2015年9月15日火曜日

シリア情勢>ロシアの動きに神経を尖らせる米はじめ西側諸国 難民問題の遠因はロシアではないのか

ロシアの動きが西側の警戒心を招いていることは明らかですが、西側がアサド政権の消滅を狙っている以上同盟関係にあるロシアも別個動かざるを得ないという構図ではないでしょうか。そうしている間にシリアが国家として崩壊に向かい、もっと多くの難民が国外に脱出することになるでしょうね。

US: Russian Military Buildup Continues In Syria

Agence France-Presse9:39 p.m. EDT September 9, 2015
WASHINGTON —シリア国内で軍事力を増強するロシアを米側は警戒している。ロシアの意図は不透明なままだ。
  1. 偵察画像からロシアがバセル・アル・アサド国際空港、地中海側のラタキアとタルタスのロシア海軍施設に重点を置いていることがわかる。
  2. 匿名を条件に米関係者はAFP通信にタルタス港に戦車揚陸艦2隻が入港し、ロシア製装甲兵員輸送車十数台がバセル・アル・アサド空港に到着していると告げた。なお、同空港の名称は現大統領の兄にちなむもの。
  3. 同関係者はシリアにロシア海軍陸戦隊が到着しているといい、その役割は到着する軍事ハードウェアの防御で、直接戦線に向かうことはないとする。
  4. 巨大なアントノフAnt-124コンドル軍事輸送機が同空港に飛来しており、この数日間で輸送飛行の回数が急増しているという。
  5. AFPは火曜日にロシアが「数百名」分の組み立て式家屋を同空港に完成させ、簡易式航空管制施設も持ち込んだと伝えている。
  6. シリア内戦はさらに悪化の様相を示しており、2011年から今日まで25万人が死亡したといわれる。これが引き金となり難民が発生し、ヨーロッパに多くが向かっている。
  7. ロシア政府は人道救難援助だとしているが、米国はロシアが長くからの同盟アサド政権を助けるべく反乱分子の攻撃をするのではと憂慮している。
  8. 「情報各機関ではこの点で合意が生まれているわけではない」と別の米政府関係者は述べている。
  9. 「ロシアのいうことは割り引いて聞く必要がありますね。ロシアは常に透明性をもって正直に意図を示していません」とし、ロシアがウクライナ東部で分離独立を目指す勢力を支援していることを一貫して否定してきた事実を参照している。
  10. シリアは国内でロシア軍が活動を展開しているとの報道を否定しており、搬入された武器類はアサド政権とのつながりの延長だと主張。
  11. ホワイトハウスの副報道官エリック・シュルツは水曜日に米国としてはロシアがイスラム国へ対抗するべく貢献するのであれば歓迎すると述べた。ただし「.ロシア含
  12. 軍事装備の増強が見られるが、ロシアが軍事装備あるいは重火器を送り込んだ証拠はないと関係者は見ている。米軍関係者はシリアに到着したロシア軍要員は「50名未満」だという。
  13. ロシアは装備品をシリアへの空輸することに困難を感じている。
  14. ブルガリアから自国領空のロシア機通過を9月1日から24日かけて認めなかったとの発表があった。これがロシア政府の逆鱗に触れた。
  15. 一転してブルガリアはシリアヘ向かうロシア機の上空通過を認めると発表した。ただし積み荷の確認が条件だという
  16. ブルガリアが領空通過を認めない場合、ロシアはイラン、イラク上空の空路に切り替えるだろう。■


