2021年12月18日土曜日

1956年のSAC核攻撃作戦案はソ連の完全破壊を狙い、2000か所に原水爆を投下し、民間人死傷者も発生もいとわない構想だった。

 

 

タンリー・クーブリック監督の冷戦時作品「博士の異常な愛情」で、大規模核攻撃が進行中と知りマーキン・マフリー大統領が逆上し、あわててこれを止めようとするシーンがあった。ピーター・セラーズ演じるマフリー大統領は米空軍将官が独断で爆撃機編隊をソ連に送り核攻撃すると知り、どう対処すべきか決断を迫られた。

 

「貴殿が口にしているのは大量虐殺であり、戦争ではない」と大統領はタージドソン将軍(演ジョージ・C・スコット)に話す。同将軍がこれから始まる攻撃が効果を上げると述べたためだ。タージドソンは「大統領、こちらはぐちゃぐちゃにならナイトや申しておりません」と答えた。

 

核の全面戦争の危機が高まっていた1964年に封切られた同作でクーブリックは現実と虚構が実際にどこまで似通っていたかを知る由もなかった。その8年前に米空軍はソ連、中国その他同盟国を完全に破壊する作戦構想をまとめていた。

 

ジョージ・ワシントン大の国家安全保障アーカイブはその文書を機密解除文書公開制度を使い入手し、2015年12月12日にオンライン公開した。

 

空軍文書には1956年原子兵器要求研究との退屈な題名がついており、第三次世界大戦で標的となる対象を網羅し、原爆等の必要数量を列挙している。全800ページにわたり、情報解析からソ連等の2,000か所超が投下地点に指定され、軍事基地にあわせ都市が含まれていた。

 

「SACによる検討は背筋が寒くなるほど詳細にわたっていた」と安全保障アーカイブの核研究者ウィリアム・バーが解説している。「文書作成者は優先攻撃対象や核爆撃戦術で付近の一般市民のみならず『友軍部隊や国民』も高レベル放射能降下物にさらされるとある」

 

1956年には米国による核の独占状態はもはや存在しないものの、米国は核軍拡レースで優位に立っていた。ソ連はその7年前に初の原爆実験に成功していたが、ペンタゴンはさらに強力な熱核兵器(水爆)の配備を開始していた。

 

当時は長距離弾道ミサイルは開発段階で、空軍は大型爆撃機と戦闘機を実戦に投入する構想だった。重力落下型爆弾あるいは初期の巡航ミサイルとして欠陥の多かったスナークを発射するとしていた。

 

1945年に登場した初の実用原子爆弾にはリトルボーイのニックネームがつき、広島市上空で爆発し、TNT換算15千トンの出力だった。マーク36水爆はその250倍の威力となり、巨大なB-52に各17千ポンドの同爆弾二発を搭載した。

 

検討内容では小型のB-47爆撃機編隊とF-101戦闘機編隊に小型原爆水爆を搭載して攻撃するとあった。空軍は合計2千機と同数の巡航ミサイルを動員する構想だった。また、欧州とトルコに配備の中距離弾道ミサイル180発も投入するとしていた。

 

ソ連はTu-16爆撃機等の航空戦力で反撃する,あるいは後続の米軍機を撃破する動きに出れば、米空軍はソ連圏内の航空基地全部を排除することに中心を切り替えることになっていた。その後、米軍機は二次標的を狙うことにしていた。

 

「ソ連圏空軍力と関係ない標的はシステマティックな破壊対象になる」と文書では説明している。

 

水爆は重要軍事標的用に温存する。その他標的には原爆を投下する。

 

一部標的には複数の爆弾を投下し、完全破壊を図るはずだった。「各軍司令官間で重要地点には重複攻撃を認める合意ができている」と同文書にある。

 

文書は分類別に5ページの要点を掲載し、ワルシャワ条約加盟の8か国の各種施設を示すカントリーコードをつけ、中国、北朝鮮、北ベトナムさらに帝政復帰前のイランには三桁コードが見られる。

 

個別標的には8桁コードがつき、爆撃百科事典の様相があった。まず最初の4桁が大まかな場所を示し、残る四桁で個別施設を表示した。

 

この方式だと最高9,999箇所の標的に対応できる。

 

作成者はあきらかに戦闘行為に関係する全施設の攻撃を念頭にしており、切削工具工場、タイヤ工場から抗生物質ストレプトマイシンまで標的にしていた。中でも目を引くのはコード275で「一般住民」を意味していた。

 

「作成者はソ連ブロックの都市部産業基盤のシステマティックな破壊を立案し、とくに全都市の「住民」も攻撃対象にした」とバーは解説し、「意図的に民間市民を標的とするのは国際規範で当時も禁止されていた」

 

