2022年6月15日水曜日

中国が原子力発電の安全性、経済性向上で大きな進展を示した模様。中国は今後150基の原子炉を建設。原子力廃止の主張勢力はエナジー危機にどう釈明するのでしょうか。

 This is not China's new particle accelerator, of which images do not seem to be publicly available. It is the DESY HERA particle accelerator at Hamburg, Germany.

ドイツ・ハンブルグにあるDESY HERA 粒子加速器 SIMONWALDHERR

 

 

使用済み核燃料をリサイクルし、より安く、より危険の少ないものにできれば、中国がエエナジー自立にちかづく。

 

国科学院現代物理研究所が最近完成させた試作型「粒子ビーム砲」は、SFに聞こえるかもしれないが、原子炉から発生する危険な廃棄物をリサイクルする斬新な新技術だ。中国が原子力エナジーシステムへ莫大な投資をしてきた成果の画期的技術で、中国はエナジー自給に向かい、天候にやさしい技術での世界的リーダーシップがさらに強固になる。

 

 典型的な核分裂炉では、ウラン235のような重い同位体原子がばらばらになり、エナジーを放出する。その際、余分な中性子も放出され、これが他の原子と衝突し、連鎖的に原子をバラバラにする。壊れた原子は使用済み燃料となり、数年間冷却され、数世紀にわたり慎重に保管される。しかし、今回の「大砲」、つまり陽子加速器を使う新型原子炉では、使用済み燃料をリサイクルし、安価で安全な電気を作れる。

 加速器駆動システムaccelerator-driven system(ADS)は、陽子を発射する陽子加速器、核分裂させる重元素を入れる核破砕ターゲット、核分裂させる燃料を入れる未臨界炉の3部分で構成し、陽子加速器から発射される陽子と核破砕ターゲットで核分裂を発生させる。陽子加速器は、使用済み燃料と新しい核分裂性物質(トリウム232またはウラン238)のブランケットに囲まれた重元素(ビスマスが多い)に陽子を発射する。標的は分裂し中性子を放出するが使用済み燃料に吸収され、核分裂性の重い同位体、つまり新しい核燃料に変わる。

 重要なのは、このプロセスが自己完結型であり、連鎖反応やメルトダウンの危険性がないことだ。現代物理学研究所の加速器プロトタイプの完成は、ADS実用化に向かう大きな一歩であり、先進的な原子力エナジーシステムへの中国の巨額投資が、技術革新という配当をもたらした典型例と言える。

 原子力を完全放棄した多くの国と異なり、中国は核分裂を未来への鍵と見なしている。原子力は風力や太陽光より効率が良く、化石燃料とは異なり、温室効果ガスや粒子状大気汚染物質を排出しない。石油消費量が世界第2位の中国は、エナジーをより多く必要としており、不安定な立場に置かれている。中国の石油の70%は、主に中東輸入に頼っており、海上交通の要所多数を通過しなければならない。中国は2035年までに4400億ドルを投じ、原子炉を少なくとも150基増設する。中国がADS技術開発を続ければ、原発から出る廃棄物を有効利用し、増大するニーズに合わせてさらに多くのエナジーを生産する再利用が可能となる。

 中国は安全な新システムを開発することにより、放射性物質の漏出や制御不能な連鎖反応の可能性を低減しようとしている。福島とチェルノブイリの原発事故は、最も有名な最悪の例だが、中国も2021年6月、広東省泰山原発で燃料棒破損による放射能漏れが発生し、問題に直面した。中国は、新世代の海洋浮体式原子力発電所に100億ドル近くを投じる計画で、核分裂より安全な方法として核融合も模索している。

 中国は原子力分野では米国を圧倒している。2009年以降、米エナジー省DOEが原子力のインフラと耐障害性を向上させるため支出した額は9億ドル未満にすぎない。DOEが、燃料サイクル研究開発への2400万ドルを含む、原子力大学プログラムへの4880万ドルの追加を発表したことは、米国の原子力コミュニティの基準からすれば、大きなニュースだった。DOEの200億ドル規模のクリーンエナジー実証室の原子力プロジェクトに、さらに資金が投入されるかもしれない。

 米国ではジョージア州ウェインズボロ近郊のボグル3・4号機の2基が新設され、もう1基のニュースケール炉は計画段階だ。それ以前の米国最新の原子力発電所は、それぞれ1996年と2016年に開所していたが、原子炉21基が廃炉になっている。全米電力に占める原子力の割合は20%前後を維持しているが、2050年のエナジーポートフォリオ予測では、原子力の割合が著しく低下するとある。

