2021年12月9日木曜日

防衛技術開発:日米二国間さらにクアッド時代の日本の役割を展望。軍民両用技術で日本は非通常型防衛装備品の開発で大きな力を発揮しそう。

  

Concept art for the Japanese F-X fighter

Japan MoD concept

 

 

国にとって日本はすでに親密な軍事同盟国であるが、両国関係はここにきて一層堅固になっている。両国が防衛関連の研究開発の協力案件を増やしているためだ。

 

ここにオーストラリア、インドが加わりクアッドとしても技術提携が強まる方向に向かっている。

 

米国は長きにわたり日本への防衛装備輸出でトップの座を守り、2016年から2020年でみると97%の圧倒的シェアを達成している。

 

また両国部隊は合同演習を頻繁に実施しており、日本には米軍50千名超が駐留している。

 

「日米の防衛関係が日本防衛で最も重要な要素だと新アメリカ安全保障センター主任研究員ジェイコブ・ストークスJacob Stokesは評している。

 

中国の軍事力近代化と域内で示す強硬態度の高まりが日本の防衛力整備の背景にあるというのだ。

 

日本が導入を目指す米製装備品の筆頭にF-35のA型B型、V-22オスプレイ、イージス艦載システム、PAC-3迎撃ミサイル、E-2D高性能ホークアイ指揮統制機、RQ-4グローバルホーク、SM-6ミサイル等がある。

 

防衛装備庁も米製装備品の大量導入に加え、高度技術に関し米国依存を認める。

 

ただし、中国が技術面で格差を埋めようと軍用技術の研究開発に注力している現状は要注意だ。

 

技術面の優位性を失っては大変なので、日米両国は今以上にR&Dへの出費を増やす必要がある。米国は同盟国協力国との協力が不可欠と見ている。

 

2022年度の防衛予算要求では28億ドルを研究開発に充て、前年比50%増とする。そのうち相当部分を「ゲームチェンジャー」となる技術、すなわち、宇宙、サイバー、電子戦、人工知能、指向性エナジーに充てる。

 

さらに防衛装備庁は外部人材を取り入れ技術開発を目指す。

 

日米の防衛装備開発ではSM-3ブロックIIA迎撃ミサイルでレイセオン、三菱重工業の共同生産等があるが、日本政府はこうした成功事例をもとにペンタゴンの研究開発部門との共同事業を特に先端技術分野でさらに推進したいとする。

 

ペンタゴンも中国軍事力をいわゆる「忍び寄る脅威」ととらえ、日本との共同事業に一層関心を示している。

 

研究及び技術推進担当国防次官補ハイディ・シューHeidi Shyuはこれまでを上回る国際協力が目標の一つとする。「この方向に今向かっている。研究での提携で技術を迅速に発展させる。同盟国に同等の実力、製品があれば共同運用力が向上する。これからの戦闘は米国単独ではなく、同盟国協力国と一緒に戦う。このため新型装備の開発では初期段階から各国と共同作業することに意味がある」と述べている。シューはNational Defenseに対し、日本との協議を開始していると述べ、「日本側の関心領域は広範囲」とし、極超音速技術、量子技術の例を挙げた。

 

今後のフォローアップ会議が予定されており、科学技術面の共同開発の可能性を模索する。

 

米航空宇宙大手ロッキード・マーティンは日本の目指す次世代戦闘機F-Xへの技術支援を展開しており、ノースロップ・グラマンも関与している。昨年末に三菱重工業が主契約企業に選定され、防衛省はその後国際協力なかんずく米国企業との共同開発を旨とする構想を発表した。

 

防衛省はシステムレベルで英国との共同開発にも言及し、エンジン、エイビオニクスでの費用逓減とリスク回避を目指すとも発表した。

 

三菱重工のパートナーにロッキード・マーティンが選定されたことでF-XとF-35の共同運用力が高まる期待が生まれたと国際戦略研究所で航空宇宙分野の主任研究員ダグラス・バリーDouglas Barrieが見ている。「日米の安全保障、防衛産業のつながりがさらに強化される。両国は中国の軍事力増強に対応していく」とし、「ただし、日本が米国以外と二次レベルの防衛技術開発協力国を模索する可能性はある」とした。

 

戦略国際研究所で日本関連部門次長のニコラス・スゼチェニNicholas Szechenyi,は日米両国には限られた財源をどの分野に集中投入するかという課題とともに新技術を迅速に実用化する課題があると指摘している。「日米同盟が重要な時期になっている。両国とも中国の脅威に対応すべく防衛力整備の必要を痛感しているからだ。両国政府で広範囲の防衛協力の課題を解決するしくみ、いわゆるツープラスツー会合で同盟協力の次の段階を実現していく」と、日米の外交防衛部門閣僚の協議に言及した。

