スキップしてメイン コンテンツに移動

イランの核兵器取得が間近に迫ってきた。核交渉再開の目処は? イスラエルはどう反応する?

 

Image Credit: Creative Commons.

 

国防高官によると、イランは2週間以内に核爆弾1個分の核分裂性物質を製造できるとみられている。コリン・カール国防次官(政策担当)は下院軍事委員会で、ドナルド・トランプ前大統領が2015年の共同包括行動計画(JCPOA)から離脱して以来、テヘランの核能力達成への接近が急速に進んだと語った。

カールの警告は、イランが地下施設「フォードウ燃料濃縮工場」で兵器級に近いレベルまでウランを濃縮したとする国連の評価と一致する。同次官は発言の中で、核計画復活がイランの「目覚ましい」進展を解決する可能性があるとの考えをあらためて示した。

 しかし、長年にわたるウィーン核協議は2022年に行き詰まり、イランは条約上の義務に違反している。イランの核開発面の進展は憂慮すべきものだが、米政府関係者は、同政権が実際に爆弾を製造するのに必要な技術は保有していないと依然考えている。

イランが核爆弾製造に必要な濃縮ウランの量は?

核爆弾を作るには、ウラン粒子を純度90%まで濃縮する必要がある。今週、国際原子力機関(IAEA)は、イランの地下施設FFEPで濃縮されたウラン粒子が純度83%以上に達したことを確認した。

 低濃縮ウランは商業用原子力発電所の燃料生産に再利用できるが、高濃縮ウランは、遠心分離機で精製されると核用途に操作できるようになる。イラン・ウォッチによると、テヘランは遠心分離機の機種を改良し、兵器製造に必要な物質の濃度を高めている。

 政権は長年、核活動は純粋に「平和的」で民生目的と主張してきたが、イランの科学者は2015年のJCPOAに違反し、以前の濃縮よりはるかに高い純度60%までウランを濃縮していることを公にしている。


イランはIAEAの規制を公然と破ってきた

テヘランはIAEAの規制を拒否してきた歴史がある。昨夏、ウィーン核交渉が行われていたにもかかわらず、イランは核施設から20数台の監視カメラを撤去すると発表し、IAEAに打撃を与えた。国際的な監視機関である35カ国理事会は、イランが同機関の規則を露骨に無視したことを非難した。実は、イランはウィーン会談が始まった当初から、交渉に有利になるようにIAEAの映像を隠していたのだ。


核合意はまだ可能か?

イランの核開発の急速な拡大と査察官のアクセス不足は、イランが核の敷居を越えるまであと数日というカール次官の警告を裏付けている。昨年4月、ホワイトハウスはイランの核武装解除時期が数週間後に迫っていると発表し、同様にトランプ政権がJCPOAから離脱したのを非難した。

 バイデン大統領は選挙戦当時から核条約への再加入を唱えており、イランもそれを知っている。カールは今週、下院軍事委員会で、米国が「この問題を外交的に解決し、核計画に制約を戻すことができれば、他の選択肢より優れている」と述べ、同条約に対する政権のコミットメントを再確認した。

 しかし、今はJCPOAが氷漬けにされている。イランはウラン濃縮増強に加え、ウクライナ侵攻でクレムリンに致死的な無人機を供給したことで注目されている。

 IAEAによる最新の調査結果で、ウィーン交渉再開は先送りされそうだ


Is Iran Close To Building A Nuclear Weapon?

ByMaya Carlin

https://www.19fortyfive.com/2023/03/is-iran-close-to-building-a-nuclear-weapon/


Maya Carlin is a Middle East Defense Editor with 19FortyFive. She is also an analyst with the Center for Security Policy and a former Anna Sobol Levy Fellow at IDC Herzliya in Israel. She has by-lines in many publications, including The National Interest, Jerusalem Post, and Times of Israel.

