2017年11月25日土曜日

F-35:英国の導入規模縮小か


やはり国防力整備は経済力あってのことですね。それにしてもF-35の導入機数は各国低いままですね。高額な買い物のままで各国が躊躇しているのか、それほどの規模が必要ない=第四世代機も大事にしながらF-35を使えばいいと考えているからでしょうか。それだけにF-35はじめ運用機材の供用年数は伸びていくので、それだけ新型機が搭乗する機会が減ることになり、戦闘機の世界はこれから長い閉塞の期間を迎えるでしょう。

Aerospace Daily & Defense Report

Britain Mulling F-35 Future Commitments

英国がF-35の導入機数を熟考中

F-35: USAF
Nov 22, 2017Tony Osborne | Aerospace Daily & Defense Report

LONDON—英国がF-35導入縮小に向かいそうだ。現在英国は国防計画を見直し中。
  1. 2015年版の戦略国防安全保障検討(SDSR)は138機のF-35導入方針を堅持していた。二年たち、国防トップの表現が微妙に変化している。
  2. 国防参謀次長マーク・ポフリー中将Lt. Gen. Mark Poffleyは国会国防委員会でF-35機数削減案に「共感を覚える」と11月21日発言し、「これが現実の状況」とも述べた。
  3. 中将は英国は「原則138機をめざした」が契約は48機のみと指摘。残る機体の調達の予算のめどがたたないという。
  4. 国会では議論がF-35の高価格に向けられている。国防省は48機運用を想定した総費用を積算し、2025年まで91億ポンド(121億ドル)、2048年までで130億ポンドと報告した。
  5. 91億ポンドにはシステム開発実証事業への英国分担分と48機の機体価格、支援インフラ費用を含む。
  6. 国防省報道官は「138機購入に変更はない」と述べている。
  7. 今年末に英国向け14号機が納入され、2018年は3機が新たに加わる。英国は17機を3か年一括購入で、13機を2か年一括購入でそれぞれロッキード・マーティンの低率初期生産(LRIP)のバッチ15および16から導入する予定だ。
  8. F-35導入機数を巡り不確かになってきたのは英国国防省がSDSRを覚悟しているからだ。評価作業は7月の内閣府発表によれば国家安全保障顧問マーク・セドウィルが進めており、200億ポンドと言われる国防予算不足を埋めるべく追加削減提言が出るのは必至だ。
  9. 欠損の理由に英ポンドの為替変動がある。EU脱退を決めてからのポンド安で米国から購入の装備価格が15から20%上昇している。F-35は戦略核抑止体制更新に次ぐ二番目の高額案件だが、為替をめぐる不安から影響を受けるのは必至だ。
  10. だが関係者は英国がF-35複数型を将来運用する可能性に触れており、ポフリー中将も「(今後の混成運用を)後日検討する」と言っている。
  11. 当面は英空母戦力整備が中心で、12機構成の実戦部飛行隊二個を編成し、機種転換用にも一個飛行隊を整備する。「空母戦力を確立するため二個飛行隊は必要だ」(ポフリー中将)
  12. F-35を搭載する新型空母は女王臨席の上英国海軍に12月7日編入される。■

2017年11月23日木曜日

AIで衛星画像解析を大幅にスピードアップ



AIで消える商売が多いと言われますが、皆さんは大丈夫ですか。翻訳も真っ先になくなるといわれますが、日本語のような2バイトデータの場合はまだ猶予があるようです。衛星画像をAIに解析させたらどうなるか、というのが今回のテーマですね。ISRの世界もどんどん変わっていきますね。


AI CAN HELP HUNT DOWN MISSILE SITES IN CHINA

AIで中国国内のミサイル陣地をあぶりだせ

A surface-to-air missile is seen through a doorway in Zhuhai, China.
QILAI SHEN/BLOOMBERG/GETTY IMAGES