しかし、同時代の他の資料では、国防総省が戦争行為に関係するあらゆる人物を軍事目標とみなしていたことがよくわかる。現在は機密解除されている1952年の米海軍の化学・生物兵器に関するフィルムには、「敵軍とそれを直接支援する人々の一部を無力化すること」が目標として明記されている。同様の考えで、米陸軍は放射線戦争を研究し、強力なダーティーボムを製造した。

 

ペンタゴンと空軍がこの結論に自然にったわけではない。ワシントンは、広島や長崎の破壊よりもはるかに致命的な焼夷弾を何千発も使って、想像を絶する破壊を日本にもたらした。表向きは、日本軍を支える家内工業等の活動を止める作戦だった。

 

第二次世界大戦中、連合国はダム、農場、発電所、地雷など、軍民両用施設を爆破していた。ベトナム戦争では、空軍機が同様の目標を爆撃した他、除草剤多数を散布し、ゲリラの食料となる作物を故意に破壊した。とはいえ、空軍研究が想定した核戦争は、もっと悲惨なものになっていただろう。当時、モスクワだけでも400万人以上の住民がいた。

 

現実になっていれば、『博士の異常な愛情』での見積もりを数桁上回る犠牲者が容易にうまれていたはずだ。さらに、放射性降下物による永続的な影響も考慮に入れていない。放射性降下物は、さらに多くの人々を殺し、農作地や地下水を汚染し、居住不可能な地域を生んでいただろう。

 

空軍は必要な爆弾数を最小限にするため全力を尽くしたしたと述べているが、その数字は今も機密扱いである。報告書は、爆弾を地表近くで爆発させれば、放射性降下物が減ると示唆している。

 

「匿名の編者は科学者でなかったかもしれない」とバーは言う。「しかし、放射性物質を世界中にまき散らした1954年のキャッスルブラボー実験があったので、もっとよく理解すべきだった」

 

しかし、空軍はこのような心配への余裕はないと説明していた。「放射性降下物が友軍や国民に影響を与える可能性は考慮するが、航空戦の勝利が他のすべての考慮事項に優先する」と文書は堂々と書いている。「航空戦に勝てないと友好国への影響はもっと悲惨なものになる」。

 

この仮説を検証する必要がなかったのが救いだ。■

 

Inside America's 1956 Nuclear War Plan against the USSR | The National Interest

December 13, 2021  Topic: Cold War  Region: Global  Blog Brand: The Reboot  Tags: RussiaChinaMilitaryTechnologyCold WarB-1Nuclear Weapons

by Robert Beckhusen

 

Robert Beckhusen is Managing Editor of WarIsBoring.

This first appeared earlier and is being reposted due to reader interest.

Image: Reuters.

2021年12月17日金曜日

2022年度米国防認可法が上下両院で圧倒的賛成多数で可決。バイデン政権の弱気な予算案に250億ドル追加し、国防力整備に党派を超えた共通認識を示しているのは世界が危険になりつつあるため。

  

ハワイ州軍航空隊のF-22ラプター。

 

上院は2022年度国防認可法を88対11で昨日可決し、下院での363対70の大差可決に歩調を合わせた。国防は党派の差なく合意できる数少ない分野であると上下両院が示した格好だ。ジョー・バイデン大統領提案の活気のない国防予算提案は両院がを却下している。大統領案はインフレを考慮しても十分といいがたいものであった。逆に立法府は250億ドルを追加し、艦艇建造、航空機調達、弾薬類さらに即応体制強化に必要な資金を手当てした。

 

下院は国防体制整備への支援を表明した。まず332対86の大差でアレクサンドリア・オカシオ-コーテス議員(民、N.Y.)提案の国防予算10%削減の修正案を否決した。国防予算縮小を求める声が少数派に過ぎないことが証明された。

 

バイデン政権側は国防に適切規模の財源を振り向けるべきとの声を上げておらず、これは習近平やウラジミール・プーチンとは対照的で、中ロ両国は着々と米国に危険な世界状況をつくりつつある。

 

ロシアがウクライナ国境沿いに大規模部隊を集結させ、中国は核兵器、極超音速ミサイル開発を強力に進めつつ、台湾へ航空機多数を差し向け脅かしており、米インフラや企業へのサイバー攻撃は連日続いており、イランのウラン濃縮は兵器製造水準に近づいている。

 

こうした展開に対し、米軍戦力のギリギリな状況の象徴が老朽化した艦艇建造施設、飛行時間の削減、調達事業の縮小であり、立法府も党派を超えて有効な対策に乗り出したのだ。

 