In this article:IAEA, Iran, JCPOA, Middle East, Nuclear Weapons


コメント

  1. ぼたんのちから2023年3月4日 9:24

    イランは、2019.7.21の本ブログ「緊急 イラン情勢ではイスラエルの動向に注意…」のコメントで予測したように、「北朝鮮方式」の核武装を順調に進めている。今年中に核兵器を製造開始し、数年以内に核実験を行うと予測するも、ウクライナ戦争により国際情勢は流動化しているため、早まる可能性が高い。
    「北朝鮮方式」とは、欧米が核開発を行おうとする国家と何らかの合意を行い、欧米を安心させ、その間に核開発を進展させ、バレそうになると、対立し、合意を破棄、あるいは効果のないものにして、また次の合意を求めるやり方であり、核開発を段階的に進めるやり方である。つまり、合意を最初から守る気は無いのである。
    イランの核開発は、運搬手段を含め北朝鮮から多くの技術を導入しているが、これらのことは、勿論、「北京枢軸」の盟主であるCCP中国が黙認し、取り仕切っていると推測する。また、イランと中国は準軍事同盟を結んでいる。
    CCP中国がこれから数年以内に軍事的冒険を行うなら、イランは核兵器の実戦化を急ぐであろうし、そうでなければ、核実験開始まで急がないと予測する。
    イランの核恫喝の対象は、差し当たって米国とイスラエルであるが、中東、及び周辺国にも多くの影響を与え、その中のサウジアラビアやUAE、トルコ等は核武装を求めるだろう。もしかすると、10年後の中東は、核危機となっているか、既に核の応酬が行われているかもしれない。
    もちろん、上記の予測は、イランのイスラム政権が維持されている場合であり、外見よりも著しく脆弱な政権は、今年中に崩壊する可能性もある。

    返信削除

コメントを投稿

コメントをどうぞ。

このブログの人気の投稿

漁船で大挙押し寄せる中国海上民兵は第三の海上武力組織で要注意

目的のため手段を択ばない中国の思考がここにもあらわれていますが、非常に厄介な存在になります。下手に武力行使をすれば民間人への攻撃と騒ぐでしょう。放置すれば乱暴狼藉の限りを尽くすので、手に負えません。国際法の遵守と程遠い中国の姿勢がよく表れています。尖閣諸島への上陸など不測の事態に海上保安庁も準備は万端であるとよいですね。 Pentagon reveals covert Chinese fleet disguised as fishing boats  漁船に偽装する中国軍事組織の存在をペンタゴンが暴露   By Ryan Pickrell Daily Caller News Foundation Jun. 7, 3:30 PM http://www.wearethemighty.com/articles/pentagon-reveals-covert-chinese-fleet-disguised-as-fishing-boats ペンタゴンはこのたび発表した報告書で中国が海洋支配を目指し戦力を増強中であることに警鐘を鳴らしている。 中国海上民兵(CMM)は準軍事組織だが漁民に偽装して侵攻を行う組織として長年にわたり活動中だ。人民解放軍海軍が「灰色」、中国海警が「白」の船体で知られるがCMMは「青」船体として中国の三番目の海上兵力の位置づけだ。 CMMが「低密度海上紛争での実力行使」に関与していると国防総省報告書は指摘する。 ペンタゴン報告書では中国が漁船に偽装した部隊で南シナ海の「灰色領域」で騒乱を起こすと指摘。(US Navy photo) 「中国は法執行機関艦船や海上民兵を使った高圧的な戦術をたびたび行使しており、自国の権益のため武力衝突に発展する前にとどめるという計算づくの方法を海上展開している」と同報告書は説明。例としてヘイグの国際仲裁法廷が中国の南シナ海領有主張を昨年7月に退けたが、北京はCMMを中国が支配を望む地帯に派遣している。 「中国は国家管理で漁船団を整備し海上民兵に南シナ海で使わせるつもりだ」(報告書) 中国はCMMはあくまでも民間漁船団と主張する。「誤解のないように、国家により組織し、整備し、管理する部隊であり軍事指揮命令系統の下で活動している」とアンドリュー・エリク...

