2021年9月19日日曜日

C-130水陸両用型の予想は本当だった。太平洋の分散部隊展開で補給作戦に投入されそう。

 C130 seaplane

AFSOC

 

 

る5月、米空軍特殊作戦司令部(AFSOC)が温めてきたC-130水上機型の夢が現実に近づいているとお伝えした。MC-130J水陸両用機(MAC)が新規調達リストで上位に乗っている。前回は想像図しかお伝え出来なかったが、今回はもっと明確にお伝えできる。そう、C-130をフロートに乗せた格好になっている。

 

構想は各種にわたり、従来型のフロートを付与したものから機体一体型の未来デザインまであった。MC-130は滑走路にもフロートをつけたまま着陸可能となる。今回の記事はAFSOCが公表した想像図を掲載する。

 

空軍特殊作戦司令部からは以下の発表があり、5月にお伝えした内容を改めて確認した形だ。以下の公式発表は2021年9月14日に発表された。

C-130Jは信じられないほど多様性を有する機体で、誕生以来、非整地への着陸、極地での運用、さらに航空母艦でも運用してきた。ただし、現状では着水はできない。地球で水面は71%の面積を占める。国家戦略の重点が沿海部に移行する中で、空軍特殊作戦司令部は同機の展開能力を高めるうえでも滑走路に依存しない性能を高めるアプローチをとる。

空軍研究本部の戦略開発計画実験部門(AFRL-SDPE) と協力し、AFSOCはMC-130JコマンドII水陸両用対応機(MAC)を開発し、同機による沿海部特殊作戦の支援をめざす。

MAC開発では多方面の作業を進めていると、AFSOC科学システム技術イノベーション (SST&I) 副部長ジョシュ・トランタム中佐と説明している。この性能が実現すれば空軍は部隊投入、撤収、人員回収、補給活動を将来の事態、有事での実施能力を拡充できるようになる。

 

AFSOC

 

取り外し可能着水フロートにより「滑走路に依存しない」運用が可能となり、トランタム中佐は世界規模の展開に道が開き、機体のみならず特殊部隊の生存性が高まる。水面を利用できれば運用の柔軟性が高まると中佐は述べている。

MAC機能が利用できれば水面への無制限の作戦応用が可能となり、陸上基地の利用が困難となっても部隊を分散展開できる。

 

AFSOC

 

疑問の余地はない。滑走路に依存している現状をペンタゴンでは互角の戦力を有する相手国、やや戦力が劣る国が遠隔地であっても弾道ミサイルで使用不能にする事態を危惧しているのは事実だ。このためC-130を滑走路を使わずに運用する構想には大きな利点がある。

 

AFSOC技術移転部門主任クリステン・セパク少佐はこう述べている。

「MACは将来の成功の実現に不可欠となる。共同作戦地域内で装備の分散が可能となる。分散させれば敵の攻撃を受けにくくなる」

 

AFSOC

 

MAC構想をわずか17カ月で実現すべく、試作機を五段階で製作する。この日程感自体が大胆だが、仮想モデリング他デジタルエンジニアリングを多用する。ロッキード・マーティンはこれまでもこの種の技術を数多く構想しており、C-130Jでは1990年代末にも検討していた。

 

ではすでに開発作業の多くが実施済みで一部テストまで行っているとすれば、AFSCOは実機の実現を迅速に進め、MAC実機を完成させ、技術をほかの用途として例えば消防機にも使えるのではないか。ジョシュ・トランタム中佐は以下説明している。

「MACは各軍、同盟国、協力国でも応用可能な技術となる。さらに、水陸両用機をその他の画期的な装備と併用すれば将来の戦場でも威力を発揮し、戦略面で競合力が実現する」

AFSOC

 

C-130の70年に及ぶ歴史を振り返れば、これだけ多様な付加機能が同機で実現したことには驚くしかない。その最後に難易度が高い水面からの運用に挑戦することになる。この注目すべき事業の進捗についてはまたお知らせする機会が来るだろう。■

 

It Looks Like A C-130 Seaplane Is Finally Happening

 

Air Force Special Operations Command says it needs an MC-130J on floats and it looks like it has a plan to get it. 