議会の成果は、以前の常識を覆した。数ヶ月前までは、長年ペンタゴンを負ってきた人々や統合参謀本部議長でさえ、世界の安全保障体制が悪化しても国防予算は当面増額はありえないと予測していた。 マーク・ミリー陸軍大将は、予算に関する質問に答え、「せいぜい国防総省予算が横ばいになる程度だろう」と答えていた。その時点で、議会が国防予算に250億ドルを追加すると予測したら嘲笑されたことだろう。

 

ただし国防認可法案に署名し、承認されただけ国防総省への資金提供にはならない。そのためには、国防予算法案も審議されさければならないが、現在の継続決議が切れる2月18日までに実現の見込みは、依然として不透明なままだ。

 

Aircraft Carriers

西太平洋で空母USSロナルド・レーガン(CVN76)から発進する戦闘攻撃飛行隊(VFA)115の米海軍F/A-18Eスーパーホーネット(2017年11月11日撮影)。

 

 

2022年予算の実現に影を落とすのは前例のない国内支出の「Build Back Better」法案だ。バイデン大統領提案の国防支出増加はわずか1.6パーセントなのに対し、国防以外の裁量支出は平均16.5パーセント増を議会に求めている。

 

また、"Build Back Better "には、物議をかもしだす内容の政策が含まれ、賛成多数による承認は難しくなるはずだ。そのため、必要不可欠な資金が国防総省に届くまで長い道のりが控える。当面は、記録的なインフレと1月1日実施の2.7%昇給に対処しつつ、今年の予算水準で国防任務を達成せねばならない。

 

国防総省は予算不足に直面したままだが、国家安全保障に対する緊急の脅威に直面したとき、「力による平和」アジェンダに超党派の合意が確保できることが認識できたことに意味がある。

 

政策研究センターCentre for Policy Studiesが正しく指摘している。「経済的、物理的な安全なくして、繁栄はありえない。人々は良い仕事を求め、望んでいる。同時にテロや戦争、暴力や専制政治の影から解放され、自由に行動できることも必要であり、また望んでいる」

 

立法府も同じ結論にたどりついたようだ。■

 

 

A Strong US Military: The 1 Thing Democrats and Republicans Agree On - 19FortyFive

ByThomas SpoehrPublished5 hours ago

 

Thomas Spoehr serves as director of Heritage’s Center for National Defense where he is responsible for supervising research on matters involving U.S. national defense. Prior to joining Heritage, Spoehr served for over 36 years in the U.S. Army, attaining the rank of Lieutenant General. He is an expert on national defense policy and strategy, and has testified before the U.S. Congress on defense strategy, budgets and equipment modernization. Spoehr’s articles and commentary have been published widely in both civilian and military media and he is often called upon to provide expert commentary and analysis.

 


艦首喪失したまま太平洋横断したUSSコネティカットがサンディエゴをあわただしく出港し、母港ブレマートンへ移動中

SANDIEGOWEBCAM VIA @WARSHIPCAM

 

ーウルフ級高速攻撃型潜水艦USSコネティカット(SSN 22)はここ数カ月大変な目にあっている。南シナ海での水中衝突後にグアムに二カ月停泊し、本格修理のため米本土へ全行程6千マイルを移動しサンディエゴに帰還したが、航海は全行程浮上したままで乗員には決して愉快なものではなく、さらにサンディエゴ入港も事前発表はなく最終寄港地が別にあることが推定されていた。海軍は同艦は母港ブレマートン(ワシントン州)に移動し、修理すると発表した。同艦はサンディエゴを出港し、太平洋岸北西部に向かう。

 

海軍艦艇の動きを追う@warshipcamが本日午後のサンディエゴ港ウェブカム映像を投稿しており、艦首がないままのコネティカットが出港する姿が見られる。サンディエゴへはわずか三日の寄港となった。同艦は12月12日日曜日朝に同港へ到着し、駆逐艦USSマスティン(DDG 89)が随行して入港しており、太平洋横断中も安全確保と護送にあたったものと思われる。同艦はコネティカットと同時にサンディエゴを出港しており、この観測の通りだったと判明した。

 

出港時の映像からコネティカットの損傷がよくわかる。


SANDIEGOWEBCAM

SANDIEGOWEBCAM

 

米海軍からはコネティカットの行動について情報開示はなく、サンディエゴ到着し、太平洋横断後の状態は良いとの発表があったのみだ。

 

ワシントン州に直行せず、同艦がサンディエゴにまず入港した理由が不明だ。カリフォーニアに悪天候で降雨量が増えたことを考慮し、入港地を変更したのだろう。あるいは最初から真珠湾など途中停泊が想定されていたのかもしれない。ただし、グアムからハワイへの距離はサンディエゴあるいはワシントンよりも遠い。

 

コネティカットを再び作戦投入可能状態に戻す長く困難な作業については今後もお伝えしていく。

 

コネティカットが浮上したまま航海したことがどれだけつらかったかがわかるクリップが出た。潜水艦乗りアーロン・エイミックが潜水艦で6千マイル超を3週間かけて航行するのがいかに大変化を伝えている。さらに、コネティカットの場合は艦首を喪失したままの状態だったので大変だったはずだ。

この大変な航行を実行した潜水艦乗員に大きな感謝を表したい。■

 

Damaged Submarine USS Connecticut Has Left San Diego On Its Voyage Home (Updated)

The submarine is making its way back to its home in Washington State after slamming into a seamount in the South China Sea months ago.