 中国の粒子線加速器と ADS研究は、同国の産業、エナジー戦略、そして技術から気候変動に至るまで、広範かつグローバルなリーダーシップで重要となる技術だ。米国も技術革新へ投資を続ければ、同様に新しい選択肢や技術が実現可能になるかもしれない。   

 ADSで可能となる先進的な原子力エナジー源は、従来よりはるかに安全であり、気候変動に関する目標を世界が今後数十年で達成するため重要になるというのが、大半の専門家の意見だ。

 中国がエナジー・リーダーシップに向け疾走しているのは確かだが、中国だけが利益を得る構図にしてはならない。■

 

China's 'Particle Beam Cannon' Is a Nuclear-Power Breakthrough - Defense One

By THOMAS CORBETT and PETER W. SINGER

JUNE 13, 2022 10:19 AM ET

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Thomas Corbett is a research analyst with BluePath Labs. His areas of focus include Chinese foreign relations, emerging technology, and international economics. 

P.W. Singer is Strategist at New America.


ラインメタル自社開発の新型主力戦車パンサーに注目。独仏共同開発の次期MBTはどうなる。

 KF41_PANTHER

Rheinmetall

ドイツのラインメタルが発表した「KF51パンサー」は独仏の新主力戦車計画を混乱させる可能性を秘める。

クライナ戦が激化し、戦車戦が再び注目が集まる中、ラインメタルは本日、130mm口径主砲を搭載した最新主力戦車「KF51パンサー」を発表した。ドイツ陸軍で広く使用されているレオパード2の後継機種を目指す設計だが、好戦的なロシアの脅威に対抗するべく装甲部隊の再編成を進めるその他ヨーロッパ諸国の関心を引く可能性がある。

KF51パンサーは、第二次世界大戦中のナチスドイツの伝説的戦車を思い起こさせる名前で、本日パリで開催されたユーロサトリ陸上防衛展で、ラインメタルのアーミン・パッパガー Armin Papperger CEOにより発表された。

これまで同社は、この新型MBTとその仕様について、ほとんど情報を公開してこなかった。重量は約65トンと伝えられる。これは、最新2A7V型で70トン強のレオパルド2より軽い。同じ1,475馬力ディーゼルエンジンを搭載するため、パンサーは現行車両より機動性が向上しているはずだ。パンサーは、現在の西側MBTの多く、特にアメリカ製のM1エイブラムスの後期バージョンより軽く、戦闘時総重量は70トンを超える。設計者がハイブリッドパワープラントなど、現代的な推進装置を選択しなかったことのは驚きであるが、開発・生産は迅速かつ容易になるはずだ。

新型MBTは、レオパルド2の120mm主砲から130mm口径滑腔砲になり、火力も増強された。これは、戦車兵装の大口径化への関心を反映したもので、砲そのものはラインメタルが以前から開発してきたものだ。パッパーガーCEOによると、130mm砲はレオパード2の砲より「50%以上効果が高い」し、「はるかに長い射程距離を実現する」という。運動エナジー式サボタージュ弾とプログラム可能爆発弾の両方を発射する。

その他武装としては、12.7mm同軸機関銃とオプションの遠隔操作式ウェポン・ステーションがある。また、対空機関砲については今のところ言及されていないので、おそらく局地防空用のHERO 120滞空弾、ドローン、未公表のミサイル用の発射装置も用意されるだろう。

防御に関して、情報は皆無に近いが、ラインメタルは、乗員はレオパルド2よりも保護され、アクティブ、リアクティブ、パッシブの各防御技術の恩恵を受けると明言している。ラインメタルのストライクシールド・アクティブプロテクション・システムは、対戦車兵器や自爆ドローンなどの脅威からの防御として装備される。APS-Gen3として知られていたストライクシールドは、この種のシステムで初めて、独立機関による厳しい安全性評価に合格している。友軍や罪のない傍観者に大きなリスクをもたらすのではという顧客の不安を和らげるのに役立つはずだ。

レオパルド2の乗員は4名だが、パンサーは主砲給弾に自動装填を導入し、3名(車長、砲手、運転手)に絞られた。また、必要に応じ4人目の乗員を加えることも可能で、例えばスペシャリストや小隊長などを追加できる。