BY TYLER ROGOWAY SEPTEMBER 15, 2021

 


2021年9月18日土曜日

オーストラリアが契約破棄した理由。フランスは予想通り逆上しているが、オーストラリアが決断したのは無理もないことがわかります。

 


 

ーストラリアを英米の協力のもとで原子力推進攻撃型潜水艦(SSNs) 取得に走らせたのはアタック級次期潜水艦建造が難航し、通常型潜水艦(SSK)ではSEA1000事業で目指す目標達成が困難と判断したためと解説する専門家がいる。

 

アタック級は12隻建造し現行コリンズ級と置き換える予定だったが、遅延と費用増加が発生し、事業規模が900億オーストラリアドル(約7兆円)に膨れ上がる試算が出ていた。

 

2016年にオーストアリア国防省はショートフィン・バラクーダ1Aをフランスのナバルグループから調達すると選定した。同艦はフランス海軍が供用中のスフラン級原子力潜水艦を原型としながら高いリスクをかかえていた。SSKへの転用となると既存設計が使えないためだ。

 

アタック級は「革命的というより進化形」でコリンズ級と同等の性能の想定と解説するのがオーストラリア戦略政策研究所のマーカス・ヘリヤーだ。

 

それによるとアタック級は「既存枠組み」を踏襲しており、大気非依存型推進、リチウムイオン電池、垂直発射管、大直径発射管(水中無人機の運用)のいずれも想定していなかった。

 

SEA1000構想は当初から問題を発生していた。戦略パートナーシップ(SPA)合意で各機関を対象期間中は連携させる目論見が2017年10月時点にあり、合意は2019年2月に成立した。

 

2018年9月に海軍建艦諮問委員会からSEA1000の代替策を検討すべしとの提言が出た。同委員会はコリンズ級の供用期間延長で時間を稼ぎ、「将来型潜水艦の取得戦略を必要に応じ模索する」べきとしていた。

 

コリンズ級SSKでは供用期間延長はその後承認され、オーストラリア海軍は2038年まで現有艦を運用する。

 

SPAは成立したが、2020年初頭にオーストラリア国家監査局(ANAO)が「将来型潜水艦の設計変更」と題したレポートを公開し、SEA 1000構想で「4億オーストラリアドル近くを支出しても目指す大きな目標二点を満足させる設計が実現できない」と指摘していた。

 

構想検討審査(CSR)の完了が9カ月遅れ、システムズ要求性能審査(SRR)も遅れた。ANAOではナバルグループと国防省で民生技術含む作業への取り組みが食い違うと指摘している。国防省とナバルグループの関係が悪化した。

 

これだけなら事業の進展そのものを止めることはなかったはずだ。報告書では進捗が3年遅れ潜水艦戦力が不足する事態になりかねないとの指摘がある。国防省は昨年このリスクに気づき、2050年代以降の海軍で必要とする性能が実現しないことも明らかになった。

 

ヘリヤーはアタック級は通常型潜水艦としては高性能と述べつつ、SSK技術は成長の限界点に達しつつあるとし、大型化(コリンズ級は3,400トンなのに対しアタック級は4,500トン)で燃料やバッテリーの搭載量を増やし、高速速力と長期待機能力の実現に向かうとみていた。

 

実は国防省はコリンズ級でも同様の状況を20年前に経験し、当時はスウェーデン海軍のゴットラント級設計をコクムス造船所の知見で建造し、SSKの航続力を伸ばしていた。

 

ヘリヤーからは国防省が時間と予算をたくさん使った挙句「漸進的改良」に終わり、「根本的な変化を潜水艦性能で実現するには原子力推進を採用するしかない」との結論に至ったとコメントしている。■

 

French Attack Boat Design, Costs Opened Door to Nuclear Australian Sub Says Expert - USNI News

By: Tim Fish

September 16, 2021 6:55 PM


AUKUSの連携強化をホームズ教授はこう見る。オーストラリアの原潜調達以上に三か国混成乗員による潜水艦運用を。オーストラリアに米原潜を配置し、同国の地政学的利点を活用すべきだ。

 


ーストラリア、英国、米国が新たな同盟関係AUKUSを構築したとのニュースが飛び込んできた。その一環で王立オーストラリア海軍(RAN)が原子力推進攻撃型潜水艦(SSNs) 少なくとも8隻を2030年代末までに建造する。発表で名指しこそなかったが、中国を意識しているのは間違いない。

