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ポッド式給油ブームが空軍空中給油の概念を広げ、対中戦での戦術機をより効果的に支援できそうだ

 

次期タンカー用に米空軍が開発中のポッドマウント型給油ブームが大幅に進展している

将来の輸送機や、ドローンに搭載される可能性のある「小型ポッドマウント型戦術空中給油ブーム」の設計が米国で完了した。

ポッド搭載型空中給油ブームのコンセプトは前からあったが、今回の設計は、米空軍がより真剣に取り組んでいることを示す最初の兆候のようだ。米空軍は、将来のタンカー性能の検討を開始しており、特に、より状況が厳しい空域や周辺でのタンカーの生存率に注目しているため、これは特に興味深い。

ポッド式空中給油ブームの設計作業が完了したのニュースは、今月初めに発表された国防総省の空軍研究・開発・試験・評価に関する予算見積もりに記載されている。それ以外の情報はほとんどないため、どのような設計作業が行われたのか、設計の責任者は誰か、正確なところは不明だ。つまり、設計は完了したものの、ポッドブームはまだ「ペーパープロジェクト」として存在しているだけかもしれない。あるいは、ハードウェア段階まで進んでいて、地上や空中、あるいはバーチャルな物理的環境で、テストが行われているのかもしれない。

現段階では、確かなことはわからないが、少なくともある段階までプロジェクトの設計作業は完了したと考えられている。空軍の2024年度予算案では、同プロジェクトに7.31百万ドルを要求している。これは、2023会計年度にの要求金額よりも約757千ドルも少ない。

ポッド付きブームがどの航空機に搭載される想定なのかについては、手がかりが少なく、やや矛盾もしている。予算見積書では、ポッドは「将来のモビリティ用途」を想定と説明があり、(有人)輸送機や派生機で使用されると示唆している。同時に、このポッドは「小型」で「戦術的」とも言われ、いずれも小型の航空機(ドローンを含む)への搭載を示唆している。

ポッド式ブームを装備すれば、無人機がタンカーとして使用できる可能性がある。

一方、米海軍は、無人タンカーで独自の運用コンセプト開発に追われている。しかし、そのMQ-25スティングレイ無人機は、空軍のブーム方式ではなく、ポッド式プローブ・アンド・ドローグ空中給油方式で燃料補給する構成だ。戦術戦闘機や同サイズの航空機に搭載可能なポッド型プローブ&ドロッグシステムは数十年前から実用化されている。

ポッド式ブームの実用型が将来の有人・無人タンカーや他の航空機に搭載されるかにかかわらず、空軍は、次世代空中給油システム(NGAS)(以前はKC-Zと呼ばれていた)への要求を満たす方法を真剣に検討中だ。今年初め、空軍は新型タンカー・フリートを遅くとも2040年、可能ならそれ以前に就航させたいと考えていると確認している。

空軍の2024年度予算案では、現在の計画では、同プロジェクトは「完全かつオープンな競争の利点を活用して、複数機種のタンカー(インクリメント)におけるアップグレード能力」の提供の両方に資金を提供し、最終的には「将来の予測脅威と必要な能力に対処するため、競合環境での空中給油を確実に実施する先進技術を獲得するクリーンシート、目的別の設計努力」につながるとある。

「NGASは、ミッションの緊急性、利用可能な資金、プログラム上および技術上のリスクに応じて、ブロックまたは個別の修正または近代化プログラムを通じて、進化する脅威とミッションサポート要件を満たす給油能力を開発、配備、維持する」と最新の予算要求にある。

空軍は2024年度予算でNGASに8百万ドル弱を要求しているが、主に、代替案分析(AoA)を完成させ、プログラム要件を確定する作業を支援するためだ。

今のところ、NGASタンカーがどのようなものかはわかっておらず、空軍自身もさまざまな可能性を検討している。しかし、ロッキード・マーティンボーイング両社は、少なくともある程度のステルス性をもりこんだ混合翼胴(BWB)が特徴の先進タンカー・コンセプトを発表している。これは、競合する空域のシナリオで生存可能なタンカーを求める空軍要求を満たす潜在的な手段の1つであろう。

今年初め、ボーイングは別のステルスBWBコンセプトを発表し、戦術的な空輸任務の設計だが将来は空中給油に対応できる可能性がある。

この種のタンカーの低視認性のためには、レーダーシグネチャーを大幅増加させるポッド式ではなく、完全格納式か、少なくともコンフォーマル式の給油ブームが必要になろう。一方、これまで見てきたBWBコンセプトでは、ある程度の低観測性を実現しつつ、ステルス機には分類されないものがあります。このような場合は、ポッド型給油ブームがより理にかなっていると言えよう。

