2020年9月9日水曜日

ロボット軍用犬がネリスAFBでの演習に登場。警備任務に投入された。

 Air Force robot dog security

ジョン・ロドリゲス技術軍曹がゴーストロボティクスのVision 60試作型とともにネリス空軍基地での演習に巡回警備している。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne

 

  • リス空軍基地(ネヴァダ州)で「ロボット犬」が試用され、基地が攻撃を受けた想定の演習で警備に投入された。

  • 演習ではF-16ファイティングファルコン等に迅速燃料補給や装備搭載がおこなわれ、ロボット犬が空軍警備要員を視覚的に補助した。

「ロボット犬」は警備要員の状況認識を強化する狙いがある。


ロボット犬を開発したのはゴーストロボティクス Ghost Robotics で、空軍研究本部の契約が4月だったが、先週迅速戦闘投入演習の会場となったネリス基地に姿を現し、敵攻撃を受けた想定の飛行施設確保をシミュレートした。


Air Force robot dog security


ロドリゲス軍曹がゴーストライダーのVision 60試作型をネリス空軍基地での演習で制御した。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



演習には全米各地から正規部隊と州軍航空隊が集結し、空軍が目指す次世代の高度戦闘管理システムの効力を試す目的があった。


今回投入されたロボット犬の型式名は Vision 60でゴーストロボティクスが情報収集監視偵察(ISR)用、通信用、「連続警備用」の軍用仕様にかえたものだ。「全地形で安定した移動と事実上あらゆる環境に対応するため、設計の中心思想では脚走行ロボットの機構部分を簡略化しており、車輪付きUGVよりも簡単な構造になっている」とゴーストロボティクスは説明している。「簡素化により耐久性、迅速性が増加しているし、運用コストも下がっている」


Air Force robot dog security


ゴーストロボティクスのVision 60 試作型がネリス空軍基地の演習で警備を担当した。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



今回の演習では321緊急対応飛行隊、621緊急対応飛行団がコロラドのバックレー空軍基地からネリスAFBへ109空輸団のLC-130ハーキュリーズで移動した。


Vision 60ロボット犬は一帯の視覚評価を提供し、621飛行団隊員が機体周辺を警備した他、増援部隊の到着時に安全を確保した。


演習にはC-130の二番機にF-16ファイティングファルコン4機が加わり、迅速燃料補給・装備再搭載をする間、ロボット犬が保安要員とともに安全を確保した。


Air Force robot dog security


ロドリゲス軍曹がゴーストロボティクスVision 60試作型とネリス空軍基地での演習で警備にあたった。September 3, 2020. US Air Force/Tech. Sgt. Cory D. Payne



Vision 60ロボット犬が今回の演習でどの能力を試されたのか詳細は不明だが、公表写真では621CRW所属の隊員がロボット犬各種と勤務にあたる姿が見え、ゴーストロボティクスが主張するモジュラー構造設計が活用されていることがわかる。■


この記事は以下を再構成したものです。


The Air Force just tested 'robot dogs' to help security forces keep an eye on their bases


Jared Keller, Task & Purpose 18 hours ago


2020年9月8日火曜日

MQ-9後継機は全く違う機体になる兆候。登場は2030年以降だが、最新技術で中国、ロシアへ対抗する

 

MQ-9 Reaper

Air National Guard photo by Tech. Sgt. Neil Ballecer

 

 

ェネラルアトミックスのMQ-9リーパーは中東で延べ数百万時間も投入されてきた。だがペンタゴンはこれからは互角戦力を持つ敵が相手の厳しい戦闘と考え、後継機に全く別の戦闘環境を想定している。

 

 リーパーは先行登場したMQ-1プレデターを拡大し、ペイロードを増加させ、「ハンターキラー」として攻撃のみならず情報収集偵察監視任務まで実施している。ただし、関係者はこうした任務を別の機体に任せる時が来ていると見る。

 トランプ政権の2021年度予算要求にその意向が反映され、MQ-9新規調達をゼロとし、後継機開発を求めたが、議会はこれを突っ返した。

 

ローパー次官補の考え方

 米空軍で調達を取り仕切るウィル・ローパー次官補は「MQ-9を廃止してハイエンド戦に対応させる転換を図った」と7月に記者会見で話していた。空軍は後継機をMQ-Nextと呼ぶ。

