2021年11月21日日曜日

大型非ステルス機は危険と、だが新しいグローバルホークのブロック30まで退役させる米空軍の決断は正しいのか。戦術変更と技術改良でグローバルホークにも対中戦で生存性は高まる。

 



New Tactics & Upgrades to Enable Large Drones to Survive High-Tech Major Power War

Department of Defense

 

 

「とどまるところを知らない」とは情報収集監視偵察(ISR)へのペンタゴンの期待度でぴったりの表現だ。処理済みデータを適時にほしいとの要望は高まるばかりだ。

 

 

偵察作戦は有人スパイ機、掃海ヘリコプターから無人機まであらゆる形状、機体サイズ、高度で展開され、戦時の決定立案に「違いを生み出す」要素とされる。

 

ここで重要なのがスピードと有効範囲で、このため米国や太平洋地域の同盟国の無人機需要には限度がない観がある。日本、オーストラリア、インド、さらに台湾までもがISR及び米国とのネットワーク接続の整備を急いでいる。

太平洋は広大なため、米軍戦闘司令官から偵察機材の追加に加え安全な相互接続によるデータ送受信を米国同盟国間に求める声が高まっている。. 

この背景に中国の海軍力増強が続いていることがあり、日本が高高度飛行可能なグローバルホーク導入を決めた理由でもある。

 

グローバルホークとは

 

グローバルホークは長年にわたり戦闘地帯に投入されているが、センサー、航続性能、燃料消費など改良を続けている。高高度長時間飛行機材としてグローバルホーク無人機は高解像度カメラで敵の動きをズームで捉える。

また、グローバルホークは大規模な統合戦闘ネットワークの「中継点」としても長年使われている。

 

統合参謀本部副議長だったリチャード・マイヤース大将はこの動きを20年前に先取りしイラクの自由作戦でグローバルホークが本人が言う「融合」のカギを握ったと発言していた。

 

 

融合

 

マイヤースが言及したのはグローバルホークをほかの機材や地上偵察機材とリンクさせることで、JSTARS(E-8C統合監視標的攻撃レーダーシステム)に通じるものがあるが、同大将は時流を先取りし、「処理済み」情報の共有スピードが戦闘の行方を決すると見ていた。

 

情報「融合」とは解析結果を高速かつ安全な送信とともに実施することを意味し、前例のない規模での開発が優先的に進む可能性を秘めている。

 

その中で空軍がブロック30仕様のグローバルホークを退役させるのをいぶかしく思う向きがある。

 

空軍発表資料ではグローバルホークは電子光学赤外線カメラと合成開口レーダー(SAR)を搭載している。ブロック40仕様のグローバルホークはこの五年六年で供用開始しており、レーダー技術挿入、アクティブ電子スキャンアレイ、SAR、移動標的捕捉機能では高性能センサーで地上を移動中の標的を探知追尾できる。

 

空軍はノースロップグラマンとグローバルホーク近代化改修を進め、地上制御施設を更新したほか、指揮統制機能も一新し、反応遅延を減らし、攻撃対応を迅速化し、今後のセンサー画像解像度の向上に対応するソフトウェアの基盤を打ち出したほか、AIによりマンマシンインターフェース強化を実現した。

 

戦術面でいうと、これはノースロップグラマンが「その場対応」の任務割り当てと呼ぶ内容につながり、迅速に届く新規情報を活用してミッション内容を調整することにつながる。

 

第一線から外れるグローバルホークのブロック20機材は廃棄保管施設に送るのではなく、グランドフォークス航空基地(ノースダコタ)で極超音速ミサイルテスト二と入される。

 

超大国間戦でもグローバルホークは生き残れる

 

空軍では引き続きブロック30機材の退役も進め、供用開始10年程度で廃止する。空軍上層部はステルス性能が低い大型偵察機では高性能な大国の防空体制に耐えられないと見ている。

 

では、高度脅威環境で本当に生き残れないのだろうか。

 

例としてイランが海軍仕様のグローバルホークを2019年に地対空ミサイルで撃墜した事案がある。脅威対象に合わせた調整内容の詳細は保安上の理由で明かされていないが、米国が新型対抗装置や戦術の変更で機体生存性を調整していることはありうる。

 

この点に関し、大型無人機の運用では飛行経路の予想を困難にする、飛行経路を変更する、搭載カメラの性能を向上するなどの対策を米空軍上層部が話題にしてきた。

 