乗員が戦場でより効果的に活動できるようデジタル・ネットワーク機能を備え、各乗員はすべてのセンサー、武器、パワーパック、その他のサブシステムのデータにアクセスでき、必要に応じ呼び出すことができるようになる。各乗員が他の乗員からタスクを引き継ぐことができるため、同戦車は将来的に無人砲塔を搭載するのにも適しており、おそらく完全無人化バージョンもあり得る、とラインメタルは述べている。

KF51パンサーのアーティストコンセプト。 Rheinmetall

また、NGVA(NATO Generic Vehicle Architecture)と呼ぶオープンアーキテクチャーシステムにより、センサーや兵器の迅速な統合が可能となり、他のプラットフォームと相互運用性が向上するため、全体的な効率性も向上する。

パンサーがフランスでデビューしたのは皮肉といわざるをえない。このMBTがフランスとドイツ両国の戦車部隊の将来に影響を与える可能性があるからだ。

仏独両政府は、MGCS(Main Ground Combat System)のもと、開発費約16億ドルを投じ、フランスのルクレールやドイツのレオパード2に代わる新型MBTを開発中だ。MGCSは、フランスのNexterとドイツの陸上システム産業のもう一つの巨人Krauss-Maffei Wegmann(KMW)の共同事業体KNDSを構築してる。ラインメタルもMGCSに参加する。ドイツメディアの報道によれば、同社はKNDSでの同社の地位に不満を持っているようだ。

そう考えると、パンサーは、MGCSの進む道への不満に対するラインメタルの回答である可能性が高く、独自に打って出ただけでなく、新型MBTを急速開発したことに意義がある。ドイツ政府とあわせ、東欧の治安情勢がここに来て悪化しているため、戦車隊の再構築を検討中のその他国にもシグナルとなる。

ラインメタルがMGCSと同等の火力を持つMBTを迅速に市場に投入できれば、国内受注と輸出顧客の関心を確保できるかもしれない。レオパルド2は、特にヨーロッパで成功を収めており、ラインメタルはそれを生かすことができるはずだ。アジア太平洋地域も、MBTで可能性のある市場だ。興味深いことに、ラインメタルは、少なくとも当初はドイツ市場を主ターゲットしそうだ。そうなれば、独仏共同のMGCSは明らかに弱体化する。

2018年にドイツ、米第7陸軍訓練司令部のグラーフェンヴェール訓練場で開催された「ストロングヨーロッパタンクチャレンジ」を前に点検中のフランス軍ルクレールとドイツ軍レオパルド2A6。U.S. Army

もうひとつの主要防衛プロジェクトである、やはりフランスとドイツが主役の「未来型戦闘航空システム(FCAS)」が苦戦していることが注目される。最近の報道によると、有人戦闘機が中心の航空戦力システムの整備が遅れているようだ。ダッソーCEOであるエリック・トラピエÉric Trappierによれば、2040年就航と予想されていた同機が実用化されるのは2050年になるという。一方、ドイツはF-35Aステルス戦闘機の購入計画を発表し、この動きにフランス政府関係者は落胆している。

ドイツ陸軍のレオパード2後継機が登場するタイミングは、運に恵まれているようだ。ウクライナ紛争に対応するため、ベルリンは軍の近代化に乗り出し、2022年度予算から1120億ドル超の「特別基金」が新装備購入のために計上されている。同時に、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、NATOの意向に沿って、国防費を国内総生産の2%に引き上げるという公約を強調した。

 

NATO前方展開強化戦闘群の一員として1000人以上のドイツ兵が駐留するリトアニアのアドリアン・ローンのキャンプで、ギタナス・ナウセダ・リトアニア大統領(左から3番目)と共に兵士と話すドイツのオラフ・ショルツ首相。Photo by Michael Kappeler/picture alliance via Getty Images

ウクライナで戦車戦が目立つため、新型MBTを購入することが議題に上る可能性がある。ここでパンサーは、2035年から就役する予定だったMGCSに対して優位に立つはずだ。MGCSプログラムの技術実証機として、ルクレールとレオパルド2のコンポーネントを組み合わせた「強化型主戦闘車」が2018年に公開されたものの、その後は進展は鈍い。

一方、ドイツ以外では、ロシア国境に近い国々も、モスクワの侵略を思いとどまらせるために、特に陸上戦力の強化を検討している。ドイツのメディアでは、少なくとも東欧の1カ国が新型MBTに関心を示していると報じた。同地域の数カ国、特にNATO加盟国にとって、新型装甲車両の必要性は緊急性を帯びている。ポーランドが一時MGCSを購入する可能性が示唆されていたが、米国製のM1A2SEPv3エイブラムス戦車250両を選択し、余剰のソ連時代のT-72をウクライナに納入した後、エイブラムス納入を加速させることを検討中だ。

