2021年11月18日木曜日

F-22とF-35はどこが違うのか、改めて比較検証してみた。

このブログ読者には改めて説明がない内容ですが、メディア各位にはこの記事内容を引用するとしてもF22とかF35などとおかしな表記をするのはご遠慮くださいね。

F-22 vs. F-35

IFG Family Photo, F-22, A/C 4009, LtCol Lee "Split" Bryant, F-35A, AF-3, Major Jonathan "Spades" Gilbert, F-16D, A/C 835, Major Charles Brantigan & Major Scott "Gins" Rinella, in formation over ISB, Tanker View, 15 May 2019

 

軍は世界最高峰の技術を用いるが、同時に最も恐るべき戦力を有している。国防総省は最先端装備により米国は第二次大戦後の世界に君臨している。

 

技術に加え、ペンタゴンは大規模な装備展開が可能だ。米空軍、米海軍には合計8千機があり、それぞれ世界第一位、第二位の戦力を有する。これに対し中国の人民解放軍空軍が世界第三位で3千機を運用中だ。

 

ただし米国では長く数より質を重視してきた。これはソ連時代からのロシアや中国と対照的だ。そのアメリカの価値観を象徴するのが戦闘機、爆撃機だ。好例がF-22ラプター、F-35共用打撃戦闘機の第五世代ステルス機だ。

 

ともに世界最高峰の戦闘機材といわれるが、両機種を比較すると違いが見えてくる。

 

F-22の競合相手をF-35と考えると本質を見失うことになる。

 

F-22ラプターは最高峰の制空戦闘機だ

 

2005年から供用中のF-22は制空多任務戦闘機で、初の実用ステルス戦闘機として登場し、今日でもF-35、ロシアのSu-57、中国のJ-20と並びステルス戦闘機は四型式しかない。

 

なかでもF-22の飛行制御能力がずば抜けて高いのは二次元推力偏向機能と推力重量比の高さが理由だ。前者についてはラプターは飛行中に推力の方向をずらし、飛行方向を変更できる。後者についてF-22の機体重量は43千ポンド程度だが、プラット&ホイットニーF119-PW-100ターボファンエンジン二基で70千ポンド推力を実現している。

 

このため、F-22は高高度の低密度大気でも十分に飛行でき、高度限界は65千フィートに達する。それ以外に低空の高密度大気中では自由に機体を制御できる。航空ショーではラプターが物理原則に反する飛行ぶりを示して観客を驚かすのが通例だ。

 

F-22は大量の兵装を搭載しつつステルス性能を維持できる。同機には20mm機関砲がつき、各種爆弾や空対空ミサイル、空対地ミサイルを機内兵装庫三か所に搭載する。F-22はステルス性能を犠牲にせずに航空優勢を確保できる。

 

マッハ2へ加速が可能でスーパークルーズでアフターバーナーを使わず超音速飛行するラプターの有効飛行半径は1,850マイルだが、これは機外に増槽二個をつけての場合でステルス性能が犠牲となる。

 

だが同機の生産は2011年に終了し、空軍の調達は186機で終わった。空軍は750機の調達をめざしたが、186機のうち、運用状態の機数は少数にとどまる。

 

F-35 共用打撃戦闘機は空のクォーターバックだ。

 

F-35共用打撃戦闘機も第五世代ステルス多任務機で、三型式ある。F-35Aは通常型の離着陸に対応し、F-35Bは短距離離陸垂直着陸のSTOVL型、F-35Cは空母運用用の機体だ。

 

多任務戦闘機としてF-35ではミッションセット6通りに対応する。戦略攻撃、近接航空支援、航空優勢確保、電子戦、情報収集監視偵察(ISR)、敵防空体制制圧(SEAD)、敵防空体制撃破(DEAD)である。

 

F-35の機内兵装庫は二か所で搭載量は少ないが、ステルス機能を維持したまま航続距離は長い。

 

アフリカでグリーンベレー部隊を支援する、クリミアのロシアレーダー施設を破壊する、フィリピンでテロリストを追跡する...F-35ならすべてをこなす。

 

