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ブロック4の前にTR-3改修でF-35の性能はここまで拡大する。1機あたり25百万ドル、合計150億ドルの予定

 

ッキード・マーティンF-35ライトニングII、通称ジョイント・ストライク・ファイターが機密扱いのアップグレードを受ける。改良には、17の新しい武器システム、強力な新型レーダー、電子戦能力の強化、推進力のアップグレードなどが含まれるが、多くは膨大な機密のベールに包まれたままだ。



 F-35は技術的な後退やコスト超過に悩まされ、しばしばプラットフォーム自体に影を落としてきた。しかし今、F-35は新たな機能強化の数々を搭載し、ついに、このプラットフォームに対する批判的な声を黙らせ、データを駆使する空中戦の強豪を生み出すかもしれない...ただし、すべて計画通りに進んだ場合の話だ。

F-35は最も成功したステルス戦闘機だ

f-35 upgrade(U.S. Air Force photo/Senior Airman Christine Groening)


20年以上にわたるF-35プログラムは、長い間、2つの非常に異なるレンズで見られてきた。ある人は、F-35の調達プロセスの大失敗が、F-35そのものを定義するようになり、度重なる技術的な後退、予算超過、機体維持に関わる膨大なコストなどが、この機が戦いにもたらす能力に影を落としていると考える。

 しかし、F-35に搭乗している人たちの話は、まったく違う。彼らはしばしば、F-35を航空戦力の革命にほかならないと喧伝し、多くの外国政府もそれに同意しているようだ。現在、16カ国がF-35の納入を待ち、890機以上が生産されており、F-35はその他第5世代戦闘機(F-22、J-20、Su-57)の合計よりも多く就役している。

 批判勢力は財政的な失敗を強調しているが、共用打撃戦闘機という大失策が生み出した航空機は、客観的には地球上で最も先進的で幅広い能力を持つ戦術戦闘機で、情報、監視、偵察から電子戦、戦域管理まで、各種軍用機の役割を同時に果たすことができる。F-35はしばしば空のクォーターバックと呼ばれ、戦いの最中に司令部レベルの認識と驚くべき生存能力を提供する。

 しかし、今日のF-35がいかに高性能でも、20年以上前のシステム・アーキテクチャの上に構築されているため、先進的とはいえ、今後20年間に出現する課題に追いつけるのか。

 F-35は現在も空で最も先進的な戦闘機かもしれないが、F-35プログラムオフィスは、そうでなくなる日のため計画をすでに立てている。そこで、F-35のテクノロジー・リフレッシュ-3(TR-3)とブロック4のアップグレードが登場する。


テクノロジーリフレッシュ-3で F-35 に新しい頭脳が生まれる

f-35 upgrade


ブロック4アップグレードの前に、コアコンピューティング能力の大幅な刷新が必要だった。今日、F-35は現役戦闘機各種の中で最も先進的な戦闘機であることに変わりはないが、コンピューティングの観点から見ると、F-35の搭載システムには20年以上前のものもあり、2023年時点で最高級とは程遠い。

 しかし、TR-3の取り組みは、今後の大規模なアップグレードで土台作りとも言えるが、実はこの取り組みだけで、戦闘機の能力は飛躍的に向上するのだ。

 ある意味、TR-3は、計算能力とメモリストレージを飛躍的に向上させ、搭載されているほぼすべてのシステムの機能を改善するだけでなく、将来の改良にむけたプロセスを合理化する新しいシステムアーキテクチャとともに、戦闘機の脳移植とみなすことができる。

 「テクノロジー・リフレッシュ3は、F-35の計算機コアを近代化するもので、新しいハードウェアとソフトウェアは、同機の機能に影響を与えます」と、第461飛行試験飛行隊司令官でF-35統合試験軍ディレクターのクリストファー・キャンベル中佐は1月に説明していた。

 TR-3の新しいコンピューティングコアは、現在F-35の処理能力の25倍という驚異的な性能で、請負業者であるL3 Harrisによれば、最終的には他の改良と組み合わせて、驚くべき「37倍の処理能力向上」を達成する。プロセッサーのアップグレードは、レーダー処理、分散開口システム、電子戦スイート、通信、誘導など、搭載システム多数に影響を及ぼすと言われている。この新しいパワーを支えるのは、20倍に増加したデータストレージです。

