2023年3月14日火曜日

地球低周回軌道の衛星群を機能停止させる大気圏外核爆発オプションの実施に北朝鮮が踏み切る日....シミュレーションでわかった課題

 



北朝鮮の核爆発に米国がどう対応できるか...宇宙での対応にウォーゲームが疑問を投げかけている




年の夏、核不拡散政策教育センター(NPEC)は、北朝鮮が地球周回衛星を破壊するため低軌道または近傍宇宙で核兵器を使用する可能性に焦点を当てた宇宙ウォーゲームを開催した。当初、参加者はこの可能性を少しファンタスティックだと感じていた。しかし、ゲーム中盤になると、参加者理解をできるようになった。中国がこのオプションを行使する可能性を示唆する人もいた。

 これは予見的であった。NPECのシミュレーション終了から12週間後、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、人民解放軍の北西核技術研究所が、スターリンクのような両用衛星コンステレーションを破壊する核攻撃シミュレーションを行ったと報じた。このコンピュータによる模擬攻撃の目的は、台湾が軍事的に有用な商用システムを利用するのを阻止することだという。記事は、限定的核実験禁止条約が宇宙や大気圏での核兵器の爆発を禁止していることを指摘している。しかし、中国も北朝鮮もこの条約に加盟していない。また、米国も中国も包括的核実験禁止条約をまだ批准していない。

 サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事以降、北京では航空機を使った近接空間での作戦を試みており、ワシントンとの関係はぎくしゃくし、近接空間での作戦に対する中国の攻撃戦略に対する懸念が高まっている。

 昨夏のNPECのウォーゲームは、それほど突飛なことではない。このシミュレーションの戦争が行われる10年後までには、何万という小型の商用ネットワーク衛星システムが地球低軌道を飛行していることだろう。これらの衛星は、低軌道、中軌道、静止軌道を飛行する国家安全保障システムを含む米国国防総省独自の宇宙アーキテクチャを補完することになる。北朝鮮のような敵対的な国家は、この衛星を危険にさらしたいと思っているはずだ。

最悪の場合、どのようなことが考えられるだろううか。地球低軌道上の衛星のほとんどを消し去ることができる。なぜ、ここまで極端なことを考えるのか。軍事計画者や政策立案者は、最悪の事態を回避し、それ以下の脅威に対処するために、しばしば悲惨な仮説に焦点を当てる。例えば、大規模な核戦争、地球温暖化の大惨事、パンデミックなどだ。米国の宇宙政策立案者は、間違いなく、ここまで組織的な災害をまだ想定していない。


ウォーゲームが対象としたもの

NPECが企画した戦争ゲームは、2029年の春に始まる。北朝鮮が大陸間弾道ミサイルの発射実験を行い、不注意で意図したより遠くに飛んでしまったため、アラスカにある米国のミサイル防衛が作動してしまう。しかし、米国は北朝鮮に対し、移動式ミサイル部隊を駐留させ、さらなる挑発を回避するための誠意ある努力を示すよう要求する。ワシントンは北朝鮮付近の偵察飛行を命じ、その後、国連に北朝鮮の選択的封鎖を承認するよう要請し、米戦略軍をデフコン3状態に置く。

 北朝鮮はアメリカの要求を拒否し、動員を開始し、アメリカが警戒態勢を解除せず、韓国(朝鮮)からの撤収日程を決めないなら、戦争になるとワシントンに警告する。緊張は高まり続ける。そして6月初旬、北朝鮮は衛星を軌道に打ち上げ、米韓が手を引かなければ宇宙で核爆発を起こす可能性があると警告する。ワシントンは、中国が北朝鮮に圧力をかけて譲歩させることを期待し、北京に連絡する。中国当局は、北朝鮮がいかなる条約にも違反していないことを指摘し、平壌と直接交渉するようワシントンに助言する。米国は平壌に対する制裁決議案を持って国連安全保障理事会に臨む。ロシアと中国はその承認を阻止する。

 この危機の間、米国当局は北朝鮮の衛星が核を搭載しているかを判断しようとしたが、判断できなかった。2029年6月中旬、北朝鮮は別の衛星を北太平洋の上空に打ち上げる。軌道に乗る前に爆発し、10~20キロトンの核エネルギーが地球低軌道に放出される。爆発を目前にしたすべての衛星は、ただちに使用不能となる。米国の宇宙専門家は、地球低軌道にある世界中の衛星が数日から数週間のうちに使用不能になると予測している。爆発直後、北朝鮮は韓国に侵攻する。

 このような危機に対して、米国と宇宙に近い同盟国がどのように対処するかが、各手順で注目された。その結果、4つの収穫があった。

1. 宇宙戦争は宇宙空間にとどまり、国際的な制限によって宇宙空間での敵対行為を防ぐことができるという一般的な考え方は、間違いでもある

外交官は、十分な交通ルール、規範、外交的シグナルがあれば、宇宙での最悪の事態-軍事戦闘-は避けられると期待している。しかし、外交的な制限によって宇宙での敵対的な軍事行動を防ぐことができるとの強い信念は、私たちが持つ宇宙関連の法律や規制の曖昧さにより裏切られているのです。この点で、米国チームは北朝鮮の核爆発が宇宙条約(OST)に違反すると主張した。しかし、中国は、米国防総省の法律専門家と同様に、「核兵器が明らかに軌道上または『ステーション』にあるときに爆発したことが証明されない限り、不正行為は成立しないかもしれない」と反対した。実際、OSTの下では、核弾頭が少なくとも地球を1周しない限り、国家は合法的にミサイルで核兵器を宇宙空間に投入し、爆発させることができる。

