2022年6月12日日曜日

岸田平和ビジョンを発表。一方、日本周辺でのロシア軍の動きを警戒する自衛隊、安全保障環境は流動的だ

 


Newsweek

 

田文雄首相は、シンガポールで国際戦略研究所が主催のシャングリラ対話で講演し、インド太平洋地域での日本の役割に関し戦略構想を発表した。

 

 

岸田平和ビジョン

 岸田首相は、この戦略を「岸田平和ビジョン」と呼び、自由で開かれたインド太平洋に新たな展開をもたらす、ルールに基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する、日米同盟強化に伴う日本の防衛力の高度強化により安全保障を向上させる、その他の安全保障協力の強化を図るを、5本柱として掲げるとした。また、核兵器のない世界に向け現実的な取り組みの推進、国連安保理の改革に伴う国連機能の強化、経済安全保障などの新たな政策分野での国際協力の強化など、自由で開かれた国際秩序に向けた新たな展開をもたらすとした。

 日本は対立ではなく対話による安定した国際秩序を築くと約束する一方で、「ルールを守らず、武力や脅しで他国の平和と安全を踏みにじる存在」の出現に備えなければならないと岸田首相は述べた。そのような事態を防ぐため、日本は抑止力・対処力を強化しなければならないとした。

 日本周囲の状況が厳しさを増す中、岸田首相は、日本政府は新たな国家安全保障戦略を年末に発表すると述べた。今後5年以内に日本の防衛力を強化し、防衛予算の大幅な増額を確保する決意を述べた。また、反撃能力の獲得を含むいかなる選択肢も日本は排除しないと述べたが、平和愛好国の姿勢は変えておらず、いかなる取り組みも憲法と国際法に従い行っていくことを強調した。

 岸田首相は、ウクライナを侵攻中のロシアを批判し、日本がキエフを支援し、ロシアに制裁を加えると改めて表明した。首相は、今日のウクライナ情勢は明日の東アジア情勢になり得ると警告し、オブラートに包んだ一撃を中国に加えた。中国を名指しさえしなかったが、東シナ海や南シナ海での紛争や、台湾をめぐる緊張に触れた。東シナ海では、国際法違反の一方的な現状変更の試みが続いているとした。

 質疑応答では、岸田首相は友好的な姿勢を見せた。岸田首相は、人民解放軍の何磊中将 Lt. Gen. He Leiから日中関係のビジョンについて質問を受け、日中関係は日中両国だけでなく、地域や国際社会にも重要であると述べた。岸田は責任ある行動をとり、建設的な関係を築くよう中国に呼びかけた。また、北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返し、国連安保理決議に反し、核・ミサイル活動を強化しようとしていると指摘した。岸田首相は、それらの行動は「国際社会に対する明確かつ深刻な挑戦」とした。

 岸田首相は講演で、安全保障と経済の両面でインド太平洋各国を強化する日本の計画的な取り組みも語った。安全保障面では、巡視船の供与、海上法執行能力の強化、防衛装備品の提供や技術移転などを予定する。シンガポールは、日本と防衛装備品・技術移転協定を締結する国の一つ。

 

米中国防トップ会談

これに先立ち、ロイド・オースティン米国防長官は、シャングリラ対話と並行し、中国の魏鳳和国防相Gen. Wei Fengheと会談し、米中防衛関係について協議した。国防総省のニュースリリースによると、会談は30分の予定だったが、1時間弱続き、両名は主に台湾を話題にという。また、ロシアのウクライナ侵攻、北東アジアの問題、北朝鮮も話題となった。

 「オースティンとウェイ両名は、両軍の危機管理の必要性について協議した。オースティンは中国人民解放軍に対し、危機コミュニケーションと危機管理メカニズムにより積極的に参加するよう促した」と米国防総省は発表し、米国防省高官はウェイが「応えてくれた」と指摘した。

 中国国防部はこの会談について声明を発表し、その中で、中国は米国との健全で安定した主要国関係の確立を望んでいると述べ、米国は中国の発展と成長を合理的にとらえ、中国を攻撃・中傷せず、封じ込め・抑圧しようとせず、中国の内政に干渉せず、中国の利益を損なわなければならないと述べた。