原子力潜水艦はオーストラリアに最適な装備品となる。同国は南シナ海の外に戦略的な位置を占めている。南シナ海への展開では距離が障害となる。RANの現行コリンズ級ディーゼル電気推進潜水艦部隊(SSKs)は南シナ海へ出動できるが、長期間展開は不可能だ。

これに対しSSNでは現場展開の制約となるのは糧食等乗員向けニーズへの対応のみだ。戦略予算評価センターが数年前に行った研究ではオーストラリアを拠点とするSSNは南シナ海で77日間の哨戒が可能だが、SSKは11日しかないとの結論が出ている。RANのコリンズ級は6隻のみなのでRANは各艦のローテーション運用で常時一隻を配備するのに困難を感じるはずだ。

原子力潜水艦がこの構図を変える。77日とは米海軍の原子力弾道ミサイル潜水艦の哨戒期間に近く、相当の長さだ。原子力潜水艦の導入で同盟側は広大な海域で兵力を展開し、武力衝突を阻止する、あるいは開戦となっても勝算が出てくる。いいかえればAUKUSは太平洋での戦略競合で有利となる。

ただし原子力潜水艦取得の騒ぎの陰にもっと意味のある進展がある。オーストラリアンフィナンシャルレビュー記事では米海軍がHMASスターリング基地(パース)からヴァージニア級SSNsを運用するとある。RANのSSNsが海上運用を開始する前に同盟側の南シナ海外縁部での作戦能力を向上させる効果が生まれる。

実現は早いほど良い効果が生まれる。中国が台湾侵攻に数年で踏み切るとの予想もある。台湾以外に南シナ海や東シナ海にも注目地点がある。

オーストラリアに米軍部隊を常駐させる構想は前からあり、トシ・ヨシハラも筆者とともにここ十年にわたり提唱していた。利点を考えてみよう。まず、地理条件だ。米軍は第一列島線で沖縄以南に点在している。フィリピンとの関係がドゥテルテ大統領の下で弱体化している。米軍の寄港やフィリピン国内への米軍部隊展開は拒否していないものの、往時のような重要な軍事拠点になれるか微妙だ。

近隣に基地を持たないと南シナ海、台湾海峡の対応が困難となる。

フィリピンの代替をオーストラリアが部分的ながら果たせる。フィリピンを上回る機能も実現可能だ。同国は太平洋とインド洋のつなぎ目に位置する。同国に海軍部隊を配置すれば、双方を活動範囲に収められる。パースはオーストラリアのインド洋側に位置し、重要海峡への展開は容易だ。マラッカ、ロンボク、スンダで、各海峡は南シナ海にも通じる。

HMASスターリング基地の位置から、グアムさらに日本の作戦効率が上がる効果も生まれよう。

AUKUSによりインド太平洋に新しい構図が生まれることが要注意だ。現在の米軍基地はインド太平洋の外縁部に展開しており、東は日本、グアムから西はバーレインまでひろがる。言い換えれば水平方向の東西に相当の距離がある。オーストラリアがヴァージニア級潜水艦母港化を受け入れれば、今度は垂直方向でつながりが生まれ第一列島線に沿った防衛線が生まれる。

次は作戦面だ。西太平洋に基地を展開する米海軍には「分散海洋作戦」構想があり、米海兵隊には「沿海域作戦展開を激戦地で展開する」構想がある。海軍部隊の司令官レベルには大型艦のかわりに安価かつ小型の艦艇航空機材を大量調達し、地理条件を考慮した対抗措置を提案する向きがある。

海軍基地の数が増えれば、分散部隊の支援が可能となり、望ましい結果を生む。

潜水艦部隊を分散配備することで直ちに生まれる効果もある。RAN所属潜水艦部隊が姿を現し始める時点で、米海軍のSSNsがパース基地から運行を開始し、AUKUSの海軍部隊は多国籍部隊として効果を最大にできる。オーストラリア側も英米部隊から原子力推進の運用方法を習熟すべく支援を受けられる。

さらに一歩進めAUKUS混合乗員構成の実現も検討すべきだろう。これが実現すれば、同盟国側が真剣で共通の大義の下でまとまっていること、つまり航行の自由の維持とともに超大国の横暴は許さないという姿勢が中国にわかるはずだ。例として米海兵隊がF-35をHMSクイーンエリザベスで運用しており、同空母は西太平洋に展開している。中国が英部隊を攻撃対象にすれば米国も相手にすることになる。