 しかし、軌道上の宇宙船が核弾頭を搭載しているかどうかを確認する簡単な方法はほとんどなく、OSTの「宇宙への核兵器の設置」や「爆発」の禁止を、爆発によって条約が破られるまで強制する簡単な方法もない。また、北朝鮮が明らかに戦争状態にあるときに爆発させた場合は、OSTの規定が適用されない可能性がある。このことから、宇宙外交の最初の課題は、敵対する国家との間にどのような不一致が生じるかを明確にすることであり、不一致が生じないと主張したり、条約交渉によって「修正」することではないことがわかる。

 何十年もの間、米国とその同盟国は、違反すると結果が生じる明確なルールを確立しようとしてきた。望ましいことではあるが、多くの重要な事例において、これはまだ達成されていない。NPECが以前行った中国宇宙ゲームでも、この点に苦慮し、自己強制できるルールだけが有用であろうという結論に達した。残念ながら、今回のゲームでは、そうでないことを示唆するものはなかった。宇宙での戦闘を抑止し、少なくとも地上での紛争を防ぐことができる、というタカ派的な希望については、このゲームでは結論が出なかった。 同時に、宇宙での「戦闘」行為を避けることで、何らかの形で私たちを守ることができるという希望も、信用されないものとなった。


2. 宇宙での核爆発に対応するため、衛星の強化やコンステレーション再構築のオプションを開発すればヘッジになるが、そのようなオプションを確保するために何をすべきかは明白ではない。

高高度核爆発が発生した場合、自国の衛星コンステレーションを再構築する競争が起こるであろうことは、このゲームプレイヤー全員が同意していた。また、衛星やロケットなど、何をどのように再建するかについても、特定の材料や衛星、ロケットなどの備蓄、製造や動員基地の増強など、大きな合意があった。しかし、衛星の寿命が限られる早い時期に、あるいはヴァン・アレン帯の放射線量が低下し、新たに投入される衛星の生存期間が長くなった後に、どのようなタイミングで再構成を行うかについては、合意や検討はあまりなされていなかった。また、地球低軌道上、中軌道、静止軌道上、あるいは宇宙空間以外の地上・近地上の代替システム(高高度ドローンや気球、海底通信ケーブル、地上ナビゲーションシステムなど)のどこに、衛星再建の努力を集中させるかについても合意が得られていない。

 また、このような再構成競争において、中国と米国のどちらが勝つのか、その理由は不明であった。米国とその同盟国は、中国よりも打ち上げ、衛星インフラ、技術でリードし、動員基盤も大きいという見方もあった。また、「中国に軍配が上がる」という意見もあった。このゲームでは、もう一つの再構成の問題が発生した。多くのプレイヤーは、2029年にロシアのソユーズ・カプセルがアメリカの宇宙ステーションで利用できると考えていた。しかし、そうではないかもしれない。米国や同盟国の脱出用カプセルを開発することは、政府宇宙ステーション、民間宇宙ステーション、月での運用のいずれにおいても望ましいことである。

 最後に、商業衛星の運用者にどの程度のハードニングを要求すべきかについては意見が分かれた。ある人は、商業宇宙企業に要求するのは無意味で、もしアメリカ政府が要求すれば、これらの企業は単に海外に行ってしまうだろうと言った。また、衛星が地球低軌道にあり、デブリに近く、強い太陽嵐や放射線に対応できるかなど、実行されるリスクに比例してハードニングを行うべきだという意見もあった。また、商業衛星が政府サービスを提供するのであれば、政府との契約は、一定の硬化要件を満たすことを条件とにできると主張する人もいた。さらに、その強化策の費用を政府が負担すべきだと言う人もいた。また、地球周回衛星は、米国や同盟国の安全保障や繁栄にとって、最終的にはそれほど重要ではないとの見解もあった。また、そうでない人もいた。

 はっきりしているのは、今回のような危機が起こる前に、政府はこうした意見の対立を解決するためもっと努力すべきだということだ。


3. 地球低軌道システムへの核攻撃をヘッジするため、米国と同盟国は、他の宇宙軌道と地球上および地球近傍の両方で代替手段を開発すべきだ。

大きな変更を加えることなく、またコストを劇的に増加させることなく、複数の異なる軌道で運用できる宇宙システムを考案することは、ゲームで提起される脅威に対処する上で極めて有用である。このようなシステムは、米国と同盟国にとって、核と非核の両方の脅威に対する宇宙システムの回復力をはるかに高めることができる。また、このようなシステムは、「最適」なコンステレーションを決定する上で、より大きな運用の柔軟性を可能にする。最後に、このようなシステムによって、再構成の取り組みがより迅速に、そしておそらくより安価に行えるようになる。

 一方、地球上および地球近傍では、陸海ケーブル通信システム、地上航行補助装置、高高度気球、ドローン、その他の非宇宙プラットフォームと組み合わせた代替画像システムの開発を強化することが有効であろう。これらの陸上・空中システムは、地球低軌道の宇宙システムが使えなくなった場合のつなぎとして有用である。これらの代替システムを開発する際には、受動的・能動的に防御する方法を開発することが有用である。


4. 宇宙空間における核兵器の存在はどの程度確認できるのか、また、宇宙空間や近傍空間での核爆発に対してどの程度の割合で軍事行動をとることができるかという2つの大きな未知数については、解明する価値がある