ウクライナ戦争では、各国が自国の余剰戦車をキーウに提供したため、ヨーロッパ各地で戦車の譲渡や納入が相次いでいる。ドイツは中古MBTをウクライナに引き渡すのが著しく遅くなったが、欧州の他地域で戦車部隊の再編成が進んでおり、戦車の補充が必要になる可能性がある。例えば、チェコ共和国はウクライナに寄贈したT-72の代わりにドイツから余剰レオパルド2A4戦車15両を受け取っており、これに続いてレオパルド2A7+戦車50両を追加発注する可能性がある。この機会に他の国も新型戦車を購入する可能性があり、パンサーは候補のひとつとなる。

ウクライナ紛争を契機に、戦車全般の将来像が改めて議論されるようになった。重装甲が大きな役割を果たす一方で、MBTの各種兵器で脆弱性も浮き彫りになってきた。KF51パンサーは、ある意味で、そうした現実をさまざまな角度から解決するものにも思われる。全体として、現行MBTより軽量で機敏、大型主砲を搭載し、待機監視と滞空弾による攻撃能力を備える必要がある。

KF51パンサーは、非常に興味深い時期に登場し、最終的に、ドイツなど各国のMBT部隊の未来を形作る可能性がある。■

 

New KF51 Panther Tank Packs Big 130mm Gun Aimed At Aging Leopard 2

BYTHOMAS NEWDICKJUN 13, 2022 1:00 PM

THE WAR ZONE

 


ウクライナ戦の最新状況(現地時間6月14日現在) ウクライナ軍の損失が増えている

 

6月13日時点でのドンバスの状況。(ISW)


シアによるウクライナ侵攻が始まり111日が経過した。火曜日、戦闘の大部分はセベロドネツクとその周辺で行われ、ロシア軍は同市攻略を懸命に推し進めている。


ドンバス地方での戦闘

セベロドネツクと周辺での戦闘は続いている。ロシア軍は、市外につながる最後の橋を破壊したが、同市を完全には包囲できていない。セベロドネツクとリシチャンスクを結ぶ橋は、同市で抵抗するウクライナ軍の主要な補給線だった。

 「ロシア軍はセベロドネツク中心部からウクライナ守備隊を排除し、6月13日にセベロドネツクからリシヤンスクに至る残る橋を破壊したと伝えられたが、ウクライナ当局は、ウクライナ軍は同市で包囲されていないと報告している。ロシア軍は、ポパスナとバフムート付近でウクライナの地上通信線(GLOC)を切断するべく地上攻撃を行ったが、失敗した。ロシア軍はイジュム南東とスロビャンスク北で攻撃作戦を展開したが失敗し、シヴェルスクとウクライナ北西部のリシチャンスクへのGLOC襲撃の条件を整えているようだ」と戦争研究所は最新の推定で評価している。

 ロシア軍はドンバスで包囲を締め始めているが、ウクライナ防衛隊は持ちこたえている。

 またロシア軍はハルキウ近辺でウクライナ軍を押し戻し、ウクライナ砲兵隊にロシア国内を目標にさせないよう圧力をかけている。


ロシア軍の損失

ウクライナ軍は連日、ロシア人犠牲者数を発表している。公式の数字だが、個別に検証されたものではない。

 しかし、欧米情報機関による評価や独立した報告書は、ウクライナ側の主張する犠牲者数をある程度裏付けている。例えば、オープンソースの情報調査ページ「オリックス」は、600両以上のロシア戦車を破壊または拿捕したのを目視で確認しており、この評価は英国国防省によって確認されている。

 他のウクライナの主張のほとんどについても、同様に独立した検証が存在する。つい最近、米国防総省は、ロシア軍が1,000両以上の戦車、数十機の戦闘機やヘリコプター、各種戦闘車両数千台を失ったことを認めた。

 さらに、西側情報機関を引用した最近の報道では、ロシア軍はこれまでの戦争で最大2万人の戦死者を出したという。

 実際の数字を確認するのは、現地にいないと非常に難しい。しかし、戦争の霧やその他の要因を調整した後、西側の公式数字はウクライナの主張とかなり近くなっている。

 火曜日現在、ウクライナ国防省は以下のロシア損失を主張している。

  • 戦死32,500(負傷、捕虜は約3倍)