 空軍は2012年にも後継機をMQ-Xとして実現を狙ったものの中止した経緯があり、今回が二回目のトライとなる。ペンタゴンがロシアや中国といった高度戦闘能力を有する敵相手に重点を移しつつある背景が今回の違いだ。

 空軍は業界に情報提供(RFI)を6月に求め、7月締切までに大手防衛産業数社が回答している。

 一方でローパーは機体価格も重要視する。

 「MQ-9のミッション以上の可能性を模索している。ただし空軍省予算内で実現するためには機体価格が重要要素だ」空軍省にはその他高額案件があり予算の余裕がない。第五世代戦闘機、新型ステルス爆撃機、地上配備核抑止力の近代化、宇宙装備や全ドメインの指揮統制機能などだ。

 野球のたとえを使い、ローパー次官補は次期機材は多彩な用途をこなす選手にしたいと述べた。ローパーの考える機体はISRデータを収集し同時に空対空兵装も搭載する。

 「ハイエンド戦でも敵戦闘機がやすやすと侵入できない哨戒線を作れる無人機が実現できないか。同じ機体を呼び戻し重要装備、機体や基地の防御にあてられないか」

 期待される任務をこなすためには一機種では足りなくなるかもしれないとローパーは見る。

 「ファミリー構成のシステム装備品にしてもよい」といい、産業界にはハイエンドの敵相手に戦うため独創的な発想を期待したいという。

 自律運航度を高めるのも一つの解決策で、機体価格を下げる効果も期待できるとローパーはみている。

 「MQ-9一機運航するだけでも多数の人員が必要だ」「当時の技術で設計されているからだが、いまや自動化の範囲が拡大している」

 「機体価格を下げるため可能な限り自動化させる必要がある」

人工知能に制御させ、運航コストを下げる技術解決もあるという。

「ISRの時間当たり経費は下がる。アルゴリズムで元の映像を迅速処理し遠隔地の操作員に送り、標的を識別できる」とローパーはミッチェル航空宇宙研究所開催のイベントで発言していた。.

 一方でどこまで残存性を求め、どこまで消耗品としてあきらめるべきかも重要な検討要素だ。

「低価格の機体を多数製造すれば補給活動が課題となる。他方で防御力が高い機体にすれば、敵は重要装備を投入しても阻止に動くだろう」

 ただし消耗前提の機体への移行は容易ではないという。「出撃すれば必ず帰還できる機体を作ってきた。帰還が期待できない機体を作るとなると用兵部門にも製造部門にも全く違う考え方となる」

 ローパー次官補はRFIへの業界対応に独創的な発想を期待している。

 空軍がもくろむのは2030年の納入開始で初期作戦能力の獲得は2031年とRFIにある。

 「デジタルエンジニアリングでは、10年は永遠に近い。この10年で数十年に相当する効果を期待したい。2030年までに完成できないのなら、システムの何かがおかしいことになる。10年間をまるまる開発に使っていいわけがない」

 

ジェネラルアトミックスの意気込み

 ジェネラルアトミックスはRFIに回答ずみで、MQ-9の知見を応用して成果を上げたいと同社広報が語っている。

 「当社が提案する先進技術はオープンアーキテクチャ、人工知能、自律運航、モジュラー構造さらに相互運用への対応でシステム効率を最大限に実現します」「当社の先端技術でライフサイクルコストを下げつつ第一線部隊で高性能無人装備を通じ、共通性と相互作戦能力を実現すると見ています」

 同社はすでに各種システムのファミリー構成を想定していると同社広報は続けた。次期機材では自動化の幅を広げるが、一部はMQ-9ですでに実現しているという。

 「離着陸の自動化や遠隔地上走行さらに運搬式機体制御装置を使い、離着陸地点に人員配置が不要になりました。また地上制御装置は一人で対応可能としつつ、最大6機の同時制御が一人で可能となりました」

 リーパーの自動化ツールを全部そのまま使えば、人員経費を50パーセントが減り、1500人分の人員余裕が生まれると同社は述べている。

 