BY TYLER ROGOWAY DECEMBER 15, 2021

 

2021年12月15日水曜日

主張: 文大統領が推進する平和宣言が実現すればこうなる。カギは北朝鮮だ。米国は核保有国としてのDPRKへの外交対応を検討すべきなのか。

 

 

 


 

 

朝鮮の文在寅大統領が北が平和宣言に「原則として」合意したと発表した。米国、韓国両国は宣言文原案の作成に取り組んでいるといわれる。中国も支持の姿勢を見えている。これでなにがまずいのだろうか。

 

答えはもちろん朝鮮民主人民共和国、別名北朝鮮だ。

 

文大統領によれば北はワシントンが「敵対政策」取り下げるまで一切の交渉に応じずとしており、朝鮮半島の米軍部隊プレゼンスはじめ軍事行動を指していると思われる。

 

希望にあふれた文大統領はこう言っている。「このため、南北が交渉の席に就けず、北朝鮮と米国も交渉ができない状態だ」。これが大きな障害になっているようだ。文は「交渉開始を期待している。そのため努力している」。

 

だが、こと北朝鮮に関する限り、「期待」はあてにならないのである。

 

南北朝鮮に米国、中国が今でも戦闘状態にあるため平和宣言は大きな課題だ。1950年6月に燃え上がった敵意は休戦交渉で下火となったものの、平和条約はその後も結ばれていない。ただ、これ自体は特殊ではない。軍同士の撃ち合いが止まり、その後政治家が条約を結ぶ例として第一次大戦後の米独両国の例がある。

 

1919年、米上院はヴェルサイユ条約批准を拒否し、ウッドロー・ウィルソン大統領が目指した世界改革の夢は徒労に終わったが米独両軍は再び塹壕に戻ることはなかった。むしろ、1921年7月にウィルソンの後を継いだハーディング大統領のもとで議会はノックス-ポーター決議を採択し、戦闘状態が終結した。正式な平和条約は同年に交渉が始まった。

 

ただ南北朝鮮や後ろに控える支援国には停戦後にこうした和平の動きは皆無だった。冷戦でさらに関係は凍り付き、ときたま武力衝突が半島に発生した。米中両国が真剣に協議開始したのはニクソン時代の1971年以降のことだ。また南北接触が時々発生しているが、冷戦終結後も半島関係の抜本的変更はなかった。

 

2018年のトランプ大統領がDPRKに平和実現の可能性を開いた。正式な条約が一番効果があるのだが、さきに交渉が必要だ。またこれは関係国間の協議を前提とし、都合の悪い問題も無視できなくなり、最終的に難解かつ問題をはらむ文章を調印することになる。

 

これに対して平和宣言なら単純だ。朝鮮半島が戦争状態にないと宣言し、各関係先はお互いを認め合う。文大統領の希望はここを出発点に実務的な交渉に向かうことにある。「非核化と平和へ向けた交渉開始に利用する。そのため重要な意義がある」(文)。統一相李仁栄Lee In-youngからは宣言により「平和実現の新局面への転回点」が出現するとの発言が出ている。

 

理論上は次の段階は条約交渉となる。だが、当然ながら困難が予想される。にもかかわらず、終戦宣言をすれば非公式とはいえ戦闘状態の終結となり、平和条約実現が加速する可能性も出てくる。ただし、北が米国の「敵視政策」終了にこだわらないのが前提となる。

 

宣言が象徴的存在に終わるのは確実だろう。南北朝鮮、米国、中国が戦闘状態にないと認めるだけだ。その状態が短期間に終わる可能性もある。これまでも平和条約が守れなくなった事態が発生している。また北は何十年もかけて兵器開発配備を続けており、脅威は全く減じていない。しかも台湾をめぐり不穏な状況の今日、中米両国間の武力衝突さえ可能性が浮上しているのである。

 

だとしても半島の現況は平和であり、宣言が出ればワシントンは一方的に過去の「不快感」を前面に出さず、よりよい関係樹立に前向きになるだろうが、非核化のみが目標ではない。またその他関係国も混乱はあるものの平和維持に向かうかもしれない。

 