ただし、F-35には深刻な条件がついてまわる。共用打撃戦闘機は各種ミッションをこなせるのだが、米空軍はその実施に及び腰だ。極めて高価な装備品のF-35は事業費が1.7兆ドルとなり、その他の旧型機でこなせるミッションに同機を投入する理由がない。また空軍上層部はF-15EXイーグルII(4.5世代機)でステルス性能が不要なミッションに投入するとしている。

 

ラプターと対照的にF-35生産は継続中でしかも活況を呈している。国防総省は各型合計で2,500機の導入を目指しており、その他十数か国が500機程度の調達希望を表明している。

 

F-22 と F-35

 

F-22、F-35はともに高性能機材であるものの、想定する役割は異なる。ただし、搭載技術とミッションセットの一部は共通している。

 

F-35ではセンサーと接続性が大きく異なる。両機ともに状況認識能力が高いが、F-35ではさらに先を行くセンサー能力、情報融合能力、データリンク機能を搭載し、旧型機含む僚機の戦力を増進させる。

 

たとえば、JSFの高性能センサーでロシア爆撃機を北海で探知したとしよう。あるいは南シナ海で中国戦闘機編隊を探知した場合だ。F-15EXあるいはF-16のペアを標的に誘導できる。F-35のステルス性能によりロシア、中国側は危険が迫る状況と認知できない。まさしくF-35は空の「クォーターバック」で海軍や陸軍部隊への情報提供も可能で、秘匿性を確保したネットワークを利用する。

 

他方でF-22は「ドッグファイト機」として優秀だ。機敏な機体制御と武装多数を積み込んでいる。このため、ラプターは中国あるいはロシア相手の大国間戦闘で真っ先に投入される制空戦闘機になるだろう。強力な敵軍がさらに優秀な戦闘機部隊や対空装備、レーダーで対抗する中に旧型のF-15、F-16やF/A-18を投入すれば苦戦となる。だがラプターのステルスと強力な武装があれば厳しい環境でも活躍可能で敵機を駆逐するはずだ。さらにF-35と組み、敵防空体制を制圧し、戦域単位で侵入路を開く、あるいは戦略級の航空優勢を実現する。

 

米軍部隊の技術を世界最高峰と称するのには理由があり、F-22ラプターおよびF-35共用打撃戦闘機も強力な部隊を構成している。■

 

Why Trying to Compare an F-22 Raptor and F-35 Is Just Flat Out Wrong

ByStavros AtlamazoglouPublished23 hours ago

 

1945’s New Defense and National Security Columnist, Stavros Atlamazoglou is a defense journalist specializing in special operations, a Hellenic Army veteran (national service with the 575th Marine Battalion and Army HQ), and a Johns Hopkins University graduate.

 

2021年11月16日火曜日

米空中給油能力の抜本的なてこ入れが必要とハドソン研究所が指摘。インド太平洋での作戦支援には機材のみならず日本などの民間空港の活用も視野に入れるべきと主張。

  


F-16ファイティングファルコンがKC-135ストラトタンカーからの空中給油をアフガニスタン上空で受けようとしている。ハドソン研究所が公開したレポートは空軍の空中給油能力の現況に警鐘を鳴らしている。(Staff Sgt. Sean Martin/U.S. Air Force)

 

軍の空中給油能力が「弾力性を欠き、もろく」なっており、老朽化が進み、大国相手の戦闘継続を支えられなくなっているとハドソン研究所がレポートで警鐘を鳴らしている。

 

レポートの題名は「空中給油の弾力性、米軍のグローバル展開を守る」“Resilient Aerial Refueling: Safeguarding the U.S. Military’s Global Reach,” で、給油機部隊の現況を解説しつつ世界各地で米軍の兵力投射能力が減退していると指摘している。

 

「2021年に米空中給油能力は失速した」とあり、2021年11月15日に公表された。まとめたのは同研究所で国防構想と技術を扱うティモシー・ウォルトンTimothy Walton とブライアン・クラークBryan Clarkだ。

 

冷戦終結はすでに30年前だが、給油機はその後も世界各地で平和維持並びに戦闘任務の支援に動員されている。「遠征展開」で部隊派遣が増えているが、空軍の給油機は往時の701機規模が473機に減っており、部隊運用にストレスを感じさせている。給油機を高ピッチ運用するのが通常になると給油機部隊に余裕がなくなるというのが同レポートの指摘事項だ。