  1. 核施設やその他秘密施設を衛星画像から探し出す技能を有する人材は情報機関でも限られる。だがディープラーニングが得意な人工知能でグーグルやフェイスブックでは人間の顔が簡単にフィルターできるようになっている。そこで米研究者がディープラーニングのアルゴリズムに中国の地対空ミサイル陣地の識別方法を教え込んだところ人の処理の数百倍の速さでできたという。
  2. アルゴリズムで90千平方キロの中国南東部で地対空ミサイル陣地を探索させた。AIで莫大なデータをフィルターし学習させたところ90パーセントの確率で専門家作業と同じ結果が得られた。さらにすごいの作業時間60時間がディープラーニングソフトウェアにより42分に短縮されたことだ。
  3. 「アルゴリズムがミサイル陣地だと確実に言える場所を探し出した後で人間が確認しましたがアルゴリズムで大幅に時間が節約できました」とカート・ディヴィス(ミズーリ大、地理空間情報センター所長)が語る。「これが初めてではないでしょうか。今回どれだけの時間が節約でき、今後の人的活動にどんな影響がでるでしょうか」
  4. ミズーリ大による研究成果は10月6日に Journal of Applied Remote Sensingに掲載されたが、ときあたかもビッグデータの洪水に対して衛星画像解析専門家の不足が目立っている。この分野で中心の民間企業DigitalGlobeは一日で70テラバイトの生の衛星画像を処理しているが、民間衛星や政府のスパイ衛星のデータ量はもっと多い。
  5. デイヴィスは仲間とともにディープラーニングモデルを見せてくれた。衛星画像処理用に大幅に強化改修してあり、情報機関や安全保障専門家の関心を呼びそうな施設を識別できるようになっている。ディープラーニングモデルにはGoogleNetやResNet’Microsoft Researc)がありもともとは写真ビデオ映像の処理用に作成されたものがあるが、ディヴィスのチームはこれらで衛星画像の処理にあたらせ、途中でディープラーニングにカラー、白黒双方の画像の解析を教え込み、SAM陣地画像が白黒しかない場合に備えた。
  6. チームは北朝鮮全土より狭い範囲の中国領土の写真を使った。
  7. 実際に北朝鮮の兵器開発の動向は衛星画像を日々解析して把握されている。解析専門家でほぼ全数のSAM陣地を比較的小さな同国で探している。だがディープラーニングツールでも自動的に新規SAM陣地が現れればフラッグを立ててくれる。新規SAM陣地を見つけ出すことで別の関心を呼ぶ施設を発見することもあるのは貴重な装備を守るためSAM陣地を敷設することがあるからだ。
  8. 最新研究ではディープラーニングAIを衛星画像解析に応用する課題にも触れている。そのひとつに訓練データベースに必要な例が足りず、衛星画像の正確な識別が困難なことがある。ミズーリ大チームは一般公開情報で世界各地の2千点近いSAM陣地画像にDigitalGlobeの衛星画像を組み合わせて訓練用データを作成してからディープラーニングモデル四点を試し最良の作動モデルを選び出した。
  9. 研究チームはAIの訓練用にあきらかに中国SAM陣地とわかるもの90点を選び出した。これだけの訓練ではディープラーニングを正確に行えないことが多い。ディヴィスのチームはこの90例をわずかに角度を変えることで893千例に変えた。
  10. ディープラーニング成果が今回出たのはSAM陣地が衛星から見た場合に特徴のあるパターンを示し比較的大きいためもある。ただしディヴィスはこれより小さな移動式レーダー装備や軍用車両で同等の効果は期待できないと注意する。今使える衛星画像のピクセル数が小さく識別の効果が出ないためだ。
  11. 不完全なAIでも情報収集に大いに役立つ。例として国際原子力エネルギー機関はすべての核施設を申告通りに監視しながら未発見施設を200か国で探す面倒な仕事を抱えている。ディープラーニングツールでIAEA他機関は衛星画像で原子力発電所はじめ大量破壊兵器の開発状況を監視できるはずとミドルベリー国際研究所(カリフォーニア州モントレー)の東アジア非拡散研究の主任研究謹メリッサ・ハンナムが指摘している。
  12. 「この世界では大量のデータがあり完璧なデータ少しよりたくさんのデータを生かす方が優れていると言えます」■

2017年11月22日水曜日

☆米海軍の中国対抗策は通常型潜水艦の日本前方配備と日米共同運用だ



中国にとって日本ほど目障りな国はないでしょう。経済力、軍事力以外にその地理条件が中国の進出をどれだけ阻害しているか計り知れませんし、国民が知らないところで抑止力になっている16隻の潜水艦があるわけです。したがって中国が事あるごとに日本の弱体化を狙うのは当然でしょう。日米共同潜水艦運用構想は注目されれば、日本の「平和勢力」をけしかけて邪魔を中国がしてくるのは当然かもしれません。まして台湾も加えれば大変なことになりますが、反対が強いのはそれだけ中国に不都合なことの裏返しなので実現に向けて努力してもらいたいところです。こうしてみると中国の打つ手を日本に有利にするオセロ方式が有効なことが分かりますね。補給拠点の考え方は空軍でも見られますね。たくさんの空港と港湾が日本にはありますので、うまく活用できるはずです。ここでも「平和勢力」が邪魔してくると思いますが。

 