2015年9月13日日曜日

★ここまでわかったLRSB、でもまだ大部分は秘匿のまま





USAF's Secret Bomber: What We Do And Don’t Know

Air Force hints at a solid plan to procure a new stealthy bomber, but details remain shrouded in secrecy
Sep 10, 2015Amy Butler | Aviation Week & Space Technology
総額800億ドルともいわれる新型爆撃機の選定結果発表が近づく中で知らされていることが知らされていないことより少ないのはやむを得ないのだろうか。
  1. 長距離打撃爆撃機(LRSB)と呼ばれる同機に要求される航続距離、ペイロード、最高速度については知らされていない。また同機が軍の他装備とネットワークでどこまで結ばれるのかも知らされていない。エンジンの数も知らされていない。また重量30,000-lb.の大型貫通爆弾を運用できるのかも知らされていない。なお、B-2はこの運用が可能だ。こういった点が設計を決定してくる。つまり同機がどんな外観になるのか誰もわからないままで、わかっているのはステルス性の機体となり、B-2に似た三角翼になるのか、もっと変わった形になるのかもしれないという点だけだ。
  2. わかっているのは新型ステルス技術が応用され、F-35を超えたステルス性能、残存性、生産のしやすさ、保守点検の容易さが実現することだ。また最新鋭の推進力、防御能力、通信技術に加え製造技術でも全米から最良の部分が集められることだ。
  3. 空軍によるブリーフィング(9月1日)では内容が慎重に統制されていたため、結局のところ同機の調達手順でわかったことはごくわずかだ。というよりも空軍が開示したい情報だけだ。関係者からは迅速戦力実現室(RCO)が関与し、通常の調達部門ではないとの説明は出ていた。ただし空軍によるブリーフィングではRCOの活用は従来型の調達部門を低く見ていることではないとの説明があった。鍵となる技術(その内容はまだ公開されていない)の選定、開発、統合のなため必要なのだという。
  4. RCOは2ワシントンの防空体制を向上させることを目的に003年に発足した。RCOでは指揮命令系統も従来と異なり、室長は参謀総長、空軍長官、調達部門長含む委員会の直属となる。ただし委員会を束ねるのは調達トップのケンドール副長官だ。つまり長官官房(OSD)が同機事業に異例の影響力を与えていることになる。
  5. RCOは極秘技術の理解度が高く、迅速に技術を実用化する経験も豊富だ。業務内容は多くが秘匿内容だが、LRSBの統括部門として最適だとブリーフィングで空軍関係者も述べている。業績にはX-37宇宙機がある。同機は極秘ペイロードを宇宙空間にすでに運搬するミッションを実施している。
  6. ただしRCOの指名はひとつ妥協のだったのかもしれない。2010年に次世代爆撃機事業が取り止めになり、ロバート・ゲイツ国防長官(当時)が2011年に秘密メモを配信して始まったのがLRSB事業だ。ゲイツ長官は空軍がKC-135、HH-60Gでともに後継機種選定につまづいているのを不満に思い、イラク・アフガニスタンで情報収集機材の配備が遅れていることにも苛立っていた。新型爆撃機を成功させるためにもこんな結果しか出せない従来の仕組みに頼るのはいやだとRCOが生まれた。OSDが後ろから支えてLRSBのフライアウェイ価格を2010年ドル価格で550百万ドルと設定したのは前例のない話だ。
  7. 空軍はノースロップ・グラマン、ボーイング=ロッキード・マーティンの双方に資金を提供してリスク低減策として推進手段の統合、アンテナ設計を始めさせた。ステルス機では通信アンテナを機外に装着できない。両チームとも初期設計審査段階を終えたか、実施中と見られ、これまで考えられていたより先行している。空軍からは具体的な発表がないが、言わんとするメッセージは明白だ。空軍は新型爆撃機調達の過程は順調で、B-2やF-35の轍は踏まないと言おうとしてる。国防支出で不信感を抱く議会に爆撃機案件を売り込もうというわけだ。
  8. ここまではぼんやりとわかってきたが、LRSBの大きな謎はその機体形状だ。ペンタゴンは一貫して同機を秘密扱いとしてきたが、同じペンタゴン内部に、安上がりな機体でいいのではとの声がある。次世代爆撃機では対照的に高価で高い水準を希求していたが、敵防空網を突破すれば独立して動く発想で、機体は非常に複雑かつリスクが高くなった。LRSBの最終選定発表を控えたペンタゴンは現実に合わせていく必要がある。
  9. 高度に防衛体制が整った目標の攻撃を世界上いかなる場所でも行うためにLRSBは必要だと関係者は言う。ステルス巡航ミサイルでも目標を狙えるが、て防空網施設や地下深くに構築された指揮命令所や核関連施設の破壊は頭の痛い課題だ。これらの攻撃には高度に精密な貫徹兵器が必要だが、打ちっぱなしミサイルでは難しい。また1980年代の技術製品であるB-2も20機弱しかなく、敵の防空体制が比較にならないほど強力になった今では見劣りがする。
  10. 9月1日のブリーフィングで調達業務の一端が垣間見られたが空軍が言うように健全な管理だといえる。最終選考後には経費プラス報奨金方式の契約とし、政府が一部リスクを負担するものの報奨金により契約企業が具体的な成果を上げないのに利益をむさぼることを防ぐ。空軍は初期の5ロットは固定価格制で19機から21機を調達する。うち4ロットは固定価格で打第5ロットは上限価格以内とする。その後第六ロット以降を再交渉する。この方式だと選定に残った企業にはコストダウンのプレッシャーが大きくなる。超過分は自社負担となるためだ。
  11. ただし選考の重点項目は何なのか発表はされていない。
  12. 開発段階ではテスト機材(機数未公表)を通例どおり導入する。通常兵器運用から開始するのは核兵器運用には配線、機体強度が必要となるためだ。ただし空軍としては核兵器の初期作戦能力獲得を遅らせるわけにも行かず、2020年代中ごろを目標に時間をかけて核運用の認証を目指す。このため規模は不明だがLRSBの一部が第一線からはずされ核運用テストにまわされる。
  13. 戦略軍団司令官セシル・ヘイニー海軍大将Adm. Cecil Haneyは核運用型は2030年までにほしいとする。「LRSBには期待している。特に核運用ではLRSBを念頭に置いた運用コンセプトを作成中だ」と語っている。
  14. 選定結果次第で米航空宇宙産業に大きな地殻変動が発生すると見るアナリストが多い中、ノースロップが敗れた場合は企業存続のため大幅なリストラ策で分社にいたるのではないかと見る向きもある。
  15. もっと可能性があるのが、敗退してもペンタゴンの大手受注企業として残ることで、まだ大口案件は残っているからだ。たとえばT-38高速ジェット練習機の後継機調達や新型偵察機の案件がある。「一時的に影響はあるでしょうが、もともと愛国的な企業が多いので敗退した側にも企業経営上は打撃は最小にとどまるでしょう」と見るのはレベッカ・グラント(爆撃機事業を支持するIRIS独立研究所の社長)だ。
  16. ロッキード・マーティンもボーイングも単独で爆撃機事業に手を上げることもできたはずだが、二社が手を結んだのはこれまでのライバルを超えて何とかしてノースロップに勝とうという意向が働いたためだろう。
  17. カリフォーニアで成立した立法措置により新型爆撃機の大部分は同州内で製造されることになる。ノースロップ・グラマンは早速政界に働きかけどちらが受注しても同じ内容の税制優遇策を得られるよう手を回している。同州法案が成立し、パームデールで生産するロッキードが有利になるよう420百万ドルを同州が拠出する内容とわかってノースロップは驚かされた。これだけの規模の優遇策があれば結果は明白だからだ。だが土壇場になってどちらが受注しても同じ条件になることとなり、ノースロップも自社パームデール施設がロッキードから滑走路を挟んだ位置にあるので安心できるようになった。
  18. 落とし穴がないわけではない。空軍は最近やっと同機を10年間運用した場合の費用規模を知ったようだ。議会にはこれまで331億ドルとこの二年間いい続けていた。だがこの積算は二重に間違っていたという。最新の見積もりは584億ドルとしてから417億ドルといい始めた。「まことに遺憾ながら人的ミスで誤った見積もりを発表してしまった。内部で数字を誤ったことと手順面でもミスがあった」とジェイムズ長官が8月24日の記者会見で述べている。「事業管理では外部からのチェックとバランスをはかり、金額を点検しているが、この種類の事業ではよくあること」
  19. この誤りで新型爆撃機に対する疑問が一気に増えている。「『チェックとバランス』で86億ドルも増えるとは。この違いは単なる誤差なのか、あるいは実際の性能に影響が出るのか。そもそも空軍はコスト上昇に備えてりいるのか。開発を始めるためには予算全額を確保する必要があり86億ドルは決して小額ではない。ただし空軍からはこうした疑問への回答はまだない。
  20. ゲイツ長官が決めた単価550百万ドルの生産型での上限は前例がなく、逆に言えば空軍が自信をもっていることのあらわれだ。目標の実現に失敗するぞ、と見る向きもあるが、前出グラントは「正しく管理すれば、それ以下でも実現可能」と見ている。「下手をすれば単価は三倍になるが、それ以下でも実施可能でしょう」
  21. これから10年間の米国核戦力整備で同機が最大規模の事業になりそうだ。核兵器の運用には米政府支出の55%が費やされており、その規模は2,980億ドルにのぼる。これはエネルギー省の予算も含み、核体系の維持管理と改修費用も含む、と会計検査院がまとめている。250億ドルがB-52とB-2の性能改修に、350億ドルがオハイオ級潜水艦の後継艦建造に回る。それでもLRSBはこれをはるかにうわまわる420億ドルが10年間に投じられる。
  22. ペンタゴンは爆撃機が必須と考える。議会で反対票を投じそうな動きがあり、ジョン・マケイン議員(共、アリゾナ)(上院軍事委員会委員長)とジャック・リード議員(民、ロード・アイランド)は空軍から出た費用試算の誤りの説明を求めている。そのほかにも異議を唱える向きがあるが、空軍は反論を準備した。RAND研究所が開戦後20日すると「敵陣突破するステルス爆撃機のコストは消耗品のミサイルより安くなり」これが以後30日間続くとの分析結果を出している。
  23. 現時点の爆撃機の機材構成は1950年代設計のB-52が76機、70年代のB-1が66機、80年代のB-2が20機ある。
  24. このうちB-2が防空体制で守りを固める各国へ圧力をかける切り札で、想定はイラン、北朝鮮、ロシア、中国だ。だが機数が足りないと爆撃機推進派が主張する。「B-2は高性能だが、戦闘計画の想定に対して不足している」とグラントは言う。「B-2の規模ではアジア、ヨーロッパ他での緊急事態へは抑止力効果が足りない」とグラントは述べ、新型爆撃機の必要を主張する。さらに設計案の絞込みが遅れていることを憂慮する。「新型爆撃機の生産を数年前からはじめているべきだったのです。遅れるだけリスクがましています」 会計検査院は2015年から20年までにB-52は敵防空網の突破能力を失い、スタンドオフ巡航ミサイルの発射しかできなくなると評価している。
  25. 空軍が選考結果を発表すれば、敗退した側が異議を唱え、数ヶ月にわたる選考手順が審査されることになり、新型機の設計工程が待たされる可能瀬が大いにある。■