空軍は新鋭かつ改修直後のグローバルホークでも退役させ、今後の装備導入を優先させるようだ。この発想では今でさえ偵察能力が不足している状況で能力ギャップを生みかねないが、高高度飛行偵察の拡充による付加価値が生まれるのなら木を見て森を見ない態度は避けるべきだろう。

 

戦術変更で生存性を高める、また高高度飛行で安全を確保することで大型かつ低ステルス性能の無人機でもハイエンド環境あるいは紛争時の運行で付加価値を期待できそうだ。

 

グローバルホークに脆弱性があるとしても、同機が無人機であることからパイロットには危険は発生しない。

 

これに対しU-2偵察機は有人機であり、無人機にないリスクがつきまとう。また飛行時間の問題もあり、グローバルホークのような大型機は最長34時間の連続飛行が可能かつ乗員の要素を考慮する必要がない。

 

グローバルホークは中国に対抗する同盟国でも活躍する


太平洋での中国の脅威から米国の同盟各国が高高度長時間運用可能な偵察機材導入に走っており、広大な海洋域を長時間にわたり電子偵察する航空装備の稼働を急いでいる。

 

日本はグローバルホーク三機を調達し、防衛力の整備が進む中で調達を増やせば効果がさらに期待できる

 

南朝鮮はグローバルホーク4機を調達しており、ノースロップグラマンは韓国、日本ともに地上局での指揮統制機能を整備していると明かしている。

 

太平洋に高高度飛行偵察機材が追加されれば各国の「ネットワーク」が相互に強化される。

 

米空軍の高度戦闘管理システムはペンタゴンがめざす統合全ドメイン指揮統制機能の一環として各部隊をつなぐ構想で秘匿性を維持したネットワークの実現で効果を実証しており、各中継点や機材を組織を問わずリアルタイムでネットワーク化するものだ。

 

ここにグローバルホークの意義がある。山脈など地理条件で困難な水平線越えのデータ送信をつなぐ存在となる。日本のような国には極めて重要だ。日本は広大な海洋領域を有し、海洋に囲まれていることから中国の侵攻を受けやすい。日本は巨額予算でF-35導入を進めており、グローバルホークが支援し、脅威データを中継し、標的情報を提供する、偵察映像をリアルタイムで共有する、さらに情報収集の時点でそのままデータを処理する機能を実現する。

 

F-35 Lockheed Martin

F-35がもたらす利点のひとつに各ドメインを横断的につなぐ機能がある。Lockheed Martin

 

 

例として脅威対象の移動情報を海軍艦艇等が山の反対側で収集し、グローバルホークが中継する場合が想定される。味方戦闘機部隊や防空部隊には視認できない。今後の処理速度の向上でグローバアルホークが空の中継点となり、見通し線外での通信接続の課題を解消する存在になりそうだ。これにより戦闘展開が加速化され、戦闘の行方が大きく影響を受ける。

 

グローバルホークは一定地区上空で長時間とどまり、通常なら分断されるレーダーの「視界」をつなぐ機能を実現するので戦闘指揮官に各種情報が途切れなく入ってくる。

 

情報収集時点で処理し、無限ともいえるデータの海から関連線のあるものを自動的に見つけ出すことでネットワーク化の効果があがり、センサー探知から武装発射への時間が短縮される。

 

ソフトウェアとセンサー処理能力の向上にAIのアルゴリズムが加わればパラダイムを一変しかねない変化がグローバルホーク運用に生まれる。ここ数年間で集めた多数の運用例から同機はかつてのような脆弱性のある機体とは言えなくなっている。ブロック30仕様の各機の退役は世界各地の運用ニーズや実際の脅威を考えると得策とは言えない。

 

イラクの自由作戦当時に実戦デビューしたグローバルホークだが今日は一層その存在感を増しており、重要機材になっており、作戦への寄与度はこれからも増えそうだ。■

 

New Tactics & Upgrades to Enable Large Drones to Survive High-Tech Major Power War

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

UPDATED:NOV 19, 2021ORIGINAL:NOV 19, 2021

https://warriormaven.com/air/global-hawk-drones-surveillance

 

Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University. 


