んでいるのは米空軍内部でステルス万能、スタンドオフ兵器絶対の思想があまりにも強いためでしょう。予算状況は厳しく米空軍はどんどん機材を整理していきますが、このエッセイを見れば各種機材の超呂を活かした作戦展開のためにはやみくもな機材の用途廃止はおかしいこと、ステルスは切り込み隊であり、F-15等のレガシー機材が攻撃の柱になって航空優勢が確保できることがわかります。では北朝鮮を攻撃する場合はどうなる(どうなっていた)でしょうか。


Defeating modern air defenses is achievable with smart strategies, not only stealth and standoff高度防空体制の撃破は賢い戦略で可能、ステルスやスタンドオフは万能ではない

Senior Airman Klynne Pearl Serrano/Air National Guard)


2019年度国防予算認可法案で議会は空軍に有人版JSTARS新型機の調達を断念し、かわりに大型宇宙配備装備の高性能戦闘管理システム(ABMS)を調達したいとする空軍の言い分を認めた。ABMSは定義もできておらず、経費も配備予定も未定だ。一方で空軍の意向に反して議会は17機残る旧型JSTARSのE-8C廃止を認めなかった。各機は広範囲地区の偵察や小型移動車両の追跡の他戦闘管理に投入されている。
だが今回の決定でもっと大きな意味があるのは空軍内部で高度統合防空網(IADS)の突破で考え方が明らかに変化していることだ。航空戦闘軍団司令官はJSTARS新型機調達中止を支持し、同機が高性能防空体制の厳しい空域では運用不可能なことが理由だという。
ただしこの考え方は古典的空軍戦術を無視しており、「厳しい」空域を「厳しくない」空域に変えるためには圧倒的兵力を投入すれば、空海陸の各部隊に敵空軍力の脅威を感じさせずに運用が可能なはずだ。こうした敵防空体制の制圧破壊は「ロールバック」と呼ばれ敵側装備が近代化されており耐えられない損耗が生まれる予測に反して、これまで数々の効果を上げてきた。
ただし今や空軍の立案部門ではロシア、中国の防空体制は相当整備されており、新型ステルス戦闘機や長距離巡航ミサイルでないと対応できないと見ているようだ。そのためJSTARS、AWACS、RC-135リヴェットジョイント、MC-130コンパスコール、B-2含む既存機種では相当の損失を覚悟したうえでないと投入できないと見ている。航空作戦の新指針では各部隊は一貫して厳しい防空体制の下で作戦展開するとあり、ロールバック戦略はみられず、制空権を短期間で確保しその後維持する構想は見えない。
ではこれまでの高度IADS相手の航空作戦を概観し、ロールバック戦略で総合的かつ永続可能な航空優勢の確保が可能であるか検証してみよう。その典型が砂漠の嵐作戦だ。
バグダッド並びにイラク各地の軍事施設はフランス製KARI防空ネットワークで防衛体制を整えていた。当時の防衛「専門家」からイラク攻撃に踏みきれば15から20%の損耗率を覚悟すべきとの意見があった。実態はどうだったか。イラクIADSを相手にロールバックを行ったが昼夜通した攻撃でイラク上空の航空優勢を3日で確保し、損耗率は1%未満だった。同様のロールバックはイラクの自由作戦(2003年)でも成功を収めている。
1982年6月にイスラエル空軍はシリア・ベカー渓谷でソ連供与のIADSへ対処を迫られた。予想ではイスラエルのF-15、F-16で相当の損耗が発生すると見られたが、イスラエル空軍はUSAFのロールバック戦術を採用し、敵脅威を排除しながら味方損耗は2日でゼロという戦績を上げ、その後の航空優勢を維持した。
損耗予想が過剰になる傾向があるのは予想モデルが現実と乖離しているため実際には対抗策、おとり、攻撃側の戦力規模、現場で優れた決断をする優秀な乗員が状況の変化に応じ戦術を切り替えるのが通例だ。
確かにステルス戦闘機・爆撃機やスタンドオフ兵器が今後の航空作戦の鍵をにぎる。だがステルスやスタンドオフ兵器だけに依存していては効果的なロールバックができない。それは砂漠の嵐作戦、イラクの自由作戦、べカー渓谷の戦闘事例から明らかだ。さらにステルス機材やスタンドオフ兵器で数量は多数確保できない。だが敵防空網をロールバックできれば非ステルス機や支援機も敵の抵抗が時として見られても自由に行動できる。厳しいと思われた空域が厳しくない空域になるのだ。
USAFには時代を見通した指導者がこれまで現れており、過去の戦闘事例から学び、IADSの限界をつく戦術を採用し、紙の上の損耗率試算と実際の戦闘との違いを理解し維持可能な戦力を整備し、迅速なロールバックで永続的に航空優勢を確保する意味を理解できる人員のことだ。今日の米空軍もこれまでの米空軍がしてきたのと同じ仕事が可能となる。すなわち迅速かつ決定的に航空優勢を確保し維持することだ。
マイケル・ロー大将は米空軍参謀次長のほか航空戦闘軍団の司令官も経験している。