2015年9月12日土曜日

★F-35>現状と展望 完全な機体はまだ一機もない



プロジェクト管理の視点でF-35の規模は大きすぎたのでしょうか。管理そのものがことごとく難航してきたのがF-35の歴史なのですが、これだけ自信に満ちた展望を公表するボグデン中将はどんな心情なのか、本音を聞きたいところです。とはいえ現室長になってプロジェクトがいい方向に進んできたのも事実ですが。単に機材だけでなく、インフラまで相当の規模の投資が必要だということですね。そして完全な機体はいつまでたっても存在しないのがF-35なのかもしれませんね。よく言えば進化しつづけるのでしょう。

F-35: Now For The (Next) Hard Part, Says Bogdan

By SYDNEY J. FREEDBERG JR.on September 09, 2015 at 5:30 PM

NATIONAL PRESS CLUB: ペンタゴン史上最大規模の調達事業で良いニュースは困難な初期段階がほぼ完了したこと。悪いニュースはまだ難関が待ち構えていることだ。
  1. 「時間をとられたが着実にF-35事業は進展している。加速・拡大曲面に入った」とクリス・ボグデン中将が事業統括担当官(PEO)の立場でF-35事業をこう評している。20年に渡る高い水準の技術を導入する困難な開発段階は500億ドル近くを費やして2017年に完了する。次の課題は大量生産と世界各地に展開する機材の維持管理で、種類は異なるが本質的に困難ではない。
  2. 「生産規模を3年で3倍、配備数も3倍にする」とボグデン中将はいい、年間生産を40機から120機に引き上げる。「これが達成できれば息がつける」
  3. 「最大の心配は供給体制だ」とボグデンは言い、生産規模が拡大すれば納入業者も生産を拡大する必要があるが、配備機数も増えれば同じ業者は予備部品を追加生産する必要があるのだ。双方の需要が一度に増える。多く生産すれば、多く配備されればその分だけ補給保全修理活動も増えるということだ。
  4. このため浮上するのが短期的な課題だ。F-35の完成済み機体には何らかの改修が全機で必要だ。なかでも3Fソフトウエアパッケージが重要だが、各機で相当のハードウェア改修も発生し、相当の労力を必要とする。
  5. 各型あわせて126機(テスト用19機は除外)が完成済みで、2019年末には一気に493機になる。「493機になった段階でうち何機が正しい仕様になっているのか」とボグデンはComDef会合で発言。「一機もない。生産中の機体、今後2年半で生産する分プラス完成済み機体すべてに何らかの改修作業がないと完全性能を発揮できない。これは相当の事業量になる」
  6. 代償は金額よりも時間だ。就役中の機体を改修のため集める間、パイロットは訓練に機体が使えなくなる。ボグデンもパイロット養成が急務な中でこのことを懸念している。とくに 空軍が設定したF-35Aの初期作戦能力(IOC)獲得の期日に間に合うか気を揉む。
  7. 改修作業を迅速かつ機材全体で実施するのが鍵だ。解決策の一つが「現場チーム」を派遣し基地内でF-35の整備改修を行うことで、各基地から都度機材を呼び戻し中央補給施設で作業する通例を破る。ただしF-35用の補給廠は整備すると言う。
  8. 改修作業だけではない。ALIS補給支援システムはまだ掛け声にはるかに及ばない効果しか示していないとボグデンは見ており、ソフトウェア再プログラムラボも5箇所ないと機体の性能向上ができないのだが立ち上がりが低迷している。
  9. とは言え、ボグデン中将は危機を乗り切ったと自信を感じている。問題が全て解決したわけではないとはいえ、「事前に問題を把握しており、リスク低減も相当前から手を打っており、以前ほど事態にふりまわされることはない」という。
  10. 予測がつくようになってきたという。「LRIP11ロットになれば、ハードウェア上の変更は全て完了しているはずで、3Fの性能が発揮できるようになっているはずだ。12ロットがスタートすればハード的には安定し、ソフトも機体仕様と適合しているはず。つまりリスクもコストも大きく削減できる」
  11. 生産コストはロット間で3から4%低くなっているとボグデンは述べており、「2019年価格でA型は80から85百万ドルになる。これなら手に入る性能を考えて悪くない価格だ」■