 「安定した軍同士の関係は、二国間関係の発展に極めて重要であり、両軍は衝突や対立を避けるべきである」との声明を発表した。

 米国防総省は台湾について、「長官は台湾関係法の文言も読み上げ、台湾海峡の平和と安定が米国にとって『重大な懸念』であるという部分を強調した」と発表した。

「オースティンはウェイに、米国は同法が求める防衛的性格の武器を台湾に提供し続けると伝えた。また、この法律には、『米国は、台湾住民の安全を脅かす、いかなる武力行使にも抵抗できる能力を維持する』との文言も含まれている」と同関係者は続けた。

 魏鳳和は、台湾は離脱した省であり、米中関係の基礎はアメリカの「一つの中国」政策に根ざすとの北京の姿勢を繰り返した。魏は、米国が台北へ武器売却を続けることは、「中国の主権と安全保障の利益を損なう」と付け加えたと声明にある。

 

今週の日本周辺でのロシアの動き

防衛省統合幕僚監部(JSO)の報道発表によると、ロシア艦船が日本近海の国際水域で航行した。情報収集艦プリバルティカRFS Pribaltica(80)は同日午前7時、宗谷岬の北15キロの海域を西へ航行するのを目撃された。その後、ラ・ペルーズ海峡(宗谷海峡)を東に航行した。同発表によると、同艦は5月にラペルーズ海峡を西に航行していた。海上自衛隊八戸航空基地(青森県)に所属する第2航空集団のP-3Cオリオン海上哨戒機(MPA)が、ロシア艦を監視した。

 海上保安庁発表によると、プリバルティカは南下し、木曜日に北海道の奥尻島の南南西約90キロメートルを南東に航行しているのが確認された。同発表によると、同艦はその後、北海道と本州の間にある太平洋の津軽海峡を航行した。海上自衛隊の多用途支援艦「すおう」(AMS-4302)とミサイル艇「わかたか」(PG-825)、海上自衛隊八戸航空基地(青森県)に所属する第2航空集団のP-3CオリオンMPAがロシア船舶を監視した。

 金曜日、海上保安庁は、北海道根室半島の南東約170キロの海域で、ロシア海軍の駆逐艦1とフリゲート4が航行するのを発見した。駆逐艦「マーシャル・シャポシニコフ」、コルベット「RFSソベルシェヌイ」(333)、「RFSグロムキー」(335)、「RFSグレミャーシチー」(337)、「ロシア連邦の英雄アルダー・シデンツァポフ」(339)だと船体番号で特定されたと発表された。海上自衛隊の駆逐艦「ゆうだち」(DD-103)がロシア艦船を監視していたと発表にある。

 岸信夫防衛相は金曜日の記者会見で、ロシア国防省からロシア太平洋艦隊が6月3日から太平洋と千島列島近海で艦船40隻以上と航空機約20機を含む大規模演習を実施すると公表していたのを明らかにした。今回の艦船5隻は同演習に関連したものと防衛省は見ている。岸防衛相は、ロシアがウクライナ侵攻とあわせ極東で同時行動する能力を誇示しようとしていると防衛省は考え、ロシアの活動を引き続き監視していくと述べた。■

 

Japanese PM Kishida Lays Out Indo-Pacific Strategy in Shangri-La Speech - USNI News

By: Dzirhan Mahadzir

June 10, 2022 3:12 PM


練習艦隊が地中海でNATO水上部隊と共同訓練し、交流。世界一周航海でグローバルな視点を有する有為人材が育っていくのは心強い

 NATO Ships Exercise with JMSDF in the Mediterranean Sea

Italian Navy ITS Margottini (SNMG2 flagship) and Turkish Navy TCG Salihreis met the two Japanese ships, JS Kashima and JS Shimakaze, during their transit in the Mediterranean Sea (NATO MARCOM photo)

 

NATO MARCOM press release より

設NATO海上グループ2(SNMG2)は6月6日、地中海で海上自衛隊との共同訓練を実施した。

 イタリア海軍のITS Margottini(SNMG2旗艦)及びトルコ海軍のTCG Salihreisは、第66回遠洋練習航海の一環で地中海に入った「かしま」「しまかぜ」2隻と合流した。日本の2隻は4月24日に日本を出港してjた。