 

両国の協力関係ではミサイル防衛の実績が大きいと指摘し、SM-3ブロックIIAが好例だという。だが日本国内には今後の進め方でまだコンセンサスができていないという。今後の協力分野では状況認識機能があるのではないかというのが本人の意見だ。

 

「同盟関係の活力を維持し抑止力を今後も機能させるには共通の作戦構想で域内の事態に対応することがカギとなる。このため技術協力が必要だが、情報共有、情報活動共有も必要だ。これが同盟関係で優先事項になる」

 

つまり、今後の両国ではこうした分野が重要視されるという意見だ。

 

一方で、ここ数年の日本政府の方針転換で日本は従来より攻撃的性格の強い「スタンドオフ」機能の装備品を導入する可能性が増えてきた。ペンタゴンは米防衛産業とともに長距離性能を有する新型装備品の開発を進めている。

 

日本が打撃機能すなわちミサイルを導入することでは広く議論が政界で活発になっており、日本が国産で装備品を開発するのか、日米同盟の傘の下で共同作戦や合同運用構想に資する形で開発するのかの議論になる」とスゼチェニは見ている。

 

軍事技術に関する限り、日本指導層は国産技術と米国支援への期待のバランスを取る姿勢が見られるとも指摘。

 

「日本が国産技術を開発する余地は大きいが、優先順位をどこに置くかの議論は始まったばかり」とし、「最終的には既存の米国技術を迅速に入手することとともに日本独自に開発し防衛力を整備する課題の二つを組み合わせるのではないか。ただこの議論は極めて流動的であり、結論に達するまで時間がかかりそうだ」

 

前出のストークスも日米防衛協力で最大の阻害要因は政治、財政であり、既成の障壁はないと断言する。米国は概して日本への高性能防衛装備品の販売に前向きだというのだ。

 

「日本国内の憲法論議が政治面で大きな障壁となっており、個別具体的にはミッションと能力の問題がある」「財政上の障害が日本の比較的小規模な防衛予算の拡大を難しくしているが、流れは変わりつつあると思う。現在の日本の防衛予算は500億ドルだが、ペンタゴンは2021年に7000億ドル予算を得ている」

 

日本は米国以外にもオーストラリア、インドとの関係強化に乗り出している。米国と合わせ四か国安全保障対話すなわちクアッドの構成国だ。

 

限定的ながらオーストラリア、インド両国と日本は共同研究を行っており、今後の移転対象となる「候補分野」を模索している。

 

重要かつこれから登場する新技術がクアッド協力の柱となり、純然たる軍事技術というより民生技術に大きな焦点が当てられているとストークスは評し、クアッドは軍事同盟ではないと指摘した。

 

スゼチェニはクアッドは今後防衛産業虚力にっ発展する可能性があるが、実現してもかなり先の将来の話だろうとする。他方で米国政府は二国間安全保障条約を日豪両国と締結済みで、さらに三国間軍事ネットワークの形成で「機が熟している」という。

 「三国間の戦略対話が長く続いており、防衛協力分野以外にアジア太平洋での問題解決方法を模索しているので潜在的な可能性が高い」とストークスは見ている。

 

軍民両用技術で日本に強み

 

 

日本は防衛力の近代化に向かい、防衛装備品の輸出も目指している。同国の民生品や軍民両用技術での強みが大きな効果を上げると関係者、アナリスト双方が見ている。

 

一方で日本はすでに強力な軍事力を有している。

 

「自衛隊の戦力はインド太平洋でずば抜けた規模になっている」と米中を除き日本の実力を評価するのがストークスだ。「日本は島しょ地形を生かし、強力な対潜戦力を整備し、海洋ドメインでの探知能力を磨き、海洋安全保障を広く整備してきた」

 

自衛隊部隊は米軍他の有志国との共同演習に頻繁に参加しており、共同運用を高いレベルで行う態勢を維持している。中国特に人民解放軍の戦力整備を意識し、防衛省は戦力強化をねらいつつも財源の制約がのしかかる。

 

そこで民生技術の進んだ成果を取り入れ対というのが防衛装備庁の考えだ。政府内外から広く人材を集め、技術トレンドに詳しく防衛装備への応用を考える。

 

Jane'sでインド太平洋の研究分析にあたるジョン・グラベットJon Gravettは日本が通常型防衛装備品の輸出を目指していることに着目している。

 