How the U.S. Navy Could Beat China in a War

米海軍はこうすれば中国に勝てる
November 21, 2017

  1. 原子力潜水艦のみの米海軍潜水艦戦力にディーゼル艦を追加せよと提言するのはどんな人たちなのか。
  2. そんな提案が出てきたのは今年3月の下院シーパワー兵力投射小委員会の公聴会で、「将来の戦力構造」研究で三団体から異なる意見が表明された際だった。戦略予算評価センター、MITREコーポレーション、そして海軍幕僚部が艦船数、種別構成、無人有人装備組み合わせまで広範な研究成果をそれぞれ発表した。
  3. 海軍幹部には各研究成果を比較検証した結果を海軍の公式見解とし戦力構造構想として議会に提出し艦船、航空機、武装の予算配分を決める根拠となる。ただし一つ共通意見がすでに生まれている。米海軍にはすべてがもっと必要なのだ。海軍の試算は将来の難易度の高いミッションをこなすには355隻が必要だとしおよそ3割の戦力増になる。
  4. 戦力拡張では低コストでも高効果の艦を大量調達する必要がある。ディーゼル電気推進潜水艦がその好例だ。海上自衛隊(JMSDF)のそうりゅう級は世界最高峰の通常型潜水艦と言われ日本の納税者は540百万ドルを各艦に負担している。これを議論の基準に使いたい。ヴァージニア級攻撃型原子力潜水艦は2,688百万ドルで5倍の開きがある。
  5. ただしUSNI Newsのミガン・エクスタインによれば海軍作戦部付けの評価部門次長チャールズ・ウィチャード Charles Werchado が原子力・通常型混成で潜水艦部隊整備を提言したMITREを「強く非難」したとある。本人発言を引用する。
  6. 「こちらが中国のような国家ならディーゼル艦の大量調達を選択すればよい。敵と本国水域で戦えばいいからだ。だがこちらは艦を展開する必要があり、展開には燃料がつきものだ。ヴァージニア級は就役期間通じ燃料補給が不要だ。ディーゼル潜水艦に反対ではないが、母港から200マイル以内を戦闘水域にできなければ給油艦多数が必要となる。給油中は艦が脆弱だ。スノーケルを付けるのだろうか、これも脆弱性を増やす。グローバルな海軍力を展開するこちらには選択肢になりえない」
  7. と、地理条件、補給面、戦力からディーゼル艦に反対する。ではその反対意見を検分してみよう。まず地理だが反対意見は米ディーゼル艦の母港は米本土に想定しているようで、東アジアから遠い地点から活動するとしている。戦場になりそうな東シナ海、黄海から遠い地点にディーゼル艦を配備しても無意味だ。航続距離の制約は事実でこれは変えようがない。だがこの事を誇張すべきではない。賢い配備で距離は克服できる。
  8. 欠点を戦略的、政治的長所に変換すればよい。ディーゼル艦を多数調達し、戦闘地点に近い極東に恒久配備し、米日共同潜水艦司令部の下に置く。前方配備で解決できる問題は多い。例としてそうりゅう級潜水艦の航続距離は6,100カイリで北東アジアの哨戒に十分だ。米日両国が共通仕様艦を採用すればさらに優秀な性能が実現するはずだ。
  9. これは思い付きではない。ディーゼル艦の効果は北東アジアで実証ずみだ。米潜水艦は第二次大戦で日本を手ひどく痛めた。JMSDF潜水艦部隊は第一列島線で東西南北の海上通行を抑えている。冷戦中の日本の功績は海中戦力の整備でソ連潜水艦が日本海やオホーツク海から太平洋へ移動するのを探知していたためソ連潜水艦は近海から出られなかった。
  10. 連合側の海洋戦略で列島線防衛が再び重要になる中で理想的な展開ではないか。尖閣諸島を占拠しようとする中国のその他の野望も抑止できるのではないか。中国は西太平洋で簡単に活動できなくなる。潜水艦戦力を増強し、重要な海峡部分に待機させれば中国指導部が軍事冒険を望んでも動きを止めざるを得なくなる。接近阻止領域拒否戦術でディーゼル潜水艦の調達が中国に得策なら米日両国にも中国の動きを封じるべくディーゼル艦調達が効果的なはずだ。