 日本練習艦隊の候補生は、NATO部隊と交流し、操船実習などの訓練活動を行う機会を得た。人事交流では、NATOの乗組員が日本の艦船に乗船し、その逆も行われた。この交流により、参加者全員がNATOと日本それぞれの海上での活動方法について理解を深め、部隊間の理解と相互運用性を育むことができた。

 小牟田秀覚練習艦隊司令官(海将補)は、イタリア海軍のマウロ・パネビアンコ司令官を「かしま」に迎え、NATOとのパートナーシップを強化でき嬉しく思うと述べた。パネビアンコ司令官は候補生と面会し、彼らのキャリアを祝福した。

 「本日の交流は、相互の協力とパートナーシップを強化する素晴らしい機会となった。私たちは、貴国の海軍と多くの価値観を共有しており、それゆえにこの協力関係は相互に有益なものとなっている。日本は、欧州大西洋地域以外で、NATOが関係を発展させている」。イタリア海軍少将 マウロ・パネビアンコ(SNMG2司令官)

 交流を終えた2隻の日本艦は8月に終了予定の世界一周航海を再開した。NATOの二艦MargottiniとSalihreisも、地中海での活動を再開し、公海上の平和と安全を維持するため、強力なプレゼンスを示し、高レベルの準備態勢を維持する。■


NATO Ships exercise with JMSDF in the Mediterranean Sea - Naval News

Naval News Staff  10 Jun 2022


2022年6月11日土曜日

岸田総理はシャングリラ対話で何を語ったのか

 

シンガポールで開催中のシャングリラ対話で基調講演をした岸田文雄首相。

June 10, 2022. (Roslan Rahman/AFP via Getty Images)

 

シアがウクライナに核兵器を使用する恐れがある中、日本は防衛予算増額を5年間続けると、首相が表明した。

 

 

 岸田文雄首相は、6月10日開催されたシャングリラ・ダイアログのオープニングイブニングで基調講演をした。ロンドンに本部を置くシンクタンク国際戦略研究所がシンガポールで開催する同フォーラムは、アジア太平洋地域の安全保障上に焦点を当てる。

 岸田首相は、防衛費増額は日本が攻撃された場合に沿岸部や陸上標的を攻撃する反撃能力の取得につながると繰り返した。日本の平和主義憲法でのこれまでの解釈では、政府はそのような軍事能力を取得することを禁じているとされてきた。

 また、日本の安全保障上の利益を向上するべく、日米安全保障同盟を強化する努力を継続すると約束し、日米安全保障同盟は地域の安全保障の要であり、同様の考えを持つ国々と多層的な安全保障協力を推進する足掛かりとなり得るとの見解を示した。

 また、地域諸国への支援の取り組みにも触れ、日本が特に海洋分野での能力強化のための支援を継続していくと指摘した。この支援には、今後3年間、少なくとも20カ国において、巡視船、法執行能力、無人航空機、800名の訓練などを提供する。

 日本、オーストラリア、インド、米国で構成されるいわゆるクアッドグループを通じ提供される支援の金額は、30億ドルに上ると推定される。日本は航空機やスペアパーツの形でフィリピンを支援した実績がある。

 首相は、今後予定されているその他支援策として、地域全体で1,500名への法の支配と統治に関する訓練が含まれると述べた。

 岸田首相はロシアによるウクライナ侵攻は「他人事」にあらずと警告し、国際秩序の根幹を揺るがすものだと述べた。

 国際法があっても、他国の平和と安全を踏みにじる事態が、この地域の近隣でも起こることを覚悟すべき、と述べた。

 岸田首相は、核兵器の配備と潜在的な使用に対する反対と懸念も基調講演で大きく取り上げた。第二次世界大戦中、米国は広島と長崎に核兵器二発を投下した。

 岸田首相は「核兵器のない世界を目指す」と各国に呼びかけ、核攻撃の脅威を与え続けるロシアや北朝鮮を批判した。ロシアがウクライナに侵攻した直後の2月下旬、クレムリンは核部隊に厳戒態勢を敷いた。