 

「このままだと航空部隊は複雑かつ分散型の作戦展開ができなくなる」とあり、「紛争時に弾力性を失った空中給油と米国の作戦構想の弱点を敵勢力が広範についてくるだろう。空中給油体制が弱点となり、米軍は侵攻の抑止・撃退に無力ぶりをさらけだしかねない」

 

もう一つ懸念されるのが給油機の機齢が平均52年と高くなっていることで、稼働率も低下している。新型ボーイングKC-46ペガサス導入の遅れも状況悪化につながっている。旧型KC-10エクステンダー、KC-135ストラトタンカー両型では退役が近づいている。

 

ハドソン研究所では空軍含む各軍で空中給油能力の拡充は避けて通れず、機数を増やす以上の策が必要だと指摘している。今回のレポートでは最優先事項はインド太平洋での航空施設を多数整備、燃料貯蔵の確保、防御態勢の強化だとしている。このため今後の10年で毎年633百万ドルを、その後は毎年400百万ドルの支出が必要と試算した。これによりインド太平洋での給油能力は63%増え、2041年にほぼ倍増することになる。ただ給油機の調達数は少なくなると見ている。

 

空軍が空中給油能力の拡充にむかわず、燃料確保にも向かわないと、有事の際に中国による挑戦に対抗できなくなるとレポートは推論している。空中給油機部隊には施設の整った航空施設が多数必要となるし、政策上の考慮も求められるとハドソン研究所は主張。

 

各機にリスクが増えれば稼働可能な給油機が制限され深刻な結果を生むともレポートは主張している。

 

国防総省は「給油機部隊の運用弾力性を引き上げるため、現行のもろい体制を分散型に変化させ、軍用民用双方の航空施設を米領也日に各国領内に確保することで、米空軍がめざすアジャイルコンバット展開構想を実現すべきだ」とレポートは指摘している。

 

給油業務の分散化をさらに進めれば燃料貯蔵庫の防御が容易となり、海上輸送も活用すれば軍は必要な燃料確保が実現するというのがレポートの主張だ。

 

レポートでは日本や南朝鮮の民間空港を米軍が使用すれば中国は標的捕捉が困難となると指摘している。民間施設に給油機が「立ち寄り」、給油後に迅速に離陸すれば作戦実行が拡大できるとする。

 

米空軍には給油機材の進化が必要だとハドソン研究所は主張している。KC-46と次世代給油機KC-Zのギャップをつなぐ機材が必要だ。このつなぎ給油機はKC-Yとして知られ、候補にKC-46あるいはロッキード・マーティンのLMXT次世代給油機があがっている。後者はエアバスA330マルチロール給油輸送機(MRTT)を改修するものだ。

 

つなぎ給油機は燃料を大量搭載しての長距離ミッションの実施能力が求められるとハドソン研究所は主張。小型機では空軍の要求に合わない。だが同時につなぎ給油機が既存機材の改修予算を吸い取ってはいけないと注意喚起している。また次世代KC-Z高性能給油機開発の予算も別個確保すべきとする。

 

空軍はKC-Z開発を加速化すべきだとレポートは主張し年間18-24機のペースで生産が必要とある。これはKC-135が予想より早く退役となり、機材全体の機齢を引き下げることで空軍は調達予算支出を増やせる効果が生まれるからだ。

 

レポートでは指揮統制通信機能の近代化も空中給油業務で実施すれば実施効率効果がさらに引き上げられるとも指摘している。■


'Brittle' air refueling capability endangers US during major war

By Stephen Losey


2021年11月15日月曜日

注目の機体 ロシアの新型AWACS,A-50Uはどこまで性能を向上させているのか

 

シアの早期警戒機A-50の量産が始まったと製造元のベリエフ航空機会社が発表している。

 

「当社はA-50U改良型長距離レーダー監視機材をロシア航空宇宙軍に引き渡した。同機は航空中軍が基地に移送した」

 

A-50Uとはソ連時代のA-50空中王偉警戒統制機 (AEW&C) の近代化機材で、大量生産されたIl-76の派生型としてリアナ監視レーダーシステムを搭載し、最大10機の標的を同時追尾できる能力を有する。

 