  11. ここでから戦略面で対応が二つ生まれる。まず同盟関係の視点で潜水艦配備を考えてみよう。中国は同盟をバラバラにして個別対応しやすくしたうえで、米国を西太平洋から遠ざけようとする。したがって日本は米国の離脱を恐れる。米潜水艦部隊を恒久的に前方配備させ、かつ日米共同運用する以上に効果的な策が日本にあるだろうか。米国にとってもアジアから離れない姿勢を示すことになる。
  12. また日米両国が台湾に共通仕様ディーゼル艦を建造させたらどうなるか。台湾にジョージ・W・ブッシュ政権はディーゼル潜水艦8隻建造案を16年前に提示した。だが米国内の造船所にディーゼル艦の知見がなく、かつ諸外国でも建造するところがなく、北京の激しい反発もあり構想は消えた。
  13. 今こそ構想を実現すべき時だ。新型潜水艦があれば台湾は防衛力増強となり1980年代のオランダ製旧式艦(驚くべきことに第二次大戦中の設計の延長である)二隻を米日共通仕様のディーゼル艦部隊に変更し共同作戦が可能となるので日米両国は政治面で勇気を絞り台湾と組むべきである。そうなればディーゼル艦で新しい戦略外交面の可能性が開ける。
  14. 次の問題は補給だ。米海軍の戦闘補給部隊の拡充が必要なことは議論の余地はない。だが通常型潜水艦が理由ではない。前方配備の米潜水艦は日本の補給活動をモデルにするはずで哨戒から帰還後に母港で補給する。これで両国は陸上補給施設に注力できる。有事となれば中国軍は横須賀や佐世保といった日本の拠点を攻撃目標に含めるはずだ。ミサイル攻撃を受ければ施設機能が失われ、部隊は深刻な影響を受ける。
  15. これに対し日米連合側は太平洋戦争から学べる。米海軍は西太平洋への進撃で補給、修理拠点を分散し、時には臨時施設で行った。日本に数多くある島しょ部や内陸湾を活用し即席の補給拠点にする策を考えるべきだ。連合側には臨機応変さが必要だ。通常動力の水上艦艇でも燃料補給は必要だ。原子力艦艇も燃料以外のすべての補給品が必要だ。補給面の課題はディーゼル潜水艦だけの問題ではない。
  16. 三番目にディーゼル潜水艦の脆弱性がある。ディーゼル艦は定期的に浮上するかスノーケルで空気を取り入れる必要があり、スノーケル使用でレーダー探知される。そうりゅう級では「大気非依存型推進」を採用し、最長二週間潜航したままでいられる。JMSDFはこの性能を有効活用しながら戦術を鍛錬し北東アジア海域の哨戒活動で相当の時間を海底に潜んでいる。
  17. ここに米海軍所属潜水艦が加われば哨戒活動が容易になる。使える潜水艦が増えれば一回の哨戒期間を短くできる。アジアのホットスポット地点近くに部隊を配備すれば解決可能な問題は多い。また補給拠点を各地に展開できる利点もある。これで対抗勢力は脅威を感じ、同盟・協力国側は楽になる。多様な面で有望な構想だ。
  18. MITRE提案に耳を傾けるべきだ。否定してもはじまらない。グローバル海軍力の艦艇すべてをグローバル運用する必要はない。ディーゼル潜水艦は将来の米海軍の選択肢だ。実行するか決めるのは議会と海軍当局だ。■
James Holmes is Professor of Strategy at the Naval War College and coauthor of Red Star over the Pacific (second edition forthcoming 2018). The views voiced here are his alone.
Image: Reuters.