  • 装甲兵員輸送車3,503台

  • 車両および燃料タンク2,473

  • 戦車1,434

  • 大砲721

  • 戦術無人航空機システム588

  • 戦闘機、攻撃機、輸送機 213

  • 多連装ロケットシステム(MLRS)226

  • 攻撃・輸送用ヘリコプター179

  • 巡航ミサイル125

  • 対空砲台96

  • 架橋装置などの特殊装備53

  • ボートおよびカッター13

  • 移動式弾道ミサイル「イスカンダル」4


ここ数週間、ドンバスで継続的な圧力と攻撃作戦にもかかわらず、ロシアの死傷者の割合は大幅に減速している。このことは2つのことを示唆している。1つは、ロシア軍の指揮官が攻撃作戦に慎重になっており、目的を達成するために複合兵器を十分に活用していること、もう1つは、ウクライナ軍が戦闘力や弾薬を使い果たしつつあること、これは3カ月以上にわたってロシア軍と戦っていれば予想されることである。最近の現地からの報告によると、この2つの要因はいずれも事実であり、戦闘疲労が双方に追いついてきているようだ。

 先月の大半は、スロビャンスク、クリビヤリ、ザポリジャー周辺でロシア軍の死傷者が最も多く、激しい戦闘が行われていたことを反映している。日が経つにつれ、激戦地区はスロビャンスクの南東バフムト方面、セベロドネツク、ライマン周辺に移行していった。

 その後、ヨーロッパ最大の原子力発電所があるザポリジヤ周辺でのウクライナ軍の反攻により、最多の犠牲者が出た場所は、再び西に移動した。

 火曜日、ウクライナ軍は、ロシア軍が進攻しセベロドネツクを後方から遮断しようとするバフムト付近で最大の死傷者を出した。

 ロシア軍の東部での再攻撃の目的は、ドネツクとルハンスクの親ロシア派の離脱地域を完全に支配し、これらの地域と占領下のクリミアの間に陸上回廊を作り維持することであると表明している。■


Your tactical update on Ukraine (June 14) - Sandboxx

Stavros Atlamazoglou | June 14, 2022


2022年6月14日火曜日

トップガン:マーベリックに登場のダークスターはSR-72の存在を示唆するのか。ロッキードがダークスター製作に携わっていた。


Sandboxx Newsでは、『トップガン』に登場する極超音速航空機ダークスターの実物大モックアップ開発にロッキード・マーティンの伝説的なスカンクワークスが直接関与していたという話を伝えた。この記事は世界中で引用され、トップガンのプロデューサーとディレクター、ジェリー・ブラッカイマーとジョー・コシンスキーのインタビュー動画は、YouTubeだけで130万回以上の再生回数を記録している。



ロッキード・マーティンに同機に関し問い合わせたところ、同社は関与を認めたものの、スカンクワークスは秘密主義の評判にたがわず、ウィンクやうなずき程度にしか答えてくれなかった。


極超音速とは、マッハ5(時速3,838マイル)を超える速度の兵器や航空機を指す。極超音速ミサイルは、この速度と機動性で現在のミサイル防衛システムで迎撃は不可能と考えられている。


だが、ダークスターは架空の機体ではないかもしれず、ロッキード・マーティンはこのような航空機の開発に長い間取り組んできた。



トップガンに登場したダークスターはロッキード発表のSR-72想像図が原型なのか


Lockheed Martin SR-72 renderingLockheed Martin render of the SR-72.


『トップガン マーベリック』は36年たって制作された続編だが、ダークスターは、ロッキード・マーティンが開発した伝説のSR-71ブラックバードの後継機SR-72として期待されていた以前のレンダリング画像と酷似している。


当時、私たちはロッキード・マーティンがこの映画に関与していると知らなかった。しかし、垂直尾翼が1本から2本になったのを除けば、パラマウントが架空の航空機をデザインする際に、SR-72を念頭に置いていたと信じるに足る類似性がある。


Lockheed martin Darkstar toy and SR-72 rendering(上)ロッキード・マーティン発表のSR-72想像図、(下)『トップガン マーベリック』に登場したダークスターの玩具


問題は「トップガン」だ。マーベリックの舞台は架空の世界で、マーベリックのようなパイロットは、問題のある行動や安全規制の完全無視にもかかわらず、英雄として賞賛される。それだけでなく、ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは、ボーイングレイセオンと並び、再利用可能な極超音速航空機の開発に必要な専門知識を有すると考えられる数少ない企業として、空軍からリストアップされている。