真剣度を示す構想には水面下にも及ぶ。各国乗員をまとめた潜水艦が運用中となれば、三か国の同盟関係に一寸の分断の余地がないと示せる。

RANがSSN建造に乗り出したことは称賛すべきことだが、ただちに三か国のチーム運用を開始すべきだ。時間の余裕はない。■

Why Nuclear Submarines For Australia Make Perfect Sense

By James Holmes

September 17, 2021



Now a 1945 Contributing Editor, James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Brute Krulak Center for Innovation & Future Warfare, U.S. Marine Corps University. The views voiced here are his alone.



2021年9月17日金曜日

AUKUS原子力潜水艦調達で続報。オーストラリア国防省から公式発表。想定する原潜は8隻建造。国内産業の裨益を重視。

 

これって、フランス側は音なしの構えなのですが、裏で話がついているのでしょうね。あれだけ熱が入っていた潜水艦事業選定はなんだったのでしょうか。日本としては振り回されずに済んでよかったのでしょうが。クアッドの三か国が原子力潜水艦を運用することになります。日本はホームズ教授の力説する西太平洋特化戦力としてAIPなど通常型の性能を極めていくアプローチで進むでしょう。いよいよ韓国が原子力潜水艦取得に進む構図が愚かに見えてきます。

Australia Intends to Acquire at least Eight Locally-Built SSNs as part of AUKUS Initiative

 

2021年9月16日、オーストラリア首相、英国首相、米国大統領からオーストラリア、英国、米国(AUKUS)の三か国安全保障提携を強化する発表が出た。

以下オーストラリア国防省発表より編集。

オーストラリアの歴史上AUKUSは画期的な進展となり、三カ国間の安全保障、軍事面の協力関係は今後一層深くなる。

第一弾がオーストラリアが原子力潜水艦の取得で、少なくとも8隻を導入する。オーストラリア政府は南部アデレイドでの建造をめざす。

今回の発表でオーストラリア政府はアタック級潜水艦建造事業を先に進めないことが分かった。

三か国は今後18カ月かけて総合的作業を進め、原子力潜水艦建造の実現をめざす。

この期間を利用し原子力潜水艦実現に必要となる各要素を検討する。安全、設計、建造、運用、保守管理、廃棄、訓練、環境保護、さらにインフラ、基地、人員の各要素だ。

オーストラリア政府は原子力推進潜水艦タスクフォースを発足させ、AUKUSの中でのオーストラリアの関与をスムーズに進める。

原子力潜水艦にはステルス、スピード、機動性、生存性sらに無限ともいえる耐久性で通常型艦より優れている。無人水中機を運用したり、高性能兵装を展開できるため低探知性のまま敵勢力の優勢な水中での運用が可能だ。

原子力潜水艦導入により王立オーストラリア海軍の戦力は一気に拡大することになる。

またオーストラリア政府は国内産業の関与を最大限確保する姿勢で、設計作業、事業管理から建造、維持活動まで広範な範囲を想定している。■

Australia Intends To Acquire At Least Eight Locally-Built SSNs As Part Of AUKUS Initiative

Naval News Staff  16 Sep 2021

https://www.navalnews.com/naval-news/2021/09/australia-intends-to-acquire-at-least-eight-locally-built-ssns-as-part-of-aukus-initiative/

ヘッドラインニュース9月17日

 

中国海軍遠征部隊が本国帰還

海上自衛隊はPLAN部隊艦艇4隻は055型駆逐艦南昌、052D型駆逐艦貴陽、903A型補給艦、情報収集艦で大隅海峡を通過するところを9月11日に捕捉していた。部隊は日本からアラスカまで遠洋航海を行い、東シナ海に帰還した。PLANが遠隔地でも作戦運用する能力を示した。


中国がドイツ艦の上海寄港を拒否

フリゲート艦バイエルン(4,000トン)の上海寄港を中国が拒否した。ドイツ外務省が発表した。ドイツは寄港により両国間の軍事緊張を解こうとしていたため出鼻をくじかれた格好だ。ドイツでは二週間後に選挙を控え、新政権が中国にどのような姿勢を取るのか不明だ。