 アメリカが宇宙空間で核兵器の搭載を確認する能力については、かなりの議論があった。ある人はいずれ可能になるだろうと考え、またある人は懐疑的であった。また、核兵器搭載物を無力化する宇宙システムとともに、そのような検査システムが多数軌道上に常時存在していても、すぐに十分な距離まで近づくことができるのか、疑問視する声もあった。

 真実がどうであれ、何が可能かを見極めることは、危機が起こる前に合理的な期待を抱かせるため重要だ。このような困難な検出ミッションに多大な時間と資金を費やすことは、常に魅力的だ。しかし、この場合、技術的にも軍事的にも、そのような修正が不可能であることを前提に設計する方が、より理にかなっているかもしれない。

 さらに、このゲームで明らかになったもう一つの間違った思い込みは、宇宙での核爆発に対して、効果的で比例した軍事的な反撃オプションがすぐに利用できるというものだった。ゲームではそうではなかったが、現実でも、おそらくそうではないだろう。また、そのような選択肢が今後もあるかも不明である。 しかし、この「予感」は評価する必要がある。

 繰り返しになるが、このゲームとその結果を「異常値」と断じる人もいるかもしれない。しかし、アメリカやその同盟国が、軍事や商業の任務を遂行するために、地球低軌道衛星への依存度を高めている以上、そうすることは間違だろう。敵が衛星を危険にさらす新たな方法を開発すれば、それは致命的となりかねない。■


Pyongyang Goes Nuclear—This Time in Space | The National Interest

by Henry Sokolski

March 7, 2023  Topic: North Korea  Region: East Asia  Blog Brand: Korea Watch  Tags: North KoreaDPRKUnited StatesChinaNuclearWar Game


Henry Sokolski, executive director of the Nonproliferation Policy Education Center, served as deputy for nonproliferation in the Defense Department and is the author of Underestimated: Our Not So Peaceful Nuclear Future (2019).

Image: Maxal Tamor/Shutterstock.


米空軍のF-15EXイーグルIIの調達機数が上方修正。それでも104機にすぎない....

 

(U.S Air Force photo by 1st Lt Savanah Bray)

米空軍は、F-15EXイーグルIIの調達方針を軌道修正し、最新の予算で24機追加導入する

軍の2024会計年度予算案には、F-15EXイーグルII戦闘機を24機追加購入する要求が含まれている。これにより、計画規模は合計で104機調達となる。昨年、空軍はイーグルIIを80機だけ購入することを提案し、少なくとも144機という当初の計画から縮小していた。本誌は最近、F-15EXがわずか80機では実用上ほとんど意味がないと強調した。

F-15EXイーグルIIが104機あれば、航空州兵(ANG)部隊のF-15C/Dの代替が可能となる。現在、カリフォーニア州、オレゴン州、ルイジアナ州、マサチューセッツ州のANGには、各イーグル1個飛行隊が配備されています。これらの部隊は、48州への海のアプローチを保護する非常に重要な任務を担う。また、オレゴンANGには、F-15EXコミュニティの訓練部隊がある。

F-15機材がそろった。左からF-15C Eagle、F-15E Strike Eagle、F-15EX Eagle II。アメリカ空軍

空軍は現在、F-15C/Dイーグルの全機種を処分した不足分を、F-35A統合打撃戦闘機の購入で補填すると表明している。空軍はすでに、イギリスの前方展開の現役部隊に配属されていたイーグルをF-35Aで代替する動きを見せている。日本では、F-22ラプターを含むジェット機のローテーション配備により、イーグル飛行隊2個が閉鎖された。また、ウェポンスクールにおけるF-15C/D活動も停止させる方向で動いている。

フロリダ州空軍もF-15C/DからF-35Aへの移行を進めているが、他のANGイーグル飛行隊がF-15EXを導入しているのを見ると、不可解な動きだ。

同時に、F-15C/Dの正式な売却も継続されている。今回のF-15C/Dフリートの最終的な公式引き離しに先立ち、空軍は現役部隊とANG部隊を含め、全軍で約220機のF-15C/Dを供用していた。2023年度予算案では67機の売却を要求しており、F-15C/Dが徐々に縮小する中でも減少する。

2024年度予算案では、空軍はF-15C/Dの継続的な退役計画の一環として、さらに57機のF-15C/Dの売却を要求している。

米軍の年間予算で最終決定権を有する議会が、2024年度あるいは将来的に、空軍にF-15EXの追加取得を強制することを決定する可能性は常にある。議員たちは、軍用機等の削減案を阻止したり、軍が要求する以上の追加資金を追加してきた長い実績がある。しかし、前述のように、議員たちは昨年、空軍が示した大幅に切り捨てたイーグルII調達計画を真っ向から変更しなかった。

F-15C/D部隊での不確実性は、現時点で解決されたように見えるが、まだ未知数が残る。まず、ペンタゴンが言うように、嘉手納基地が本当にF-35を手に入れるかどうかだ。何よりも、104機規模は80機よりはましだが、それでも驚くほど小さい。特に、空軍は戦力構成を減らすことに重点を置いており、海外の脅威が高まる中、予算を重ねるごとに戦術的航空戦闘の全体量を縮小しているため、このような事態になる。

とはいえ、少なくとも空軍のF-15EXの最終目標機数が明確になったわけだ。■


F-15EX Eagle II Total Buy Increases From 80 To 104 In New USAF Budget

BYJOSEPH TREVITHICK|PUBLISHED MAR 13, 2023 1:30 PM

THE WAR ZONE



2023年3月13日月曜日

ウクライナにブラックホークヘリが突如登場した背景について....