 F-35のパノラマコクピットディスプレイも大幅にアップグレードされ、ディスプレイ処理能力が5倍に向上し、左右のコクピットディスプレイの「クリティカルディスプレイプロセッサー」が、何らかのシステム障害が発生した場合に冗長性を発揮する。

 先月、Steve TrimbleがAviation Weekで報告したように、これらの新システムは、生産中のブロック15のF-35ですでに組立ラインで生まれているが、来年のブロック16からのTR-3アップグレードに、現行システムの3倍の能力を提供する改良型電子戦プロセッサーも搭載される。さらに2025年から、ブロック17に、敵レーダーやその他の信号伝達の位置を検知して三角測量できる電子戦用レシーバーが20個以上搭載される。現行機はレシーバーを5個しか搭載しておらず、能力が75%増となる。

 しかし、これらのアップグレードは印象的かもしれないが...実はすべて、さらに本質的なアップグレードの下準備に過ぎない。



スーパーライトニング II登場か?


 TR-3アップデートは、関係者間ではブロック4F-35の「ITバックボーン」として知られており、現行機から約75点の主要アップグレードを含む。アップグレードはすべて、長年にわたって親しまれてきたF-35A/B/C各型に組み込まれるが、システム改善と追加機能は非常に劇的で、新型戦闘機を能力の低い兄弟機と区別するため新名称が必要かもしれないとさえ考えられている。

 しかし、ブロック4の内容の多くは謎に包まれたままだ。この取り組みに携わる請負業者は、どのようなシステムが改良されるのかについて一般的な説明は行うものの、具体的内容は語ろうとしない。75点以上のアップグレードがブロック4.1、4.2、4.3といった単位で展開されることは確かで、アップグレードの多くは、すでに存在するハードウェアやアップグレードの初期段階で追加されるハードウェアの能力拡張用のソフトウェア調整に基づくと分かっている。

 また、ブロック4は最も野心的なアップグレードだと統合開発室が説明していることも分かっている。その他、確実な情報を以下お伝えする。


ブロック4は合計17種類の兵装を搭載する

ブロック4アップグレードの大部分は、新たに統合された武器の形で行われる。一部報道で、ジョイント・ストライク・ミサイル、スタンドオフ・レンジで敵の防空を狩るAGM-88G Advanced Anti-Radiation Guided Missile Extended Range (AARGM-ER)、高性能なヨーロッパのメテオ空対空ミサイルなどが含まれる。しかし、新兵器がすべて「キネティック」つまり従来型弾薬ではなく、ブロック4アップグレードには、まだ公開されていない電子戦の新機能も数多く組み込まれそうだ。

 おそらく最も重要なのは、ブロック4がF-35の機内兵装搭載能力の拡張を含むことだ。現在のF-35は、ステルス性を維持しながら最大4点を機内収納し飛行しているが、ブロック4では6点まで増やす。


強力オンボードレーダーと分散型開口システムも導入する


現行型F-35は、ノースロップ・グラマンが開発したAN/APG-81アクティブ電子走査アレイレーダーを搭載し、戦術戦闘機のレーダーシステムの中で最も強力で高性能なものとして広く知られている。このシステムは非常に強力で、地表や空中のターゲットを識別・追跡するだけでなく、飛行中に敵のレーダーアレイを妨害する電子戦アセットとしても活用できる。しかし、AN/APG-85と呼ばれるさらに強力なレーダーアレイに交代する予定だ。

 ノースロップグラマンは、新型レーダーシステムについて、「利用可能な最新技術を取り入れ、航空優勢の確保に役立つ」とだけ述べている。この新型レーダーはGaN(窒化ガリウム)ベースのTRM(送受信モジュール)を活用するのではないかと、多くが推測している。新しいTRMは、電子対抗措置と競合しても、電力伝送と透明度が大幅に向上し、熱管理も優れているため、目標捕捉と電子戦の両方の任務で、より多くの電力を送り込むことができる。