各社競合になるのか

 業界筋はジェネラルアトミックス以外にロッキード・マーティンボーイングノースロップ・グラマンの参入があるとみている。

 まず、ロッキード・マーティン広報はRFIに対応し、スカンクワークスによる高度技術開発成果を反映していくと述べている。

 ボーイング、ノースロップ・グラマン両社はRFIを提出するか口を濁している。

 MQ-Nextはジェネラルアトミックスにとり重要事業となる。というのもMQ-9が同社の主力製品だからだとフィル・フィネガン(Teal Group)が解説する。同社はヴァージニア州フェアファックスに本拠を置く航空宇宙防衛市場を分析する企業だ。

 「同社は後継機の採用を狙い全力をあげてくるだろう」と述べ、同社はリーパーの収益で維持されており、採用されないと存続が危うくなるという。

 一方でマーケティングコンサルティング企業のフォアキャストインターナショナルで上席防衛アナリストのラリー・ディッカーソンは MQ-Next受注失敗でジェネラルアトミックスの運命が決まる話にならないと見る。

「リーパーは今後も軍に残り、長期にわたり機体整備や支援の業務が同社に残るはずだ」というのだ。

 

変化に消極的な態度の議会

 他方で空軍がMQ-9後継機づくりに前向きなのと対照的に議会に熱気が見られない。下院版の2021年度国防予算歳出案が7月に可決されたが、MQ-9の16機を344百万ドルで調達する内容が盛り込まれており、生産ラインを維持するとある。本稿執筆時点では最終法案は通過していない。

 「空軍の2021年度予算要求にはMQ-9生産の終了がうたわれており、作戦要求に対して機材数が余剰なのを理由にしている」と下院歳出委員会国防小委員会が解説。「当委員会はこの提案を認めず、逆にMQ-9の追加調達16機分が妥当と提言する」

 議会には空軍が十分に計画せずに後継機調達に飛びつく現状に懸念する向きがある。同上小委員会は空軍に対しMQ-9後継機報告書を2022年度予算要求案の前に提出するよう求めている。

 「報告書では次期装備の望ましい性能水準、経費ならびに大日程を開発、配備の実現に関連で示すとともに開かれた競作を確保し、国家防衛戦略構想の目標をどのように実現できるのか説明を求める」との内容が法案に付随している。

 ローパーは新型機の有用性を議会に納得させるのは空軍の仕事だと強調している。

 「いろいろ使える選手を育てて多様なミッションに投入するためこれまでの調達方法ではうまく行かない。議会には大きな転回点と理解してもらいたいし、今後議論を進めていく」

 フィネガンもMQ-9生産終了を認めたくない議員の心情がMQ-Nextで支障になると注意している。

 「議会にとって気に入らないのは生産ライン閉鎖です。そのため事業を止めるのは極めて難しい話なのです」

 

無人機輸出条件緩和の影響は

 他方で、トランプ政権から7月にUAS輸出規定をミサイル技術規制制度(MTCR)との絡みで緩和する発表があった。これでリーパー並びにMQ-Next双方に影響が生まれそうだ。新分類では「カテゴリー1」装備品は最高速度が時速800キロとなる。改定後は米企業に商談の可能性が増えるとみる向きが多い。

 ジェネラルアトミックスでは規制緩和でMQ-9輸出が増えるとみているものの障壁も残っているとディッカーソンが指摘している。MTCR変更がMQ-Nextの販売にどう作用するかはだれにもわからないという。

 「どのシステムを選択するかにかかってきます。米国はこの装備品は簡単に他国に使わせたくないはずです」■

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

MQ-NEXT: Air Force Sets Sight on Reaper Drone Replacement

By Yasmin Tadjdeh

 

— Additional reporting by Mandy Mayfield

Topics: Air Power, Air Force News


2020年9月7日月曜日

歴史に残る機体(28) F-4ファントムはいまだに供用するところもあるが誕生から60年が経過している

 歴史に残る機体(28)マクダネル・ダグラスF-4

 

 

クダネル・ダグラスF-4ファントムIIは伝説の域に入る機体だ。ヴィエトナム戦争を象徴する機体であり、第三世代ジェット戦闘機の典型となった同機は1960年代に供用開始し、5千機超が生産された大型超音速戦闘機だ。今日でも供用中であり、一部空軍では実戦部隊に配属されている。