ただし、「今後10年たてば中心は非通常型の装備品、技術、軍民両用技術、人工知能、サイバー、データ解析技術に移行していくと見ている」とし、「こうした技術は民生分野で生まれつつあり、日本はこれから域内各国に対して強い立場になる」とした。

 

日本の防衛部門が享受できる民生技術には大規模予算出費は不要となるとRAND Corp.も指摘している。

 

「こうした分野で必要な投資はヒトであり、設計開発にあたる人材でAI、ビッグデータ、自律運用、サイバー、EWの開発にあたる。さらに民間部門が主要技術分野に大きく関心を示し投資しているのも日本の強みで、開発・実用化が進む」

 

日本は長く続いた武器輸出制限を緩和したが、国際兵器供給国の座を確保したいとの熱望の前に障害が立ちふさがった。日本に防衛装備専門企業がそもそも少ないこともその一つだと指摘する専門家も多い。

 

スゼチェニは「武器輸出は徐々に進んでいるが日本が今後装備品の主要輸出国になるのか予測は難しい」とみている。ただし、防衛装備品の共同開発国なら軍民両用技術を活用する潜在力を秘めていると指摘した。

 

ペンタゴンも巨額予算を民生分野技術に投入し次世代システムの実現を狙う点で防衛省と同じ姿勢だ。

 

ストークスは日本が技術大国であり各種分野で世界クラスだとし、衛星技術やロボット工学の例を挙げる。

 

「軍民双方で重要な新技術が米日同盟のこれからで大きな柱になる」とし、「両国が協力すれば相乗効果を上げる」と述べた。

 

ペンタゴンには海外協力テスト事業があり、外国製技術で米軍の戦力に「相当以上の効果があるか」試している。

 

このチームが日本を初めて訪問したのは日本政府が憲法解釈を変更し、他国との共同開発に前向きになったためだ。「以後関係が続いている」と国防削総省は認めている。また同省の国際技術センターは東京にもあり、米軍関係者が日本側と新技術の探求を続けている。

 

バイデン政権は中国との長期にわたる競合で日本を最重要パートナーとみており、笹川財団の渡辺恒雄主任研究員は今年初めに「日米サミットの戦略的意義、対中経済安全保障について」とのレポートを著している。その中で自衛隊と米軍の共同作戦運用が高いレベルになっているとし、「シナジー効果が生まれる」と指摘した。日米両国は民主体制の価値観も共有しているとも指摘している。

 

「日本を米国が長期にわたる同盟国とみなしていることに疑いなく日本は中国との対決の時代で最前線国になる」■

 

US, Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

 

GLOBAL DEFENSE MARKET

SPECIAL REPORT: U.S., Japan Set to Enhance Cooperation on Military R&D

12/8/2021

By Jon Harper

 

Topics: Global Defense Market


2021年12月8日水曜日

真珠湾攻撃から80年。知られざるK作戦は世界初の長距離爆撃に成功したものの、日本海軍の運命を決する結果を生んでしまった。

MAX SMITH/WIKIMEDIA COMMONS

保存展示されている二式大艇(H8K)の威容 

 

本が80年前真珠湾を攻撃し、米国は第二次大戦に参戦を余儀なくされた。以後連綿としてその日の攻撃は米国民の琴線に触れる記憶となっている。

 

1941年12月7日の奇襲で米太平洋艦隊の戦艦部隊は大損害を受けたが、日本帝国はこれで十分とは見ていなかった。知名度は低いが日本は三カ月未満で次の襲撃を敢行し、この際は大型飛行艇川西H8Kを投入した。当時最新鋭の機材を投入し、その時点で最長の爆撃行に踏み切ったのだ。

 

12月7日攻撃直後の効果には大きなものがあり、日本帝国海軍(IJN)は太平洋艦隊の戦艦8隻すべてに打撃を与え、二隻を破壊、残る各艦も当面行動不能にした。物資面の損害以外に米国民2,400名超が殺害された。

 

米国を大戦に巻き込んだ日本はその後もアジアの制覇に乗り出し、米太平洋艦隊は弱体化し、日本の動きを阻止できない状態だった。

 

ただし、真珠湾の海軍基地の損傷度合が限定的なものに留まっていたと急速に判明した。合計21隻の艦艇に何らかの損傷を与えたものの、大部分は修復可能だった。また艦船攻撃に集中するあまり、艦艇整備施設はほぼ無傷で残った。基地内の燃料貯蔵分もそのままで、太平洋艦隊の空母部隊は当時湾内にいなかった。.