 

ウクライナ国防省情報本部


ウクライナ軍国防情報局に元米軍のUH-60Aらしき機体が登場した




クライナ軍は、S-70/H-60ブラックホークシリーズのヘリコプターの最初の機体を受領したようだ。同機は、ロシアとの戦争において、国境を越えたヘリコプター襲撃など、数々の大胆なミッションを指揮してきたウクライナ国防情報局の航空部門に配備されたようだ。ブラックホークは、ウクライナにこれまで寄贈された機体より近代的で、今後の納入に道を開く可能性もある。

 ウクライナ国防省情報本部が本日ウェブサイトに掲載した記事には、格納庫にあるブラックホークヘリコプターの写真が2枚掲載されている。1枚は、2人組の武装ヘリ隊員が機体の前でポーズをとる写真。もう1枚は、ブラックホークがウクライナのMi-24ハインドと一緒に写っており、こちらもクルー2名と4名の特殊作戦部隊らしき隊員が写っている。



ウクライナ某所の格納庫で、新たに確認されたブラックホークとMi-24、情報本部の兵士たち。 Main Directorate of Intelligence of the Ministry of Defense of Ukraine


添付文章を機械翻訳すると、次のようになった。「ウクライナの国防情報航空は、我が国の防衛の最前線で働き続けている。偵察機のパイロットは別の戦闘任務から戻ったばかりで、戦闘用ヘリコプターは情報本部の特殊部隊の能力と特殊作戦の有効性を大幅に向上させる。情報主管庁のパイロットは、戦線のあらゆる地域で敵を撃破し続けている。」

 明示されていないが、この文言は、ブラックホークとMi-24が、長官直属部隊に新たに加わったことを示唆している。過去には、ウクライナ軍のヘリ(主にソ連・ロシア製のMi-8とMi-17ヒップ)を臨時使用していたことが判明している。航空資産を持つことが大きな利点になるのは明らかだ。


ウクライナのMi-8 Hip。後部クラムシェルドアが取り外されており、情報局ミッションで飛行したものと同じ。 Ukraine MoD



 写っているブラックホークの塗装は、グロスブラックにブルーとシルバーのチートラインが胴体下部とエンジンハウジングの上部に入る独特のもので、ウクライナの丸マークと国旗も描かれている。

 この塗装は、米国アラバマ州ガンタースビルに本社を置くエース・エアロノーティクスAce Aeronautics, LLCが過去に運用したUH-60Aと類似しているように見える。エースエアロノーティクスは、S-70/H-60ファミリーを含むエイビオニクスのアップグレードを中心に、実験飛行試験、訓練、メンテナンス、修理、オーバーホール(MRO)などのサービスを提供している。

 このうち同社のUH-60Aは、同社ウェブサイトや下のビデオに登場する、ウクライナ機とほぼ一致する。過去には米国の民間登録番号N60FWで運用されており、連邦航空局によれば、同番号はまだ有効とある。「ブルー」の愛称で親しまれる同機は、かつてアメリカ陸軍の所属で、シリアルナンバーは80-23455だった。エースは、米軍からUH-60Aを購入し、顧客の仕様に合わせ再塗装や手直しを行った上で販売するサービスを行っている。

 N60FWの経歴を調べると、11ヶ月前まで売りに出されていたが、その後、掲載が削除された。最後の飛行記録は昨年11月28日のジョージア上空で、その時点ではまだエース航空の所有として掲載されていた。ウクライナのヘリコプターの塗装は明らかにN60FWと似ているが、もちろん、これは同じカラーリングで塗装された別の機体の可能性もあり、おそらく、オーダーメイドの再塗装サービスを提供する同社によるものだと思われる。

 エース・エアロノーティクスが過去に入手したUH-60Aには、青ではなく赤のチートラインが入った機体や、黒一色の機体があり、それぞれN60DKとN451VKの登録がある。


エースエアロノーティクス UH-60A N60FWとN60DKが一緒に飛行した。 Ace Aeronautics



 2枚の写真を見る限り、ウクライナ情報局が運用するUH-60Aには、電気光学センサーや武器、自己防護システムなど改造が施されていない。しかし、将来改造が行われば理想的なプラットフォームとなる。実際、エース・エアロノーティクスはN60FWを、胴体片側のスタブパイロンに外付けミニガンシステムと模擬空対地ミサイル2基を搭載し兵器化構成のテストベッドに使用していた。


 ウクライナ軍が受領したブラックホークがN60FWまたはその同系機なら、オリジナルのUH-60Aより多くの改良が加えられている可能性がある。N60FWに搭載されたガーミンG5000Hコックピットはタッチスクリーン操作のフルグラスコックピットで、ウクライナのMi-8やMi-24に見られるアナログ計器よりはるかに高度なものだ。

 N60FWの以前のコンフィギュレーションと比較して、現在確かに欠けているものとして、昨年まで機首下に装備されていたセンサー・ターレットがある。しかし、このタレットマウントはエース・エアロノーティクスが開発したもので、将来的にセンサータレットを取り付けることは十分に容易で、L3Harris WESCAMFLIR Systemsなどエイビオニクスプロバイダーのタレットと互換性がある。

 本誌はエース・エアロノーティクスとウクライナ情報筋に、同ヘリコプターの譲渡の詳細と、それで国防情報局の任務がどう支えられているか問い合わせた。ブラックホーク・シリーズのヘリコプターがウクライナに譲渡された、あるいは譲渡される計画については、これまで報告はない。

 我々は過去に、ロシア領内に潜入して重要な標的を攻撃する特殊作戦部隊「シャーマン大隊」 Shaman Battalion など、ウクライナ国防情報局の活動について幅広く報じてきた。