2021年11月20日土曜日

南シナ海で事故に遭遇したUSSコネティカットがグアムを出港。艦艇補修能力が不足の米海軍には痛い展開になるが、シーウルフ級の重要性のため高優先順位で修理が行われそうだ。一方、事故は回避可能だったとの海軍結論で艦長他が解任された。

 

USN

 

 

海軍のシーウルフ級原子力攻撃型潜水艦USSコネティカットがグアムを本日出港した。同艦は自力航行しているが、目的地は不明で、ワシントン州へ帰還の前に試験航行した可能性もある。同艦が海図にない海中山岳に衝突し損傷を受け一カ月以上が経過しているが、海軍当局は事故は回避できたと結論づけている。

 

コネティカットの出港をまっさきにつたえたのはUSNI Newsで、アプラハーバーのバースから移動しているのが航路追跡ソフトウェアで確認できた。中国国内のSCS Probing Initiativeもこれを確認している。同艦は事故発生の6日後の10月8日にグアムに入港していた。事故は南シナ海で発生したとされる。

 

「USSコネティカットは被害評価、修理、テストをグアムで受け、安全かつ安定した状態のままだ」と海軍中佐シンディ・フィールズCdr. Cindy Fields報道官(太平洋艦隊潜水艦戦隊SUBPAC)がThe War Zoneに述べている。中佐は同艦が出港したかには触れていない。

 

海軍は繰り返し同艦の原子炉及び推進系には事故で損傷はなかったと述べている。ただし海中山に衝突した際の艦体への損傷程度は不明だが、衛星画像では前方のソナードームが完全につぶれた可能性が見える。その他報道でもバラストタンク含む艦の下方で損傷が発生したとある。

 

確実なことは言えないが、同艦はグアムを離れて移動中なのか、自力航行が可能なのか確かめてから別の基地に移動するのだろう。フィールズ中佐の発言とも符合するのは海軍が同艦への損傷評価を完了していないことだが、内容不詳の「修理」および「テスト」も行っている。

 

同艦の損傷度合が伝えられるより深刻だとすれば、ドライドックに入れる必要がある。アプラハーバーにはこの作業に適した設備がないため、海軍は母港のブレマートン(ワシントン州)で大規模修理を行うと公表している。同艦が安全に外洋航行できない場合は、民間会社を雇い大型運搬船で同艦をグアムから移動させる。

 

海軍はコネティカットの修理と現役復帰を費用や時間に構うことなく真剣にとらえている。シーウルフ級が三隻しかないことを考えると理屈に合う。各艦は高性能の大型艦で需要が高く、情報収集機能が目立つほか、各種の特殊任務に従事している。シーウルフ級の最終建造艦USSジミー・カーターには全長100フィートの多任務プラットフォーム(MMP)が艦上部についており、極秘かつ危険な水中情報活動に使われているといわれる。

 

コネティカットの事故を受けて、海軍は潜水艦部隊全体に「航行安全訓練」の再受講を求めている。

 

USN

USSシーウルフの主制御室の写真は珍しい。1997年撮影

 

SUBPAC司令ジェフリー・ジャブロン少将 Rear Adm. Jeffrey Jablon は「潜水艦全体に警戒態勢解除を命じた」としており、ウィリアム・ヒューストン中将 Vice Adm. William Houston (米大西洋艦隊海軍潜水艦部隊(SUBLANT)司令官)(兼NATO合同潜水艦部隊司令官)は海軍潜水艦連盟の例会で「教訓を共有する。安全調査委員会はまだ結論を出していないが、現時点で十分な情報が判明している」と発言した。

 

11月4日に海軍からコネティカットの艦長、副長、最先任下士官を解任したと発表しており、衝突事故の責任をとらせた。海軍の見解は航行時に求められる決定プロセスに従い、航行コース決定、見張り員の職務、リスク管理をしっかり行っていれば事故は回避できたというものだ。

 

「航行では安全手続きの厳守を求めているが、同艦の乗員はそれに反する対応を示した」とヒューストン中将は発言している。コネティカットについては現役復帰し安全な運航が可能となるのがいつになるのかが今後は焦点となるだろう。■

 

USS Connecticut Left Port In Guam For The First Time Since Hitting A Seamount: Report

 

The Navy says USS Connecticut would need to go back to its homeport in Washington State for more extensive repairs.