 

そこで1942年3月、IJNは二回目の真珠湾奇襲攻撃を実施する準備を整え、K作戦と呼称した。なお、12月7日のミッションはZ作戦とされた。

 

今回の作戦は進行中の基地機能再開と整備作業を止めることにあり、IJNに対抗する米太平洋艦隊にさらなる打撃を与えることにあった。同時に真珠湾の情報収集もめざした。

 

Z作戦の先鋒は空母部隊と大小の潜水艦部隊だった。K作戦はずっと小ぶりで、爆弾搭載の飛行艇を投入した。川西H8K連合軍名称エミリーが選ばれた。

 

航空史家レネ・フランシロンが「第二次大戦中の飛行艇で最も傑出した機体」としたH8Kは最新鋭の機体だった。試作型の初飛行が1941年1月にあったばかりで、同年後半に量産化が決まった。真珠湾第二次攻撃には最適の機材と判断されたのは長大な航続距離のためで、機内に最大4,400ポンドのペイロードがあることも理由とされた。同機を使い、カリフォーニア空襲も企画されたが実施されなかった。

 

真珠湾第二次攻撃では長距離性能が前提で、往復4,800マイルの行程となった。これだけの長距離爆撃を可能とした機体はそれ以前は存在しなかった。成功すれば同様の攻撃で米海軍の戦闘力を削ぐはずだった。

 

H8Kは機体サイズにもかかわらず、敵戦闘機の攻撃を受けても生存する性能をその後発揮した。驚くほどの操縦性があり、かつ防御兵装は強力で、20mm機関砲5門、0.303口径機関銃4門を配置した。

 

当初は8機をK作戦に動員する予定だったが、結局投入できたのは2機にとどまった。横浜海軍航空隊の機体でマーシャル群島ウォッジェ環礁を1942年3月4日離水した。一号機は橋爪寿夫大尉が指揮をとり、二号機には笹生庄助少尉が機長となった。各機には550ポンド爆弾4発が搭載され、真珠湾の艦艇ドック上空から投下を目指した。特筆すべきは同型機が実戦に投入されたのはこれが初めてだった。

 

両機は1,900マイル飛行しフレンチフリゲート礁に着水した。ホノルル北西560マイル地点だ。同地は北西ハワイ群島に属し米国領だったが、遠隔地で無人のためIJNが停泊地に利用していた。ここで飛行艇は燃料補給のため待機していた潜水艦二隻に合流した。日没後に飛行艇部隊は離水しオアフをめざした。

 

実際に12月7日に先立ち、米暗号解読部門は日本軍がフレンチフリゲート礁を利用した燃料補給活動を計画していることをつかんでいた。だが真珠湾攻撃前に入手したその他情報内容と同様にこれも無視された。

 

WIKIMEDIA COMMONS

全行程4,800マイルのマーシャル群島からハワイへの航路

 

日本軍も利用可能な情報の不確かさに直面していた。米側の天候情報は解読でき、真珠湾上空の気候状況は把握できた。だが米側が暗号を変更したことで情報は入手できなくなり、H8K部隊は悪天候の中を飛行せざるを得なくなった。

 

米側に情報面の落ち度はあったものの、ハワイから200マイル地点で飛行艇部隊は米レーダーに捕捉され、P-40戦闘機部隊がスクランブル出撃した。日本機にレーダーは搭載されておらず、敵機の接近を知ることはなかったが、厚い雲と暗闇に紛れ、飛行艇部隊はオアフ上空15千フィートに3月4日早朝に到達した。

 

夜間と悪天候がIJN機を助けたが、同時に搭乗員が投下目標を視認するのに苦労した。月光に助けられたが、ハワイは灯火管制下にあり、あてずっぽうに頼るしかなかった。真珠湾付近にIJN潜水艦イ23を配備し飛行艇を誘導するはずだったが、同艦は消息不明となっており、当日も利用できるか不明だった。

 

飛行艇搭乗員は爆弾を投下したものの、このような状況では運に頼るしかなかった。橋詰機の爆弾はホノルル郊外の山麓に落下し、高校校舎の窓が飛散したが人身被害は発生しなかった。

 

笹尾機の爆弾は水面を叩いたようで、同機は攻撃開始後に一号機と連絡がとれなくなった。

 

爆弾投下後の二機は南西に進路を取りマーシャル群島へ向かった。笹尾機はウォッジェ環礁に帰還したが橋爪機はフレンチフリゲート礁から離水時に損傷を受け、同じくマーシャル群島のジャルート環礁に向かった。