 シャーマン大隊の1人は、昨年7月の『The War Zone』インタビューで、「本当に重要なのは、優れたヘリコプターパイロットだ」と語っている。「必要なすべての詳細を考慮した、非常に正確で、非常に書き込まれた計画を持っている人たちです。彼らはスーパーパイロットだ。強く、知的で、非常にモチベーションが高い」。


低空飛行中のウクライナのMi-8ヘリコプター。Metin Aktas/Anadolu Agency via Getty Images


 こうしたヘリコプターパイロットの部隊配属は、明らかになっていない。特殊部隊任務の訓練を受けたウクライナ陸軍航空隊の乗員で構成されていたようだが、ブラックホーク、Mi-24の少なくとも各1機は現在ウクライナ情報局所属と思われ、軍から移籍した独自の航空隊員がいるようだ。

 また、アゾフスタル製鉄所への補給に使われた16機のMi-8ヘリコプターを含む情報総局の任務についてもこれまで報告した。情報局長キーロ・ブダノフ准将Brig. Gen. Kyrylo BudanovがThe War Zone独占インタビューで語ったところによれば、ロシア軍の防空網と敵機によりヘリコプターの2機は破壊された。

 ブラックホークは、米陸軍特殊作戦司令部での活躍で知られるように、特殊部隊の支援プラットフォームとして実績がある。中でも「ナイトストーカーズ」として知られる第160特殊作戦航空連隊(SOAR)は、大きく改良されたMH-60Mブラックホークを飛ばしている。

 とはいえブラックホークが1機でも納入されたことは、ウクライナの軍事航空能力にとって大きな進展であることに変わりはない。キーウの同盟国から約40機のヘリコプターが提供されたが、これまではほとんどがソ連時代の機体でMi-8/17やMi-24が中心であった。欧米の軍用ヘリコプターはこれまで、ウクライナ海軍に旧イギリス海軍のシーキングを数機寄贈したのみである。

 ウクライナは西側およびNATO標準の装備を採用したいとしており、ブラックホークは回転翼機近代化で当然の選択肢だ。このクラスで最も広く使用されている西側軍用ヘリコプターS-70/ブラックホークは、軍のストックだけでなく、エース・エアロノーティクスなどサードパーティサプライヤーからも豊富に提供されているし、ヨーロッパをはじめ、世界各地で使用されている。

 そう考えると、ウクライナの格納庫にユニークな塗装のUH-60Aが登場したことは、同国の回転翼機の能力を高め、主にソ連時代の機体を置き換える大規模な取り組みの始まりである可能性がある。少なくとも、ブラックホークがウクライナの国防情報局の主要な機体となることは間違いない。■


UH-60 Black Hawk Unexpectedly Appears In Ukrainian Military Service


BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED FEB 21, 2023 3:01 PM

THE WAR ZONE



2023年3月12日日曜日

ブロック4の前にTR-3改修でF-35の性能はここまで拡大する。1機あたり25百万ドル、合計150億ドルの予定

 

ッキード・マーティンF-35ライトニングII、通称ジョイント・ストライク・ファイターが機密扱いのアップグレードを受ける。改良には、17の新しい武器システム、強力な新型レーダー、電子戦能力の強化、推進力のアップグレードなどが含まれるが、多くは膨大な機密のベールに包まれたままだ。



 F-35は技術的な後退やコスト超過に悩まされ、しばしばプラットフォーム自体に影を落としてきた。しかし今、F-35は新たな機能強化の数々を搭載し、ついに、このプラットフォームに対する批判的な声を黙らせ、データを駆使する空中戦の強豪を生み出すかもしれない...ただし、すべて計画通りに進んだ場合の話だ。

F-35は最も成功したステルス戦闘機だ

f-35 upgrade(U.S. Air Force photo/Senior Airman Christine Groening)


20年以上にわたるF-35プログラムは、長い間、2つの非常に異なるレンズで見られてきた。ある人は、F-35の調達プロセスの大失敗が、F-35そのものを定義するようになり、度重なる技術的な後退、予算超過、機体維持に関わる膨大なコストなどが、この機が戦いにもたらす能力に影を落としていると考える。

 しかし、F-35に搭乗している人たちの話は、まったく違う。彼らはしばしば、F-35を航空戦力の革命にほかならないと喧伝し、多くの外国政府もそれに同意しているようだ。現在、16カ国がF-35の納入を待ち、890機以上が生産されており、F-35はその他第5世代戦闘機(F-22、J-20、Su-57)の合計よりも多く就役している。

 批判勢力は財政的な失敗を強調しているが、共用打撃戦闘機という大失策が生み出した航空機は、客観的には地球上で最も先進的で幅広い能力を持つ戦術戦闘機で、情報、監視、偵察から電子戦、戦域管理まで、各種軍用機の役割を同時に果たすことができる。F-35はしばしば空のクォーターバックと呼ばれ、戦いの最中に司令部レベルの認識と驚くべき生存能力を提供する。

 しかし、今日のF-35がいかに高性能でも、20年以上前のシステム・アーキテクチャの上に構築されているため、先進的とはいえ、今後20年間に出現する課題に追いつけるのか。

 F-35は現在も空で最も先進的な戦闘機かもしれないが、F-35プログラムオフィスは、そうでなくなる日のため計画をすでに立てている。そこで、F-35のテクノロジー・リフレッシュ-3(TR-3)とブロック4のアップグレードが登場する。