中国空母開発の最新動向、三号艦でEMALS採用しながらJ-15を使い続ける事情


ここでも中国の技術開発のいびつさが出ていますね。技術は買ってこればよいと手を出しながら基礎技術が国内に蓄積されずエンジン開発ができないというちぐはぐさです。EMALSは米海軍もまだ完全に実用化していませんが中国がどこまで使えるか見ものですね。遼寧、001A艦と二隻は技術習熟用の観があり、真打が三番艦なのですかね。この建艦運用だけは正常進化のパターンです。


China’s aircraft carrier conundrum: hi-tech launch system for old, heavy fighter jets

中国空母の謎:ハイテク発艦装置を旧式大型戦闘機に使う

PLA Navy’s J-15s, based on a Soviet design more than 30 years old, are world’s heaviest carrier-based fighters
J-15は原設計30年以上たつが世界最大の艦上戦闘機だ
PUBLISHED : Sunday, 19 November, 2017, 9:02pm
UPDATED : Sunday, 19 November, 2017, 9:07pm

  1. 中国の国産空母二号艦は国産開発のハイテク発艦装置を採用し世界に通用する軍艦になるかもしれないが運用機材は大型で中国の目指す軍事力展開の理想像の実現には程遠い。
  2. 中国は空母運用技術で米国との差を埋めつつあるが、搭載機種の性能で米国から後れを取っている。中国は開発に10年以上かけ第四世代ロシア機のスホイSu-33からJ-15を生んだが、原設計は30年前だ。
  3. J-15は最大離陸重量が33トンと艦載機として世界最大だが人民解放軍海軍唯一の空母搭載戦闘機だ。その重量のため従来型の蒸気カタパルトに代わり電磁航空機発艦システム(EMALS)を中国三番目の空母で採用することになった。建造は来年開始の見込みだ。
  4. 「J-15だと米海軍ニミッツ級搭載の次世代C13-2カタパルトでも発艦が難しい」と軍事筋が語っている。米海軍も33.7トンのF-14トムキャットを運用したが、現在は軽量のF-18スーパーホーネットに交代させている。F-18の最大離陸重量はボーイングによれば29.9トンだ。
  5. 着艦時に艦載機は弾薬類を放棄し燃料を使い切らないと短く着艦できず発火爆発の危険が増える。F-18の空虚重量は14.5トンだがJ-15はこれより3トン重い。つまりJ-15は着艦時に空母飛行甲板を傷める危険が高い。
  6. 「EMALS実験からJ-15運用が楽にできることがわかった。中国が短期間で軽量戦闘機を製造するのは不可能なのでEMALSを使うのが近道だ」同筋によれば中国は可変速ドライブで必要な電力エネルギー変換でカギとなる絶縁ゲートバイポーラトランジスタinsulated-gate bipolar transistor (IGBT)チップ製造のめどがついたとのことでその他にも電気自動車や配電網や再生可能エネルギーで応用が期待できる。
  7. 開発したのは中国第一級半導体メーカー株洲中車時代電気 Zhuzhou CSR Times Electricと同社の英国関連会社Dynex Semiconductorで中国が2008年世界金融危機後に75パーセントの株式を取得している。
  8. PLA海軍の技術部門Ma Weiming少将のチームが開発した統合推進方式が技術上の突破口となり国産二号艦は世界最先端の発艦システムを運用するが原子力方式は不要だ。空母の離着艦には大量の電力が必要なので統合推進方式で供給する。同少将は実験成果から燃料消費が4割節約できると述べている。EMALSは発艦に大量エネルギー消費するが蒸気カタパルトより効率で優れ、保守管理が簡単で信頼性が高まり正確な速度制御を実現しながら加速がスムーズになる。
  9. CCTV取材で11月3日にYin Zhuo少将はPLA海軍装備研究センターで中国はJ-15運用で「数百回のテスト」をEMALSで実施済みでEMALS技術は成熟化し信頼性を確保したと語った。
  10. だが同時に理解に苦しむのは次世代中国空母でも現行機を継続運用するというのだ。米国と旧ソ連は空母構想で別の方法論を取った。米海軍では空母運用機材が空母戦闘群の攻撃力の要にしたがソ連はミサイルを主とし、航空機は効率の悪いスキージャンプ方式で運用した。中国の空母一号艦遼寧と姉妹艦001A(本年4月進水)はともにスキージャンプ方式を採用し、発艦は一度に一機だけの制約がある。これに対し米海軍のカタパルトは同時に4機発艦させられる。
  11. 「J-15はSu-33が原型で旧ソ連海軍のクズネツォフ級空母用に開発されたため制約が残る」と別のPLANに詳しい筋が語る。遼寧は未完のクズネツォフ級空母ワリャーグを香港のビジネスマンXu ZengpingがPLANの代理でウクライナ造船所から1998年に買い上げた。
  12. 中国は次世代艦載機FC-31(最大離陸重量28トン)をJ-15後継機として開発中でJ-15開発主任のSun Congを責任者にしている。中国本土の軍事ウェブサイトで掲載された写真では瀋陽航空機(J-15メーカー)がFC-31試作機を2機製造し、珠海航空ショーで2014年に出展したとある。
  13. ただし複数筋からFC-31開発は難航しPLANの要求水準にたしなかったとの証言がある。「中核的な欠陥」があったというのだ。
  14. 「FC-31用エンジンの国産化ができない」「FC-31ではテスト用にロシア製RD-93エンジンを積んだ」と最初の筋が述べている。別の筋は次世代戦闘機は「あと二十年後の実現となりJ-15が当面は中国空母の艦載機の座を守る」と述べている。■

2017年11月21日火曜日

アルゼンチン潜水艦サンファン消息を絶つ 艦内で何があったのか


消息を絶ったのは現地時間先週水曜日のことで乗員の生存は絶望的でしょう。記事どおりなら推進機関はAIPだけだったのでしょうか。にわかに信じられませんが、乗員の資質とともに艦内での事故が発生した可能性はありますね。ドイツ製潜水艦はここにきて色々トラブルが発生しているようです。国の経済が国防にしわ寄せを与え、人命が失われたのならジレンマそのものです。

What Happened to Argentina’s Missing Submarine?