海自の次期イージス艦ASEVはここがちがう。中国の055型大型駆逐艦とともに巡洋艦の域に近づく。イージス・アショア導入を阻止した住民の意思がこの新型艦になった。

  Japanese Ministry of Defense 日本が巡洋艦に近いミサイル防衛任務に特化したマルチロール艦を建造する  弾 道ミサイル防衛(BMD)艦2隻を新たに建造する日本の防衛装備整備計画が新たな展開を見せ、関係者はマルチロール指向の巡洋艦に近い設計に焦点を当てている。実現すれば、は第二次世界大戦後で最大の日本の水上戦闘艦となる。 この種の艦船が大型になる傾向は分かっていたが、日本は柔軟性のない、専用BMD艦をこれまで建造しており、今回は船体形状から、揚陸強襲艦とも共通点が多いように見える。 この開示は、本日発表された2024年度最新防衛予算概算要求に含まれている。これはまた、日本の過去最大の529億ドルであり、ライバル、特に中国と歩調を合わせる緊急性を反映している。 防衛予算要求で優先される支出は、イージスシステム搭載艦 ( Aegis system equipped vessel, ASEV) 2隻で、それぞれ26億ドルかかると予想されている。 コンピューター画像では、「まや」級(日本の最新型イージス護衛艦)と全体構成が似ているものの、新型艦はかなり大きくなる。また、レーダーは艦橋上部に格納され、喫水線よりはるか上空に設置されるため、水平線を長く見渡せるようになる。日本は、「まや」、「あたご」、「こんごう」各級のレーダーアレイをできるだけ高い位置に取り付けることを優先してきた。しかし、今回はさらに前進させる大きな特徴となる。 防衛省によると、新型ASEVは全長約620フィート、ビーム82フィート、標準排水量12,000トンになる。これに対し、「まや」クラスの設計は、全長557フィート強、ビーム約73フィート、標準排水量約8,200トンだ。一方、米海軍のタイコンデロガ級巡洋艦は、全長567フィート、ビーム55フィート、標準排水量約9,600トン。 サイズは、タイコンデロガ級が新しいASEV設計に近いが、それでもかなり小さい。Naval News報道によると、新型艦は米海軍アーレイ・バーク級フライトIII駆逐艦の1.7倍の大きさになると指摘している。 武装に関して言えば、新型ASEVは以前の検討よりはるかに幅広い能力を持つように計画されている。 同艦の兵器システムの中心は、さまざまな脅威に対する防空・弾道ミサイル防衛用のSM-3ブロックII...

次期高性能駆逐艦13DDXの概要が明らかになった 今年度に設計開始し、2030年代初頭の就役をめざす

最新の海上安全保障情報が海外メディアを通じて日本国内に入ってくることにイライラしています。今回は新型艦13DDXについての海外会議でのプレゼン内容をNaval Newsが伝えてくれましたが、防衛省防衛装備庁は定期的にブリーフィングを報道機関に開催すべきではないでしょうか。もっとも記事となるかは各社の判断なのですが、普段から防衛問題へのインテリジェンスを上げていく行為が必要でしょう。あわせてこれまでの習慣を捨てて、Destroyerは駆逐艦と呼ぶようにしていったらどうでしょうか。(本ブログでは護衛艦などという間際らしい用語は使っていません) Early rendering of the 13DDX destroyer for the JMSDF. ATLA image. 新型防空駆逐艦13DDXの構想 日本は、2024年度に新型のハイエンド防空駆逐艦13DDXの設計作業を開始する 日 本の防衛省(MoD)高官が最近の会議で語った内容によれば、2030年代初頭に就役開始予定のこの新型艦は、就役中の駆逐艦やフリゲート艦の設計を活用し、変化する脅威に対し重層的な防空を提供するため、異なるコンセプトと能力を統合する予定である。  防衛装備庁(ATLA)の今吉真一海将(海軍システム部長)は、13DDX先進駆逐艦のコンセプトは、「あさひ」/25DD級駆逐艦と「もがみ」/30FFM級フリゲート艦の設計を参考にすると、5月下旬に英国で開催された海軍指導者会議(CNE24)で語った。  この2つの艦級は、それぞれ2018年と2022年に就役を始めている。  13DDX型は、海上自衛隊(JMSDF)が、今吉の言う「新しい戦争方法」を含む、戦略的環境の重大かつ地球規模の変化に対抗できるようにするために必要とされる。防衛省と海上自衛隊は、この戦略的環境を2つの作戦文脈で捉えている。  第一に、中国、北朝鮮、ロシアが、極超音速システムを含むミサイル技術、電子戦(EW)を含むA2/AD能力の強化など、広範な軍事能力を急速に開発している。第二に、ウクライナにおけるロシアの戦争は、弾道ミサイルや巡航ミサイルの大規模な使用、EWやサイバー戦に基づく非対称攻撃、情報空間を含むハイブリッド戦争作戦、無人システムの使用など、新たな作戦実態を露呈したと説明した。  新型駆逐艦は、敵の対接近・領域拒否(A2/A...