BY JOSEPH TREVITHICK NOVEMBER 18, 2021

 


2021年11月19日金曜日

水中に没したF-35Bをロシアに渡すな。米国と連携して英国が全力で東地中海での捜索回収作戦を展開中。

CROWN COPYRIGHT

 

 

軍のF-35Bが2021年11月17日空母HMSクイーンエリザベス発艦直後に東地中海に墜落したのをうけ、英国は米国に支援を要請し、機体回収をめざしている。機体に加え搭載する高性能部品等をロシアあるいは他の勢力の手に渡してはならず、同機の回収に高い優先順位がついている。

 

The Timesの国防担当ラリサ・ブラウンの記事では英国防省は米国に支援を要請し、スペインにある米サルベージ装備の利用を期待しているとある。

 

CROWN COPYRIGHT

HMSクイーンエリザベスに着艦する617飛行隊のF-35B fr May 2021, ahead of Exercise Strike Warrior.

 

匿名英海軍筋がThe TimeにF-35Bの墜落地点は正確に把握できていないと語っているが、墜落は発艦直後だった。ただし墜落地点は同艦から相当離れている可能性もある。

 

そこで期待が集まるのが米国の曳航式ソナー位置把握装備 Towed Pinger Locator 25(TPL-25)でF-35Bの発する緊急ビーコンをとらえ、正確な場所を把握できる。同装備は現在、事故地点に向かっている。

 

米海軍によれば重量が60ポンドのTPL-25は軍用機民生機を最大深度20千フィートまで把握できるという。艦艇が曳航し、音響信号を捉え、操作員に伝える。

 

U.S. NAVY

The Towed Pinger Locator (TPL-25).

 

 

同じ筋から墜落機は遠隔操作の水中機と膨張式バッグで浮上させるとの説明がある。その後機体は最寄りのRAF基地があるキプロスへ運ぶのだろう。

 

他方で英軍は付近海域で警戒を強めており、外国勢力が機体のありかをつきとめ回収することのないよう目を光らせている。HMSクイーンエリザベス他艦艇が本日もギリシアのクレタ島沖合を周回しているが、機体回収とは関係ない動きなのかもしれない。

 

さらに匿名のRAF筋はThe Timesに「ロシアがF-35の入手に走ることは想像に難くない。実行できるかは兵たん面の条件次第で、それは当方も同じだ」と語っている。

 

ただし、The Timesはここでも英海軍筋を引用し、ロシア海軍には「墜落機回収の装備が付近にはない」としており、水中での諜報活動が外大きな交問題に発展する可能性もあると指摘する。

 

海底から墜落機を回収した事例は前にもあるが、容易とはとても言えない。特に大深度では難易度が高い。今回のF-35Bは1マイル超の海底にあるといわれる。他方で報道によれば同機は発艦直後に墜落しており、低エナジー状態つまり、大きな損傷なく沈んだ可能性がある。

 

F-35では今回の英海軍事件に先立ち海中水没事例がある。今回のパイロットは英空軍あるいは英海軍所属のいずれかで機外に安全に脱出したが、航空自衛隊(JASDF)のF-35Aパイロットは2019年4月の日本沖合墜落時に死亡している。

 

その後日本機の位置は突き止められたが、パイロットの遺体回収にはさらに二カ月かかった。同機のフライトレコーダーは回収したものの損傷がひどく再生できなかった。機体の残骸は大部分が海底で分散した状態で見つかった。ただし、一部は墜落地点付近に浮かんでいるのが見つかった。機体尾部は捜索の結果、墜落からほどなくして見つかった。同機の小型部品でさえ、海外勢力の手に渡れば情報戦の大きな収穫となってしまう。英国のF-35Bでも同じだ。

 

JASDF機の捜索ではTPL-25に加え、ケーブル制御式の水中回収機21Undersea Recovery Vehicle 21(CURV-21)も投入され遠隔操作で海底を捜索した。これも深度20千フィートまで活動可能ででソナー、カメラを搭載し対象物の場所を突き止める。捕捉用アーム等を取り付け物体の回収も可能だ。米海軍はCURV-21を2017年に投入しアルゼンチン潜水艦ARAサンファンの沈没地点周辺を捜索した。


U.S. NAVY/LT ALEX CORNELL DU HOUX

アルゼンチン潜水艦ARAサンファンの事故を受け、米海軍は調査船 R/V AtlantiからCable-controlled Undersea Recovery Vehicle 21 (CURV-21) をコモドロ・リヴァダヴィア沖合に投入した。

 