2015年9月11日金曜日

☆★★T-X>ボーイング案の初公開が近づく、F-15仕様変更提案も



T-Xでボーイングがどんな設計をしているのかが注目です。ダークホースは運航費用を大幅に下げるスコーピオンだと思うのですが。一方、F-15の方はミサイルを大量に搭載して敵の数を減らす発想ですね。モデル末期で何か哀れさも感じさせるのですが、こちらのほうが注目かもしれません。来週まで待ちましょう。

Boeing To Provide First Glimpse of T-X at Conference

By Aaron Mehta10:04 p.m. EDT September 9, 2015

Aerospace Giant Also To Unveil New F-15 Configuration at Air Force Association


  1. ST. LOUIS — ボーイングは来週に開催される空軍協会年次総会でT-X次期練習機の概要を初公開するとみられるが、観覧は一部に限られる。
  2. 同社はT-X試作機のモデルをトレーラーで会場に持込む。設計はサーブとの共同作業。年次総会はメリーランド州ナショナルハーバーで開かれる。.
  3. あわせてF-15の新諸元も紹介するだろう。空対空兵装の搭載数を16発に増やす。
  4. T-Xを見ることができるのは招待者のみでボーイング関係者によると同社ブースで公開予定はないという。つまり同機の諸元はひきつづき固く秘匿されるということだ。
  5. 見ることを許される一人がアシュ・カーター国防長官でボーイングノセントルイス事業所で事業概要の説明を受けている。
  6. 設計案から漏れ伝わる内容が少なく、ボーイングは「完全新設計」で米空軍の要求に応じた練習機を作るとだけ言われている。
  7. 設計案はサーブのグリペン戦闘機の焼き直しではないとの関係者発言が出ている。ボーイングは今年末に新型練習機の初飛行が実現するとほのめかしているが、公式発言ではない。
  8. ボーイングのファントムワークスで開発戦略をひきいるスチュ・ヴォボリルは9日水曜日に報道陣に対しサーブとの連携は「驚異的な効果」を上げていると述べていた。
  9. T-Xは旧式化したT-38練習機の代替として350機を調達する事業で業界は真剣に反応している。ボーイング=サーブ連合以外にロッキード・マーティン韓国航空宇宙工業と組んでT-50で、ノースロップ・グラマンは新型機を、テキストロン・エアランドのスコーピオンの各機が争うものとみられる。.
  10. ジェネラル・ダイナミクスはT-100で参入予定だった。同機はイタリアのアレニア・アエルマッキのM-346練習機を原型とする構想だったが、今年3月に競合から降りると発表している。アレニアは現在も米側で主契約社候補を模索しており、競作に残る意図がある。
  11. 空軍協会総会の場を借りてボーイングはF-15戦闘機の新仕様を売り込む。
  12. これは空対空ミサイル16発を搭載するもので、現行型の2倍の搭載量となる。そのため新設計では燃料タンクの位置が変わる。.F-15新仕様の売り込みは意味がある。同機の生産ラインは2010年代末で閉鎖の予定だからだ。詳細は総会と併設の展示会で明らかになるだろう。会期は9月14日から16日まで。■


2015年9月10日木曜日

★英が導入するゼファー太陽光UAVはすごい



UK MoD To Acquire High-Flying Zephyr 8 UAVs

By Andrew Chuter1:22 p.m. EDT September 9, 2015
635773979768842483-DFN-UK-Zephyr(Photo: Airbus Space and Defence)
LONDON — 英国防省は太陽光発電で高高度飛行可能なUAVを3機をエアバスから調達する。
  1. ゼファー8はエアバス・ディフェンス・アンド・スペースが製造し高度約7万フィートで三ヶ月連続滞空する性能があり、軍当局は連続監視あるいは通信中継機能が衛星や有人機の数分の一の費用で実現する。
  2. 英軍は同機を作戦能力実証の一環として2機を同時飛行させると同社でゼファー事業開発を率いるスティーヴ・ホイットビーが報道陣に明らかにした。
  3. 同社は国防省と覚書を交わしており、商談の最終段階にあるという。
  4. エアバスは同機を高高度擬似衛星 High Altitude Pseudo-Satellites と呼称し、15ないし18ヶ月後に納入を完了する。英軍はすでにゼファーの小型版で飛行テストを実施済みだ。
  5. ゼファーは14日間の連続飛行記録があり、ホイットビーによると太陽光動力の他機より性能をはるかにしのぐ。
  6. ゼファー8は翼巾28メートルに太陽光電池を搭載しプロペラ2基を回転させるもので、来年夏に初飛行する。偵察あるいは通信用ペイロードは5キロ。だが同機を上回る大きさと性能のゼファー9の設計が始まっており、二年半後に飛行可能とエアバスは説明している。
  7. 英国防省はゼファーはISTAR機材の更新用に導入する。ホイットビーによれば国防安全保障分野での応用には英国以外も関心を示しているという。
  8. シンガポールと共同でゼファーの運用可能性を検討している。またゼファー用のレーダー開発も共同で検討している。ゼファーの通信能力に着目したドイツ軍・警察当局とも検討をしており、米国防総省他機関とも将来の活用方法を検討している。
  9. ゼファーの開発元は英企業QinetiQでエアバスが事業を買収した。■