 あわえて、世界の核保有国に対し、保有する兵器の申告を求め、核軍縮と軍備管理をめぐる米中の二国間対話を促した。■

 

Japan to continue increasing defense spending over next five years

By Mike Yeo

 Jun 11, 01:37 AM

 

 

About Mike Yeo

Mike Yeo is the Asia correspondent for Defense News. He wrote his first defense-related magazine article in 1998 before pursuing an aerospace engineering degree at the Royal Melbourne Institute of Technology in Australia. Following a stint in engineering, he became a freelance defense reporter in 2013 and has written for several media outlets.


コメントシャングリラ対話での岸田スピーチは国内メディアが積極的に取り上げていないようで、内容も上の記事の5年間連続増額ではなく5年後に、となっているものさえある有様です。防衛費増額では整備費用、部品調達、弾薬調達を増やす絶好の機会なので、財務省の壁を突破し、本当に必要な防衛力の実現につなげてもらいたいものです。


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月10日現在)ロシア軍の損害状況のウクライナ発表はどこまで信憑性があるのかなど

 


シアによるウクライナ侵攻が始まって107日目の金曜日、戦略的な都市セベロドネツクの戦いは続いている。


現地からの最新報告によると、ロシア軍は市街地の大部分を制圧しているが、完全な包囲には至っていない。



セベロドネツク

セベロドネツク市と周辺では、戦闘が続いている。ロシア軍はこの戦略的都市の大部分を支配しているが、完全に攻略できていない。ウクライナ軍は断固として防衛を続けているが、長い戦いで完全に劣勢に立たされている。


ウクライナ政府関係者は、ウクライナ軍は大砲で15~20対1、砲弾で40対1の不利な状況にあると述べている。その結果、砲撃回数や時間が減少中だ。


戦争研究所(ISW)によると、現地の状況は以下の通り。



反対に、ロシア軍は開戦当初からの戦術を完全に転換し、装甲車両や機械化大隊による戦術集団が前進する前に、砲兵で目標を軟化させる方法をとっている。この戦術で、ロシア軍戦車が登場する頃には対抗するウクライナ軍が残らないため、ウクライナ軍が享受してきた対優位性が大きく否定される。



ロシア軍の死傷者数

ウクライナ軍はロシア軍の死傷者数を毎日発表している。公式発表の数字は個別に検証されたものではない。


しかし、西側情報機関の評価と独立した報道は、ウクライナが主張する死傷者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したのを目視で確認しており、英国国防省が再確認している。


ウクライナの主張の多くにも、同様の独立した検証が存在する。米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプターを含むあらゆるタイプの戦闘車両を失ったことを認めたばかりだ。


さらに、西側情報機関を引用した報告によると、ロシア軍はこれまで最大2万人の戦死者を出しているという。現場にいないと正確な数字を確認するのは難しいが、西側の公式数字はウクライナ発表とかなり近い。


金曜日時点で、ウクライナ国防省は以下のロシア軍損害を主張している。

  • 戦死31,900人(負傷者・捕虜は約3倍)。

  • 装甲兵員輸送車3,450台を破壊

  • その他車両および燃料タンク2,438

  • 戦車1,409

  • 大砲712

  • 戦術的無人航空機システム 572

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 212

  • 多連装ロケットシステム(MLRS)222

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター178

  • 巡航ミサイル125をウクライナ防空隊が撃墜

  • 対空砲台97

  • 架橋装置などの特殊装備プラットフォーム54

  • ボートおよびカッター13

  • 移動式弾道ミサイルシステム「イスカンダル」4


ドンバス地方での継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者発生は大幅減少している。このことは、2つを示唆する。1つ目は、ロシア軍指揮官が攻撃作戦に慎重になっている、2つ目は、ウクライナ軍が戦闘力や弾薬を使い果たしつつあることだ。最近の現地からの報告では、ともに事実であり、戦いの疲労が双方に深まってきていることがうかがえる。


