2018年3月18日日曜日

北朝鮮空軍直結の高麗航空が示す北朝鮮経済の変化

北朝鮮唯一のエアラインの話題ですが、涙ぐましい企業努力ともいえるのですが空軍と直結しているとなれば同社を助ける真似はできませんね。制裁措置が効果を上げているのか、軍と民生経済が一体化しつつあると見るべきなのでしょうか。ターミナル1と同時掲載にします。AP通信の記事です。

Image result for Air Koryo logo

Canned soup may be fueling North Korea's air force 缶詰スープが北朝鮮空軍を支えているのかも

Eric Talmadge Associated PressMar. 15, 03:11 PM

朝鮮空軍は缶スープを売ったりタクシー収入で滑走路を改修しているのか。
最も厳しい制裁を受ける北朝鮮でどうもこの答えはイェスのようだ。そこから金正恩の下で経済がどうなっているかが見えてくる。
北朝鮮では軍と民生部門の間の線はか細い。もともと少ない財政は軍が先に確保し部隊がレストラン、農場さらに航空会社も経営する。
高麗航空 Air Koryo は単なるエアラインでははい。
ここ数年で同国で最も著名な消費者向けブランドになった。
運行機材は十数機のみで路線も中国とロシア極東部しかないが北朝鮮にとって頼りがいのなる稼ぎ手になっているとは信じられないほどだ。同時に国家の威信の象徴であり外部世界へのライフラインとして人員と貨物を運んでいる。
高麗航空は平壌市内にガソリンスタンドと洗車場を経営するほか、タクシー車両を運航し、小売店舗数軒も経営する。市内にでは高級地区の普通Potonggangデパートには高麗航空ブランドの製品が酒からコークに似た清涼飲料水や各種缶詰まであり、キジスープや桃がある。

Air Koryo about to push-back for Pyongyang. (Photo by Mark Fahey)
同社は北朝鮮経済の現状を反映しており、北朝鮮は今でも社会主義で技術的には中央統制型だが金正恩が資本主義型起業に迅速に変化させている。
一般大衆レベルでは露店や小規模市場が普通にある。高級部門では国営企業が生産性を上げ利益を増加させており、制裁で貿易も先細りのため他に行き場がないためだろう。
高麗航空だけではない。金正恩の愛用する高級製品「7.27」で知られるタバコ企業Naegohyangは自社でスポーツ用品の販売を始めており、ナイキ、アディダス他の高価格輸入品と並び平壌の外交官居住地区や科学者技術者への報償としての住居が並ぶ科学者通りだけで販売している。
高麗航空は金正恩が命じた平壌スナン空港の大改修で恩恵を受けている。同空港は2015年供用開始した。その翌年に同社はタクシー運行を開始し、高麗航空ソフトドリンクは2016年に販売開始し、ガソリンスタンドと洗車場は2017年にオープンした。
各事業がどれだけの利益を上げているか不明だが首都はじめ各所で見られるのは事実だ。
子会社のKorea Hanggong Tradingが見本市に出展していることから高麗航空は輸出業参入を検討中のようで、政治環境と制裁措置をにらみながら進めるようだ。
ジョンズホプキンス大US-Korea Institute研究員のカーティス・メルヴィンCurtis MelvinはブログNorth Korean Economy Watchも主宰しており、高麗航空は空軍の「完全保有企業」だという。消費者向け製品の売上げをインフラ修復として滑走路改修や航空基地の防壁工事に使っているという。

(Photo by Pon Pon Tin)

高麗航空ブランド製品は軍の工場で製造され予算不足を補っているとメルヴィンは言う。
「これまで北朝鮮は補助金依存の国営企業の収益を改善して『納税』させようと苦労してきた」とAPにメールで伝えてきた。「高麗航空もこの流れだろう」
高麗航空は軍とのつながりがすぐに見つからずしばしば見逃されがちだ。
だが2014年の国連専門家パネル報告によれば同社ならびに北朝鮮内の空港飛行場すべては朝鮮人民空軍が民間航空局を通じ管理している。報告書では同社社員は空軍隊員と見られ、「国内整備作業は空軍が実施している」とある。
となると同社は制裁対象となり、事業多角化に一層走ることになる。
米国は同社をブラックリストに載せようとしたが失敗し、米財務省は2016年に2013年の軍事パレードで上空飛行したこと、スカッドBミサイルの部品を輸送したこと等で高麗航空を制裁対象にした。
とはいえ米国人の高麗航空利用は禁じられておらず同社とのビジネスを制限するだけだ。