 ファントムにはヴィエトナム戦でエンジン推力にあぐらをかいた不器用な乱暴者で使う兵装も旧式だったとの定評がある。

これは公正ではない。

 

 

ファントムの基本欠陥は1970年までに是正され、最近もエイビオニクス、兵装面で現在の水準まで引き上げられている。近代化改修したファントムはトルコ、ギリシアの両空軍で供用中で、F-15と同程度の性能でありながら、はるかに安価に実現している。

 

実戦で洗礼を浴びる

 1958年に登場したF-4は革命的な設計で数々の航空記録を樹立した。

 空虚重量が30千ポンドで大型J79エンジン双発により優秀な推力を実現し、これだけの機体でもマッハ2、時速1,473マイルで飛行できた(できる)。 

 初期のファントムは18千ポンドの爆弾等を搭載でき、これは第二次大戦時のB-17の三倍に相当した。後席の兵装士官が高性能レーダーや兵装運用システムを担当してパイロットは操縦に専念できた。

 さらに、F-4には地上運用型、空母運用型双方があり、米空軍、海軍、海兵隊で供用された。三軍共通機材の例はF-35までなかった。

 ただし、軽量のMiG-17やMiG-21と北ヴィエトナムで空戦に臨むと、ファントムに被撃墜機が発生した。朝鮮戦争では米空軍は一機撃墜されるても敵機6機ないし10機を撃墜していたが、ヴィエトナム戦では2対1程度に縮小していた。(ファントム以外の米軍機全体での数字)

F-4の問題は機体に機関砲が搭載されていないことだった。空対空ミサイルに全面的に頼っていたためで、レーダー誘導方式のAIM-7スパロー、熱追尾式AIM-9サイドワインダー、旧式AIM-4ファルコンを搭載した。

 初期のミサイル性能がひどいことに空軍は気づいていなかった。

 検証したところ、ヴィエトナム時代のAIM-7では45パーセント、AIM-9では37パーセントしか発射に成功あるいはロックオンできず、退避行動をとると撃墜可能性はそれぞれ8パーセント、15パーセントに落ちると判明した。ファルコンに至ってはさらに悪く、その後供用を終了した。

 北ヴィエトナムのMiG-21には機関砲、ミサイルがともに搭載されており、重量が大きいF-4に速力、機動性で勝った。米パイロットが至近距離のドッグファイト訓練は行ってなかったのは、空軍が空対空戦は長距離ミサイル攻撃になると想定してきたためだった。

 さらにファントムのJ79エンジンは濃い黒煙を発し、機体サイズとあわせ空中で発見は容易で遠距離から標的になった。他方で交戦規則により米パイロットは未確認目標が視認距離外にあれば攻撃を禁じられていた。これでせっかくのミサイル性能も発揮できなくなった。

 

改良策

だが、F-4の問題点は解決されていった。空対空ミサイル技術は大幅に向上し、後期型のスパロー、サイドワインダーに反映された。F-4EではついにM161ヴァルカン機関砲が搭載された。.

 それ以前は外部ガンポッドを搭載して対応するファントムがあったが、大きな振動が発生していた。

 1972年、フィル・ハンドレー少佐のF-4がMiG-19を機関砲で撃墜したのが超音速域での銃撃による撃墜事例で唯一のものとなっている。

 空軍はF-4E全機に主翼スラットを搭載し、操縦性を大幅に改良した。新型J79エンジンでは黒煙問題の解決を狙った。

 対照的に米海軍は航空戦闘機動訓練の欠如が原因ととらえ、トップガン訓練を1968年に開始した。海軍パイロットはキルレシオで優秀な結果を残しており、7機を喪失したが40機を撃墜している。 

 空軍のファントム全体では107機を撃墜したが、33機を喪失している。海兵隊は3機撃墜したとする。地上砲火で三軍で474機のファントムを喪失したのはファントムに対地攻撃も担当させたためだ。

 派生型が二種類生まれた。RF-4写真偵察機とワイルドウィーゼルで、後者は敵の地対空ミサイル防空体制の撃破を専門とした。米軍のファントム実戦投入は砂漠の嵐作戦が最後となり、1996年に用途廃止した。ペンタゴンは一部機材を無人標的機QF-4に改修した。

 

中東のファントム

 ファントムは世界中で供用された。特にイスラエルではエジプト、シリアを相手に116機の撃墜記録を達成した。

 1973年のヨムキッパー戦争(第四次中東戦争)ではエジプト空軍のMiG編隊がオフィール航空基地を急襲し、離陸できたのはファントム二機しかなかったが、7機の撃墜に成功した。.