C-130Jがワイオミングでハイウェイに着陸

9月13日、in the Rockies 2021演習の皮切りにC-130Jがワイオミング州ローリングス近郊のハイウェイに着陸した。同演習は米空軍予備役隊員向けに一週間に渡り展開する。


MQ-25がF-35Cへの空中給油テストに成功

9月13日ボーイングMQ-25スティングレイがF-35Cへの空中給油にイリノイ上空で成功した。これでF/A-18スーパーホーネット、E-2Dにつぎ三機種への空中旧を実施した。次は空母艦上での運用の実証が控える。

PLAN艦艇が米アリューシャン列島付近へ出没

米沿岸警備隊は中国艦船4隻が8月にアリューシャン列島の排他的経済水域に現れ、追尾したと発表した。今回の発表は中国共産党の影響が強い環球時報主筆が今後は米国領海に中国艦船を定期的に派遣すると強弁したのを受けてのこと。写真は8月29日、30日にかけて撮影されていた。055型大型駆逐艦1、052D型駆逐艦2、093型補給艦1に093型情報収集艦1が加わった。


2021年9月16日木曜日

主張 ミリー統合参謀本部議長を即刻解任せよ。米国の文官優位の原則をなし崩しにした。放置すれば米国でクーデターが発生する。

 日本の報道ではトランプの不安定度を憂慮して自ら動いた将軍を賛辞しかねない空気がありましたが、さすがに文民統制の原則を堅固に守る価値観が前面に出ています。記事に踊らされることなく、本質を考える必要が感じられますね。

 



統合参謀本部議長マーク・A・ミリー大将 (DoD photo by Lisa Ferdinando)

 

シントンポストの暴露記事で統合参謀本部議長マーク・ミリー大将がわが国最大の敵対国である中国に接触し、米軍が中国に向け行動を起こす際は事前通知すると伝えていたことが明らかになった。記事内容を見るとミリーが宣誓内容に違反したとはいいがたいものの、大統領が本人を直ちに解任するのには十分なものだ。

 

ポスト記事はこれから発刊となる「Peril」(ボブ・ウッドワード、ロバート・コスタ共著)の抜粋で、トランプ大統領の最終段階からバイデン政権誕生後の六カ月を記録したものだ。一番衝撃的なのはミリー大将が中国軍司令官にホワイトハウスを通さずに連絡したことだ。

 

ウッドワード=コスタによればミリーは中国がトランプが中国攻撃を命令する事態を恐れていた。大統領に懸念を伝えず中国の懸念を払しょくさせる提言をミリーがとり、自身で対処した。

 

本人は大統領や国務長官が知らないまま人民解放軍司令官へ電話した。ウッドワード=コストによればミリーは「李将軍、貴官とは5年間の知己であり、貴国攻撃の際はまっさきに貴官に伝える。奇襲攻撃はしない」と語ったとされる。

 

トランプに反感を持つ向きにはミリーが英雄に写り、米国を救ったと評価するかもしれない。ただし、これは近視眼的見方で、将官が権力行使する真の危険を無視している。まず、トランプが対中開戦を狙った証拠はない。ミリーが懸念していただけだ。そうなると統合参謀本部議長は実際にはなかった事態をめぐり主敵と話したことになる。

 

二番目に、将官あるいは政府高官が大統領への背信行為を行う前例ができてしまえば、あともどりできなくなる。台湾問題のシナリオを考え欲しい。

 

米軍や外交部門には強硬に統一を図る中国に関し二つの見方がある。一つはワシントンは台北に安全保障上の保証を与え、いかなる代償を伴っても台湾を中国の攻撃から守るべきとする。もう一つは台湾をめぐり中国と戦うこと自体が愚かで、中国本土近くで米軍に勝利の見込みはない、また最悪のシナリオでは核戦争に発展し米国人数百万人が死亡する事態になりかねないとする。中国が実際に攻撃してきた場合、バイデン政権は恐るべきジレンマに直面する。

 

台湾防衛の約束を守り、核戦争のリスクを冒すのか、それとも台湾を占拠する中国を放置し米国の弱体ぶりを示すのか。バイデンがどちらの選択に走っても、ペンタゴン内部に強い反対意見が生まれるのは避けられない。

