米空軍、宇宙軍ともに隊員の自律性を高め、制度でも自律運用を強めていくのは脅威の実態があってこそのことだ。
米空軍は想定外の初体験をした。F-22ラプターによる初の空対空戦闘撃墜は、戦闘機ではなく、中国のスパイバルーンを撃墜した。
この事件と、それに続く未確認飛行物体3機の撃墜は、米国の空域の安全性、国家安全保障における空軍の役割、そして何よりも中国の潜在的な脅威に注目を集めることになった。
C.Q.ブラウン参謀総長は、中国との衝突が「差し迫ったもの、避けられないもの」とは考えていないものの、万が一に備え空軍に準備をさせたいと考えている。
「目標は、今日、明日、来週、来年、10年後に備えておくことです。そして、空軍として大統領に選択肢を提供できる能力と度量の実現が目標です」と、ブラウンはブルッキングス研究所での最近のイベントで語った。
迫り来る脅威と、中東で米軍機と翼を突き合わせ飛んでいるロシアとの競争は、2023年以降も空軍のプログラムと政策を牽引し続けるだろう。
ブラウンは、中国が「(国際)秩序を自分たちのイメージや好みに合わせて作り変えようとしている」と述べ、「脅威の先を行くようにしたいので、能力の観点から」彼らが何をしているのかに注意を払っている、と付け加えた。「中華人民共和国が何をするか、どのように実行するかは予測不可能だ。ただ、選択肢を提供するため、可能な限りあらゆる能力を備えておきたい」。
空軍が先を目指す方法のひとつに、ブラウンの「変化を加速させねば負ける」という構想がある。2020年にこの構想を発表した際に本人は空軍が中東で戦う間に、「中国とロシアは、我々の優位性に影響を与えるようなことを加速し、動かしたりしてきた」と指摘していた。それで、我々の優位性が損なわれている。だから、『変化を加速させねば負ける』と言っているのだ。
変化には、ブラウンが 「アジャイル・コンバット・エンプロイメント」と 「マルチ・ケイパブル・エアマン」と呼ぶ2つの連携したコンセプトが含まれる。これは、太平洋の離島のような遠隔地でも活動できる、分散基地を運用する「より軽く、よりスリムで、より機敏な」軍隊を作るというものだ。
ブルッキングスのイベントでブラウンは、「大型基地から中東に行くことに慣れてしまっている」と語った。「将来的には、ゼロから始める場所に行く可能性があり、すべて持ち込むことはできない。しかし、そのような環境下でどのように活動し、司令部に連絡することなく意思決定できるか。それが、私が飛行士に植え付けたいことです。彼らには、監視を受けることなく、国から求められたことを実行する自信があるのです」。
将来の紛争において、ブラウンは飛行士に「戻って許可を得るのではなく、下層部で意思決定し、物事を行うことができる自信を持たせたい」と考えている。「というのも、やることすべてに許可証にサインしている時間はないのです。意図を伝えたら実行させたいと考えています。そして、おそらく私が想像した以上のことをしてくれるでしょう」。
そのため、空軍は最近、4日間のBEAST演習を基礎訓練から外し、配備を模擬した2日間演習に変更し、「マルチケイパブルエアマン」のスキルをテストしている。空軍はまた、戦力創出と配備のサイクルを見直す。24ヶ月のサイクルは、6ヶ月のフェーズ4つで構成され、「available to commit」と呼ばれる、部隊配備や即座に出発できる状態も含まれる。
空軍の2023年予算要求は、2022年予算から132億ドル増の1690億ドルであり、変革を志向している。議会は一部を承認した。長年の対立の末、議員たちはA-10退役にようやく同意したが、F-22の退役は阻止し、B-1、F-15、E-3 AWACSなど他の航空機の退役は阻止または変更しました。
23年度予算では、新型爆撃機B-21の低速初期生産、KC-46タンカー、F-35A、EC-37Bコンパスコールの増産に向け資金も盛り込まれた。また、E-7試作機の生産にも資金が投入される。
予算については「進展があったと思う」とブラウンは述べた。「ロシアのウクライナ侵攻や中国の脅威の増大など、環境が変わったからです」。
2024年度予算については、新しいプログラムを立ち上げる予定であるため、大幅に増加する予想がある。しかし、ブラウンは、継続決議措置、特に1年間の継続決議となれば各計画は頓挫し、「敵に1年の猶予を与え、米国は動けなく」と指摘する。「時間は買い戻せない」と、彼は言った。
この予算要求には、高性能無人航空機と関連sルウ人員配置も含まれているようだ。
ブラウン氏は、「私たちは、協働型戦闘機の道を歩んでいる」と述べた。"次世代航空支配 "だけでなく、F-35でどのようにそれをもたらすことができるかを見て、一緒に飛ぶことができるようにすること。