現実的に見れば、宣言は北朝鮮を交渉テーブルに戻すための必死な試みである。このため、ソウルとワシントンで良好な関係をめざす動きもある。文の任期は終わりに近づいており、3月に大統領選挙がある。与党候補が世論調査でリードしているとはいえ、選挙戦は流動的だ。ここにきて宣言が急に動きを示しているのは大統領選挙を意識しているためもあろう。

 

宣言に立ちふさがる最大の障害は宣言から生まれる実の効果が皆無なことだ。四か国政府首脳、外交防衛部門の長や安全保障専門家が集まり、美辞麗句を展開しても結果は変わらない。

 

ただし、反対勢力には別の思惑もある。南朝鮮国内のタカ派、米国防関係筋さらに米国の朝鮮アナリスト多数派がここに含まれる。平和宣言後に米韓同盟解体、米軍撤退を叫ぶ勢力が声を上げれば、金正恩の狙い通りとなってしまうと危惧している。一発も銃弾を発射せず北は半島に朝鮮王朝を再発足可能となる。

 

例として米議会にこの動きに反対する意見が出ている。「金一族が平和合意を順守した前例がない」というのだ。

 

とはいえ、平和宣言の実現は容易だ。また北朝鮮が違反した前例があっても外交は進めるべきではないか。戦争となれば悲惨な結果となり、死傷者は数百万名規模になりそうだ。これは北が核兵器をどこまで使用するかで変わる。北朝鮮が核兵器ミサイルの整備を続ければ可能性は高まるばかりで、実際にその兆候がある。

 

これまでの制裁措置で北の軍事力開発を止められなかった。DPRKがあと二年の制裁を耐えきれば、今後に制裁強化となっても対応可能となる。また、中国が北の不安定化リスクを甘受する理由がなく、再統一を米国の望む条件で進めるのも受け入れられない。平和宣言が効果を発揮するとしたら、交渉の実施が唯一の選択肢となる場合のみだ。

 

さらに、議会批判派からは「終戦宣言で在韓米軍のみならず半島さらに域内に深刻なリスクが生まれる。中途半端な平和条約はDPRKに在韓米軍解体を叫ばせることになり、米軍28,500名は南朝鮮から退去することになる。米軍の存在意義は北の侵攻を抑止することにあり、同時に毎年の米韓合同軍事演習も永久に実施できなくなってしまう」

 

ただし、前提は南朝鮮と米国がピョンヤンの要求を急ぎ受け入れてしまった場合の想定だ。本当にそうなるだろうか。韓国世論は同盟関係を支持しており、米軍プレゼンスを評価しつつ、北へ疑いの目を強めている。革新派の南朝鮮国民でさえ米国による支援を求めている。当然だろう。自立独立を唱えれば気分は高揚するが、自立独立を実現するには多大な負担が発生する。このため国民ほぼ全員がワシントンの防衛力に依存したいと考えている。

 

米外交の主流派も宣言で朝鮮半島から一人でも軍が撤退する事態が現実になるのを恐れている。その場合、共産国家が南朝鮮を併合し、米国までとはいかなくても北東アジアへ影響が及ぶのは避けられなくなると警告している。とはいえ、米国との防衛関係を一夜で変更することなどだれも望まないはずだ。

 

宣言で生まれる結果を米議員が真剣に恐れているのなら、各議員も米国のプレゼンス継続が妥当なのか無意識のうちに疑いをもつはずだ。つまるところ、国力のあらゆる点で南はDPRKを凌駕しているのだから、自分で防衛できるはずだ。米国の裕福な同盟各国はアジア、ヨーロッパ、中東で米軍プレゼンスがないと敗北のリスクをかかえていることに疑問がわいてくる。何十年もの間、資金装備を提供し、訓練し、支援してきたのに。

 

興味深いのはタカ派議員連が以前は南朝鮮に示していなかった議題を示していることだ。「南朝鮮におけるわが軍のプレゼンスのひとつにキャンプ・ハンフリーズがあり、海外基地として最大規模で、域内の安全保障とともにDPRK、ロシア、中華人民共和国への抑止効果で重要機能を果たしている」と米関係者は述べており、明らかにROKを対中ロシア戦の出撃基地として使う前提で、南と関係のない事由での戦闘の場合も想定しているようだ。この場合、南が反発しても同国は攻撃対象となってしまう。

 

現地で暮らす人々に意見を聞くことに価値がありそうだ。米軍の基地利用は究極的にはソウルが決定することになる。また南朝鮮国民の保守派リベラル派問わず、自国を米国の利害で展開する戦争の標的にしてもいいと考える向きは皆無に等しい。その場合、ROKは周辺国間に敵意がみなぎる中で孤立してしまう。

 

