U.S. Air Force
米空軍は、E-7Aウェッジテイル・レーダー機でまず2機の製造をボーイングと契約した
ボーイングは、米空軍の次期空中早期警戒管制機(AEW&C)の開発に着手し、E-7ウェッジテイル・レーダー機の派生型を開発する契約を締結する。空軍は、31機ある707ベースのE-3 Sentry Airborne Warning And Control System (AWACS)の一部をE-7で置き換える予定だ。E-3各機は作戦準備のレベルを反映する空軍の指標である任務遂行率の低迷に悩まされている。
ボーイングによると、12億ドルを超えない契約のもと、「E-7 空中早期警戒管制機(AEW&C)の米国向け新型機2機種の開発を開始する」そうだ。ここでは2つ異なるバージョンが開発されているような表現だが、実際には、米空軍標準のE-7を同じ仕様で製造した最初の2機が、運用に入る前に「生産代表試作機」として使用されることを指す。
アメリカ空軍塗装のE-7Aウェッジテールのコンセプトアートワーク。U.S. Air Force
「ラピッドプロトタイピングプログラムは、DAF(空軍省)の要求を満たすため、米国ベースのミッションシステムを機体に統合すると同時に、E-7Aを運用中の連合国や同盟国のとの相互運用性を確保する」と、空軍は声明で述べている。
ボーイングはメディアリリースで、E-7は「最も困難な作戦環境でマルチドメイン認識を実現する、完全統合され、戦闘実績のある、柔軟なコマンド・コントロール・ノードを提供する」と述べている。E-7は、「オープンシステムアーキテクチャとアジャイルソフトウェア設計により、航空機の能力を進化させ、将来の脅威を先取りできます」と述べてる。
ボーイングのE-7プログラム副社長兼ゼネラル・マネージャーのステュー・ボボリルは、「E-7は実績あるプラットフォーム」と述べている。「E-7は、米空軍の空中早期警戒管制の要件を短期間で満たすことができる唯一の先進的な航空機で、統合作戦の実施を可能にするものです」。
2022年1月20日、レッドフラッグ22-1のためにネリス空軍基地(ネバダ州)に着陸するオーストラリア空軍のE-7Aウェッジテイル。U.S. Air Force/William R. Lewis
今回の契約は、空軍がE-7を「老朽化してきたE-3の代替に必要な期間内に、国防省の戦術的戦闘管理、指揮統制、移動目標指示能力の要件を満たすことができる唯一のプラットフォーム」と判断して、期待されていたものだった。これは、空軍関係者を含め、ウェッジテール購入でさかんに議論されていたのをうけてのことだ。
2022年4月のウェッジテイル調達決定は、その前の2月に空軍がE-3一部の後継機を探していることを正式発表した後だった。E-7の唯一の競合機はサーブのビズジェット機「グローバルアイ」で不採用となった。
E-7の目玉は、ノースロップ・グラマンのMESA(Multi-Role Electronically Scanned Array)センサーで、空中と海上の脅威を同時に360度カバーできる。E-3が採用している機械走査式レーダーより、少なくとも1世代進んだ電子走査式技術だ。
空軍の2023年度予算要求によると、MESAの利点は「最新の電子スキャンアレイセンサーを有人プラットフォームに統合することによるキルチェーン効果の向上、信頼性/可用性の向上、運用コストの削減」という。電子スキャンアレイは、レーダービームのステアリング、セクターステアリング、ターゲット再訪問速度の高速化が可能で、E-3AWACSの機械スキャンレーダーでは不可能な、より強固な電子保護と現代の脅威の検出・追跡を可能にするとある。
E-7は、長距離で各種目標を探知・追跡するだけでなく、先進的な戦闘管理システム(ABMS)機能を提供する。これは、中国など敵対国との将来の紛争において、より効果的な長距離「キルチェーン」を提供するペンタゴンの野心に欠かせない機能です。
E-7はまた、確立ずみサプライチェーンの恩恵を受け、空軍は、E-3と比較して、メンテナンスおよびロジスティクス費用を大幅削減し、より健全な任務遂行能力が確保できると期待している。E-7は737-700 Next Generation(NG)をベースにしており、ボーイングは737 NGの商業生産を2020年に終了したものの、E-7や米海軍のP-8ポセイドンなど軍事派生機の顧客向けに生産を続けている。
E-7はすでにオーストラリア、韓国、トルコの3カ国が運航しているため、認証プロセスが簡素化され、一部の主要同盟国との相互運用性も確保されることになる。また、E-7はイギリスも発注しており、作業は現在順調に進んでいる。
アメリカ空軍向けの新型E-7については、2025年に生産を開始し、2027年までに最初の機体が運用を開始する予定と発表が出ている。空軍は、契約の対象となる最初の2機と同様に、2032年までにさらに24機のE-7を購入する計画だが、合計数は今後数年間の資金調達次第で決まる。
E-7が就役するまで、現在のE-3フリートは継続的なアップグレードプログラムで生き延びなければならないが、一部であっても機体の代替は非常に歓迎される。
Defense Newsによると、空軍のE-3の40%から45%が、最新の数字である2021年には飛行不能状態だった。最新のE-3Gの任務遂行率は、2020年の70.7%から2021年には60.7%へと10ポイント低下している。一方、E-3Bの任務遂行可能率は同期間に65.8%から55.8%に低下している。
2022年3月22日、アラスカ州エルメンドルフ・リチャードソン統合基地で、牽引されるE-3 AWACSを監視する第962航空整備隊所属の米空軍兵。 U.S. Air Force photo by Airman 1st Class Andrew Britten
1970年代後半に最初のバージョンが就役したE-3セントリーでは、生産終了して長いTF33エンジンを搭載したボーイング707の機体を使用しており、このことも稼働率低下の一因となっている。
E-7が必要なのは、E-3後継機としてだけでなく、空軍と国防総省の監視・戦闘管理能力を抜本的に見直すためであることは明らかだ。実際、空軍は次期E-7を「すべての空中活動を探知、識別、追跡し、統合軍司令官に報告する主要な空中センサー」として機能させると述べている。
しかし、長期的には、空軍は、空中監視と地上移動目標指示(GMTI)任務の両方に宇宙ベース資産を使用する考えを受け入れつつある。一方、E-7は、アメリカ空軍の空中早期警戒管制部隊の基幹となるべく、良いポジションについているようだ。■
Air Force Orders First E-7 Jets To Replace Aging E-3 Sentry
BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAR 1, 2023 3:02 PM
https://www.thedrive.com/the-war-zone/air-force-orders-first-e-7-jets-to-replace-aging-e-3-sentry
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