 

ウッドワード=コスタはミリーが行動に走ったのは「善意に基づく事前警告」で「中国との偶発戦争を避け、核兵器の投入はない」と伝えるためだったとする。バイデンが対中戦を決意した場合、軍高官がミリー同様に強い信念から対中戦を予防しようと大統領決定をなし崩しにしていいのだろうか。恐ろしいのはもっと悪い事態が生まれることだ。

 

米国では一貫して軍事クーデターは起こらないとされ、真剣にその可能性を考えてきた向きは皆無に近い。だが今回のミリー大将の動きは今後のペンタゴン関係者に参考となりかねない危険一歩手前の行動だった。疑う余地なく国益に一番良いと考えての行動だったのだろうが、大統領を権力の座から追いだす結果になりかねないところだった。

 

米国では起こるはずがないと考えれば間違いだ。選挙で選ばれた最高指導者の命令へ軍トップが公然と従わない事態となれば、政府機能が危機時にマヒしたり、本当のクーデターに発展しかねない。この恐れがあるからこそ、今の段階でこの動きを封じるべきなのである。

 

ミリーを解任すべきである。即刻。■

 

General Mark Milley Must Be Relieved of Duty

ByDaniel Davis

 

Daniel L. Davis, now a 1945 Contributing Editor, is a Senior Fellow for Defense Priorities and a former Lt. Col. in the U.S. Army who deployed into combat zones four times. He is the author of “The Eleventh Hour in 2020 America.” Follow him @DanielLDavis1.


速報)オーストラリアの原子力潜水艦取得を後押しする米英両国。ANKUSと呼ばれる三か国の安全保障協力関係はさらに緊密となり、中国への対抗を目指す。

 

おや、ナヴァルグループによる通常型潜水艦建造は断念して一気に原子力潜水艦調達にオーストラリアは向かうのでしょうか。米英豪の強いつながりを感じさせます。韓国がこれで原子力潜水艦調達が現実に近づいたと考えれば大きな勘違いでしょうね。


ンド太平洋の各国が中国への備えを強める中、米国は域内のトップ同盟国へ原子力推進技術を供与する。

AUKUSすなわち米英豪三か国は安全保障取り決めをこの度形成し英米両国がオーストラリアのめざす原子力推進潜水艦実現を支援することになった。

南シナ海での中国との対決では原子力潜水艦の生存性が一番高いといわれる。原子力潜水艦は長距離移動でき、通常型潜水艦より長期間潜航が可能なため、広大なインド太平洋で理想的な装備となる。

「AUKUSとしてオーストラリアが望む原子力潜水艦調達を支援し、三か国共同作業を18カ月続ける。その中で技術分野、戦略、海軍関係の専門チームを組織し、実現に最適な方法を模索する」とバイデン政権高官が報道陣に語り、米国が同技術を供与した例は英国だけで1958年のことだったと解説した。

「オーストラリアは協力関係を深化させ、原子力推進潜水艦取得の方法を模索する。これによりオーストラリアに長期間配備能力が生まれることを強調したい」と同上高官は説明した。「静粛度が高く高性能だ。インド太平洋の抑止力整備に役立つ。そのため原子力技術のベストプラクティスで共同作業を進める。三か国の海軍部隊が共同作戦を展開し、原子力インフラを共有すれば各国間協力はさらに密接になる」

オーストラリアへの技術供与で同国の原子力潜水艦調達は現実に一歩近づく。オーストラリア国内の建造施設は原子力推進艦艇にも対応可能だが、国産建造となるのか、英米いずれかからの調達になるかは不明だ。

米海軍で潜水艦を専門としたある退役提督は原子力推進技術をオーストラリアと共有すれば米国の対オーストラリア関係が大きく変わるとUSNI Newsに述べた。

「オーストラリア海軍が原子力推進を採用すれば西太平洋での対応能力は確実に整備される」「中国へのメッセージだ。中国は経済面でオーストラリアに懲罰を与えており、今回の動きが回答だ」

また、今回の合意でオーストラリアが原子力潜水艦を調達し、米海軍攻撃型潜水艦がオーストラリアで整備を受けることも可能となれば米国のプレゼンスが同地域で拡大すると同提督は指摘する。