 

空襲は長距離爆撃ミッションとしては成功したといえ、両機は生還できた。このため、日本側は宣伝工作に利用できると考え、真珠湾に大打撃を加え、米側の人的損失も甚大と発表した。

 

だが実際の軍事成果はとるにたらないもので、ミッションは想定したのと反対の効果を生んでしまったのである。

 

次の攻撃が3月10日実行されたが悲惨な結果に終わった。橋爪機はミッドウェイ礁付近で海兵隊戦闘飛行隊VMF-211のブリュースターF2A-2バッファロー戦闘機により撃墜されてしまった。

 

米太平洋艦隊の再建を阻止する狙いと裏腹に、一回目の空襲で米側はハワイの警戒態勢をさらに強化してしまった。IJN強襲部隊は迎撃されなかったが、レーダー解析結果から各機がフレンチフリゲート礁で燃料補給を受けたことが判明した。米海軍駆逐艦が付近を航行中で日本軍の動きを監視するよう指令を受けた。

 

その一か月後に米軍も長距離爆撃ミッションを実施し、B-25爆撃機の16機がUSSホーネットから日本本土を空襲した。1942年4月18日の「ドゥーリトル空襲」の真価は米国が日本心臓部を攻撃したことで日本側に衝撃を与えたことにある。

 

米側が攻勢に転じたことで日本は大きな賭けにでざるを得なくなり、ハワイ群島を占領し、米海軍空母部隊を撃滅し、米軍の侵攻を阻止する決意に出た。

 

ハワイ方面の次の手がミッドウェイ島で、米海軍とIJNは1942年6月に雌雄を決する海戦を展開した。これが太平洋での戦争の転回点となったと一般に見られている。

 

話には皮肉な展開があり、太平洋で戦ったH8Kについてワイアット・オルソンはStars and Stripes記事で、ミッドウェイ開戦に先立ち、同飛行艇が米空母の偵察任務についたが、ハワイ空襲後のフレンチフリゲート礁は米海軍の監視対象となり、飛行艇の利用ができなくなったため、IJNは貴重な情報が入手できなくなったと記した。実施可能ならば、ミッドウェイで待ち伏せる米空母の位置が判明していたはずで、結局米海軍は日本空母4隻全部を沈めることができた。

SAN DIEGO AIR AND SPACE MUSEUM ARCHIVE

陸上に上がったH8K

 

こうして真珠湾第二次攻撃はIJN敗北につながる展開を開始する結果を生み日本帝国の野望は消え去ったが、H8Kは終戦まで投入された。

 

米PBYカタリナ飛行艇や英ショートサンダーランド飛行艇のように生産数は多くなかったが、H8Kは優秀な性能を示した。合計167機が生産されたが、兵員輸送など無駄に性能を使ったのは、戦況が日本に不利になったためだ。

 

今日、軍用飛行艇の姿はアジア太平洋で限定的に見ら得る。新明和工業が現在もUS-2水陸両用機を海上自衛隊向けに製造しているが、同社は川西飛行機のH8Kの流れを受け継ぐ企業だ。

 

米軍ではここにきて水陸両用機への関心が高まっており、80年前には想像できない展開だ。米空軍特殊作戦軍団の高官が岩国基地でUS-2を視察したのは、MC-130輸送機の水陸両用版の実現に同軍団が注力しているためでもある。

 

U.S. AIR FORCE/1ST LT RACHAEL PARKS

海上自衛隊が米空軍特殊作戦軍団副司令、海兵隊岩国基地司令とUS-2の前に並んだ。 November 9, 2021.

 

IJNによる真珠湾への長距離爆撃ミッションを覚える向きは少ないが、広大な太平洋では飛行艇の運用はまだ終わっていない。■

 

Flying Boats Flew Japan's Little-Known Follow-On Raid On Pearl Harbor

 

The second attempted attack on Pearl Harbor indirectly changed the course of the war in the Pacific.