 イスラエルのファントムの第一の標的はアラブ側の地対空ミサイル陣地だった。SAMによりイスラエルはファントム36機を喪失している。

 イスラエルのファントムで最後の奉公となったはレバノン戦で、新型F-15やF-16のエスコートを受けたファントム編隊は一日でベカー警告内のシリア軍SAM陣地30か所を全部撃破したが一機の喪失もなかった。

 イランは革命前に米国より225機のF-4を受領し、イラン戦闘機部隊の中核となり9年にわたり続いたイラクとの戦争に投入した。イランのファントムはイラクMiGに善戦したほか、長距離攻撃も実施した。ただし、空対空ミサイルの成果については疑問の余地がある。

 

21世紀のファントム

ファントムをF-15イーグルと比較してみよう。

 F-15の供用開始は1975年で第四世代戦闘機として今日まで近代空軍力の中心的存在だ。F-15は意図的にF-4とは別の路線の高機動性を誇る機体になっている。

 レバノンでF-15、F-16が初の戦闘投入された1982年にイーグルはシリアの第三世代機80機超を撃墜しながら被撃墜機は皆無だった。

 第四世代戦闘機の優秀性が実証されたのが湾岸戦争で、イラク戦闘機が撃墜に成功した第四世代戦闘機はF/A-18ホーネット一機に過ぎないが、第三世代機では33機を撃墜している。F-4は新しい環境に対応できるのだろうか。

 簡単である。第四世代機で搭載したハードウェアと同じものを搭載すればよいのだ。

 トルコ空軍、ギリシア空軍で供用中のファントムには新型パルスドップラーレーダーが搭載され、「ルックダウン、シュートダウン」攻撃がF-4で可能となった。従来は高高度飛行中はレーダーによる低空飛行中の機体探知は困難な仕事だった。レーダー波が地上に反射してクラッターが発生するためだ田。アクティブドップラーレーダーだと地表クラッターの影響を受けない。

 近代改修型F-4では各種近代装備を運用でき、AIM-120C AMRAAM空対空ミサイル(射程65マイル)、AGM-65マーベリック精密誘導弾、スパロー後期型、サイドワインダーミサイルがそれぞれ搭載可能だ。

 現代の戦闘航空機材はウェポン搭載手段にすぎず、こうした装備を運用できるF-4は第四世代機のF-15、Su-27と同様の攻撃任務をこなせる。

 だが電子装備や計器類は陳腐化しているのではないか。必ずしもそうではない。たとえば、近代化改修型のF-4にはヘッズアップディスプレイ(HUDs)がつき、パイロットは視線を落として計器盤をチェックする必要がなくなった。

 ドイツは改修型F-4Fを2013年まで運用し、将来のため機材を保管している。韓国にはF-4Eが71機があるが、改修は一部にとどまる。日本もF-4EJ改を同数保有し、パルスドップラーレーダーと対艦ミサイルを搭載する。イスラエルはファントム改装をいち早く1980年代に開始し、ファントム2000クルナス(ハンマー)と呼んだ。イスラエル企業はギリシアのピースイカルスファントム41機にANPG-65パルスドップラーレーダーを搭載し、AMRAAMミサイル運用を可能とした。

 イスラエルはトルコにもターミネーター2020事業で協力しており、主翼にストレーカーを追加し操縦性能を向上させている。

 同機改修では配線20キロメートル分を交換し重量1,600ポンドの軽量化に成功した。トルコ向け機材ではセンサー、電子装備も一新している。またぺイヴウェイ爆弾、HARM対レーダーミサイルやポパイミサイル(3千ポンド級、射程48マイル)の運用が可能だ。