アルゼンチンの消息不明潜水艦内で何があったのか

The ARA 'San Juan' is the pride of the Argentine fleet

ARAサンファンはアルゼンチン海軍の誇り
What Happened to Argentina’s Missing Submarine?
WIB SEA November 20, 2017 Robert Beckhusen

追記 11/20/17: 消息を絶った当日にサンファン艦長が蓄電池不良と「電気故障」の報告があったとアルゼンチン海軍が発表した。同艦捜索中の艦船二隻が「艦体に工具をぶつけるような音」を聴取したとCNNが11月20日に報じている。
遭難の事実関係
  1. アルゼンチン潜水艦ARAサンフアンが乗員44名を乗せ消息を絶ち同国軍史上最も深刻な事故になった。かすかな望みの衛星通話発信も虚報と判明。
  2. 捜索救難活動に7カ国13隻が投入され英国も南ジョージア諸島からHMSプロテクターはじめ数隻を派遣し、米海軍は潜水救難装備を提供している。
  3. アルゼンチン海軍広報官は同艦で何が起こったか把握できていないと述べた。
  4. 考えられる状況に通信途絶、エンジン故障、あるいは壊滅的な火災や爆発がある。
  5. サンファンの位置が最後に確認できたサンホルヘ湾はアルゼンチン東部にあり、通常の作戦海域より浅い。
ARA ‘San Juan.’ Argentine navy photo

サンファンのあらまし
  1. サンフアンは全長216フィート、ドイツNordseewerkeが1970年代末に建造したTR-1700級通常型攻撃潜水艦の二号艦で潜航時最高速25ノット、浮上時15ノット、魚雷22本を搭載する。
  2. スノーケル使用で70日間潜航でき、艦内貯蔵物約一か月分がある。ただし海底に鎮座すれば艦内酸素は数日分しかない。
  3. サンファンは2008年から2013年にかけて改修を受けディーゼル電気推進機関、蓄電池、航法用レーダーを撤去している。

ARA ‘San Juan.” Mexican navy photo

  1. サンファンは1985年11月に就役し、米海軍クリントン・クラッグ少佐Lt. Cmdr. Clinton Craggは米海軍大学校でTR-1700を「素晴らしい」と述べ、12千カイリの航続距離、最高深度890フィートの性能を「手ごわい海中脅威」と評した。1980年代中頃時点で米海軍文献はTR-1700を世界最高性能の通常型潜水艦とみなしていた。

アルゼンチン海軍の惨状
  1. フォークランド戦争では第二次大戦時の潜水艦ARAサンルイス、ARAサンタ・フェで不慣れな乗員が参戦した。英海軍がサンタ・フェを沈め、サンルイスは英艦攻撃に失敗した。乗員の技能と有線誘導魚雷の技術問題のためで、「同艦は戦闘投入できない状態だった」とクラッグ少佐は1991年に分析している。
  2. ARAヘネラルベルグラーノがフォークランド戦で英潜水艦HMSコンカラーにより沈められアルゼンチン海軍に衝撃を与えたが、戦後の大幅なインフレと反軍感情のため国防予算は縮小を続けた。
  3. 「1970年代はぜいたく品扱いの潜水艦が今やアルゼンチン安全保障上の必須装備だ」とクラッグは指摘。「潜水艦は費用対効果が優れている」
  4. 潜水艦部隊はアルゼンチンで厚遇されたが、あと4隻建造予定のTR-1700は取り消された。一方で水上艦部隊は勢力減退の中で深刻な事件事故を経験している。
  5. 2007年に砕氷艦ARAアルミランテ・イリザールで火災が発生し、2017年4月まで復帰できなかった。未払い債務を巡り訓練帆船ARAリベルタードがガーナがに差し押さられた。同年にコルベットARAエスポーラが故障し南アフリカでドック入りしたが代金未払いを理由に修理作業を拒否された。2014年にサンファンの姉妹艦サンタクルーズが座礁し、錆びだらけの艦体を見せた。駆逐艦ARAサンティシマは港内で転覆沈没したが長年にわたり保守点検されていなかった。
  6. アルゼンチン軍は隊員引き留めのため人件費支出を重視している。反面で訓練は切り詰められ、潜水艦部隊も例外ではない。■

F-35の戦闘能力をフルに発揮させるソフトウェア・ブロック3Fの完成時期が先送りに



Lockheed Martin delays F-35 Block 3F software final certification to February

ロッキード・マーティン:F-35用ソフトウェアブロック3F完成を2月に延期

Source: USAF
Pat Host - IHS Jane's Defence Weekly
19 November 2017
  1. ロッキード・マーティン幹部がF-35ライトニングII共用打撃戦闘機向けのブロック3F完全戦闘機能ソフトウェアの認証を来年2月に延期するとの見通しを明らかにしており、2017年末との予定が先送りされる。
  2. ジェフ・バビオンJeff Babione執行副社長(F-35事業)で11月16日に Jane’s に述べた。
  3. 遅れが発生するがバビオンはF-35は現状でも完全戦闘能力を有するとみていると語った。
  4. 「現在のソフトウェアでも対応可能」とバビオンは議会議事堂でF-35コックピットシミュレーターを紹介しながら語った。
  5. バビオンはブロック3Fの完成が今年末から2月に先送りとなる理由は示さなかった。同社広報マイケル・フリードマンMichael Friedman によればブロック3Fの最終認証はペンタゴンが決めることだという。F-35共用開発室(JPO)広報のジョー・デラヴェドヴァJoe DellaVedova は論評を避けた。
  6. バビオンによればロッキード・マーティンは今年中にシステム設計開発段階(SSD)のフライトテスト部分を完了しておく必要がある。SSDは2001年から継続中だ。
  7. バビオンによればロッキード・マーティンは11月15日に武器切り離しテストを完了したことでSSDが終了下と見ている。武器切り離しテストではレイセオンの空対空ミサイル(AIM)-9Xサイドワインダーも試した。バビオンは認証までフライト150回とテストポイント1,000点が残るだけと述べた。
  8. 同社の業務開発部長(F-35担当)のスティーブ・オーヴァーSteve Over はブロック3Fソフトウェアの完成は2017年末と9月に述べていた。■