BY THOMAS NEWDICK DECEMBER 7, 2021

 

Contact the author: thomas@thedrive.com


 

Su-57はF-35の性能より劣る。ステルス性能、無人機との共同運用、電子戦装備、極超音速兵器運用のいずれもロシアの遅れは明らか。だが本当にF-35がそこまで優秀なのだろうか。

 Su-57が見掛け倒しなのか、F-35が拡張性があるから技術の進展に対応できるのか。真実はまだわかりませんが、少なくともロシア空軍もSu-57の意味のある導入がままならないのは事実のようですね。


Russian Su-57s Can't Compete with U.S. F-35s. Here's Why

 

 

シアのSu-57が米F-35やF-22に対抗できないと考えてよい理由がある。また今後登場する第六世代機に対しても米機は優越性があると考えてよい。

 

 

なぜか。ステルス性能、極超音速兵器、有人無人機の同時運用を考えればよい。

 

Su-57の実態がいまだに不明なため、少なくともロシアの報道記事での主張は忘れてよい。

 

ただし、ロシア政府のお墨付きを付けた新聞記事が最近出ており、ロシアも有人機無人機同時運用の「忠実なるウィングマン」機能でF-35に遅れているのは認めているようだ。

 

例としてペンタゴン、空軍他が「忠実なるウィングマン」構想の推進に注力しており、F-35のコックピットから無人機の飛行進路を制御したり、センサーを操作しデータ解析が可能となる。

 

つまり作戦上の効果と戦術戦力が著しく向上することになり、無人機からの映像やデータを有人機上で活用できるようになる。

 

この技術の実証を空軍はめざしており、そのひとつ「ヴァルキリー」無人機がF-35と並行して飛行しているが、空軍技術陣は10年前からこの技術開発にあたっている。

 

2014年に、空軍の科学主任だったグレゴリー・ザカライス博士と話したことがある。博士の専門は自律運航でF-35で無人機との同時運用が現実になると述べており、正しく予見していたことになる。

 

この機能で前例のない作戦上の優位性が生まれる。たとえばF-35が無人機を敵防空体制の空域に前進させ、有人機の指令でISR活動や兵装を発射する。「忠実なるウィングマン」構想の最大の売りはセンサーからシューターへの時間差を短くすることにある。

 

Su-57の実力は


 

イズベスチアの昨年の報道によれば、ロシアはS-70オホートニク-B無人機とSu-57のネットワーク化をめざし、米国の有人機無人機同時運用に追いつこうとしているようだ。

 

詳細は不明だが、米空軍がすでに直接のデータリンクを無人機とF-35で実現していることを考えると、ロシアは後れを取っている。

 

二番目に、ステルス機能を実現する要素に機内エンジンの排熱処理やレーダー吸収塗料があるが、Su-57はF-35の水準に追い付いていないようだ。

 

Su-57にも機内兵装庫があり、F-22に似た双発構造だが、曲面処理や機体表面のスムーズさがF-35より見劣りがする。Su-57はたしかにステルス性能を有しており、主翼機体の一体化等の特徴は見られる。

 

Su-57はマッハ2の飛行性能があるとされ、米F-22のマッハ2.25より若干劣るようだ。今後登場する第六世代機の速力も考慮する必要がある。

 

ステルス性能以外ではF-35のミッションシステム各種の優秀性が目立ち、長距離高解像度のセンサーと標的捕捉機能、コンピュータ処理能力、兵装の有効射程、誘導装置が高性だ。

 

敵をアウトレンジ攻撃できること、「センサー融合」で多様なデータを瞬時に統合し解析する能力を考えると、F-35の実戦能力のほうが優れている。

 

Su-57がAI機能を活用したコンピュータシステムで運用されるのか、F-35に匹敵する性能があるのか、これまでの常識を破るAIM-9Xなみの誘導兵器を運用できるのか不明な点は多い。ただし、F-35でもEW(電子戦)装備の実態は不明で、極めて高性能といわれるだけだ。

 

敵の兵器誘導システムを探知し妨害する機能に大きな意味がある。また敵の通信内容の傍受も可能だ。米産業界はペンタゴン、空軍と共同で敵の対抗装置を妨害する手段の開発に努めてきた。つまり、敵の妨害工作に影響を受けない兵器誘導手段を狙う。敵が無線交信や赤外線標的捕捉を妨害しようとすれば、EW対抗措置や各種通信の強化策で対抗することになる。周波数の頻繁な変更もそのひとつだ。

 

ではSu-57が発射する飛翔コースを変更可能な兵器はどこまで有効なのだろうか。兵器誘導装置は妨害に耐えられるのか。ロシアはウクライナでの軍事行動中に高度のEW戦術を示したが、Su-57の実際の性能が高いとは限らない。

 

兵装面ではロシア紙はSu-57で極超音速空対地ミサイルの「試作型」を運用可能と伝えている。

 

匿名筋の話として昨年に国営RIAノーヴォスチ新聞に出た記事ではSu-57で試射したミサイルは「完全に機能する実寸大のモックアップ」だったとあるが、発射しなかった。記事では「ダミーのミサイルには推進手段がなく、燃料、弾頭もつけていなかったがそれ以外は実際の兵器と重量寸法が同じだった」とある。