事実、文大統領は平和宣言の実現をめざす中で、自国政府は米国が主張する北京冬季オリンピックの外交ボイコットに加わらないと発言している。文は率直にこう述べている。ROKは「調和のとれた関係を中国と維持しつつ、米国との堅固な同盟関係を基盤とする」。つまり、防衛してもらい感謝しているが、わが国のことは自分で決めるぞ、ということだ。戦争となれば、文はPRCの側に加わる可能性もありそうだ。

 

バイデン政権は議会内の反対意見に一部くみしつつも激しい反論はしていない。ただし、同政権も同盟国たる韓国を組み入れる策を目指している。つまるところ、バイデン大統領は同盟関係の再建を公約としている。そのためワシントンはソウルの機嫌を取りながら、文構想が消えるよう願っているようだ。

 

だが、金正恩は手を回し、ROK、米国双方のタカ派を懐柔しようと考えている。ワシントンは宣言が出ても重要度を指して感じないはずだが、ピョンヤンにはある意味で最も重要な事実容認を米政府が代償なしで提供することはないとわかっているはずだ。

 

平和宣言交渉の協議の席につくのを拒否すれば北はその他の目的追求の機会を自ら失うことになる。制裁措置の緩和もそのひとつだ。ただピョンヤンは頑固な態度を示し、都合のよいはずの議題でも討論そのものを拒否するだろう。またDPRKは文の面目をつぶそうと懸命になるはずだ。政治的には文の所属する政党に傷がつき、次期政権で「太陽政策」の再採択が難しくなる。ただし、北が最悪の敵勢力との正体を見せたのは以前にもあった。

 

米国は平和宣言の実現を求め、甘い餌として渡航制限解除による連絡事務所の立ち上げを持ち掛けるかもしれない。短期間のうちに大使館に昇格することも視野に入る。あらゆる問題についての協議も当然含まれる。非核化から「敵対政策」、人権問題などだ。歴史を見れば楽観主義の余地が少ないことがわかるが、批判勢力に対案がない。制裁からは希望は生まれず、戦争になればもっと悪い結果になる。米本土の攻撃能力を保有する北朝鮮を中程度の核保有国として交渉に臨む覚悟が必要だ。

 

こうしてみると文の切り出し方を支えるのもさして悪い選択には見えない。

 

A Peace Declaration To End The Korean War: An Idea Whose Time Has Come?

WRITTEN BYDoug Bandow

ByDoug BandowPublished1 hour ago

https://www.19fortyfive.com/2021/12/a-peace-declaration-to-end-the-korean-war-an-idea-whose-time-has-come/


Now a 1945 Contributing Editor, Doug Bandow is a Senior Fellow at the Cato Institute. A former Special Assistant to President Ronald Reagan, he is author of several books, including Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World and co-author of The Korean Conundrum: America’s Troubled Relations with North and South Korea.

In this article:featured, History, Korean History, Korean War, Moon Jae-in, North Korea, Peace Declaration, South Korea

 

 

Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute, specializing in foreign policy and civil liberties. He worked as special assistant to President Ronald Reagan and editor of the political magazine Inquiry. He writes regularly for leading publications such as Fortune magazine, National Interest, the Wall Street Journal, and the Washington Time


中国の極超音速兵器開発に先を越された米国は有効な防衛力を実現できるのか



China Hypersonic Missile Testing

PLA Daily



中国のペースにあわせ、米国は極超音速兵器を月産10基以上製造する必要があるが、現状はそこまで行っていない....

 

国がFOB核運用極超音速滑空体のテストを行ったことで米国並びに太平洋地区同盟各国に戦術戦略上の脅威が加わったとペンタゴンで兵器開発にあたっていた専門家が指摘している。

 

マイケル・グリフィン博士Dr. Michael Griffinは研究開発担当の前国防次官補で、中国の極超音速兵器体系が米国を上回ればグアムや台湾のような死活的な地点への米軍・同盟国軍の接近が阻まれると発言。

 

「中国のFOBは戦術装備ながら戦略的な意味があり、手ごわい装備だ。中国がグアム西方に立ち入り禁止区域を設定すれば世界的な影響がでる」と高度核兵器アライアンス抑止力センターAdvanced Nuclear Weapons Alliance Deterrence Center主催の「極超音速兵器が政策と核抑止体制に与える影響」イベントで発言した。

 

中国が一方的に有利な形で極超音速兵器配備を進めると、米軍・同盟軍へ一斉攻撃を行い、戦闘継続できなくなる事態が生まれるとグリフィンは想定している。

 

中国の極超音速兵器の脅威

 

中国に実用レベルの極超音速兵器が各種そろい、米国にないとなると、太平洋に展開する米軍部隊に防衛手段がなくなる、というのがその考えだ。

 