A-50Uの主な改良点は新型シュメル-Mレーダーで、高性能ソフトウェアハードウェアを活用すると製造元Rostecが宣伝している。

 

とはいえ「高性能ソフトウェアハードウェア」の性能はどうなのか。シュメル-Mは回転式レーダーでA-50Uはロシア軍内では「キノコの機体」として知られる。

 

A-50Uの機体寸法や形状はIl-76の原型を引き継いでいるが、製造元はシュメル-Mでは新設計部品を採用したことでレーダードームを軽量化したという。また同レーダーは空中で650km、地上なら300kmの探知が可能で、空中で40、地上の300目標を同時監視できる。

 

A-50Uで完全デジタルシステムを搭載し、旧型と大きく異なる。取扱いが簡単になり処理が高速化しながら操作員のエラーの余地が減った。その他機体内部の改良がある。

 

ロシア軍の新鋭機材の例にもれず、A-50Uもシリアに2018年まで投入されていた。実戦テストで同機は北部シリアでロシア軍を支援した。旧型A-50もシリアに2015年に投入され、ロシア空軍は両型式の性能の違いを実地体験できた。

 

A-50Uは機能、役割で米空軍のボーイングE-3セントリーに匹敵する存在だが、性能の違いを示す機会がない。原型のA-50では輸出仕様のA-50Iがあり、イスラエル製EL/W-2090ファルコンレーダーを搭載しインドが購入している。中国へも商談が2000年代初めにあったが、成立せず、中国はKJ-2000AEW&Cの国産開発に進んだ。

 

クレムリンが積極的に武器輸出を進めていることから、A-50Uの次の購入先にインドが想定されていることは十分にありうる話だろう。■

 

Russia's A50U Aircraft Means Business

November 5, 2021  Topic: Russian Air Force  Region: Europe  Blog Brand: The Reboot  Tags: A-50RussiaNATOSurveillanceMilitary

by Mark Episkopos

 

Mark Episkopos is a frequent contributor to The National Interest and serves as a research assistant at the Center for the National Interest. Mark is also a Ph.D. student in History at American University. This first appeared earlier this year and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.


 

米空軍もE-7ウェッジテイル導入に踏み切る模様。E-3AWACS後継機として。来年に公式発表を期待するボーイング。

 


オーストラリア空軍供用中のE-7Aウェッジテイル空中早期警戒統制機。 (Royal Australian Air Force/Cpl. Melina Young)


空軍からE-7ウェッジテイル空中早期警戒統制機導入の発表が2022年に出るとボーイング防衛部門がドバイで11月13日に発言し、空軍が同機調達を次年度予算案に計上するとの観測を強めている。


「空軍がE-3後継機にE-7を選定すると自信を持っている」ボーイングの防衛部門営業開発担当副社長マイク。マナジルMike Manazirがドバイ航空ショー開幕前の記者会見で語った。


「2022年に発表があると見ている。E-7選定に傾いている」「同機の性能を同盟国と活用し米空軍の戦力維持に役立つ」


空軍はボーイング737が原型のE-7ウェッジテイル調達で31機ある早期警戒機E-3セントリーAWACSと交代機材として検討している。E-7はオーストラリア、英国で導入済みだ。


AWACSには1970年代製造の機体もあり、部品の陳腐化で維持経費が上昇し、稼働率は40%台に低下している。


このため、航空戦闘軍団トップのマーク・ケリー大将Gen. Mark Kelly や太平洋空軍司令ケネス・ウィルスバック大将かGen. Kenneth WilsbachらAWACS機材更新を強く求める声が出ており、予算が付けば早期にウェッジテイルに交代させるべきとしている。


両大将に加え空軍長官フランク。ケンドールFrank Kendallと参謀長CQ/ブラウン大将Gen. CQ Brownもウェッジテイルへ関心を示しているが、2023年度予算案の発表前でもあり、同機導入の意向はだれも公式に発言していない。


ただ空軍が同機導入の方針に近づいている兆候はあった。E-7関連の解析業務をボーイングに随意契約の形で10月に交付し、空軍独自の仕様のためどこを改修すべきかを解明していた。


マナジールは空軍と「密接な協議」を行っており、ウェッジテイル販売につなげるとの発言もあった。


ボーイング民生機部門は737 Maxの飛行停止措置ならびにCOVID-19パンデミックによる航空宇宙業界の打撃を受け低迷したままだが、マナジールは「防衛部門は安定、予測可能で底堅い」と述べている。