 Aviation WeekでSteve Trimbleが報じたように、新レーダーは、同じ出力と同じサイズのアレイでF-35の目標検出範囲を2倍にする可能性があり、目視範囲を超えた交戦でF-35に際立った優位性を与える。

 国防総省は、「より大きなピクセルのフォーカルプレーンアレイ」と「より高い動作温度」で性能と信頼性を向上させる「次世代」分散アパーチャシステムが、搭載レーダーから得られるデータの大幅な増加に追加されると述べている。このアップグレードはレーダーほど注目されていないが、同じく重要だと考えられる。

 F-35の既存のAN/AAQ-37電気光学分散開口システム(DAS)は、パイロットが機体周囲に取り付けられた赤外線カメラ6台で周辺状況を把握できるだけでなく、赤外線サーチ&トラック(IRST)機能の進化形として、遠距離のステルス敵を熱信号で識別しターゲットにするのも可能だ。F-35が最も高度な敵を前に手強い空対空戦闘機となるのはほぼ間違いない。


電源強化、航続距離拡大、推力増加

(U.S. Air Force photo by Tech. Sgt. Nicolas Myers)

こうした新システムを動かすため、F-35はエンジンのアップグレードが必要だ。このテーマは、GEとF-35の現在のエンジンメーカーであるプラット&ホイットニーのエンジンプロバイダー間の争いに発展している。先週、国防総省はプラット・アンド・ホイットニーとロット17までエンジンを供給し続ける契約をまとめた。これはTR-3の残りの期間にも及び、同社がブロック4の改良型エンジンを供給し続ける最有力候補となりそうだ。

 一方のGEは、次世代戦闘機用に設計された新しいアダプティブサイクルエンジンを提案しており、航続距離、推力、出力が大幅に飛躍するものの、より高いプレミアムが付く。

 プラット&ホイットニーは、既存のF135エンジンの推力を10%向上させ、燃費を5%改善し、航続距離を7%向上させる進化型ECU(Engine Core Upgrade)を提案している。GEは、燃費を25%向上させ、推力を20%向上させ、熱管理を2倍にし、航続距離を35%向上させるXA100アダプティブサイクルエンジンを提案している。

 このアダプティブサイクル・エンジンはF-35に搭載されることになるが、GE提案に従うと、ブロック4の導入に関連するスケジュールとコストが延びる可能性があり、より予算的で控えめな改良のプラット&ホイットニー提案に関係者を向かわせそうだ。


これだけではない…

A list of some F-35 upgrades expected in Block 4.


F-35のブロック4アップグレードは、10年以上の工期で約150億ドルかかると推定されるが、中には、外から見ている私たちが決して知ることのできない、秘密または機密の改良が数多く含まれている。例えば、レーダー誘導ミサイルを混乱させるチャフが、従来型と大きく異なるため、独自の呼称を持つようになったという報告もある。

 ブロック4のF-35アップグレードには、センサーや武器システムなど、他の資産と積極的にネットワーク化し、国防総省が「キル・ウェブ」と呼ぶ効果を作り出す能力の大幅向上も含まれている。F-35のMADL(Multifunction Advanced Datalink)を、NATO戦闘機が使用するリンク16データリンクや、上空の衛星と互換性を持たせるとともに、地域の友軍にライブ映像を直接配信する機能も追加される。

 リストは、意図的に曖昧にされているため、評価するのは難しいが、航空機の能力セットのほぼすべてに何らかの調整、調整、改良が施されてるのは確かだ。改良は非常に広範囲に及び、1機あたり約2500万ドル(平均機体単価の約25%)と言われる。

 しかし、ここまで多額の投資によって、F-35の空対空および空対地戦闘能力は飛躍的に向上し、電子戦とセンサーフュージョンの能力も大幅に向上する。完成すれば、ブロック4のF-35は従来型よりはるかに高性能になり、同機を激しく批判する人々でさえ自分の立場を見直す立場に追いやられそうだ。■


The F-35 is getting a $15 billion upgrade that'll make it a whole new beast - Sandboxx

Alex Hollings | March 8, 2023




Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.



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