 ターミネーター各機は基本的に対地攻撃が任務だが悪評もある。クルド人組織PKKの戦闘員をトルコ国内、イラクで2015年から2016年にかけ爆撃した。RF-4偵察機がシリアで2012年に撃墜され、F-4三機が2015年に墜落しており、トルコ国内では「空飛ぶ棺」と揶揄されている。

 イラン空軍はF-4D、Eの76機とRF-4の6機が作戦投入可能と2009年に述べていた。同国はロシア製中国製の空対地、対艦ミサイルの運用を可能とする改修を実施したようだ。ただし、中古品のAIM-7スパローを今も使っている。イランのF-14トムキャット同様にF-4でも部品入手は密輸に頼っている。

 イランのファントムはイラク国内のイスラム国標的を2014年12月に空爆し、ペルシア湾上空で米軍機との追いかけっこをしている。

 性能強化されたとはいえ改修版F-4は本当に第四世代機と同等といえるのか。21世紀でも供用中のファントムで空対空戦は一回も発生していないが、ギリシアのF-16と撃墜に至らないドッグファイトは発生している。

 また中国のSu-27と2010年の演習で模擬空戦を行い、ネット上の情報ではゼロ対8機と優秀な成績だったという。

 主翼スラットを追加したファントムがきつい旋回をこなし、180度方向展開をする様子を映像で見ると、F-15並みの機体操縦が実現しているが、F-4では旋回完了まで7-8秒かかっているのがわかる。F-15が操縦性では一歩上を行く。

 だからと言って改修型F-4がその後登場した機体より優れた設計であるとの証明にならないが、第四世代機の機体重量と比べ相当大きな重量の機体の飛行制御が可能とわかる。

 ファントムの1958年初飛行時、その60年後にも第一線で活躍している姿を想像できたものは皆無に近かったのではないか。■

 

 

この記事は以下を再構成したものです。

 

 

America's F-4 Phantom: Taking On the World's Best Fighters (At 60 Years Old)

 

March 5, 2018  Topic: Security  Blog Brand: The Buzz  Tags: F-4 PhantomMilitaryTechnologyWorldU.S.Air Force

by Sebastien Roblin

 


発想力と大胆な資金投入がすごいぞ DARPAの奇想天外プロジェクトのごく一部をご紹介

 


The Legged Squad Support System (LS3) walks around the Kahuku Training Area July 10, 2014 during the Rim of the Pacific 2014 exercise. (U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)

脚走行分隊支援システム(LS3)が2014年のリムパック演習で走行実演をした。(U.S. Marine Corps photo by Sgt. Sarah Dietz/RELEASED)



宙から人体の脳組織に至るまで国防高等研究プロジェクト庁DARPAが助成した研究成果を軍が利用し、最新技術を使っている。


DARPAの功績にはインターネット、GPS、ステルス航空機がある一方で、設立以来62年の歴史に奇想天外な案件も多数見られる。


DARPAが他機関と一線を画すのは通常の調達ルールを使わないことで、研究者、イノベーターの採用、給与でも制約が少ない。またDARPAには予算執行上で制約も少なく、実現可能性が低い案件にも資金投入が可能で、軍のベンチャーキャピタルとして機能している。

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では、DARPAが「ハイリスク・ハイリターン」と分類した中で読者の関心を引きそうな案件を紹介していこう。



1. 植物を食べるロボット


正式名称「エナジー自律戦術ロボット」Energy Autonomous Tactical Robot (EATR)の本事業では植物が飼料のロボット開発を目指す。実現すれば監視用あるいは防御用で人員や通常のロボット装置より長期間補給なしで活動できる。


開発にあたるのはサイクロンパワーテクノロジーズ Cyclone Power Technologiesで「将来食糧危機が発生したらどうするのかという懸念があるのはわかるが、それは当社のミッションではない」と同社CEOハリー・ショールが述べている。


同プロジェクトが2015年に中止された前に、技術陣はEATRはバイオマス150ポンドで100マイルの移動が可能と試算していた。



2. 自己修復型の建築物


想像してほしい。兵員が軽量足場で建物や防御拠点を整備している。足場から耐久性のある素材がしみ込んでいく。この素材は損傷を受けても元通りに復旧する。



これがDARPAのエンジニアリング生体素材Engineering Living Materials事業の目指すゴールで自己修復可能な建築素材を実現する。3Dプリンターで器官組織を作成し、ハイブリッド素材として形状を保ち、細胞成長を支える効果を実現しようとしている。