同社は今後10年の防衛部門需要を2.6兆ドルと試算している。そのうち中東での販売は今後5年で340億ドルの防衛宇宙関連製品の販売を見込む。


マナジールは具体的な販売先名を示さなかったが、ボーイングの戦闘機各種、AH-64アパッチ攻撃ヘリコプター、CH-47輸送ヘリコプター、KC-46給油機のほか衛星関連が中東の関心を集めていると語った。■


US Air Force will buy E-7 Wedgetail in 2022, Boeing exec claims

By   VALERIE INSINNA

on November 13, 2021 at 9:51 AM


2021年11月14日日曜日

ドバイ航空ショーでの注目機。スホイのチェックメイトは廉価版のSu-57フェロンなのか。宣伝文句通りなら超お買い得のステルス戦闘機になるのだが。

 

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TASS

 

ロシアは新型機チェックメイトを軽量戦闘機と呼ぶが、事実と異なる。

 

ホイ・チェックメイトの広報資料がドバイ航空ショーに先立ち公表された。同機は公式に存在が発表されて4カ月がたった。同機には軽量戦術航空機LTSの意味のロシア名称がつくが、想像よりも大型でSu-57フェロンに匹敵する大きさのようだ。二機を並べると、謎に満ちたチェックメイト事業の実態が浮かび上がり軽量戦闘機でなく中型機であることがよくわかる。


 

単発のチェックメイトと双発Su-57を比較すると共通点が目につく。なかでもSu-57が重戦闘機のスホイフランカーファミリーの系列を引き継ぐのに対し、公式には軽量戦術機とされるチェックメイトも全長57フィート、翼幅39フィートはフェロンの66フィート、48フィートとそん色ない。

 

両スホイ機は低視認性を意識し「バランスの取れた」最適化措置を受けている。ともに機体主翼一体型構造で揚力を生む機体形状で、主翼前縁部の根元を延長するLERX構造になっているが、Su-57のほうが大きく、フラップも大きくなっている。これに対し新型機の主翼形状もフェロンに似ており、LERXの特徴が見える。

 

チェックメイトのエンジン型式は不明だが、公開された機体に実際のエンジンが搭載されていたかも不明だが、排出口だけは実際のもののようだ。エンジンはイズデリエ30の派生型といわれ、Su-57も同型エンジンを搭載する。他方で公表データではチェックメイトのエンジン推力は14,500-16,000 キログラムとされているのでイズデリエ30より一段低い定格なのか、同エンジンをダウングレードしたのだろう。設計では操縦機動性を重視しており3D推力偏向機能がついているか、取り付け可能なのだろう。

 

ロシアTASS国営通信が発表したデータでチェックメイトの性能がわかり、最高速度は2,200km/h (1,367mph) 、航続距離は2,800km (1,740 miles)とあり、これまでの発表より低くなっている。航続距離は外部燃料タンクを搭載したものだ。

 

チェックメイトは武装搭載量を7,400kg (16,314lb)として機内にハードポイント五か所を設け、機外にさらにパイロン六ケ所がある。

 

こうしてみるとチェックメイトは中型戦闘機であり、軽量戦闘機ではないことがわかる。燃料搭載量が多く長時間の戦闘任務に対応しながら、ステルス性能を発揮できるのが最大のセールスポイントだ。

 

TASS

チェックメイトの機内兵装庫は三か所あり、機外にもパイロン四か所がある。

 

コックピットとレドームにも類似性が見られることから両機種のエイビオニクス装備やレーダーが共通の可能性がある。このことは同機が初登場した段階で想定していた。開発費用の削減のみならず飛行テストの負担も減るからだ。また両機種の費用節減効果も期待できる。TASS配信では搭載システムや一部要素が共通化され、整備も容易になるとあった。

 

ROSTEC

チェックメイトは今年7月に公開された。.