その場合、米軍部隊は極めて脆弱になり、グリフィンは米軍同盟国軍は台湾あるいはグアムへの接近を「阻止される」事態となるのを恐れる。

 

中国の弾道ミサイル、核ミサイル等一斉発射に対し、防衛手段が実質上ない状態を想定している。防衛側を上回る飽和攻撃が「青天のへきれき」シナリオで想定されており、極超音速ミサイルが加われば事態はさらに深刻となる。

 

そのため大量の極超音速ミサイルの飛来を食い止める唯一の手段は、現状では敵に壊滅的被害を与える反撃手段以外にないと考えられている。

 

米抑止力はどこまで


攻撃を受ければ確実に反撃を行うとの抑止効果が極超音速兵器による大規模強襲への唯一の予防手段となる。ここをグリフィンは強調し、米国は中国に歩調を合わせた形で新型極超音速兵器の開発、生産、配備が必要だと主張している。

 

「極超音速攻撃手段では中国がわが国の先を走るのは明らか。こちらには一斉発射の阻止で手段がない。中国を上回る攻撃能力が整備できないと、中国の行動を縛ることができない」(グリフィン)

 

ペンタゴンは極超音速兵器生産を増し、パラダイムを一変させる「価値観を根底から覆す」技術を模索する必要がある。

 

通常・核双方の新型ミサイル生産を加速化する必要がある。

 

 

米装備の現状

 

米空軍では空中発射式迅速対応兵器をAir Launched Rapid Response Weapon と呼び、極超音速発射体として航空機から運用する構想が急進展している。

 

米陸軍は長射程極超音速兵器 Long Range Hypersonic Weapon (LRHW) を2023年までに実用化すると発表した。ペンタゴンは実戦用極超音速兵器の実現だけでは足らず、中国に対抗し、抑止効果をあげるため大量整備に迫られる。

 

中国が核運用可能な極超音速滑空体の試験を行ったことに大きな関心が集まったのは当然で、ペンタゴン上層部の懸念が現実になった。極超音速ミサイルの製造配備で中国は米国に先行している。

 

「現在は月産二基の極超音速兵器製造に向かっている。これを月産10本に増やす必要がある。中国はわずか12本の極超音速ミサイルでは脅威を感じない」(グリフィン博士)

 

同時にグリフィン博士は「既存価値観を覆すような」技術を開拓し現在開発中の極超音速ミサイルを超える新世代装備の開発を訴えており、弾頭部、誘導手段、推進手段で既存の空気吸い込み式や加速滑空型極超音速兵器体系を超える装備が必要と言いたいのだろう。実現のカギを握るのは迅速な試作・試験とグリフィンは見ている。

 

「テストを毎週実施すべきで、三カ月に一回ではまに合わない」(グリフィン博士)

 

中国のFOB兵器実験で緊急度はさらに高まっている。中国の新兵器は軌道上に長時間「留まる」機能があるとの観測があり、これが最大の懸念事項だとグリフィンは指摘する。つまり中国兵器は標的を選択し、飛翔経路を最適化して予想外の方向から攻撃する可能性があるということだ。

 

「軌道上に待機させ、任意の方位角で標的を狙う機能を懸念する」(グリフィン博士)■

 

 

China's Hypersonic Weapons: A Significant Global Security Threat

KRIS OSBORN, WARRIOR MAVEN


 

Kris Osborn is the defense editor for the National Interest. Osborn previously served at the Pentagon as a Highly Qualified Expert with the Office of the Assistant Secretary of the Army—Acquisition, Logistics & Technology. Osborn has also worked as an anchor and on-air military specialist at national TV networks. He has appeared as a guest military expert on Fox News, MSNBC, The Military Channel, and The History Channel. He also has a Master’s Degree in Comparative Literature from Columbia University.

 

 

2021年12月14日火曜日

米海兵隊、陸自が各地で展開するレゾリュート・ドラゴン演習のねらいは島しょ部防衛。その真意を伝えないままでいいのだろうか。

 これだけ重要な演習が展開されているにもかかわらず、メディアが演習の大きな目的をスルーするのはどうにも理解できません。防衛(軍事)記者が絶望的に足りないのか、報道しない自由なのかわかりませんが。


レゾリュート・ドラゴン演習で通信システム設営にあたる自衛隊員。八戸演習場にて。(U.S. Marine Corps photo by Lance Cpl. Jonathan Willcox)


大規模な日米共同演習レゾリュート・ドラゴン2021は太平洋を舞台とするキーンエッジ演習にも直説の影響を及ぼす。


本で米海兵隊数千名規模が陸上自衛隊とともに海兵隊の遠征前線基地構想を試し、同盟国軍も交えた指揮命令機能の実効性を試している。


来年に予定される大規模演習の予行の意義もあると海兵隊は説明している。


「INDO-PACOMで目指す各国が力を合わせるEABO構想を試す意義がある」と第四海兵連隊指揮官マシュー・トレイシー大佐が述べている。同連隊数百名がレゾリュート・ドラゴン2021演習に参加している。