一方で国連は「空軍が高麗航空機材を運用し利用していること」から、加盟各国が同社に資金面や技術面で援助すると北朝鮮向け武器禁輸措置の違反になると警告している。■

主張 日米両国は台湾支援強化に向かうべきだ

中国が香港で何をしているかを見れば中国の言うきれいごとと実態の乖離は醜いばかりに写ります。自由と独立を守るためには負担と犠牲が必要で70年余も海峡を挟んで独立を維持している台湾はすごいのですが、中国との格差が広がる一方で焦りを見せ始めています。日本では台湾に心情的に近さを感じる傾向がありますが、観光や文化だけではなく地政学的な「常識」が必要で、中国のめざす支配に対抗するためにも台湾の位置は極めて重要です。この問題を解決するには「一つの中国」を反故にすればよいのですが、北京がこれを一番警戒しているのは弱みだと分かっているからですね。台湾として認知すればよいのですが、どうなりますでしょうか。

Panel: Taiwan Looking More to Japan, U.S. for Economic, Security Support 台湾は日米両国に経済、安全保障両面の支援強化を期待

March 13, 2018 1:27 PM


力をちらつかせる中国から台湾を守ることは日米両国で高優先政策であると専門家の意見が一致した。戦略国際研究センター(CSIS)で退役海将吉田正則が安全保障と経済両面で「より多くの協力を差し伸べる」べきと主張し、日本政府が提唱する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一部だとした。

吉田氏は台湾海軍が米国建造艦船や米国製軍用機を運用しており日本、米国と相互運用性があり共同作戦を今後展開するのなら合同訓練も実施すべきと指摘した。

また米国がTPPを脱退した後の戦略は「アジアのパワーバランス(経済、軍事含む)の維持」に尽きると述べた。同席したパネリストからは習近平が憲法改正で国家主席の任期に制約がなくなり今後は領土・領海主張が一層強く出てくると予見した。埋立て工事を強行し滑走路や港湾を構築したのは中国が国際制度を無視しても自国の主張を前面に進める例だと指摘した。

CSISのマイケル・グリーンMichael Greenは「(三か国)は同盟関係ではないが情報面や関係を強化していく」と見通す。この関係は「防衛連合」 “federated defense”と呼ばれることが多い。

台湾は「北方を眺め日本に、東に米国を見ている」と台湾民主進歩ミッションのマイケル・フォンテが防衛に関連し台湾による中国以外の市場開拓先として指摘した。台湾で「日本が友邦国である」と理解されるのには理由があり2月の地震派生直後に日本がいちはやく人命救助協力を申し出たことを例にあげた。

三名は開かれた選挙を実施する民主主義の価値観、自由な報道、安定した政体のすべてが中国の独裁専制体制に対する強みだとの点で意見が一致した。この違いはインド太平洋地域の中小規模各国にも大きな意味を有するとし、各国は中国に貿易面や軍事面で支配を許さず独立を維持したいと考えている。

ただし軍事装備に関する限り「台湾は米国依存だ」とフォンテは指摘し、台湾総統蔡英文 Tsai Ing-wen は「何を購入すべき」対「何を製造すべき」の比較検討で急いで決定すべきと論じた。例としてスマート機雷、潜水艦、フリゲート、戦闘機がある。

人民解放軍海軍が「台湾の太平洋側」と「日本の太平洋側」の両面で作戦展開能力を入手したことで国防近代化で本土からの侵攻を抑止する能力整備が台湾の緊急課題となっている。

「(米台間の)軍同士の関係はとても強固です」とフォンテは指摘した。

だが台湾の地理条件は国際的にもユニークで日米両国のような友邦国のみならず国連加盟国との関係も複雑だ。

「米国は台湾を主権国家とみなしていない」とフォンテは述べ、同時に「米国はPRCによる台湾主権の支配は認めない」とも付け加えた。

北京政府が国連では中国として認知され安全保障理事会の常任理事国にもなっている。台湾野党と異なり、蔡総統の支持層は本土との再統一に急ぐ様子は見せていない。これにより蔡総統は中国とのやりとりで危険な綱渡りをしているが、中国は台湾の対外貿易で4割をしめ、台湾の若い世代が大陸に渡り高等教育のみならず情報工学など雇用の機会を得ているのも事実だ。