 

ロシア紙ではテスト版のミサイルには「シーカーヘッドと電子回路がついていた」とある。また記事では新型兵器の詳細を伝えており、「小型の空対地兵器で敵の防空ミサイル防衛体制を撃破し、巡航ミサイルや弾道ミサイル発射装置を攻撃するのが目的」とある。

 

ARRW 極超音速兵器


こうした装備が実際にどこまで有効に使用されるのかが不明だ。米空軍は空中発射式迅速対応兵器ARRW極超音速兵器の開発を急速に進めている。

 

ARRWは戦闘機から発射可能な極超音速攻撃兵器でマッハ20に達するといわれる。ロシアは極超音速兵器で優越性があると主張するが、極超音速兵器では第五世代機からの運用に成功した側が優越性を享受できる。ここでも米国が先を走っており、F-35での運用が迫っている。

 

この点を説明するとF-35はもともとパラダイムを一変させるような新型兵器であってもソフトウェアのアップグレードで対応するよう設計されているかrだ。つまるところ、詳細は不明だが、S-57がF-35の真のライバルになる可能性は限りなく低いと言わざるを得ない。■

 

Russian Su-57s Can't Compete with U.S. F-35s. Here's Why

Reasons for F-35 dominance include hypersonics and manned-unmanned teaming

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN

 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University. 


2021年12月7日火曜日

2022年を占う。①NATO事務局長イエンス・ストルテンベルグ

 2022年を展望する安全保障各界のリーダーの声をお伝えします。第一回はストルステンブルグNATO事務局長直筆によるエッセイです。

 

 

気流の時代になってきた。世界は競合の度を高め、不安定かつ予測不可能になってきた。ロシアは強硬な軍事ハイブリッド行動を続け、中国は対外的には強硬な姿勢を、国内で圧制の度を強めている。国際民主体制に対し、両国は独裁体制の最先頭を走っている。同時にサイバー攻撃の頻度が高まっており、巧妙に効果を上げている。テロの脅威は消えていない。核兵器の拡散は止まらない。気候変動で不安定度が高まり燃料危機も発生している。

 

こうした現実課題を受けて大西洋両岸の安全保障体制にも影響が出ている。それぞれ事情は異なるが、北米と欧州が共同で立ち向かう方向はひとつしかない。ともにNATO体制で対応するのだ。

 

6月のNATOサミットで各国首脳部はNATO2030の大胆な議題を後押ししてくれた。2030年代以降にも同盟関係を強く維持し、厳しい世界情勢に対応していく。

 

加盟国が30か国になったNATO体制を各国の安全保障の検討決定にもっと活用すべきと決断している。全ドメインで抑止力防衛力を強化する。陸海空宇宙ならびにサイバー空間だ。テロへの戦いを続け、国際社会と協調して国境線保全に努めるが、過去の大きな経験則を参考にする。

 

合わせてその他分野でも強化を目指す。特に回復力、技術、安全保障面での気候変動の影響を重視する。機構全体として各国社会、インフラ、サプライチェーンの回復力を強化する目標がある。弱点を克服し、依存性を減らし外部の干渉に抵抗力を発揮し、攻撃を受けても迅速に反撃し、機構の軍事力を絶えず効果的に運用するのが狙いだ。

 

NATOとして共同行動し、技術優位性を磨き、競争力を維持する。そのため最新技術への投資として人工知能、バイオテック、量子コンピュータを重視する。北大西洋国防技術革新加速化事業Defence Innovation Accelerator for the North Atlantic(DIANA)を立ち上げた。またNATOイノベーションファンドも創設し、民間部門の技術革新を安全保障にも応用し、環大西洋協力で技術共有を進める。

 

さいごに気候変動と安全保障の課題について述べたい。これ自体が脅威であり危機を拡大する効果がある。そこで意識と対応を強めつつある。同盟各国で維持可能な解決方法へ出費が続いている。バイオ燃料でジェット機を飛ばすとか太陽光パネルで電源を確保するとか。さらに初のことだがNATOとして軍用装備の排出ガス削減の方法を検討していることを付け加える。

 

各分野でNATOは各関係先と共同で作業し、価値観、権益を共有する。相手は国家のみならず、組織体、民間企業、学界まで含む。平和を維持し、世界共通のルールとあわせ民主主義下の生活を集団で維持していく。

 