ポッド付きブームがタンカー用ドローンに想定されている可能性もある。また、前述の文書では「将来のモビリティ・アプリケーション」に言及しているが、空軍がNGASの要件を満たすため「あらゆるサイズと性能クラスの革新的なソリューション」を検討していることは、以前の公開情報からわかっている。

ブームをポッド化したドローンタンカーは、例えば有人のBWBタンカーよりステルス性が高く、一般に生存性を高くする必要はない。新たな戦術や技術と組み合わせたドローンタンカーが、脅威の高いシナリオでより自由にリスクを負うことができるかもしれない。一方、小型のドローンタンカーは、これまでの空軍の給油機と比較して、給油能力が大幅に下がる。

NGASが実現する前でも、空軍がポッド式ブームの用途を見出す可能性はかなり低い。KC-Yは、現在生産・就航中のKC-46Aペガサスに続く暫定的なタンカーとして意図されていたが、空軍は3月に正式に廃止を発表した。KC-Yの必要性を満たすためにKC-46Aを75機追加取得する可能性が高いと発表している。議会では空軍指導部がブリッジタンカー計画を事実上中止し、競争を行わずにKC-46Aを買い足す計画を立てたことを批判している。

一方、ロッキード・マーティンは、LMXTと名付けたエアバスA330マルチロールタンカー輸送機(MRTT)という対抗設計を推進してきた。KC-Yに続く空軍の新計画への議会の反応次第では、ポッド式ブームを利用した別の既製品のプラットフォームも可能性がないわけではない。ポッド式ブームのコンセプトは、さまざまなプラットフォームをタンカーに適合させる可能性をもたらすからだ。また、インテグラルブームと異なり、有人・無人を問わず小型機や、基本無人操縦機にも対応できる利点もある。また、輸送機など大型機にも対応できる可能性があり、米空軍のタンカー能力が向上できる。

将来のタンカーをどうするか、また危険空域での空中給油能力をどう確保するか検討中の空軍にとって、ポッド式ブームの多用途性は特に興味深いものでしょう。一時期、空軍は当時KC-Zと呼ばれていたポッド化ブームの無人設計を好んでいたが、現在は別の選択肢も視野に入っているようだ。

2024年の予算要求の詳細から、既存機の近代化バージョンも含め、最終的にNGASプラットフォームが複数存在する可能性もあるようだ。これまで見てきた大型の先進的なBWBのようなデザインは、必ずしもポッド型ブームの最良の候補ではないかもしれないが、このオプションがあれば、小型の有人タンカー機やドローンなど、別の可能性が開けるそうだ。このような組み合わせは、米空軍の将来のタンカーニーズで「カクテル」ソリューションとなり得る。

すでに、小型輸送機やホース・アンド・ドローグ式タンカーにブーム給油を装備する取り組みが行われており、ブラジルのマルチロールKC-390給油輸送機がブーム給油システムを採用している。

ブームをポッド化すれば小型戦術輸送機など、より多様な機材への搭載が容易になる。

一方、既存のタンカーの生存率を向上させるため、通信や防御システムをアップグレードし状況認識を強化する選択肢もある。これには、電子戦やデコイを組み込んだ自己防衛ポッドが考えられる。ハードキル・レーザーディフェンスも視野に入ってきた。また、タンカーに同行する護衛ドローンも検討されている。低レベル給油作業が拡大すれば、生存性をある程度回復できるが、ペナルティもある。

米空軍は、数百マイルの戦闘半径の戦術戦闘機を整備してきた。場合によっては、数百マイル以下もあり、タンカーは中国の反アクセスの傘の中に深く入ってしまうことになる。NGADのような将来の戦術機プログラムでは、航続距離が重要な設計要求となり、ようやくこの状況が変わりそうだ。長距離ステルス爆撃機やスタンドオフ兵器も、解決策だが、タンカーの脆弱性は極めて深刻だ。

これら考慮すれば、空軍が現在想定している中国のような互角戦力を有する敵対国との高強度の紛争は、空中給油機(少なくとも現行機種)にとって明らかに大きな問題をはらんでいる。設計が完了したポッド搭載型戦術空中給油ブームが、この課題の解決に役立つかもしれない。■


Podded Aerial Refueling Boom Design Has Been Completed For Air Force

BYTHOMAS NEWDICK|PUBLISHED MAR 24, 2023 4:57 PM

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