2017年11月20日月曜日

イスラエル潜水艦が核抑止力任務を担うのは公然の秘密


周辺国に深刻な対潜水艦能力がないためイスラエルは護衛をつけず比較的安全に潜水艦を運用しているのでしょうか。それにしても巡航ミサイルでは速度、距離、脆弱性といずれも弾道ミサイルより劣りますが、イランの現状を考えるとこれで十分という判断かもしれません。ただいつまでも同じ状況と思えず、本格的な弾道ミサイル潜水艦の取得に走らないとは思えません。


Israel Is a Military Superpower for One Simple Reason: 'Underwater' Nuclear Weapons

イスラエルが第一級軍事力を保有している国と見られる理由は「水中」核兵器の運用だ

October 27, 2017

イスラエル潜水艦部隊は小規模だが公然たる秘密がになってい核兵器搭載だ。ドルフィン級潜水艦5隻はイスラエルの安全保障で究極保証の奥の手だ。核攻撃を受ければイスラエルは核で反撃する。
  1. イスラエル初の核兵器は1970年代初頭に完成し、自由落下式爆弾とジェリコ弾道ミサイルが整備された。1991年の湾岸戦争でイラクのスカッド、アル・フセイン両弾道ミサイルがイスラエル都市部に落下し、イスラエルも空、陸、海配備の核兵器三本柱整備で核抑止力の必要性を痛感した。
  2. 残存性が一番高いのが海洋配備で、潜水艦に核兵器を配備する。潜水艦は数週間、数か月極秘の哨戒につき、発射命令を待つ。いわゆる「二次攻撃力」となり報復攻撃があると分かれば敵国も攻撃前に一度考え込ませる効果を生む。
  3. 湾岸戦争前に潜水艦三隻の建造が認可されていた。ただし建造当初から核兵器搭載が考慮されていたか不明だ。建造はドイツで、ドイツの財政負担で建造が始まった。ドイツは二隻の建造費支援を行い、三隻目ではドイツ自身の非拡散政策の不備でイラクが核・化学兵器開発を行ったことを反省し費用を折半した。
  4. 三隻はドルフィン、レバイアサン、テクマと命名され1990年代に建造されたが、就役は1999年から2000年になった。各艦は全長187フィート(57メートル)、1,720トン(潜航時)で実用潜航深度は1,148フィート(350メートル)だ。センサーにはSTNアトラスエレクトロニクCUS-90-1主ソナー、DBSQS-21Dアクティブソナー、AN 5039A1パッシブソナーを備える。PRS-3-15パッシブ測距ソナーとFAS-3-1パッシブ艦側アレイも搭載する。
  5. 魚雷発射管は計10本で、艦首に533ミリ標準発射管x6と650ミリ大型発射管x4を持つ。またダイバー用チェンバーもあるといわれる。武装はドイツ、米国、イスラエル製混成でシーヘイク大型有線誘導式魚雷、ハーブーン対艦ミサイルを搭載する。権威あるCombat Fleets of the Worldではドルフィン級はトライトン光ファイバー誘導兵器も搭載していると解説しており、有効半径9マイル以内ならヘリコプター、水上艦、沿岸地上目標を攻撃できる。
  6. 大型発射管4本が抑止力に重要だ。大型管から機雷敷設やダイバーの発進回収の他に核巡航ミサイル発射が可能で米海軍が2000年にスリランカ沿岸からミサイルが発射され推定932マイル(1,500キロ)飛翔したと確認している。これと合致するのが改良型ポップアイミサイルである。
  7. ポップアイは空中発射式対地攻撃ミサイルとして1980年代に開発され当初はテレビカメラや赤外線シーカーで750ポンド弾頭を45マイル(72キロ)運ぶ性能だった。米空軍が154発を購入しAGM-142ラプターの名称でB-52爆撃機に搭載した。イスラエルの核抑止力ではポップアイを改装した巡航ミサイルが大きな役割を果たしていると思われる。ポップアイターボと呼ばれターボファンエンジン換装で長距離飛翔を実現した。
  8. あるいはゲイブリエル対艦ミサイルを核弾頭対応にしているかもしれない。ハープーンを核改装したとの報道もある。真偽も核弾頭の規模も不明だが推定200キロトン程度と言われ広島型原爆の14倍だ。
  9. 射程932マイルならシリア沖合から発射してイランの首都テヘラン、聖都コムや北方のタブリズが射程に入る。イスラエルが二次攻撃力整備に走るのはイランの核兵器開発が動機である。シリアは理想的な発射位置ではないが、ミサイルの初発射から17年も経過しており、有効射程が延長されていてもおかしくなく、イランの他都市も攻撃範囲に入れているだろう。
  10. 三隻あれば常時一隻を核抑止力とできる。ドルフィン級は魚雷ミサイル16本まで搭載できるといわれるが核抑止力が主要任務なら半分を核兵器にできるはずだ。その結果、常時テヘランはイスラエル潜水艦の標的となっている。
  11. ドルフィン級第二段はドルフィンII級と呼ばれ2000年代中期に発注された。先代と同じ外観だが大気非依存式推進(AIP)が特徴だ。Der SpiegelによればドルフィンII級は最長18日間潜水できるという。ドルフィンII級は排水量が2割ほど増加し、ダイバー専用のチェンバーも搭載している。
  12. ドイツ政府がさらに三隻のドルフィン級建造を認可した。新型艦は第一世代3隻の老朽化に対応するもので、イスラエルは常時6隻を配備できることになる。イスラエルの海洋配備核抑止力は当面安泰と言えよう。
Kyle Mizokami is a defense and national-security writer based in San Francisco who has appeared in the Diplomat, Foreign Policy, War is Boring and the Daily Beast. In 2009 he cofounded the defense and security blog Japan Security Watch. You can follow him on Twitter: @KyleMizokami.
Image: Creative Commons.