「完成形の素材を補給するのではなく、原型を支給し現地資源を使い急速成長させる。また素材が生きているため、環境変化に対応が可能であり、損傷を受けても復旧する」とプロジェクト主幹ジャスティン・ガリヴァンが述べている。


3. 実験室培養の血液



血液の遺伝子組み換えblood pharminng とは人体からの採血ではなく、血球を実験室で作成する技術だ。DARPAの血液遺伝子組み換え事業では赤血球関連で製造効率を上げ費用を削減する狙いがあった。


成功すれば、戦場や世界各地の病院で輸血用血液が大量に利用可能となり、輸血による疾病発生リスクが減るはずだった。


2013年の報道発表では同事業により合成血液装置一式の費用が90千ドルから5千ドル未満に下がるとあったが、追加発表はない。最新の予算説明資料にはこの事業は掲載されていない。



4. サイボーグ昆虫


無人航空機はおおはやりだが、設計組立に人手が必要で高費用となる。では、飛ぶ生体にセンサーを乗せれば費用は発生しないのではないか。


DARPAのスパイ昆虫事業は2006年事業に掲載されており、昆虫に発信機を埋め込み監視活動に投入する構想だった。ハイブリッド昆虫マイクロ電子機械システム事業 Hybrid Insect Micro-Electro-Mechanical Systemsはミシガン大、コーネル大が担当した。数年後に研究陣は昆虫を制御するインターフェースの開発に成功した。


2009年にコーネル大は放射性物質を動力とする送信機をサイボーグ昆虫に埋め込んだと発表した。ニッケル同位体-23からセンサー、送信機に電力が供給されながら、人体には無害である。



5. 脳インプラントでPTSD治療を


DARPAは戦闘用装備品のみに主眼を置くわけではない。戦闘で発生する兵士への陰の部分でも解決策に資金投入している。


新治療方法を模索するシステムに基盤を置く神経科学Systems-Based Neurotechnology for Emerging Therapies事業では「インプラントで閉回路の診断および治療を確立し、精神神経疾患の対応、さらに治癒をめざす」とDARPAの報道資料にある。


この事業は脳インプラントでPTSDに悩む兵士を助けることをめざし、脳損傷、不安症、薬物濫用等にも対応する。ただし実施すると倫理問題がからむため、専門家が参加し、神経科学技術の安全な実施を目指している。



6. ロボット歩兵ロバ



重い装備品を運搬すると兵士の健康を害し、業務遂行にも影響が出る。このためDARPAはロボット工学分野の企業ボストンダイナミクス Boston Dynamicsと共同で脚走行分隊支援システム Legged Squad Support System (LS3)を実現させた。


400ポンド運搬可能なLS3は歩兵分隊と行動を共にする。DARPAウェブサイトでは事業の目標を「分隊と移動しながら分隊の任務遂行を妨げないロボットの開発」としている。


7.核爆発で推進する宇宙船


DARPAは宇宙旅行にも資金投入している。プロジェクトオライオンは1958年に始まり宇宙船の新型推進方法で研究が目的だった。仮説では原子爆弾の爆発力を前方推進の動力とすれば驚くべき速力が実現するはずだった。


ただし、1963年に部分各区実験禁止条約が成立し、宇宙空間で核爆発ができなくなったため同プロジェクトは解散した。


8. 機械仕掛けの象


1960年代、DARPAはヴィエトナムのジャングルでも自由に兵員物資を移動できる車両研究を開始した。


ハンニバルの先例から、DARPA研究員は象がぴったりだと判断した。そこからDARPA史上で最も悪名高いプロジェクトが生まれ、機械仕掛けの象の製作を目指した。成果物はサーボ機構で作動する脚で重量物を移動させるはずだった。