このため「台湾人口が急速に縮小している」とフォンテは述べ、「台湾経済には成長が必要」で頭脳流出を止めつつ防衛力を増強すべきだと指摘した。

2018年3月17日土曜日

★★F-35採用を主張してクビになったドイツ空軍トップ

これは政治の横暴でしょう。制服組はタイフーンの性能発展性に限界を感じているのに対し、ヨーロッパ第一の考えの政治家がそんな現実には目もくれず目障りな発言を繰り返す将軍を横に追いやったということでは。ではその後を継ぐ空軍トップがやはり同じ発言を繰り返したらどうなるのか、あるいは「忖度」して政治家に取り込まれるのか。戦闘機選定はその後30年に影響を与えますから慎重に検討してもらいたいものです。

Luftwaffe chief dismissed over F-35 supportドイツ空軍トップがF-35をめぐり更迭の憂き目にあう



Sebastian Schulte, Berlin - IHS Jane's Defence Weekly
16 March 2018


ベルリン安全保障会議で展示されたドイツ軍マーキングのF-35。ルフトヴァッフェ参謀総長がトーネード後継機にF-35が欲しいと発言し更迭された。 Source: IHS Markit/Gareth Jennings

イツ空軍制服組トップが更迭される。ロッキード・マーティンF-35ライトニングIIの採用を主張したのが主な理由と判明した。
カール・ミュルナー中将Lieutenant General Karl Müllnerは5月末に退役することになり、その発表はドイツ国防相ウルスラ・フォン・デアレイエンUrsula von der Leyenが二期目就任をしたわずか二日後というタイミングである。
ミュルナー中将はこれまでJSFをトーネード後継機に公然と推す発言をしたのが更迭の原因だったようだ。「ルフトヴァッフェはF-35性能をトーネード後継機選定の基準をするべきであり、空軍に望ましい選択を明確に述べてきたつもり」とミュルナー中将は2017年11月に報道陣に語っていた。

ドイツ空軍参謀総長がJSFを支持して国防省方針とぶつかった形だ。国防省はユーロファイター・タイフーンを後継機にしたいと考えている。■

J-20は中国専用、FC-31は輸出に振り向ける中国の考え方

中国の英字紙ですので、中身についてとやかく言うつもりはありませんがFC-31は国内採用せず、輸出する一方でJ-20は中国専用とするのはF-22とF-35の関係と同じですね。こうした情報は内容はともかく貴重で無視できません

 

 

J-20 stealth fighter's capabilities to be enhanced J-20ステルス戦闘機の性能はさらに伸びる


A J-20 stealth fighter is seen at a 2016 air show in Zhuhai, Guangdong province.[Photo/Provided to China Daily]


国は最新鋭J-20ステルス戦闘機の改良改修を続け性能を向上し敵防空網突破だけではない能力も実現すると同機主任設計者が語っている。
中国航空工業(AVIC)の科学技術副部長Yang Weiは中国科学院会員でもあり、China Daily単独取材で設計陣はJ-20派生型を開発中であり、さらに後継機となる第六世代機の研究も始めると述べている。
「実現内容に自己満足するつもりはない。J-20はファミリー展開しながら情報処理や情報収集能力を強化していく。同時に次世代戦闘航空機構想を将来の要求内容を検討する」
Yangは北京で開催中の第十三回全国人民代表会議の併設行事で所見を述べている。本人も代表の一人だ。「これまでは他国の軌跡を追って軍用機を設計してきた。わが国の研究開発能力が初歩的だったためだが、いまや自力で何でも開発できる」
同設計主任はJ-20は中国最強の戦闘機で有事には一番肝心な場面に投入されると語った。
「敵防空網突破はもちろんだがその他機能もあり、今後の生産と配備で用途もかわるだろう」(Yang) 
J-20は中国初の第五世代戦闘機で2011年1月に初飛行し2016年11月に機密解除された。配備機体としては世界三番目で米国のF-22ラプター、F-35ライトニングIIに次ぐ。
空軍は同機を各種演習に参加させており、視界外航空戦も想定の一つだという。