ウクライナ軍はセベロドネツク周辺からの撤退に重点を置いており、これもロシア軍の死傷率が鈍化している理由かもしれない。

 ここ数週間、ロシア軍の死傷者が最も多かったのは、スロビャンスク、クリビイリヒ、ザポリジャー地区で、各地での激戦を反映していた。日が経つにつれ、激しい戦闘はスロビャンスクの南東、ウクライナの重要な町セベロドネツク、ライマン周辺のバフムト方面に移った。

 ここ数日でウクライナ軍の反攻により、最も多くの犠牲者が出た場所は、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるザポリジャとなっており、再び西に移動している。金曜日、ウクライナ軍がセベロドネツク近郊で最大の死傷者を出したのは同地域での激しい戦闘を反映している。


ロシア軍が東部で再攻撃している目的は、ドネツク、ルハンスクの親ロシア派地域を完全に支配し、各地域と占領中のクリミアの間に陸上回廊を作り維持するためと表明している。■



Your daily tactical update on Ukraine (June 10) - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | June 10, 2022


Stavros Atlamazoglou

Greek Army veteran (National service with 575th Marines Battalion and Army HQ). Johns Hopkins University. You will usually find him on the top of a mountain admiring the view and wondering how he got there.

Follow Stavros Atlamazoglou:


イスラエルがF-35アディールの攻撃半径を拡大。その方法は。イラン攻撃の準備が進んでいるようだ。

 

 


直近の報道では、IAFのF-35が無給油でイラン攻撃可能に強化され、新兵器を搭載したとある。

 

スラエルメディア報道によると、F-35Iアディールの航続距離が延長され、空中給油なしでイランを攻撃できる航続距離を確保したとある。F-35の内部搭載用に新開発された国産スマート爆弾とあわせて発表された。イスラエル空軍の長距離攻撃能力のアップグレードは、イスラエル指導部がテヘランの核開発計画に強硬姿勢を強める一方で、イラン空爆のリハーサルとされる演習を実施する中で行われた。

 昨日付のエルサレム・ポスト紙によると、イスラエル空軍の「新能力」は、7機しかないボーイング707タンカーによる給油なしで、F-35でイラン内陸部を攻撃できるようになったことである。老朽化タンカーへの依存をなくすだけでなく、タンカー支援を必要としないF-35の攻撃パッケージは、柔軟で生存率が高くなったと言える。さらに、紛争空域や周辺部で、給油機の生存能力が懸念されている。イスラエルは現在、近代的なKC-46への交替を加速させている。

 

イスラエル空軍のボーイング707改装タンカーがF-15に空中給油している Yonatan Zalk/Israeli Air Force

 

 ステルス機の航続距離をどのように伸ばしたのかは不明だが、ドロップタンクで外部燃料を追加したのだろう。この場合、レーダーへの影響が大きくなるが、イラン領空に入る前にパイロンと一緒に投棄できる。もう一つの選択肢は、コンフォーマルでフラッシュマウントされた燃料タンクで、ステルス性と性能への影響を軽減できるが、大幅な形状変更や機体改造を伴う可能性もある。この種のタンクの統合とクリアランスは、同機の高度なまでの低観測モールドラインを犠牲にするため、複雑かつ非常に時間のかかるプロセスになる可能性がある。このデータが、同機の生存率の鍵を握る。

 共用打撃戦闘機に外部燃料タンクを統合する構想は、前からある。2019年にThe War Zoneは、ロッキード・マーティンが航続距離延長研究の一環で、主翼の下に600ガロンのドロップタンク2基を追加する検討をしていると報じた。この場合も、ステルス特性に影響を与えるが、総燃料容量は約40パーセント増加する。それ以前にも、480ガロンと460ガロン小型タンク追加の研究があった。

 

480ガロン落下タンクの外形図(左)と460ガロンタンク(右)。ロッキード・マーティンがJSF用に認証を受けようとしたのは右。. AIAA

 

 

 F-35機内にはハードポイントがあり、燃料タンク搭載が可能であり、イスラエル仕様のF-35Iを含め、この機能の導入は難しくない。

 ロッキード・マーティン広報担当は当時、Aviation Week誌に「当社はF-35の各顧客と航続距離延長を以前から話し合ってきた」と述べていた。「航続距離延長はミッションのプロファイルに依存するが、当社の研究では距離と滞空時間、つまりミッションの持続性の両方が大幅に向上することを示している」。