2015年9月9日水曜日

★中国元級潜水艦の性能、運用思想を推測する



ソ連時代のように現代の中国装備を限られた情報から性能や運用想定を推測する仕事が重要になってきました。中国語の壁のため西側は情報に振り回されている観があります。日本でも似たようなものですが、文化的な近似性を活かして日本ならではの情報解析ができるといいですね。その場合に必要なのが下の著者のような深い専門知識に基づいた観測です。おそらくONI海軍情報部にもパイプがある著者と思われますが、論理的に展開していく様は非常に参考になりますね。それにしても日中がそれぞれ大型通常型潜水艦を整備しているのはヨーロッパからは理解できないでしょうね。

Essay: Inside the Design of China’s Yuan-class Submarine

By: Capt. Christopher P. Carlson, USN (Retired)
August 31, 2015 2:13 PM • Updated: August 31, 2015 5:39 PM

People's Liberation Army's Navy (PLAN) Yuan-class submarine.
人民解放軍海軍(PLAN)の元級潜水艦

伸張めざましい中国の潜水艦部隊は真剣な検証と議論にふさわしい対象だ。議論は政策決定者のみならず一般市民にも有益で、その際は健全な分析を元に正確な事実を議論すべきだ。ただ残念なことに英語による人民解放軍海軍(PLAN)報道ではその両方が欠けている。直近のUSNI Newsでもこの傾向が見られる。ヘンリー・ホルストはタイプ039A/B元級潜水艦は「対艦巡航ミサイル(ASCM)を搭載し、長時間潜姿を隠すことができ、アクセスが困難な浅海で潜むことができる」と書いている。

ホルストは元級が大気非依存型出力(AIP)を搭載し、長距離ASCM発射能力を有するので沿海部の浅海域作戦に適しているとする。タイプ039A/Bが優れた対艦戦用の潜水艦であることは著者も同意するが、上記記事のポイントはデータの読み間違いによる誤解だ。本稿では同記事の誤謬を検証し、タイプ039A/B元級潜水艦は実は深海作戦用でPLANの海洋戦略では本国に近い海域で積極防衛を実施する手段だと指摘する。また同艦は台湾の沿海部での作戦行動だけを考えたものではない。

艦の大きさは

タイプ039A/B元級潜水艦が小型で水深の浅い沿海部での作戦用なのかが論点である。その根拠として元級を日本のそうりゅう級と比較している。そうりゅう級もAIPを搭載するが、問題は元級がずっと小さい、としている点だ。

ホルストはそうりゅうの喫水を10.3メートルとしてるが疑わしい。潜水艦の喫水が船幅より長いときはデータを確かめたほうがよい。10.3メートルというのはそうりゅう級の船幅ではなく、同艦の最深部であり、竜骨から甲板までの垂直長である。喫水はこの最深部の一部だ。公開情報ではそうりゅうの喫水は8.5メートルで、同艦の写真を見ると8.3メートルとあり、公表さ数字にかなり近い。

同様にタイプ039A/B元級潜水艦の寸法も不正確だ。ただし、これは西側情報源がいつも不正確であることを反映しており、ホルストもこう言っている。「PLANの建艦技術陣は宋級と同じ寸法でAIPシステムを搭載させた」。 ホルストは元級の設計ではその大きさから代償も発生したというが、具体的に何かを示していない。PLANの建艦部門は必要なスペースの確保に成功したと言っているだけだ。この言い方では鋭さが欠けていると言わざるをえない。

潜水艦とはもともと小型で内部容積も限られる。大型推進機関を入れてもAIPの空間を確保できるほど事は簡単ではない。特に冷却酸素タンクは相当の空間を必要とし、潜航時間が長いとタンクも大きくなる。宋級にそれだけの容積がそもそもあれば、もっと小型になるはずだ。宋級の内部に利用していない空間があるとの証拠はない。タイプ039Gの画像を見ると本当に艦に余裕がないことがわかる。宋、元ともに二重船殻型式なので設計陣は燃料タンクが圧力船殻の外部タンクに積められているのだろう。元級はAIPを搭載するため大型化が必要になった。

Google Earthや手持ちカメラ写真からこのことがわかる。両方の級の潜水艦が横に停泊しているのを見れば、元の全長が宋級より長いのがわかる。タイプ039G宋級の艦幅が7.5メートルと狭いのはほぼ正しいといえる。さらに手持ち写真から元級は全長のみならず喫水も宋級より大であることが伺われる。

Soryu-class submarine, Hakuryu during a visit to Guam in 2013. Note the bow draft markings show the submarine’s draft is about 8.3 meters. US Navy Photo
そうりゅう級のはくりゅうがグアムへ2013年寄港した際の写真では艦首の喫水表示から同艦の喫水が8.3メートルだとわかる。US Navy Photo

中国潜水艦はロシア式のマーキングを採用しているため艦の外側に喫水表示がない。中国潜水艦では長い白線で浮上時の水線を表示し、喫水との差を0.2メートル刻みで示す。手持ち撮影写真からタイプ039A/Bでは海上およびドック内の例から全長を72メートルとは水線の全長だとわかる。元級の全長は各種解析から77.2メートルで、中国国内のウェブサイトが言う77.6メートルとほぼ一致する。同じように通常の浮上時の喫水は約6.7メートルで、これまで西側が言っていた5.5メートルより深い。