ブラウンは、「無人航空機」の「将来の予算」を見て、「プラットフォームそのものがあり、それに付随する自律性がある。そして、そのための部隊を構築する組織化、訓練、装備のあり方であり、これらすべて並行して行う。しかし、搭乗員付きの航空機とどのように構成するのか、KC-46後部から操作できるのか。いずれはE-7も登場する。E-7の後部座席から操作できるだろうか?戦闘機のコックピットから操作できないか?そういった面まで考えている」。
また、今年中に期待されることもある。戦略環境の変化に対応する」ステルスタンカーでだ、空軍の「次世代空中給油システム」について少なくとも一部詳細だ。同軍は1月下旬に情報公開請求を行い、今年10月に代替案分析を行い、2040年のIOCを想定する。
国防総省が進める「ネットワーク・エブリシング・ジョイント・オール・ドメイン・コマンド&コントロール」について、初期には多くの人が「すべてのセンサーをすべての狙撃手につなぐ」ことについて話していたが、ブラウンは常に「正しいセンサーを正しいタイミングで正しい狙撃手に向けること」だと感じていると述べた。
今の課題は、「各軍でさまざま指揮統制システムに投資しているが、どのように連携させるか」ということだという。例えば、すべての飛行機をすべての戦車に接続するのではなく、飛行機からどのようにデータを取り出せるかが重要だ。
「データの移動方法について、共通性がある程度あれば、それが重要なポイントになると思います」。
ブラウンは、「だからこそ、宇宙軍が重要なのです」と述べ、「すべてのデータを扱うことが重要です。宇宙軍がそのアーキテクチャを構築するのです」。
宇宙軍の課題はこれ以外にもおある。最も小さな兵科である宇宙軍は、これまでの指数関数的な成長を止め、今年はわずか200人を加えただけだ。現在は弾力性の創出と「戦闘信頼性の高い」兵力の構築という点に集中している。
ガーディアンとしての宇宙軍は、「紛争地域で、紛争地域から、紛争地域を通して活動」できなければならないと、宇宙作戦長(CSO)チャンス・サルツマン大将は、1月のメディア懇談会で記者団に語っている。
「軌道上や地上に適切なシステムがあるからといって、必ずしも準備の整った部隊になるとは限らない。人員は訓練されなければならない。作戦コンセプトが必要だ。検証ずみの戦術が必要です。オペレーターは、その戦術を実践しなければなりません。そして、そのシステムをどのように使うか、その根拠となるインテリジェンスが必要です。「統合軍にテクノロジーを提供するのではなく、戦力を提供するのです。戦力には、装備品、兵器システム、訓練された人員、作戦コンセプト、戦術、情報など、これらすべての構成要素が必要です」。
2023年、宇宙軍は前年より30%近く増の245億ドルを要求した。シミュレーター、射撃場、試験装置、デジタルエンジニアリングなどを含む運用試験・訓練インフラを構築するため、今年も増額を要求するとCSOは述べている。
また、特定の脅威に合わせた訓練ではなく、より広範なアプローチを取りたいとサルツマンは述べている。
「あるシステムに対して、一般的な脅威の実態を知っています。私たちのシステムに対する対衛星運動攻撃であれ、(無線周波数)エネルギーやジャミングであれ、そこにある脅威のすべてです」と彼は言います。特定の脅威に焦点を絞って、「こういう脅威のシナリオを想定して訓練してほしい」と言うよりも、あらゆる脅威に対して、どのような結果になるか、何を要求されるかにかかわらず、柔軟な選択肢をたくさん持っていたいのです」。
サルツマンは、例えば、衛星通信ジャマーを処理するために、高度極超短波衛星を送るというようなことは規定したくないという。
「具体的すぎる。私は、『第4宇宙作戦飛行隊は、その任務に対するいかなる脅威にも対処する準備ができている』と言いたいのです」と彼は言った。
また、ロシアのウクライナ侵攻から学ぶべき宇宙関連の教訓もある。
「ロシアがウクライナに侵攻した際、宇宙関連の教訓を得ることができました。また、そのような能力を低下させるために、GPS干渉が多数見受けられます。つまり、最初から能力を低下させようとしているのであれば、それが作戦の中心となり、現代の環境で軍隊が戦うのに重要であることを認識していることになります」と述べ、この紛争は「宇宙とサイバーが表裏一体」なことも示していると指摘しした。
「衛星の情報を移動中地上ネットワークと連携できず、能力もなく、アクセスもできないままならば、宇宙空間の衛星は役に立ちません」。「地上ネットワークのサイバー保護について考えなければ、対衛星作戦を行わず衛星作戦を否定する裏口を持っている可能性があることを思い起こさせるものだと思います...こうしたシステムへの攻撃には別の方法があります」。■
NEWS EDITOR, DEFENSE ONE
MARCH 2, 2023
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