DARPA長官がこのプロジェクトの存在に気付き即座に中止させたのは議会筋が聞きつけ予算カットされては困ると判断したためとNew Scientistにある。■


この記事は以下を再構成したものです。


8 weird DARPA projects that make science fiction seem like real life


Harm Venhuizen


2020年9月6日日曜日

F-15JSI改修に見えるステルス、非ステルス機同時運用構想は日米が共有している

 F-15JはF-35と併用して大威力を発揮する機体となる。

本は最高45億ドルでボーイングF-15J合計98機を大幅改修し、「日本向けスーパー迎撃機」(JSI) 仕様とする案件で米国務省の承認を2019年10月末に受けた。

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JSIは日本が導入中のロッキード・マーティンF-35共用打撃戦闘機と併用され、相互補完の関係になる。一方で米空軍は独自にF-15、F-35混成運用を模索している。

 

日米の空軍がステルス、非ステルス機材の長所短所をバランスさせようとしているわけだ。

 

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通常型なら探知されてもステルス戦闘機なら回避できるが、あくまでも兵装を機内搭載の場合だ。ただし、ステルス機は兵装庫で燃料搭載量が犠牲となり、航続距離が短く、ペイロードも非ステルス機より少ない。

 

他方で非ステルス機は最新の「極超音速」ミサイルも含む兵装を大量搭載できる。

 

両国政府はバランスのとれた機材編成の重要性を実感しつつある。こうして見ればF-15近代化改修が突飛な発想ではないことがわかる。

 

JSI改修は広範囲で、レイセオン製AN/APG-82(V)1アクティブ電子スキャンアレイレーダー、BAEシステムズ製AN/ALQ-239デジタル電子戦装備(レーダージャマー)を含む。また新型ミサイルも導入する。

 

「日本にはAESAシーカーがつく高性能AAM-4Bがある。ただ日本が米製AIM-120AMRAAMの導入も検討中との報道もある」と War Zoneのジョセフ・トレヴィシックが以下伝えている。

AIM-120はAAM-4Bより小型で交戦距離も短いというが、F-15JのJSI仕様にAIM-120を多数搭載することに意味がある。性能不足を数で補えるからだ。それ以外に日本は欧州のミサイル共同事業体MBDAの英国事業部と共用新型空対空ミサイルの開発にあたっており、シーカー他部品をAAM-4Bから流用しながらMBDAのラムジェット推進ミーティアの機構を取り入れるといわれる。

 

日本はF-35A(105機)、F-35B(42機)を発注しており、米英両国に次ぐ第三位の導入規模となる。2020年代中ごろの日本の戦闘機部隊はF-35とF-15JSIが中心となる。

 

「F-15JのJSI仕様機はF-35Aとの組み合わせで効果を発揮し、防空出撃で重宝されるはずだ。F-35との併用では、F-35が先を飛び標的情報を非ステルス機に伝え、非ステルス機の兵装搭載量が威力を発揮するはず」(トレヴィシック)

 

米空軍も同様にF-15とF-35の同時運用を狙い、新規生産のF-15EXを144機発注し1980年代製造のF-15Cを更新する。同時にF-35も導入しステルス機1000機超の運用とする。

 

F-15EXは「F-15C/D部隊がこなしているミッション範囲を広げるユニークな機材になる可能性がある」とWar Zoneのタイラー・ロゴウェイが伝えている。

 

「兵装運搬トラックとして、極超音速巡航ミサイルや超長距離空対空ミサイルのような大型兵器の搭載機として、さらに無人機編隊の統制用に、また第五世代機と第四世代機間の通信中継機として戦闘空域で重宝されるはずだ」

 

わずか数年前まではこれからは全ステルス機編成になるとの見方が主流だったが、今や混合編成が常識になりつつある。日米以外にもロシアや中国もステルス機調達は小規模としつつ非ステルス機材で改修を進めている。■

 

この記事は以下を再編成したものです。

 

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

September 4, 2020  Topic: Security  Blog Brand: The Reboot  Tags: F-15JapanF-15 FighterMilitaryTechnology

A F-15J “Super Interceptor” Could Be Just What Japan's Air Force Needs

by David Axe 

David Axe serves as Defense Editor of the National Interest. He is the author of the graphic novels  War Fix, War Is Boring and Machete Squad. This article first appeared in 2019.

Image: Wikipedia