2018年8月6日月曜日

★イスラエル空軍はF-15新規追加調達を前向きに検討中

Aviation Week & Space Technology

Why The Israelis Want A Larger, More Modern F-15 Fleet イスラエルがF-15の増備拡充を必要とする理由



イスラエルはフライバイワイヤ技術を搭載した高性能F-15の追加導入を検討中だ。Credit: Tech. Sgt. Kevin J. Gruenwald/U.S. Air Force


Jul 31, 2018Arie Egozi | Aviation Week & Space Technology
スラエル空軍が将来に向けた装備向上に取り組み、イランが支援するシリア、さらにイラン自体にも対移行しようとしている。このためまずボーイングF-15機材の性能向上を最優先する。
今年初めにイスラエルがシリアの原子炉攻撃に踏み切ったと公表した。これは北朝鮮支援で建設されたもので核兵器用燃料を製造していた可能性がある。
この攻撃ではシリア探知網を無効にした。シリアにはイスラエル軍に対抗できる空軍力はないが、イランはイスラエルから1,000マイルも先にある。
このためイスラエル空軍には両方面で別の機種が必要で遠距離でも重装備で爆撃しつつ、早期警戒網を突破する必要がある。 
2016年からイスラエルはF15Iラーム改修に取り組んでおり、レイセオン製APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイ(AESA)を選定したが旧式APG-70レーダーの換装ははじまっていない。改修には機体構造強化や新装備搭載もある。
改修の実施決定は二年前で、その時点でロッキード・マーティンF-35導入も決まっていた。イスラエル筋によれば空軍は40年先を展望しているという。「F-15には優位性が多々あるが、イスラエル製装備をF-35に搭載すれば性能がさらに上がる」
イスラエルにとってF-15は攻撃力の屋台骨だ。このため同機の追加調達を検討中だ。
F-15生産ラインはカタール発注により2020年まで維持が決まっている。
イスラエル空軍がF-15追加調達に動けば米国で2016年に承認された海外軍事装備金融のしくみを使うことになりそうだ。2019年から10年にわたり380億ドルを供与することになっており、以前の10年の310億ドルをうわまわる規模だ。 
並行してイスラエルは米州軍航空隊が使ってきたF-15D9機の再生改修に取り組んでいる。この機材はオレゴン州クラマスフォールズの173戦闘機隊で供用されていた。
機材はイスラエルに寄贈されたもので「非常に高性能な仕様に」改修されると消息筋が語っている。
イスラエルのF-15Dバズは以前から改修を受けており、制空、対地攻撃、偵察、指揮統制用の中継用と多用途戦闘機として長距離攻撃ミッションの支援に投入されている。
イスラエル空軍は新規製造F-15を調達してからF-35調達の75機原案を変更すべきか検討するようだ。
イスラエル筋によれば米国防総省との間で高性能版F-15の20機から25機調達の可否を協議中だという。
協議対象のF-15の型式について詳細は不明だが、筋によればカタールが調達するF-15イーグル2040Cに近く、ミサイル搭載本数の増加がねらいのひとつだ。
また特殊通信ポッドを搭載し、データを僚機と安全に交換できる。また2040Cにはレイセオン製AN/APG-63(V)3 AESAレーダーや長距離赤外線探知追尾装備も搭載する。
商談が成立すれば米空軍向けT-X練習機や米海軍のMQ-25艦載給油UAVの受注をともに失ってもボーイングの生産ラインは2020年代なかばまで維持できるとキャピタルアルファパートナーズのバイロン・キャランは見る。「海軍とクウェートの発注でF/A-18生産は2020年代はじめまで維持でき、ボーイングはカタール向けF-15納入を2022年末に完了する」とキャランは書き「ボーイングはF/A-18でチャンスがあるがカナダ、ベルギー、スイス、フィンランド、スペインそれぞれで成約する可能性は低い。また米空軍向けに新規高性能版F-15販売が成立する可能性も高いとは思えない」としている。

ボーイングが画策する戦闘機売込みは成功のチャンスが低いとあれば同社が有人戦闘機ビジネスから撤退する可能性も出てきますね。米空軍が食指を動かさないとしても航空自衛隊はどうでしょうか。ミサイルトラックになる新型イーグルはそれなりに魅力があると思うのですが。