テクノロジーリフレッシュ-3で F-35 に新しい頭脳が生まれる

f-35 upgrade


ブロック4アップグレードの前に、コアコンピューティング能力の大幅な刷新が必要だった。今日、F-35は現役戦闘機各種の中で最も先進的な戦闘機であることに変わりはないが、コンピューティングの観点から見ると、F-35の搭載システムには20年以上前のものもあり、2023年時点で最高級とは程遠い。

 しかし、TR-3の取り組みは、今後の大規模なアップグレードで土台作りとも言えるが、実はこの取り組みだけで、戦闘機の能力は飛躍的に向上するのだ。

 ある意味、TR-3は、計算能力とメモリストレージを飛躍的に向上させ、搭載されているほぼすべてのシステムの機能を改善するだけでなく、将来の改良にむけたプロセスを合理化する新しいシステムアーキテクチャとともに、戦闘機の脳移植とみなすことができる。

 「テクノロジー・リフレッシュ3は、F-35の計算機コアを近代化するもので、新しいハードウェアとソフトウェアは、同機の機能に影響を与えます」と、第461飛行試験飛行隊司令官でF-35統合試験軍ディレクターのクリストファー・キャンベル中佐は1月に説明していた。

 TR-3の新しいコンピューティングコアは、現在F-35の処理能力の25倍という驚異的な性能で、請負業者であるL3 Harrisによれば、最終的には他の改良と組み合わせて、驚くべき「37倍の処理能力向上」を達成する。プロセッサーのアップグレードは、レーダー処理、分散開口システム、電子戦スイート、通信、誘導など、搭載システム多数に影響を及ぼすと言われている。この新しいパワーを支えるのは、20倍に増加したデータストレージです。

 F-35のパノラマコクピットディスプレイも大幅にアップグレードされ、ディスプレイ処理能力が5倍に向上し、左右のコクピットディスプレイの「クリティカルディスプレイプロセッサー」が、何らかのシステム障害が発生した場合に冗長性を発揮する。

 先月、Steve TrimbleがAviation Weekで報告したように、これらの新システムは、生産中のブロック15のF-35ですでに組立ラインで生まれているが、来年のブロック16からのTR-3アップグレードに、現行システムの3倍の能力を提供する改良型電子戦プロセッサーも搭載される。さらに2025年から、ブロック17に、敵レーダーやその他の信号伝達の位置を検知して三角測量できる電子戦用レシーバーが20個以上搭載される。現行機はレシーバーを5個しか搭載しておらず、能力が75%増となる。

 しかし、これらのアップグレードは印象的かもしれないが...実はすべて、さらに本質的なアップグレードの下準備に過ぎない。



スーパーライトニング II登場か?


 TR-3アップデートは、関係者間ではブロック4F-35の「ITバックボーン」として知られており、現行機から約75点の主要アップグレードを含む。アップグレードはすべて、長年にわたって親しまれてきたF-35A/B/C各型に組み込まれるが、システム改善と追加機能は非常に劇的で、新型戦闘機を能力の低い兄弟機と区別するため新名称が必要かもしれないとさえ考えられている。

 しかし、ブロック4の内容の多くは謎に包まれたままだ。この取り組みに携わる請負業者は、どのようなシステムが改良されるのかについて一般的な説明は行うものの、具体的内容は語ろうとしない。75点以上のアップグレードがブロック4.1、4.2、4.3といった単位で展開されることは確かで、アップグレードの多くは、すでに存在するハードウェアやアップグレードの初期段階で追加されるハードウェアの能力拡張用のソフトウェア調整に基づくと分かっている。

 また、ブロック4は最も野心的なアップグレードだと統合開発室が説明していることも分かっている。その他、確実な情報を以下お伝えする。


ブロック4は合計17種類の兵装を搭載する

ブロック4アップグレードの大部分は、新たに統合された武器の形で行われる。一部報道で、ジョイント・ストライク・ミサイル、スタンドオフ・レンジで敵の防空を狩るAGM-88G Advanced Anti-Radiation Guided Missile Extended Range (AARGM-ER)、高性能なヨーロッパのメテオ空対空ミサイルなどが含まれる。しかし、新兵器がすべて「キネティック」つまり従来型弾薬ではなく、ブロック4アップグレードには、まだ公開されていない電子戦の新機能も数多く組み込まれそうだ。

 おそらく最も重要なのは、ブロック4がF-35の機内兵装搭載能力の拡張を含むことだ。現在のF-35は、ステルス性を維持しながら最大4点を機内収納し飛行しているが、ブロック4では6点まで増やす。


強力オンボードレーダーと分散型開口システムも導入する


現行型F-35は、ノースロップ・グラマンが開発したAN/APG-81アクティブ電子走査アレイレーダーを搭載し、戦術戦闘機のレーダーシステムの中で最も強力で高性能なものとして広く知られている。このシステムは非常に強力で、地表や空中のターゲットを識別・追跡するだけでなく、飛行中に敵のレーダーアレイを妨害する電子戦アセットとしても活用できる。しかし、AN/APG-85と呼ばれるさらに強力なレーダーアレイに交代する予定だ。

 ノースロップグラマンは、新型レーダーシステムについて、「利用可能な最新技術を取り入れ、航空優勢の確保に役立つ」とだけ述べている。この新型レーダーはGaN(窒化ガリウム)ベースのTRM(送受信モジュール)を活用するのではないかと、多くが推測している。新しいTRMは、電子対抗措置と競合しても、電力伝送と透明度が大幅に向上し、熱管理も優れているため、目標捕捉と電子戦の両方の任務で、より多くの電力を送り込むことができる。