まとめると元級は通常動力潜水艦として大型で、そうりゅう級よりわずかに小さい程度だ。むしろPLANの別の通常型大型潜水艦であるロシア製プロジェクト636・キロ級と比較したほうがいいだろう。元級はキロ級よりわずかに大きい。本稿に出た潜水艦各級の物理的な大きさを下表にまとめた。キロ級とそうりゅう級のデータは公式発表をつかった。元級および宋級は上記の解析結果を使っている。

ホルストの主張と異なり、タイプ039A/B元級は決して小型潜水艦ではないことがわかる。PLAN保有の通常型潜水艦で最大級であり、そうりゅう級やキロ級と同様に水深が浅い海域では制御が難しい。仮に「沿岸警備用の潜水艦」(SSC)を整備するのならドイツのタイプ205や206級でいいはずだ。また北朝鮮にはSango級があり、それぞれ潜水時に500トンを上回らない大きさだ。

Type 039B Yuan-class submarine during rollout at the Jiangnan Shipyard on Changxing Island. Note the long white line in the draft markings, which designates the submarine’s normal surface waterline. Also note the low-frequency passive flank array just above the keel blocks.
タイプ039B元級潜水艦が江南造船所で完成している。喫水関連で長緯線に注意。通常浮上時の海水面を示している。また低周波パッシブアレイがブロックの上の側面に付いていることに注意。







プロジェクト636 Kilo
Type 039A/B Yuan
Type 039G Song
Soryu
全長
73.8 m
77.6 m 1)
74.9 m
84.0 m
全幅
9.9 m
8.4 m
7.5 m
9.1 m
喫水
6.6 m
6.7 m 2)
5.7 m 4)
8.3 m 5)
浮上時排水量
2,350 tons
2,725 tons 3)
1,727 tons
2,947 tons
潜水時排水量
3,125 tons
3,600 tons
2,286 tons
4,100 tons

注:
1) Type 039A/Bでしばしば引用される全長72メートルは水線長であり、艦の全体長ではない。
2) Type 039A/B の喫水は報じられる5.5メートルを上回りやや艦サイズが小さいType 039G 宋級とほぼ同じ。
3) 元級の潜水時、浮上時の排水量は中国語ウェブサイトが出典だが定義に混乱が見られる。浮上時排水量を2,300トントとするものが多いが、これには予備浮力50パーセント以上が含まれており、実際の数字ではない。推定浮上排水量は表中では予備浮力32パーセントで以前のタイプ035や039Gと合わせてある。
4) 伝えられるタイプ039Gの喫水5.3メートルは疑わしい。乾ドック入りした同艦の手持ち写真から5.7メートル近くあることがわかる。
5) そうりゅう級の喫水も8.5メートルあると伝えられているが、実際の写真を見ると艦首、艦尾の表示は8.3メートルに近いことがわかる。


浅水域の環境条件


非常に水深が浅い海域用の潜水艦での課題は艦の制御だけではない。ホルストがいみじくも沿岸部の音響特性は混沌とし困難だと指摘している。対潜部隊には元級がそんな場所に潜んでいれば探知は困難だろう。だが逆もまた真なのだ。

航行する船舶の出すノイズははるかに大きく、海底や水面で何度も反射して潜水艦のソナーに入る。元級には獲物を探知識別し追跡するのが極度に困難となり、潜望鏡を上げないと目標雷撃の解は得にくいはずだ。ただしそうすると探知される可能性も増える。そこで潜水艦は浅い海域で海底にへばりつくが水上のASW艦と同様に探知が困難になるのだ。だが宋級以降が浅海での運用を想定しているのであれば、なぜ低周波側面アレイが各艦に装着されているのか。

H/SQG-207の系列の水中聴音機が取り付けられており、長距離で大きなノイズを出す目標を探知するのが目的だ。低周波ノイズは音波吸収ロスも少なく、水中を長い距離移動できる。ただしこの種のアレイが効果を発揮するのは水深の深い部分で海底による干渉が少ない部分だ。H/SQG-207アレイが元級に搭載されているのは想定する作戦水域が深海でこのパッシブソナーが同艦の主要ソナー装備であることを示す。

PLAN潜水艦の兵装思想


PLAN潜水艦兵装についてのホルスト解説ではC-802 ASCM (対艦巡航ミサイル)が元級に搭載されているとの誤解が繰り返し出てくる。まずC-802 は潜水艦発射型ではない。もともとC-802とは輸出用の巡航ミサイル(射程120キロ)の呼称で、ホルストが言うような180キロの射程はない。またC-802がPLANに採用されたとの証拠もない。またこの型はPLAN潜水艦が搭載するYJ-82とは別のミサイルだ。YJ-82は固体燃料方式でYJ-8/8A型水上発射式ASCMが原型だ。YJ-82はカプセルに入ったまま発射される点で米パープーンと同様だ。YJ-8/8Aの有効射程は42キロにすぎないが、ブースターがないYJ-82は更に短く30から38キロ程度だろう。ここまで射程が短いと発射した時点で相手方に探知され、水面から出て高度10メートルになった時点でレーダーに探知される可能性が高い。つまり発射した潜水艦の位置も判明し、照準を合わせて対抗措置が実施されることになる。そのためPLANはYJ-18の実戦配備に期待している。同ミサイルの有効射程は220キロといわれる。

国防総省による議会向け2015年度報告ではYJ-18の射程を290nm (550km) としているのは誤植だ。SS-N-27Bシズラーより小さいミサイルが逆に2倍以上の射程を有するのは不可能だ。また2015年度版報告書では YJ-18AとYJ-62でも有効射程の記述が間違っているのは不正確なオープンソース情報を元にしているためだろう。