EABOとは海兵隊用語で遠征前方拠点作戦運用Expeditionary Advanced Basing Operationsの略で、海兵隊は設営が簡単な小規模拠点多数を戦闘地に展開するのをめざしている。


トレイシー大佐は海兵隊と陸上自衛隊は沖縄から矢臼別演習場で遠征活動拠点12か所を設営したと説明している。矢臼別演習場は沖縄から1,800マイル離れる。


「キルチェーンの構築よりもっと大事なのは意思決定チェーンの考え方だ。海兵隊だけが戦うのではない。ここは日本の領空、日本の主権が及ぶ領土内だ」(トレイシー大佐)


また今回の演習の目的として米日間の指揮命令系統を統合し、共同作戦を通じ構築することがあると大佐は説明。レゾリュート・ドラゴン演習で得た知見をインド太平洋司令部の大規模合同演習キーン・エッジに来年応用するという。


「体得した学びを応用し、INDO-PACOMは実戦レベル演習を展開し、太平洋全域で戦術レベルの応用を行う。日本列島の島しょ部防衛能力がこれで飛躍的に伸びると期待している」


レゾリュート・ドラゴン演習は米海兵第三師団と陸上自衛隊第九師団により12月4日から17日まで日本各地で展開すし、米国は2,600名、日本は1,400名を参加させ、さらに太平洋地域及び米本土からの遠隔支援人員も加わるとトレイシー大佐は説明。日米両国の演習として2013年以来最大規模となる。


航空戦力では海兵隊はMV-22Bオスプレイ、CH-53Eスタリオン、AH-1Zヴァイパー、UH-1Yヴェノム、F/A-18Eスーパーホーネット、KC-130Jハーキュリーズを同演習に参加させている。


海兵隊、陸上自衛隊に加え、米海軍艦艇が架空シナリオで高機動砲兵ロケットシステムを駆使した敵の探知掃討作戦を展開する。その他、市街地での地上戦闘作戦、共同給油補給演習のほか、大規模負傷者援護訓練も行う。


大規模演習キーン・エッジは統合参謀本部議長が指揮しインド太平洋内で隔年で実施されている。米各軍に自衛隊が加わり実施されている。■


Resolute Dragon: US Marine-Japanese exercise is a precursor to 2022 Indo-Pacific event

By   JUSTIN KATZ

on December 13, 2021 at 2:19 PM


なお、陸上自衛隊は次の広報資料を公開しています。


令和3年11月11日 陸 上 幕 僚 監 部

 令和3年度国内における米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン21)の 概要について


 陸上自衛隊は、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化すべく、以下のとおり令和3年度 国内における米海兵隊との実動訓練(レゾリュート・ドラゴン21)を実施しますので、 お知らせいたします。 


1 目 的 陸上自衛隊及び米海兵隊の部隊が、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施 する場合における相互連携要領を実行動により訓練し、日米の連携強化及び共同対処能 力の向上を図る。 

2 期 間 令和3年12月4日(土)~12月17日(金) 

3 場 所 王城寺原演習場、岩手山演習場、八戸演習場、霞目駐屯地、矢臼別演習場等 

4 担任官 (1) 陸上自衛隊 東北方面総監 陸将 梶原 かじわら 直樹 なおき (2) 米海兵隊 第3海兵師団長 少将 ジェイ M バージェロン (Jay M. Bargeron) 5 訓練実施部隊 (1) 陸上自衛隊 ア 第9師団第5普通科連隊基幹 イ 東北方面特科隊、東北方面航空隊等 (2) 米海兵隊 ア 第3海兵師団 第4海兵連隊 第2-8大隊基幹 イ 第1海兵航空団 第36海兵航空群等 陸上自衛隊

6 特 色 (1) 陸上自衛隊の領域横断作戦(CDO)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦(EABO)を踏まえた日米の連携向上のための訓練を実施 (2) 国内において海兵隊と実施する最大規模の実動訓練であり、東北方面隊と在沖米海兵 隊が複数の演習場を使用し、空中機動作戦に係る訓練、AHによる射撃訓練、対艦戦 闘訓練等を実施 (3) 平成28年9月の日米合同委員会合意に基づく、MV-22等の訓練移転に係る事 業として実施 

7 新型コロナウイルス感染症対策 (1) 自衛隊員は、防衛省・自衛隊が定める方針に基づき必要な感染症対策を実施 (2) 在日米海兵隊関係者は、米海兵隊の定める基準等に基づき、自衛隊と同様に必要な 感染症対策を徹底