 基本型のF-35A、そしておそらくF-35Iは、現在公表の無給油戦闘半径は650海里強だ。つまり、IAFの戦闘機がイラン国境を越え標的に到達するのは不可能で、しかもこれは最短距離で侵入した場合の話だ。

 

650海里とされるF-35Aの無休油戦闘半径ではイラン国内標的の空爆には不十分だ. Google Earth

 

 注目すべきは、イスラエルが、ロッキード・マーチンでF-35の航続距離延長で重要な推進力になってきたことだ。イスラエル企業は、F-35のドロップタンクやコンフォーマル・タンク開発に携わっており、一部の作業はロッキード・マーチンに頼らず実施できた可能性もある。

 Aviation Week誌によると、イスラエル航空宇宙産業(IAI)とElbit Systemsの子会社Cycloneは、F-35I用コンフォーマルタンクと600ガロンドロップタンクの双方に取り組んできたという。いずれか、または類似のものが、IAFの作戦コンセプトの一部となる可能性がある。

 興味深いことに、アメリカ空軍のF-22のアップグレード案にも「低抗力タンクとパイロン」が含まれており、IAFがF-35で採用したソリューションと共通点がありそうだ。航空機のレーダー断面積にほとんど影響を与えない継手を使用し、パイロンとタンクを一緒に投下させる。

 また、米国海兵隊のMarine Air Plan 2022では、F-35B(およびF-35C)用の外部タンクの開発が提案されている。この構想は、イスラエル用に開発されたタンクと共通するところが多いかもしれない。

 また、ロッキード・マーチンが海外バイヤーと共同でF-35改良型を開発し、数千万ドル相当のエンジニアリング・サポート業務を行うとの謎の発表もあった。カナダ向けの給油プローブ付きF-35Aの可能性があるが、IA向けのの燃料キャリッジ強化もあり得る。

 F-35Iのパワープラント、さらにはソフトウェアの調整も、航続距離延長構想の一部の可能性がある。

 射程距離延長とあわせ、エルサレム・ポスト紙は、イスラエルがF-35に新採用した「1トン爆弾」にも言及している。これは、米国製のレーザー誘導爆弾GBU-24 PavewayやGBU-31 Joint Direct Attack Munitionと同じクラスとなる。GBU-31と同様に、Rafael Advanced Weapons Systemsが開発した新兵器は、F-35のレーダー探知特性に影響を与えないよう内部搭載できる。

 F-35に「最近統合された」とされるこの新兵器は、同紙によれば、「自律的かつ、ジャミングや電子戦システムから保護されている」 とある。しかし、誘導方式、スタンドオフ射程距離を確保できるのかなどは不明だ。また、IAFがこの兵器を最近テストし、結果をベニー・ガンツ Benny Gantz国防大臣と共有したことも紹介されている。

 イスラエルのF-35に搭載される予定の兵器には、ラファエルの精密誘導爆弾SPICEが含まれるが、空対空ミサイルやその他の兵器も含まれそうだ。新兵器は、2000ポンドのSPICE2000を機内搭載用に改良したものである可能性がある。

 

SPICE 2000 を搭載したF-16Cをイスラエルは2021年夏のガザ回廊での戦闘に投入した。Israeli Air Force

 

 イスラエルは2018年5月、同機を攻撃作戦に使用する初のオペレーターとなったと発表し、それ以降、イラン無人機の撃退でも成功を記録している。

 F-35I型への新機能追加については、2020年に同国に到着したステルス戦闘機がユニークな装備の試験型となったことが後押ししている。この単独仕様機は、武器の試験、エイビオニクス統合、機体の改造と試験など、イスラエル固有の装備を搭載する役割を担う。そのため、この機体はラファエル製の新兵器の射程延長改造とクリアランスの両方で重要な役割を果たしたと思われる。

 イスラエルは、特注テスト機だけでなく、F-35Iの基本的なミッション・ソフトウェアに独自の変更や追加を行い、ALIS(Autonomic Logistics Information System)に依存せず機体を運用する特別な取り決めもロッキード・マーチンと交わしている。これにより、新型燃料タンクや兵器を追加する作業もかなり容易になるはずだ。