同機の重要な任務は空戦で主導権を握り僚機に道を開くことと空軍フライトテストセンター長Zhang Haoが述べる。AVICはJ-20以外にFC-31のテストも行っており、これも第五世代機として海外での採用を狙う。空軍はJ-20の輸出を認めないと明言している。■

2018年3月16日金曜日

台湾が防衛力強化でF-35B導入に前向きに

台湾の防衛体制強化は日本としても無関心ではいられませんが、F-35導入となれば日本もFACOで後方支援できますね。もっとも北京がどんな嫌がらせをしてくるかわかりませんが。KC-135って剰余機材が米国にあるのでしょうか。あるいは給油機を運営する民間企業経由なのでしょうか。Defense News記事です


Taiwan renews interest in F-35 to counter Chinese first strike 台湾が中国からの攻撃への対抗策としてF-35へ改めて関心を示す

By: Mike Yeo    

F-35B STOVL型は米海兵隊で供用中で英国・イタリアが導入検討中。台湾が取得に前向きになっている。 (Lockheed Martin)

湾がロッキード・マーティンF-35に再び関心を示している。米国からの武器調達の次期新規案件の一つとの想定だろう。
台湾国防相厳徳発Yen Teh-faは議会で台湾のF-35への長期的な関心に触れたが、F-35のどの型式か何機調達かは触れていない。
以前の報道では台湾はF-35B短距離離陸垂直着陸型STOVLに関心を示していた。同型は米海兵隊で供用中で、イタリア・英国・日本・シンガポールが導入を検討中といわれる。
Yen大臣はボーイングKC-135ストラトタンカーの導入を検討中と述べており、台湾が空中給油能力を整備するのははじめてとなる。
台湾はF-35BのSTOVL性能により中国の第一撃に対抗し滑走路が使用不能となっても空軍力を温存したいとする。
台湾への武器販売に中国が難色を示しており、台湾を自国領土と見る中国は武力での再統一を否定しない。また外交圧力で台湾の孤立化を狙っている。
これに対して米国は台湾政府との事実上の外交関係を維持しており、台湾関係法(1979年制定)で米国は「台湾の防衛力を十分維持するのに必要な量の防衛装備防衛業務を台湾に使用可能にすること」としている。
近年では中国の反発を恐れて高度米製防衛装備は台湾向け売却対象には除外されてきた。
台湾空軍はロッキード・マーティンF-16A/Bファイティングファルコンと現地生産のAIDC製F-CK-1Ching-kuo經國號戰機、フランス製ダッソー・ミラージュ2000-5戦闘機の混合編成だ。三機種とも近代化改修を受けているものの1990年代の作業のため老朽化が深刻だ。台湾はF-16とF-CK-1の改修を進めており、ミラージュについては対応を検討中だ。

中国の軍事優位性が強まる中で台湾は新型戦闘機の導入を望んでいる。■

KC-46の米空軍向け納入が再度遅延の模様。

相変わらず深刻なKC-46の開発の遅れですが、肝心のボーイングに深刻な危機感が見られないのはひょっとして米空軍向けに損失を計上してもその後の輸出で取り戻せると見ているためではないでしょうね。今のところKC-46を発注しているのは日本だけなので機体単価が急上昇することのないよう目を光らせておきたいところです。Aviation Weekの記事です。