「合意内容にプレゼンス拡大につながる要素がある。これまで艦の整備が配備期間を制約してきた」

AUKUS新合意では広範囲の技術共有も盛り込まれており、防衛外交対話も続けると上記高官が述べている。

取り決めでは「新規分野での協力強化としてサイバー、AI特に応用AI、量子技術、および水中運用技術を対象とする。情報共有も深化させ、安全保障・防衛関連の科学技術や産業基盤、サプライチェーンで統合効果がこれから出てくる」「これを維持して各国の機能をくっつけ三か国関係をさらに拡大していく」と同高官は語った。

今回の発表はバイデン政権がインド太平洋特に中国に焦点を当てる中でで出てきた。バイデン大統領はアフガニスタン撤収を正当化するためこの説明を使っている。

「今回の動きはより大規模な対応の一部だ。従来からの安全保障提携国日本、南朝鮮、タイランド、フィリピンに加え、新規相手のインド、ヴィエトナムとも二か国関係を強化しつつ、新しい仕組みを作っていく。クアッドはその例だ」と同高官は今回の安全保障合意の背景を説明している。

2016年にフランス企業が王立オーストラリア海軍のコリンズ級潜水艦の後継艦をフランスの原子力潜水艦バラクーダ級を通常動力に変更し建造する契約交付を受けた。だが、事業は打ち切りとなり、オーストラリアは原子力潜水艦取得に問題なく進められる、とオーストラリア放送協会は本日報道した。■

Australia to Pursue Nuclear Attack Subs in New Agreement with U.S., U.K.

By: Mallory Shelbourne and Sam LaGrone

September 15, 2021 5:04 PM

https://news.usni.org/2021/09/15/australia-to-pursue-nuclear-attack-subs-in-new-agreement-with-u-s-u-k

2021年9月15日水曜日

C-130とスカンクワークスの関係とは。輸送機に攻撃手段、センサーを搭載する分散戦術のねらいとは。

こういう柔軟な思考ができるのであれば米空軍の将来を悲観しなくてもよいでしょう。問題はその通りに実施する力であり、相手となる中国の動きに対しこの構想が有効なのかを実地で試す機会が生まれるかでしょう。米海軍でも輸送艦等も武装を施す分散武装の構想がありましたね。




ッキード・マーティンで有名なスカンクワークス部門はU-2スパイ機、F-22戦闘機や初のステルス機F-117ナイトホーク等の実現で有名だが、特殊部隊向けにC-130輸送機でも大きな役割を演じていることは意外に知られていない。


C-130とスカンクワークスの接点


C-130は半世紀以上前に登場し、以後一貫して性能を向上しつつ各種の改修を受けてきた。


空軍は既存航空機材の役割を見直し、ミッション範囲を拡大しようとしており、同機もその対象となっている、そのため新技術やソフトウェア改修を投入している。


ここにC-130とロッキードのスカンクワークスの接点がある。特に重要なのが他機との強い接続性を実現し、戦闘ニーズ、脅威情報、作戦要求を満たしながら、新技術の登場を待ち迅速に導入することだ。


「C-130も元々はスカンクワークスが手がけており、今日に至るまでスカンクワークスが新機能の統合で支援しており、第一線のニーズに焦点を合わせつつ、活用方法を全く新しく考えている」とスカンクワークス®の統合システム部長レネー・パスマンがNational Interestに語っている。


C-130が長期間供用されており、数々の改修を受けた機材であること、また空軍がミッション範囲の見直しをここ最近展開していることから、同機がスカンクワークスによる改修の対象になった。