 

テスト用のF-35I。うしろにF-15Iが見えるAmit Agronov/Israeli Air Force

 

 長距離飛行可能なF-35と新型精密兵器の機内搭載を合わせると、エルサレム・ポスト紙は「イラン攻撃の軍事計画を劇的にアップグレードする」と歓迎している。

 しかし、この計画は実用レベルでも試されているようで、IAFは先月、イラン攻撃を想定した大規模な訓練を4回以上も実施したと伝えられている。

 同紙によると、「炎の車」と総称される訓練では、最初の訓練は、イランのレーダーなど統合防空網を打ち負かすことに焦点を当てたという。特に、F-35Iは、センサー群、ネットワーク機能、特にステルス性能に助けられ、戦時中に重要な役割を果たす期待がある。

 演習2回目では、イラン国内の核施設を含む重要インフラを攻撃するため必要となる長距離作戦を実施した。地中海上空で米空軍タンカーがIAF機を支援中という誤報が出たのは、この演習が原因だった可能性がある。

 テストでは、イランの電子戦システムやサイバー兵器に対する防御も含まれていたようで、イスラエルが同国に空爆を行おうとする場合、既存の防空システム以上の各種脅威に直面すると予想される状況を反映している。

 また、イスラエルの匿名防衛関係者はエルサレム・ポスト紙に、イランの核開発能力に対し実施可能性のある作戦には、「各種距離の複数目標」が含まれると語っている。

 「炎の車」作戦には、第4世代のF-15とF-16戦闘機も含まれ、いずれもIAFの戦闘作戦で広く使用されている機種だ。実際、F-35Iの最新開発状況は、F-15Iに相当する長距離攻撃実施能力をIAFが強く望んでいることを示唆している。また、アドバンスト・イーグルの増備計画にも影響を与える可能性がある。

 イラン、特に核能力を標的とした新たな焦点の背景には、テヘランに従来より強硬な姿勢を示唆するイスラエル政府高官の一連の声明がある。

 今週初め、イスラエルのナフタリ・ベネットNaftali Bennett首相は、「テロと不安定のタコ」と表現したイランにむけた政策の変更を振り返った。

 ベネット首相は、イスラエル国防軍は現在、「足だけでなく、頭に対して行動する」ようになっていると述べた。この比喩では、タコの頭はテヘランの指導層を指している。しかし、首相がイラン体制を不安定にするための進行中の取り組み、将来の潜在的な作戦計画、あるいはその両方の組み合わせを示唆したのかどうかは不明である。

 イランが核兵器製造に必要な濃縮ウランを増産しているため懸念が増している。ベネット首相は、イランが純度60%以上のウラン濃縮に成功する可能性を指摘し、「イスラエルはこの状況は受け入れられないし、受け入れるつもりもない」と述べた。兵器用ウランには約90%の純度が必要だ。

 同時にテヘランは、核活動監視に使われていた計27台のカメラを撤去し、国連査察団の業務を困難にすることに躍起になっているようだ。国連は、この動きがイランとの核取引再開に向けた努力に「致命的な打撃」を与えかねないと警告した。一方、ドイツ情報筋によると、イランは不正な核開発計画に使える技術を獲得するため努力しているようだ。

 イスラエル軍、特に現地開発の武器や能力を取り巻く機密性の高さから、F-35Iの新兵器や航続距離延長に行われたらしい改造について詳しく知るには時間がかかりそうだ。しかし、イランの核開発問題が深刻化し、IAFでF-35が定着しつつある今、IAFにおけるステルス機の重要性、とりわけ長距離攻撃能力は高まる一方といえよう。■

 

Israel Has Extended The Range Of Its F-35s: Report | The Drive

 

BYTHOMAS NEWDICK

JUN 9, 2022 5:04 PM

THE WAR ZONE


2022年6月10日金曜日

テヘランで軍人、兵器科学者が謎の死、イスラエル=イラン間の緊張が高まっている

 Iranian flag (R) next to the Israeli flag (L)