Boeing


Aerospace Daily & Defense Report

Boeing’s KC-46 Tanker Delayed Again 

ボーイングKC-46給油機の納入予定が再度遅延か

Mar 6, 2018Lara Seligman | Aerospace Daily & Defense Report





ーイングのKC-46引渡し開始は2018年遅くになると米空軍は見ており、契約上の納入期限を同社が守れるか疑わしくなってきた。不履行だと大幅な違反金が発生する。
ボーイングの大日程では一号機納入を2018年第二四半期に予定するが、共同日程管理リスク見直しをかけて空軍は2018年末と見るのが現実的としている。空軍広報官エミリー・グラボウスキ大尉が語った。
「今後もボーイングと開発日程を無理のない形にしていき、事業推進を迅速化していきます」とし、「遅延で納税者負担が増えることはありません」と付け加えた。
契約上はボーイングは完全な形の給油機計18機を10月までに空軍に納入することになっている。この納期を守れないと同社は税引前29億ドル、税引き後19億ドルの追加負担を迫られ、ただでさえ同社はこれまで同事業に相当の負担をしているところにさらに支出が増ええる。固定価格契約のためコスト追加分はそのままボーイング負担となるためだ。つまりコスト増は政府ではなく同社が全額負担する。
進展を遅らせている理由は以前と同じで、耐空証明取得とフライトテストだとグラボウスキ大尉は指摘。
FAAは昨年767-2Cの給油機型に型式証明を発行したがボーイングは767-2CをKC-46に変換する肝心の軍用空中給油追加装備の型式証明を交付されていない。
またボーイングは重要問題をまだ解決していない。同機の硬式給油ブームが給油を受ける機体の表面を削る傾向がある。ステルス機の場合深刻な影響を与えかねない。低視認性ステルス塗料が損傷を受けるためでB-2爆撃機、F-22とF-35戦闘機が該当する。
政府と産業界が一緒にフライトテストデータからこの危険の発生頻度と深刻度を国際基準と比較しているところとグラボウスキは以前Aviation Weekに述べていた。データから空中給油時に遠隔カメラが必要になるのか今月中に判断する。
この問題は「カテゴリーI問題」とされ最も深刻な区分とされている。
その他二つの問題があるがこちらはカテゴリーII区分だとグラボウスキは述べている。一つはKC-46搭載の高周波(HF)無線装置で機体表皮をアンテナとして使うが放電現象や火花が発生していることだ。
空軍としては無線機能は必ず作動させたいが給油中の無線使用を厳しく禁じ火花から火災の発生を避ける必要が生まれる。
このことによるリスクは「受容範囲内」とされるがシステムが仕様を満たしていないとグラボウスキは指摘。空軍としてはボーイングが長期間かけてもリスクを完全解決することを望んでいる。
空軍は同時にボーイングにソフトウェア小規模改修も望んでおり、給油後にブームを相手機から外す際に燃料が一部流れるままになるすでに把握されている問題の解決を期待する。

「米空軍とKC-46日程のリスク評価を一緒に検討し、納入予定も検討しました」とボーイング広報のチック・ラメイが述べている。「新型機開発にリスクはつきものですが、当社は空軍と協力してリスクをつぶしていきKC-46テストを完了し、画期的な性能を誇る同機計18機の迅速な納入につとめます」■

2018年3月15日木曜日

★★必勝体制のボーイングMQ-25スティングレイの全体像

先日はジェネラルアトミックスとの共同事業案が出ていたボーイングですが、これですっきりしましたね。マクダネル・ダグラスの系譜を継ぐファントムワークスがボーイングプロパーの機体とし、新たに生まれた無人機部門がGA-ASIと組むのですね。言ってみればボーイングとしては安全策をとったわけでそれだけ同社としてこの事業は落とせないという決意が見え隠れします。それにしても今回Aviation Weekが解説している機体が実は2014年にロールアウトしていたとは。ボーイングの情報管理はしっかりしていますね。


米空母では夜間に作戦が多忙となることが多い。このためボーイング他MQ-25競合各社は空母艦上を模した運用テストを昼間夜間ともにおこなう必要がある。Credit: Boeing