さらに興味深いことに、ロッキード・マーティンは最近、映画のダークスターが活用したのと同じ種類の極超音速推進システムのテストに大きな成功を収めたと発表しており、マッハ10機の描写はSFというより、近未来を垣間見るような感じがある。


(Lockheed Martin)


国防総省予算を使った極超音速兵器プログラムの中でも、空軍研究本部(AFRL)の「メイヘム」は、一見するとミサイルに見えるかもしれないが、同プログラムは、極超音速飛行の聖杯の開発が目的だ。ただ、他の航空機と同様に離着陸できるデュアルサイクル・スクラムジェット推進システムを開発する。


スクラムジェット(超音速ラムジェット)は新技術ではない。何十年も前からテストされているが、今日までミサイルや航空機にスクラムジェットを実用化した国はない。超音速で噴射口に流れ込む空気の力でエンジン内の空気を圧縮し、燃料と混ぜて後方で爆発させて推進力を得る。ロッキード・マーティンによると、この取り組みにより、航空機をマッハ6、つまり時速4,600マイルを少し上回る速度まで持続的に推進できるという。


空軍が開発中の極超音速機は劇中のダークスターとそっくりなのか


(Lockheed Martin)



しかし、圧縮には高圧気流を必要とするため、離着陸時の低速では機能しない。そのため、現在テスト中の最新鋭のスクラムジェットでさえ、別の航空機で上空に運ぶ必要があり、ロケット発射してからスクラムジェットが始動する。


AFRの情報要求書(ROI)を見ると、メイヘムは乗員なしの再利用可能な極超音速無人機の実現をめざす可能性が高いと思われる。ROIでは、攻撃作戦と情報・監視・偵察(ISR)作戦という2種類の任務を遂行可能な無人機を要求している。言い換えれば、メイヘムは、通常のジェット機のように離着陸し、飛行の途中で極超音速を達成し維持できる航空機の実用化を目指している。さらにROIは、この新型機が搭載する2種類の兵装について、「地域効果ペイロード」と 「大型ユニットペイロード」と規定している。


しかし、メイヘムがめざすのは、スクラムジェットに切り替えるのに十分な高さと速度になるまで低速で機能できるデュアルサイクルエンジンだ。



NASA - How Scramjets WorkNASA発表の説明資料でわかるが、スクラムジェットには内部可動部品はないので効率は最高になるが、設計は極めて難易度が高い。



メイヘムの正式名称は最近、"Expendable Hypersonic Multi-Mission Air-Breathing Demonstrator" から "Hypersonic Multi-mission ISR and Strike" に変わり、"Multi-Mission Cruiser" とも言及されている。標的に向けて発射するだけのミサイルではないことを強く示唆している。「消耗品」という言葉の削除と「マルチ・ミッション」という名称は、メイヘムが世界初のデュアルモードまたはタービンベース複合サイクル(TBCC)極超音速推進システムを活用した再利用可能かつ自律運用可能な機体をめざしているのを示唆している。


前述したように、ロッキード・マーティンは空軍研究本部がこの課題を達成できると考えている数少ない企業の1つであるだけでなく、実際に数年前からダークスターに似た極超音速基SR-72の手がかりを残してきた。


ロッキード・マーティンは極超音速スクラムジェット運転に成功していた


2022年3月、国防高等研究計画局、エアロジェットロケットダインAerojet Rocketdyne、ロッキード・マーティンは、米露間の緊張を抑えるため翌月まで報告しなかったが、「Hypersonic Air-breathing Weapon Concept(HAWC)」の飛行実験に成功している。


同実験は、HAWC計画として実は2回目の成功であり、ロッキード・マーティンのスクラムジェットシステムとしては初のものであった。2021年9月の前回の成功もHAWCプログラムだったが、ノースロップ・グラマンのスクラムジェットを活用した。一連の成功は、米国が高速空気取入れ式推進システムを使用する兵器の実戦配備でリードしていることを示唆している。


米国は極超音速兵器を通常兵器に限定しているため、競合他社の抑止システムにない課題が多くある。核兵器は爆発半径が大きいので、低精度兵器でよい。通常弾頭の極超音速ミサイルは、標的を破壊するため要求される精度がはるかに高い。



HAWC missile renderingDARPAによるHAWC想像図


非核の極超音速兵器は戦略的価値がある一方で、非常に高価となるため、開発の意義に疑問を呈する声もある。極超音速兵器は防空能力を打ち負かせるが、同じ結果は低速、安価なシステムを大量使用することでも達成可能だ。敵の防空能力を圧倒すれば、トマホークのような亜音速巡航ミサイルでも、目標撃破が可能となる。