The YJ-82 is the submarine launched version of the solid-rocket propelled YJ-8/8A. CPMIEC
YJ-82は固体燃料ロケット式のYJ-8/8Aを潜水艦発射型にしたもの。
China Precision Machinery Import-Export Corporation Photo


さらに元級を「対艦巡航ミサイル搭載手段」とホルストは明記している。IHS Jane’sではASCM発射艦はすべて「G」表記としているが、同艦は巡航ミサイル運用を一義的に想定したものではない。米国の情報コミュニティ、NATO、それにロシアによる呼称では専用の発射管を有するものを誘導ミサイル潜水艦としている。このためタイプ093B あるいは095に垂直発射管があるのかで大論争が起こったが、魚雷よりも巡航ミサイル(対艦、対地攻撃両用)が主な兵装になったことのあらわれである。

もう1点興味をそそる点としてタイプ039A/B元級とタイプ039G宋級で搭載する兵装は同一なのにホルストは宋級に同じ兵装を搭載していると言及していない。タイプ039A/B元級のほうがASCM搭載艦として威力が大きいことには疑いがない。高いソナー能力とAIP搭載による柔軟な戦術運用力が理由だが、ASCMが二次的な兵装の扱いなのは搭載本数が少ないのが理由で、中国はロシアの戦術を真似て6本の魚雷発射管のうち2本にYU-6魚雷を自艦防御用に装填している。残り4本でYJ-18 ASCMを集中発射しても最新鋭艦船の防空体制の圧倒はできないだろう。YJ-18の速度はマッハ3だが、防空体制を圧倒する飽和攻撃にはもっと本数が必要だ。

まとめ


結論としてホルストは誤った戦術データと不正確な分析からタイプ039A/B元級潜水艦の設計思想を間違って解釈している。タイプ039A/B元級潜水艦は通常型としては大型艦であり、ロシアのキロ級および日本のそうりゅう級に匹敵する大きさがある。搭載ソナー装置は深海運用を想定し、長距離で敵船探知が可能だ。ただし垂直発射管がないため元級・宋級ともにASCMを運用する発射管に制約があり、ミサイル攻撃は同時に4本ないし5本どまりとなる。またYJ-82 ASCMの射程距離が短いことからタイプ039A/B元級潜水艦は15キロ地点からYU-6魚雷を使用することが多いはずだ。ただしYJ-18運用が始まっても魚雷室の大きさによる制約は残り、発射管数の制約はそのままだ。PLANはこの制約から将来の原子力潜水艦の設計では最初から16発ほどの垂直発射管を想定するだろう。

タイプ039A/B元級潜水艦の設計から同艦が近海の深水度運用を想定したもので、台湾航路もその視野に入っており、高性能ソナーとAIPで標的となる船舶を探知追跡攻撃するのが任務だろう。また今より高性能で長距離射程のASCMに換装しても魚雷攻撃が主になると見られる。
 
クリストファー・P ・カールソンはハープーン戦術ウォーゲームの共同考案者で、ベストセラー著作がある



イタリア製F-35が初飛行を実施しました


一足先に業務を開始しているイタリアのFACOから1号機が初飛行したというニュースです。この例によれば小牧にできるといわれる日本のFACOでも三菱重工がロッキードと共同運営することになるのでしょうか。保安体制が課題といわれるので、完成しても秘密のベールに覆われるのでしょう。F-35は50年以上も供用されるとのことなのでFACOの存在は大きいと思います。

F-35 Soars Over Italy, First Time Outside the US

By Tom Kington 12 p.m. EDT September 8, 2015
635772932101439971-Italy-F35-Main-Image-LM(Photo: Lockheed Martin)
ROME — 米国外で生産された初のF-35が9月7日にイタリア・カメリ空軍基地で初飛行した。同基地にJSF組み立て工場が設置されている。
  1. 機体はAL-1と呼称され、1時間22分の飛行をカメリ最終組立点検ライン施設(FACO)から行った。同施設はイタリア政府が所有し、アレニア・アエルマッキロッキード・マーティンが運用している。
  2. 同機は年末までにイタリア空軍に納入された後、大西洋を横断しルーク空軍基地(アリゾナ)でイタリア空軍パイロットの養成に使用される。
  3. カメリFACOは唯一の米国外施設で、ヨーロッパのJSF各機の保守点検業務でハブとなる。
  4. イタリアは90機導入を計画し、その1号機AL-1は3月にラインで完成し、エンジン始動が6月に開始されていた。
  5. 6月時点でロッキード・マーティン関係者は初飛行を10月上旬としていたが、一ヶ月早まった。
  6. イタリアはF-35A合計8機を発注ずみで、うち三機は低率初期生産ロット6号から調達し、LRIP 7からも3機、LRIP 8から2機となる。2020年までに38機を発注する。
  7. イタリア向けF-35Aで最初の6機がそろうのは2016年10月の予定。さらに2017年と18年に各4機が納入され、2019年には7機、2020年に13機となる。
  8. 2019年には生産ラインで初のオランダ向け機体が生産される。オランダは2020年に生産予定の計20機のうち8機を受領する。■

2015年9月8日火曜日

★イスラエル>F-35導入を周到に準備中 機体改装も視野へ B型導入も?