Aviation Week & Space Technology

This Is Boeing’s Play For MQ-25 ‘Stingray’これがボーイングのMQ-25スティングレイだ



Mar 8, 2018James Drew | Aviation Week & Space Technology




ントルイスのランバートフィールドの駐機場に空母航空戦力の未来が姿を現した。ボーイングの高性能試作機制作部門ファントムワークスが駐機場を塗装で空母の飛行甲板に見たてており、ここ数か月同社はこの場所で最新の軍用UAV米海軍向けMQ-25「スティングレイ」試作機テストを全日展開している。
Aviation Weekが見たビデオ映像は「競合相手の閲覧厳禁」とあり大型無人機が白昼に自力でタキシーする状況が写っている。停止、発進、前方移動、カタパルト後方に位置決めし発艦に備える。ただし同機はまだ飛行していない。そのかわりに空母運用適合性をテストで空母艦上で有人機同様に安全、容易かつ十分信頼できる形で移動できるかチェック中だ。
同機を空母艦上でどのように正確に誘導するかは社外秘で当方も記事にはしないと約束したが、従来の手信号や棒は使えないことは想像できるだろう。空母運用適合性テストとしてファントムワークスは同機の「駐機性能」も見ており、F/A-18スーパーホーネットが駐機できる場所なら同機もすべて駐機できるか実証中だ。
当初は無人空母発進偵察攻撃機(Uclass)として企画されたが、ボーイング機は空中給油任務に最適化されていると宣伝中だ。ノースロップ・グラマンなど競合他社がステルスの情報収集監視偵察(ISR)機材として探知破壊能力を強調する中、ボーイングは給油能力を第一にしつつ偵察攻撃能力も保持しているとする。その結果が「T-1」と同社が呼ぶMQ-25採用を目指す機材の一号機だ。
Uclass構想の前から海軍が艦載UAVによる給油の実現をめざしていたのは有人攻撃機材の貴重な飛行時間を給油活動で減らしたいためだ。構想が2015年に仕切り直しされCBARS艦載空中給油機システムのMQ-25となったのはボーイングには朗報といってよい。と言うのは同社はノースロップほど偵察攻撃機能の開発を重視していなかったためだ。このことがきっかけでノースロップは2017年10月に競合から降り、同社が制作したX-47B実証UAVは見捨てられた。
Aviation Week の単独取材でボーイング・ファントムワークスでMQ-25を統括するドン・「BD」・ガディス Don “BD” Gaddis は現在テスト中のT-1試作機は実は2014年11月にロールアウトしており今まで公開していなかったと明らかにした。奇妙な形態の同機ははじめて2017年12月にその姿を目撃されボーイングもツイッターで同機の前面をぼやかした写真を公開した。屋外試験を開始した同社は機体外形のリークは時間の問題と見ていた。
そのとおりになった。The War Zone がランバート国際空港を離陸中にジェレミー・マクガフが撮影した写真を掲載した。同機の全体像を示す写真としては今のところ唯一のものでグライダー状主翼の全体像がわかる
「ランバート空港が施設を当社に自由に使わせてくれ助かった。空母の飛行甲板のように塗装している。また無人機も提供してもらいビデオ撮影できた」とガディスは語る。「実証はなるべく空母と同じ環境に近づけた」
ノースロップが脱落した今はMQ-25で採択を目指すのは三社になり、ジェネラルアトミックス・エアロノーティカルシステムズ (GA-ASI)とロッキード・マーティンのスカンクワークスが競合する。ボーイング含む三社は2017年1月3日期限の海軍航空システムズ本部の提案募集に応じており、今年8月はじめの選定結果を待つ。


ボーイングはセントルイスのランバート国際空港の一画を空母飛行甲板に見立ててカタパルトも設置した。Credit: Boeing


「当社としては要求水準に対して優秀な内容を提出できたと思います。ボス(ボーイングディフェンス、スペース&セキュリティ社長リアン・キャレットLeanne Caret)はMQ-25を当社が強みを発揮できる事業と見ており、なんとしても受注したいとしています。CEO(デニス・ムレンバーグDennis Muilenburg)も同様です。当社は契約を勝ち取ります」
ボーイングは受注に硬い決意を示しているが両面作戦をとる。ボーイング・オートノマスシステムズ Boeing Autonomous Systems は新たに発足した事業体で無人機事業の大部分を手掛け、GA-ASIと提携し社内ではファントムワークスと「ファイヤーウォール」で分けられているといわれる。「あちらで何をしているのか全然わかりません」とガディスも同時並行で進む事業について語る。
完全新規開発のT-1は2012年10月にボーイングが初期設計作業を完了した。二年後にこっそりとロールアウトして機体コンセプトの確認と空母艦上の取り扱い特性の実証に投入され初飛行の準備も始まっている。ガディスは初飛行予定日を口にしていないが8月の契約交付後になりそうだ。


前方から見るとファントムワークスのMQ-25は頑強に見えるが、機体は前後に延ばされ重心はかなり後方に設定されている。ボーイングはこの画像をあえて公開し、高アスペクト比折り畳み式主翼の全体像を悟られないようにした。Credit: Boeing