中東UAV市場を中国に渡してしまった米国にチャンスはあるのか



なるほどここでもオバマ政権の過失が見えますね。きれいごとで仕組みづくりはいいのですが、はなからそんな規則は無視できる中国に市場を奪われた格好です。ここから巻き返しができるのか、トランプ政権のやる気がためされます。中東各国もロシア、中国と米国以外の供給チャンネルを作っていますので米製装備は価格面でかなり苦戦しそうですね。しかし、中国製の実力はどんなものなのでしょうか。
ShowNews

China’s UAVs Proliferate in Middle East

中国製UAVが中東で拡散中


CASCのCH-4はイラク、サウジアラビアで正式採用されている。

Nov 11, 2017ShowNews

  • 中東のUAV市場で中国の台頭が目立ち米国勢には市場奪回が難しい情勢になっている。
  • 米側に武装無人航空機(UAS)の納入をためらう傾向が中東主要同盟国に見られる間に中国が大きく参入してしまった。
  • 中東や中央アジア各国で中国のUASメーカー各社が大量に契約獲得する例が目だつ。また各国での中国の成功から市場拡大を予感させる。
  • 4月にAvicがWing Loong IIを米国の裏庭というべきメキシコで展示した。同機はMQ-9リーパーと同等の機体サイズ。パリ航空ショーでデビューし各種中国製兵器とともに展示していた。
  • 中国製武装UAVが中東で何機供用中なのか不明だが、イラク、アフガニスタン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)の各国が採用しており、エジプトやヨルダンにも販路を広げつつあるとの報道がある。
  • 戦闘に投入している国もある。サウジアラビアが例でイエメン空爆に投入した。イラクもイスラム国対策に使っている。UAEか先を行っており、リビアに持ち込みリビア国軍によるイスラム戦闘員殲滅作戦を支援中だ。
  • 各国はジェネラルアトミックスMQ-1プレデターやMQ-9リーパーの武装型を当初希望していたが、オバマ政権がミサイル技術管理レジームMissile Technology Control Regime (MTCR)に違反する可能性があるとして却下していた。同制度では核、生物、化学兵器の運搬手段の拡散を防止する目的がある。UAEには非武装型プレデターXPの購入許可が下りた。
  • 中国がこの地域でほぼ同様の機体二型式で成功している。MQ-1プレデターのコピー商品といってよい中国航天科技集团公司(CASC)のCH-4とAvicの Wing Loong I(人民解放軍空軍制式名GJ-4)だ。CH-1価格はMQ-1の五分の一との分析もある。
  • トランプ政権がMTCR規制を緩和し武器取り扱い規則も変更してまで米製UASの売り込み拡大を図っているが、中国が強い状況は容易に突破できないだろう。
  • 三月にはCASCがサウジ国内に工場を新設しCH-4を300機サウジ国軍向けに生産すると発表したばかりだ。■