いつもながらイスラエルの論理、行動様式には感心しますが、すでにF-35に愛称をつけただけでなく、段階的に同機を導入することで交渉力をつけ、一方で国産装備との親和性を確保すべく改装も検討し、いざという際を想定して機体整備実施でのルール除外で予め合意を得ておく、さらにもっと大変な事態を想定してB型の導入も検討している...すごい。F-35によるイラン攻撃が起こらないといいのですが、イランの先制攻撃を受けた後の報復としてF-35をステルス性をかなぐり捨てても怒れる翼として使用する想定のようなので、来年以降に同機が実際にイスラエルに導入されれば中東で抑止力として働くでしょうね。では日本の場合はどうでしょうか。今後の進展に期待しましょう。しかしF-35を55年間も運用するとは想像しにくいですね。

Eyeing Iran, Israel Readies for Stealth Strike Fighter

By Barbara Opall - Rome 4:11 p.m. EDT September 5, 2015

TEL AVIV — イラン他の仮想敵を念頭に、強固な防空体制の突破を狙うイスラエルはF-35アディールAdir (ヘブライ語で強者の意味)ステルス戦闘機の導入(2017年)に備え準備を進めている。
  1. 最初の2機がイスラエルに到着するとイスラエル空軍(IAF)のゴールデン・イーグル飛行隊(ネゲヴ砂漠のネヴァティム空軍基地)に編入される。
  2. 2017年までに初期作戦能力(IOC)を獲得する想定で作業が同時に進行している。イスラエルは米政府支援でスムーズな運用開始を期待している。
  3. 「同機が実現するステルス性その他高性能は明らかだ」とIAF関係者がDefense Newsに語っている。これはイランが供与を受けると言われるロシア製S300などを使った高度の防空体制を前提にした質問への答え。
  4. 「敵に攻撃を加える可能性は十分にあり、かつ実現可能だ」とE少佐は語る。少佐はアディールプ・ロジェクトを統括し、F-35操縦パイロットにも選抜された。
  5. 「これまでできなかったことが今後は実施可能となる」と同少佐は語ってくれた。なお、保安上の理由で本名は伏せた。
  6. 「域内の心理状態も変わるだろう。邪魔を受けずに敵を攻撃できる。戦争の仕方が大きく変わることは敵も承知だろう」
  7. 現地及び米国内取材で関係者から主契約企業ロッキード・マーティンがイスラエル国営ラファエルと共同でイスラエル製の空対地兵器類を同機に搭載する作業を進めていることが判明した。
  8. 同様にロッキードはイスラエルが提案する主翼への外部タンク搭載で機体内部タンクの18,000ポンドの燃料を追加する案を検討中。
  9. 「外部に追加燃料を搭載した際の功罪を検討中」とロッキード・マーティン関係者がDefense Newsに語っている。「航空優越を確保した後ならステルス性を心配しなくてよい。そこで燃料タンクを追加できる。探知される心配がなくなるからだ」
  10. イスラエルの国防筋業界筋からはステルス性を維持しつつF-35用コンフォーマルタンクが欲しいとの声が出ている。探知の危険が少ないままで飛行距離を二倍以上にできるのなら検討価値は十分ある。
  11. 「コンフォーマルタンク開発で肝心のステルス性が犠牲になるのは困る」と上記IAF関係者は述べた。
  12. イスラエルはすでにF-35開発事業の要求事項である機体の維持はロッキード・マーティンが運営する指定施設のみで行い自国では重整備の実施しか許さない条項の除外適用を勝ち取っている。
  13. 現地の関係者によればアディール向け補給支援センターが飛行隊司令部のあるネヴァティム空軍基地内に立ち上がろうとしており、IAFはロッキード・マーティンの自律型補給支援システム(ALIS)へ無制限のアクセスを許されることになるという。ALISは世界規模で同機の運営を支援するネットワークで運用国に機体耐用年数の55年間で一貫した機体維持の立案、実行を可能とする仕組みだ。
  14. 「ALISはうまくできており、自動化されており、ロッキード・マーティンの思惑通り非常に効率良く費用対効果が高いはずだが、1点不満な点は自国内に敵のミサイルが飛んでこない国向けにできたシステムであることだ」と上記IAF関係者は述べた。
  15. 「ミサイルが国内に落ちてきたら、イスラエルにくる航空機も船舶も減る。だからイスラエルは自国で補給を戦時でも維持する独自方法を模索している」のだという。
  16. ロッキード・マーティンでF-35国際ビジネス開発にあたるスティーブ・オーヴァー部長はイスラエルには「自国内で軽整備を実施する能力は十分ある」とし、有事の場合を言及している。だが機体重整備やエンジン整備は共同開発室が運営し、同社が設けた設備で行う必要があり、「これは他の運用国と同じ」と述べた。
  17. 別の取材でオーヴァー部長は重整備の実施は厳重な保安体制の下で行うとし、監視措置を必要条件としていると語った。「機体を分解すれば秘密が白日のもとにさらされます。そのため作業は指定施設でのみ行うのです」
  18. ロッキード幹部はイスラエル独自で機体支援機能をさらに高い次元に引き上げる能力があると同国を評価しており、ソフトウェア全体が影響を受けない限り黙認する方針だ。同社は凍結滑走路を考慮して読jにドラッグシュートを装着するノルウェーの例をあげた。
  19. 「イスラエルには独自策の実施能力がありますが、機体設計全般や性能自体に影響が出る改装は関係国が事前合意しない限り実施できません」(オーヴァー)
  20. その一方、IAFは第一陣パイロットを米空軍ルーク空軍基地(アリゾナ)ヘ送り訓練を来年中頃までに開始する整備要員も米空軍の補給支援基地があるエグリン空軍基地(フロリダ)他米国内施設で実施する。
  21. 米政府はイスラエル向けF-35輸出を計75機承認しているがイスラエル政府が契約したのは33機だけだ。
  22. 当地の国防筋によればイスラエルは次の17機の成約を複数年度方式で完了させる意向で、2020年までを視野に入れている。ここまでの50機はF-35A仕様の想定。
  23. その後、米国政府が追加安全保障支援を提供する前提で、イスラエルはF-35Bを25機追加する可能性がある。短距離離陸垂直着陸方式の同型はイスラエルにとっては敵ミサイルが国内基地を攻撃する可能性を考えると説得力のある選択だ。
  24. 「最初の50機はA型で問題はない」と上記IAF関係者は言う。「75機全部を調達するのならSTOVL型も検討対象だ。ただし利点と不利な点があるが、オプションはいつも維持しておきたい」■