機体はファントムワークスが以前発表していた全翼機デザインと全く異なる形状だ。全翼機は2011年4月に初飛行しUclass偵察攻撃機の候補とされていた。だが同社は主翼胴体尾翼を一体化しV字尾翼を方向舵昇降舵を兼ねる形とし主翼は折り畳み式の高アスペクト比の機体とした。最初に姿が視認された際には前方の空気取り入れ口と機首のカメラが誤った推測のたねとなった。だがボーイングは前方空気取り入れ口は単純に機内空調用で、カメラはテスト中だけ取り付けデータ収集に使うが実機には搭載しないと認めている。最終形のMQ-25は電子光学センサーを搭載することになりそうだ。
同機はノースロップの第一世代ステルス技術実証機タシット・ブルーと比較されるが、ガディスはボーイングMQ-25は低視認性つまりステルス想定ではないと明かす。たしかにレーダー断面積や赤外線特徴の削減として機体上部の空気取り入れ口や排気口の熱削減の工夫はある。だが主翼形状から新鋭レーダーには簡単に探知されるはずだ。
「ステルス機をめざしたわけではないのです。MQ-25では残存性の要求内容はありません。任務機への給油機能とCVN(原子力空母)での運用適合性に絞り込まれています」とガディスは説明し、状況把握用のセンサーで「軽ISR」機になるという。


ボーイング試作機は2014年11月にロールアウトしていたが最近まで秘密にされていた。屋外テストが始まるまではこの想像図が唯一ボーイングが公開した情報だった。Credit: Boeing


給油任務では空母から500カイリ地点で14千ポンド給油能力が求められ、空母航空部隊の飛行距離を延ばす要求だ。ニミッツ級空母での運用を想定し安全に離着艦しながら艦内で場所をとらず、保守修理が可能であることとしている。
「Uclassに話を戻すと、給油能力は設計上の一要素にすぎません。性能上は十分余裕があり将来の発展性を残しています」とガディスは述べた。
MQ-25は空母航空機材で90年の経験を有するボーイングの最新機となる。セントルイスに本拠があったマクダネル・ダグラスを1997年に吸収合併したことが大きい。マクダネル・ダグラスはダグラスTBDディヴァステイターで1930年代に、40年代以降にはAD-1スカイレイダーとマクダネルF2Hがあり、さらにダグラスA-4スカイホーク、マクダネル・ダグラスF-4ファントム、F/A-18ホーネットが今日の最新F/A-18E/Fスーパーホーネットにつながる。「当社はCVNで多大な知見を有しており、今回はそのすべてを投入しました。ホーネットだけでも合計1.8百万時間のフライト蓄積がありますからね」(ガディス)
GA-ASIから先に提案内容と共同開発体制が発表されたが、ボーイングとロッキード・マーティンから詳細発表がまだない。ボーイングはT-1の主翼構造を悟られないよう情報操作までおこない機体構造の情報を絞っていた。ボーイングはMQ-25提案でどこがスーパーホーネット技術の流用なのか、さらにエンジン等主要装備のサプライヤーを明らかにしていない。
一つだけわかっているのはボーイングが長年使っているコバムCobhamの空中給油装備、いわゆる「バディポッド」でスーパーホーネットが1998年から搭載して僚機への給油を行っている。ポッドは政府支給品として搭載されており、MQ-25でも使われるだろう。
ボーイング、ロッキード、GA-ASIが争う契約は固定価格方式で開発と生産を初期4機向けに行う内容だ。海軍は運用機材を最大72機調達し2026年の初期作戦能力獲得を目指す。
海軍作戦部長には最優先事業であり、新たに創設した海洋装備加速実現室 Maritime Accelerated Capabilities Office が統括する。調達を「加速化」し初期作戦獲得の2026年は契約交付の8年後にすぎない。
各社の競合は機体の実現に限られる。と言うのは海軍がシステム統合にあたり、各種要素をまとめ新規技術との適合性にも責任を有するからだ。新技術の例にレイセオンの共用精密アプローチ着艦システムがある。
ボーイングはMQ-25の生産場所をまだ決めていないが、スーパーホーネット生産が永遠に続かないことを考えればセントルイスが有力だろう。ボーイングは共用打撃戦闘機、長距離打撃爆撃機と大きな事業二つで受注に失敗し、空軍のめざすT-X次世代練習機あるいはMQ-25のいずれかは必ず受注しないと軍用機ビジネスに残れないとの意識だ。これだけの規模の軍用機事業は当面現れないと見ているからで、ファントムワークスに関する限り、T-1は大きな意味がある。

「低コスト低リスクを前面にT-1を成熟化させ契約獲得後に飛行テストに入る準備ができています。当社はこの案件でかなり有望な立場です」(ガディス)■