しかし、極超音速攻撃機があれば、迎撃を阻止できる。このような航空機は、低コストの通常兵器を投入した後、着陸し再武装して危険な場所からスクラム(噴射)できる。そうすれば、超音速の攻撃能力をすべて手に入れる上に、ピカピカのスクラムジェット機を標的にはりつける必要はない。


メイヘムは、より大きなペイロードを何度も飛ばすことができる、大型スクラムジェットの開発でロッキード・マーティンが大きく関与しているようだ。


ダークスターは映画だけの存在ではない?


lockheed martin darkstar(Lockheed Martin)


6月3日、ロッキード・マーティンのTwitterに、「ジム」とだけ名乗るスカンクワークスのコンセプトデザイナーが登場するダークスターに関する短い動画を投稿された。ジムは、自分が取り組んでいる「ほとんどのこと」について話せないと述べている。


30秒のビデオの最後の発言は、航空機設計の裏に真実があることを示唆しているのかもしれない。


「私の名前はジムです。ダークスター開発に携わり、ここロッキードマーティン・スカンクワークスで未来の構想を練っています」。


しかし、ジム発言を深読みされないように、ロッキード・マーティンのダークスターのウェブページは、ダークスターが実際の機密プログラムとDNAを共有している可能性について、多くを実行中と明言している。


「トップガンのマーベリックチームは、限界を超えたスピードに忠実に描こうとして、スカンク・ワークスが真っ先に呼ばれました。最速の航空機を開発してきたスカンク・ワークスの専門知識と航空宇宙の未来を定義する情熱とエネルギーがあれば、ダークスターは単なるフィクション以上のものになるはずだ......。現実となりうるのです...」(ロッキード・マーティンの「ダークスター」ウェブページ)


ウェブサイトでは、スカンク・ワークスがパラマウント社の制作チームに協力して、撮影用に実物大モックアップを製作したにもかかわらず、ダークスター自体は実在しない航空機と説明している。しかし、極超音速飛行が同社にとって重要分野だとも説明している。


「ダークスターは実在しないかもしれませんが、能力は本物です。極超音速技術、すなわち分速60マイル以上の飛行能力は、30年以上にわたる極超音速への投資と開発・試験の経験を活かし、当社チームが進化中の能力です」。


ヒントは数年前にあった

Darkstar Lockheed Martin(Lockheed Martin)


2018年に遡るが、ロッキード・マーティンの先行開発プログラム戦略・顧客要求担当副社長、ジャック・オバニオンJack O’Banionが、フロリダで開催された米国航空宇宙学会主催の「SciTech Forum」に登壇した。オバニオンは背後のスクリーンにSR-72のアーティスト・レンダリングを映し、あたかも同機がすでに存在し、試験で成功を収めているかのように語った。


「デジタル変革がなければ、この機体は作れなかった」と、オバニオンは2018年の聴衆に語った。「エンジンそのものを作れなかった。5年前に作ろうとしたら、溶けてしまっていただろう。しかし今は、エンジン素材に信じられないほどの高性能冷却システムを組み込んだエンジンをデジタルプリントしており、エンジンが日常運転を繰り返しても残っています」。


オバニオン発言は、SR-72が設計図上でしか存在しない航空機ではなく、ある程度のテストが行われた機体であると示しているように思えた。そして、その主張の証拠がある。


その1年前の2017年、Aviation Weekは、パームデールにある米空軍の42工場付近で、無人のサブスケールSR-72技術実証機と思われるものの飛行が目撃されていると報じた。スカンクワークスの拠点と同じ場所だ。Aviation Weekはロッキード・マーティンのオーランド・カルバルホOrlando Carvalho航空部門上級副社長に連絡を取った。


「具体的なことはお話できませんが、カリフォーニア州パームデールのスカンクワークスチームは、スピードへのコミットメントを倍増させているとだけ言わせてください」とAviation Weekに述べていた。


「極超音速はステルスに類似します。画期的な技術であり、ブラックバードの2~3倍の速度で飛行できるようになります...セキュリティ分類ガイダンス上では、速度はマッハ5以上としか言えません 」。