スカンクワークスは1950年代設計の同機供用期間を80年

超とすべく同機に関与を続けており、改修内容は以下を含む。


  • 新型プロペラ

  • 通信装置

  • グラスコックピット、タッチスクリーン画面

  • デジタル式エイビオニクス

  • 衝突回避装置

  • 「ウィングボックス」強化型


C-130改修と相当基準時間の関係


C-130供用を続ける中で同機の改修がどこまで必要なのか見極めるべく、空軍は「相当基準時間」equivalent baseline hoursを指標として使う。


C-130機体の疲労、亀裂は機体ごとに異なり、さらにミッション内容でも大きな差が出てくるし、投入環境の地形や天候条件でも違いが生まれると空軍は説明する。



重要な補給物資、兵器、兵員の空中投下をミッションを過酷でハイリスク地で展開するC-130は低高度運用可能で滑走路が未整備の場所でも運用されることが多い。


空軍はC-130のエイビオニクス近代化事業を実施し、8.33無線機、コックピットにボイスレコーダー、デジタルデータレコーダーを追加した。


だが改修は搭載済み装備品にとどまらず、武装の搭載やミッション範囲の拡大を目指した内容にまで広がっている。


その例としてC-130から爆発物搭載のミニ無人機多数を展開し、一帯を圧倒する数で偵察や攻撃を加えたり、パレット貨物投下式の爆弾兵器を運用する構想がある。


輸送機が攻撃手段になる


空軍では戦闘機材の定義を更新しようと、輸送機にも爆弾、機関銃、ミサイル、攻撃用無人機運用を導入し、ミッション範囲をこれまでの輸送用支援機から拡げようとしている。


「従来型兵装品をこれまでと違う形で運用し、機動性機材の新しい任務を実現する。これまで通りの考え方を脱却し、高度な機動部隊に変身させる」と航空機動軍団司令ジャクリン・ヴァン・オヴォスト大将がミッチェル研究所のインタビューで語っている。


輸送機を武装化すれば敵の攻撃になるとの疑問に、ヴァン・オヴォスト大将は「今でも標的になっている。敵は給油機や輸送機を狙い、補給線を寸断しようとする」と答えている。DARPAのグレムリン構想ではC-130で無人機多数を発進させ、空中回収するが、ヴァン・オヴォスト大将は輸送機がスタンドオフ発射地点に留まれば攻撃機として機能でき、重度防御地点への攻撃が実現すると指摘した。


同様に大型でステルス性がなく、本来なら脆弱なC-130が「運動性脅威の有効射程外からスタンドオフ攻撃で無人機多数を運用しながら空中指揮統制機となる。


空軍ではパレットによる爆弾投下をC-130で試行しているが、ヴァン・オヴォスト大将の発言に新しい意味が含まれる。輸送機からミサイルを発射し対地攻撃ができるのではないか。


「SOCOM(特殊作戦司令部)のモデルに注目しており、JASSMを機体後部から投下する。いったん空中に放出してから点火し、標的を狙う」(ヴァン・オヴォスト大将)


C-130はフレア他対抗手段も装備しており、地対空ミサイル攻撃をかわし、前線基地での運用を想定する。では、爆弾投下や攻撃型無人機の指揮統制、さらに空中ミサイル発射機能を付与すればどうなるか。


センサー、攻撃用兵器


なかなか優れた発想だ、とヴァン・オヴォスト大将も認め、輸送機多用途機は今後も高度技術を駆使する大国相手の戦闘を想定し改良していくと述べた。


あらゆる機材が武装軍用機となり、センサー、EW兵器、耐以降手段や攻撃手段を搭載できる。ミッチェル研究所で、ヴァン・オヴォスト大将は航空機動軍団はこれからも輸送機、多用途機の共同マルチドメイン戦への活用を目指し改良を続けると述べた。


「考え方を変える必要がある。今は中心をハイエンド戦に移す段階にある。機動力だけの実現では不十分で、共同部隊の戦力を充実させるべきだ。体制を整え、将来に備える。従来の枠組みを超えた考え方が必要だ」


例としてヴァン・オヴォスト大将は空対地兵器を輸送機に搭載する、攻撃型無人機をC-130やC-17に搭載し、爆弾投下する案に触れ、空中指揮統制機能を持たせるとも発言。


「C-17の各種アンテナを使える。機体の大きさ、重量、出力ともに有効活用できる。ポッドにC2機能を任せ、データ処理し発信する」という。


スカンクワークスは将来を見据えた基本研究や技術革新で有名だが、同時に既存装備に新技術を搭載し、機能を向上させる対策も展開している。ここから空軍がC-130武装化に大きく踏み出している理由がわかり、空対空、空対地ミサイルの運用も同機で実現しそうだ。■


Skunk Works Keeps C-130 War Ready: Here's How

The Lockheed Martin Skunk Works team created the U-2 Spy Plane, F-22 and C-130

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

UPDATED:SEP 9, 2021ORIGINAL:SEP 9, 2021