 

もう一つ興味深いのはTASS記事にスホイがチェックメイト設計にシリアでの戦訓を使っているとあることだ。シリアでロシア軍はあらゆる機種を投入し、Su-57も評価用に登場した。シリアの戦訓から設計陣は「軽量単発機を2016年に設計していたが、シリアでの攻撃機材の運用実績を解析し、双発攻撃機の投入は過剰だと判明した」とチェックメイト主任設計者ミハイル・ストレレツMikhail StreletsがTASS取材に答えている。

 

このチェックメイトが11月14日からのドバイ航空ショーで初めて国際舞台に登場するが、同機の輸出について関係者がすでに話題にしている。また将来の発展形もヒントが出ている。

 

スホイ設計局を傘下に収める合同航空機会社(UAC)の総支配人ユーリ・スリュサールYuri Slyusarはが以下発言している。

「同機はもともと各種航空機ファミリーの基本形としてつくったものだ。現在は有人機で無人運用も可能な機体の実現を目指している。

「無人機化で時流に乗ろうというのではなく、実際にすでに初期段階に進んでおり、ネットワーク化軍事作戦での投入を想定している。同機は情報を共有し、その他機材無人機に指示を出し標的にムカワエル。無人機型の投入で全く新しい戦術が生まれる」

 

下はTASSが配信した同機無人機型の想像図だ。

 

TASS

 

その他派生型の話題が出ており、複座型は最近登場した中国のJ-20ステルス戦闘機でも同様だが、こちらは実際に試作型が飛行可能となっている。

 

こうした計画も顧客がつかなければ絵に描いた餅になるだけだ。これまでのところロシア国防省の反応は低調なようで、軽量や中型の戦闘機への関心はここ数年間低いままだ。

 

そのことを念頭に、新型戦闘機に顧客が必要だ。ロステック国営企業総支配人のセルゲイ・チェメゾフはTASS取材に語っている。「このクラスのマシンには世界で需要が高い。飛行性能と戦闘量をお求めやすい価格でまとめたほかに例のないロ伊佐正単発戦闘機は国際市場で人気を集めるはずだ」

 

TASS

 

チェックメイトの機体価格は30百万ドルと発表されており、F-35共用打撃戦闘機は90百万ドルが比較対象だ。新規製造のF-16と比較しても半額程度とTASSは伝えており、もともと「無駄を省いた」JF-17サンダーの55.33百万ドルよりも安い。ただし価格は仕様により変動するのであくまでも基本形の価格を比較した。スホイがこの価格帯で同機を近い将来納入できる理由が謎だ。

 

購入可能性のある顧客は中東、アジア太平洋、ラテンアメリカだ。

 

これまで公開されたチェックメイトは実寸大のモックアップで実機構想を示すだけが目的だったのか。ただし、展示機の現実度が高いことから何らかの実証機でエンジンを搭載すれば地上走行は可能だとする向きもある。

 

ドバイショー会場で同機を近くから観察しエンジンが搭載されているのか、その他重要装備がついているか検分できると期待され、機体の詳細を実際に目にできよう。

 

一方でチェックメイトのハードウェアはしっかりと地に足をつけているように見える。

 

Latest Images Of Russia's Checkmate Fighter Shows Us Just How Big It Really Is (Updated)

Russia has billed the Checkmate as a light fighter, but that isn't really the case. 

BY THOMAS NEWDICK AND TYLER ROGOWAY NOVEMBER 13, 2021

THE WAR ZONE

Contact the authors: thomas@thedrive.com and tyler@thedrive.com



2021年11月13日土曜日

主張 台湾の積極防衛戦略は中国侵攻に対し有効に作用すると期待。

 

Image: Creative Commons.

 

ャパンタイムズが台湾国防部が隔年発行する軍事戦略報告の最新版を報じた。(同紙が先行印刷分を入手したのは明白だ。台湾国防部の公式ホームページでもまだ掲載されていない。)以下は同戦略の骨子だ。「何といっても開戦阻止が第一で、外部からの軍事脅威の阻止が肝要で、わが方の防衛力を全面行使しても本土を防衛する」とあり、台湾海峡を挟んでの強襲揚陸作戦の「リスクと負担に対応する」。

 

文書ではさらに中国軍の「弱点は海上移動段階にある」とし、台湾の防衛部隊は「台湾海峡という自然障壁を最大限活用し、粘り強く戦う」とする。「海峡移動が完了し上陸するまで湾海峡の反対側で敵軍が港湾や飛行基地に終結するまで座して待ってはいけない」