日本の事例を念頭に、またロシア海軍がシリア付近に展開していることもあり、全力を挙げて機体の位置を突き止めるだけでなく機体を完全に浮上回収しようというのだろう。今回のF-35Bには安全保障上のリスクがある。機密素材や機微な製造技術が満載の同機から産業上のインテリジェンス情報が入手できる。

 

ロシア海軍には特殊任務用の潜水艦多数があり、深海での作業が可能で、有人無人の深海艇もある。最近もこうした艦がノルウェイ沖合の水中センサーネットワークと関連したケーブルに干渉した疑いがもたれている。ロシアには航空機含む水中物体を探知回収可能な特殊装備ヤンターもあり海洋調査装備と称している。

 

他方で英国防省はHMSクイーンエリザベスが初の作戦航海を無事終えたばかりで、もともと少ない第五世代機を喪失した今回の事故原因調査を続けている。■

 

 

Britain Wants America's Help In The Race To Retrieve Its Crashed F-35 Off The Seafloor

 

Time is of the essence as the United Kingdom seeks to prevent any parts of the stealth fighter from falling into the wrong hands.

BY THOMAS NEWDICK NOVEMBER 18, 2021


極秘RQ-180(制式名称ではない可能性あり)「ホワイトバット」の実機公開が近づく予兆。HALE無人ISR機にはB-21との関連もあるのか。実用化されれば革命的な変化をもたらす。

 Render of stealthy flying wing ISR aircraft

YOUTUBE SCREENCAP

 

ホワイトバットと呼ばれる機体が謎のRQ-180と関連するのか、今回米空軍がその名称と同機と思われる姿をビデオに登場させたことに注目だ。

米空軍の極秘装備「RQ-180」高高度長時間滞空(HALE)全翼機形状ステルス無人機をめぐる報道がここにきて急増している。同機らしき姿の目撃談三例に続き、カリフォーニアとネヴァダにまたがる飛行テスト空域で、さらにフィリピン上空と目撃例が出ており、同機の公式発表が近づく予感がある。

空軍公開のビデオは「今日に引き継がれる偉業、ISRと技術革新」の題で空軍の情報収集監視偵察(ISR)ミッションのこれまでの変貌を短く展望している。その終わり近くでグローバルホークが飛ぶシーンがあり、ナレーションでは「気球や複葉機の時代がホワイトバットへと変貌した」とある。この時点で短いカットでステルス全翼機のHALE無人機の姿が入る。その姿はAviation Weekが伝えたRQ-180の姿に酷似している。(ただし、RQ-180の呼称が本当に存在するかは不明であることに注意)

これはプレースホールダーとしてとりあえず登場した姿なのだろう。実際の形状を見せることはない。さらにこれまでの機体形状に符合しない。HALEが一機種だけというつもりはない。中国も同様の機体をCH-7「レインボー」の名称で開発を続けている。

とはいえ、「ホワイトバット」の名称がつくISR機材にはRQ-180以外は考えられない。繰り返し目撃が伝えられているステルス無人機と外形が一致しているが、ニックネームと運用部隊関連情報が直接つながる。

Aviation Week記事にはその後追加ソースから同機には非公式ながら「グレイトホワイトバット」や「シカラ」の名称がついているとある。シカラとは1995年公開のジム・キャリー主演映画「ジム・キャリーのエースにおまかせ!Ace Ventura 2に登場した架空の白コウモリの名前だ。

その後、Aviation Weekはさらに空軍が第74偵察飛行隊をビールAFB(カリフォーニア)に発足させ、RQ-180運用を遠隔で実施していると伝えた。同部隊の記章には大型白色コウモリの姿あり、伝えられるRQ-180の愛称に符合する。

AVIATIONGEAR.COM

第74偵察飛行隊の記章には白色コウモリの姿が描かれている。ラテン語による標語に注意。「アクセス可能」の意味で深度侵入型ISR機にぴったりではないか。

そうなると、ここから何がわかるのか。公式ビデオに特別に文言、画像が挿入されて板のには驚かされる。ISR機材とともに戦場の通信、ネットワーク化に革命をもたらす同機が現存するとの確認が近づいているのだろう。