Iranian flag (R) next to the Israeli flag (L) Getty Images

  • テヘランで軍人と兵器科学者が不可解な死を遂げた

  • イスラエルは、イラン秘密部隊「840部隊」への「警告」とし、別の高官の暗殺を認めた

  • 今回の殺害でイラン=イスラエルの緊張が高まっている


ヘランで軍人と兵器科学者がそれぞれ謎の死を遂げ、イランとイスラエル間の緊張が高まっている。



 アリ・エスメルザデAli Esmaelzadeh大佐は未確認の状況で金曜日死亡した。ニューヨーク・タイムズは、各種情報筋から暗殺か自殺、または事故と報じた。

 エスマエルザデの死は、同じ部隊の高官であるサヤド・ホダエイ大佐Sayad Khodaeiがテヘランの自宅前で車から射撃され、その後死亡した事件からちょうど1週間後だった。

 ニューヨーク・タイムズは、イスラエルが米国当局にホダエイ殺害の責任を認める通知をしてきたと報じた。

 しかし同紙は、イスラエル高官2名が、エスメルザデ殺害への国家の関与を否定したとも報じている。

 エスマエルザデもホダエイも、ドナルド・トランプ大統領がテロ組織のレッテルを貼った「イスラム革命防衛隊(IRGC)840部隊」の将校だった。ニューヨーク・タイムズによると、同隊は海外で外国人の殺害ミッションを実行しているとイスラエルは主張している。

 同紙はまた、ホダエイ暗殺は、840部隊の活動を停止させる警告だとイスラエル側が米政府高官に伝えてきたと報じている。

 ホダエイの死を受け、革命防衛隊司令官ホセイン・サラミ将軍Hossein Salamiは、月曜日の演説で、「敵の悪行は何一つ見逃さない」"と述べた。

 イランの国営タスニム通信は、ホダエイの死に関するイスラム革命防衛隊声明を伝え、IRGC報道官ラメザン・シャリフRamezan Sharif将軍は、「世界各地のシオニズムに属する凶悪犯とテロ集団の残党の犯罪行為に罰を与える」と述べている。

 ロイター通信によると、この緊張の中、イスラエルは月曜日、イランが暗殺への復讐を企てている可能性があるとして、市民にトルコ渡航を控えるよう警告した。

 タイムズ・オブ・イスラエル紙によると、これらの人物の死と同時に、ミサイルや無人機の開発に携わっていたイランの航空宇宙エンジニア、アヨブ・エンテザリAyoob Entezariがテヘランで謎の死を遂げたとある。

 イスラエルの新聞Haaretzは、土曜日のイランのウェブサイト報道を引用し、エンテザリは食中毒で死亡したと考えられると書いた。

 この前にテヘラン近郊の軍事基地が無人機で攻撃され、イラン人技師1名が死亡、もう一人が負傷したとするニューヨーク・タイムズ報道があった。


イスラエルとイランの緊張

ユダヤ国家とイスラム共和国間の敵意は、イスラエル・パレスチナ紛争でイランはイスラエルの「がん腫」を取り除くためパレスチナのインティファーダを提唱したことや、イランは反論するがイランが核兵器を製造しているというイスラエルの信念など複数の地政学的要因により煽られている。

 2021年11月、イスラエル政府高官は、イランの核兵器開発を阻止するため、イランとの潜在的な紛争に備えるとしている。イスラエルのヤイル・ラピドYair Lapid外相は、「テロ政権が核兵器の取得をすれば、こちらは行動しなければならない」と述べた。

 石油も両国の争点の一つだ。イスラエルは2021年、シリアに向かうイランの石油タンカー少なくとも12隻を攻撃した。タンカーは米国と国際社会による制裁への違反と報じられた。

 2021年、イスラエルはイランが 「環境テロ 」行為として意図的に石油流出を画策したと非難した。流出事故で、イスラエルの地中海沿岸120マイルの90%がおよそ1000トンの黒いタールで覆われてしまった。■



Iranian scientist and a senior military officer found dead in mysterious circumstances amid a new wave of tension between Iran and Israel

Bethany Dawson Jun 5, 2022