2022年6月にNATO加盟国のリーダーたちが再び顔を合わせる。次回はスペインのマドリードが海上だ。席上でNATOの次期戦略構想を採択する予定で、機構の今後を示す重要な書類となる。前回の戦略構想は2010年のもので、ロシアを戦略パートナーと位置付けて、中国に言及していない。技術と気候変動はごく簡単に触れていた。そこで新規文書では安全保障環境の変化に呼応し、改めて共通する根本価値観を言葉に表し、安全保障と防衛の基礎となる環大西洋のきづなを特記する。

 

今後の展望として環大西洋のつながりを継続し、NATO2030を実行に移す。これにより、不安定さを増す世界の中で加盟国の国民全員に安全と自由をひきつづき保証していく。■

 

NATO chief: The alliance is charting its path forward amid a changed security environment

By Jens Stoltenberg

 Dec 6, 07:55 PM

 

Jens Stoltenberg is the secretary general of NATO.


RQ-170をイランが入手して10年目の記念日に、イランのコピー機が核研究の中心地近くで墜落したのは奇妙な偶然で片付けられるとは思えない。

  • イランが米ISR機材RQ-170を捕獲し、ちょうど10年後に、同機コピーが墜落したの奇妙な偶然だ。

VIA @IMP_NAVIGATOR/TWITTER

 

 

く皮肉な光景に見える。米国の極秘無人機RQ-170センティネルがイラン領内で捕獲されてちょうど10年、イランが同機の基本(基本という言葉を強調したい)を模して作成した粗悪な機体がイラン国内のチャハルマハル・バキティアリChaharmahal and Bakhtiari.地方で墜落した模様だ。墜落地点はイスファハンIsfahan南西部で、このイスファハンはイランの核開発の中心地であり、米情報機関が関心を寄せる地点だ。事実、RQ-170は10年前にイラン核施設のスパイ飛行をしていたがイランの手に落ちたといわれる。

 

2011年12月5日、RQ-170の「捕獲」はイラン軍による大々的な宣伝工作に利用された。そのため、今回の事件も再びプロパガンダ工作の一環との疑問が出ているが、そうでなければ信じられないほどの偶然の積み重ねになる。

 

IRANIAN STATE MEDIA

イランはRQ-170を再整備し、イランの勝利として各種展示に供した

 

墜落現場の無人機はイランがRQ-170の流れを受けて作成したシャヘド-191Shahed-191でRQ-170の2/3の機体だ。当方の試算では翼幅24フィートで、RQ-170は38フィートある。

 

「現地関係者から同機が悪天候で緊急着陸したと確認を得た」と準国営メールMehr通信社が伝えている。

 

2011年のRQ-170墜落直後の写真同様に今回のイラン機もおおむね無傷のようだ。2011年事件同様に今回も機体はトラックに載せられ、Mi-17ヘリコプターで移動を試みたようだ。RQ-170の主翼は機体本体から取り外し可能となっている。10年前の墜落時ではMi-17が機体本体のみ吊り上げようとする様子が見られた。今回は機体はそのまま吊り上げたようだ。

IRAN STATE MEDIA

10年前にイランが米RQ-170を捕獲した

 

イランがRQ-170を原型に製作した機体は性能面で大きく及ばないものの、レーダー断面積が小さくなり大きな脅威となった。イスラエルは同機対応を真剣にとらえ、一機を自国領空内で撃墜している。さらにイランはRQ-170を模した同機以外に大型機も製作していることが要注意だ。無尾翼の全翼機形状を安定して飛行させるのは難問だが、イランは課題を克服したようだ。ただし、一定の範囲で。

 

また先週末にナタンツNatanz付近で爆発があったとの奇異な記事が出た。ここもイラン核開発の中心地だ。イランは防空演習の一環で無人機を撃墜したと主張している。公式にはシャヘド-191の「緊急着陸」と無関係としているが、いかにも変だ。

 

再び疑問が出る。現地で何があったのか。テストあるいは訓練でイランのRQ-170を模した無人機がなんとも皮肉な記念日に失態をしでかしたのか。あるいは米RQ-170捕獲10周年を祝い大々的に当時を再現したのか。後者の可能性があるとにらむのはイランが重要記念日にこうした行動をとることが多いからだ。特に軍事上の勝利を国民に誇示することが多い。とはいえ、RQ-170をイランが入手し10年目に突如奇異な画像が出現したとは何とも奇妙だ。■

 

Iran's RQ-170 Clone Crashes Suspiciously On 10th Anniversary Of The Real One Falling Into Its Hands

The crash recovery looks bizarrely similar to the one that followed the real downing of the RQ-170 Sentinel exactly 10 years ago.

BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 5, 2021

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