 Aviation WeekでSteve Trimbleが報じたように、新レーダーは、同じ出力と同じサイズのアレイでF-35の目標検出範囲を2倍にする可能性があり、目視範囲を超えた交戦でF-35に際立った優位性を与える。

 国防総省は、「より大きなピクセルのフォーカルプレーンアレイ」と「より高い動作温度」で性能と信頼性を向上させる「次世代」分散アパーチャシステムが、搭載レーダーから得られるデータの大幅な増加に追加されると述べている。このアップグレードはレーダーほど注目されていないが、同じく重要だと考えられる。

 F-35の既存のAN/AAQ-37電気光学分散開口システム(DAS)は、パイロットが機体周囲に取り付けられた赤外線カメラ6台で周辺状況を把握できるだけでなく、赤外線サーチ&トラック(IRST)機能の進化形として、遠距離のステルス敵を熱信号で識別しターゲットにするのも可能だ。F-35が最も高度な敵を前に手強い空対空戦闘機となるのはほぼ間違いない。


電源強化、航続距離拡大、推力増加

(U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Nicolas Myers)

こうした新システムを動かすため、F-35はエンジンのアップグレードが必要だ。このテーマは、GEとF-35の現在のエンジンメーカーであるプラット&ホイットニーのエンジンプロバイダー間の争いに発展している。先週、国防総省はプラット・アンド・ホイットニーとロット17までエンジンを供給し続ける契約をまとめた。これはTR-3の残りの期間にも及び、同社がブロック4の改良型エンジンを供給し続ける最有力候補となりそうだ。

 一方のGEは、次世代戦闘機用に設計された新しいアダプティブサイクルエンジンを提案しており、航続距離、推力、出力が大幅に飛躍するものの、より高いプレミアムが付く。

 プラット&ホイットニーは、既存のF135エンジンの推力を10%向上させ、燃費を5%改善し、航続距離を7%向上させる進化型ECU(Engine Core Upgrade)を提案している。GEは、燃費を25%向上させ、推力を20%向上させ、熱管理を2倍にし、航続距離を35%向上させるXA100アダプティブサイクルエンジンを提案している。

 このアダプティブサイクル・エンジンはF-35に搭載されることになるが、GE提案に従うと、ブロック4の導入に関連するスケジュールとコストが延びる可能性があり、より予算的で控えめな改良のプラット&ホイットニー提案に関係者を向かわせそうだ。


これだけではない…

A list of some F-35 upgrades expected in Block 4.


F-35のブロック4アップグレードは、10年以上の工期で約150億ドルかかると推定されるが、中には、外から見ている私たちが決して知ることのできない、秘密または機密の改良が数多く含まれている。例えば、レーダー誘導ミサイルを混乱させるチャフが、従来型と大きく異なるため、独自の呼称を持つようになったという報告もある。

 ブロック4のF-35アップグレードには、センサーや武器システムなど、他の資産と積極的にネットワーク化し、国防総省が「キル・ウェブ」と呼ぶ効果を作り出す能力の大幅向上も含まれている。F-35のMADL(Multifunction Advanced Datalink)を、NATO戦闘機が使用するリンク16データリンクや、上空の衛星と互換性を持たせるとともに、地域の友軍にライブ映像を直接配信する機能も追加される。

 リストは、意図的に曖昧にされているため、評価するのは難しいが、航空機の能力セットのほぼすべてに何らかの調整、調整、改良が施されてるのは確かだ。改良は非常に広範囲に及び、1機あたり約2500万ドル(平均機体単価の約25%)と言われる。

 しかし、ここまで多額の投資によって、F-35の空対空および空対地戦闘能力は飛躍的に向上し、電子戦とセンサーフュージョンの能力も大幅に向上する。完成すれば、ブロック4のF-35は従来型よりはるかに高性能になり、同機を激しく批判する人々でさえ自分の立場を見直す立場に追いやられそうだ。■


The F-35 is getting a $15 billion upgrade that'll make it a whole new beast - Sandboxx

Alex Hollings | March 8, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.



2023年3月11日土曜日

AUKUS  オーストラリアの原子力潜水艦取得の道筋(の輪郭)が明らかになった。最初は米国より中古艦を導入か。

 

Image: BAE Systems


AUKUSで原子力潜水艦がオーストラリアにやってくる



今週、オーストラリアがAUKUSで、どのような潜水艦を獲得するつもりなのか、詳細がようやく明らかになった。オーストラリア、英国、米国の多くの人々が、オーストラリアの潜水艦部隊、ひいてはオーストラリア海軍(RAN)の戦力態勢を完全に刷新する計画に満足しているようだ。

 オーストラリアは、2030年代に外国製の原子力潜水艦の導入を開始し、最終的には世界最高水準の攻撃型潜水艦を国内建造する目論見だ。


AUKUS


2021年夏に発表されたAUKUS協定(オーストラリア、英国、米国)は、前例のない規模の技術移転を約束した。数十年かけて、オーストラリアは原子力攻撃型潜水艦本体だけでなく、国内建造する能力も受け取ることになる。

 超長期的には、シドニー、ワシントン、ロンドンを結び、西太平洋での競争力を確保する軍事的・技術的同盟を結ぶことを意図している。

 短期的には、オーストラリアは世界最大級の最新鋭原子力潜水艦を手に入れようと期待している。

 AUKUSでオーストラリアとフランス間の主要な製造協定が中止となり、パリは深刻な外交的困惑に陥った。この出来事は、米仏関係に大きな混乱をもたらす恐れがあったが、ロシアのウクライナ侵攻で生まれた連帯感は、永久的な損害に対する懸念を静めたようだ。


Virginia-class Submarine

US Navy Virginia-class Submarine Under Construction.