USAFがステルスHALE無人機について堂々と課tるのがいつになるか読めないが、同システムがB-21レイダーおよび敵地侵攻能力の開発に関連しているのは明らかだ。B-21の公式発表も近づく中で、同時に同機の存在についても公表されるのではないか。その場合はいつになるかは別として、いったん同機の存在が公表されれば、関連する支援インフラが完全稼働状態になるはずだ。同機が実際の作戦に投入されるのはまだ数年先かもしれない。グローバルホークの場合も同じ経緯があった。なお、グローバルホークは部分的にせよ退役が近づいている。

とはいえ、空軍は大きな断片情報を積み上げており、「ホワイトバット」の存在が次第に明らかになりつつある。背景に意図がある。同機の作戦内容が広がれば、存在を隠し通すのが困難となり、なんらかの形で情報公開が必要となるからだ。■

Secret RQ-180 "White Bat" Spy Drone Alluded To In New Air Force Video

BY TYLER ROGOWAY NOVEMBER 18, 2021


B-52は百年爆撃機になる。各種改修を受け、新型装備を導入し、現在のB-52は製造直後と別の機体になった。

 

 

 

B-52ストラトフォートレスは永遠に飛行し続けるのだろうか。決して非現実的と言い切れなくなってきた。時の試練を経た冷戦時の爆撃機は100年供用を実現すべく、今後も改修を受けていく。

 

同機にはかつてはじゅうたん爆撃のイメージがついてまわっていたが、今やサイバー回復力に富んだ電子戦装備を施し、極超音速ミサイルの発射に対応し、デジタルネットワーク機能を備えた爆撃機として、新世代の空中投下爆弾各種や精密誘導巡航ミサイルを運用する機体に変身している。その変貌ぶりは大きく、B-52は百年間飛行し続けることになる。 

 

各種改修作業の背景には数十年前の製造の機体構造が頑丈で、強く、しかも今後も供用可能なことがある。一部で補強や保全が必須となったが、米空軍の兵装開発部門は今後も時の経過に耐えうるとしている。

 

機体構造以外では現在のB-52は大幅改修を受けたことで製造時と別の機体になっているといってよい。最先端新技術各種が導入され、現代の戦闘環境に適合できるようになった。改修は長期にわたり実施され、内容は多岐にわたる。

 

空軍は数年前から同機の通信機能の改修に乗り出し、リアルタイムで飛行中に情報収集の実現を狙っている。この装備は戦闘ネットワーク通信技術 Combat Network Communications Technology (CONECT) と呼ばれ、B-52のデジタル機能の中心として、標的情報の更新、地形、敵の動きなど重要なミッションデータの活用を可能とする。2016年7月14日付の空軍報道機関向け資料ではCONECTにより機内の搭乗員がLANを利用するのと同じ形で作戦状況を共有可能になるとあった。

 

機内ディスプレイは相互につながり同じチャンネルを注視できるとの説明もあった。従来はあらかじめプログラムした標的情報、ミッション情報に依存していたが、CONECTにより乗員はリアルタイムで標的侵入経路の変更情報を利用し、脅威環境の変更に対応可能となる。

 

さらにB-52エンジン換装が行われる。これで性能が大きく向上する。これ以外には機内兵装庫の改修を複数年度かけて実施することが大きい。これにより兵装搭載量が増え、レーザー誘導共用直接攻撃弾(JDAM)、共用空対地スタンドオフミサイル(JASSM)、さらにJASSM射程延長型ミサイルの運用が可能となる。こうした兵装類の利用拡大には小型空中発射式おとり飛行体やそのジャマー版も含む。

 

こうしたパラダイムを一変させる改修ではさらに極超音速兵器の運用もB-52で想定されている。これにより同機からマッハ5での高高度高速攻撃が実現する。その準備として空軍はAGM-183空中発射式迅速反応兵器を600カイリ地点で発射するシミュレーションを実施している。■

 

 

No Joke: The B-52 Is As Modern a Bomber as they Come

November 17, 2021  Topic: B-52 Bomber  Region: Americas  Blog Brand: The Reboot  Tags: B-52US Air ForceTechnologyBombersMilitaryAir-to-Surface Missile

by Kris Osborn

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University. 

This article is being reprinted for reader interest.