 

これは健全な戦略だ。受動的な防衛体制は敗北を招き、敗北は台湾の破滅を意味する。

 

ある意味で台湾防衛軍は敵を模倣することになる。人民解放軍(PLA)は「積極防衛」を中国共産党(CCP)の創立者毛沢東から引き継いでいる。劣勢の部隊が積極防衛を取れば忍耐力を試される。敵より弱い戦力という事実を受け入れ、時期尚早の攻撃は避ける。決戦を挑んでも勝つ見込みがないので、小規模の奇襲攻撃でしつこく攻撃し敵を弱体化させながら、自軍の戦力を蓄える。敵を弱体化させ自軍を強化する積極防衛は弱い側でも忍耐強く当たれば勝利が手に入ると教える。

 

台湾軍はこの積極防衛をめざすべきだが、はるか昔の英国人サー・ジュリアン・コーベットの著作『海洋戦略の諸原則』を参照すべきだ。コーベットは海洋国家英国は最盛期に海外で限定戦を仕掛ける条件として地理条件で孤立していることをあげ、領土をめぐる戦いの条件として敵による「無制限の反撃」の本土上陸作戦を阻止することをあげた。言い換えると限定戦には戦闘を対象地の地上戦に限定し、敵による占領を回避しつつ非対称的な攻撃を加えるべきと説いたのだ。

 

台湾は中国が狙う目標地だ。コーベットの限定戦論では台湾軍はPLAに封鎖される事態を回避すべき、あるいはCCP体制に強烈な打撃を与えるべき、またはその双方となる。後者では台湾政府に実施手段がないので前者に全力で取り組むべきだ。侵攻部隊を海上で撃退できれば、地上戦準備に時間を稼げる。さらに台湾周辺の空域海域を維持できれば、台湾海峡は防壁になり、米国や日本の救援部隊が海空で大きな犠牲を出さずに現場に移動できるよ。

 

そこで前線での戦闘が結果を左右すると台湾の新軍事戦略で特記している。台湾は人員物資面の不利のまま大きな優位性を発揮できる。台湾はPLAを敗北に導き、台湾の意思を本土に強いる必要がない。毛沢東流の考えで勝利を収める必要もない。台湾に必要なのはPLA海軍による海峡制圧を回避することだ。制海権がないままではPLAは兵員重装備の上陸作戦の実施で強硬な防衛軍を制圧できなくなる。PLAの作戦が破綻すれば、台湾は「海上制圧」戦略の勝利となり、戦闘の代償に見合う結果を手に入れることになる。

 

コーベットも海上を移動する攻撃側が「防御に専念する防衛側を突破できなければ制海権を確保できなくなる」と考えた。海上制圧とは台湾が制海権を確保することを意味せず、PLAの航空機やミサイル攻撃の阻止にもつながらない。またPLA海軍の封鎖を破ることでもない。だが、コーベットの言葉を借りれば、敵の支配を否定する効果を「長期間にわたり行使すれば、敵は望む結果を得られず、対抗側は陸上防衛体制を確保する時間が稼げる」。台湾の戦いは台湾の陸上で雌雄を決することになりそうだ。PLAによる拠点確保を台湾軍が阻止できれば、台湾の民主体制は生き延びる。

 

そなると台湾に必要なのは海上支配や対抗作戦の実施ではない。必要なのはPLAを長時間食い止めることだ。また台湾の軍事戦略構想では台湾軍は台湾沿岸からどこまで遠い地点で中国侵攻部隊を叩けるかが問われることになる。沿岸配備の対艦対空ミサイル、ミサイル搭載哨戒艇、機雷がPLAに大きな損傷を与えることで戦闘は長期

 

ボクシング界の伝説的チャンピオン、ジャック・デンプシーなら台湾の戦略防衛構想を健全な攻撃的態度と呼ぶだろう。■

 

How Taiwan Could Stop a Chinese Invasion


ByJames Holmes

 

Now a 1945 Contributing Editor, Dr. James Holmes is J. C. Wylie Chair of Maritime Strategy at the Naval War College and a Nonresident Fellow at the Krulak Center for Innovation and Future Warfare, Marine Corps University. The views voiced here are his alone.