原子力潜水艦(SSN)は、太平洋が広大なため、オーストラリアにとって特に有用だ。SSNは遠隔地で長時間活動できるため、台湾付近、韓国付近、インド洋での作戦に貢献する。そのため、オーストラリア海軍の行動範囲は格段に広がり、同盟国の基地から独立して活動する自由も得られる。

 オーストラリア国民には、ヴァージニア級を購入することより、英国の潜水艦を建造または取得することの方が気になるようだ。また、この契約はオーストラリアを米国と密接に結びつけすぎると懸念する人もいる。しかし、オーストラリア軍事力が急速に向上すれば、他の安全保障上の懸念を明らか払拭する。


ヴァージニア級か


ヴァージニア級は非常に高性能な攻撃型潜水艦である。オーストラリアが受領するのは、アメリカの中古艦艇らしいが、現時点では詳細が不明だ。

 ブロックVを受領した場合、水中重量は約1万トン、速力は25ノットを超え、魚雷や巡航ミサイルなど約65の兵器を搭載する。古い艦は性能が落ちる。

 オーストラリアが、米国の造船能力の向上にも投資するだろう。実際、造船所の能力は、中国の造船がより急速に進むことを見越して自国の艦隊を拡大しようとする米国にとって、課題である。

 しかし、クレイグ・フーパーは、オーストラリアに艦を輸出することで、弱体化している米国の潜水艦整備インフラへの圧力を軽減できると主張している。


Astute-class

Astute-class Submarine. Image Credit: BAE Systems.


いずれにせよ、これらの艦艇は、オーストラリアの既存の潜水艦艦隊、すなわちRANが運用と維持に苦労して能力的に困難なコリンズ級を大幅にアップグレードすることになる。コリンズ級はヴァージニア級の3分の1の大きさで、耐久性は2カ月以上、武器搭載数は12個程度に制限されている。

 また、この計画には野心的な人的資源開発戦略も含まれる。原子力潜水艦の整備は通常潜水艦と異なり、オーストラリアはコリンズ艇の乗組員にも苦労してきた。

 どうやら、オーストラリアの最初の艦は、オーストラリア人指揮官のもと二重国籍のオーストラリア=アメリカ両国民の乗組員で運用する可能性がある。このような配置は珍しいが、両大戦におけるオーストラリアには歴史的な前例がある。


次世代型アスチュート級になるのか

 オーストラリア初の国産艦がどのようなものになるかは、それほど明確ではない。

 イギリスはオーストラリアと建設と設計面で提携するが、艦にはアメリカ製部品も含まれるようである。

 豪州の造船能力の向上は、すべてがうまくいったと仮定すれば、AUKUS契約の最も重要な成果の1つとなる。

 英国海軍の攻撃型潜水艦プロジェクト(SSNR)は、垂直発射システムを搭載することで、米国の同系列艦に似た世代の潜水艦を想定している。もし、第2世代のオーストラリア艦が、ヴァージニアで運用中の部品を欠くとしたら、かなり奇妙なことであり、したがって、オーストラリア潜水艦がSSNRに酷似することは十分に推測される。

 2つの異なるクラスの原子力潜水艦を運用することは、豪州にとって挑戦だが、克服できないことはない。これまで原子力潜水艦を建造したほとんどの海軍が、複数の艦種を同時運用した経験がある。オーストラリアは原子力艦を運用する最小の国となるが、決して貧乏な国ではない。2種類の攻撃型潜水艦を運用することは、フランスやイギリスがSSNとSSBNの両方を運用する現状に比べれば、オーストラリアにとって過大な挑戦ではない。


Virginia-Class

Image of Virginia-class Submarine features. Image Credit: Creative Commons.


AUKUSの今後を占う


 すべてうまくいけば、オーストラリアはAUKUSで世界クラスの原子力攻撃型潜水艦部隊を持つことになる。オーストラリア海軍の総合的な能力は、中国、フランス、英国に匹敵するものになる。

 もちろん、オーストラリア海軍が長期的にこれらの艦船を運用・維持しながら、その他の広範な責務を果たすことができるかどうかなど、多くの疑問が残る。

 AUKUS契約は、未定部分が多く、うまくいかない可能性がある。しかし、うまくいけば、オーストラリアは一流の軍事力と素晴らしい産業基盤を獲得し、米国は強力な同盟国の育成に貢献することになる。


AUKUS: How Australia Is Getting Nuclear-Powered Attack Submarines

By

Robert Farley

https://www.19fortyfive.com/2023/03/aukus-how-australia-is-getting-nuclear-powered-attack-submarines/


Author Biography and Expertise 

Dr. Robert Farley has taught security and diplomacy courses at the Patterson School since 2005. He received his BS from the University of Oregon in 1997, and his Ph. D. from the University of Washington in 2004. Dr. Farley is the author of Grounded: The Case for Abolishing the United States Air Force (University Press of Kentucky, 2014), the Battleship Book (Wildside, 2016), Patents for Power: Intellectual Property Law and the Diffusion of Military Technology (University of Chicago, 2020), and most recently Waging War with Gold: National Security and the Finance Domain Across the Ages (Lynne Rienner, 2023). He has contributed extensively to a number of journals and magazines, including the National Interest, the Diplomat: APAC, World Politics Review, and the American Prospect. Dr. Farley is also a founder and senior editor of Lawyers, Guns and Money.