極超音速兵器に触れたプーチン演説の直後にロッキードはSR-72関連ウェブサイトを削除していた

lockheed darkstar SR-71 Blackbird2018年のロッキード・マーティンのSR-72のウェブページ。


ロッキード・マーティンは2013年にSR-72専用ページを開設し、2015年に更新した。同年、ポピュラー・サイエンスはこのプログラムをカバーストーリーにした。


2018年3月1日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、世界初の運用可能な極超音速兵器Kh47M2キンザルと、ロシアの核超音速ブーストグライド兵器アバンガルドの実戦投入計画を発表し、悪名高い演説とした。同演説が、極超音速兵器開発競争の始まりとされている。


キンザルは噂と違っていたが、プーチン発言は、世界中に、新兵器の能力に不安を抱かせることになった。


興味深いことに、プーチンがロシアの極超音速兵器を発表した直後、ロッキード・マーティンは自社ウェブサイトから極超音速航空機プログラムSR-72に関する記述をすべて削除した。しかし、Wayback Machine(古いウェブサイトを保存するインターネット・アーカイブ)を使えば、ページにアクセスできる。


削除されたSR-72のウェブサイトによると、ロッキードはスクラムジェットで飛ぶ航空機を2030年までに実用化可能と主張していた。そして、そのためエアロジェットロケットダインと協力中との記述が注目される。ロッキードが最近HAWCプログラム用のスクラムジェット試験を成功させたのと同じ会社だ。

「極超音速機は、高価で縁遠い存在ではありません。 実際、SR-72は2030年までに実用化されていてもおかしくありません。ロッキード・マーティン・スカンク・ワークス®はエアロジェット・ロケットダインと共同で、市販のタービンと超音速燃焼ラムジェット空気呼吸ジェットエンジンを統合し、静止状態からマッハ6まで航空機を駆動する方法を開発しました」と、ロッキードマーティンのウェブサイトは2018年に述べていた。


その結果、Aviation Week誌が「ブラックバードの息子」と呼んだSR-72は、高性能と手頃な価格のシステムレベルで最適化された統合エンジンと機体だ、とも説明した。


ダークスターは実在するのか

Lockheed Martin ダークスター render


ひとことで言えば、「ノー」だ。ダークスターはトップガンで特別にデザインされたフルサイズのモックアップだ。ジェリー・ブラッカイマーは、中国がスパイ衛星の向きを変えモックアップを間近で見られるようにした言っているが、ハリウッドの誇大広告かもしれない...あるいはダークスターは本物ではないが、それに似たものがあるかもしれない、との兆候かもしれない。


ダークスターとSR-72コンセプトの最も明らかな違いは、マーベリック自身だ。SR-72は、無人機として構想されてきた。極超音速飛行は人体の生理学上でも実現可能とはいえ、開発の際に現実的な課題がある。


SR-72 concept PACE2021年に空軍のProfession of Arms Center of Excellence (PACE)が公表した映像のスクリーンキャプチャ


商業・防衛用途で再利用可能な極超音速機の開発に取り組むハーマーズHermeusと話して分かったことは、極超音速飛行に固有のGフォースは、高いマッハ速度への遷移が緩やかなら、搭乗員に大きな問題にはならないだろう、ということだ。宇宙飛行士は、再突入時にマッハ25超となるが問題はない。最大のハードルは、高度10万フィート以上から時速4,000マイルを超えるスピードで放出されたときに、パイロットが生き延びる方法だろう。


また、パイロットを乗せれば、生命維持装置、制御装置、ディスプレイ、射出座席、コックピットキャノピーは重量増を生む。


しかし、もしロッキード・マーティンが空軍研究本部のメイヘムとしてSR-72のコンセプト研究を続けているとしたら、中国はダークスターを覗き見しようとしていたのかもしれない。結局のところ、ロッキード・マーティンが2018年から秘密裏にSR-72の作業を続けていたのなら、覗き見する価値がある。


SR-72はすでに存在しているかもしれないし......あるいは、まだパームデールのどこかの製図台上にしかないのかもしれない。いずれにせよ、ひとつだけ確かなことがある。ロッキード・マーティンのスカンク・ワークスは、映画作品上の極超音速飛行以上のものに目を向けているのだ。■


Is there a real secret aircraft behind Lockheed and Top Gun's Darkstar? - Sandboxx

Alex Hollings | June 6, 2022


Alex Hollings

Alex Hollings is a writer, dad, and Marine veteran who specializes in foreign policy and defense technology analysis. He holds a master’s degree in Communications from Southern New Hampshire University, as well as a bachelor’s degree in Corporate and Organizational Communications from Framingham State University.