Image: Flickr



2021年11月18日木曜日

オットーエイビエーションのセレラ500Lが空に革命を呼ぶ? 試作機は良好な性能を示したとのこと。2025年量産をめざし、低費用低排出の機体となる。

 


  • ターミナル1、2共通記事です。これだけの画期的な性能がピストンエンジン一基で実現するのなら本当に革命的です。米国民のエアライン、空港への不満ぶりは相当のようで、手が届く料金なら各地へ直行するエアタクシーになるのではないでしょうか。軍用となると連絡機、それとも特殊作戦の移動用でしょうか。

Otto Aviation's prototype Celera 500L aircraft.OTTO AVIATION

 

 

ットーエイビエーションOtto Aviationはセレラ500Lのフライトテストで野心的な目標達成のめどがついたとする。

オットーエイビエーションによればセレラ500Lのフライトテスト第一段階が完了し、革命的といえるほどの高性能を発揮したという。同機は昨年発表されていた。試作機は計51時間のフライトを実施し、時速250マイル、高度15千フィートを記録したという。

同機は涙滴型形状、推進式プロペラ構造が特徴的で、2017年にカリフォーニア州ヴィクターヴィル空港で同機の姿が流出して以来注目されてきた。

「テストフライト第一段階で得たデータから目指す性能達成に向け順調に向かっていることがわかる」とオットーエイビエーションCEOウィリアム・オットーJrが声明文を発表した。「2025年の量産機製造目標に近づいており、これ以上の興奮はない。次のフライト段階では飛行高度、速度を上げていく」

オットーはセレラ500Lの設計の特徴である涙滴型の「層流」を最適化した形状、長い主翼、高効率複数燃料使用エンジンはすべて革命的な低コスト航空移動の実現にむけたものとする。同機ウェブサイトでは「エアタクシーモデル」を提唱している。

OTTO AVIATION CAPTURE

 

「フライトテストでは層流の状況をチェイス機の赤外線カメラで記録したが、機体表面の空気の流れの制御機能を確認できた。主翼と機体上の層流はしっかりしており、追加テストデータを得られたので、生産仕様機の実現に役立てる」

なお同機にはレイフリンエアクラフトエンジンディベロップメント(RED)のA03V12ピストンエンジンが搭載される。

「フライトでは高度15千フィートで250mph超の速力に達し、めざすのは50千フィート、460mphだ」と同社発表にある。これまで同社は最低でも4,500マイルの航続距離、航空燃料ガロンあたり18から25マイル、飛行時間コスト目標を328ドルと現在飛行中のターボプロップ機やビジネスジェットの数分の一の水準にしたいとしてきた。

OTTO AVIATION

セレラ500Lと同サイズのビジネスジェットを比較している

 

「これまでの航空機の世界は0.5%の改良をあちこちに加えてきたようなものだ」とオットーエイビエーションの最高技術責任者デイヴィッド・ボーグが今年はじめ Air & Space Magazine に語っていた。ボーグはボーイングで737-700の実現に尽力した人物だ。「だがこの機体では400%の改良をねらう。まさしく驚異的な結果となる」

効率化を狙った革命的な性能ながら利用者にやさしい機体にするのがねらいだ。「フライトテスト結果を見るとセレラ500Lは同サイズの機体より排出量を80%減らせることが分かった」(同社による2020年12月報道資料)

OTTO AVIATION

 

セレラ500Lは試作機だが、オットーエイビエーションでは大型のセレラ1000Lの企画を進めており、貨物機並びに軍用機への発展を話題にしている。同社ウェブサイトでは無人型やハイブリッド電動機の構想も紹介している。

同社は今もセレラ500Lの量産型を実現することを最初に目指しており、小型ターボプロップ旅客機やビジネスジェットの代替需要を狙う。

OTTO AVIATION

セレラ500L量産型の想像図.

OTTO AVIATION

量産型セレラ500Lの客室内はビジネスジェット並みになる。

「キャビン高は6'2"(188センチ) あり、機内をそのまま歩ける。ラバトリーもつける。中型ビジネスジェットと全く同じレベルになる」とオットーはCNNで語っている。機体外観は「ガルフストリームに慣れた企業幹部の目には魅力的に映らないかもしれないが、エアラインでの移動で空港や保安検査で列を作り延々と待たされるのに閉口している人は多い」

オットーエイビエーションがここまで野心的な目標を達成できるか注目される。同社の目標の実現は不可能ではないもの難易度が高いと見る専門家もいる。

実現できれば、セレラ500Lさらにその後続く後継モデル各機は一夜にして空の利用を一変させる存在になる。■

 

BY JOSEPH TREVITHICK NOVEMBER 17, 2021